特許第5980777号(P5980777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980777
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】電気ユニット付きホイール
(51)【国際特許分類】
   B60K 7/00 20060101AFI20160818BHJP
   A61G 5/04 20130101ALI20160818BHJP
【FI】
   B60K7/00
   A61G5/04 702
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-512935(P2013-512935)
(86)(22)【出願日】2011年6月3日
(65)【公表番号】特表2013-533822(P2013-533822A)
(43)【公表日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】EP2011059189
(87)【国際公開番号】WO2011151439
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2014年5月15日
(31)【優先権主張番号】61/351,153
(32)【優先日】2010年6月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】PA201070242
(32)【優先日】2010年6月3日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】512312277
【氏名又は名称】ノルディクト・アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】NORDICT A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・メイナス
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−116888(JP,A)
【文献】 特開2002−085474(JP,A)
【文献】 米国特許第05477935(US,A)
【文献】 登録実用新案第3023238(JP,U)
【文献】 特開平11−313857(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3078273(JP,U)
【文献】 特開2006−175902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 7/00
A61G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動機器を移動させるための電気ホイールであって、
上記移動機器に直接取り付けられるべき一端から中心線に沿って延在するハブと、上記ハブが回転の軸を形成するように上記ハブの周りに回転可能なリムと、上記ハブと上記リムとの間にトルクを提供するように配置された電気ユニットとを備え
− 上記リムは、円形の底部と開口との間で延在する側壁をもつコンパートメントを形成し、
− 上記ハブは、上記一端から、上記円形の底部内で中心に位置するサスペンションを通して延在するとともに、上記コンパートメントの内部で自由端で終端し、
− 上記電気ユニットは、上記ハブに対して上記中心線の方向に連なって上記コンパートメント内に位置するとともに、上記ハブの上記自由端に片持ち梁式に固定され、
上記ホイールは、上記電気ユニットから上記リムへ上記トルクを伝達するためのトランスミッションを備え、上記トランスミッションは上記ハブの周りの上記コンパートメント内に配置され、かつ、上記トランスミッションは上記底部と上記電気ユニットとの間に位置している電気ホイール。
【請求項2】
請求項1に記載の電気ホイールにおいて、
上記電気ユニットは、上記ハブに対して上記リムを移動させることができるモータとして構成されていることを特徴とする電気ホイール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気ホイールにおいて、
上記電気ユニットは、上記ハブに対する上記リムの移動があると電気エネルギを生成できるジェネレータとして構成されていることを特徴とする電気ホイール。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載の電気ホイールにおいて、
