特許第5980739号(P5980739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980739
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】レール転倒防止装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 29/16 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   E01B29/16
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-156584(P2013-156584)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-25328(P2015-25328A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2015年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074192
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】今井 国博
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−207143(JP,A)
【文献】 特開平11−269803(JP,A)
【文献】 特表2006−513340(JP,A)
【文献】 特開2003−055902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/00−37/00
E01B 9/30
E01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクラギ上でレールの左右両側に設けられた一対のレール締結金具受部の上に被せてレールに交差するようにマクラギ上に設置されると共に、その上面のほぼ中央にレールの底部が載置されレールをその長手方向に搬送するレール搬送ローラーが設けられ、前記レール締結金具受部に固定される下面開放のレール載置箱体と、
そのレール載置箱体のレール載置部の一方側に設けられ、レールの腹部を横方向から押圧するレール押圧部とを有するレール転倒防止装置であって、
レール載置箱体の上面のほぼ中央には、当該レール載置箱体の上面よりも高さが低く、かつ、レールの底部の幅に応じた溝幅を有するレール案内溝部が設けられており、前記レール搬送ローラーの上面がそのレール案内溝部の上面とレール載置箱体の上面との間に位置するように前記レール搬送ローラーが設けられていることを特徴とするレール転倒防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレール転倒防止装置において、
前記レール載置箱体は、
前記レール載置箱体の左側面板または右側面板に設けられたボルト孔に螺合する締付け固定ボルトの先端部を前記一対のレール締結金具受部の一方のレール締結金具受部の側面に当接させる一方、
前記レール載置箱体の前側面板および後側面板を貫通する貫通孔に他方のレール締結金具受部のレール締結金具を通る金具挿通孔に連結ロッドを通すことによって当該レール載置箱体をレールの両側のレール締結金具受部に固定されることを特徴とするレール転倒防止装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレール転倒防止装置において、
前記レール押圧部と前記締付け固定ボルトとは、レールを中心に前記レール載置箱体の同じ側に設けられており、
前記レール載置箱体における前記レール押圧部と前記締付け固定ボルトの反対側の左側面板または右側面板は省略されており、かつ、当該反対側の前側面板および後側面板には貫通する貫通孔が設けられていることを特徴とするレール転倒防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの設定替え作業時、すなわちレールの締結を外し、レール緊張器などでレールを引っ張る際等に、レールが小返り(レールがこじれて倒れる)する等のレールの転倒を防止するレール転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レールの設定替え作業時等における作業の手間をなるべく軽減することができるレールの転倒を防止するレール転倒防止装置として、本件出願人は、各種のレール転倒防止装置を提案している(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−203212号公報
