(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記故障判断部は、前記第1の検出値と前記第2の検出値との差を算出し、該差が予め定められた閾値を超えた場合に、前記第1の検出値と前記第2の検出値とが異なっていると判断する、請求項1に記載のシステム。
前記故障判断部は、前記第1の検出値から算出される第1の力と、前記第2の検出値から算出される第2の力との差を算出し、該差が予め定められた閾値を超えた場合に、前記第1の検出値と前記第2の検出値とが異なっていると判断する、請求項1または2に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るロボットシステム10について説明する。ロボットシステム10は、ロボット12と、該ロボット12を制御する制御部14とを備える。
【0012】
制御部14は、ロボット12を構成する各要素を直接的または間接的に制御する。ロボット12は、固定プレート16、ロボットベース18、旋回胴20、ロボットアーム22、ロボットハンド24、およびシステム50を備える。
【0013】
固定プレート16は、ワークセルの床(図示せず)に固定されている。ロボットベース18は、固定プレート16の上方に位置し、固定プレート16に対して固定される。旋回胴20は、ロボットベース18に鉛直軸周りに回動可能に取り付けられている。
【0014】
ロボットアーム22は、旋回胴20に第1の回転軸27を介して連結された下腕部26と、該下腕部26に第2の回動軸28を介して取り付けられた前腕部30とを有する。ロボットハンド24は、手首部32を介して、前腕部30の先端に取り付けられている。ロボットハンド24は、ワークWを把持したり、解放したりする。
【0015】
本実施形態に係るシステム50は、ロボットアーム22に荷重が掛けられた場合に該荷重を検知する。システム50は、力センサ52および故障判断部54を備える。本実施形態においては、力センサ52は、固定プレート16とロボットベース18との間に配置されている。
【0016】
力センサ52は、一方向の荷重を検出可能な検出部56を有する。本実施形態においては、検出部56は、水平方向の荷重を検知可能である。検出部56は、一対の第1の検出要素58および第2の検出要素60を有する。
【0017】
第1の検出要素58および第2の検出要素60は、互いに略同等となる検出値を得ることができる位置に配置される。ここで、本明細書にて記載されている「検出値」とは、例えば、検出要素から出力される電気信号、該電気信号から求められる歪み量または変位量等、検出要素によってもたらされる、如何なる情報をも含むものとして定義される。
【0018】
また、2つの検出値が「互いに略同等」とは、例えば、これら検出値の符号および絶対値の双方が一致している場合、検出値の符号は異なるが絶対値が一致している場合、または、一方の検出値が、他方の検出値に予め定められた係数を乗算した値となっている場合等に相当する。本実施形態においては、第1の検出要素58および第2の検出要素60は、力センサ52の同じ部位において、互いに並んで配置されている。
【0019】
第1の検出要素58および第2の検出要素60は、例えば、半導体歪ゲージもしくは金属箔歪ゲージ等の歪ゲージ、レーザ変位計、近接センサ、オプトセンサ、または、静電容量式変位計から構成され得る。例えば、1軸歪ゲージを並べて配置する場合には、第1の検出要素58(例えば、半導体歪ゲージ)と、第2の検出要素60(例えば、半導体歪みゲージ)とは、互いに平行となるように配置される。
【0020】
なお、本実施形態においては、第1の検出要素58と第2の検出要素60とは、互いに同じ種類の検出要素から構成される。しかしながら、これに限らず、第1の検出要素58と第2の検出要素60とは、異なる種類の検出要素から構成されてもよい。具体的には、第1の検出要素58が半導体歪ゲージから構成される一方で、第2の検出要素60が金属箔歪ゲージから構成されてもよい。
【0021】
第1の検出要素58および第2の検出要素60の各々は、水平方向の荷重を検出するように配置される。そして、第1の検出要素58は、ラインL
1を介して、制御部14へ接続されている。なお、第1の検出要素58および第2の検出要素60は、水平方向以外の如何なる方向の荷重を検出可能となるように、配置されてもよい。
【0022】
一方、第2の検出要素60は、ラインL
1とは別のラインL
2を介して、制御部14へ接続されている。このように、第1の検出要素58および第2の検出要素60は、それぞれ別の系統で、検出した検出値を制御部14へ送信する。
【0023】
次に、本実施形態に係るロボットシステム10の動作について説明する。ワークWに対して作業をする場合、制御部14は、ロボットアーム22を動作させてロボットハンド24を移動させ、ワークWを把持したり解放したりする。
