特許第5980919号(P5980919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エアバス オペレーションズ ゲーエムベーハーの特許一覧

特許5980919翼の翼端装置およびそのような翼端装置を有する翼
<>
  • 特許5980919-翼の翼端装置およびそのような翼端装置を有する翼 図000002
  • 特許5980919-翼の翼端装置およびそのような翼端装置を有する翼 図000003
  • 特許5980919-翼の翼端装置およびそのような翼端装置を有する翼 図000004
  • 特許5980919-翼の翼端装置およびそのような翼端装置を有する翼 図000005
  • 特許5980919-翼の翼端装置およびそのような翼端装置を有する翼 図000006
  • 特許5980919-翼の翼端装置およびそのような翼端装置を有する翼 図000007
  • 特許5980919-翼の翼端装置およびそのような翼端装置を有する翼 図000008
  • 特許5980919-翼の翼端装置およびそのような翼端装置を有する翼 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980919
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】翼の翼端装置およびそのような翼端装置を有する翼
(51)【国際特許分類】
   B64C 3/16 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   B64C3/16
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-519457(P2014-519457)
(86)(22)【出願日】2012年7月16日
(65)【公表番号】特表2014-518181(P2014-518181A)
(43)【公表日】2014年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2012002986
(87)【国際公開番号】WO2013007396
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年6月15日
(31)【優先権主張番号】102011107251.2
(32)【優先日】2011年7月14日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/507,689
(32)【優先日】2011年7月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】311014956
【氏名又は名称】エアバス オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Airbus Operations GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】テウリヒ、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヒミシュ、ヤン
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−510118(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/007358(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 3/10 − 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼(T;10a、10b)用の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)であって、内側端部(E1)および外側端部(E2)を有し、かつ、翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)の局所上反角が内側端部(E1)から外側端部(E2)へ増加または減少し、正圧流れ面(U−W)および負圧流れ面(P−W)を有しており、
・ 少なくとも2つの従属翼部分(100;101、102、103)が、翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)に配置され、いずれも翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)の流れ面から突出することと、
・ 前記従属翼部分(100;101、102、103)はいずれも、翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)の流れ面との境界面(q0)を形成し、前記境界面は互いに離間して配置されることと、
を特徴とする翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)。
【請求項2】
各境界面対間の分離距離は、前記少なくとも2つの従属翼部分(100;101、102、103)の短い方の長さ(p)の少なくとも1.5倍であることを特徴とする、請求項1に記載の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)。
【請求項3】
YZ−平面内で翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)を横断する断面に関して、少なくとも1つの従属翼部分(100;101、102、103)が、翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)の概して凸形の湾曲を有する側に配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)。
【請求項4】
前記従属翼部分の局所中心面は、少なくとも、前記従属翼部分(100;101、102、103)の長さの85%までの領域内で、局所翼端装置座標系(KS−W)の局所厚さ方向(D−W)に対して30°未満の角度で傾斜することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)。
【請求項5】