【特許文献2】特開2009−264008号公報
【特許文献3】特開平11−269803号公報
【特許文献4】特開平8−302604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レールの設定替え作業時には、レールの締結を外し、レール緊張器などでレールを引っ張る必要が生じるが、これら従来の特許文献1〜4に記載のレール転倒防止装置では、別途レールの下にレール搬送ローラーを敷設する必要があり、その分だけ手間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、レールの設定替え作業時等における本装置の設置やレールの移動、レールの引っ張り作業等の手間をなるべく軽減することができるレール転倒防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明のレール転倒防止装置は、マクラギ上でレールの左右両側に設けられた一対のレール締結金具受部の上に被せてレールに交差するようにマクラギ上に設置されると共に、その上面のほぼ中央にレールの底部が載置されレールをその長手方向に搬送するレール搬送ローラーが設けられ、前記レール締結金具受部に固定される下面開放のレール載置箱体と、そのレール載置箱体のレール載置部の一方側に設けられ、レールの腹部を横方向から押圧するレール押圧部とを有するレール転倒防止装置であって、レール載置箱体の上面のほぼ中央には、当該レール載置箱体の上面よりも高さが低く、かつ、レールの底部の幅に応じた溝幅を有するレール案内溝部が設けられており、前記レール搬送ローラーの上面がそのレール案内溝部の上面とレール載置箱体の上面との間に位置するように前記レール搬送ローラーが設けられていることを特徴とする。
ここで、前記レール載置箱体は、前記レール載置箱体の左側面板または右側面板に設けられたボルト孔に螺合する締付け固定ボルトの先端部を前記一対のレール締結金具受部の一方のレール締結金具受部の側面に当接させる一方、前記レール載置箱体の前側面板および後側面板を貫通する貫通孔に他方のレール締結金具受部のレール締結金具を通る金具挿通孔に連結ロッドを通すことによって当該レール載置箱体をレールの両側のレール締結金具受部に固定すると良い。
また、前記レール押圧部と前記締付け固定ボルトとは、レールを中心に前記レール載置箱体の同じ側に設けられており、前記レール載置箱体における前記レール押圧部と前記締付け固定ボルトの反対側の左側面板または右側面板は省略されており、かつ、当該反対側の前側面板および後側面板には貫通する貫通孔が設けられているとさらに良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明のレール転倒防止装置によれば、マクラギ上でレールの左右両側に設けられた一対のレール締結金具受部の上に被せてレールに交差するようにマクラギ上に設置されると共に、その上面のほぼ中央にレールの底部が載置されレールをその長手方向に搬送するレール搬送ローラーが設けられ、前記レール締結金具受部に固定される下面開放のレール載置箱体と、そのレール載置箱体のレール載置部の一方側に設けられ、レールの腹部を横方向から押圧するレール押圧部とを有するため、レールの設定替え作業時等における本装置の設置やレールの移動、レールの引っ張り作業等の手間をなるべく軽減することができる。
特に、本発明のレール転倒防止装置では、レール載置箱体の上面のほぼ中央には、当該レール載置箱体の上面よりも高さが低く、かつ、レールの底部の幅に応じた溝幅を有するレール案内溝部が設けられており、レール搬送ローラーの上面がそのレール案内溝部の上面とレール載置箱体の上面との間に位置するようにレール搬送ローラーが設けられているため、レールの下にレール転倒防止装置を設置すると、レールの底部の下面はレール搬送ローラーの上に載置される一方、レールの底部の左右両側面はレール案内溝部の左右側壁面によって案内されるため、レール転倒防止装置を一台使用するだけでレールの底部を押圧ローラー支持軸部の反対側からも簡易に支持することが可能となる。
その結果、例えばレールの設定替えやレールの緊張操作時等に、従来のようにレール転倒防止装置等を2台設ける必要がなくなり、レールが転倒してくる側にレール押圧部が来るように設置すれば、レール転倒防止装置を1台設置するだけ済ますことが可能になり、この点でもレールの設定替え作業時等における作業の手間をなるべく軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る実施の形態のレール転倒防止装置の正面図である。
図2】本発明に係る実施の形態のレール転倒防止装置の平面図である。
