特許第5980761号(P5980761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980761
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】連続混練機
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/48 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   B29B7/48
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-234951(P2013-234951)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-93446(P2015-93446A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 紗矢香
(72)【発明者】
【氏名】山口 和郎
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−183210(JP,A)
【文献】 特開昭58−119808(JP,A)
【文献】 特開昭63−194904(JP,A)
【文献】 特開昭61−266206(JP,A)
【文献】 特開平10−006330(JP,A)
【文献】 特開平06−039833(JP,A)
【文献】 特開平11−291327(JP,A)
【文献】 特開平07−137092(JP,A)
【文献】 特開2015−093446(JP,A)
【文献】 特開昭51−137966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B7/00−7/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が空洞とされたバレルと、当該バレルに収容された一対の混練ロータとを備え、これら一対の混練ロータが異なる回転方向に向かって噛み合い状態で回転する連続混練機であって、
前記バレル内には、前記混練ロータの軸方向に沿って、材料を供給するフィード部、材料を混練する混練部、混練された材料をバレル外に排出する排出部が順に設けられており、
前記排出部に対応したバレルに、このバレルから排出される材料に加わる圧力の変動を抑制する圧力変動抑制部が設けられていて、
前記排出部には、前記バレル内の材料をバレル外に案内する排出路と、前記排出路の経路途中に設けられて材料を吸い出すギヤポンプとが設けられており、
前記圧力変動抑制部は、前記排出路の内周面から下方に向かって突出する突出部を有していることを特徴とする連続混練機。
【請求項2】
前記突出部の突端が、前記排出路の排出方向に向かって投影した場合の高低位置で、前記排出路の上側の内周面から下方に向かって、前記バレルの半径rの0.15倍〜1.18倍の高さに配備されていることを特徴とする請求項に記載の連続混練機。
【請求項3】
前記排出部に位置する混練ロータが、周方向に1条の排出翼を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の連続混練機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異方向に回転する混練ロータを用いて樹脂材料の混練を行う連続混練機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、連続混練機は、水平方向に沿って長尺に形成された筒状のバレルと、このバレルの内部に挿入されて材料を混練する一対の混練ロータとを備えている。
連続混練機では、上述したバレルの長手方向の一方側に高分子樹脂のペレットや粉状の添加物などの材料を供給するフィード部が設けられており、フィード部に供給された材料は長手方向の中途側に設けられた混練部に送られる。混練部では、一対の混練ロータ間で材料にせん断力を付与しながら混練が行われ、混練後の材料は長手方向の他方側に設けられた絞り部(混練度調整部)に送られる。絞り部では材料の内圧が高められる。
【0003】
このようにして、絞り部で内圧が高められた材料は絞り部のさらに下流側に位置する排出部から連続混練機の外部に排出される。そして、特許文献1や特許文献2に示すように、排出部では材料を例えばバレルの下方に引き出し、引き出された材料をギヤポンプなどで昇圧してからペレタイザなどに送っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−6330号公報
