(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、以下の各実施形態で示す各構成要素の材質や形状、寸法等は、一例であって特に限定されるものではない。
【0015】
(第1実施形態)
[インクジェット記録装置1の基本構成]
図1は本発明の第1実施形態に係る搬送装置310を備えたインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
【0016】
インクジェット記録装置(記録装置の一例)1は、装置筐体100と、装置筐体100の内部の下方に配置された給紙部200と、給紙部200の上方に配置されたインクジェット記録方式の画像形成部300と、画像形成部300の一側方に配置された用紙搬送部400と、画像形成部300の他側方に配置された用紙排出部500とを備える。
【0017】
給紙部200は、装置筐体100に着脱自在の給紙カセット201と、給紙ローラー202と、ガイド板203とを備える。給紙ローラー202は給紙カセット201の一端側の上方に配置される。ガイド板203は給紙ローラー202と用紙搬送部400との間に配置される。
【0018】
給紙カセット201内には、複数枚の記録用紙(被記録媒体の一例)Pが積み重ねられた状態で収納される。以下、「記録用紙」は、単に「用紙」と記載される。給紙ローラー(ピックアップコロ)202は、用紙Pの搬送方向に沿って用紙Pを送る送り部材であり、給紙カセット201内の用紙Pを一枚ずつ取り出す。ガイド板203は、給紙ローラー202が取り出した用紙Pを用紙搬送部400に案内する。
【0019】
用紙搬送部400は、略C字形の用紙搬送路401と、用紙搬送路401の入口側に設けられた第1搬送ローラー対(1次給紙コロ対)402と、用紙搬送路401の途中に設けられた第2搬送ローラー対(2次給紙コロ対)403と、用紙搬送路401の出口側に設けられたレジストローラー対404とを備える。用紙搬送路401は、用紙Pの搬送路(被記録媒体搬送路の一例)の一部を構成する。
【0020】
第1搬送ローラー対402は、用紙Pの搬送方向に沿って用紙Pを送る送り部材であり、給紙部200から給紙される用紙Pを挟んで用紙搬送路401に送出する。第2搬送ローラー対403も送り部材である。第2搬送ローラー対403は、第1搬送ローラー対402が送出した用紙Pを挟んで用紙搬送方向に搬送する。
【0021】
レジストローラー対404は、第2搬送ローラー対403によって搬送されてきた用紙Pの斜行補正を行う。そして、レジストローラー対404は、用紙Pへの画像形成のタイミングと用紙Pの搬送とを同期させるために用紙Pを一時待機させた後、用紙Pを画像形成タイミングに合わせて画像形成部300に送出する。
【0022】
画像形成部300は、搬送装置310と、搬送装置310の上方に配置された4種類のインクジェットヘッド(記録ヘッドの一例)340a、340b、340c、及び340dと、搬送装置310に対して用紙Pの搬送方向の下流側に配置された搬送ガイド350とを備える。図示しないが、4種類のインクジェットヘッド340a、340b、340c、及び340dにはそれぞれ、複数のノズルが設けられている。複数のノズルからインク滴が吐出されて、用紙Pに文字、図等の画像が形成される。なお、画像形成部300は、乾燥装置を備えてもよい。乾燥装置は、インクジェットヘッド340a、340b、340c、及び340dから用紙Pへ向けて吐出されたインク滴を乾燥させる。
【0023】
搬送装置310は、ベルト速度検知ローラー311と、吸着ローラー312と、駆動ローラー313と、テンションローラー314と、一対のガイドローラー315と、無端状の搬送ベルト320と、吸引部330とを備える。搬送装置310は、装置筐体100内において、4種類のインクジェットヘッド340a、340b、340c、及び340dに対向して配置される。搬送ベルト320は、ベルト速度検知ローラー311、駆動ローラー313、テンションローラー314及び一対のガイドローラー315の間に張設されている。搬送ベルト320は、用紙Pの搬送方向に駆動されて、用紙Pを搬送する。
【0024】
搬送ベルト320の材料には、例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はポリカーボネイト(PC)が使用される。好適には、搬送ベルト320の厚みムラを軽減できることから、ポリイミド又はポリアミドイミドが使用される。また、搬送ベルト320の裏面側(吸引部330側)に、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のゴム材からなる層が形成されていてもよい。搬送ベルト320の厚みは、例えば、100μmである。