図3】本発明に係る実施の形態のレール転倒防止装置の左側面図である。
図4】本発明に係る実施の形態のレール転倒防止装置を構成するレール載置箱体のレールに対し垂直方向の断面図である。
図5】本発明に係る実施の形態のレール転倒防止装置をレールに取り付けた状態を示す左側面図である。
図6】本発明に係る実施の形態のレール転倒防止装置をレールに取り付けた状態におけるレールに対し直交方向の断面図である。
図7】本発明に係る実施の形態のレール転倒防止装置をレールに取り付けた状態における部分断面平面図である。
図8】本発明に係る実施の形態のレール転倒防止装置の他の例をレールに取り付けた状態を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るレール転倒防止装置の実施の形態について、図1図7を参照しながら説明する。
【0010】
レール転倒防止装置1は、レールRの設定替え時に使用して、レールRの転倒を防止するもので、図1図7に示すように、レール載置箱体11と、レール押圧部12とを有する。
【0011】
レール押圧部12は、図1図2等に示すように、レール載置箱体11の一方の上側面11dに設けられるもので、その外周面にネジ山12a1が形成され、回転することによってレールRの方向に向かって進退して後述する押圧ローラー12bおよび押圧ローラー支持軸部12cを進退動させるレール押圧軸部12aと、そのレール押圧軸部12aの先端部に回転可能に設けられレールRの腹部を押圧する押圧ローラー12bと、押圧ローラー12bを回転可能に支持する押圧ローラー支持軸部12cと、レール押圧軸部12aおよび押圧ローラー支持軸部12cを回転可能に支持してレールRの方向に向かって進退動させるレール押圧軸支持部12dを有する。
【0012】
レール載置箱体11は、図6図7等に示すように、レールRの左右両側に設けられたマクラギM上でレールRの底部を押さえるパンドロールやクリップ等が取り付けられる一対のレール締結金具受部21,22の上に被せてレールRに交差するようにマクラギM上に設置されるので、前側面板11aと、後側面板11bと、左側面板11cと、上側面板11dとを有する。つまり、レール載置箱体11には、下側面板と右側面板が省略されている。
【0013】
そして、レール載置箱体11の上面のほぼ中央には、上側面板11dよりも低い位置に、レールRの底部の幅に応じたレール案内溝部11eが設けられており、レール案内溝部11e上にレール搬送ローラー11fが露出するようにレール搬送ローラー支持部11f1,11f1が前側面板11aに設けられている。
【0014】
つまり、レール搬送ローラー11fは、そのレール搬送ローラー11fの上面がそのレール案内溝部11eの上面とレール載置箱体11の上側面板11dとの間に位置するように設けられている。
【0015】
そのため、本実施の形態のレール転倒防止装置1によれば、レールRの下にレール転倒防止装置1を設置すると、図6等に示すように、レールRの底部の下面はレール搬送ローラー11fの上に載置される一方、レールRの底部の左右両側面はレール案内溝部11eの左右側壁面によって案内されるため、レール転倒防止装置1を一台使用するだけでレールRの底部を押圧ローラー支持軸部12cの反対側からも簡易に支持することが可能となる。
【0016】
その結果、本実施の形態のレール転倒防止装置1では、レールRの設定替えやレールRの緊張操作時に、従来のようにレール転倒防止装置等を2台設ける必要がなくなり、図6図7等に示すように、レールRが転倒してくる側にレール押圧部12が来るように設置すれば、レール転倒防止装置1を1台設置するだけ済ますことが可能になり、この点でもレールの設定替え作業時等における作業の手間をなるべく軽減することができる。
【0017】
また、レール載置箱体11は、図1図3等に示すようにレール載置箱体11の左側面板11cには、ナット11c1が溶接されており、ナット11c1によってボルト孔11c2が設けられている。このボルト孔11c2には、締付け固定ボルト11gが螺合されており、締付け固定ボルト11gの先端部が、図6図7等に示すように一対のレール締結金具受部21,22のうちの左側のレール締結金具受部21のレール締結金具受凹部21bに当接して、レール載置箱体11の左側面板11cをレールRの左側のレール締結金具受部21に固定する。
【0018】
つまり、レール押圧部12と締付け固定ボルト11gとは、レールRを中心にレール載置箱体11の同じ側である左側面板11c側に設けられる。
【0019】