【0024】
ロボット12の動作中に、制御部14は、第1の検出要素58から第1の検出値を、第2の検出要素60から第2の検出値を、例えば一定の周期Tでそれぞれ受信する。制御部14は、力センサ52から受信した検出値に基づいて、ロボットアーム22に掛かる力を算出する。
【0025】
ここで、ロボットアーム22やロボットハンド24が、同じワークセル内で作業をしている作業員Aに接触してしまう虞がある。ロボットアーム22等が作業員Aと接触した場合、力センサ52によって得られた検出値は、通常動作時とは異なって異常に変動する。
【0026】
制御部14は、このような検出値の異常な変動を検知したときに、ロボット12の動作を停止させる、または、ロボットアーム22が作業員Aから離反する方向へ移動させるといった、危険回避動作を実行する。
【0027】
ここで、本実施形態においては、システム50によって、上述の危険回避動作の信頼性を高めるべく、力センサ52の故障を検知することができる。具体的には、制御部14は、ロボット12の動作中において、第1の検出要素58によって検出された第1の検出値と、第2の検出要素60によって検出された第2の検出値とが、互いに異なっているか否かを判断する。
【0028】
一具体例として、制御部14は、ある時点τ
1にて第1の検出要素58から取得した第1の検出値S
1−1と、時点τ
1から周期T経過後の時点τ
2にて第1の検出要素58から取得した第1の検出値S
1−2との差δ
S1=S
1−2−S
1−1を算出する。
【0029】
ここで、差δ
S1=S
1−2−S
1−1は、例えば、第1の検出要素58から出力された電気信号の電
圧の差であり得る。または、差δ
S1=S
1−2−S
1−1は、第1の検出要素58からの出力信号に基づいて求められた歪み量(変位量
)の差であり得る。
【0030】
一方、制御部14は、時点τ
1にて第2の検出要素60から取得した第2の検出値S
2−1と、時点τ
2にて第2の検出要素60から取得した第2の検出値S
2−2との差δ
S2=S
2−2−S
2−1を算出する。
【0031】
そして、制御部14は、第1の検出値と第2の検出値との差として、差Δ
1=δ
S1−δ
S2を算出する。ここで、上述したように、第1の検出要素58および第2の検出要素60は、互いに略同等となる検出値(すなわち、歪み量、変位量等)を得ることができるように配置されている。
【0032】
したがって、第1の検出要素58および第2の検出要素60の双方が正常に機能している場合は、第1の検出値と第2の検出値とが略同等になるので、上述の差Δ
1は、比較的に小さい値となるものと考えられる。
【0033】
これに対して、差Δ
1が不適正に大きな値となっている場合、第1の検出値と第2の検出値とが大きく相違していることになる。この場合、第1の検出要素58および第2の検出要素60のいずれか一方が故障して正常に機能していないものと考えられる。
【0034】
そこで、本実施形態においては、制御部14は、この差Δ
1が、予め定められた閾値α
1を超えた場合(すなわち、|Δ
1|>α
1)に、第1の検出値と第2の検出値とが異なっているものと判断し、以って、第1の検出要素58または第2の検出要素60が故障したものと判断することができる。
【0035】
他の具体例として、第1の検出要素58または第2の検出要素60の故障を判断するために、制御部14は、ある時点τ
1にて第1の検出要素58から取得した第1の検出値S
1−1と、時点τ
1にて第2の検出要素60から取得した第2の検出値S
2−1との差Δ
2=S
1−1−S
2−1を算出する。
【0036】
そして、制御部14は、この差Δ
2が、予め定められた閾値α
2を超えた場合(すなわち、|Δ
2|>α
2)に、第1の検出値と第2の検出値とが異なっているものと判断し、以って、第1の検出要素58または第2の検出要素60が故障したものと判断する。
【0037】
また、さらに他の具体例として、制御部14は、第1の検出値および第2の検出値の各々を、予め記憶された他のレファレンス値(例えば、第1の検出要素58および第2の検出要素60が配置されている部位における計算上または理論上の値)と比較する。
【0038】
そして、制御部14は、第1の検出値および第2の検出値の各々が、このレファレンス値(すなわち、計算値または理論値)に対して設定された予め定められた範囲の許容値内(例えば、レファレンス値の±0.1%の範囲)に収まっているか否かを判断することによって、第1の検出要素58または第2の検出要素60の故障を判断してもよい。
【0039】