【特許文献2】特開平11−291327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した連続混練機の中には、排出部での材料の内圧が高くなった場合にギヤポンプの回転数(運転速度)を上げて排出部からの排出能力を大きくし、また内圧が低くなった場合にギヤポンプの回転数を下げて排出能力を小さくするといった制御を行うものがある。通常は排出部における材料の内圧は安定しているので、このような連続混練機を運転させても、ギヤポンプの回転数が短時間で大きく変動することは起こり得ない。
【0006】
しかし、混練ロータの翼形状を特殊なものにした場合には、排出部での材料の内圧が短時間で変動する場合があり、このような場合はギヤポンプの回転数も短時間で大きく変動する。例えば、材料のスムーズな排出を意図し、排出部の混練ロータに1条翼のものを採用すると、排出部での材料の内圧が大きく変動し、ギヤポンプの回転数にハンチングが起きやすくなる。このようなギヤポンプの回転数におけるハンチングは、設備にとって過大な負荷となるので好ましくない。
【0007】
また、ギヤポンプの回転数は、ギアポンプの下流側に位置するペレタイザに供給される材料の供給速度に対応している。そのため、ギヤポンプの回転数が変動すると、ペレタイザのダイにおける材料の押出速度も変化することになり、ペレタイザでカットされるペレットサイズに大きなムラが生じることになる。そのため、上述した特許文献1、2の連続混練機では、ペレットの品質を安定して維持できないという問題もある。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、バレルから排出される材料の圧力の変動を抑制して、安定して混練を行うことができる連続混練機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の連続混練機は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の連続混練機は、内部が空洞とされたバレルと、当該バレルに収容された一対の混練ロータとを備え、これら一対の混練ロータが異なる回転方向に向かって噛み合い状態で回転する連続混練機であって、前記バレル内には、前記混練ロータの軸方向に沿って、材料を供給するフィード部、材料を混練する混練部、混練された材料をバレル外に排出する排出部が順に設けられており、前記排出部に対応したバレルに、このバレルから排出される材料に加わる圧力の変動を抑制する圧力変動抑制部が設けられていて、前記排出部には、前記バレル内の材料をバレル外に案内する排出路と、前記排出路の経路途中に設けられて材料を吸い出すギヤポンプとが設けられており、前記圧力変動抑制部は、前記排出路の内周面から下方に向かって突出する突出部を有していることを特徴とする。
【0010】
お、好ましくは、前記突出部の突端が、前記排出路の排出方向に向かって投影した場合の高低位置で、前記排出路の上側の内周面から下方に向かって、前記バレルの半径rの0.15倍〜1.18倍の高さに配備されているとよい。
【0011】
なお、好ましくは、前記排出部に位置する混練ロータが、周方向に1条の排出翼を備えているとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の連続混練機によれば、バレルから排出される材料の圧力の変動を抑制して、安定して混練を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る連続混練機の正面断面図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3】(a)は排出部の混練ロータの斜視図、(b)は排出部の混練ロータの正面図、(c)は排出部の混練ロータの断面図である。
図4】(a)は実施例1の連続混練機の混練部を示した図であり、(b)は実施例2の連続混練機の混練部を示した図である。
図5】(a)は実施例3の連続混練機の混練部を示した図であり、(b)は実施例4の連続混練機の混練部を示した図である。
図6】(a)は排出部での材料圧力の変動状態を、従来例、比較例1及び比較例2で比較したグラフであり、(b)は排出部での材料圧力の変動状態を、比較例1及び実施例1〜実施例3で比較したグラフである。
図7】(a)は排出部での材料圧力の変動状態を、実施例3及び実施例4で比較したグラフであり、(b)は排出部での材料圧力の変動状態を、実施例5及び比較例2で比較したグラフである。
図8】突出部の高さに対する圧力変動幅の関係を、実施例と比較例とで比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る連続混練機1の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1及び図2は、本発明の連続混練機1の実施形態を示している。
図1及び図2に示すように、本実施形態の連続混練機1は、内部が空洞に形成されたバレル2と、バレル2の内部を軸心方向に沿って挿通する一対の混練ロータ3、3とを有している。連続混練機1では、一対の混練ロータ3、3は互いに異方向に向かって噛み合い状態で回転しており、一対の混練ロータ3、3間で樹脂などの材料を混練を行う構成とされている。
