特許第5980977号(P5980977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5980977絶対位置検出器を使用した機械座標値の再確立を行う数値制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5980977
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】絶対位置検出器を使用した機械座標値の再確立を行う数値制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4067 20060101AFI20160818BHJP
   G05D 3/00 20060101ALI20160818BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   G05B19/4067
   G05D3/00 R
   B23Q17/22 F
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-41755(P2015-41755)
(22)【出願日】2015年3月3日
【審査請求日】2016年2月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 誠
(72)【発明者】
【氏名】木村 聡
【審査官】 中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−95604(JP,A)
【文献】 特許第5168738(JP,B2)
【文献】 実開昭58−58613(JP,U)
【文献】 特開2010−238174(JP,A)
【文献】 特開2000−99156(JP,A)
【文献】 特開平8−234844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B19/18−19/416,19/42−19/46,
G05D3/00−3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置検出器を備えたサーボモータによって駆動される可動部を有する機械を制御する数値制御装置において、
前記可動部の機械座標値の再確立指令を受けて、前記サーボモータを停止する指令を出力する軸停止部と、
前記軸停止部により前記サーボモータが停止すると、前記位置検出器の位置情報を取得し、前記位置情報に基づいて前記可動部の機械座標値を更新する機械座標値更新部と、
前記機械座標値更新部が更新した機械座標値に基づいて、前記可動部の絶対座標値を更新する絶対座標値更新部と、
を備えたことを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記可動部の機械座標値の再確立指令は、前記数値制御装置に対する信号操作に基づいて指令される、
ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記位置検出器は絶対位置検出器である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置に関し、特にモータを位置制御可能なロック状態において、安全で容易に機械座標値の再確立を行うことが可能な数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
絶対位置検出器を使用した数値制御装置によって制御される工作機械において、電源投入後、数値制御装置で管理している機械座標値と、サーボモータ(以降、単にモータと称する場合がある)の位置を指し示す絶対位置検出器の位置情報にズレが生じてしまう場合がある。
【0003】
例えば、位置制御可能なロック状態であっても、位置の管理を行わない速度制御でモータを動作させた場合、機械座標値が更新されないことがある。その結果、絶対位置検出器の位置情報は正しいモータの位置を指し示しているが、数値制御装置で管理している機械座標値とは一致しなくなる。その場合、機械座標値を絶対位置検出器の位置情報から作り直すことが必要となる。
【0004】
数値制御装置の電源投入後に機械座標値を再確立させるための技術としては、例えば特許文献1では、工作機械の可動部を任意の位置に停止させて絶対位置検出器の指示する数値を読むと共に、前記任意の位置と機械原点との距離を計測し、該計測された距離に基づいて絶対位置検出器の指示する数値を修正する技術が開示されている。
また、特許文献2には、モータが位置制御不可能なフリー状態から位置制御可能なロック状態に変化した際に現在位置を決定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−095604号公報
