特許第5980813号(P5980813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5980813パリソン及びそれを用いた容器のブロー成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980813
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】パリソン及びそれを用いた容器のブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/02 20060101AFI20160818BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   B29C49/02
   B29C49/06
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-549248(P2013-549248)
(86)(22)【出願日】2012年12月10日
(86)【国際出願番号】JP2012081912
(87)【国際公開番号】WO2013089054
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年6月22日
(31)【優先権主張番号】特願2011-272805(P2011-272805)
(32)【優先日】2011年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160223
【氏名又は名称】吉田プラ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】尾形 聡
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 憲三
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−274950(JP,A)
【文献】 特開平07−156933(JP,A)
【文献】 特開平05−330535(JP,A)
【文献】 特開平02−248232(JP,A)
【文献】 特許第3924082(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00 − 49/80
B29B 11/00 − 11/16
B65D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の首部形成部と肩部形成部と胴部形成部と底部形成部とを有し、上記底部形成部の側壁及び底壁の肉厚が成形後の胴部の側壁よりも大きな肉厚となるように形成されてなり、
かつ上記底部形成部の外形がブロー成形される容器の底部の外形と同形に形成されてなることを特徴とするブロー成形用のパリソン。
【請求項2】
前記胴部形成部の中心軸に沿って形成されている加圧空気が圧送される中空部は細長の筒状凹部に形成されるとともにその凹部の底面が前記胴部形成部と前記底部形成部との境界部から上方に3.5mm以下の位置で終端をなしていることを特徴とする請求項1記載のブロー成形用のパリソン。
【請求項3】
前記胴部形成部の下方部は前記底部形成部に向かって徐々に肉厚が増すとともに広幅となる曲面を有し、当該曲面の勾配は幅方向の変化量より縦方向の変化量の方が大きくなるように形成されてなることを特徴とする請求項1または2記載のブロー成形のパリソン。
【請求項4】
首部形成部と肩部形成部と胴部形成部と底部形成部とを有し、上記底部形成部の側壁及び底壁の肉厚が成形後の胴部の側壁よりも大きな肉厚となるようにブロー成形用のパリソンを形成し、
ブロー成形用の金型として上記肩部形成部および上記胴部形成部の外形より大きな内形を有するとともに上記底部形成部の外形と実質的に同じ内形を有する金型を準備し、
上記首部形成部を保持して上記パリソンを上記金型内に挿入し、この挿入時に上記パリソンの上記底部形成部の外側壁および外底面をそれぞれ上記金型の底部内周面および底部内底面から微小距離隔離させ、
上記パリソン内に加圧空気を圧送して、パリソンの胴部形成部を軸方向に延長させてパリソンの底部形成部を金型の底部内底面に向けて移動させてその底部形成部の外底面を金型の内底面に当接するとともにその底部形成部の外周面を金型の底部内周面に当接させて底部の移動を規制し、その後、胴部形成部を横方向に延伸して肩部形成部及び胴部形成部を金型の内面に接触させてなることを特徴とする容器のブロー成形方法。