【0015】
なお、以降の説明において、図1の紙面の左側を連続混練機1を説明する際の上流側とし、紙面の右側を下流側とする。また、図1の紙面の左右方向を連続混練機1を説明する際の軸方向とする。
図1及び図2に示すように、バレル2は軸方向に沿って長い筒状に形成されており、その内部は軸垂直方向の断面がめがね形状(2つの円が円周の一部同士を交差させるようにして互いに重なり合った形状)とされた空洞となっている。バレル2は、上流側から軸方向に沿って複数(図例では4つ)の部分に分かれている。これら4つの部分は、上流側から順に、材料を供給するフィード部4、材料を混練する混練部5、材料の内圧を高める絞り部6、材料をバレル2外に排出する排出部7とされている。
【0016】
フィード部4は、バレル2の内外を連通するように上方に向かって開口した材料供給口8を備えている。この材料供給口8は、バレル2の上側の壁面を上下に貫通するように形成されており、バレル2内に材料を供給できるようになっている。また、材料供給口8に
は、材料を投入しやすくするために、上方に向かって漏斗状に広がるホッパ9が設けられている。
【0017】
混練部5は、バレル2の軸方向の中途側、正確にはフィード部4の下流側に設けられた部分である。この混練部5に対応した位置の混練ロータ3には後述する混練フライト10が用いられており、混練部5はフィード部4からバレル2内に供給された材料を混練フライト10を用いて混練する部分となっている。
絞り部6は、混練部5のさらに下流側に配備された部分であり、混練部5から排出部7に向かって流れる材料を滞留させて材料の混練度を調整する機能を備えている。絞り部6は、バレル2内を流通する材料の流れを遮断したり変化させたりすることができるゲート部材11を備えており、ゲート部材11で材料の流通速度を変化させることで混練度を調整できるようになっている。この絞り部6のさらに下流側、言い換えればバレル2の最も下流側には、混練された材料をバレル2の外部に排出する排出部7が設けられている。なお、排出部7については、後ほど詳しく述べる。
【0018】
混練ロータ3は、上述したバレル2の内部を挿通するように左右一対設けられている。各混練ロータ3は、それぞれの回転中心がバレル2の空洞をなす上記した2つの円の各中心と一致するように設けられている。各混練ロータ3は、バレル2の軸方向両端のさらに外側でそれぞれ軸受により支持されている。一対の混練ロータ3、3は、上述したフィード部4、混練部5、排出部7のそれぞれに対応して、互いに機能が異なる複数種のフライトを軸方向に備えている。
【0019】
すなわち、フィード部4には螺旋状にねじれた翼形を利用して材料を下流側に送り出すスクリュフライト12が設けられており、また混練部5には材料にせん断力を付与することで材料を混練する混練フライト10が設けられており、さらに絞り部6には混練部5で混練された材料をバレル2外に排出する排出翼13が設けられている。
図2は、図1の連続混練機1を排出部7の位置で切断した断面図(A−A線断面図)である。
【0020】
図2に示すように、排出部7は、バレル2の最も下流側の端部に設けられた部分であり、上流側から軸方向に沿って流れてきた混練済みの材料を、軸垂直方向に向かって流動方向を略垂直に曲げつつ案内して、材料をバレル2外に排出するものとなっている。具体的には、排出部7の混練ロータ3には、上述したようにバレル2内の材料を排出する排出翼13が設けられている。また、排出部7と軸方向に対応したバレル2の下側の外周壁には排出口14が形成されており、排出部7では混練ロータ3の排出翼13でバレル2内の材料を掻き出しつつ排出口14を介して材料をバレル2外に取り出すことができるようになっている。
【0021】
図3に示すように、排出翼13は、いずれも周方向に1条とされている。これらの排出翼13は、一方の混練ロータ3の排出翼13と、他方の混練ロータ3の排出翼13とが互いに接触しない程度の位相差(例えば、一対の排出翼13が互いに干渉しない程度の位相差δinterfere〜90°の範囲であって、できる限りδinterfereに近い値)をあけて回転するようになっている。
【0022】
また、上述した排出口14は、バレル2内の材料を排出口14からギヤポンプ15に向かって案内する排出路16に接続されている。この排出路16の経路途中には、材料を吸い出すギヤポンプ15が設けられている。さらに、ギヤポンプ15より先の排出部7には、ギヤポンプ15から圧送されてきた材料から異物を除去するスクリーンチェンジャ17と、スクリーンチェンジャ17で異物が除去された材料を粒状のペレットに加工するペレタイザ18とが設けられている。
【0023】