【特許文献2】特許第5168738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される従来技術では、機械原点が未確立の状態から機械原点を確立する方法となっており、絶対位置検出器側の位置情報を更正する。そのため、実際の機械位置と絶対位置検出器の位置情報の関係がリセットされてしまう。つまり、数値制御装置側が正しい機械座標値を失ってしまった場合、同じ指令によって移動する機械位置が更正前と後で異なってしまう。そのため、従来技術では、絶対位置検出器側の位置情報を更正した前後において、連続して加工を行うことができない。また、手動で機械原点に移動させる操作をしなければならず、操作に時間を要する。
【0007】
また、特許文献2に開示される従来技術を、重力軸の機械原点を確立するために適用する場合、モータをフリー状態にすると落下する危険性があるため、重力軸を機械的に固定する装置が必要となり、コストの増加となってしまう。また、一旦機械を停止させることとなるため、連続して加工を行うことも困難となる。
【0008】
そこで本発明の目的は、モータを位置制御可能なロック状態において、安全で容易に機械座標値の再確立を行うことが可能な数値制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る発明は、位置検出器を備えたサーボモータによって駆動される可動部を有する機械を制御する数値制御装置において、前記可動部の機械座標値の再確立指令を受けて、前記サーボモータを停止する指令を出力する軸停止部と、前記軸停止部により前記サーボモータが停止すると、前記位置検出器の位置情報を取得し、前記位置情報に基づいて前記可動部の機械座標値を更新する機械座標値更新部と、前記機械座標値更新部が更新した機械座標値に基づいて、前記可動部の絶対座標値を更新する絶対座標値更新部と、を備えたことを特徴とする数値制御装置である。
【0010】
本願の請求項2に係る発明は、前記可動部の機械座標値の再確立指令は、前記数値制御装置に対する信号操作に基づいて指令される、ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置である。
【0011】
本願の請求項3に係る発明は、前記位置検出器は絶対位置検出器である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、電源投入後、信号操作をトリガーとし、モータを位置制御可能なロック状態で機械座標値の再確立を行うため、運転を中断せず、且つ高速に機械座標値の再確立が可能となる。また、絶対位置検出器から位置情報を読み取って機械座標値の再確立を行うため、同じ指令を行えば、数値制御装置が正しい機械座標値を失う前と同じ機械位置へモータが移動する。このため、加工プログラムや機械の調整などを再度行うことも不要となる。以上のことから本発明によって、機械座標値の再確立に要する時間が短縮され、生産性の向上に繋がる。
【0013】
さらに、モータを位置制御可能なロック状態で機械座標値の再確立を行うため、フリーな状態であれば落下の危険性がある重力軸であっても、安全で容易に機械座標値の再確立を行うことが可能となる。重力軸の場合、フリーな状態であれば機械的に固定する装置が必要となるため、本発明は工作機械のコスト削減にも効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】機械座標系と絶対座標系について説明する図である。
図2】本発明に一実施形態における数値制御装置の機能ブロック図である。
図3】本発明に一実施形態における数値制御装置上で実行される処理のフローチャートである。
図4】機械座標値と絶対座標値を更新する座標系上での遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の数値制御装置では、工作機械に電源が入っている状態で軸を動かさず、信号操作によって高速に機械座標値の再確立を可能とする。また、機械座標値の再確立を行う軸を選択することができる。このとき、機械座標値の再確立にともなって、絶対座標値はプリセットされる。
【0016】
ここで、機械座標値とは機械原点を基準とした座標系(機械座標系)での座標値のことを言い、絶対座標値とはワーク原点を基準とする座標系(絶対座標系、またはワーク座標系、またはプログラム座標系)での座標値のことを言う。また、ワーク原点とはワークを基準とした座標系となるよう機械原点からシフトした位置のことを言う。
【0017】
以下の説明においては、図1に示すように、機械原点を座標系の原点とする座標系を機械座標系としてXm,Ymで示し、機械座標系における現在位置を示す座標値を機械座標値とする。また、ワーク原点を座標系の原点とする座標系をワーク座標系としてXw,Ywで示し、ワーク座標系における現在位置を示す座標値を絶対座標値とする。
【0018】
なお、絶対位置検出器と機械原点確立については、特許第5226843号公報などにより公知となっているので、本明細書においては説明を省略する。
以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態における数値制御装置の機能ブロック図である。本実施形態の数値制御装置1は、PMC10、軸停止部11、サーボ制御部12、機械座標値更新部13、絶対座標値更新部14を備える。
【0020】
PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)10は、数値制御装置1に記憶されているシーケンス・プログラムに基づいて工作機械の補助装置に対して信号を出力して制御する。また、工作機械の本体に配備された操作盤の各種スイッチ等の信号を受け、必要な信号処理をした後、処理後の信号を数値制御装置1の各部に対して出力する。本実施形態のPMC10は、信号操作を受けると軸停止部11に対して機械座標値の再確立処理の開始信号を出力する。
【0021】
軸停止部11は、PMC10からの信号を受けると、機械座標値の再確立を行う軸が停止しているか確認し、該軸の停止を確認した場合、サーボ制御部12に指令して該軸の移動を禁止し、機械座標値更新部13に対して機械座標値の更新を指令する。
なお、機械座標値の再確立を行う軸は、あらかじめパラメータ設定などにより選択される。
【0022】
サーボ制御部12は、数値制御装置1による運転制御に従ってサーボモータ2の動作を制御する。本実施形態においては、サーボ制御部12は、軸停止部11からの指令を受けて、運転制御に伴うサーボモータ2に関する移動指令を遮断し、サーボモータ2の移動を禁止する。
【0023】
機械座標値更新部13は、軸停止部11からの指令を受けて、サーボモータ2が備える絶対位置検出器3が記憶している位置情報を取得て、該位置情報に基づいてメモリ20に記憶された数値制御装置1の機械座標値を更新し、更新した機械座標値を絶対座標値更新部14へ出力する。
そして、絶対座標値更新部14は、機械座標値更新部13が更新した機械座標値に基づいてメモリ20に記憶された数値制御装置1の機械座標値を更新する。
【0024】
以下では、このような構成を備えた数値制御装置1上で実行される処理の流れを、図3の機械座標値、絶対座標値の再確立処理のフローチャートと、図4の機械座標値と絶対座標値を更新する座標系上での遷移図に基づいて説明する。
本処理の開始時点においては、数値制御装置1で管理している機械座標値が失われている状態であり(図4(a))、信号操作などにより機械座標値の再確立処理の開始信号をPMC10が受けたことをトリガーとして機械座標値の再確立処理が開始される。また、本処理が終了した後に続けて位置制御で自動運転を行うことを想定している。
【0025】
●[ステップSA01]軸停止部11は、機械座標値の再確立対象となっている軸が停止しているかを確認する。停止していなければステップSA05へ進み、停止している場合にはステップSA02へ進む。
●[ステップSA02]軸停止部11は、軸が動作することがないように移動を禁止する。
【0026】
●[ステップSA03]機械座標値更新部13は、絶対位置検出器3が記憶している位置情報の取得し、該位置情報に基づいてメモリ20に記憶された数値制御装置1の機械座標値を更新する(図4(b))。
●[ステップSA04]絶対座標値更新部14は、機械座標値更新部13が更新した機械座標値に基づいて、メモリ20に記憶された数値制御装置1の絶対座標値を更新する(図4(c))。
【0027】
●[ステップSA05]数値制御装置1の設定などに基づいて、軸が停止していないことをアラームとして出力するか否かを判定する。アラームを出力する場合にはステップSA06へ進み、出力しない場合にはステップSA01へ戻り軸停止の確認を継続する。
●[ステップSA06]軸が停止していない旨アラームを発生させ、本処理を終了する。
【0028】
図4(a)では、ステップSA03以前において機械座標値および絶対座標値が絶対位置検出器3の位置情報(モータの位置)と一致していない状態(失われている状態)を示している。また、図4(b)では、ステップSA03において絶対位置検出器の位置情報によって機械座標値を更新し、機械座標値と絶対位置検出器の位置情報(モータの位置)が一致したことを示す。更に、図4(c)では、ステップSA04において更新された機械座標値をもとに絶対座標値を更新したことを示す。
【0029】
このように、本実施形態の数値制御装置では、工作機械に電源が入っている状態で軸を動かさず、信号操作によって高速に機械座標値の再確立を可能とするため、安全に機械座標値、絶対座標値の再確立を行うことができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例に限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 数値制御装置
2 サーボモータ
3 絶対位置検出器
10 PMC
11 軸停止部
12 サーボ制御部
13 機械座標値更新部
14 絶対座標値更新部
20 メモリ
【要約】
【課題】モータを位置制御可能なロック状態において、安全で容易に機械座標値の再確立を行うことが可能な数値制御装置を提供すること。
【解決手段】絶対位置検出器を備えた数値制御装置において、信号操作をトリガーとし、モータを停止させ、絶対位置検出器の位置情報を取得し、その位置情報に基づいて機械座標値を更新する。また、更新した機械座標値に基づいて、絶対座標値を更新する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4