特許第5980949号(P5980949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5980949複合シート材とこれを用いた使い捨て着用物品および複合シート材の製造方法と製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980949
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】複合シート材とこれを用いた使い捨て着用物品および複合シート材の製造方法と製造装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20160818BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20160818BHJP
   B32B 3/10 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   A61F13/15 340
   A61F13/15 352
   A61F13/15 355B
   A61F13/511 100
   A61F13/511 400
   B32B3/10
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-550126(P2014-550126)
(86)(22)【出願日】2013年11月15日
(86)【国際出願番号】JP2013080897
(87)【国際公開番号】WO2014084066
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2015年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-262705(P2012-262705)
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】和田 隆男
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/119535(WO,A1)
【文献】 特開2009−039140(JP,A)
【文献】 特開2009−050538(JP,A)
【文献】 特開2009−160035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 〜 13/84
A61L 15/16 〜 15/56
B32B 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の凸部(3)を形成した立体シート材(2)と、そのような凸部を有しない平坦シート材(4)と互いに積層した状態で接合した複合シート材であって、
上記の立体シート材(2)の上記凸部(3)を除く基部(7)は平坦に形成されて上記平坦シート材(4)と面状に当接されており、
上記の立体シート材(2)は、上記の平坦な基部(7)において、上記の凸部(3)から離間した接合部(5)で上記の平坦シート材(4)と接合されていることを特徴とする、複合シート材。
【請求項2】
上記の接合部(5)は、個々の凸部(3)を取り囲む状態に各凸部(3)の周囲に複数形成してある、請求項1に記載の複合シート材。
【請求項3】
上記の接合部(5)は、上記の凸部(3)で囲まれた基部(7)の面積の50%未満である、請求項1または2に記載の複合シート材。
【請求項4】
少なくとも一部の接合部(5)は、複合シート材(1)を貫通する貫通孔(8)を備える、請求項1から3のいずれかに記載の複合シート材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の複合シート材(1)を用いてあることを特徴とする、使い捨て着用物品。
【請求項6】
周面に賦形用凹部(21)を備える第1賦形ロール(11)と、周面に賦形用突起(24)を備える第2賦形ロール(12)との間に第1シート材(17)を案内して、多数の凸部(3)が形成されているとともに上記凸部(3)を除く基部(7)が平坦に形成されている立体シート材(2)としたのち、第2シート材(19)からなる平坦なシート材(4)を上記の立体シート材(2)の上記基部(7)と面状に当接する状態に重ね合せ、上記の凸部(3)から離間した部位でこの立体シート材(2)の上記基部(7)と平坦シート材(4)とを互いに圧接して接合部(5)を形成することを特徴とする、複合シート材の製造方法。
【請求項7】