【0025】
テンションローラー314は、搬送ベルト320が撓まないように、搬送ベルト320に張力を与える。搬送装置310は、搬送ベルト320が蛇行した際に、その蛇行に応じてテンションローラー314の軸心の方向を変化させる機構を含んでもよい。斯かる機構により、搬送ベルト320の蛇行が補正される。
【0026】
ベルト速度検知ローラー311は、吸引部330に対して用紙Pの搬送方向の上流側に配置され、搬送ベルト320との間に発生する摩擦によって回転する。ベルト速度検知ローラー311はパルス板(図示せず)を含み、パルス板は、ベルト速度検知ローラー311と一体になって回転する。パルス板の回転速度を測定することにより、搬送ベルト320の回転速度が検知される。したがって、搬送ベルト320の回転速度に速度ムラが発生した場合に、駆動ローラー313の回転数を制御して、速度ムラを補正することが可能となる。
【0027】
駆動ローラー313は、吸引部330に対して用紙Pの搬送方向の下流側に配置される。好適には、駆動ローラー313は、ベルト速度検知ローラー311と共に搬送ベルト320の平面性を維持できるように配置される。また、斯かる配置により、搬送ベルト320の蛇行補正が行われる際にも、搬送ベルト320の平面性が維持される。
【0028】
駆動ローラー313はモーター(図示せず)によって回転駆動され、搬送ベルト320との間に発生する摩擦により、
図1の紙面において反時計回りの方向に搬送ベルト320を回転させる。駆動ローラー313の直径は、例えば、30.0mmである。
【0029】
搬送ベルト320の速度ムラ補正(駆動ローラー313の回転数補正)が実施される場合、駆動ローラー313の慣性モーメントは小さい方が好ましい。即ち、駆動ローラー313は軽い方が好ましい。したがって、本実施形態では、駆動ローラー313として、例えばアルミパイプや三ツ矢管のような中空管が好適に使用される。なお、搬送ベルト320の速度ムラ補正が実施されない場合は、フライホイール効果によって駆動ローラー313の回転を安定させるために、駆動ローラー313の慣性モーメントは大きい方が好ましい。即ち、駆動ローラー313は重い方が好ましく、駆動ローラー313の材料として中実の金属材が好適に使用される。
【0030】
搬送ベルト320が、ポリイミド等の樹脂材からなる場合、駆動ローラー313の表面層は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム、又はニトリルゴム等のゴム材で構成される。画像形成部300が水系インクを用いて用紙Pに画像を形成する場合、ゴム材の膨潤を防ぐために、駆動ローラー313の表面層の材料としてEPDMが使用されることが好ましい。ゴム材からなる表面層の厚みは、例えば、1.0mmである。また、搬送ベルト320の裏面側に、EPDM等のゴム材からなる層が形成されている場合、駆動ローラー313の表面層は、金属で構成されていてもよい。駆動ローラー313の表面層がアルミニウムからなる場合は、摩耗防止のために、駆動ローラー313の表面にアルマイト処理が施されていてもよい。
【0031】
一対のガイドローラー315は、吸引部330よりも下方に配置され、吸引部330下方の空間を維持する。斯かる配置により、吸引部330下方における搬送ベルト320と吸引部330との接触を防止できる。また、一対のガイドローラー315のうち、駆動ローラー313に近いガイドローラー315は、駆動ローラー313に対する搬送ベルト320の巻き掛け量を維持する。一対のガイドローラー315のうち、テンションローラー314に近いガイドローラー315は、蛇行補正が安定して実施できるように、テンションローラー314に対する搬送ベルト320の巻き掛け量を維持する。
【0032】
4種類のインクジェットヘッド340a、340b、340c、及び340dは、用紙Pの搬送方向の上流側から下流側に向けて並設される。インクジェットヘッド340a、340b、340c、及び340dの各々は、搬送ベルト320の幅方向(用紙Pの搬送方向に直交する方向)に配列された複数のノズル(図示せず)を備えている。インクジェットヘッド340a、340b、340c、及び340dはライン型と称される。即ち、インクジェット記録装置1は、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置である。
【0033】