また、さらに他の具体例として、第1の検出要素58または第2の検出要素60の故障を判断するために、制御部14は、第1の検出値から算出される第1の力と、第2の検出値から算出される第2の力との差を算出してもよい。
【0040】
具体的には、制御部14は、時点τ
1にて第1の検出要素58から取得した第1の検出値S
1−1を、以下の式1に代入することによって、時点τ
1における第1の力F
1−1を算出する。
F
1−1=C
1S
1−1・・・(式1)。
【0041】
ここで、式1中のC
1は、較正係数であって、既知の荷重に対する各検出要素58、60の出力、すなわち、既知のFとSとの関係を実験により複数求め、例えば式1と最小二乗法とを用いることにより、求めることができる。
【0042】
同様にして、制御部14は、時点τ
1にて第2の検出要素60から取得した第2の検出値S
2−1を、以下の式2に代入することによって、時点τ
1における第2の力F
2−1を算出する。
F
2−1=C
2S
2−1・・・(式2)。
【0043】
式2中のC
2は、上述の係数C
1と同様の較正係数であって、実験的手法によって求められ得る。次いで、制御部14は、第1の力F
1−1と第2の力F
2−1との差Δ
3=F
1−1−F
2−1を算出する。
【0044】
そして、制御部14は、該差Δ
3が予め定められた閾値α
3を超えた場合(すなわち、|Δ
3|>α
3)に、第1の検出値と第2の検出値とが異なっているものと判断し、以って、第1の検出要素58または第2の検出要素60が故障したものと判断してもよい。
【0045】
また、さらに他の具体例として、制御部14は、時点τ
1にて第1の検出要素58から取得した第1の検出値S
1−1を、上記の式1に代入することによって、時点τ
1における力F
1−1を算出する。
【0046】
次いで、制御部14は、時点τ
1から周期T経過後の時点τ
2にて第1の検出要素58から取得した第1の検出値S
1−2を、以下の式3に代入することによって、時点τ
2における力F
1−2を算出する。
F
1−2=C
1S
1−2・・・(式3)。
【0047】
次いで、制御部14は、力F
1−1と力F
1−2との差δ
F1=F
1−1−F
1−2を算出する。一方、制御部14は、時点τ
1にて第2の検出要素60から取得した第2の検出値S
2−1を、上記の式2に代入することによって、時点τ
1における力F
2−1を算出する。
【0048】
次いで、制御部14は、時点τ
2にて第2の検出要素60から取得した第2の検出値S
2−2を、以下の式4に代入することによって、時点τ
2における力F
2−2を算出する。
F
2−2=C
2S
2−2・・・(式4)。
【0049】
次いで、制御部14は、力F
2−1と力F
2−2との差δ
F2=F
2−1−F
2−2を算出する。次いで、制御部14は、差δ
F1と差δ
F2との差Δ
4=δ
F1−δ
F2を算出する。そして、制御部14は、該差Δ
4が予め定められた閾値α
4を超えた場合(すなわち、|Δ
4|>α
4)に、第1の検出値と第2の検出値とが異なっているものと判断し、以って、第1の検出要素58または第2の検出要素60が故障したものと判断してもよい。
【0050】
また、さらに他の具体例として、制御部14は、上述の差Δ
1、Δ
2、Δ
3、およびΔ
4の少なくとも2つを並行して算出し、差Δ
1、Δ
2、Δ
3、およびΔ
4の少なくとも2つが、各々に対して設定された閾値(すなわち、対応する閾値α
1、α
2、α
3、またはα
4)を超えたか否かを判断してもよい。
【0051】
例えば、制御部14は、上述の差Δ
1を算出し、該差Δ
1が閾値α
1を超えたか否か(すなわち、|Δ
1|>α
1であるか否か)を判断する。これと並行して、制御部14は、上述の差Δ
4を算出し、該差Δ
4が閾値α
4を超えたか否か(すなわち、|Δ
4|>α
4であるか否か)を判断する。
【0052】
そして、制御部14は、差Δ
1が閾値α
1を超えた場合、または、差Δ
4が閾値α
4を超えた場合に、第1の検出要素58または第2の検出要素60が故障したものと判断してもよい。
【0053】
このように、本実施形態においては、制御部14は、第1の検出値と第2の検出値とが異なっているか否かを判断し、以って、第1の検出要素58または第2の検出要素60が故障したか否かを判断する故障判断部54としての機能を含む。この故障判断部54の機能によって、第1の検出要素58または第2の検出要素60が故障したと判断された場合、制御部14は、ロボット12の動作を緊急停止する。
【0054】
この構成によれば、制御部14は、第1の検出要素58または第2の検出要素60の故障を検知した場合に、ロボット12の動作を即座に停止できる。これにより、ロボットアーム22と作業員Aとの接触による事故を、さらに確実に回避することができる。
【0055】