前記従属翼部分(100;101、102、103)の表面積は、翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)の表面積、または翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)の中心面の面積の30%未満であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)。
【請求項6】
前記従属翼部分(100;101、102、103)の表面積は、翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)の表面積、または翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)の中心面の面積の5%を超えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)。
【請求項7】
翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)または主翼の表面のそれぞれの位置に対して直角な前記従属翼部分(100:101、102、103)の長さ(p)は、前記翼の半翼幅の5%未満であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)。
【請求項8】
翼端装置または主翼の表面のそれぞれの位置に対して直角な前記従属翼部分(100:101、102、103)の長さ(p)は、最小で前記翼の半翼幅の1.0%であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)。
【請求項9】
前記従属翼部分(100;101、102、103)の厚さは、前記従属翼部分(100;101、102、103)が取り付けられた位置における翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)の局所厚さと同じまたはそれ未満であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)。
【請求項10】
前記従属翼部分(100;101、102、103)の構成は、前記従属翼部分(100;101、102、103)の第1の端部(Z1)と外側端部(Z2)との間の長さ(p)が、前記従属翼部分(100;101、102、103)の最大翼弦の少なくとも1倍の長さであるようになっていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)。
【請求項11】
前記従属翼部分(100;101、102、103)のテーパは、0.2〜0.8の範囲の値を有し、
前記従属翼部分(100;101、102、103)のテーパは、前記従属翼部分の内側端部(Z1)から見て、前記従属翼部分(100;101、102、103)の全長の10%の位置の局所翼弦を、前記従属翼部分の内側端部(Z1)から見て、前記従属翼部分(100;101、102、103)の全長の85%の位置の局所翼弦と比較したものとして定義されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)。
【請求項12】
相対厚さが6%〜15%であり、
前記相対厚さは、全体的に見た前記従属翼部分の最大厚さを前記従属翼部分の断面翼弦と比較したものとして定義され、
前記断面翼弦は、前記従属翼部分のそれぞれの断面領域qの最大幅として定義され、前記最大厚さは、前記従属翼部分の同じ断面領域qにある断面翼弦に直角な最大高さとして定義されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)。
【請求項13】
前記従属翼部分(100;101、102、103)の構成は、その第1の端部(E1)での前記従属翼部分(100;101、102、103)の翼弦が、局所翼端装置座標系(KS−W)の翼弦方向(T−W)における翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)の翼弦と比較して、20%〜80%の範囲にあるようになっており、
翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)の翼弦は、前記局所翼端装置座標系(KS−W)の厚さ方向(D−W)が、前記従属翼部分(100;101、102、103)の第1の端部(E1)を通る地点での翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)の翼弦であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の翼端装置(W;W1、W2、W4、W5、W6、W7、W8)を有する翼(T)。
【請求項15】
さらに、少なくとも1つの従属翼部分(100;101、102、103)が前記主翼に配置されることを特徴とする、請求項14に記載の翼(T)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、翼の翼端装置、さらに、そのような翼端装置を有する翼に関する。
【背景技術】
【0002】
翼端装置を有する翼は、(特許文献1)から公知の技術である。翼面荷重の増加に伴う抗力減少の勾配は、翼端装置の高さが高くなるにつれて小さくなるため、翼端装置の高さを高くすることは効果的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第08/061739号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、翼端装置、さらに、そのような翼端装置を有する翼を提供することであり、それらの翼および翼端装置を用いて、翼面荷重の増加に伴う抗力減少の勾配を特に好ましい態様で設定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。さらなる実施形態は、独立請求項に従属する従属請求項で規定される。
