【実施例】
【0054】
以下実施例、比較例に基づき、本発明をより詳細に説明する。なお、ここに示す実施例は代表例であり、本発明がこの実施例に限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
ブタパルボウイルス(PPV)の宿主細胞としてPK−13細胞(ATCCから購入)を用い、これを10%牛胎児血清を添加したDMEM培地(以下、「血清培地」と呼ぶ。後述の実施例でも同様。)で、37℃、5%CO
2環境下にて、75cm
2底面積、容量15mLの組織培養用フラスコ(以下、「フラスコ」と呼ぶ。後述の実施例でも同様。)を用いて継代培養した。このフラスコ内での宿主細胞の細胞数を24時間ごとに測定し、対数増殖期の倍加時間を計測したところ、17時間であった。また最も多い細胞数となった日とその前後の日の細胞数の平均値をコンフルエント時の宿主細胞の細胞密度として計測したところ、2.0×10
7細胞/フラスコであった。
【0056】
次いで、上記フラスコからPK−13細胞を剥がし、新しいフラスコに、コンフルエント時の細胞密度の1/500(4.0×10
4細胞/フラスコ)、1/200(1.0×10
5細胞/フラスコ)、及び1/40(5.0×10
5細胞/フラスコ)の細胞密度の宿主細胞を、15mLの血清培地とともに分注した。各細胞密度の条件につき6フラスコずつ分注した。次いで、当該各フラスコにPPVをMOI=0.01となるよう接種し、37℃、5%CO
2環境下にて培養した。培養容器内で上記のようにして感染させると、シードウイルスは2時間以内に宿主細胞に感染し取り込まれた。このときいったん培養液中からはパルボウイルスが姿を消し、いわゆる暗黒期(Eclipse)に入った。このとき一部の細胞がパルボウイルスに感染した状態であった。その後、一部の細胞はパルボウイルス感染により死滅へ導かれたものの、驚くべきことに全体の細胞数は増加していった。
【0057】
感染開始後、85時間(倍加時間の5倍)、102時間(同6倍)、119時間(同7倍)、136時間(同8倍)、153時間(同9倍)、187時間(同11倍)培養した時点で1フラスコずつ培養上清を回収した。回収した培養上清を、3000rpm、20分間遠心し、上清画分を0.45μmフィルター(ナルゲン製)で濾過した。
【0058】
PPV感染価を、96ウエルプレートを用いて、赤血球凝集素反応を利用した感染判定法でTCID
50法で測定した。50%感染価の計算は、Reed−Muench法(医科ウイルス学、2000.南江堂.171−172)で行った。その結果を表1に示す。表1に示すように得られたウイルスの感染価は、10
8TCID
50/mL以上の高い感染価であることがわかった。(表1の数値は、感染価を対数値で表示している。例えば、8.1とは、10
8.1TCID
50/mLのことを示す)。
【0059】
さらに、不純物蛋白質濃度をBioRad社のプロテインアッセイ試薬(ブラッドフォード法)で測定し、PPV感染価(TCID
50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比を求めた。その結果を表2に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
[比較例1]
実施例1と同様にしてPK−13細胞を継代培養し、倍加時間及びコンフルエント時の細胞密度を測定したところ、倍加時間=17時間、コンフルエント時の細胞密度=2.0×10
7細胞/フラスコ)であった。次いで、新しいフラスコに、コンフルエントの細胞密度の1/2000(1.0×10
4細胞/フラスコ)、1/4(5.0×10
6細胞/フラスコ)、1/2.65(7.5×10
6細胞/フラスコ)、1/2(1.0×10
7細胞/フラスコ)、及び1/1(2.0×10
7細胞/フラスコ)の細胞密度の宿主細胞を、15mLの血清培地とともに、各細胞密度の条件につき6フラスコずつ分注した。次いで、当該各フラスコにPPVをMOI=0.01となるよう接種し、37℃、5%CO
2環境下にて培養した。感染開始後、85時間(倍加時間の5倍)、102時間(同6倍)、119時間(同7倍)、136時間(同8倍)、153時間(同9倍)、187時間(同11倍)培養した時点で1フラスコずつ培養上清を回収した。回収した培養上清を、3000rpm、20分間遠心し、上清画分を0.45μmフィルター(ナルゲン製)で濾過した。