上述したギヤポンプ15は、排出部7における材料の内圧が高くなった場合に、ギヤの回転数(運転速度)を上げて材料の排出速度(排出能力)を大きくし、また材料の内圧が低くなった場合にギヤの回転数を下げて材料の排出速度を小さくするといった制御を伴うものとなっている。また、ギヤポンプ15の入側に位置する排出路16には、この排出路16を流通する材料の圧力を計測可能な圧力センサ(図示略)が設けられており、ギヤポンプ15は、圧力センサで計測された圧力に応じてギヤポンプ15の回転数を上下させる
よう制御されている。そのため、排出部7のバレル2内で材料圧力が変動した場合に、この圧力変動を圧力センサが検知すると、ギヤポンプ15の回転数が圧力変動に合わせて大きく変動する。
【0024】
つまり、バレル2内で材料圧力が短時間で大きく変動すると、ギヤポンプ15の回転数が大きく変動して運転の安定性が損なわれる可能性も高くなる。そこで、本発明の連続混練機1では、このバレル2から排出される材料に加わる圧力の変動を抑制する圧力変動抑制部(突出部19)を設けており、この圧力変動抑制部を備えることが本発明の連続混練機1の特徴となっている。
【0025】
次に、本発明の連続混練機1の特徴である圧力変動抑制部について説明する。
圧力変動抑制部は、バレル2から排出される材料に加わる材料圧力の変動を抑制するものであり、本実施形態ではバレル2に設けられた突出部19から形成されている。
この突出部19は、バレル2内の材料をバレル2外に案内する排出路16が流路面積が小さくなるように排出路16の一部を塞ぐものであり、バレル2内での材料の圧力変動が排出路16(正確には、排出路16に設けられることが多い圧力センサ)に直接伝わらないようにしている。言い換えれば、この突出部19は、バレル2内での圧力変動が排出路16の圧力センサに直接伝達(影響)しないように、排出路16に設けられた「邪魔板」ということもできる。
【0026】
次に、本発明の特徴である圧力変動抑制部について、図4及び図5を用いて、詳しく説明する。
なお、図4及び図5は、突出部19の突端の位置、言い換えれば突出部19の突出長さを上下方向に変化させた場合に、バレル2内での圧力分布がどのように変化するかを示したものである。なお、図4及び図5の例ではいずれも突出部19の突端が排出路16の上側の内周面よりも下側に配置されるように突出しており、図4(a)に示す圧力変動抑制部(後述する実施例1に対応)はこの突端が排出路16の上側の内周面を基準としてバレル半径rの1.18倍に位置した例となっている。また、図4(b)に示す圧力変動抑制部(後述する実施例2)は、突出部19の突端が排出路16の上側の内周面からバレル半径rの0.32倍の範囲に位置した例である。さらに、図5(a)に示す圧力変動抑制部(後述する実施例3)は、突出部19の突端が排出路16の上側の内周面からバレル半径rの0.15倍に位置した例であり、図5(b)に示す圧力変動抑制部(後述する実施例4)は、突端の突出量は図5(a)と同じであるが、突出部19の形状が図5(a)と異なる形状とされた例である。
【0027】
まず、図4(a)に示す圧力変動抑制部を例に上げて、本実施形態の圧力変動抑制部を説明する。
図4(a)に斜線で囲まれた部分として示すように、本発明の圧力変動抑制部は、排出路16の内周面から下方に向かって突出する突出部19を有している。この突出部19は、軸垂直方向に沿って伸びる排出路16の中でも、上述した排出口14とギヤポンプ15との間、より正確にはバレル2内に開口する排出口14の開口縁に沿って配備されている。
【0028】
具体的には、上述した排出口14は、軸垂直方向に沿った断面上で、左側の混練ロータ3のさらに左側に位置するバレル2の内周壁から、右側の混練ロータ3の下方に位置するバレル2の内周壁までの範囲を開口に亘って形成されている。そして、上述した突出部19は、基端が排出口14の開口縁のうち左側の開口縁に接すると共に、先端が左側の混練ロータ3の軸心下方に位置しており、左側の開口縁から右下方方向に向かって突出している。つまり、突出部19は、排出口14の開口の半分程度を閉鎖して、突出部19が設けられていない箇所に比べて排出路16の流路面積を小さくできるようになっている。このような突出部19を設ければ排出路16の開口面積を狭めることができ、開口面積が狭くなった分だけバレル2内で起こった圧力の変動がギヤポンプ15側に伝達し難くなる。
【0029】
また、突出部19の長手方向の中途側は、バレル2の内周面に沿うように円弧状に湾曲していて、突出部19は排出翼13の回転を阻害しないような形状となっている。
特に、上述したように突出部19を左側の開口縁に設ければ、排出翼13とギヤポンプ
15との間に突出部19が位置するようになり、突出部19を回り込むように迂回しなければバレル2内で起こった材料圧力がギヤポンプ15側に伝達しなくなり、バレル2内での材料圧力の変動がギヤポンプ15側に影響しにくくなる。
【0030】