また、本実施形態においては、一方向の荷重を検知するための検出部56を、第1の検出要素58および第2の検出要素60によって構成し、且つ、互いに異なる2つの系統で、検出した検出値を制御部14へ送信している。
【0056】
この構成によれば、仮に、何らかの要因で第1の検出要素58および第2の検出要素60のうちのいずれか一方が故障したとしても、検出部56は、第1の検出要素58および第2の検出要素60のうちの他方によって、一方向の荷重を検知できる。
【0057】
すなわち、第1の検出要素58および第2の検出要素60のうちのいずれか一方が故障したとしても、力センサ52を引き続き機能させることができる。このため、制御部14は、力センサ52からの検出値によって、ロボットアーム22と作業員Aとの接触を検知できるので、ロボットアーム22と作業員Aとの接触による事故を確実に回避することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、第1の検出要素58と第2の検出要素60とは、互いに同じ種類の検出要素から構成されている。この構成によれば、第1の検出値と第2の検出値とが、互いに異なっているか否かを、より高精度に判断することができる。
【0059】
なお、上述したように、第1の検出要素58と第2の検出要素60とは、互いに異なる種類の検出要素から構成されてもよい。この構成によれば、ロボット12を厳しい環境下で使用する場合等において、環境に起因して第1の検出要素58および第2の検出要素60の双方が故障してしまうリスクを、低減させることができる。
【0060】
また、本実施形態においては、一例として、力センサ52が、固定プレート16とロボットベース18との間に配置されている場合について述べた。しかしながら、これに限らず、力センサ52は、例えば、ロボットアーム22の第1の回転軸27、第2の回動軸28、または手首部32に取り付けられてもよい。また、複数の力センサ52を設けてもよい。
【0061】
次に、
図2を参照して、本発明の他の実施形態に係るロボットシステム70について説明する。なお、以下の実施形態において、既に述べた実施形態と同様の要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0062】
ロボットシステム70は、ロボット72と、該ロボット72を制御する制御部74とを備える。ロボット72は、固定プレート16、ロボットベース18、旋回胴20、ロボットアーム22、ロボットハンド24、およびシステム90を備える。
【0063】
本実施形態に係るシステム90は、上述のシステム50と同様に、ロボットアーム22に荷重が掛けられた場合に該荷重を検知する。システム90は、力センサ92および故障判断部94を備える。本実施形態においては、力センサ92は、固定プレート16とロボットベース18との間に配置されている。
【0064】
次に、
図3〜
図5を参照して、本実施形態に係る力センサ92について説明する。なお、以下の説明における軸方向は、
図3中の軸線Oに沿う方向を示し、径方向とは、軸線Oを中心とする円の半径方向を示し、周方向とは、軸線Oを中心とする円の円周方向を示す。また、軸方向上方とは、
図3の紙面上方を示すものとする。
【0065】
力センサ92は、軸方向に互いに対向して配置される一対のリング95および96と、リング95および96の間で延在する複数の脚98、100、102、および104とを有する。
【0066】
リング95および96は、互いに同心に配置され、各々の中心軸線は、軸線Oに一致する。リング95および96の中央部には、軸方向に延びる貫通孔106が形成されている。この貫通孔106内に、ロボット72の関節等の部材が嵌着され、これにより、力センサ92がロボット72に固定される。
【0067】
脚98、100、102、および104は、周方向に略等間隔(すなわち、約90°)で配列する。
図4および
図5に示すように、脚98は、周方向に延びる横梁108と、横梁108の周方向中央部から軸方向下方へ延び、その下端にてリング96に連結する縦梁110とを含む。
【0068】
リング95の外周縁のうち、脚98の上方に位置する部分には、扇状の切欠き部112が形成されている。脚98の横梁108の周方向両端は、該切欠き部112の周方向両端面に連結され、支持されている。また、縦梁110には、径方向に貫通する開口部114が形成されている。
【0069】
この開口部114によって、縦梁110は、周方向に撓み易くなっている。これにより、小さい荷重が力センサ92に作用した場合でも、縦梁110は、周方向に比較的大きく撓むことになる。
【0070】
一方、横梁108は、例えば力センサ92にz軸方向の力が掛けられた場合、縦梁110から力を受けてz軸方向に撓むことになる。なお、脚100、102、および104も、脚98と同様の構成を備える。