本発明の翼端装置は、通常、航空機の翼または翼状構成要素に取り付けることができる。以下において、「翼」と略される翼状構成要素は、翼、尾翼、スタビライザ、または先尾翼とすることができ、翼の後退角は、正または負とすることができる。翼に取り付けられた翼端装置、または少なくとも2つの従属翼(ancillary wing)部分もしくは従属翼部品を有する主ウイングレット、または翼に配置された従属ウイングレットもしくは補助ウイングレットからなる本発明の問題解決手段を用いて、飛行動作中の翼端装置全体の空気力学的抗力を低減することができ、かつ/または、翼端装置全体に作用する負荷を公知技術の翼端装置と比較して低減することができる。本発明の翼端装置は、翼の構造設計に関係する飛行条件下で発生する負荷を低減することができる。ここで、従属翼部分の長さは、明らかに翼端装置の長さ未満であり、特に、半分未満である。これにより、翼端装置上の少なくとも2つの従属翼部分の数量、および/または大きさ、および/または姿勢、および/または位置を整合および最適化することで、空気力学的負荷がかかった結果として、翼または翼端装置に作用する負荷の増加勾配よりも大きい、抗力の減少勾配を得ることが可能である。
【0006】
発明の翼端装置、すなわち、本発明の翼端装置を有する翼は、翼端装置上の少なくとも2つの従属翼部分の数量、および/または大きさ、および/または姿勢、および/または位置の整合および最適化により最適化することができ、特に、所与の翼面荷重での全抗力の低減、ならびに/または外部の空気力学的負荷の結果としての翼端装置負荷および/もしくは翼負荷の低減を、翼の翼端装置の全抗力に特に影響を及ぼすことなく達成することができ、目標を定めた有利な態様で調整することができる。この点について、特に以下:
・ 空気力学的負荷の結果として生じる、翼端装置および/または翼にかかる負荷および/または負荷分布の低減、ならびに/あるいは、
・ 飛行動作中の翼端装置および/または翼の抗力の低減、あるいは、
・ 本発明の問題解決手段を用いた、翼端装置全体の抗力の低減と負荷の影響との間の有利な妥協案、
を達成することができる。
【0007】
実施形態の一例によれば、従属翼部分は、形態、大きさ、位置、および姿勢に関して、翼端装置上の従属翼部分が、従属翼部分のない翼端装置と比較して、飛行動作時に抗力に対して比較的小さい影響しか及ぼさないが、翼端装置が取り付けられた翼全体にわたる全体的な負荷分布に対してかなりの影響を及ぼすように翼端装置上に設けられる。
【0008】
本発明の問題解決手段は、本発明で提供される従属翼部分の全体的な負荷分布に及ぼす影響が特に有利なことから、比較的低い剛性の翼に適用される場合に特に有利である。それぞれの従属翼部分の構成および姿勢に応じたさらなる空気力学的負荷の発生により、従属翼部分は、翼上での負荷の再配分に寄与する。
【0009】
特に、抗力の点から注目に値する定常巡航飛行の場合の翼のたわみと、構造体の寸法を決めるのに重要である飛行操作時に発生する増加したたわみとの差が、本発明の問題解決手段を用いて活用される。本発明の従属翼部分を用いて、翼に生じる最大負荷が低減され、したがって、軽い重量の翼を構築できるように、これらの飛行条件において翼に作用する局所負荷および負荷分布を調整することが可能である。
【0010】
本発明の一態様によれば、翼用の翼端装置は、内側端部および外側端部を有し、翼端装置の局所上反角が内側端部から外側端部へ増加または減少し、想定した主入射流れ方向に関する正圧側流れ面および負圧側流れ面を有する。本発明によれば、少なくとも2つの従属翼部分が、翼端装置の流れ面から離れる方向に突出して、翼端装置に配置されるようになっている。それによって、従属翼部分は、所定の態様で翼端装置に作用し、ひいては、翼賛装置が取り付けられた翼にも作用する負荷を発生させるように翼端装置上に構成および配置される。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの従属翼部分、または2つの従属翼部分は、従属翼部分の翼端装置への取付領域が、すなわち、従属翼部分と翼端装置との間の境界面が、以下において負圧面とも呼ぶことができる、翼端装置の局所厚さ方向を向いたそれぞれの流れ面に主に配置されるか、または以下において正圧面とも呼ぶことができる、翼端装置の局所厚さ方向から離れる方向を向いた流れ面に配置されるように翼端装置に配置される。
【0012】
ここで、特に、YZ平面内で翼端装置を横断する断面に関して、少なくとも1つの従属翼部分が、翼端装置の概して凸形の湾曲を有する側に配置されるようになる。この実施形態は、翼幅が増加し、発生する効力をこの手段によって低減できるため、空気力学的な理由から特に有利である。特に、翼端装置は、その局所上反角が、内側端部から外側端部へ連続的に増加または減少するように構成することができる。あるいは、例えば、長手方向の一部分において、翼端装置が平面状プロファイルを有するようにすることもできる。
【0013】
翼端装置の発明の一実施形態によれば、
・ 少なくとも2つの従属翼部分が、翼端装置に配置され、いずれの翼端装置も流れ面から離れる方向に突出し、
・ 従属翼部分は、いずれも翼端装置の表面との境界面を形成し、これらの境界面は互いに離間して配置される、
ようにすることができる。
【0014】
翼端装置の発明の一実施形態によれば、各境界面対間の分離距離は、2つの従属翼部分の短い方の長さの少なくとも1.5倍であるようになっている。
特に、従属翼部分の配置に関し、従属翼部分の1つは、概して凸形の湾曲を有する、すなわち、一部の中間部分で逸脱することもあり得るが、第1の端部から第2の端部まで全体的に見て凸形の湾曲部を有する外側面に配置されるようにすることができる。したがって、特に、YZ平面内で翼端装置を横断する断面に関して、少なくとも1つの従属翼部分が、翼端装置の概して凸形の湾曲を有する側に配置されるようにすることができる。本発明の有利な一実施形態によれば、さらなる従属翼部分が、翼端装置の概して凸形の外側面に配置されるようになっている。
翼端装置の発明の一実施形態によれば、従属翼部分は、局所翼端装置座標系の厚さ方向に沿って延びるようにすることができる。
【0015】
翼端装置のさらなる発明の実施形態によれば、従属翼部分の中心面は、局所翼端装置座標系の局所厚さ方向に対して30°未満の角度で傾斜するようにすることができる。
翼端装置のさらなる発明の実施形態によれば、特に、発明で定義される従属翼部分の局所中心面は、少なくとも、従属翼部分の全長の85%までの領域内で、局所翼端装置座標系の局所厚さ方向に対して30°未満の角度で傾斜するようにすることができる。
【0016】
さらに、翼端装置の発明の実施形態によれば、従属翼部分の片側の表面領域は、翼端装置の表面、または、特に、発明で定義された中心面の領域の30%未満であるようにすることができる。代替案として、またはそれに加えて、従属翼部分の表面領域は、翼端装置の表面、または翼端装置の中心面の領域の5%を超えるようにすることができる。
【0017】