上記トランスミッションは、第1および第2の駆動ホイールと、ベルトとを備え、上記第1の駆動ホイールは上記電気ユニットによって駆動され、上記第2の駆動ホイールは上記ベルトを介して上記第1の駆動ホイールによって駆動されることを特徴とする電気ホイール。
【請求項5】
請求項4に記載の電気ホイールにおいて、
上記リムは上記第2の駆動ホイールを運ぶための座を備えることを特徴とする電気ホイール。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載の電気ホイールにおいて、
上記電気ユニットは、ロータ軸の周りに回転可能な出力軸を有し、上記ロータ軸は上記ハブと非平行であることを特徴とする電気ホイール。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の電気ホイールにおいて、
上記トランスミッションのシステムは、上記電気ユニットから上記リムへトルク伝達を選択的に接続および遮断するための結合装置を備えることを特徴とする電気ホイール。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一つに記載の電気ホイールにおいて、
上記電気ユニットは、外部電源から電気的な駆動力を受けるための電力結合要素を備えることを特徴とする電気ホイール。
【請求項9】
請求項8に記載の電気ホイールにおいて、
上記電気ユニットは上記ハブを通してワイヤによって上記外部電源に接続されていることを特徴とする電気ホイール。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一つに記載の電気ホイールを組み立てるための要素のキット。
【請求項11】
請求項10に記載のキットにおいて、
上記ハブと上記リムは、手によって操作可能な要素の使用によって取り外し可能に接続されることを特徴とするキット。
【請求項12】
請求項10または11に記載のキットにおいて、
上記リムは、このリムと一体に形成され、かつ上記ハブの周りの上記リムの懸架のために上記ハブを受けることが可能な軸受を備えることを特徴とするキット。
【請求項13】
請求項10から12までのいずれか一つに記載のキットにおいて、
上記トランスミッションは、第1および第2の駆動ホイールと、ベルトとを備え、上記第1の駆動ホイールは上記電気ユニットによって駆動され、上記第2の駆動ホイールは上記ベルトを介して上記第1の駆動ホイールによって駆動され、
上記リムは座を有し、この座の上に上記第2の駆動ホイールがスライド可能であり、それによって、上記第2の駆動ホイールと上記リムとが、互いに相対的な回転に対してロックされることを特徴とするキット。
【請求項14】
請求項13に記載のキットにおいて、
上記第2の駆動ホイールは、上記座に対する上記中心線に沿った上記第2の駆動ホイールの移動によって上記座の上にスライドできることを特徴とするキット。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一つに記載の電気ホイールを備えた移動機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気的な多目的の駆動ホイールに関する。そのホイールは、様々なカート、ゴルフトロリー、自転車、車椅子、小さな乗り物、手押し車などの種々様々の移動機器に搭載するのに適している。
【背景技術】
【0002】
それゆえ、先行技術の中で、様々なホイールおよび駆動装置は提案されてきた。EP−A−1350652に、そのようなホイールおよび駆動装置が開示されている。それは、回転軸を形成する周囲リムを有する、モータ化された駆動ホイールを開示する。そのホイールシステムは、さらに、駆動力を生成するための電気モータを有する。そのモータは、モータ軸のまわりで回転可能な出力軸を有する。モータから周囲リムへ上記駆動力を伝達するためのトランスミッションシステムが設けられている。より具体的には、上記ホイールを進めるために上記リムに上記モータの駆動力を加えるように、上記モータの出力軸は、上記ホイールの歯付き内周部分に係合する歯車を備えている。上記モータ軸は上記リムの回転軸と実質的に平行になっている。上記ホイールは、上記モータおよび複数のバッテリ(それは上記モータに電力を供給する)を収容するハウジングを形成している。
【0003】
そのようなホイールシステムは、上記モータの長手方向寸法が上記ホイールの幅によって制限され、その結果、上記モータで生成可能な力に上限が設けられる、という欠点に苦しむことが分かってきた。
【発明の概要】
【0004】
改善された駆動ホイールを提供することは、本発明の好ましい実施形態の目的である。
【0005】
そこで、第1の局面では、本発明は、
移動機器を移動させるための電気ホイールであって、