上記の接合部(5)を、個々の凸部(3)を取り囲む状態に各凸部(3)の周囲に複数形成する、請求項6に記載の複合シート材の製造方法。
【請求項8】
上記の接合部(5)は、上記の凸部(3)で囲まれた基部(7)の面積の50%未満である、請求項6または7に記載の複合シート材の製造方法。
【請求項9】
上記の接合部(5)を、圧接するとともに加熱・溶着することにより形成する、請求項6から8のいずれかに記載の複合シート材の製造方法。
【請求項10】
多数の凸部(3)を備えるとともに上記凸部(3)を除く基部(7)が平坦に形成された立体シート材(2)と、そのような凸部を備えていない平坦なシート材(4)とを、上記基部(7)を上記平坦シート材(4)と面状に当接させた状態で互いに積層して接合する複合シート材の製造装置であって、
軸方向が互いに平行な第1賦形ロール(11)と第2賦形ロール(12)と押圧ロール(13)とを備えており、
上記の第1賦形ロール(11)は、ロール周面に多数の賦形用凹部(21)を備えるとともに、回転方向の上流側から順に賦形位置(14)と押圧位置(15・16)とがそのロール周面に設定してあり、
上記の第2賦形ロール(12)は、ロール周面に多数の賦形用突起(24)とこれら突起(24)間の平滑なロール周面とを備え、上記の賦形位置(14)で上記の第1賦形ロール(11)と対面するとともに、その賦形位置(14)で上記の賦形用突起(24)が上記の賦形用凹部(21)と噛み合い、
上記の第1賦形ロール(11)のロール周面と上記の押圧ロール(13)のロール周面とのいずれかに、径方向外側へ突出する圧接用突起(25)が設けてあり、
上記の第1賦形ロール(11)と押圧ロール(13)は、上記の押圧位置(15・16)で、互いに重なり合った上記の立体シート材(2)と平坦シート材(4)とを、一方のロールに設けた上記の圧接用突起(25)の先端が他方のロールの平滑なロール周面に向かって押圧する状態で対面していることを特徴とする、複合シート材の製造装置。
【請求項11】
上記の圧接用突起(25)は、上記の第1賦形ロール(11)のロール周面のうち、上記の賦形用凹部(21)から離間した部位に突設してある、請求項10に記載の複合シート材の製造装置。
【請求項12】
上記の圧接用突起(25)は、個々の賦形用凹部(21)を取り囲む状態に各賦形用凹部(21)の周囲に複数突設してある、請求項10または11に記載の複合シート材の製造装置。
【請求項13】
上記の第1賦形ロール(11)と押圧ロール(13)との少なくともいずれかは、上記の圧接用突起(25)で押圧される立体シート材(2)と平坦シート材(4)とを加熱する加熱手段(23)を備えている、請求項10から12のいずれかに記載の複合シート材の製造装置。
【請求項14】
上記の第1賦形ロール(11)の周囲に上記の押圧ロール(13)が複数設けてある、請求項10から13のいずれかに記載の複合シート材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつなどの使い捨て着用物品の表面シート等に用いられる複合シート材に関し、さらに詳しくは、立体シート材と平坦シート材とが互いに確りと接合されたものでありながら、通気性等に優れ、柔軟で肌触りが良好な複合シート材とこれを用いた使い捨て着用物品、および複合シート材の製造方法と製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨て着用物品の表面シートに用いられる複合シート材として、多数の凸部を形成した立体シート材と、そのような凸部が形成されていない平坦なシート材とが互いに積層されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。この複合シート材からなる表面シートを備えた使い捨て着用物品は、上記の凸部が着用者の肌側に向けて突出するように装着され、良好な装着感が得られるとともに、液漏れが効果的に防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−174234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の複合シート材は、周面に多数の凹凸形状を有する1対のロールを互いに噛み合せ、その噛み合せ部に一方のシート材を噛み込ませることにより、このロールの凹部でシート材の凸部を形成して立体シート材とし、吸引によって一方のロールのロール周面にその立体シート材を保持しつつ、これに平坦な他のシート材を重ね合せ、そのロールにおける凹部の周囲で両シート材を溶着等により接合することで製造される。従って得られた複合シート材は、立体シート材の凸部を除く部分(以下、基部ともいう。)の全体が、上記の平坦シート材と接合されている。