ここで、一般的なラインヘッド方式のインクジェット記録装置について説明する。ラインヘッド方式のインクジェット記録装置は、1色のインク滴を被記録媒体へ向けて吐出するために、被記録媒体の幅以上の長さを有するインクジェットヘッドを単体で備えるか、又は、被記録媒体の搬送方向に直交する方向(被記録媒体の幅方向)に沿って配置される複数個のインクジェットヘッドを備える。複数色のインク滴を吐出するインクジェット記録装置では、各色に対応する単体のインクジェットヘッド又は複数個のインクジェットヘッドの組みが、被記録媒体の搬送方向に沿って並べられる。インクジェットヘッドは固定されており、インクジェットヘッドの下方を被記録媒体が搬送される。搬送される被記録媒体へ向けて、インクジェットヘッドからインク滴が吐出されることにより、被記録媒体に画像が形成される。なお、シリアルヘッド方式のインクジェット記録装置では、被記録媒体の搬送が被記録媒体搬送路の途中で停止し、停止した被記録媒体へ向けて、インクジェットヘッドが動きながらインク滴を吐出する。
【0034】
第1実施形態に係るインクジェット記録装置1の説明に戻る。インクジェットヘッド340aの複数のノズルの各々は、インクジェットヘッド340a内に形成された加圧室(図示せず)に連通している。加圧室はインクジェットヘッド340a内に形成されたインク液室(図示せず)に連通している。そして、インク液室はインク供給チューブ(図示せず)を介してブラック(Bk)のインクタンク(図示せず)に連通接続されている。
【0035】
インクジェットヘッド340bの複数のノズルの各々は、インクジェットヘッド340b内に形成された加圧室(図示せず)に連通している。加圧室はインクジェットヘッド340b内に形成されたインク液室(図示せず)に連通している。そして、インク液室はインク供給チューブ(図示せず)を介してシアン(C)のインクタンク(図示せず)に連通接続されている。
【0036】
インクジェットヘッド340cの複数のノズルの各々は、インクジェットヘッド340c内に形成された加圧室(図示せず)に連通している。加圧室はインクジェットヘッド340c内に形成されたインク液室(図示せず)に連通している。そして、インク液室はインク供給チューブ(図示せず)を介してマゼンタ(M)のインクタンク(図示せず)に連通接続されている。
【0037】
インクジェットヘッド340dの複数のノズルの各々は、インクジェットヘッド340d内に形成された加圧室(図示せず)に連通している。加圧室はインクジェットヘッド340d内に形成されたインク液室(図示せず)に連通している。そして、インク液室はインク供給チューブ(図示せず)を介してイエロー(Y)のインクタンク(図示せず)に連通接続されている。
【0038】
吸引部330は、搬送ベルト320を介して4種類のインクジェットヘッド340a、340b、340c、及び340dと対向するように搬送ベルト320の裏面側に配置される。吸引部330は、空気流通室(気体流通室の一例)331と、空気流通室331の上面開口を覆うガイド部材332と、吸引装置336とを備える。ガイド部材332は、搬送ベルト320を介して用紙Pを支持する。
【0039】
吸着ローラー312は従動ローラーである。吸着ローラー312は、搬送ベルト320を介してガイド部材332に対向し、レジストローラー対404から送出された用紙Pを搬送ベルト320上へ誘導して、搬送ベルト320に吸着させる。
【0040】
吸着ローラー312の慣性モーメントは、用紙Pが吸着ローラー312に衝突することにより発生する衝突振動を緩和するために、小さい方が好ましい。即ち、吸着ローラー312は軽い方が好ましい。例えば、吸着ローラー312として、アルミパイプや三ツ矢管のような中空管が好適に使用される。吸着ローラー312がアルミニウムからなる場合は、摩耗防止のために、吸着ローラー312の表面にアルマイト処理が施されていてもよい。
【0041】
本実施形態では、吸着ローラー312を搬送ベルト320側(ガイド部材332側)へ押圧する押圧力が吸着ローラー312に付与されている。これにより、レジストローラー対404による用紙Pの搬送速度と搬送ベルト320の回転速度との間に差が生じている場合でも、レジストローラー対404と吸着ローラー312との間で用紙Pを撓ませて、用紙Pの搬送ベルト320への密着開始位置を、吸着ローラー312が配置された位置に対応させることができる。
【0042】
吸引装置336は、例えばファンである。但し、吸引装置336はファンに限定されるものではなく、例えば真空ポンプであってもよい。吸引装置336が駆動することにより、吸引部330が搬送ベルト320を介して用紙Pを吸引する。
【0043】
