【実施例】
【0031】
次に、本発明に係る実施例及び比較例を用いて、本発明の連続混練機1の作用効果をさらに詳しく説明する。
実施例及び比較例は、突出部19の突端の位置を上下方向に変化させた場合に、バレル2内での材料圧力の分布状況がどのように変化するかを、コンピュータシミュレーションにより計算したものである。なお、シミュレーションは2次元モデルで行った。そのため、実際の混練では軸方向の上流側から流れ込んできた材料の粒子が排出口14から排出されるが、本シミュレーションでは、バレル2の内部に上方から材料の粒子を取り入れ、排出口14から材料の粒子が排出されるといった境界条件下で計算を行っている。
【0032】
また、シミュレーションに用いた設定条件は、材料の粒子の総流量が単位時間当たりの質量で0.00064×(r
b)
3(kg/h)、また材料の粒子の密度が750kg/m
3、さらに排出口14付近の圧力が0.25MPaで、左側の混練ロータ3が軸方向の下流側から見て時計回り、右側の混練ロータ3が反時計回りに回転するというものである。
さらに、実施例及び比較例は、以下の表1に示すような実験条件で行ったものであり、混練ロータ3として1条翼を用いるか3条翼を用いるかといった翼数や、突出部19の突出高さ(上下方向での突端の位置)、あるいは突出部19の形状といった条件がそれぞれ異っている。
【0033】
【表1】
【0034】
以下に、表1に示す実施例及び比較例の混練ロータ3を
図4(a)〜
図5(b)にそれぞれ示す。これらの連続混練機1の混練ロータ3は、いずれも突出部19を排出口14に設けたものであり、本発明の連続混練機1を示している。
具体的には、
図4(a)は、実施例1の混練ロータ3、つまり1条の排出翼13を備えた混練ロータ3であって、突出部19の突出高さが1.18r
bのものを示している。また、
図4(b)及び
図5(a)は、実施例2及び実施例3の混練ロータ3、つまり1条の排出翼13を備えた混練ロータ3であって、突出部19の突出高さが実施例1より低い0
.32r
b及び0.15r
bのものを示している。さらに、
図5(b)は、実施例4の混練ロータ3、つまり実施例1〜3と同様に1条の排出翼13を備えた混練ロータ3であるが、突出部19の形状がストレート形状のものを示している。
【0035】
次に、上述した実施例及び比較例の混練ロータを用いて混練した際に、ギヤポンプ15の入側に位置する排出路16で計測される材料圧力がどのように変動するかを経時的に計測した結果を示す。
すなわち、
図6、
図7は、ギヤポンプ15の入側に位置する排出路16で計測される材料圧力の変動(時間変動)を示したものであり、
図4(a)〜
図5(b)の各図において「丸」で示される位置で計測される圧力変動を示している。この結果も、表1に示す条件下でコンピュータシミュレーションを行って得られたものである。なお、
図6及び
図7の横軸は混練ロータ3の累積回転数から計算される混練の時間(s)を示しており、縦軸は圧力(Pa)となっている。
【0036】
図6(a)は、従来の混練機における圧力変動の経時変化を示したものである。
図6(a)における「従来例(翼なし型)」の結果と「比較例2(3翼型)」の結果に着目すると、「従来例」の圧力変動の幅と「比較例2」の圧力変動の幅とはほぼ同じである。しかし、
図6(a)の「比較例1(1翼型)」の結果と「比較例2(3翼型)」の結果とを比較すると、「比較例2(3翼型)」の圧力変動の幅に比べて「比較例1(1翼型)」の圧力変動の幅の方が、ギヤポンプ15の入側での圧力変動の幅が大きくなっている。
【0037】
ところが、
図6(b)の「比較例1(1翼型、突出部19なし)」、「実施例1(突出部19大)」〜「実施例3(突出部19小)」の結果に着目すると、「比較例1」の圧力変動の幅が2×10
5(Pa)超であるのに対して、「実施例1」の圧力変動の幅は約0.2×10
5(Pa)の範囲である。また「実施例2(突出部19中)」の圧力変動の幅は約0.5×10
5(Pa)の範囲であり、さらに「実施例3」の圧力変動の幅は約1×10
5(Pa)の範囲となっている。
【0038】
このことから、排出口14に突出部19を設けることで、ギヤポンプ15の入側での材料圧力の変動幅を1/10〜1/2程度まで低減できることが分かる。
