【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の技術的解決法は以下のとおりである:
一態様では、本発明は細菌に起因する疾患を予防及び/又は治療するための医薬組成物を提供し、該医薬組成物はイリドイド化合物を含有するニンドウエキス及び抗生物質を含む。
【0012】
好ましくは、医薬組成物は薬学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤を更に含む。
【0013】
ここでは、細菌に起因する疾患の予防及び/又は治療は細菌の耐性に反作用することにより達成される。従って、細菌が抗生物質に対する耐性を獲得すると、当該医薬組成物は細菌の薬剤耐性に反作用又は対抗できる。
【0014】
別の態様では、本発明は、細菌に起因する疾患を予防及び/又は治療するための医薬キットを提供し、該医薬キットは、別個に配置されたイリドイド化合物を含有するニンドウエキス及び抗生物質を備える。当該キットを、キットを必要とする患者に、細菌に起因する疾患を予防及び/又は治療するために使用することができ、ニンドウエキス及び抗生物質を、同時に、連続的に、又は一定の期間継続的に患者に投与してよい。実験は、ニンドウエキスが抗生物質に対する細菌の感受性を促進、修復及び/又は改善でき、また抗生物質に対する細菌の耐性に反作用及び対抗でき、これによって細菌の死滅又は阻害に対する抗生物質の効果が高まることを示している。
【0015】
上述の医薬組成物及び医薬キットにおいて、ニンドウエキスは、
以下の構造式
【0016】
【化1】
【0017】
によって表されるイリドイド化合物を含有し:
ここで、式(1)では、X
1、X
2はそれぞれ独立してOを表し、RはHを表し、化合物はセコロガン酸であり;
式(2)、式(3)、式(4)では、X
1、X
2はそれぞれ独立してH、C
1‐6の低級アルキル又はC
2‐6の低級アルケニルを表す。
【0018】
ニンドウエキスの主要な有効成分は、セコロガン酸である。
【0019】
好ましくは、ニンドウエキスはセコロガン酸を50wt%以上含有し;好ましくは、ニンドウエキスはセコロガン酸を70wt%以上含有し;より好ましくは、ニンドウエキスはセコロガン酸を80wt%以上含有し;最も好ましくは、ニンドウエキスはセコロガン酸を90wt%以上含有する。
【0020】
本発明のニンドウエキスは、参照によりその全体が本明細書に援用される特許ZL200610083556.7に開示された方法によって調製できる。本発明の実施形態によって、以下のステップを含む方法によりニンドウエキスを調製する:
(1)植物のニンドウ、その元の植物であるスイカズラ又は他の同属植物を粉状にし、その後、水及び/又は体積比95%以下のアルコールを含有するC
1‐C
6アルキルアルコール水溶液により抽出を実施し、エキスを得るステップ;
(2)ステップ(1)で得たエキスを常圧又は減圧下で濃縮し乾燥させて抽出物を得るか、又はステップ(1)で得たエキスにスプレー乾燥を実施して粉末を得て、その抽出物又は粉末を水で溶解し、その後体積比95%以下のアルコールを含有するC
1‐C
6アルキルアルコール水溶液により沈殿又は沈降させ、沈殿物又は溶解液濃縮物を得るステップ;
(3)沈殿物を単離及び精製するか、又はステップ(2)で得た液体濃縮物をクロマトグラフィーにより溶解し、イリドイド化合物を含有する溶離剤を回収するステップであって、ここでクロマトグラフィーはマクロ多孔性吸収樹脂カラムクロマトグラフィー、順相シリカゲルクロマトグラフィー及び逆相シリカゲルクロマトグラフィーの1つ又は複数から選択するステップ;
好ましくは、ニンドウエキスは以下のステップを含む方法により調製する:
(1)ニンドウの薬草を粉状にし、その後、エタノール50%(v/v)水溶液で抽出を行い、抽出液を得るステップ;