【請求項5】
前記パリソンの前記胴部形成部の中心軸に沿って形成されている加圧空気が圧送される中空部は細長の筒状凹部に形成されるとともにその凹部の底面は前記胴部形成部と前記底部形成部との境界部分から上方に3.5mm以下の位置で終端をなすように形成されてなるパリソンを用いることを特徴とする請求項4記載の容器のブロー成形方法。
【請求項6】
前記パリソンの前記胴部形成部の下方部は上記底部形成部に向かって徐々に肉厚が増すとともに広幅となる曲面を有し、当該曲面の勾配は幅方向の変化量より縦方向の変化量の方が大きくなるように形成されてなるパリソンを用いてなることを特徴とする請求項4または5に記載の容器のブロー成形方法。
【請求項7】
前記微小距離が0.3〜1.0mmであることを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に係る容器のブロー成形方法。
【請求項8】
前記パリソンの胴部形成部と底部形成部との境界部Pに連接する前記胴部形成部の傾斜部の水平面に対する角度(鋭角)を変化させてパリソンを成形することにより、前記容器の胴部の内面形状を変更することを特徴とする請求項4乃至7の何れか1項記載のブロー成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収容する胴部が指圧によって撓ますことのできるスクイーズ性を有すると共に当該胴部より厚肉の底部を備えてなる合成樹脂製容器を成形するためのパリソン及び当該パリソンを用いたブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製容器のブロー成形方法としては合成樹脂をチューブ状に押し出し成形したパリソンをそのままブロー成形用金型内に導入してパリソンの一端側を閉じるとともにその他端側から加圧空気を圧送して金型内面に沿ってパリソンを延伸して容器を成形する方法(特許文献1)と、合成樹脂を予め金型内で射出成形して一端が閉じたパリソンを形成し、そのパリソンを射出成形用金型から取り出して、ブロー成形用の金型内に導入して当該金型に沿って容器を成形する方法(特許文献2)とがある。
【0003】
特許文献1に係るブロー成形では成形される容器の肉厚はある程度限定されるが、特許文献2に係るブロー成形方法では肉厚が種々の部位によって大きく異なる容器を成形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5―301274号公報
【特許文献2】特許第3924082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
合成樹脂製のブロー成形容器は、ガラスの容器に比べて軽量であるとともに収容されている内容物を抽出するために指圧によって撓むスクイーズ性を持たせることができる反面、高級感に欠けるとともに空の状態では安定性に欠け、中身を充填する際には不安定な状態となる。このようなブロー成形容器を、例えば、化粧料を収容する容器として使用するためにデザイン性を考慮して容器の下側を上側より細くすると、更に安定性に欠けることになる。
【0006】
このため、容器の底部の肉厚を厚くして、安定性を確保することが望まれるが、上記の特許文献1に示されたような方法にて成形されるブロー成形容器は、エアーが吹き込まれて延伸される部位、例えば円筒状の容器であれば周壁部の胴部の肉厚を部分的に異ならせることはできるが、容器の底部を収容の胴部より肉厚にブロー成形することは困難であった。
【0007】
一方、特許文献2に示されたブロー成形方法で容器を成形するには、有底の中空形状に射出成形されたパリソンを一旦射出成形用金型から取り出して、再度パリソンを加熱してブロー成形用の金型に挿入してブロー成形を行うものであるが、そのブロー成形時にパリソンの胴部及び底部も同時に軸方向及び径方向に延伸されるため、底部を所望の肉厚に維持して成形することが困難であった。
【0008】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、容器の胴部を肉薄に形成してスクイーズ性を持たせるとともに底部を胴部より所望の厚肉に成形することができる合成樹脂製容器を成形するためのパリソン及び当該パリソンを用いた容器のブロー成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明のパリソンは、容器の首部形成部と肩部形成部と胴部形成部と底部形成部とを有し、上記底部形成部の側壁及び底壁の肉厚が成形後の胴部の側壁よりも大きな肉厚となるように形成されてなり、かつ上記底部形成部の外形がブロー成形される容器の底部の外形と同形に形成されてなるのである。