上記移動機器に直接取り付けられるべき一端から中心線に沿って延在するハブと、上記ハブが回転の軸を形成するように上記ハブの周りに回転可能なリムと、上記ハブと上記リムとの間にトルクを提供するように配置された電気ユニットとを備え
− 上記リムは、円形の底部と開口との間で延在する側壁をもつコンパートメントを形成し、
− 上記ハブは、上記一端から、上記円形の底部内で中心に位置するサスペンションを通して延在するとともに、上記コンパートメントの内部で自由端で終端し、
− 上記電気ユニットは、上記ハブに対して上記中心線の方向に連なって上記コンパートメント内に位置するとともに、上記ハブの上記自由端に片持ち梁式に固定され、
上記ホイールは、上記電気ユニットから上記リムへ上記トルクを伝達するためのトランスミッションを備え、上記トランスミッションは上記ハブの周りの上記コンパートメント内に配置され、かつ、上記トランスミッションは上記底部と上記電気ユニットとの間に位置しているものを提供する。
【0006】
上記ハブは上記電気ホイールの中心線に沿って位置する。使用において、上記ホイールは、上記ハブに対する上記リムの回転によって、例えば様々なカート、ゴルフトロリー、自転車、車椅子、小さな乗り物、手押し車などの目的物の移動を引き起こす。
【0007】
上記リムは、円形の底部と開口の間に延在する側壁をもつコンパートメントを形成し、それによって、シリンダに広がっている。上記底部は閉じられる必要がなく、1つ以上の開口を備えることができる、ということが理解されるべきである。一例として、上記底部は、スポークをもつ開いた底部として提供されてもよい。上記リムの側壁は、上記ホイールの周囲の外表面を形成してもよい。しかしながら、上記ホイールは、上記リムの外表面の周りに取り付けられたタイヤをさらに備えてもよい。
【0008】
上記円形の底部内で中心に、サスペンションが設けられる。上記ハブは、移動機器に直接取り付けられるべき一端からそのサスペンションを通して延在し、上記コンパートメントの内部で自由端で終端する。
【0009】
単純な実施形態では、そのサスペンションは、上記底部内で中心に、開口の形態にあってもよい。その開口を通して上記ハブが延在する。
【0010】
上記電気ユニットは、例えばモータ、ジェネレータ、または両方の組合せであってもよい。
【0011】
上記電気ユニットは、ハブとリムの間にトルクを提供することができる。それによって、上記ホイールの回転を提供するように上記リムを回転させることができる。つまり、モータとして働く。しかしながら、提供されるトルクは正または負であってもよい、ということが理解されるべきである。その結果、上記電気ユニットが上記リムの駆動の責任を負っているとき、正トルクが発生する。一方、上記リムが上記電気ユニットの駆動の責任を負っているとき、すなわち、電気ユニットがジェネレータとして働いているとき、負トルクが発生してもよい。
【0012】
上記電気ユニットは、上記ハブに対して上記中心線の方向に連なって上記コンパートメント内に位置する。さらに、上記電気ユニットは上記ハブの上記自由端に片持ち梁式に固定されている。上記電気ユニットが上記ハブに固定されるので、上記電気ユニットは上記ホイールと共に回転しない。その代りに、上記ホイールの回転中、上記電気ユニットは上記ハブに対して固定された位置に維持される。
【0013】
上記電気ユニットから上記リムへトルクを伝達するためのトランスミッションが設けられている。上記トランスミッションは、上記ハブの周りで上記コンパートメント内に配置されている。また、上記トランスミッションは上記底部と上記電気ユニットの間に位置している。
【0014】
上記底部と上記電気ユニットの間で上記コンパートメント内に上記トランスミッションを配置することによって、上記トランスミッションは、外部要素からの干渉に対して保護され得る。
【0015】
上記コンパートメント内の上記トランスミッションの特定位置のおかげで、また、特に上記トランスミッションの上記底部と上記電気ユニットとの間の位置のおかげで、上記トランスミッションは、上記コンパートメントによって、また、上記電気ユニットによって、有効にシールドされる。さらに、上記電気ユニットの点検修理および上記電気ユニットの交換までもが、上記トランスミッションの上記底部から離間している側にある上記電気ユニットの位置によって、容易になる。さらなる利点として、上記トランスミッションで生成され得るノイズは、上記リム、上記底部および上記電気ユニットによって減衰され得る。
【0016】
一実施形態では、上記電気ユニットは、上記ハブに対して上記リムを移動させることができるモータとして構成されている。この実施形態では、上記電気ユニットが、上記ハブと上記リムとの間でトルクを提供することができ、その結果として、上記ホイールの回転を提供するように上記リムを回転させることができる。