(2)ステップ(1)で得た抽出液を減圧下で濃縮して抽出物を得て、該抽出物を水に溶解し、濾過し、該溶液を乾燥するまで濃縮し、エタノール95%(v/v)水溶液を添加して溶解し、溶液のエタノール含量が75%(v/v)になるように蒸留水を添加し、静置した後に濾過し、濾過物からエタノールを回収し、液体抽出物を得るステップ;
(3)ステップ(2)で得た液体抽出物を水を添加することにより溶解し、濾過することにより濾過物を得て、該濾過物をスチレン製マクロ多孔性吸収樹脂クロマトグラフィーカラムに通し、その後、水及びエタノール20%(v/v)水溶液で連続的にカラムを溶出し、エタノール20%(v/v)水溶液の溶離剤中のエタノールを回収するステップ;
より好ましくは、本方法は、ゲルクロマトグラフィーによりステップ(3)で得たイリドイド化合物を含有する溶離剤を精製するステップを更に含み;
最も好ましくは、本方法は、SephadexLH‐20ゲルクロマトグラフィーカラムによりステップ(3)で得たイリドイド化合物を含有する溶離剤を精製し、水の溶離剤を回収するステップを更に含む。
【0021】
好ましくは、本発明の抗生物質はアンピシリン、ペナムスルホン、ピペラシリン、タゾバクタム、アモキシシリン、クラブラン酸、セファゾリン、セフロキシム、セフトリアキソン、セフロキシムナトリウム、スルペラゾン、左旋性フッ化酸素、セフォタキシム、セフタジジム、イミペネム、セフェピム、セフォキシチン、ゲンタマイシン、アミカシン、シプロフロキサシン、クロラムフェニコール、トリメトプリム‐スルファメトキサゾール、テトラサイクリン、ニトロフラントイン、アズトレオナム、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、アンモニア、スルバクタム、チカルシリン、クラブラン酸、トブラマイシン、タゾシン、イミペネム、ミノサイクリン、メロペネム、ペニシリン、オキサシリン、エリスロマイシン、バンコマイシン、リファンピン及びクリンダマイシンからなる群の1つ又は複数から選択される。
【0022】
好ましくは、抗生物質はアンピシリン及び/又はエリスロマイシンである。
【0023】
別の態様では、本発明は、細菌に起因する疾患を予防及び/又は治療するための薬剤の調製における該医薬組成物及び医薬キットの使用を提供する。
【0024】
好ましくは、細菌は抗生物質耐性菌、好ましくは多抗生物質耐性菌であってよく;より好ましくは、細菌は多抗生物質耐性グラム陰性菌であってよく;更に好ましくは、多抗生物質耐性グラム陰性菌は大腸菌、緑膿菌、クレブシエラ菌(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、プロテウス菌、腸内細菌科、インフルエンザ菌、肺炎桿菌及びカタラーリス(catarrhalis)からなる群の1つ又は複数から選択され;より好ましくは、多抗生物質耐性グラム陰性菌は大腸菌、緑膿菌及び/又はクレブシエラ菌である。
【0025】
代替として、細菌は多抗生物質耐性グラム陽性菌であり;好ましくは、多抗生物質耐性グラム陽性菌は、黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、A群化膿レンサ球菌、肺炎レンサ球菌、枯草菌及び表皮ブドウ球菌からなる群の1つ又は複数から選択してよく;更に好ましくは、多抗生物質耐性グラム陽性菌はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌及び/又は黄色ブドウ球菌である。
【0026】
また、本発明による使用において、細菌に起因する疾患は細菌に起因する感染症であり、特に消化器系感染;血液系感染;呼吸器系感染;泌尿器系感染;中枢神経系感染;骨及び関節感染;耳、乳様突起及び副鼻腔感染;並びに皮膚及び軟組織感染等の抗生物質耐性菌に起因する感染症であり;好ましくは細菌に起因する疾患は抗生物質耐性菌に起因する呼吸器系感染である。
【0027】