【0010】
上記のようなパリソンを用いることにより、ブロー成形用金型内でパリソンに加圧空気を圧送したときに、胴部形成部は延伸されるが底部形成部は延伸されないために、所望の肉厚の底部を形成することができる。
【0011】
また、上記のパリソンにおいて、前記胴部形成部の中心軸に沿って形成されている加圧空気が圧送される中空部が細長の筒状凹部に形成されるとともにその凹部の底面が前記胴部形成部と前記底部形成部との境界部から上方に3.5mm以下の位置で終端をなしている場合には、ブロー成形用の加圧空気を吹き込んだ直後に胴部形成部は軸方向に移動されるだけで径方向には延伸されないので、容器の底部はパリソンの底部形成部と合致した形状に形成される。
【0012】
また、上記のパリソンにおいて、前記胴部形成部の下方部は前記底部形成部に向かって徐々に肉厚が増すとともに広幅となる曲面を有し、当該曲面の勾配は幅方向の変化量より縦方向の変化量の方が大きくなるように形成されてなる場合には、胴部形成部と底部形成部との境界部分がなだらかに連接された容器を成形することができる。
【0013】
本発明のブロー成形方法は、首部形成部と肩部形成部と胴部形成部と底部形成部とを有し、上記底部形成部の側壁及び底壁の肉厚が成形後の胴部の側壁よりも大きな肉厚となるようにブロー成形用のパリソンを形成し、ブロー成形用の金型として上記肩部形成部および上記胴部形成部の外形より大きな内形を有するとともに上記底部形成部の外形と実質的に同じ内形を有する金型を準備し、上記首部形成部を保持して上記パリソンを上記金型内に挿入し、この挿入時に上記パリソンの上記底部形成部の外側壁および外底面をそれぞれ上記金型の底部内周面および底部内底面から微小距離隔離させ、上記パリソン内に加圧空気を圧送して、パリソンの胴部形成部を軸方向に延長させてパリソンの底部形成部を金型の内底面に向けて移動させてその底部形成部の外底面を金型の底部内底面に当接するとともにその底部形成部の外周面を金型の底部内周面に当接させて底部の移動を規制し、その後、胴部形成部を横方向に延伸して肩部形成部及び胴部形成部を金型の内面に接触させてなるので、容器の底部をパリソンの底部形成部の形状と合致させて成形することができる。
【0014】
また、上記ブロー成形方法において、前記パリソンの前記中空凹部の前記底面が前記胴部形成部と前記底部形成部との境界部分から上方に3.5mm以下の位置で終端をなすように形成されてなるパリソンを用いる場合には、パリソンの底部形成部が径方向に延伸することを確実に防止できるので、容器の底部をパリソンの底部形成部の形状と合致させて成形することがより一層確実となる。
【0015】
また、上記ブロー成形方法において、前記パリソンの前記胴部形成部の下方部が上記底部形成部に向かって徐々に肉厚が増すとともに広幅となる曲面を有し、当該曲面の勾配が幅方向の変化量より縦方向の変化量の方が大きくなるように形成されてなるパリソンを用いる場合には胴部形成部と底部形成部との境界部分がなだらかに連接された容器を成形することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって容器の胴部が指圧によって撓むことのできるスクイーズ性を有すると共に胴部より所望の厚肉の底部を備えてなる合成樹脂製容器を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るパリソンによりブロー成形された化粧料容器を一部破断して示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図2図1に示した化粧料容器を上方から見たときの平面図である。
図3図1の化粧料容器をブロー成形でパリソンから製造する様子を説明するための図で、(a)はパリソンをブロー成形機の成形型に装着する様子を一部破断して示しており、(b)はパリソンをブロー成形機の成形型に装着した状態を一部破断して示している。
図4】本発明に係るパリソンの好適な一実施形態を一部破断して示す正面図で、二点鎖線は成形後の化粧料容器の外形を示している。
図5図4に示したパリソンを一部破断して示す側面図で、二点鎖線は成形後の化粧料容器の外形を示している。
図6図4に示したパリソンの種々の部位における断面図で、(a)は図4におけるA−A線矢視断面、(b)はB−B線矢視断面、(c)はC−C線矢視断面、(d)はD−D線矢視断面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかるパリソン及びブロー成形方法の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