【0017】
別の実施形態では、上記電気ユニットは、上記ハブに対する上記リムの移動があると電気エネルギを生成できるジェネレータとして構成されている。つまり、上記電気ユニットが上記リムによって駆動されるので、上記ハブと上記リムとの間で提供される電気的なトルクは負である。
【0018】
さらに別の実施形態では、上記電気ユニットはモータとジェネレータの両方として構成されている。この実施形態では、上記電気ユニットが上記リムを駆動するとき正トルクが発生する一方、上記電気ユニットが上記リムによって駆動されるとき負トルクが発生する。上記ホイールは、上記ホイールのユーザが負トルクと正トルクとの間で切り替えることを可能にするスイッチを備えてもよい。上記スイッチは、このモータ付きホイールを組み込んだ移動機器に配置されてもよい。この実施形態の利点は、例えば上記移動機器が丘の上へ移動されるべきとき、上記電気ユニットが移動機器のホイールを駆動してもよいということであり、その結果、その機器の駆動を容易にする、ということである。しかしながら、上記移動機器は再び下へ移動されるべきとき、上記電気ユニットは上記リムによって駆動され、それによって、バッテリが充電されてもよい。上記バッテリに充電された電気は、後の段階で使用され得る。しかしながら、後の使用のためにバッテリを充電し、電気を蓄える代わりに、上記電気は、提供された時に、例えば上記ホイールを組み込んだ移動機器上でランプまたは明かりによって使用されてもよい。
【0019】
上記スイッチに、コントロールシステムが付随してもよい。それにより、例えば速度に基づいて、負トルクと正トルクとの間で切り換えることが可能になる。一例として、上記コントロールシステムは、上記ホイールの回転速度が予め定められた限度を超えるとき、上記ホイールにブレーキをかける責任を負っていてもよい。
【0020】
上記リムは、半径方向内側への幾つかの突起を含んでもよい。それらの突起は、上記リムを強化し、さらに、上記コンパートメント内の上記トランスミッションと上記電気ユニットからのノイズを減衰させるとともに、振動を減衰させる。特に、これらの突起は、例えば上記側壁に沿って、例えば上記中心線の方向に、または例えば上記中心線の周りに螺旋状に延在する複数のフィンによって構成されてもよい。
【0021】
上記トランスミッションは、第1および第2の駆動ホイールと、ベルトとを備え、上記第1の駆動ホイールは上記電気ユニットによって駆動され、上記第2の駆動ホイールは上記ベルトを介して上記第1の駆動ホイールによって駆動されてもよい。上記駆動ホイールは歯付きの外表面を備え、また、上記ベルトは歯付きの内表面を備えて、上記電気ユニットから上記第1の駆動ホイールへ、さらには上記第2の駆動ホイールへ駆動力を伝達するための歯間の係合を可能にしてもよい。これに対する変形例として、上記駆動力は、摩擦的な係合によって、例えば上記駆動ホイールおよび上記ベルトをゴムまたは同様の材料を使用して設けて、十分な摩擦が駆動力の伝達を確実にすることを可能にしてもよい。
【0022】
代わりの実施形態では、上記トランスミッションは、上記電気ユニットから上記リムへ駆動力を伝達するための幾つかのギヤホイールを備えてもよい。
【0023】
上記電気ユニットが上記ハブと上記リムの間でトルクを提供できることを確実にするために、上記リムは上記第2の駆動ホイールを運ぶための座を備えてもよい。上記座は、上記リムの一部を形成してもよいし、代わりに、上記リムへ付けることができる別個の要素であってもよい。
【0024】
一実施形態では、上記座と上記サスペンションとの両方の中心が上記中心線に位置するように、上記座は上記サスペンションに対して中心に配置されてもよい。それによって、上記ハブは、上記座と上記サスペンションとの両方を通って延在してもよい。これを達成する一つの仕方は、上記サスペンションの周りに上記座を配置することである。例えば、上記座に、上記サスペンションの外径と等しいかそれより大きい直径をもつ中央開口を設けることによってである。
【0025】
上記第2の駆動ホイールと上記座との間の係合を確実にして、上記第2の駆動ホイールの回転が上記座の回転をもたらすようにすることにより、トルクは、上記ハブから上記リムへ伝達されてもよい。上記座は上記リムの一部を形成するか、または上記リムに取り付けられても良いので、上記第2の駆動ホイールの回転は上記リムの回転を確実にする。
【0026】