翼端装置のさらなる発明の実施形態によれば、翼端装置または主翼の表面のそれぞれの地点に直角な従属翼部分の長さは、翼の半幅の5%未満であるようにされる。
さらに、翼端装置の発明の実施形態によれば、翼端装置または主翼の表面のそれぞれの地点に直角な従属翼部分の長さは、最小で翼の半幅の1.0%であるようにされる。
【0018】
翼端装置のさらなる発明の実施形態によれば、従属翼部分の厚さは、従属翼部分が取り付けられた地点での翼端装置の局所厚さ以下であるようにされる。
翼端装置のさらなる発明の実施形態によれば、従属翼部分は、その第1の端部と外側端部との間の長さが、従属翼部分の最大翼弦の少なくとも2倍であるように構成される。
【0019】
翼端装置のさらなる発明の実施形態によれば、従属翼部分のテーパは、0.3〜0.8の範囲の値を有するようにされ、従属翼部分のテーパは、従属翼部分の内側端部から見て、従属翼部分の全長の10%の位置の局所翼弦を、従属翼部分の内側端部から見て、従属翼部分の全長の85%の位置の局所翼弦と比較したものとして定義される。
【0020】
翼端装置のさらなる発明の実施形態によれば、従属翼部分の相対厚さは6%〜15%であるようにされ、特に、相対厚さは、全体的に見て従属翼部分に存在する最大厚さを、最大厚さが存在する同じ断面領域での従属翼部分の対応する断面翼弦と比較したものとして定義される。これに関して、断面翼弦は、従属翼部分のそれぞれの断面領域qの最大幅として定義され、厚さは、従属翼部分の同じ断面領域qにある、断面翼弦の線に直角な最大局所厚さ、または高さとして、すなわち、互いに反対側に配置された断面外側面間または断面線間で、それぞれの断面領域qに存在する最大分離距離として定義される。その結果、従属翼部分の最大厚さは、全体的に見て断面領域qに存在する最大局所厚さまたは高さである。
【0021】
従属翼部分の断面翼弦の別の発明の定義によれば、これは、従属翼部分の断面領域qの境界曲線上の2つの地点間の直線の長さであり、境界曲線上の2つの地点は、それらの分離した距離が、平面qの境界曲線上の地点の他の任意の可能な位置と比較して最大であるように配置される。断面領域qの翼弦方向はこの線に沿って延びる。最大厚さは、同じ断面領域の翼弦方向に対して直角に測定した、断面領域の境界曲線の最大分離距離として定義される。
【0022】
翼端装置の発明のさらなる実施形態によれば、従属翼部分の構成は、その第1の端部にある翼弦が、局所翼端装置座標系の翼弦方向にある翼端装置の翼弦と比較して、20%〜80%の範囲にあるようにされ、翼端装置の翼弦は、局所翼端装置座標系の厚さ方向が従属翼部分の第1の端部を通る地点での翼端装置の翼弦である。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、翼には、本発明による翼端装置が設けられる。
翼の発明の実施形態によれば、発明で構成された少なくとも1つの従属翼部分が、主翼上にさらに配置される。
【0024】
この実施形態で主翼上に配置された本発明の従属翼部分は、特に、その第1の端部と第2の端部との間の長さが、従属翼部分の最大翼弦の少なくとも2倍であるように構成されるようにすることができる。
【0025】
ここで、翼端装置は、従属翼部分のテーパが、0.3〜0.8の範囲の値を有するように構成することができ、従属翼部分のテーパは、従属翼部分の内側端部から見て、従属翼部分の全長の10%の位置の局所翼弦を、従属翼部分の内側端部から見て、従属翼部分の全長の85%の位置の局所翼弦と比較したものとして定義される。
【0026】
ここで、代替案として、またはそれに加えて、翼端装置は、従属翼部分の相対厚さが6%〜15%であるように特に構成され、その相対厚さは、全体的に見た従属翼部分の最大厚さを従属翼部分の断面翼弦と比較したものとして定義され、断面翼弦は、従属翼部分のそれぞれの断面領域qの最大幅として定義され、最大厚さは、従属翼部分の同じ断面領域qの断面翼弦に直角な最大高さとして定義される。
【0027】
ここで、さらに、代替案として、またはそれに加えて、翼端装置は、局所翼端装置座標系の翼弦方向における翼端装置の翼弦方向の範囲に対する、従属翼部分の第1の端部における従属翼部分の翼弦方向の範囲が、20%〜80%の範囲にあるように特に構成することがで、翼端装置の翼弦方向の範囲は、局所翼端装置座標系の厚さ方向が、従属翼部分の第1の端部を通る地点における翼端装置の翼弦方向の範囲である。
【0028】
翼端装置の発明の実施形態によれば、各境界面対間の分離距離は、2つの従属翼部分の短い方の長さの少なくとも1.5倍であるようにされる。
本発明のさらなる態様によれば、翼はまた、発明の実施形態による翼端装置を設けられる。
【0029】
以下において、本発明の実施形態の例が添付の図面を用いて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の翼端装置を配置することができるが、その配置が詳細に示されていない航空機の概略的な斜視図を示す。
図2】本発明による翼端装置および従属翼部分を有する本発明の実施形態の例の外側領域の概略図であって、航空機の長手方向において航空機の左側の翼を航空機の長手方向とは異なる方向から示す。
図3】翼端装置を有する図2の本発明の翼の実施形態の例の斜視図であって、説明のために、翼端装置の外側部分が翼の残りの部分から切り離されて斜視図で示されており、本発明に従って、従属翼部分が翼端装置に配置されることが分かる。
図4】航空機の長手軸とは異なる方向における概略図であって、翼端装置と、それぞれが翼端装置の下側面に配置された、本発明による2つの従属翼部分とを有する本発明の翼の実施形態の他の例を示す。
図5】航空機の長手軸とは異なる方向における、翼端装置と本発明による3つの従属翼部分とを有する本発明の翼の実施形態の他の例の概略図を示し、従属翼部分のうちの2つは、翼端装置の下側面に配置され、1つは翼端装置の上側面に配置されている。
図6】航空機の長手軸とは異なる方向における概略図であって、翼端装置と、それぞれが翼端装置の下側面に配置された、本発明による4つの従属翼部分とを有する本発明の翼の実施形態の他の例の外側領域を示す。
図7】航空機の長手軸とは異なる方向における、翼端装置と本発明による3つの従属翼部分とを有する本発明の翼の実施形態の他の例の外側領域の概略図であって、従属翼部分のうちの2つは、翼端装置の下側面に配置され、1つは翼端装置の上側面に配置されている。