【0071】
力センサ92は、計8個の検出部116、118、120、122、124、126、128、および130を有する。これら検出部116、118、120、122、124、126、128、および130の各々によって、力センサ92は、
図3中のx軸方向、y軸方向、z軸方向の荷重と、x軸周り、y軸周り、およびz軸周りのモーメントといった、6軸方向の力(モーメントを含む)を検出することができる。
【0072】
具体的には、検出部116および118は、脚98に設けられている。検出部116は、脚98の横梁108の上面に設けられている一方、検出部118は、脚98の縦梁110の周方向一方の端面に設けられている。
【0073】
図5に示すように、検出部116は、一対の第1の検出要素132および第2の検出要素134を有する。第1の検出要素132および第2の検出要素134は、互いに略同等となる検出値(すなわち、横梁108の歪み量、変位量)を得ることができるように、互いに径方向に並んで(または当接して)配置されている。
【0074】
一方、検出部118は、一対の第1の検出要素136および第2の検出要素138を有する。第1の検出要素136および第2の検出要素138は、互いに略同等となる検出値(すなわち、縦梁110の歪み量、変位量)を得ることができるように、互いに径方向に並んで(または当接して)配置されている。
【0075】
同様に、検出部120は、脚100の横梁108に設けられ、一対の第1の検出要素132および第2の検出要素134を有する。また、検出部122は、脚100の縦梁110に設けられ、一対の第1の検出要素136および第2の検出要素138を有する。
【0076】
同様に、検出部124は、脚102の横梁108に設けられ、一対の第1の検出要素132および第2の検出要素134を有する。また、検出部126は、脚102の縦梁110に設けられ、一対の第1の検出要素136および第2の検出要素138を有する。
【0077】
同様に、検出部128は、脚104の横梁108に設けられ、一対の第1の検出要素132および第2の検出要素134を有する。また、検出部130は、脚104の縦梁110に設けられ、一対の第1の検出要素136および第2の検出要素138を有する。
【0078】
第1の検出要素132、136、および第2の検出要素134、138は、例えば、半導体歪ゲージもしくは金属箔歪ゲージ等の歪ゲージ、レーザ変位計、近接センサ、オプトセンサ、または、静電容量式変位計から構成され得る。本実施形態においては、第1の検出要素132、136が半導体歪ゲージから構成される一方で、第2の検出要素134、138が金属箔歪ゲージから構成される。
【0079】
第1の検出要素132および136は、ラインL
1(
図2)を介して、制御部74へ接続されている一方、第2の検出要素134および138は、ラインL
1とは別のラインL
2を介して、制御部74へ接続されている。このように、第1の検出要素132、136、および第2の検出要素134、138は、それぞれ別の系統で、検出した検出値を制御部74へ送信する。
【0080】
次に、
図2〜
図5を参照して、本実施形態に係るロボットシステム70の動作について説明する。ロボットシステム70は、上述の実施形態と同様に、危険回避動作の信頼性を高めるべく、力センサ92の故障を検知することができる。
【0081】
具体的には、制御部74は、ロボット72の動作中において、第1の検出要素132および136によって検出された第1の検出値と、第2の検出要素134および138によって検出された第2の検出値とが、互いに異なっているか否かを判断する。
【0082】
この動作について、脚98に設けられた検出部116を例として説明する。上述したように、検出部116は、6軸方向の荷重の検出に用いられる。一具体例として、制御部74は、ある時点τ
1にて第1の検出要素132から取得した第1の検出値S
3−1と、時点τ
1から周期T経過後の時点τ
2にて第1の検出要素132から取得した第1の検出値S
3−2との差δ
S3=S
3−2−S
3−1を算出する。
【0083】
一方、制御部74は、時点τ
1にて第2の検出要素134から取得した第2の検出値S
4−1と、時点τ
2にて第2の検出要素134から取得した第2の検出値S
4−2との差δ
S4=S
4−2−S
4−1を算出する。
【0084】
そして、制御部74は、第1の検出値と第2の検出値との差として、Δ
5=δ
S3−δ
S4を算出する。制御部74は、この差Δ
5が、予め定められた閾値α
5を超えた場合(すなわち、|Δ
5|>α
5)に、第1の検出値と第2の検出値とが異なっているものと判断し、以って、第1の検出要素132または第2の検出要素134が故障したものと判断する。
【0085】