【0063】
PPV感染価を、96ウエルプレートを用いて、実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表3に示す。表3に示すように、いずれの条件下でも感染価10
8TCID
50/mL以上にはならなかった。
【0064】
さらに、実施例1と同様にしてPPV感染価(TCID
50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比を求めた。その結果を表4に示した。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
[実施例2]
実施例1と同様にしてPK−13細胞を継代培養し、倍加時間及びコンフルエント時の細胞密度を測定したところ、倍加時間=17時間、コンフルエント時の細胞密度=2.0×10
7細胞/フラスコであった。次いで、新しいフラスコに、コンフルエントの細胞密度の1/40(5.0×10
5細胞/フラスコ)の細胞密度の宿主細胞を、15mLの血清培地とともに、各細胞密度条件につき4フラスコずつ分注した。次いで、当該各フラスコにPPVをMOI=0.0001、0.001、0.003、0.01、0.03、0.1となるよう接種し、37℃、5%CO
2環境下にて培養した。感染開始後、119時間(倍加時間の7倍)、136時間(同8倍)、153時間(同9倍)、187時間(同11倍)培養した時点で1フラスコずつ培養上清を回収した。回収した培養上清を、3000rpm、20分間遠心し、上清画分を0.45μmフィルター(ナルゲン製)で濾過した。
【0068】
PPV感染価を、96ウエルプレートを用いて、実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表5に示す。表5に示すように、いずれのMOIでも、得られたウイルスの感染価は10
8TCID
50/mL以上の高い感染価であることがわかった。
【0069】
さらに、実施例1と同様にしてPPV感染価(TCID
50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比を求めた。その結果を表6に示した。
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
[実施例3]
実施例1と同様にしてPK−13細胞を継代培養し、倍加時間及びコンフルエント時の細胞密度を測定したところ、倍加時間=17時間、コンフルエント時の細胞密度=2.0×10
7細胞/フラスコであった。次いで、新しいフラスコに、コンフルエントの細胞密度の1/600(3.4×10
4細胞/フラスコ)、1/400(5.0×10
4細胞/フラスコ)及び1/80(2.5×10
5細胞/フラスコ)の細胞密度の宿主細胞を、15mLの血清培地とともに、各細胞密度条件につき12フラスコずつに分注した。次いで、当該各フラスコを37℃、5%CO
2環境下にて17時間培養し、細胞数が2倍に増えた時点で、PPVをMOI=0.01(6フラスコ)及び0.003(6フラスコ)となるよう接種し、培養を継続した。感染開始後、85時間(倍加時間の5倍)、102時間(同6倍)、119時間(同7倍)、136時間(同8倍)、153時間(同9倍)、187時間(同11倍)培養した時点で1フラスコずつ培養上清を回収した。回収した培養上清を、3000rpm、20分間遠心し、上清画分を0.45μmフィルター(ナルゲン製)で濾過した。
【0073】
PPV感染価を、96ウエルプレートを用いて、実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表7に示す。表7に示すように、ウイルス感染価は10
8TCID
50/mL以上の高い感染価であることがわかった。
【0074】
さらに、実施例1と同様にしてPPV感染価(TCID
50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比を求めた。その結果を表8に示した。
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】
【0077】
[実施例4]
実施例1と同様にPK−13細胞を継代培養し、倍加時間及びコンフルエント時の細胞密度を測定したところ、倍加時間=17時間、コンフルエント時の細胞密度=2.0×10