上記座と上記第2の駆動ホイールとの間の係合は、例えば、上記座の外周上に、上記第2の駆動ホイールの内周における1つ以上の刻み目と係合し得る1つ以上の突起を設けることによって、確実にされ得る。しかしながら、上記刻み目と突起は、逆に配置され得る。係合は、その代わりに又はそれに加えて、上記座と上記第2の駆動ホイールとの間の摩擦的な係合によって確実にされ得る。他のタイプの係合システムも用いられ得る。
【0027】
上記第1および第2の駆動ホイールは、例えばプラスチック合成材料から、金属から、または他の適当な材料から作製され得る。幾つかの実施形態では、上記トランスミッション、したがって上記駆動ホイールの重みは、非常に重要である。したがって、プラスチックまたはアルミニウムの駆動ホイールは、好ましいかも知れない。上記座と上記リムは、例えばプラスチック合成材料から、金属から、または他の適当な材料から作製され得る。
【0028】
上記電気ユニットは、ロータ軸の周りに回転可能な出力軸を有し、上記ロータ軸は上記ハブと非平行であり、それにより上記中心線、したがって上記回転軸と非平行である。上記ロータ軸、従って上記電気ユニットそれ自体が上記ハブと非平行に延在しているという事実のおかげで、上記電気ユニットの長手方向の範囲は、上記ホイールの幅または上記リムの幅によって制限されない。上記電気ユニットが上記ホイールに完全に収容されている本発明の実施形態では、上記電気ユニットの縦方向の範囲は、上記ホイールの対角線または径方向の寸法によって制限されているにすぎない。その寸法は、殆どの例では、ホイールの幅より著しく大きい。
【0029】
上記ロータ軸は、上記ハブに対して横方向に延在してもよい。一実施形態では、上記ロータ軸は、上記ハブに対して実質的に直角である。そのことは、上記電気ユニットを上記リム内に完全に収容するために、特に利点であるかもしれない。
【0030】
上記リムがコンパートメントを形成するので、上記電気ユニットは、完全にここに含まれてもよい。つまり、上記電気ユニットは上記コンパートメントの境界を越えて延在しなくてもよい。上記ホイールから外に突出する要素を回避することによって、上記電気ユニットは上記ホイールの回転中に保護される。さらに安全性を高めるために、上記リムは、例えば1対のハブキャップを設けることによって、両端部で閉じられてもよい。
【0031】
上記電気的な駆動ホイールが搭載されるべき移動機器に依存して、上記駆動ホイールは、さらに上記リムの外表面の周りに取り付けられたタイヤを備えてもよい。これは、例えば、車椅子およびベビーカーなど、隆起に敏感なアイテムを運ぶ移動機器に搭載されたとき、または、例えば自転車と手押し車に、快適さの理由で搭載されたときは、そのケースであるかも知れない。
【0032】
上記トランスミッションのシステムは、上記電気ユニットから上記リムへトルク伝達を選択的に接続および遮断するための結合装置を備えてもよい。それによって、上記ホイールを組み込んだ機器の手動の移動に必要な手動パワーのレベルを下げるために、上記ホイールのアイドリングが容易になる。上記結合装置は、上記接続および遮断を達成するための少なくとも1つのクラッチを備えてもよい。上記クラッチは、上記電気ユニットから上記周囲リムへ伝達される駆動力の量を無限に可変してもよい。
【0033】
上記少なくとも1つのクラッチは、上記リムが上記出力軸の回転速度によって設定された駆動速度よりも高速で回転していないときのみ、上記リムへのトルク伝達を許容するように構成され得る。さらに、上記クラッチは、上記設定された駆動速度よりも上記リムが高速で回転しているとき、上記電気ユニットとの係合から上記リムを解放するように構成されてもよい。一例として、ローラベアリングが用いられてもよい。
【0034】
上記電気ホイールが搭載され得る移動機器の速度が高すぎるかもしれないので、上記ホイールは、さらに上記リムの回転速度を減少させるのに活性化可能なブレーキシステムを備えてもよい。
【0035】
上記ブレーキシステムは、上記移動機器を操作する人が上記ブレーキシステムを活性化すべきか否かを決定しなければならないように、例えば手動で活性化可能であってもよい。それに代えて又はそれに加えて、上記ブレーキシステムは、上記リムの回転速度のための与えられた設定点で、上記リムの減少された回転速度を保証し得る自動制御を備えていてもよい。
【0036】
幾つかの実施形態では、例えば上記電気ホイールが走る地面の構造に依存して、天候に依存して、または上記移動機器によって運ばれる荷重に依存して、操作中の人がその設定点を変えられるように、上記設定点は可変であってもよい。
【0037】
幾つかの実施形態では、上記駆動ホイールの回転速度は、上記電気ユニットの上記出力を手動で変更することによって変更可能であるので、上記ブレーキシステムは、上記リムが上記電気ユニットとの係合から解放されている時だけ、すなわち上記ホイールの惰性走行中にだけ、上記ブレーキシステムが上記リムの回転速度を減少させるのに活性化可能であるように設けられ得る。上記速度は、上記リムの一部または上記ホイールの別の回転部分に摩擦力を直接加えることにより減少され得る。