図8】航空機の長手軸とは異なる方向における、翼端装置と本発明による4つの従属翼部分とを有する本発明の翼の実施形態のさらなる例の外側領域の概略図であって、従属翼部分のうちの3つは、翼端装置の下側面に配置され、1つは翼端装置の上側面に配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、2つの翼10a、10bを有する航空機Fの実施形態の例を示しており、各翼には、発明の翼端装置Wが配置されている。図1には、航空機長手軸X、航空機横軸Y、および航空機垂直軸Zを有する、航空機Fに関する航空機座標系KS−Fが記載されている。図1において、長手方向Xから見て左側の翼端装置は、参照記号W1で示され、長手方向Xから見て右側の翼端装置は、参照記号W2で示されている。翼10a、10bはいずれも、それぞれ少なくとも1つの補助翼11a、11bを有する。翼10a、10bはいずれも、任意選択で、それぞれ複数のスポイラ12a、12b、前縁スラット13a、13b、および/または後縁フラップ14a、14bを有することができる。図1では、それぞれのスポイラ12a、12b、前縁スラット13a、13b、および/または後縁フラップ14a、14bの一部のみが参照記号を付与されている。さらに、航空機Fは、少なくとも1つの方向舵21を含む垂直尾翼ユニット20を有する。航空機Fは、任意選択で、いずれも少なくとも1つの昇降舵25を含む尾翼ユニット24を有することもできる。尾翼24は、T字形尾翼ユニットまたは十字形尾翼ユニットとして設計することもできる。
【0032】
本発明の航空機Fは、図1に示した航空機F以外の形状を有することもできる。例えば、本発明の航空機は、高翼機または全翼機の形態をとることもできる。航空機は、尾翼の代わりに先尾翼を有する航空機とすることもできる。翼は、例えば、正または負の後退角を有することができる。
【0033】
本発明による翼端装置Wの形状についての説明において、翼端装置Wの長手方向Lのプロファイル上の点で局所的に形成される翼端装置W用の局所座標系KS−Wが参照される。翼端装置W用の局所座標系KS−Wは、軸として、局所翼端装置翼幅方向S−Wと、局所翼端装置厚さ方向D−Wと、航空機座標系KS−Fの長手軸Xに対して平行に延びる局所翼端装置翼弦方向T−Wとを有する。翼端装置W用の局所座標系KS−Wのこれらの軸の向き、および原点は、特に、翼端装置Wの各点でそれぞれ存在する、翼端装置Wの最小断面領域に基づいてさらに定義することができ、局所座標系KS−Wの原点は、それぞれの断面領域に対して存在し、断面領域に配置された平面の図心であり、局所翼端装置厚さ方向D−Wおよび局所翼端装置翼弦方向T−Wは、いずれも最小断面領域である領域に配置される。
【0034】
図2および図3は、本発明の翼端装置、すなわちそのような翼端装置を有する翼の実施形態の例を示している。図2および図3では、航空機の長手軸Xの方向に見て左側の翼用の翼端装置Wが示されている。図3および図4には、航空機座標系KS−Fと、翼端装置W、または翼端装置W1〜W4が配置された主翼Hの局所座標系KS−Hとの両方が記載され、翼付根から翼端装置Wの先頭まで見ると、局所座標系KS−Hは、翼幅方向S−T、翼弦方向T−T、および翼厚さ方向D−Tを有する翼座標系KS−Tと一致している。
【0035】
主翼H、ひいては翼Tの座標系KS−Hは局所座標系であり、いずれの主翼の場合も、主翼幅方向S−H、主翼弦方向T−H、および主翼厚さ方向D−Hから形成されている。さらに、翼端装置Wの座標系KS−Wは局所座標系であり、いずれの翼端装置Wの場合も、翼端装置翼幅方向S−W、翼端装置厚さ方向D−W、および翼端装置翼弦方向T−Wから形成されている。この主翼座標系KS−Hは、基本的に、翼端装置座標系KS−Wおよび翼座標系KS−Tと同様の態様で定義され、幾何学パラメータおよび基準量も翼座標系によって表すことができる。発明の定義によれば、主翼H用の局所座標系KS−Hは、局所翼弦方向T−Hが、航空機座標系KS−Fの長手軸Xに平行に延びるように向きを合わされる。特に、翼T用の局所座標系KS−Tの軸の向き、および原点は、翼Tの各点でそれぞれ存在する、翼Tの最小断面領域に基づいてさらに定義することができ、局所座標系KS−Tの原点は、それぞれの断面領域に存在し、それぞれの断面領域に配置された平面の図心であり、局所翼厚さ方向D−Hおよび局所翼弦方向F−Hはいずれも、最小断面領域である領域に位置する。
【0036】
代替の発明の定義によれば、翼T用の局所座標系KS−Hは、主翼Hの座標系KS−Hの翼弦方向T−Hが、航空機座標系KS−FのX−方向または長手方向に延びるように、かつ、主翼Hの座標系KS−Hの翼厚さ方向D−Hが、航空機座標系KS−FのZ−方向、または航空機Fの垂直軸Zの方向に延びるように向きを合わされる。
【0037】
翼端装置Wは、主翼Hに直接取り付けられる。これに関して、互いに隣接して配置された主翼Hおよび翼端装置Wの表面または線は、稜線、すなわち、屈折部を形成することができる。
【0038】
翼端装置Wが取り付けられた主翼Hの翼幅方向S−Hに関して、翼端装置Wは、翼端装置取付部を形成するための内側端部E1と、翼端を形成する外側端部E2とを有し、主翼H、すなわち翼Tを、翼端装置Wが取り付けられた主翼Hの最外端部から始めて、翼幅方向S−Hまたは翼幅方向S−Tに延長する。翼端装置Wは、いずれも第1の端部E1と第2の端部E2との間に延びる翼端装置後縁ET−W、翼端装置前縁EL−W、翼端装置上側面S1−W、および翼端装置下側面S2−Wを有する。
【0039】
翼端装置Wはまた、翼端装置Wが主翼Hに取り付けられる取付領域または移行領域Aを有することもできる。それにより、移行領域Aの第1の面または上側面S1−Aを有する翼端装置Wの第1の面S1−Wは、主翼Hの第1の面または負圧面S1−Hに取り付けられ、移行領域Aの第2の面または下側面S2−Aを有する翼端装置Wの第2の面S2−Wは、主翼Hの第2の面または正圧面S2−Hに取り付けられている。この場合に、互いに隣接して配置された面または線は、翼Tに取り付けられ、翼端装置Wに取り付けられた取付領域Aに、または取付領域A内に、稜線、すなわち屈折部を形成することができる。翼端装置Wの第1の面S1−Wおよび主翼Hの第1の面S1−Hは、翼Tの第1の面または上側面S1−Tを形成し、翼端装置Wの第2の面S2−Wおよび主翼Hの第2の面S2−Hは、翼Tの第2の面または下側面S2−Tを形成している。
【0040】