7細胞/フラスコであった。次いで、新しいフラスコに、コンフルエントの細胞密度の1/80(2.5×10
5細胞/フラスコ)及び1/60(3.4×10
5細胞/フラスコ)の細胞密度の宿主細胞を、15mLの血清培地とともに、各細胞密度条件につき2フラスコずつに分注した。次いで、37℃、5%CO
2環境下にて17時間培養し、細胞数が2倍に増えた時点で、PPVをMOI=0.01となるよう接種し、培養を継続した。感染開始後、4日後(96時間後)に培養上清を除去し、フラスコ底面の細胞を、血清を加えていないDMEM培地(以下、「無血清培地」という。)で洗浄したのち、10mLの無血清培地を添加し、さらに培養を行い、約1日後(感染開始から119時間後=倍加時間の7倍)、又は約2日後(感染開始から136時間後=同8倍)に1フラスコずつ上記無血清培地の培養上清を回収した。回収した無血清培養上清を、3000rpm、20分間遠心し、上清画分を0.45μmフィルター(ナルゲン製)で濾過した。
【0078】
無血清PPV感染価を、96ウエルプレートを用いて、実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表9に示す。表9に示すように、いずれの条件でもウイルス感染価は10
8TCID
50/mL以上の高い感染価であることがわかった。
【0079】
さらに、実施例1と同様にしてPPV感染価(TCID
50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比を求めた。その結果を表10に示した。
【0080】
【表9】
【0081】
【表10】
【0082】
[実施例5]
ブタパルボウイルス(PPV)の宿主細胞として汎用的に使用されているブタ腎臓由来の株化細胞であるESK細胞(Vet.Microbiol. 1984.9(2):187-92.、Microbiologica.1987.10(3):301-9.、Nippon Juigaku Zasshi. 1988.50(3):803-8、Nippon Juigaku Zasshi. 1990.52(2):217-24、J.Vet.Med.Sci.1992.54(2):313-8)をPK−13細胞に代えて使用したことを除き、実施例1と同様の培養条件で継代培養した。倍加時間及びコンフルエント時の細胞密度を計測したところ、それぞれ20時間、3.0×10
7細胞/フラスコであった。
【0083】
フラスコからESK細胞を剥がし、新しいフラスコに、コンフルエントの細胞密度の1/500(6.0×10
4細胞/フラスコ)、1/300(1.0×10
5細胞/フラスコ)、1/200(1.5×10
5細胞/フラスコ)、1/40(7.5×10
5細胞/フラスコ)、1/30(1.0×10
6細胞/フラスコ)、及び1/20(1.5×10
6細胞/フラスコ)の細胞密度の宿主細胞を、15mLの血清培地とともに、各細胞密度条件につき6フラスコずつ分注した。次いで、当該各フラスコにPPVをMOI=0.01となるよう接種し、実施例1と同様の培養条件で培養した。感染開始後、100時間(倍加時間の5倍)、120時間(同6倍)、140時間(同7倍)、160時間(同8倍)、180時間(同9倍)、220時間(同11倍)培養した時点で1フラスコずつ培養上清を回収した。回収した培養上清を、3000rpm、20分間遠心し、上清画分を0.45μmフィルター(ナルゲン製)で濾過した。
【0084】
PPV感染価を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表11に示す。表11に示すように、いずれの条件でもウイルス感染価は10
8TCID
50/mL以上の高い感染価であることがわかった。
【0085】
さらに、実施例1と同様にしてPPV感染価(TCID
50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比を求めた。その結果を表12に示した。
【0086】
【表11】
【0087】
【表12】
【0088】
[比較例2]
実施例1と同様にしてPK−13細胞を継代培養し、倍加時間及びコンフルエント時の細胞密度を測定したところ、倍加時間=17時間、コンフルエント時の細胞密度=2.0×10
7細胞/フラスコであった。新しいフラスコに、コンフルエントの細胞密度の1/40(5×10