【0038】
一実施形態では、上記ブレーキシステムはディスクブレーキを含んでもよい。上記ディスクブレーキは、上記リムに直接に、または、例えば上記ホイールに取り付けられたハブキャップに間接的に係合してもよい。
【0039】
上記ブレーキシステムは上記コンパートメント内に位置してもよい。また、上記ブレーキシステムは、上記トランスミッションの一部を形成してもよい。または、上記ブレーキシステムは、上記ハブと上記リムの間に単に取り付けられ、上記ハブに対する上記リムの移動に抗して抵抗を与えることができてもよい。
【0040】
特定の移動機器に取り付けられたときは、上記電気ホイールが前方および逆方向の両方に回転できれば、有利であるかも知れない。そこで、上記電気ユニットおよび動力伝達システムの少なくとも一方は、上記リムを、第1(順)の方向および第2(逆)の方向に駆動するように構成されてもよい。
【0041】
幾つかの実施形態では、逆回転は、上記電気ユニットの上記出力軸の回転の向きを変更することによって提供されてもよい。
【0042】
好ましい実施形態では、上記電気ユニットは電気的に駆動されるモータであってもよい。上記モータは、外部電源から電気的な駆動力を受けるための電力結合要素を含んでもよい。上記電源は、上記駆動ホイールを組み込んだ機器に配置されてもよく、また、上記電力結合要素およびワイヤを介して上記モータに接続されてもよい。それによって、上記駆動ホイール内にバッテリがスペースを占めるのを回避でき、その結果、より大きなモータの使用を容易にすることができる。
【0043】
上記電気ユニットはワイヤの使用によって上記外部電源に接続されてもよい。上記ワイヤを上記電気ユニットに取り付けるために、上記ハブは開口を含んでもよい。一例として、上記ハブは、上記ハブ内の上記開口を通して、上記ホイール、そしてその結果として上記電気ユニットの内部へのアクセスを提供するように、中空であってもよい。
【0044】
幾つかの用途では、上記電気ホイールが、上記リムの回転中、例えば石に当たった時に、上記ホイールに対する影響を減衰させることができるショック吸収システムを有するならば、有利であるかも知れない。それゆえ、上記電気ホイールは、電気ユニットを弾性的に懸架するようになっている弾性要素をさらに含んでもよい。一実施形態では、その弾性的な部材は1つ以上のバネを含んでもよい。
【0045】
上記電気ホイールを組み込んだ移動機器の回転を容易にするために、上記ホイールは、上記ハブと上記ホイールのための懸架構造との間の角度を変更するようになっているステアリング要素を含んでもよい。
【0046】
上記コンパートメントは、例えば電気ユニット、速度、ブレーキング、トルクなどを制御するための電子部品などの部品を、さらに収容してもよい。また、上記コンパートメントは、バッテリ、バネ、または、上記ハブに対する上記リムの回転のために解放され得るトルクを蓄えるための類似した手段を収容してもよい。
【0047】
第2の局面では、本発明は、本発明の第1の局面に従う電気ホイールを組み立てるための要素のキットを提供する。
【0048】
電気ホイールを組み立てるための要素のキットを提供することによって、必要ならば、1つ以上の要素が容易に交換され得る。一例として、どのキットが選択されるかに依存して、上記電気ユニットのサイズは変わってもよい。その結果として、上記ホイールは、これに関連した全くわずかな作業で、異なった移動機器に関して適用され得る。
【0049】
本発明の第1の局面の前述の特徴は、本発明の第2の局面に従うキットに関して適用され得る、ということが理解されるべきである。したがって、第2の局面は、本発明の第1の局面の特徴および要素の如何なる組合せを含んでもよい。
【0050】
上記キットの上記ハブおよび上記リムは、手によって操作可能な要素の使用によって接続されてもよい。これは、上記リムが上記ハブ上にスライドされ得るように上記リムと上記ハブとを提供することにより達成されてもよい。上記リムと上記ハブとは、例えばクリック継手要素の使用によって、手によってお互いに接続されても良い。この関連では、クリック継手によってとは、その継手によって、ホイール回転中に上記リムが上記ハブから滑らないように、上記リムと上記ハブとの間に適切な係合を確実にするために上記リムと上記ハブとの間にシールを形成するように、上記ハブの一部が上記リムの一部と係合するように形づくられるものであると理解される。しかしながら、上記リムは上記ハブの周りに回転できる、ということが理解されるべきできある。一例として、上記ハブは、その外周に沿った突起を含んでもよい。その結果、上記ハブの直径は、上記ハブに沿った他の位置での直径よりも、この位置で少なくとも少し大きい。上記ハブの長さに沿って上記リムをスライドさせて上記突起を通ると、上記突起は、上記ハブの長さに沿って加えられた力の使用なしでは上記リムが再び後ろにスライドできないことを保証するだろう。