図2および図3に示した本発明の翼端装置Wを有する翼Tの実施形態の例において、翼端装置Wは、取付領域または移行領域Aを有し、翼端装置Wは、移行領域A、さらに主翼Hと移行領域Aと翼端装置Wとの間の移行部、さらに、その後縁ET−W、および/またはその前縁EL−W、および/または翼幅方向S−Wに沿って延びる翼端装置Wの第1の面S1−Wのプロファイル線、および/または翼幅方向S−Wに沿って延びる翼端装置Wの第2の面S2−Wのプロファイル線とが、それぞれ接線が連続した形で延びることができる、すなわち、屈折部なしに形成され得るように構成されている。「連続する接線」とは、上記の線が、数学的に微分可能な曲線形状を有するプロファイルを有し、上記で説明された線において、いずれも翼幅方向に沿って向けられた、反対方向に延びる、主翼Hまたは翼Tの面および翼端装置Wの面の接線が、角度的に不連続になることなく、移行点で互いに合流することを意味する。この場合に、これに関連して、ここでは翼幅方向である方向に「沿って」という表現は、この方向、すなわち翼幅方向から最大で45°偏向した方向に沿うことを意味する。
【0041】
翼端装置Wはまた、その後縁ET−W、および/またはその前縁EL−W、および/または翼幅方向S−Wに沿って延びる翼端装置Wの第1の面S1−Wのプロファイル線および/または翼幅方向S−Wに沿って延びる翼端装置Wの第2の面S2−Wのプロファイル線で形成することができ、これらの線はいずれも曲率が連続する、すなわち、数学的に2回微分することができる。
【0042】
主翼Hの面から移行領域Aまでの移行部も、すなわち、この地点における後縁ET−T、および/または前縁EL−T、および/または翼幅方向S−Wに沿って延びる第1の面S1−Tのプロファイル線、および/または翼幅方向S−Wに沿って延びる第2の面S2−Tのプロファイル線も、接線が連続する形で、または曲率が連続する形で形成することができる。
【0043】
実施形態のさらなる例によれば、取付領域もしくは移行領域A、および/または翼端装置W、および/または主翼Hと翼端装置Wとの間の移行部、ならびに、特に、この地点またはそれぞれの領域における後縁ET−Tもしくは後縁ET−W、前縁EL−Tもしくは前縁EL−W、第1の面S1−Tもしくは第1の面S1−W、および/または第2の面S2−Tもしくは第2の面S2−Wは、稜線または隅部を有するようにされ、そのため、これに関して、いずれも互いに反対の方向から続く、翼幅方向に沿って向けられた接線を考慮した場合に、これらの移行点において、主翼Hおよび翼端装置Wのそれぞれの接線は、異なる方向でかつ角度的に不連続に合流するため、これらの点は、屈折のない湾曲形状部の一部ではない。
【0044】
通常、局所翼端装置座標系KS−Wの発明の定義は、移行領域Aが、本発明の翼の実施形態で提供される限り、移行領域Aの説明に同様に適用される。
本発明の翼端装置の実施形態のさらなる例によれば、翼Tは、移行領域Aを有さず、その結果、主翼Hの面から翼端装置Wへの移行部は、接線が連続した形で(すなわち、少なくとも1回微分することができる)、または曲率が連続した形で形成される。主翼Hおよび、特に、その局所長手方向Lは、主翼付根から見て、主翼付根から移行領域Aの先頭まで平面的に、特に、一定の上反角で、すなわち直線的に延びる。特に、主翼Hの領域に長手方向から形成された基準線は、曲率が連続した形で構成される。この場合に、主翼は、長手方向Lに沿った主翼Hの任意の位置で、主翼の翼幅の20%の幅にわたって測定した、長手方向Lに沿った上反角の偏角が1°未満である場合に直線として認められる。一実施形態によれば、翼端装置は、機体の中心軸を0%とした半翼幅に関して80〜100%の翼幅領域に配置される。翼幅方向の範囲は、座標系KS−Fのy−方向に一致する。一実施形態によれば、基準線および/または第1の面S1および第2の面S2は、点A1において連続した曲率を有さず、連続した接線または屈折点のみを有する。
【0045】
図4図5図6図7図8において、それぞれ参照記号W4、W5、W6、W7、W8で示した、本発明で提供される翼端装置Wに関して、以下では、特定の図で示した翼端装置の実施形態を特別に参照しない限り、表記Wのみを使用する。本発明で提供される翼端装置Wに関して、翼端装置Wの局所上反角は、内側端部E1から外側端部E2へ、すなわち、翼端装置Wの長手方向Lにおいて不連続的に、または連続的に増加または減少する。上反角が翼端装置Wの長手方向Lにおいて増加する場合、翼端装置Wまたはその第2の端部E2は上向きに向けられ、一方、上反角が翼端装置Wの長手方向Lにおいて減少する場合、翼端装置Wまたはその第2の端部E2は下向きに向けられる。特に、翼幅方向S−Wに沿った上反角の増加または減少は一定とすることができる、すなわち、例えば、曲率なく翼幅方向S−Wに延びる部分があり得る。この場合に、曲率は、翼端装置W、および/または第1の面もしくは流れ面S1−W、および/または第2の面もしくは流れ面S2−Wの中心面の曲率と解釈される。
【0046】
ここで、「上向き」とは、翼Tから始めて、翼Tの上側面S−Tから遠ざかる方向、または航空機座標系KS−Fの正のZ方向、または翼座標系KS−Tの正の翼厚さ方向と理解されたい。
【0047】
本発明によれば、長手方向Lは、特に、前述のように基準線と一致することができる。これに関して、長手方向Lは、最小断面領域を有する面の図心をつないだ線とすることができ、これらの面には、それぞれ局所翼端装置厚さ方向D−Wおよび局所翼端装置翼弦方向T−W、すなわち、局所翼厚さ方向D−Tおよび局所翼弦方向T−Tが定められる。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも2つの従属翼部分100が翼端装置Wに配置され、従属翼部分はいずれも、翼端装置Wから翼端装置Wの厚さ方向D−Wに沿って外側に延びている。本発明の一実施形態によれば、少なくとも2つの従属翼部分100は、YZ−平面内で翼端装置を横断する断面に関して、翼端装置Wの全体的に見て凸形の湾曲を有する側に配置される。本明細書において、「全体的に見て凸形」とは、一部の凸形ではない部分が許容されることを意味すると理解されたい。特に、本明細書に従って、翼端装置Wの第1の端部E1の局所上反角は、翼端装置Wの第2の端部E2の局所上反角よりも小さいと解釈される。特に、少なくとも2つの従属翼部分100は、翼端装置翼幅方向S−Wにおいて互いに離間している。
【0049】
通常、発明で提供される従属翼部分100はそれぞれ、レンズ形状、滴形状、または翼形タイプの断面形状を有するように構成することができる。これに関して、発明の定義によれば、断面形状を決める断面領域q(図2では点線として記載されている)は、局所翼端装置座標系KS−Wの翼幅方向S−Wおよび翼弦方向T−Wによって定義される平面に配置される従属翼部分100の断面領域とすることができる。