本実施形態においては、化粧料などの内容物の注入出口を上方に位置させた状態にて、径方向より軸方向に長い形状に形成され、単体で起立状態が保てるように形成される合成樹脂製の容器の場合を例に挙げて説明する。
【0020】
本実施形態の容器1は、図1に示すように、胴部11、肩部12及び底部15からなる収納部10と、収納部10の上方に配置されてなる化粧料等の注入出口21となる首部20とが一体に形成されている。収納部10を構成する胴部11の上端は、上方に向かって僅かな傾斜を有する肩部12を介して首部と一体的に連接している。首部20は肩部12の中央に設けられた円筒状をなす部位であり、その周側面20bには容器の蓋(図示せず)が螺合される雄ねじ20aが形成されている。
【0021】
収納部10の外形形状は、ネック部20側から底部15側に向かって狭まった形状に形成され、上方から見たときの収納部10の外形は、図2に示すように、ほぼ長方形の長辺に相当する部位を外方側に湾曲させて張り出し、角部が曲線で繋げられた形状に形成されている。すなわち、上方から見た収納部10の外形形状は、対向する短辺側がほぼ直線状をなし、長辺側は短辺側の2辺の端部同士を外方側に張り出す湾曲線で繋いだ形状に形成されている。以下の説明では、胴部10の長辺側の面を正面10a、短辺側の面を側面10bとする。
【0022】
収納部10の正面10aの外形は図1(a)に示すように、上端から下端に向かって僅かに外側に張り出すような曲線を描きつつ狭幅に形成され、側面10bの外形は図1(b)に示すように、上端から下端に向かってほぼ直線的に狭幅に形成されている。
【0023】
収納部10の中空な胴部11の側面部分は、図1(a)に示すように、上側部分は比較的薄肉t1に形成され、胴部11の下側部分に向けて徐々に肉厚となるように形成されている。一方、胴部11の正面部分は、図1(b)に示すように、上端から底部15の近傍までほぼ同じ厚さの薄肉t2に形成されている。
【0024】
中空な胴部11の内底11aから外底15aまでの底部15の肉厚Lは、胴部の肉厚t1、t2よりも十分に大きく形成される。たとえば、底部15の内底11aから外底15aまでの距離Lが、収納部10の全長Hの5%以上であり、また外周部10cの肉厚t1、t2のうちのいずれか薄い方の肉厚の5倍以上になるように形成される。外周部10cの肉厚t1や肉厚t2としては、例えば0.3〜1mmの範囲に設定される。また底部15の外底15aの中央部には下面には上方に向かって僅かに窪む凹曲面が形成される。
【0025】
ここで、胴部11の長辺側の肉厚t2は短辺側の肉厚t1より薄く形成されており、胴部の正面部10dを指圧で押したときに、その部分が容易に弾性変形して収容されている化粧料等を押し出しやすいスクイーズ性を備えるようにしている。
【0026】
上記のような構成の化粧料容器1はパリソンのブロー成形によって形成されるもので、図3図6はそのパリソンを示している。
【0027】
本発明の実施例に係るパリソン50は、図4及び図5に示すように、首部形成部51と底部形成部52と両形成部51、52の間に胴部形成部53と肩部形成部とを備えている。首部形成部51の外形は成形される容器の首部の外形と合致した円筒形で周側部に雄ねじ51bが設けられる。また、底部形成部52の外形も成形される容器の底部の外形と合致している。そして、パリソン50の首部形成部51から底部形成部52までの長さは成形される容器の首部20から底部15までの長さより僅かに短く形成されている。
【0028】
胴部形成部53の上端の肩部形成部は長辺方向の幅が円筒状をなす首部形成部51の外径より僅かに広い幅を有し(図4)、短辺方向の肩部形成部の幅は首部形成部51の外径より僅かに狭く形成されている(図5)。このため、胴部形成部53の上方部における水平断面の外形は、図6(a)に示すように、ほぼ楕円形状をなしている。
【0029】
また、胴部形成部53の長辺方向に沿った中央縦断面形状は、図4に示すように左右対称であり、首部形成部51側から底部形成部52側に向かって外径が広くなるように緩やかな曲面状に形成される。また、胴部形成部53の短辺方向に沿った中央縦断面形状も、図5に示すように左右対称であり、首部形成部51側から底部形成部52側に向かって徐々に幅が狭くなるように緩やかな曲面で形成されており、胴部形成部53及び肩部形成部の全長Xに対し下から約1/4の位置53aにて幅が最も狭くなっている。