なお、突出部19の突出長さをさらに長くすると、圧力変動を抑制する効果は高くなるものの、材料排出に必要となる圧力損失が高くなる。また、排出部7より上流の混練ロータ3の昇圧能力を低減させないために、排出部7の内径(周方向長さ)を大きくする場合があるので、これらを勘案して、突出部19の突端の位置は排出路16の上側の内周面から下方に向かってバレル2の半径r
bの1.18倍の高さを超えないことが望ましい。また、突出部19の突出長さをさらに短くすると、圧力変動の抑制効果が小さくなるので、突出部19の突端の位置は混練ロータ3の軸心から下方に向かってバレル2の半径r
bの0.15倍の高さより大きくすることが望ましい。
【0039】
さらに、突出部19の突出長さを長くする場合には、突出部19に厚みを持たせて、機械的な強度を上げておくのが好ましい。
以上の実施例1〜実施例3の比較から、突出部19の突端の位置は、排出路16の上側の内周面から下方に向かって、バレル2の半径r
bの0.15倍〜11.18倍の高さ(排出路16の排出方向に向かって投影した高さ)に配備するのが良いと判断される。
【0040】
さらに、このような突出部19を排出口14に設けると、バレル2内で大幅に圧力変動が抑制され、突出部19を設けない場合よりギヤポンプ15の回転数の変動を抑えられることが確認された。以上のことより、上述した突出部19を排出口14に設けることで、ギヤポンプ15の入側での材料の圧力の変動を抑制して、安定して混練を行うことができると判断される。
【0041】
次に、
図7(a)を用いて、排出翼13が1翼の場合における、突出部19の形状と圧力変動との関係を説明する。
図7(a)は、「実施例3(突出部 小、湾曲)」及び「実施例4(突出部 小、ストレート)」の混練ロータ3をそれぞれ用いた場合における、圧力変動の経時変化を示したものである。
【0042】
図7(a)における「実施例4」の結果に着目すると、突出部19が下方に向かって直
線的(ストレート)に伸びる「実施例4」では、突出部19が湾曲した「実施例3」に比べて圧力変動の幅は非常に小さくなっており、突出部19をストレート形状とすることでより効果的に圧力変動を抑えることができると判断される。これは、突出部19をストレート形状とすると、突出部19の位置がギヤポンプ15側に近接し、ギヤポンプ15の回転数制御に用いられる圧力センサに突出部19が近接するようになるため、圧力変動の効果がより顕著に現れた為であると考えられる。
【0043】
ところで、
図7(b)は、3翼の混練ロータ3を用いた場合における、突出部19の有無の影響を調べたものである。
図7(b)の結果を見ると、「比較例2(3翼型、突出部なし)」の材料圧力の変動幅に比べて、「実施例5(突出部 大)」の材料圧力の変動幅の方が小さくなっている。このことから、排出部7における1翼の混練ロータ3に対して効果的であった突出部19(邪魔板)は、3翼の混練ロータ3においても、効果的に作用することがわかる。
【0044】
上述した実施例及び比較例の結果を、
図8にまとめて示す。
図8は、突出部19の高さに対する圧力変動幅の変化を、実施例と比較例とで比較したものである。
図8において黒塗りの菱形で示される「噛合い1翼」の結果を見ると、「突出部の高さ」が大きくなるにつれて、「材料圧力の変動幅」が小さくなることが分かる。特に、「突出部の高さ」が0.15r
bの「実施例3」の結果に着目すると、図中に点線で示す「比較例2(3翼型、突出部なし、図中では接線の凡例で示す)」の混練時の材料圧力の変動とほぼ同等となっていて、「突出部の高さ」を0.15r
b以上とすることにより混練時の材料圧力の変動を従来のものよりさらに抑制できることが分かる。
【0045】
さらに、突出部19の形状がストレートの「実施例4」や3翼型で突出部19を有する「実施例5」でも、比較例2に比して良好な圧力変動の抑制効果が確認されており、突出部19を設けておけば突出部の形状や翼の数などによらず圧力変動が抑制できることがわかる。
なお、上述したような圧力変動の抑制効果は、突出部19の形状を板状ではなく、逆三角形状や半円形状としても同様に発揮されることを、本願発明者らは確認している。
【0046】
以上述べたように、混練機において、排出部7に対応したバレル2に、このバレル2から排出される材料に加わる圧力の変動を抑制する圧力変動抑制部(突出部19)を設けることで、ギヤポンプ15の入側での材料の圧力の変動を抑制して、安定して混練を行うことができる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。