【0050】
本発明によれば、従属翼部分100のそれぞれの断面領域qの最大幅の方向は、従属翼部分100の翼弦方向として定義することができる。したがって、従属翼部分100は通常、従属翼部分100の構成に従い、長手方向の位置に応じて長手方向に沿って変わる局所翼弦方向を有する。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、従属翼部分100が配置され、隣接する従属翼部分100を互いから分離する距離は、いずれも場合も、それぞれの翼端装置W上のそれぞれ最小の従属翼部分100の厚さd1の少なくとも5倍である。これに関して、隣接する従属翼部分100、すなわち互いから最短距離にある従属翼部分100を分離する距離は、いずれの場合も、最大で、それぞれの翼端装置に配置された従属翼部分のうちの最も高い従属翼部分の高さの2倍であるようにすることができる。
【0052】
本発明による、図2〜8に示す翼端装置Wの実施形態はいずれも、翼端装置を、「全体的に見て上向きに」湾曲する、すなわち、正の翼端装置翼幅方向S−Wのプロファイルで、言い換えると、内側から外側に、正の翼端装置厚さ方向D−Wの方向に湾曲する翼端装置Wとして示している。すなわち、翼端装置Wは、全体的に見て正の上反角を有する。図2〜8では、翼端装置Wの第2の面S2は、全体的に見て凸形の形状を有する。
【0053】
図2に示す実施形態では、3つの従属翼部分121、122、123が、航空機垂直軸Zに対して下側の流れ面U−Wに配置されている。図3は、翼端装置W2を有する、図2による本発明の翼端装置Wおよび翼Tの実施形態の例の斜視図を示しており、図3では、説明のために、翼端装置の外側部分B1、B2は、残りの部分、すなわち移行領域Aから切り離された斜視図で示されている。この図の切断面は、中心従属翼部分122を直接通って翼端装置翼厚さ方向D−Wに延びるため、この図で示す従属翼部分122は、断面図として示されている。これに関して、断面線は、従属翼部分122の中心面Z3が図3で見えるように配置されている。
【0054】
従属翼部分121に関して記載したように、従属翼部分100は、翼端装置Wの厚さ方向D−Wに見て、第1の端部もしくは内側端部Z1と、これと反対に配置された第2の端部もしくは外側端部Z2と、さらに、いずれも航空機長手方向Xに関する前縁線Z−ELおよび後縁線Z−ETとを有する。さらに、従属翼部分100は通常、付根または第1の端部Z1と第2の端部Z2との間の分離距離である長さpと、主翼Hの付根の方を向いた内側面SIと、内側面と反対の方向に向けられた外側面SAとを有する。YZ−面で見た第1の端部Z1での厚さは、参照記号d1で示されている。さらに、長さp0が図2に記載されており、軸S−W、D−Wによって定義される平面に存在する稜線が長さp0にわたって延び、この稜線は、第2の端部Z2に配置された縁部部分の形状を画定する。
【0055】
局所翼端装置座標系KS−Wの翼幅方向S−Wおよび翼弦方向T−Wによって定義される平面内にある局所断面領域qに加えて、平面境界領域q0も本発明を説明するために定義され、この平面境界領域q0は、それぞれの従属翼部分100の輪郭線が幾何学的に境となる領域であり、この輪郭線は、翼端装置Wの表面に従属翼部分を取り付ける際の従属翼部分100の輪郭面を画定する。したがって、この輪郭線、すなわち、この境界領域q0は、翼端装置Wおよび従属翼部分100を切断することで得られる交差部から出現する。境界領域q0は、局所翼端装置座標系KS−Wの翼幅方向S−Wおよび翼弦方向T−Wによって定義される平面に必ずしも存在しない。本発明によれば、第1の端部または内側端部Z1は、境界領域q0の図心として定義される。局所断面領域qに適用可能な局所翼端装置座標系KS−Wを定義するために、その系は、その原点が第1の端部Z1に配置されるように選択される。第2の端部または外側端部Z2は、第1の端部Z1から見て、局所翼端装置座標系KS−Wの厚さ方向D−Wにおける、従属翼部分100の最外点である。
【0056】
局所翼端装置座標系KS−Wの翼幅方向S−Wおよび翼弦方向T−Wによって定義される平面に位置する局所断面領域qに関して、図心がいずれも定義される。本発明の定義によれば、これらの図心をすべてつなぐことで、第1の端部Z1から始まる中心線pが得られ、本発明によれば、その中心線pの長さがそれぞれの従属翼部分100の長さである。したがって、中心線pは、従属翼部分100の形状に応じて、直線状または曲線状であり得る。
【0057】
本発明によれば、従属翼部分100のそれぞれの断面領域qの最大幅の方向は、従属翼部分100の翼弦方向として定義することができる。したがって、従属翼部分100は通常、従属翼部分100の構成に従い、長手方向の位置に応じて、従属翼部分100の長手方向prに沿って変わる局所翼弦方向を有する。従属翼部分100の局所翼弦方向は、本発明によれば、さらなる条件のもとで定めることができる。
【0058】
厚さd1は、局所翼弦方向に直角な厚さ方向に存在する従属翼部分100の厚さであり、それぞれの局所断面領域qで位置を特定される。したがって、通常、厚さd1の大きさは、中心線pの局所位置によって決まる。
【0059】
さらに、厚さは、従属翼部分100に対して全体的に見て定めることができる。全体的に見た従属翼部分100の厚さd1の大きさ、または発明の相対厚さは、第1の端部Z1から第2の端部Z2までの範囲における従属翼部分100の相対厚さとして、発明の定義に従って定めることができる。代替の発明の定義によれば、従属翼部分100の厚さd1は、その第1の端部Z1からその第2の端部Z2の下の高さh0の点までの範囲における従属翼部分100の相対厚さとして、全体的に見て定めることができる。発明の定義によれば、高さh0は、従属翼部分の中心線pの長さの15%と一致する大きさとすることができる。特に、高さh0の高さ部分または端部部分は、基本的に、本発明による従属翼部分100の断面プロファイルが縮小する領域とすることができる。
【0060】
従属翼部分100のさらなる代替の発明の定義によれば、全体的に見た従属翼部分100の厚さd1、または発明の相対厚さは、従属翼部分の付根での従属翼部分100の厚さとして定めることができる。この場合に、厚さd1は、従属翼部分100の境界領域q0の翼弦方向に対して直角に延びる厚さ方向に存在する。
【0061】