【0005】
このため、この従来の複合シート材は、立体シート材と平坦シート材との接合面積が広いので、溶着によりシート材がフィルム化等する面積も広く、複合シート材全体の柔らかさを高めることが容易でない。また、立体シート材は、上記の凸部に隣接する基部が平坦シート材に接合されているため、保形性には優れるものの、押圧されたときに変形しにくく、この点からも複合シート材の柔軟性を高めることが容易でない。この結果、この複合シート材を表面シート材としたときの、肌触りや装着感を一層良好にすることが容易でない。
【0006】
また、上記の接合面積が広いことから、接着圧力を高めることが容易でなく、この接着部を確りと接合することが容易でない。そして立体シート材と平坦シート材とが十分に接合されておらず、外力等でその接合が外れると、両シート材が互いにズレ動いて上記の凸部の立体形状を維持できなくなる虞がある。
さらに、上記の両シート材が溶着により凸部間の広い面積でフィルム化すると、複合シート材としての通気性や透液性が低下する問題もある。
【0007】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、立体シート材と平坦シート材とが互いに確りと接合されたものでありながら、通気性等に優れ、柔軟で肌触りが良好な複合シート材と、その製造方法および複合シート材の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図9に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明1は複合シート材に関し、多数の凸部(3)を形成した立体シート材(2)と、そのような凸部を有しない平坦シート材(4)とを互いに積層して接合した複合シート材であって、上記の立体シート材(2)は、上記の凸部(3)から離間した接合部(5)で上記の平坦シート材(4)と接合されていることを特徴とする。
【0009】
本発明2は使い捨て着用物品に関し、本発明1の複合シート材(1)を用いてあることを特徴とする。
【0010】
また、本発明3は複合シート材の製造方法に関し、周面に賦形用凹部(21)を備える第1賦形ロール(11)と、周面に賦形用突起(24)を備える第2賦形ロール(12)との間に第1シート材(17)を案内して、多数の凸部(3)が形成された立体シート材(2)としたのち、第2シート材(19)からなる平坦なシート材(4)を上記の立体シート材(2)に重ね合せ、上記の凸部(3)から離間した部位でこの立体シート材(2)と平坦シート材(4)とを互いに圧接して接合部(5)を形成することを特徴とする。
【0011】
また本発明4は複合シート材の製造装置に関し、多数の凸部(3)を備える立体シート材(2)と、そのような凸部を備えていない平坦なシート材(4)とを互いに積層して接合する複合シート材の製造装置であって、軸方向が互いに平行な第1賦形ロール(11)と第2賦形ロール(12)と押圧ロール(13)とを備えており、上記の第1賦形ロール(11)は、ロール周面に多数の賦形用凹部(21)を備えるとともに、回転方向の上流側から順に賦形位置(14)と押圧位置(15・16)とがそのロール周面に設定してあり、上記の第2賦形ロール(12)は、ロール周面に多数の賦形用突起(24)を備え、上記の賦形位置(14)で上記の第1賦形ロール(11)と対面するとともに、その賦形位置(14)で上記の賦形用突起(24)が上記の賦形用凹部(21)と噛み合い、上記の第1賦形ロール(11)のロール周面と上記の押圧ロール(13)のロール周面とのいずれかに、径方向外側へ突出する圧接用突起(25)が設けてあり、上記の第1賦形ロール(11)と押圧ロール(13)は、上記の押圧位置(15・16)で、互いに重なり合った上記の立体シート材(2)と平坦シート材(4)とを上記の圧接用突起(25)の先端が押圧する状態で対面していることを特徴とする。
【0012】
上記の接合部は凸部から離間しているので、凸部を除いた部分である基部の一部しか占めず、接合面積が基部全体よりも狭い。このため、この接合部で上記の立体シート材と平坦シート材とを互いに圧接すると、これら両シート材が互いに、高い圧力で確りと接合される。また、接合部の面積が狭いので、上記の複合シート材は柔らかいうえ、上記の凸部は接合部から離間しているため、押圧されたときの変形が容易であり、優れた柔軟性が発揮される。しかも接合面積が狭いので、この接合部がフィルム化等した場合でも、複合シート材全体として優れた通気性と透液性が維持される。従って、この複合シート材を吸収体の表面シート等に用いた本発明2の使い捨て着用物品は、肌触りが良好で装着感に優れたものとなる。