その一方、レール載置箱体11の締付け固定ボルト11gが設けられた左側面板11cとは反対側となる右側面側には、図2図7等に示すように、前側面板11aおよび後側面板11bを貫通する貫通孔11a1,11b1が設けられており、その貫通孔11a1,11b1と、右側のレール締結金具受部22のパンドロールやクリップ等のレール締結金具(図示せず。)が通るレールRの長手方向と平行な金具挿通孔22aに連結ロッド11hを通して、レール載置箱体11の右側面側をレールRの右側のレール締結金具受部22に固定する。
【0020】
つまり、レール載置箱体11におけるレール押圧部12と締付け固定ボルト11gの反対側の右側面板は省略されており、かつ、当該反対側の前側面板11aおよび後側面板11bには貫通する貫通孔11a1,11b1が設けられている。
【0021】
そのため、本実施の形態のレール転倒防止装置1では、レール載置箱体11の左側面側は、左側面板11cに設けられたボルト孔11c2にレールRの長手方向に対し垂直方向に延びる締付け固定ボルト11gの先端部をレールRの左側のレール締結金具受部21の側面に当接して固定する一方、レール載置箱体11の右側面側では、前側面板11aおよび後側面板11bを貫通する貫通孔11a1,11b1と、右側のレール締結金具受部22の金具挿通孔22aに連結ロッド11hを通して、レール載置箱体11の右側面側をレールRの右側のレール締結金具受部22に固定する。
【0022】
その結果、本実施の形態のレール転倒防止装置1では、マクラギMへのレール載置箱体11の固定は、連結ロッド11hの挿入と締付け固定ボルト11gの締め付けで行うことが可能になり、レールRの設定替え作業時等におけるレール載置箱体11の固定作業の手間を軽減することができる。
【0023】
特に、本実施の形態のレール転倒防止装置1では、図6等に示すように、レール載置箱体11は、下側面板だけでなく、右側面板も省略されているため、レール載置箱体11をマクラギMに設置する場合には、レール載置箱体11の開放している右側面側を先頭にして横方向からレールRの左右両側の一対のレール締結金具受部21,22の上に被せることができる。その結果、レールRの設定替え作業時に、レール載置箱体11をレールRの下側に設置する場合でも、レール載置箱体11を横方向から挿入すれば済むので、レールRをそれ程高く持ち上げる必要もなくなり、この点でも、レールRの設定替え作業時等におけるレール載置箱体11の固定作業の手間を軽減することができる。
【0024】
また、本実施の形態のレール転倒防止装置1では、図1図2図6等に示すように、専用工具(図示せず。)等によって回転させる締付け作業が必要となるレール押圧部12および締付け固定ボルト11gは、レールRを中心にレール載置箱体11の同じ側である左側面板11c側に設けられる一方、その反対側である右側では連結ロッド11hの通し作業だけで締付け作業が不要となるので、この点でも、レールRの設定替え作業時等やレール載置箱体11の固定作業の手間を軽減することができる。
【0025】
なお、本実施の形態のレール転倒防止装置1では、図2や、図3図5等に示すように、レール押圧部12はレール載置箱体11の上側面板11dの端に溶接等して設けて説明したが、本発明ではこれに限らず、図8に示すようにレール押圧部12のレール押圧軸部12aの長手方向の中心線である軸線と、レール載置箱体11の締付け固定ボルト11gの長手方向の中心線である軸線とが同一鉛直線上にくるようにレール押圧部12をレール載置箱体11の上側面板11dに配置しても良いし、図8よりもレール押圧部12のレール押圧軸支持部12dの位置をわずか右側に移動させてレール押圧部12のレール押圧軸支持部12dがレール載置箱体11の上側面板11dの中央にくるように配置しても勿論良い。このようにレール押圧部12をレール載置箱体11の上側面板11dの端ではなく中央または中央に近い位置に設けると、レール押圧部12を介しレールRから受ける反力がレール載置箱体11の上側面板11dの中央または中央に近い位置で受けることになるので、レール押圧部12を介しレール転倒防止装置1がより安定した状態でレールRからの反力を受けることが可能になる。
【符号の説明】
【0026】
1 レール転倒防止装置
11 レール載置箱体
11a 前側面板
11a1 貫通孔
11b 後側面板
11b1 貫通孔
11c 左側面板
11c1 ナット
11c2 ボルト孔
11d 上側面板
11e レール案内溝部
11f レール搬送ローラー
11f1 レール搬送ローラー支持部
11g 締付け固定ボルト
11h 連結ロッド
12 レール押圧部
12a レール押圧軸部
12b 押圧ローラー
12c 押圧ローラー支持軸部
12d レール押圧軸支持部
21,22 一対のレール締結金具受部
21b レール締結金具受凹部
22a 金具挿通孔
R レール
M マクラギ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8