ここでは、細菌疾患は多抗生物質耐性グラム陰性菌に起因するに呼吸器系感染であり;好ましくは、細菌に起因する疾患は多抗生物質耐性グラム陰性菌に起因する感染性肺炎であり;更に好ましくは、細菌に起因する疾患は多抗生物質耐性グラム陰性菌に起因する院内感染肺炎であり;より好ましくは、細菌に起因する疾患は多抗生物質耐性クレブシエラ菌に起因する院内感染肺炎である。
【0028】
代替として、細菌に起因する疾患は多抗生物質耐性グラム陽性菌に起因する呼吸器系感染であり;好ましくは、細菌に起因する疾患は多抗生物質耐性グラム陽性菌に起因する肺炎であり;更に好ましくは、細菌に起因する疾患はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に起因する肺炎である。
【0029】
更に別の態様では、本発明は、細菌の耐性に反作用するための薬剤の調製において、イリドイド化合物を含有するニンドウエキスの使用も提供する。実験は、ニンドウエキスが抗生物質に対する細菌の感受性を促進、修復及び/又は改善でき、これによって細菌の耐性に反作用及び対抗するための薬剤の調製に使用できることを示している。薬剤は、患者に投与されると、患者の体内の(多抗生物質耐性菌でさえある)耐性菌の抗生物質に対する耐性に又は対抗でき、患者の体内の細菌が抗生物質に対する耐性を獲得するのを防止することもできる。
【0030】
ここではニンドウエキスは、
以下の構造式
【0031】
【化2】
【0032】
に表されるイリドイド化合物を含有し:
式(1)では、X
1、X
2はそれぞれ独立してOを表し、RはHを表し;
式(2)、式(3)、式(4)では、X
1、X
2はそれぞれ独立してH、C
1‐6の低級アルキル又はC
2‐6の低級アルケニルを表す。
【0033】
好ましくは、ニンドウエキスは式(1)に表されるセコロガン酸を50wt%以上含有し;更に好ましくは、ニンドウエキスはセコロガン酸を70wt%以上含有し;より好ましくは、ニンドウエキスはセコロガン酸を80wt%以上含有し;最も好ましくは、ニンドウエキスはセコロガン酸を90wt%以上含有する。
【0034】
本発明のニンドウエキスは、参照によりその全体が本明細書に援用される特許ZL200610083556.7に開示された方法によって調製できる。本発明の実施形態によって、以下のステップを含む方法によりニンドウエキスを調製する:
(1)植物のニンドウ、その元の植物であるスイカズラ又は他の同属植物を粉状にし、その後、水及び/又は体積比95%以下のアルコールを含有するC
1‐C
6アルキルアルコール水溶液により抽出し、エキスを得るステップ;
(2)ステップ(1)で得たエキスを常圧又は減圧下で濃縮して抽出物を得るか、又はステップ(1)で得たエキスにスプレー乾燥を実施して粉末を得て、その抽出物又は粉末を水で溶解し、その後体積比95%以下のアルコールを含有するC
1‐C
6アルキルアルコール水溶液により沈殿又は沈降させ、沈殿物あるいは溶解液濃縮物を得るステップ;
(3)沈殿物を単離及び精製するか、又はステップ(2)で得た液体濃縮物をクロマトグラフィーにより溶解し、イリドイド化合物を含有する溶離剤を回収するステップであって、ここでクロマトグラフィーはマクロ多孔性吸収樹脂カラムクロマトグラフィー、順相シリカゲルクロマトグラフィー及び逆相シリカゲルクロマトグラフィーの1つ又は複数から選択するステップ;
好ましくは、ニンドウエキスは以下のステップを含む方法により調製する:
(1)ニンドウの薬草を粉状にし、その後、エタノール50%(v/v)水溶液で抽出を行い、抽出液を得るステップ;
(2)ステップ(1)で得た抽出液を減圧下で濃縮して抽出物を得て、該抽出物を水に溶解し、濾過し、該溶液を乾燥するまで濃縮し、エタノール95%(v/v)水溶液を添加して溶解し、溶液のエタノール含量が75%(v/v)になるように蒸留水を添加し、静置した後に濾過し、濾過物からエタノールを回収し、液体抽出物を得るステップ;