【0013】
上記の複合シート材は、特定の製造方法や製造装置により製造されるものに限定されないが、上記の本発明3や本発明4により製造されると、立体シート材と平坦シート材とを所定の接合部で容易に且つ確実に接合できて好ましい。
【0014】
このとき、上記の本発明4の複合シート材の製造装置にあっては、上記の圧接用突起を第1賦形ロールのロール周面と押圧ロールのロール周面とのいずれに設けてもよい。しかしこの圧接用突起を、第1賦形ロールのロール周面のうち上記の賦形用凹部から離間した部位に突設してあると、得られた複合シート材は、上記の賦形用凹部で形成される凸部に対し、所定の相対位置、即ち、この凸部から離間した位置に、上記の接合部を形成することができて好ましい。
【0015】
上記の接合部は、上記の凸部から離間しておればよいが、個々の凸部を取り囲む状態に各凸部の周囲に複数形成してあると、各凸部が周囲の接合部により確りと保形されて好ましい。またこの接合部は、互いに隣合う凸部間が最も広い部位に、即ち周囲のいずれの凸部からも最も離れた部位に形成してあると、上記の凸部を変形可能に保形しながら、立体シート材と平坦シート材とを確りと接合できて好ましく、この接合部が、互いに隣合う凸部間が最も広い部位にのみ形成してあると特に好ましい。
【0016】
従って、上記の本発明4の複合シート材の製造装置においては、上記の圧接用突起は、個々の賦形用凹部を取り囲む状態に各賦形用凹部の周囲に複数突設してあると好ましく、また、互いに隣合う賦形用凹部間が最も広い部位に、即ち周囲のいずれの賦形用凹部からも最も離れた部位に突設してあると好ましい。
【0017】
上記の接合部は、特定の広さに限定されないが、狭すぎると上記の立体シート材と平坦シート材との接合が外れる虞があり、広すぎると複合シート材の柔軟性を充分に高めることが容易でない。このため、この接合部の広さは、凸部で囲まれた基部の面積の50%未満であると好ましく、5〜30%程度であるとより好ましく、10〜25%であるとさらに好ましい。ここで上記の「凸部で囲まれた基部」とは、接合部に近接している複数の凸部の、平面視における各中心点を結んだ領域から、それら凸部が形成されている範囲を除いた部分をいう。また上記の「接合部の広さ」は、上記の凸部で囲まれた基部に複数形成してある場合は、各接合部の面積を合計した値をいう。
【0018】
上記の立体シート材と平坦シート材は、上記の接合部が圧接の際に接合されておればよく、その接合は接着剤等を用いたものであってもよいが、圧接するとともに加熱して溶着してあると、接着剤を用いないので安価に実施できるうえ、複合シート材が接着剤等により硬くなることを防止できて好ましい。
従って、上記の本発明4の複合シート材の製造装置は、上記の第1賦形ロールと押圧ロールとの少なくともいずれかが、上記の圧接用突起で押圧される立体シート材と平坦シート材とを加熱する加熱手段を備えていると、圧接の際に両シート材を互いに溶着できて好ましい。
【0019】
この場合、上記の複合シート材の製造装置は、上記の第1賦形ロールの周囲に上記の押圧ロールが複数設けてあると、同じ接合部を複数回圧接できるので、生産速度の向上等により各押圧位置での圧接時間が短くなる場合であっても、各接合部を確りと圧接できるうえ、広い範囲に形成された多数の接合部を均等に圧接できて好ましい。
この場合、上記の圧接用突起が第1賦形ロールのロール周面に突設してあると、この第1賦形ロールのロール周面で搬送される立体シート材や平坦シート材が、圧接用突起に対し位置ずれを生じることなく搬送されるので、各圧接部をこの圧接用突起と上記の複数の押圧ロールとにより、位置ずれを生じることなく確実に複数回押圧できて好ましい。
【0020】
なお上記の接合部は、加熱溶着される場合にフィルム化されていても、この接合部の面積が狭いので良好な通気性や透液性を備えることができる。さらにこの場合に、少なくとも一部の接合部が複合シート材を貫通する貫通孔を備えると、その貫通孔の周囲で立体シート材と平坦シート材を確りと接合しながら、しかもその貫通孔により、複合シート材の通気性や透液性を一層良好にできて好ましい。これらの貫通孔は、圧接の際の圧力を高めたり、圧接用突起の先端に小さな突起を形成したりして形成してもよく、或いは溶着後の複合シート材に張力を付与することで形成してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