【0051】
上記キットの要素の組み立てを容易にするために、上記リムは、このリムと一体に形成され、かつ上記ハブの周りの上記リムの懸架のために上記ハブを受け入れることが可能な軸受を含んでもよい。簡単な実施形態では、上記軸受は上記ハブを受けるように寸法設定された開口であってもよい。
【0052】
上記トランスミッションは、第1および第2の駆動ホイールと、ベルトとを備えてもよい。上記第1の駆動ホイールは上記電気ユニットによって駆動され、上記第2の駆動ホイールは上記ベルトを介して上記第1の駆動ホイールによって駆動される。さらに、上記リムは座を有し、この座の上に上記第2の駆動ホイールがスライド可能である。それによって、上記第2の駆動ホイールと上記リムとが、互いに相対的な回転に対してロックされる。その結果として、トルクは、上記電気ユニットから上記リムへ伝達される。
【0053】
上記トランスミッションとリムの組み立てを容易にするために、上記第2の駆動ホイールは、上記座に対する上記中心線に沿った上記第2の駆動ホイールの移動によって上記第2の駆動ホイールが上記座の上にスライドできるように、設けられてもよい。
【0054】
第3の局面では、本発明は、本発明の第1または第2の局面に従う電気ホイールを備えた移動機器を提供する。
【0055】
したがって、本発明の第1の局面および第2の局面の上述の特徴は、本発明の第3の局面に従う移動機器に関して適用可能である、ということが理解されるべきである。したがって、第3の局面は、本発明の第1の局面および/または第2の局面の特徴および要素の如何なる組合せを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
さて、本発明の実施形態は、図面を参照してさらに記述される。
図1図1は、一実施形態の電気ホイールの要素を示す図である。
図2図2は、一実施形態の電気ホイールのためのリム、トランスミッションおよび電気ユニットを示す図である。
図3図3は、一実施形態の電気ホイールを示す図である。
図4図4は、一実施形態の電気ホイールを通る断面を示す図である。
図5図5は、一実施形態の電気ホイールに対する電源供給の例を示す図である。
図6図6aと6bは、2つの異なった移動機器に適用された一実施形態の電気ホイールを示す図である。
図7図7は、一実施形態の電気ホイールのための異なったハブキャップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の精神および範囲内で様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者には明らかになるであろうことから、詳細な説明および特定の例は、発明の実施形態を示しているが、例示としてのみ与えられる、ということが理解されるべきである。
【0058】
図1および図2は、一実施形態の電気ホイール1の要素を示している。ホイール1は、中心線(図示せず)に沿って位置するハブ2と、その中心線が回転の軸を形成するようにハブ2の周りに回転可能なリム3と、ハブ2とリム3の間にトルクを提供するために配置されたモータ4の形態にある電気ユニットとを備えている。
【0059】
リム3は、円形の底部6と開口部7との間に延在する側壁5をもつコンパートメントを形成している。図示する実施形態では、円形の底部は、サスペンション8を形成する開口部8をもつ閉曲面である。そこを通って、ハブ2が延在する。サスペンション8は、円形の底部6内で中心に位置する。ハブ2はコンパートメントの内部に自由端(図示せず)で終端する。
【0060】
モータ4は、ハブ2に対して上記中心線の方向に連なってコンパートメント内に位置し、ハブ2の自由端に片持ち梁式に固定されている。
【0061】
ホイール1の回転中に、ハブ2は回転しない。リム3は、上記中心線の周りに回転することができ、ハブ2の周りに放射状である。その結果として、ホイール1の回転が可能になる。モータ4はハブ2に固定されているので、モータ4はホイール1と共には回転しない。その代りに、モータ4は、ホイール1の回転中に、ハブ2に対して固定された位置に維持される。
【0062】
さらに、ホイール1は、モータ4からリム3へトルクを伝達するためのトランスミッション9を備えている。トランスミッション9は、ハブ2の周りのコンパートメント内に配置されている。また、トランスミッション9は、底部6とモータ4との間に位置している。