【0030】
底部形成部52は断面逆台形状に形成され胴部形成部53との境界部をPで示した。そして、胴部形成部53の長辺方向の縦断面及び短辺方向の縦断面はいずれも、胴部形成部53及び肩部形成部の全長Xに対し下から約1/10の領域には底部形成部52側の境界部Pに向かって外形幅が広くなるような傾斜53bが設けられる。この傾斜53bが境界部Pを通る水平面との間になす角度は、少なくとも20°より大きな鋭角に設定される。即ち、この傾斜53bの勾配は、幅方向の変化量(図中、径方向)より底部形成部52に向かう方向(図中、軸方向)の変化量の方が大きく形成される。また、この傾斜53bと底部形成部52との境界部Pには、曲面、例えば0.4mm以上の丸み(角R)が設けられる。
【0031】
また、胴部形成部53の首部形成部51との境界部で、ブロー成形後に肩部12となる肩部形成部には、肩部12の高さとほぼ同じ高さにて、正面側10aでは、図4に示すように、下方に向かって広くなるテーパー53dが形成されると共に、側面側10bでは、図5に示すように、下方に向かって狭まるテーパー53cが形成される。
【0032】
ブロー成形時にはエアーが吹き込まれるパリソン50の胴部形成部53の中心に沿って形成される空間55は細長の筒状凹部で、その上端が首部形成部51の注入出口51aと繋がるとともに、図6(a)から図6(d)に示されているように、底部形成部52側に向かって内径が徐々に縮径となる凹部であり、凹部の内底55aは底部形成部52の前記境界部分Pよりも上方に位置し、内底55aと境界部分Pとの間隔が3.5mm以下になる位置に形成される。
【0033】
パリソン50の底部形成部52は断面逆台形状で、化粧料容器1の底部15とほぼ同じ外形形状に形成されており、パリソンの肩部形成部の上端から底部形成部52の下端までの長さYは、加熱したパリソン50をブロー成形機の成形型に装着した際に、パリソン50の外底面が成形型40に接触して熱が奪われないように、成形後の容器の胴部10の全長Hより、たとえば0.3〜1mm程度短く(H>Y)形成される。底部形成部52の側面周方向についても、同様にブロー成形型との間に僅かながら隙間が設定される。
【0034】
上記のような構成に係るパリソンは周知の方法で上記パリソンの外形に合致した成形面を有する射出成形用金型によって成形され、その射出成形用金型から取り出されたパリソンは首部形成部51を除いて再加熱されて、図3に示すように、首部形成部51が金型60によって保持された状態で、その下方の肩部形成部、胴部形成部53及び底部形成部52が水平方向に開いたブロー成形用金型40,40内に挿入され(図3a)、次いで金型40,40が閉じられる(図3b)。閉じられた金型の内面形状は成形される容器の肩部12、胴部11、底部15を画成しており、パリソンの肩部形成部および胴部形成部53の外周面は金型40,40の内面とは大きく離間しているが、パリソンの底部形成部52の外底面は金型40,40の内底面から0.3〜1mm程度離れて保持されおり、またその底部形成部52の外周面も上記の場合と同様に金型40,40の底部側の内周面と僅かに離れて保持されている。
【0035】
この状態でブロー成形用の加圧空気をパリソンの首部開口から胴部形成部の空間55に圧送すると、先ずパリソンの胴部形成部53が軸方向に延長して底部形成部52が金型40,40の内底面に向けて移動してその外底面が金型40,40の内底面に当接するとともにその外周面が金型の底部内周面に当接して底部の移動は規制される。その後、胴部形成部53が横方向に延伸して肩部及び胴部は大きく膨らんで金型40,40の内面に接触する。この時、胴部形成部53の内壁は、図1(a)に示すように、上端部から底部に向けて徐々に広幅の曲線を描くように肉厚となって、内底面は円弧状の曲線となる内面ライン13を描くように成形される。一方、胴部形成部53の側面部の断面形状は、ブロー成形後には図1(b)に示すように、側部より肉薄でほぼ等しく成形される。
【0036】
上記の内面ライン13はパリソンの形状に依存しており、例えばパリソンの胴部形成部53の境界部Pに連接する傾斜53bの水平面に対する角度(鋭角)が小さく形成されている場合には、上記内面ライン13は底部側が広幅に形成され、一方、上記斜面53bの角度(鋭角)が大きく形成されている場合には上記内面ライン13の底部側が狭幅に形成される。
【0037】