搬送ガイド350は、搬送ベルト320から排出される用紙Pを用紙排出部500に案内する。用紙排出部500は、排出ローラー対501と、排出トレイ502とを備える。排出トレイ502は、装置筐体100に形成された排出口101から外部に突出するように装置筐体100に固定されている。
【0044】
搬送ガイド350を通過した用紙Pは、排出ローラー対501によって排出口101の方向に送出され、排出トレイ502に案内されて排出口101を介して装置筐体100の外部に排出される。
【0045】
空気流通室331は、上面が開口した有底筒状の箱形部材によって形成されている。吸引装置336は、空気流通室331の下方に配置される。空気流通室331を形成する箱形部材の底壁には、吸引装置336に対応して排気口(図示せず)が形成されている。吸引装置336は電源(図示せず)に接続されている。吸引装置336が駆動することにより、空気流通室331内に負圧が発生する。この負圧により、搬送ベルト320を介して用紙Pが吸引される。
【0046】
図2は、ガイド部材332を示す平面図であり、4種類のインクジェットヘッド340a、340b、340c、及び340dとガイド部材332との位置関係を示している。なお、
図2では、理解し易くするために、搬送ベルト320は図示していない。
【0047】
図2に示すように、ブラック(Bk)用のインクジェットヘッド340aは、3個のインクジェットヘッド341を含む。3個のインクジェットヘッド341は、ガイド部材332の幅方向(用紙搬送方向に直交する方向)に沿って千鳥足状(千鳥状)に配置される。
【0048】
シアン(C)用のインクジェットヘッド340bは、3個のインクジェットヘッド342を含む。3個のインクジェットヘッド342は、ガイド部材332の幅方向に沿って千鳥足状に配置される。
【0049】
マゼンタ(M)用のインクジェットヘッド340cは、3個のインクジェットヘッド343を含む。3個のインクジェットヘッド343は、ガイド部材332の幅方向に沿って千鳥足状に配置される。
【0050】
イエロー(Y)用のインクジェットヘッド340dは、3個のインクジェットヘッド344を含む。3個のインクジェットヘッド344は、ガイド部材332の幅方向に沿って千鳥足状に配置される。
【0051】
ガイド部材332の表面(搬送ベルト320側の面)333には、複数の溝334が形成されている。複数の溝334は、用紙搬送方向に直交する方向に延びる長円状の第1溝334aと、用紙搬送方向に延びる長円状の第2溝334bとを含む。
図3はガイド部材332を示す一部拡大断面図である。
図2及び
図3に示すように、複数の溝334の各々に対応して、ガイド部材332をその厚さ方向に貫通する貫通孔335が形成されている。貫通孔335の断面は円形状である。
【0052】
図4は、搬送ベルト320を示す平面図である。
図4に示すように、搬送ベルト320には複数の吸引孔321が穿孔されている。吸引孔321は千鳥掛け状(千鳥状)に配置される。
【0053】
空気流通室331(
図1参照)は、ガイド部材332の貫通孔335(
図2参照)及び溝334を介して、搬送ベルト320の吸引孔321(
図4参照)に連通する。
【0054】
[インクジェット記録装置1の動作]
次に、
図1を参照して、インクジェット記録装置1の動作について説明する。給紙ローラー202は、給紙カセット201から用紙Pを取り出す。取り出された用紙Pは、ガイド板203によって第1搬送ローラー対402に導かれる。複数枚の用紙Pが、給紙カセット201に積み重ねられた状態で収容されている場合、給紙ローラー202は、最上部の用紙Pを給紙カセット201から取り出す。
【0055】
用紙Pは第1搬送ローラー対402によって用紙搬送路401内に送出され、第2搬送ローラー対403によって用紙搬送方向に搬送される。そして、用紙Pはレジストローラー対404に当接して停止し、斜行補正が行われる。そして、画像形成タイミングに合わせて用紙Pが画像形成部300に送出される。
【0056】
用紙Pは吸着ローラー312によって搬送ベルト320上に導かれ、搬送ベルト320に吸着される。好適には、用紙Pのその幅方向の中心が、搬送ベルト320のその幅方向の中心と一致するように、用紙Pが搬送ベルト320に導かれる。用紙Pは、搬送ベルト320に穿孔された複数の吸引孔321の一部または全部を覆う。吸引部330は、ガイド部材332の貫通孔335及び溝334、並びに搬送ベルト320の吸引孔321を介して空気(気体の一例)を吸引しており、空気流通室331には負圧が発生している。これにより、負圧が用紙Pに作用して、用紙Pが搬送ベルト320に吸着される。そして、用紙Pは、搬送ベルト320の進行に伴って用紙搬送方向に搬送される。