(1)接合部は凸部から離間しており、この接合部の面積が凸部で囲まれた基部の面積よりも狭いので、この接合部で上記の立体シート材と平坦シート材とを互いに、高い圧力で確りと接合することができる。この結果、立体シート材と平坦シート材との接合部が外れて互いにズレ動く虞がなく、上記の凸部の立体形状が両シート材のズレ動きにより大きく変形したり消失したりすることを防止できる。
【0022】
(2)上記の接合部は面積が狭いので、接合により複合シート材が硬くなることを低減できるうえ、接合部は凸部から離間しているので、各凸部は押圧されたときの変形が容易であり、複合シート材全体として優れた柔軟性を発揮することができる。この結果、この複合シート材を吸収体の表面シート等に用いた使い捨て着用物品は、肌触りが良好で優れた装着感が得られる。
【0023】
(3)上記の接合部は面積が狭いので、立体シート材と平坦シート材とを互いに確りと接合してこの接合部がフィルム化等した場合でも、複合シート材全体として優れた通気性と透液性とを維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態を示す、複合シート材の破断斜視図である。
図2】本発明の実施形態の、複合シート材の平面図である。
図3】本発明の実施形態の、複合シート材の要部の拡大平面図である。
図4】本発明の実施形態の、複合シート材の要部の拡大断面図である。
図5】本発明の実施形態の、使い捨て着用物品の概略構成を示す、分解断面図である。
図6】本発明の実施形態の、複合シート材の製造装置の概略構成図である。
図7】本発明の実施形態の、複合シート材の製造装置の要部の拡大断面図である。
図8】本発明の変形例1の、複合シート材の要部の拡大平面図である。
図9】本発明の変形例2の、複合シート材の要部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態のものに限定されるものではない。
【0026】
図1から図4に示すように、この複合シート材(1)は、多数の凸部(3)を備える立体シート材(2)と、これに積層された、そのような凸部を備えていない平坦なシート材(4)とを備える。この立体シート材(2)と平坦シート材(4)は、上記の凸部(3)から離間した位置に形成されている接合部(5)で、溶着により互いに接合されて一体となっている。
【0027】
上記の立体シート材(2)と平坦シート材(4)は、特定の材質のものに限定されず、例えば、エアースルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等の各種製法による不織布などが用いてある。この立体シート材(2)と平坦シート材(4)とは同じ材質であってもよく、互いに異なる材質であってもよい。
【0028】
図2に示すように、この実施形態では、立体シート材(2)よりも平坦シート材(4)を広幅に形成してあり、上記の多数の凸部(3)は、狭い幅の立体シート材(2)の全幅に亘って形成してある。従ってこの複合シート材(1)は、両側縁に凸部が形成されていない平坦領域(6)を備えるが、この平坦領域(6)は平坦シート材(4)のみで形成されるので、複合シート材(1)全体としての柔らかさが良好に維持される。
【0029】
また例えば図5に示すように、上記の複合シート材(1)を使い捨ておむつ(27)の吸収体(28)の表面シート(29)として用いる場合には、上記の平坦領域(6)は、立体ギャザーシート(30)など、他のシートと容易に接合できる利点がある。またこの平坦領域(6)は、吸収体(28)の両側縁を巻き込むように折り曲げて用いてもよい。なお、符号(31)は立体ギャザーシート(30)に付設された糸状弾性部材を示し、符号(32)は拡散シートを、符号(33)はバックシートを、符号(34)は外層シートをそれぞれ示す。
【0030】
但し本発明では、上記の立体シート材(2)と平坦シート材(4)の幅は特定の寸法に限定されず、両シート材(2・4)の幅は互いに同じ寸法であってもよく、立体シート材(2)が平坦シート材(4)より広幅であってもよい。上記の凸部(3)は、狭い幅のシート材と同じ幅か、あるいはこれよりもさらに狭い範囲に形成される。
【0031】
図2図3に示すように、上記の接合部(5)は、個々の凸部(3)を取り囲む状態に、各凸部(3)の周囲に4つずつ形成してある。また接合部(5)は、互いに隣合う凸部(3・3)間が最も広い部位に、従って周囲のいずれの凸部(3)からも最も離れた部位に形成してある。即ちこの実施形態では、個々の凸部(3)を、平面視で各凸部(3)の中心が四角形の頂点を占めるように配置してあり、この四角形の中央に上記の接合部(5)が形成してある。