【0063】
トランスミッション9は、第1の駆動ホイール10、第2の駆動ホイール11およびベルト12を備えている。第1の駆動ホイール10はモータ4によって駆動される。また、第2の駆動ホイール11はベルト12を介して第1の駆動ホイール10によって駆動される。第1と第2駆動ホイール10、11の駆動を容易にするために、駆動ホイール10および11は歯付きの外表面を備える一方、ベルト12は歯付きの内表面を備えている(図2参照)。
【0064】
モータ4がハブ2とリム3の間にトルクを提供できることを確実にするために、リム3は第2の駆動ホイール11を運ぶための座13を備えている。図示する実施形態では、座13は、リム3と一体に形成されている。
【0065】
座13はサスペンション8に対して中心に位置しており、その結果、座13およびサスペンション8の両方の中心は、上記中心線(図示せず)に位置している。その結果として、ハブ2は、座13およびサスペンション8の両方を通って延在している。これは、座13にサスペンション8の外径と実質的に等しい直径を有する中央開口部を持たせることによって、サスペンション8の周りに座13を配置することにより達成される。
【0066】
したがって、第2の駆動ホイール11と座13との間の係合を確実にして、第2の駆動ホイール11の回転が座13の回転をもたらすようにすることにより、トルクは、ハブ2からリム3へ伝達され得る。座13がリム3の一部を形成するので、第2の駆動ホイール11の回転はリム3の回転を確実にする。
【0067】
座13と第2の駆動ホイール11の間の係合は、図示する実施形態では、座13の外周部に突起14を設けることにより確実にされている。その突起14は、第2の駆動ホイール11の内周部における刻み目15と係合する。
【0068】
モータ4は、ロータ軸の周りに回転可能に出力軸16を備えている。そのロータ軸は、ハブ2と非平行であり、その結果として上記中心線と非平行である。ロータ軸、従ってモータ4それ自体がハブ2と非平行に延在しているという事実のおかげで、モータ4の長手方向の範囲は、ホイール1の幅またはリム3の幅によって制限されない。第1の駆動ホイール10の駆動を容易にするために、出力軸16と第1の駆動ホイール10とは、ギヤハウス17に収用されたギヤ(図示せず)とギヤー出力軸18とを介して接続されている。
【0069】
図示する実施形態では、タイヤ19はリム3の外表面の周りに取り付けられている。さらに、ホイール1を閉じるために、1組のハブキャップ20,21が用いられている。前面ハブキャップ20は閉じられている。一方、背面ハブキャップ21は中心に配置された開口を備えている。ハブ2がその開口を通して延在することを許すためである。
【0070】
図3は、図1図2の要素の大部分が組み立てられている一実施形態の電気ホイール1を図示している。前面ハブキャップ20は、上記コンパートメントの内部を示すために取り除かれている。
【0071】
図4は、上述のような一実施形態の電気ホイール1を通る断面を示している。
【0072】
図5は、一実施形態の電気ホイール1に対する電源供給の例を示している。図示する実施形態では、電気ユニット4は電気的に駆動されるモータである。モータ4は、外部電源(図示せず)から電気的な駆動力を受けるための電力結合要素(図示せず)を有する。上記電源は、駆動ホイール1を組み込んだ機器に配置され得る。これにより、駆動ホイール1内にバッテリ占有スペースを回避することできる。それによって、より大きなモータ4を使用することが容易になる。
【0073】
モータ4は、ワイヤ22の使用によって外部電源(図示せず)に接続される。モータ4にワイヤ22を付けるために、ハブ2はハブ開口部23を備えている。本実施形態では、ハブ2は中空であり、ホイール1の内部への、その結果としてハブ2内のハブ穴23を通してモータ4への、アクセスを提供する。
【0074】
図6aおよび図6bに模式的に示されているように、電気ホイール1は、様々な仕方で移動機器24a,24bに適用され得る。ハブ2が上記ホイールと共に回転しないので、移動機器24は、ハブ2に直接に取り付けられ得る。
【0075】
図7は、電気ホイール1のための異なったハブキャップ20を図示している。ホイール1の使用に依って、例えばホイール1がどの移動機器に取り付けられるべきかに依存して、ビジュアルデザインは変わってもよい。さらに、前面ハブキャップ20は、ロゴ、名前、図面として商業目的に用いられてもよいし、他の商用表示が、前面ハブキャップ20に取り付けられ又は印刷されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7