このように、本実施形態においては、制御部74は、第1の検出要素132または第2の検出要素134が故障したか否かを判断する故障判断部94としての機能を含む。この故障判断部94の機能によって、第1の検出要素132または第2の検出要素134が故障したと判断された場合、制御部74は、ロボット12の動作を緊急停止する。
【0086】
同様にして、制御部74は、故障判断部94として機能して、他の検出部118、120、122、124、126、128、および130の各々に関しても、第1の検出要素132、136または第2の検出要素134、138の故障を判断することができる。
【0087】
この構成によれば、制御部74は、第1の検出要素132、136および第2の検出要素134、138の故障を検知し、且つ、該故障を検知した場合に、ロボット12の動作を即座に停止できる。これにより、ロボットアーム22と作業員Aとの接触による事故を、さらに確実に回避することができる。
【0088】
また、本実施形態においては、6軸方向の荷重を検知するための検出部116、118、120、122、124、126、128、および130の各々を、第1の検出要素132、136と、第2の検出要素134、138とによって構成し、且つ、互いに異なる2つの系統で、検出した検出値を制御部74へ送信している。
【0089】
この構成によれば、仮に、何らかの要因で第1の検出要素132、136、および第2の検出要素134、138のうちのいずれか一方が故障したとしても、力センサ92を引き続き機能させることができる。このため、制御部74は、力センサ92からの検出値によって、ロボットアーム22と作業員Aとの接触を引き続き検知できるので、ロボットアーム22と作業員Aとの接触による事故を確実に回避することができる。
【0090】
なお、本実施形態においては、一例として、力センサ92が、固定プレート16とロボットベース18との間に配置されている場合について述べた。しかしながら、これに限らず、力センサ92は、例えば、ロボットアーム22の第1の回転軸27、第2の回動軸28、または手首部32に取り付けられてもよい。
【0091】
次に、
図6を参照して、本発明の他の実施形態に係る力センサ140について説明する。本実施形態に係る力センサ140は、上述の力センサ92と以下の点で相違する。すなわち、力センサ140においては、縦梁110に設けられた検出部を構成する2つの検出要素が、互いに離隔して配置されている。
【0092】
この構成について、脚98の縦梁110に設けられた検出部118’を例として説明する。この検出部118’は、縦梁110の周方向一方の端面に配置された第1の検出要素136’と、縦梁110の周方向他方の端面に配置された第2の検出要素138’とを含む。
【0093】
ここで、第1の検出要素136’および第2の検出要素138’は、互いに略同等となる検出値(すなわち、縦梁110の歪み量、変位量)を得ることができる位置に、配置される。具体的には、第1の検出要素136’および第2の検出要素138’は、縦梁110における軸方向の同じ高さの位置、さらに言えば、縦梁110の(軸方向と周方向の)中心を基準として対称となる位置に、配置される。
【0094】
ここで、仮に、力センサ140にx軸方向の荷重が加えられたとすると、縦梁110の上端が横梁108によってx軸方向へ押されることにより、縦梁110が周方向へ撓むことになる。
【0095】
この場合、縦梁110の周方向一方の端面は引き延ばされるので、第1の検出要素136’は引っ張られる一方、縦梁110の周方向他方の端面は圧縮されるので、第2の検出要素138’は圧縮されることになる。したがって、第1の検出要素136’によって得られる第1の検出値と、第2の検出要素138’によって得られる第2の検出値とは、正負が逆の値となる。
【0096】
しかしながら、上述したように、第1の検出要素136’および第2の検出要素138’は、互いに略同等となる検出値を得ることができる位置、具体的には、縦梁110において互いに対称な位置に位置決めされているので、第1の検出値と第2の検出値の絶対値は、略同等となる。
【0097】
したがって、
図6に示すように第1の検出要素136’および第2の検出要素138’を互いに離隔するように配置させたとしても、上述した第1の検出値と第2の検出値との差Δ
1やΔ
2を適正に算出できるので、第1の検出要素136’または第2の検出要素138’の故障を検知することができる。
【0098】
次に、
図7を参照して、本発明の一実施形態に係る、使用者Aとロボット12との接触の危険性を回避する方法について説明する。
図7に示すフローは、使用者からワークWへの作業命令を受け付けたときに開始する。
【0099】
ステップS1において、第1の検出要素および第2の検出要素から、第1の検出値および第2の検出値が取得される。例えば、