なお、上述した突出部19を設ける場合は、突出部19の突端の位置、言い換えれば突出部19の突出長さにより圧力変動の抑制効果が変化する。そこで、本発明の連続混練機1では、突出部19の突端が排出方向へ投影した際に、排出路16の上側の内周面から下方に向かって、排出路16の上側の内周面からバレル半径rの0.15倍〜1.18倍の範囲に位置するようにしている。このような範囲に突端が位置するよう突出部19を突出させれば、バレル2内で起こった材料圧力の変動がギヤポンプ15側に伝達し難くなり、ギヤポンプ15側に材料圧力の変動が影響しにくくなる。その結果、ギヤポンプ15の回転数(運転速度)の変動が抑制され、ペレタイザに対する材料供給の速度が一定となって、ペレタイザなどで長さが揃ったペレットを安定して生産することが可能となる。
【実施例】
【0031】
次に、本発明に係る実施例及び比較例を用いて、本発明の連続混練機1の作用効果をさらに詳しく説明する。
実施例及び比較例は、突出部19の突端の位置を上下方向に変化させた場合に、バレル2内での材料圧力の分布状況がどのように変化するかを、コンピュータシミュレーションにより計算したものである。なお、シミュレーションは2次元モデルで行った。そのため、実際の混練では軸方向の上流側から流れ込んできた材料の粒子が排出口14から排出されるが、本シミュレーションでは、バレル2の内部に上方から材料の粒子を取り入れ、排出口14から材料の粒子が排出されるといった境界条件下で計算を行っている。
【0032】
また、シミュレーションに用いた設定条件は、材料の粒子の総流量が単位時間当たりの質量で0.00064×(r)(kg/h)、また材料の粒子の密度が750kg/m3、さらに排出口14付近の圧力が0.25MPaで、左側の混練ロータ3が軸方向の下流側から見て時計回り、右側の混練ロータ3が反時計回りに回転するというものである。
さらに、実施例及び比較例は、以下の表1に示すような実験条件で行ったものであり、混練ロータ3として1条翼を用いるか3条翼を用いるかといった翼数や、突出部19の突出高さ(上下方向での突端の位置)、あるいは突出部19の形状といった条件がそれぞれ異っている。
【0033】
【表1】
【0034】
以下に、表1に示す実施例及び比較例の混練ロータ3を図4(a)〜図5(b)にそれぞれ示す。これらの連続混練機1の混練ロータ3は、いずれも突出部19を排出口14に設けたものであり、本発明の連続混練機1を示している。
具体的には、図4(a)は、実施例1の混練ロータ3、つまり1条の排出翼13を備えた混練ロータ3であって、突出部19の突出高さが1.18rのものを示している。また、図4(b)及び図5(a)は、実施例2及び実施例3の混練ロータ3、つまり1条の排出翼13を備えた混練ロータ3であって、突出部19の突出高さが実施例1より低い0
.32r及び0.15rのものを示している。さらに、図5(b)は、実施例4の混練ロータ3、つまり実施例1〜3と同様に1条の排出翼13を備えた混練ロータ3であるが、突出部19の形状がストレート形状のものを示している。
【0035】
次に、上述した実施例及び比較例の混練ロータを用いて混練した際に、ギヤポンプ15の入側に位置する排出路16で計測される材料圧力がどのように変動するかを経時的に計測した結果を示す。
すなわち、図6図7は、ギヤポンプ15の入側に位置する排出路16で計測される材料圧力の変動(時間変動)を示したものであり、図4(a)〜図5(b)の各図において「丸」で示される位置で計測される圧力変動を示している。この結果も、表1に示す条件下でコンピュータシミュレーションを行って得られたものである。なお、図6及び図7の横軸は混練ロータ3の累積回転数から計算される混練の時間(s)を示しており、縦軸は圧力(Pa)となっている。
【0036】
図6(a)は、従来の混練機における圧力変動の経時変化を示したものである。図6(a)における「従来例(翼なし型)」の結果と「比較例2(3翼型)」の結果に着目すると、「従来例」の圧力変動の幅と「比較例2」の圧力変動の幅とはほぼ同じである。しかし、図6(a)の「比較例1(1翼型)」の結果と「比較例2(3翼型)」の結果とを比較すると、「比較例2(3翼型)」の圧力変動の幅に比べて「比較例1(1翼型)」の圧力変動の幅の方が、ギヤポンプ15の入側での圧力変動の幅が大きくなっている。
【0037】
ところが、図6(b)の「比較例1(1翼型、突出部19なし)」、「実施例1(突出部19大)」〜「実施例3(突出部19小)」の結果に着目すると、「比較例1」の圧力変動の幅が2×10(Pa)超であるのに対して、「実施例1」の圧力変動の幅は約0.2×10(Pa)の範囲である。また「実施例2(突出部19中)」の圧力変動の幅は約0.5×10(Pa)の範囲であり、さらに「実施例3」の圧力変動の幅は約1×10(Pa)の範囲となっている。
【0038】
このことから、排出口14に突出部19を設けることで、ギヤポンプ15の入側での材料圧力の変動幅を1/10〜1/2程度まで低減できることが分かる。