上記の凸部(3)や接合部(5)は、特定の寸法のものに限定されないが、例えば凸部(3)は直径が0.5〜10mm程度の真円に相当する大きさが好ましく、接合部(5)は直径が0.1〜2mm程度の真円に相当する大きさが好ましい。
【0032】
また上記の接合部(5)の大きさは、上記の凸部(3)で囲まれた基部(7)の面積の50%未満であると好ましい。例えば、図3において、上記の四角形の面積から凸部(3)の領域を除いた部分(即ち、基部)に対し、上記の接合部(5)の面積は、例えば20%程度に設定してある。
【0033】
図4に示すように、上記の接合部(5)の一部には、複合シート材(1)を貫通する貫通孔(8)が形成してあり、複合シート材(1)全体の通気性や透液性を高めてある。ただし本発明では、立体シート材(2)や平坦シート材(4)の通気性・透液性が十分に高い場合は、この貫通孔(8)を省略してもよく、或いは、通気性や透液性をさらに高めるため、全ての接合部に上記の貫通孔(8)を形成したものであってもよい。
【0034】
次に、上記の複合シート材を製造する装置と、この製造装置を用いる製造方法について説明する。
図6に示すように、この複合シート材の製造装置(10)は、軸方向が互いに平行な第1賦形ロール(11)と第2賦形ロール(12)と2本の押圧ロール(13・13)とを備えている。
この第1賦形ロール(11)のロール周面には、回転方向の上流側から順に賦形位置(14)と第1押圧位置(15)と第2押圧位置(16)とが設定してある。この賦形位置(14)で第2賦形ロール(12)がこの第1賦形ロール(11)と対面し、第1押圧位置(15)と第2押圧位置(16)とでそれぞれ上記の各押圧ロール(13)がこの第1賦形ロール(11)と対面している。
【0035】
またこの製造装置(10)は、第1供給手段(18)と第2供給手段(20)とを備えている。この第1供給手段(18)は、図外の供給装置からテンションコントローラ(26)を経て、第1シート材(17)を上記の賦形位置(14)の上流側へ供給する。上記の第2供給手段(20)は、図外の供給装置から第2シート材(19)を上記の賦形位置(14)と第1押圧位置(15)との間へ供給する。この両供給手段(18・20)は、それぞれが供給するシート材(17・19)を予熱するための図示しない予熱手段を備えている。
【0036】
図7に示すように、上記の第1賦形ロール(11)のロール周面には多数の賦形用凹部(21)が形成してある。この賦形用凹部(21)の底部には、第1賦形ロール(11)内に形成された吸引路(22)を介して図外の吸引手段が接続してある。またこの第1賦形ロール(11)内には、ロール周面で搬送される第1シート材(17)や第2シート材(19)を加熱するための、加熱手段(23)が設けてある。
【0037】
上記の第2賦形ロール(12)は、ロール周面に多数の賦形用突起(24)を備えている。この賦形用突起(24)は、上記の賦形位置(14)で上記の賦形用凹部(21)と噛み合う。なお、この第2賦形ロール(12)内には図示しない予熱手段が設けてある。両賦形ロール(11・12)間を通過する第1シート材(17)は、この第2賦形ロール(12)との接触で冷却されることが、上記の予熱手段により防止される。
【0038】
上記の第1賦形ロール(11)のロール周面には、互いに隣合う上記の賦形用凹部(21・21)間で、各賦形用凹部(21)から離間した位置に、径方向外側へ突出する圧接用突起(25)が設けてある。その圧接用突起(25)の突設位置は、前記の複合シート材(1)に形成される接合部(5)に対応している。従ってこの圧接用突起(25)は、個々の賦形用凹部(21)を取り囲む状態に各賦形用凹部(21)の周囲に4つずつ突設してあり、また、互いに隣合う賦形用凹部(21・21)間が最も広い部位に、即ち周囲のいずれの賦形用凹部(21)からも最も離れた部位に突設される。
【0039】
上記の圧接用突起(25)は、上記の各押圧位置(15・16)において、互いに重ね合わされた立体シート材(2)と平坦シート材(4)とを、その先端で上記の押圧ロール(13)側へ押圧するように構成してある。従ってこの圧接用突起(25)は、両シート材(2・4)を押圧できるだけの高さがあればよく、例えば1mm以下など、僅かな突出高さに形成してある。
また、上記の各押圧ロール(13)には、上記の圧接用突起(25)で押圧される立体シート材(2)と平坦シート材(4)とを加熱圧着するように、それぞれ図示しない加熱手段が設けてある。
【0040】