【0057】
搬送ベルト320により、4種類のインクジェットヘッド340a(341)、340b(342)、340c(343)、及び340d(344)の各々に対向する位置へ用紙Pの各部分が連続して搬送される。この間に、4種類のインクジェットヘッド340a(341)、340b(342)、340c(343)、及び340d(344)の各々から各色のインク滴が用紙Pへ向けて吐出される。これにより、用紙Pに画像が形成される。
【0058】
用紙Pは、搬送ベルト320から搬送ガイド350へ搬送される。搬送ガイド350を通過した用紙Pは、排出ローラー対501によって排出口101の方向に送出され、排出トレイ502に案内されて排出口101を介して装置筐体100の外部に排出される。
【0059】
以上説明したラインヘッド方式のインクジェット記録装置1によれば、インクジェットヘッド340a(341)、340b(342)、340c(343)、及び340d(344)の下方を用紙Pが搬送される。よって、用紙Pの搬送速度を上げることで、記録速度を上げることが可能となる。例えば、インクジェット記録装置1では、用紙Pの搬送速度を900mm/s、印刷速度をA4横サイズ紙で150枚/分とすることが可能である。
【0060】
[ガイド部材332の構成]
図2に示すように、ガイド部材332の表面333には、用紙搬送方向に交差する方向に長い複数の第1溝334aが形成されており、第1溝334a内に第1貫通孔335aが設けられている。第1実施形態では、第1溝334aは、ガイド部材332の幅方向(用紙搬送方向に直交する方向)に長い長円状である。斯かる構成によれば、搬送ベルト320が蛇行しても、搬送ベルト320の吸引孔321がガイド部材332の溝334(第1溝334a)から外れ難くい。
【0061】
ガイド部材の表面に、用紙搬送方向に長い溝のみが形成されている場合、搬送ベルトが蛇行した際に、搬送ベルトの吸引孔がガイド部材の溝から脱落し易い。搬送ベルトの蛇行補正が実行される場合でも、確実に補正できないとき(搬送ベルトの姿勢が所期の姿勢にならないとき)は、搬送ベルトの吸引孔がガイド部材の溝から脱落する虞がある。また、搬送ベルトの蛇行補正が実行されている間に、搬送ベルトの吸引孔がガイド部材の溝から脱落する虞がある。
【0062】
搬送ベルトの吸引孔がガイド部材の溝から脱落すると、用紙に作用する吸引力(用紙を搬送ベルトへ吸着させる吸着力)が直ちに低下して、用紙の浮きが発生する。これに対し、第1実施形態では、搬送ベルト320の吸引孔321がガイド部材332の溝334(第1溝334a)から脱落し難いので、用紙Pの浮きが抑制される。
【0063】
また、第1実施形態では、第1溝334aが、ガイド部材332の両端部(第1端部337a及び第2端部337c)に形成されている。ガイド部材332の第1端部337a及び第2端部337cは、用紙Pの端(用紙搬送方向に直交する方向の端)が通過する領域である。斯かる構成によれば、ガイド部材332の幅方向(搬送ベルト320の幅方向)に用紙Pの位置ずれが発生しても、用紙Pの端がガイド部材332の溝334(第1溝334a)から外れ難くい。この結果、用紙Pの端の浮きが抑制される。
【0064】
ここで、
図5を参照して、用紙Pの端の浮きが抑制される効果について説明する。
図5は、ガイド部材332の両端部337a、337cに設けられた第1溝334aの効果を説明するための図である。ここでは、ガイド部材332の一方の端部337aに設けられた第1溝334aを例に、用紙Pの端の浮きが抑制される効果について説明する。
【0065】
図5(a)は、ガイド部材の一方の端部(端部337a)に形成された第1溝334aと用紙Pとの位置関係を示している。
図5(b)は、ガイド部材の一方の端部に形成された溝601と用紙Pとの位置関係を示している。溝601は、用紙搬送方向に延びる長円状の溝であり、ガイド部材に形成された貫通孔602と連通している。溝601は、本実施形態の溝334に相当するものであり、貫通孔602は、本実施形態の貫通孔335に相当するものである。
【0066】
図5(b)に示すように、ガイド部材の端部に、用紙搬送方向に長い溝601のみが形成されている場合、用紙搬送方向に直交する方向に用紙Pの位置ずれが発生した際に、用紙Pの端がガイド部材の溝601から外れ易い。用紙Pの端がガイド部材の溝601から外れると、用紙Pの端が浮くことがある。これに対し、
図5(a)に示すように、第1実施形態では、用紙搬送方向に直交する方向に用紙Pの位置ずれが発生しても、用紙Pの端がガイド部材332の第1溝334aから外れ難くいので、用紙Pの端の浮きが抑制される。