図1に示す実施例の場合、このステップS1において、制御部14は、第1の検出要素58および第2の検出要素60から、第1の検出値および第2の検出値を受信する。
【0100】
ステップS2において、第1の検出値と第2の検出値とが互いに異なっているか否か判断される。例えば、
図1に示す実施例の場合、このステップS2において、制御部14は、上述の差Δ
1=δS1−δS2を算出する。または、制御部14は、このステップS2において、第1の検出値から算出される第1の力と、第2の検出値から算出される第2の力との差Δ
3を算出してもよい。
【0101】
そして、制御部14は、算出した差Δ
1が閾値α
1を超えたか否かを判断する。制御部14は、算出した差Δ
1が閾値α
1を超えたと判断した場合、ステップS4へ進む。一方、制御部14は、差Δ
1が閾値α
1を超えていないと判断した場合、ステップS3へ進む。
【0102】
ステップS3において、使用者から作業終了命令を受け付けたか否かが判断される。使用者から作業終了命令を受け付けていない場合、動作フローは、ステップS1へ戻る一方、作業終了命令を受け付けた場合、動作フローは、終了する。
【0103】
一方、S2にてYESと判断された場合、ロボットの動作が緊急停止される。具体的には、
図1に示す実施例の場合、制御部14は、S2にてYESと判断した場合、第1の検出要素58または第2の検出要素60が故障したものと判断し、ロボット12に指令を送り、ロボット12の全ての動作を停止する。
【0104】
この方法により、第1の検出要素および第2の検出要素の故障を検知した場合に、ロボット12の動作を即座に停止できる。これにより、ロボットアーム22と作業員Aとの接触による事故を、より確実に回避することができる。
【0105】
なお、上述の実施形態においては、第1の検出要素58、132、136を、半導体歪ゲージによって構成した。このように半導体歪ゲージを用いることによって、高感度に歪を検出し、力検出の分解能を向上させることができるので、小さい接触力を検知したときでもロボットを停止させることが可能となる。これにより、より安全性を高めることができる。
【0106】
また、上述の実施形態においては、第1の検出要素132、136と第2の検出要素134、138とを、それぞれ半導体歪ゲージと金属箔歪ゲージとから構成することによって、互いに異なる種類とした場合について述べた。
【0107】
しかしながら、これに限らず、第1の検出要素132、136と第2の検出要素134、138とを同方式の歪みゲージから構成し、一方に用いられる接着剤を、他方とは異ならせることによって、互いに異なる種類の検出要素とすることもできる。この場合においても、用いられる接着剤によって、環境等への耐性が異なるので、環境に起因して双方が故障してしまうリスクを低減させることができる。
【0108】
また、上述の実施形態においては、検出部は、一対の第1の検出要素および第2の検出要素を有する場合について述べたが、これに限らず、検出部は、3以上の検出要素を有していてもよい。
【0109】
一例として、故障判断部は、複数の検出要素の各々から取得した複数の検出値の平均値を算出し、複数の検出値の各々と、該平均値との差を算出する。そして、故障判断部は、該差が、予め定められた閾値を超えたか否かを判断することによって、複数の検出要素の各々の故障を判断してもよい。
【0110】
また、上述の実施形態においては、いわゆる人協調型の産業用ロボットにおいて、ロボットと作業員との接触力を検出する力センサの例について述べたが、本発明の概念は、ロボットの手首等に取り付ける一般的な産業用ロボットの力センサの信頼性を向上させることにも、有効である。また、力センサの形状と検出要素についても、上述の例に必ずしも限定されるものではない。
【0111】
以上、発明の実施形態を通じて本発明を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、本発明の実施形態の中で説明されている特徴を組み合わせた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得るが、これら特徴の組み合わせの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。さらに、上述の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることも当業者に明らかである。
【0112】
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、工程、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。