本発明では、ブロー成形時に形成される容器の内底領域Fにおける最下端Q,Qは、好ましくは、胴部形成部53と底部形成部52との境界部分Pから上方に3.5mm以下の寸法(J+)に規制することで、これによりブロー成形時の内圧によって予め肉厚に成形された底部形成部52が縦方向(軸方向)及び横方向(径方向)に延伸することはなく、ブロー成形によって形成される容器の底部15の外形はパリソンの底部形成部52の外形と正に合致した形状となる。
【0038】
なお、ブロー成形時に形成される容器の内底領域Fにおける最下端Qは、胴部形成部53と底部形成部52との境界部分Pから寸法(J−)を下方に設定して、当該境界部分Pよりも下方に位置させるようにすることもできる。この場合の寸法(J−)は底部形成部の肉厚との関係で定められ、好ましくは底部形成部の肉厚の1/10以下とすることである。これによって、パリソンのブロー成形の初期の段階で底部形成部52の外底面と側周面は金型40,40の内底面と底部内周面に接触してその移動が規制されてその外形が規定されるためパリソンの底部形成部52の外形には影響しない。
【0039】
本実施形態のパリソン50によれば、化粧料の注入出口21となる首部形成部51と底部形成部52の外形が、それぞれブロー成形後の容器の首部20と底部15と実質的に同一寸法にて形成されている。このため、首部形成部51と底部形成部52とは、各々の周側面51c、52aに金型40、40を当接させることにより、ブロー成形時における外周方向への延伸が規制されて、ブロー成形後も首部形成部51と底部形成部52の形状を維持できると共に、胴部形成部53を延伸させることにより、胴部10が底部15より薄肉の正面外周部10d及び側面外周部10eを備えた容器1を成形することができる。
【0040】
また、パリソン50の底部形成部52の外底面及び側周面はそれぞれブロー成形用金型40,40の内底面及び内側底面から僅かに離れて金型内に設置されるから、加熱されたパリソンの熱が金型40,40によって奪われることがないので、化粧料容器などに適した美麗な成形容器を精度良く形成することができる。
【0041】
また、パリソンの胴部形成部53の外形形状が、底部形成部52に向けて幅が広くなるなだらかな曲面53bで形成され、ブロー成形後に外周方向に延伸されない底部形成部52と延伸される胴部形成部53との境界部分Pを滑らかに連接させ、曲面53bの勾配を幅方向の変化量より縦方向の変化量の方が大きくすることにより、胴部形成部53と底部形成部52との境界部分Pの輪郭の曲率が小さくなり、ブロー成形後に外周方向に延伸されない底部形成部52と延伸される胴部形成部53との境界部分Pに窪みが発生し難く、当該境界部分Pを凹凸のない緩やかな曲面にて繋ぐことができる。
【0042】
また、ブロー成形された胴部11の正面外周部10dは延伸されて薄肉に形成されるので弾性変形し易くなる。このため、胴部11に収容された化粧料等を容易に押し出すことができ、スクイーズ性に優れた化粧料容器1を提供することができる。
【0043】
また、容器1の底部15は、胴部11の正面外周部10d及び側面外周部10eより充分に厚肉なので、容器1が単体の状態でも、安定した起立状態を保つことができる。
【0044】
また、本発明については、ブロー成形の材料として、ポリエチレンテレフタレートや、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの材料を適用することができる。また、これらの材料は単層である必要はなく複層に積層して使用することができる。他方、透明性や外観を重視する場合、一般的な結晶性材料では、冷却時の結晶化で生じる白濁などを抑えるために急冷させる必要性から、金型内で冷却効果の高い冷却設備が必要となるが、非晶性材料を適用すれば、白濁を生じないため特段の設備を要することなく、安定して上記ブロー成形容器を生産することができる。
【0045】
また、本発明の上記実施例ではパリソンの底部形成部の形状を断面逆台形状としたが、これに限らず上方部が下方部より大径とならなければよいので円筒形でもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 化粧料容器、11 収容部、15 底部、50 パリソン、51 首部形成部、51a 注入出口、52 底部形成部、52a 底部形成部の周側面、53 胴部形成部、55 胴部空間、J+,J− 胴部形成部と底部形成部との境界部分から胴部空間の内底下端までの寸法、P 胴部形成部と底部形成部との境界部分、Q 胴部空間の内底下端、t1 側面外周部の肉厚、t2 正面外周部の肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6