【0067】
なお、ガイド部材332の第1端部337a及び第2端部337cは、搬送される用紙Pの端に対応して設定される。ガイド部材332の第1端部337a及び第2端部337cを、すべての用紙に対応させて設定することができない場合は、定型紙など一般に多く流通しているサイズの用紙の端にあわせて、ガイド部材332の第1端部337a及び第2端部337cを設定する。
【0068】
更に、第1実施形態では、
図2に示すように、用紙搬送方向に長い複数の第2溝334bがガイド部材332の中央部337bに形成されており、第2溝334b内に第2貫通孔335bが設けられている。ガイド部材332の中央部337bは、ガイド部材332の第1端部337a及び第2端部337cに挟まれた領域である。
【0069】
第1溝334aは、用紙搬送方向に直交する方向に長いため、搬送ベルト320と第1溝334aのエッジとの間に、用紙搬送方向の摩擦が発生し易い。このため、ガイド部材332の表面333の全面に第1溝334aが配置された場合、搬送速度ムラが発生する虞がある。これに対し、第1実施形態では、ガイド部材332の表面333に、用紙搬送方向に長い複数の第2溝334bが含まれるので、搬送速度ムラを抑制できる。
【0070】
なお、第2溝334bを設ける場合、用紙Pの端の浮きを抑制するために、第1溝334aをガイド部材332の第1端部337a及び第2端部337cに設け、第2溝334bをガイド部材332の中央部337bに設けることが好ましい。
【0071】
搬送ベルト320の吸引孔321は、好ましくは、その少なくとも一部が用紙Pの端に対応して配置される。これにより、用紙Pの端の浮きが抑制される。例えば、ガイド部材332の第1端部337a及び第2端部337cに対向する吸引孔321の少なくとも一部が、用紙Pの端に対応して配置される。すべての用紙に対応させて搬送ベルト320の吸引孔321を配置することができない場合は、定型紙など一般に多く流通しているサイズの用紙の端にあわせて吸引孔321を配置する。
【0072】
ガイド部材332の貫通孔335は、好ましくは、その少なくとも一部が用紙Pの端に対応して配置される。これにより、用紙Pの端の浮きが抑制される。例えば、ガイド部材332の第1端部337a及び第2端部337cにおいて、第1貫通孔335aの少なくとも一部が、用紙Pの端に対応して配置される。すべての用紙に対応させてガイド部材332の貫通孔335を配置することができない場合は、定型紙など一般に多く流通しているサイズの用紙の端にあわせて貫通孔335を配置する。
【0073】
第1実施形態では、貫通孔335が、インクジェットヘッド341、342、343、及び344の各々の吐出領域345に対向するガイド部材332の各部分(各ノズル対向領域)の外側に形成されている。吐出領域345は、インクジェットヘッド341、342、343、及び344の各々のヘッド面(搬送ベルト320側の面)において、ノズル孔が形成されている領域である。斯かる構成によれば、インクジェットヘッド341、342、343、及び344の各々の下方に発生する吸引風に起因するインク滴の着弾乱れが抑制される。吸引風は、ガイド部材332の溝334及び貫通孔335、並びに搬送ベルト320の吸引孔321を介して、空気流通室331へ空気が吸引されることによって発生する。
【0074】
吸引風に起因するインク滴の着弾乱れは、インクジェットヘッド341、342、343、及び344の各々の吐出領域345に対向するガイド部材332の各部分(各ノズル対向領域)の外側に溝334が形成されることによって、より好適に抑制される。
図6は、ガイド部材332の変形例を示す平面図である。
図6に示すガイド部材332では、溝334が、各吐出領域345の外側に形成されている。斯かる構成により、吸引風に起因するインク滴の着弾乱れが抑制される。
【0075】
第1溝334aは、好ましくは、用紙Pがガイド部材332に突入する領域(用紙搬送方向の上流側の領域)に形成される。用紙搬送方向に直交する方向への用紙Pの位置ずれは、用紙Pがガイド部材332に突入する際に生じ易い。これに対して、用紙Pがガイド部材332に突入する領域に第1溝334aを形成することで、用紙Pを搬送ベルト320に確実に吸着させて、用紙搬送方向に直交する方向への用紙Pの位置ずれを抑制できる。この結果、用紙Pの端の浮きが抑制される。
【0076】
図7は、ガイド部材332の他の変形例を示す平面図である。
図7に示すガイド部材332では、第1溝334aが、用紙搬送方向の上流側の領域にのみ形成されている。斯かる構成によっても、用紙Pを搬送ベルト320に確実に吸着させて、用紙搬送方向に直交する方向への用紙Pの位置ずれを抑制することができる。したがって、用紙Pの端の浮きが抑制される。