なお、突出部19の突出長さをさらに長くすると、圧力変動を抑制する効果は高くなるものの、材料排出に必要となる圧力損失が高くなる。また、排出部7より上流の混練ロータ3の昇圧能力を低減させないために、排出部7の内径(周方向長さ)を大きくする場合があるので、これらを勘案して、突出部19の突端の位置は排出路16の上側の内周面から下方に向かってバレル2の半径rの1.18倍の高さを超えないことが望ましい。また、突出部19の突出長さをさらに短くすると、圧力変動の抑制効果が小さくなるので、突出部19の突端の位置は混練ロータ3の軸心から下方に向かってバレル2の半径rの0.15倍の高さより大きくすることが望ましい。
【0039】
さらに、突出部19の突出長さを長くする場合には、突出部19に厚みを持たせて、機械的な強度を上げておくのが好ましい。
以上の実施例1〜実施例3の比較から、突出部19の突端の位置は、排出路16の上側の内周面から下方に向かって、バレル2の半径rの0.15倍〜11.18倍の高さ(排出路16の排出方向に向かって投影した高さ)に配備するのが良いと判断される。
【0040】
さらに、このような突出部19を排出口14に設けると、バレル2内で大幅に圧力変動が抑制され、突出部19を設けない場合よりギヤポンプ15の回転数の変動を抑えられることが確認された。以上のことより、上述した突出部19を排出口14に設けることで、ギヤポンプ15の入側での材料の圧力の変動を抑制して、安定して混練を行うことができると判断される。
【0041】
次に、図7(a)を用いて、排出翼13が1翼の場合における、突出部19の形状と圧力変動との関係を説明する。
図7(a)は、「実施例3(突出部 小、湾曲)」及び「実施例4(突出部 小、ストレート)」の混練ロータ3をそれぞれ用いた場合における、圧力変動の経時変化を示したものである。
【0042】
図7(a)における「実施例4」の結果に着目すると、突出部19が下方に向かって直
線的(ストレート)に伸びる「実施例4」では、突出部19が湾曲した「実施例3」に比べて圧力変動の幅は非常に小さくなっており、突出部19をストレート形状とすることでより効果的に圧力変動を抑えることができると判断される。これは、突出部19をストレート形状とすると、突出部19の位置がギヤポンプ15側に近接し、ギヤポンプ15の回転数制御に用いられる圧力センサに突出部19が近接するようになるため、圧力変動の効果がより顕著に現れた為であると考えられる。
【0043】
ところで、図7(b)は、3翼の混練ロータ3を用いた場合における、突出部19の有無の影響を調べたものである。
図7(b)の結果を見ると、「比較例2(3翼型、突出部なし)」の材料圧力の変動幅に比べて、「実施例5(突出部 大)」の材料圧力の変動幅の方が小さくなっている。このことから、排出部7における1翼の混練ロータ3に対して効果的であった突出部19(邪魔板)は、3翼の混練ロータ3においても、効果的に作用することがわかる。
【0044】
上述した実施例及び比較例の結果を、図8にまとめて示す。
図8は、突出部19の高さに対する圧力変動幅の変化を、実施例と比較例とで比較したものである。図8において黒塗りの菱形で示される「噛合い1翼」の結果を見ると、「突出部の高さ」が大きくなるにつれて、「材料圧力の変動幅」が小さくなることが分かる。特に、「突出部の高さ」が0.15rの「実施例3」の結果に着目すると、図中に点線で示す「比較例2(3翼型、突出部なし、図中では接線の凡例で示す)」の混練時の材料圧力の変動とほぼ同等となっていて、「突出部の高さ」を0.15r以上とすることにより混練時の材料圧力の変動を従来のものよりさらに抑制できることが分かる。
【0045】
さらに、突出部19の形状がストレートの「実施例4」や3翼型で突出部19を有する「実施例5」でも、比較例2に比して良好な圧力変動の抑制効果が確認されており、突出部19を設けておけば突出部の形状や翼の数などによらず圧力変動が抑制できることがわかる。
なお、上述したような圧力変動の抑制効果は、突出部19の形状を板状ではなく、逆三角形状や半円形状としても同様に発揮されることを、本願発明者らは確認している。
【0046】
以上述べたように、混練機において、排出部7に対応したバレル2に、このバレル2から排出される材料に加わる圧力の変動を抑制する圧力変動抑制部(突出部19)を設けることで、ギヤポンプ15の入側での材料の圧力の変動を抑制して、安定して混練を行うことができる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0047】
1 連続混練機
2 バレル
3 混練ロータ
4 フィード部
5 混練部
6 絞り部
7 排出部
8 材料供給口
9 ホッパ
10 混練フライト
11 ゲート部材
12 スクリュフライト
13 排出翼
14 排出口
15 ギヤポンプ
16 排出路
17 スクリーンチェンジャ
18 ペレタイザ
19 突出部
図1
図2
図4
図5
図3
図6
図7
図8