5細胞/フラスコ)の細胞密度の宿主細胞を、15mLの血清培地とともに、各細胞密度条件につき4フラスコずつ分注した。次いで、当該各フラスコにPPVをMOI=0.0001、0.001、0.003、0.01、0.03、0.1となるよう接種し、37℃、5%CO
2環境下にて培養した。感染開始後、51時間(倍加時間の3倍)、68時間(同4倍)、204時間(同12倍)、238時間(同14倍)培養した時点で1フラスコずつ培養上清を回収した。回収した培養上清を、3000rpm、20分間遠心し、上清画分を0.45μmフィルター(ナルゲン製)で濾過した。
【0089】
PPV感染価を、96ウエルプレートを用いて、実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表13に示す。表13に示すように、いずれの条件下でも感染価10
8TCID
50/mL以上にはならなかった。
【0090】
さらに、実施例1と同様にしてPPV感染価(TCID
50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比を求めた。その結果を表14に示した。
【0091】
【表13】
【0092】
【表14】
【0093】
[比較例3]
実施例1と同様にしてPK−13細胞を継代培養し、倍加時間及びコンフルエント時の細胞密度を測定したところ、倍加時間=17時間、コンフルエント時の細胞密度=2.0×10
7細胞/フラスコであった。新しいフラスコに、コンフルエントの細胞密度の1/40(5.0×10
5細胞/フラスコ)の細胞密度の宿主細胞を、15mLの血清培地とともに、各細胞密度条件につき6フラスコずつ分注した。次いで、当該各フラスコにPPVをMOI=0.00001、1.0となるよう接種し、37℃、5%CO
2環境下にて培養した。感染開始後、85時間(倍加時間の5倍)、102時間(同6倍)、119時間(同7倍)、136時間(同8倍)、153時間(同9倍)、187時間(同11倍)培養した時点で1フラスコずつ培養上清を回収した。回収した培養上清を、3000rpm、20分間遠心し、上清画分を0.45μmフィルター(ナルゲン製)で濾過した。
【0094】
PPV感染価を、96ウエルプレートを用いて、実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表15に示す。表15に示すように、いずれの条件下でも感染価10
8TCID
50/mL以上にはならなかった。
【0095】
さらに、実施例1と同様にしてPPV感染価(TCID
50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比を求めた。その結果を表16に示した。
【0096】
【表15】
【0097】
【表16】
【0098】
[比較例4]
実施例5と同様にしてESK細胞を継代培養し、倍加時間及びコンフルエント時の細胞密度を測定したところ、(倍加時間=20時間、コンフルエント時の細胞密度=3.0×10
7細胞/フラスコであった新しいフラスコに、コンフルエントの細胞密度の1/2000(1.5×10
4細胞/フラスコ)、1/4(7.5×10
6細胞/フラスコ)、1/2.65(1.1×10
7細胞/フラスコ)、1/2(1.5×10
7細胞/フラスコ)、及び1/1(3.0×10
7細胞/フラスコ)の細胞密度の宿主細胞を、15mLの血清培地とともに、各細胞密度の条件につき6フラスコずつ分注した。次いで、当該各フラスコにPPVをMOI=0.01となるよう接種し、実施例5と同様にして培養した。感染開始後、100時間(倍加時間の5倍)、120時間(同6倍)、140時間(同7倍)、160時間(同8倍)、180時間(同9倍)、220時間(同11倍)培養した時点で1フラスコずつ培養上清を回収した。回収した培養上清を、3000rpm、20分間遠心し、上清画分を0.45μmフィルター(ナルゲン製)で濾過した。
【0099】
PPV感染価を、96ウエルプレートを用いて、実施例1と同様の方法で測定した。その結果を表17に示す。表17に示すように、いずれの条件下でも感染価10
8TCID
50/mL以上にはならなかった。
【0100】
さらに、実施例1と同様にしてPPV感染価(TCID
50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比を求めた。その結果を表18に示した。
【0101】
【表17】
【0102】
【表18】