(3)水を添加することによりステップ(2)で得た液体抽出物を溶解し、濾過し、濾過物を得て、該濾過物をスチレン製マクロ多孔性吸収樹脂クロマトグラフィーカラムに通し、その後、水及びエタノール20%(v/v)水溶液で連続的にカラムを溶出し、エタノール20%(v/v)水溶液の溶離剤中のエタノールを回収するステップ;
より好ましくは、本方法は、ゲルクロマトグラフィーによりステップ(3)で得たイリドイド化合物を含有する溶離剤を精製するステップを更に含み;
最も好ましくは、本方法はSephadexLH‐20ゲルクロマトグラフィーカラムによりステップ(3)で得たイリドイド化合物を含有する溶離剤を精製し、水の溶離剤を回収するステップを更に含む。
【0035】
本発明による使用では、細菌の耐性は抗生物質に対する細菌の耐性であり;
好ましくは、細菌の耐性は多数の抗生物質に対する細菌の耐性であり;
更に好ましくは、本発明の抗生物質は、アンピシリン、ペナムスルホン、ピペラシリン、タゾバクタム、アモキシシリン、クラブラン酸、セファゾリン、セフロキシム、セフトリアキソン、セフロキシムナトリウム、スルペラゾン、左旋性フッ化酸素、セフォタキシム、セフタジジム、イミペネム、セフェピム、セフォキシチン、ゲンタマイシン、アミカシン、シプロフロキサシン、クロラムフェニコール、トリメトプリム‐スルファメトキサゾール、テトラサイクリン、ニトロフラントイン、アズトレオナム、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、アンモニア、スルバクタム、チカルシリン、クラブラン酸、トブラマイシン、タゾシン、イミペネム、ミノサイクリン、メロペネム、ペニシリン、オキサシリン、エリスロマイシン、バンコマイシン、リファンピン及びクリンダマイシンからなる群の1つ又は複数から選択される。
【0036】
好ましくは、抗生物質はアンピシリン及び/又はエリスロマイシンである。
【0037】
また、薬剤は抗生物質を更に含有し;好ましくは、抗生物質はアンピシリン、ペナムスルホン、ピペラシリン、タゾバクタム、アモキシシリン、クラブラン酸、セファゾリン、セフロキシム、セフトリアキソン、セフロキシムナトリウム、スルペラゾン、左旋性フッ化酸素、セフォタキシム、セフタジジム、イミペネム、セフェピム、セフォキシチン、ゲンタマイシン、アミカシン、シプロフロキサシン、クロラムフェニコール、トリメトプリム‐スルファメトキサゾール、テトラサイクリン、ニトロフラントイン、アズトレオナム、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、アンモニア、スルバクタム、チカルシリン、クラブラン酸、トブラマイシン、タゾシン、イミペネム、ミノサイクリン、メロペネム、ペニシリン、オキサシリン、エリスロマイシン、バンコマイシン、リファンピン及びクリンダマイシンからなる群の1つ又は複数から選択され;更に好ましくは、抗生物質はアンピシリン及び/又はエリスロマイシンである。
【0038】
クロロゲン酸及びその誘導体が抗細菌及び抗ウイルス活性を持つと考えると、清熱及び解毒効果を有するニンドウの物質に関する基礎研究は最終段階に差し掛かっており、多数の調査施設又は研究所はニンドウの有効成分の単離及び抽出に専心している。
【0039】
多数の実験を経て、本発明者らはセコロガン酸を主成分とするニンドウエキスをニンドウの薬草から抽出してエキスを精製し、そして抗生物質との併用効果実験において、ニンドウエキスは多耐性菌の抗生物質に対する感受性を有意に促進、修復及び/又は改善でき、多耐性菌の抗生物質に対する耐性に反作用又は対抗できることを見出した。このことは、細菌の耐性のために元の抗菌効果を失っている抗生物質が、ニンドウエキスを同量の抗生物質にことにより、細菌阻害効果を修復するという点で具体化されており、これにより、ニンドウエキスは耐性菌の抗生物質に対する感受性を修復又は改善でき、よって耐性菌に起因する感染症の補助的治療に用いることができることが分かる。
【0040】
以下に本発明の実施例を添付の図面と合わせて詳細に説明する。