本発明によれば、相対厚さは6%〜15%であるようにすることができる。これに関して、相対厚さは、全体的に見た従属翼部分の最大厚さを従属翼部分の断面翼弦と比較したものとして定義され、断面翼弦は、従属翼部分のそれぞれの断面領域qの最大幅として定義され、最大厚さは、従属翼部分の同じ断面領域qにある、断面翼弦に直角な最大高さとして定義される。
【0062】
翼端装置Wの一実施形態によれば、翼端装置に配置された少なくとも1つの従属翼部分100、特に、翼端装置に配置されたすべての従属翼部分100は、従属翼部分の局所中心面が、少なくとも、従属翼部分100の長さの85%までの領域内で、局所翼端装置座標系KS−Wの局所厚さ方向D−Wに対して30°未満の角度で傾斜するように、翼端装置W上で向きを合わされる。この場合に、局所中心面は、従属翼部分100のそれぞれの局所断面領域qの局所長手方向prおよび局所翼弦方向によって定義される平面であると解釈される。さらに、本発明によれば、通常、3次元で定義される従属翼部分100の中心面は、従属翼部分100の中心線および従属翼部分100の局所翼弦方向が配置される面として定義することができる。これに関して、中心面は、外側輪郭で囲まれた面である。
【0063】
さらに、従属翼部分100の片側の表面の面積が、翼端装置Wの表面または中心面の面積の30%未満であるようにされる。
本発明によれば、翼端装置Wに配置され、互いに離間して配置された複数の従属翼部分100はいずれも、翼端装置Wの表面との境界面q0を形成することができる。
【0064】
本発明によれば、さらに、各境界面対間の分離距離は、2つの従属翼部分100、すなわち、従属翼部分101、102、103の短い方の長さpの少なくとも1.5倍であるようにすることができる。
【0065】
本発明の従属翼部分100、すなわち、従属翼部分101、102、103は、特に、従属翼部分の長さが、従属翼部分100、すなわち、従属翼部分101、102、103の最大翼弦の少なくとも1倍の長さであるように構成することができる。
【0066】
本発明によれば、本発明の従属翼部分100のテーパは、0.3〜0.8の範囲の値を有する。ここで、従属翼部分100のテーパは、第1の端部Z1から見て、全長の10%の位置にある局所翼弦を、第1の端部Z1から見て、全長の85%の位置にある局所翼弦と比較したものであると解釈される。
【0067】
本発明によれば、従属翼部分100は、その第1の端部Z1での従属翼部分100の翼弦が、局所翼端装置座標系KS−Wの翼弦方向T−Wの翼端装置Wの翼弦と比較して、20%〜80%の範囲にあるように構成することができる。この場合に、翼端装置Wの翼弦は、局所翼端装置座標系KS−Wの厚さ方向D−Wが第1の端部Z1を通る地点における翼端装置Wの翼弦であると解釈することができる。
【0068】
本発明の翼端装置Wは、特に、翼端装置の前縁が、主翼付根から見て、移行領域に減少後退角、第1の部分B1に増加後退角、および端部部分EL−B2に再度減少後退角を有するように具現化することができる。本発明の翼端装置Wの一実施形態では、発明の従属翼部分は、それぞれ移行領域A内、第1の部分B1内、および第2の部分B2内の凸形に構成された第2の面に配置される。
【0069】
図5〜8の本発明の翼端装置Wの実施形態では、従属翼部分はいずれも、移行領域において長手方向Lの曲線プロファイルを有する移行領域Aと、翼幅方向S−Wに見て、長手方向Lに直線である部分Bとから形成されている。ここで、移行部分Aは、主翼付根から見て、移行領域Aすなわち翼端装置Wの先頭における主翼Hの上反角から、平面端部部分Bの先頭における上反角までの移行部を形成している。図4および図5の実施形態では、それぞれ翼端装置W4、W5の移行部分Aにおいて、それぞれ従属翼部分141、151が、いずれも第2の面S2−Wに配置され、それぞれ従属翼部分142、152が、いずれも第2の面S2−Wに配置されている。図5の実施形態では、従属翼部分153が、外側部分Bの第1の面S1−Wにさらに配置されている。
【0070】
図6に示す翼端装置W6の実施形態は、形状的に平面である、すなわち、直線的に延びる主翼の第2の面S−Hに従属翼部分161をさらに有する。
特に、図4〜6に示すように、外側部分Bが平面構造であるために、移行領域と外側領域Bと間の移行部で第1の面S1−Wおよび第2の面S2−Wが屈折することがある。これに関して、特に、基準線Lはこの位置で屈折する、すなわち、この位置において連続する接線を形成されない。
【0071】
図7に示す翼の実施形態も同様に、ほぼ平面状の翼端装置W7を有し、翼端装置W7は、屈折部で主翼Hに取り付けられている。これに関して、翼Tは、主翼Hの領域で翼の下側面S2−Tにある第1の従属翼部分171と、翼端装置W7の領域で翼の下側面S2−Tにある第2の従属翼部分172と、破線の輪郭で示され、主翼Hの領域で翼の上側面S1−Tに任意選択で設けられる第3の従属翼部分173とを有する。
【0072】
図8に示す翼端装置W8の実施形態も同様に、移行領域Aおよび少なくともほぼ平面状の外側部分Bを有し、外側部分Bは、屈折部でYZ−平面内の移行領域Aに取り付けられている。ここで、翼Tは、主翼Hの領域で翼の下側面S2−Tにある第1の従属翼部分181と、移行領域Aの領域で翼の下側面S2−Tにある第2の従属翼部分182と、外側部分Bの領域で翼の下側面S2−Tにある第3の従属翼部分183とを有する。さらに、翼端装置W8のこの実施形態は、外側部分Bの領域で翼の上側面S1−Tにある第4の従属翼部分184を有し、第4の従属翼部分184は、下側面S2−Tに配置された従属翼部分183よりも主翼付根から遠くに位置する。
【0073】
翼端装置の外側端部E2の周辺では、空気力学的な干渉の影響が小さく、挙動が可撓的である翼端装置は、例えば、従属翼部分により、翼端装置が外側に曲がることができるという点で、従属翼部分から有利には影響を受けることができるため、一般に、従属翼部分184などの従属翼部分を翼端装置の上側面に配置することは有利である。
【0074】
さらなる発明の実施形態によれば、翼端装置の従属翼部分100は、翼端装置Wの様々な翼弦位置W−Tに配置される。これに関して、特に、従属翼部分100の少なくとも1つの後縁Z−ETは、X−方向とは反対の方向に見て、翼端装置Wの後縁ET−Wの後ろに延びることができ、または従属翼部分100の1つが主翼に配置された場合には、主翼の後縁ET−Hの後ろに延びることもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8