【0077】
続いて、搬送ベルト320の変形例について説明する。
図8は搬送ベルト320の変形例を示す平面図である。
図8に示す搬送ベルト320は、吸引孔321として、第1吸引孔321a及び第2吸引孔321bを含む。第1吸引孔321aは、搬送ベルト320の両端部(第1端部322a及び第2端部322c)に形成され、第2吸引孔321bは、搬送ベルト320の中央部322bに形成される。搬送ベルト320の第1端部322a及び第2端部322cは、用紙Pの端が通過する領域であり、ガイド部材332の第1端部337a及び第2端部337cに対向する。また、搬送ベルト320の中央部322bは、搬送ベルト320の第1端部322a及び第2端部322cに挟まれた領域であり、ガイド部材332の中央部337bに対向する。
【0078】
図8に示す搬送ベルト320では、第1吸引孔321aの面積が、第2吸引孔321bの面積よりも大きい。斯かる構成によれば、搬送ベルト320が蛇行しても、搬送ベルト320の第1端部322a及び第2端部322cの吸引孔321(第1吸引孔321a)がガイド部材332の溝334(第1溝334a)から外れ難くい。よって、用紙Pの端の浮きが抑制される。また、用紙搬送方向に直交する方向に用紙Pの位置ずれが発生しても、用紙Pの端が、搬送ベルト320の第1端部322a及び第2端部322cの吸引孔321(第1吸引孔321a)から外れ難くい。よって、用紙Pの端の浮きが抑制される。
【0079】
図9は搬送ベルト320の他の変形例を示す一部拡大平面図である。
図9に示す搬送ベルト320では、搬送ベルト320の第1端部322a及び第2端部322cに配置される吸引孔321(第1吸引孔321a)の密度が、搬送ベルト320の中央部322bに配置される吸引孔321(第2吸引孔321b)の密度よりも大きい。
【0080】
斯かる構成によれば、搬送ベルト320が蛇行しても、搬送ベルト320の第1端部322a及び第2端部322cの吸引孔321(第1吸引孔321a)が、ガイド部材332の溝334(第1溝334a)から外れ難い。よって、用紙Pの端の浮きが抑制される。また、用紙搬送方向に直交する方向に用紙Pの位置ずれが発生しても、用紙Pの端が、搬送ベルト320の第1端部322a及び第2端部322cの吸引孔321(第1吸引孔321a)から外れ難くい。よって、用紙Pの端の浮きが抑制される。
【0081】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図10は本発明の第2実施形態に係るガイド部材332を示す平面図である。第2実施形態は、ガイド部材332の構成のみが第1実施形態と異なる。以下、第2実施形態について、第1実施形態と異なる事項を説明し、第1実施形態と重複する事項の説明は割愛する。
【0082】
第2実施形態では、用紙搬送方向に交差する方向に長い第1溝334aとして、用紙搬送方向に対して傾斜した第1溝334aが、ガイド部材332の表面333に形成されている。第1実施形態で説明したように、用紙搬送方向に直交する方向に長い溝は、搬送速度ムラを発生させる虞がある。これに対して、第2実施形態では、第1溝334aが、用紙搬送方向に対して傾斜しているため、第1実施形態の第1溝334aと比べて、搬送ベルト320と第1溝334aのエッジとの間に、用紙搬送方向の摩擦が発生し難い。したがって、搬送速度ムラを抑制できる。
【0083】
また、第1溝334aが、用紙搬送方向に対して傾斜している場合であっても、ガイド部材332の表面333の全面に第1溝334aが配置された場合、搬送速度ムラが発生する虞がある。これに対して、第2実施形態では、ガイド部材332の表面333に、用紙搬送方向に長い複数の第2溝334bが含まれるので、搬送速度ムラを抑制できる。
【0084】
また、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、搬送ベルト320が蛇行しても、搬送ベルト320の吸引孔321がガイド部材332の溝334(第1溝334a)から外れ難くい。よって、用紙Pの浮きが抑制される。
【0085】
また、第2実施形態によれば、用紙搬送方向に直交する方向に用紙Pの位置ずれが発生しても、用紙Pの端がガイド部材332の溝334(第1溝334a)から外れ難くい。よって、用紙Pの端の浮きが抑制される。
【0086】
また、第1実施形態と同様に、搬送ベルト320の吸引孔321は、好ましくは、その少なくとも一部が用紙Pの端に対応して配置される。これにより、用紙Pの端の浮きが抑制される。