図6に示すように、図外の供給装置から第1供給手段(18)を経て供給された第1シート材(17)は、上記の賦形位置(14)で上記の第1賦形ロール(11)と第2賦形ロール(12)との間を通過することにより、その一部が賦形用突起(24)で賦形用凹部(21)内に押し込まれ、多数の凸部(3)が形成される。このとき、上記の第1シート材(17)は、上記のテンションコントローラ(26)で張力が均一に調整されており、これにより上記の凸部(3)が均一に形成される。
【0041】
上記の賦形用凹部(21)や賦形用突起(24)は、第1賦形ロール(11)や第2賦形ロール(12)のロール周面のうち、上記の第1シート材(17)と同じ幅の範囲に形成されており、これにより、上記の凸部(3)は立体シート材(2)の全幅に亘って多数形成される。
上記の賦形用凹部(21)は、上記の賦形用突起(24)の突出高さから上記の圧接用突起(25)の高さを差し引いた寸法よりも深く形成してある。これにより、この第1賦形ロール(11)のロール周面に圧接用突起(25)が突設されていても、上記の賦形用突起(24)で押し込まれた第1シート材(17)の一部を賦形用凹部(21)内へ確実に受け入れることができる。なお、上記の賦形用突起(24)の先端周縁は曲面状に面取りしてあり、賦形用凹部(21)内へ押し込まれる第1シート材(17)が傷つかないようにしてある。
【0042】
上記の第1シート材(17)は、上記の第1賦形ロール(11)に設けた加熱手段(23)と、上記の第2賦形ロール(12)や第1供給手段(18)に設けた予熱手段により加熱されるので、この第1シート材(17)には、その一部が上記の賦形用凹部(21)内へ押し込まれることにより、上記の凸部(3)が容易に且つ確実に賦形され、前記の立体シート材(2)とされる。
この凸部(3)が賦形された立体シート材(2)は、上記の吸引路(22)を介して吸引手段に吸引されることで、この第1賦形ロール(11)のロール周面に保持され、この凸部(3)が賦形用凹部(21)から離脱することなく、円滑に第1押圧位置(15)と第2押圧位置(16)へ順に案内される。
【0043】
一方、図外の供給装置から第2供給手段(20)を経て、上記の賦形位置(14)と第1押圧位置(15)との間に供給された第2シート材(19)は、平坦シート材(4)として上記の立体シート材(2)に重ね合される。
このとき上記の第2シート材(19)は、上記の第2供給手段(20)により、上記の第1押圧位置(15)よりも賦形位置(14)にできるだけ近接させて供給される。即ち、図6に示すように、第1賦形ロール(11)に対する第2供給手段(20)の配設位置は、賦形位置(14)との間の中心角(α)が、第1押圧位置(15)との間の中心角(β)よりも小さくなるように設定してある。これにより、上記の賦形用凹部(21)がこの平坦シート材(4)によって早期に蓋されるので、上記の吸引路(22)内の負圧を良好に確保でき、この平坦シート材(4)と上記の立体シート材(2)が第1賦形ロール(11)のロール周面に確りと保持されて、第1押圧位置(15)へ案内される。
【0044】
上記の第2シート材(19)は第2供給手段(20)に設けた予熱手段により加熱されるので、この第2シート材(19)からなる平坦シート材(4)を上記の立体シート材(2)に重ね合せても、この立体シート材(2)が冷却される虞がない。この結果、この立体シート材(2)と平坦シート材(4)は、加熱された状態で上記の第1押圧位置(15)へ案内される。
【0045】
上記の互いに重ね合わさった立体シート材(2)と平坦シート材(4)は、上記の第1押圧位置(15)に達すると、上記の凸部(3)から離間した部位が上記の圧接用突起(25)の先端で押圧され、その押圧力が上記の押圧ロール(13)に受け止められて圧接される。次いで、上記の両シート材(2・4)はさらに上記の第2押圧位置(16)へ案内され、この第2押圧位置(16)でも同様に上記の圧接用突起(25)の先端で圧接される。上記の各押圧ロール(13)は十分に加熱されているので、上記の圧接された部位で、両シート材(2・4)が互いに溶着する。これにより接合部(5)が形成され、この接合部(5)で両シート材(2・4)が互いに接合された複合シート材(1)となる。この複合シート材(1)は、上記の第2押圧位置(16)を通過したのち、第1賦形ロール(11)のロール周面から離れ、次工程へ送られる。
【0046】
上記の実施形態で説明した複合シート材とその製造方法及び製造装置は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部の材料や寸法、形状、構造、配置などをこの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0047】
例えば上記の実施形態では、立体シート材(2)に形成する凸部(3)を、平面視でその凸部(3)の中心が四角形の頂点を占めるように配置した。しかし本発明では、この凸部を任意のパターンで配置することができ、例えば、平面視で凸部の中心が三角形の頂点を占めるように配置してもよい。この場合、上記の接合部は、その三角形の中央に形成されると好ましい。
【0048】
また上記の実施形態では、凸部(3)で囲まれた基部(7)に1つの接合部(5)を形成した場合について説明した。
しかし本発明では、例えば図8に示す変形例1のように、凸部(3)で囲まれた基部(7)に複数の接合部(5)を設けてもよい。この変形例1では、各凸部(3)の周囲に8つの接合部(5)が形成されるので、個々の凸部(3)の形状を良好に保持できる利点がある。
【0049】
なお、上記の実施形態や変形例1では、立体シート材(2)の長さ方向に対し斜め方向へ整列するように、上記の凸部(3)を配列した。しかし本発明では、例えば図9に示す変形例2のように、この凸部(3)を立体シート材(2)の長さ方向と幅方向とへ整列するように配列してもよい。
【0050】
また上記の実施形態や各変形例では、上記の凸部や接合部を平面視で円形に形成したので、賦形用凹部や圧接用突起などを容易に製造できて好ましい。しかし本発明ではこの凸部や接合部は特定の形状に限定されるものではなく、例えば多角形や楕円形、星形など、任意の形状に形成することができる。
【0051】
また上記の実施形態では、上記の圧接用突起を第一賦形ロールのロール周面に突設したので、圧接用突起で形成する接合部を、賦形用凹部で形成する凸部に対し、所定の相対位置に容易に形成できて好ましい。しかし本発明ではこの圧接用突起を押圧ロールのロール周面に設けることも可能である。
【0052】
また上記の実施形態では、第2賦形ロールのロール周面に賦形用突起のみを形成した。しかし本発明では、この第2賦形ロールのロール周面に、上記の圧接用突起と噛み合う小さな凹部を形成してもよい。この場合は、上記の賦形用凹部を、上記の賦形用突起の突出寸法よりも深く形成するとよい。
【0053】
また上記の実施形態では、第1賦形ロールと両押圧ロールにそれぞれ加熱手段を設け、第2賦形ロールと両供給手段にそれぞれ予熱手段を設けた。しかし本発明では、接合部で立体シート材と平坦シート材とを互いに溶着する場合は、第1賦形ロールと押圧ロールとの少なくともいずれかに加熱手段を設けてあればよく、他の加熱手段や予熱手段は省略することができる。
【0054】
また上記の実施形態では、上記の接合部で立体シート材と平坦シート材とを互いに溶着する場合について説明した。しかし本発明では、この接合部で立体シート材と平坦シート材とを、接着剤等で互いに接着するものであってもよい。この場合は上記の加熱手段を省略することも可能である。
上記の各シート材の材質や幅、凸部の大きさや高さ、断面形状、接合部の大きさ等は、上記の実施形態のものに限定されないことは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の複合シート材は、立体シート材と平坦シート材とが互いに確りと接合されたものでありながら、通気性等に優れ、柔軟で肌触りが良好であるので、使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの使い捨て着用物品用の表面シートとして特に有用であるが、使い捨ておむつの外層シートなど、他の用途の複合シート材としても有用である。
【符号の説明】
【0056】
1…複合シート材
2…立体シート材
3…凸部
4…平坦シート材
5…接合部
6…平坦領域
7…基部
8…貫通孔
10…複合シート材の製造装置
11…第1賦形ロール
12…第2賦形ロール
13…押圧ロール
14…賦形位置
15…第1押圧位置
16…第2押圧位置
17…第1シート材
18…第1供給手段
19…第2シート材
20…第2供給手段
21…賦形用凹部
22…吸引路
23…加熱手段
24…賦形用突起
25…圧接用突起
26…テンションコントローラ
27…使い捨て着用物品(使い捨ておむつ)
28…吸収体
29…表面シート
30…立体ギャザーシート
31…糸状弾性部材
32…拡散シート
33…バックシート
34…外層シート
α…第1賦形ロール(11)における第2供給手段(20)の配設位置と賦形位置(14)との間の中心角
β…第1賦形ロール(11)における第2供給手段(20)の配設位置と第1押圧位置(15)との間の中心角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9