【0087】
また、第1実施形態と同様に、ガイド部材332の貫通孔335は、好ましくは、その少なくとも一部が用紙Pの端に対応して配置される。これにより、用紙Pの端の浮きが抑制される。
【0088】
また、第1実施形態と同様に、第2実施形態では、貫通孔335が、インクジェットヘッド341、342、343、及び344の各々の吐出領域345に対向するガイド部材332の各部分(各ノズル対向領域)の外側に形成される。斯かる構成によれば、吸引風に起因するインク滴の着弾乱れが抑制される。
【0089】
また、第1実施形態で説明したように、インクジェットヘッド341、342、343、及び344の各々の吐出領域345に対向するガイド部材332の各部分(各ノズル対向領域)の外側に溝334を形成してもよい。斯かる構成により、吸引風に起因するインク滴の着弾乱れが、より好適に抑制される。
【0090】
また、第1実施形態で説明したように、第1溝334aは、好ましくは、用紙Pがガイド部材332に突入する領域(用紙搬送方向の上流側の領域)に形成される。斯かる構成により、用紙搬送方向に直交する方向への用紙Pの位置ずれを抑制して、用紙Pの端の浮きを抑制することができる。
【0091】
また、第1実施形態で説明したように、第1溝334aは、用紙搬送方向の上流側にのみ形成されてもよい。斯かる構成により、用紙搬送方向に直交する方向への用紙Pの位置ずれを抑制して、用紙Pの端の浮きを抑制することができる。
【0092】
また、第1実施形態で説明したように、搬送ベルト320の第1端部322a及び第2端部322cに形成される吸引孔321(第1吸引孔321a)の面積を、搬送ベルト320の中央部322bに形成される吸引孔321(第2吸引孔321b)の面積より大きくしてもよい。これにより、用紙Pの端の浮きが抑制される。
【0093】
また、第1実施形態で説明したように、搬送ベルト320の第1端部322a及び第2端部322cに配置される吸引孔321(第1吸引孔321a)の密度を、搬送ベルト320の中央部322bに配置される吸引孔321(第2吸引孔321b)の密度より大きくしてもよい。これにより、用紙Pの端の浮きが抑制される。
【0094】
その他にも、上記第1及び第2実施形態で説明された各事項は適宜組み合わせることが可能である。
【0095】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に種々の改変を施すことができる。
【0096】
例えば、上記実施形態では、貫通孔335の断面形状が円形状であったが、貫通孔335の断面形状は円形状に限定されるものではない。貫通孔335の断面形状は、例えば、矩形状であってもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、ライン型のインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明したが、シリアル型のインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置に本発明を適用することもできる。
【0098】
また、上記実施形態では、各色に対応して3個のインクジェットヘッドが、用紙搬送方向に直交する方向に沿って千鳥足状に配置されたが、各色に対応するインクジェットヘッドの個数は、特に限定されるものではない。例えば、各色に対応してインクジェットヘッドが単体で設けられてもよい。また、各色に対応する複数個のインクジェットヘッドの配置は千鳥足状の配置に限定されるものではなく、各色に対応する複数個のインクジェットヘッドが、用紙搬送方向に直交する方向に沿って一列に配置されてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、フルカラーで画像を形成可能なインクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、モノクロで画像を形成するインクジェット記録装置にも適用可能である。
【0100】
また、上記実施形態では、本発明をインクジェット記録装置に適用した場合について説明したが、本発明は他の画像形成装置(例えば、電子写真方式の画像形成装置)にも適用可能である。
【0101】
また、上記実施形態では、被記録媒体が用紙である場合について説明したが、被記録媒体は用紙以外(例えば、樹脂製シートや布帛)であってもよい。
【0102】
その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に種々の改変を施すことができる。