(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の突起は、前記頭部の前記一方の面の上において前記軸部の前記外周面と前記複数の突起の外面との間に延びる環状の領域のうち、30%〜50%の領域を占める、請求項1又は請求項2に記載のボルト。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、様々な実施形態について説明する。なお、図面において共通する構成要素には同一の参照符号が付されていることに留意されたい。
【0009】
1.実施形態に係るボルト
1−1.基本的な構成
図1(a)及び
図1(b)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係るボルトの構成例を示す上面図及び側面図である。
図2は、
図1に示したボルトの一部を拡大して示す斜視図である。
【0010】
図1及び
図2に例示されるように、一実施形態に係るボルト1は、大きく分けて、軸部100と、軸部100に結合した頭部200と、を含む。
軸部100は、一端102から他端104まで延び、全体として円柱状の形状を有する。軸部100の外周面108には、軸部100の延設方向に沿って螺旋状に延びる溝(ネジ溝)106が形成されている。また、軸部100の外周面には、ネジ溝106と一端102との間において周方向に延びる係合溝110が形成されている。
【0011】
頭部200は、上面(一方の面)202と、上面202に対向する下面(他方の面)204とを有する。頭部200は、例えば、
図1及び
図2に例示されているように、全体として略円板状に形成されたものであってもよい。頭部200の上面202は、軸部100の一端102に結合されている。
【0012】
頭部200の上面202には、複数の突起206が互いに間隔をおいて形成されている。複数の突起206の各々は、平らに延びる上面206aを有し、軸部100の外周面108に結合されている。各突起206の上面206aは、
図1に示されているように、頭部200の上面202に沿って延びるように(より好ましくは、上面202に略並行に延びるように)形成されたものであってもよい。また、各突起206の上面206aは、
図1に示されているように、略楔状又は略台形状に形成された上面206aを有するものであってもよい。また、各突起206の3つの側面206b、206c、206dは、頭部200の上面202に略垂直に延びて上面202に結合されるものであってもよい(もう1つの側面206eは、軸部100の外周面108に結合されている)。さらに、各突起206の上面206aと各側面との境界部分には、面取りが施されてもよい。
【0013】
上記構成を有するボルト1は、例えば、任意の金属材料を用いて一体成形により(これに加えて、又は、これに代えて、切削処理を用いて)形成することが可能なものである。材料としては、好ましくは、鋼(45K材等)やステンレス鋼(SUS410等)等を用いることができる。また、ボルト1は、一体成形により形成された後、熱処理を施されるようにして、Hv550〜700程度の硬度を有するものとしてもよい。さらにまた、ボルト1は、熱処理の後、表面処理(スーパーパシべーション)を施されるようにしてもよい。
【0014】
1−2.板状部材への固着について
次に、上述したボルト1を板状部材に固着する方法についてさらに
図3を参照して説明する。
図3は、
図1に示したボルトを板状部材に固着する方法を示す模式図である。
【0015】
まず、
図3(a)に示すように、一方の面302及びこの面に対向する他方の面304を有し、開口306が形成された板状部材300が用意される。板状部材300は、任意の金属材料により形成されたものであってもよく、好ましくは、ステンレス鋼(例えばSUS304等)により形成されたものであってもよい。開口306は、ボルト1の軸部100の外周面108よりも僅かに大きくなるように形成されている。
【0016】
次に、
図3(b)に示すように、ボルト1が板状部材300に係合させられる。具体的には、ボルト1の軸部100が板状部材300の他方の面304から開口306を通って一方の面302から突出するように、ボルト1が板状部材300に係合させられる。この状態では、ボルト1の頭部200に形成された各突起206の上面206aが、板状部材30の他方の面304に当接している。
【0017】
次に、
図3(c)に示すように、ボルト1が板状部材300に圧入される。具体的には、第1の装置の支持部10(好ましくは平らな支持面10aを有する)が、板状部材300の一方の面302のうち少なくとも開口306の周辺に延びる領域を下方から支持しつつ上方に向かって押圧し、第2の装置の支持部20(好ましくは平らな支持面20aを有する)が、ボルト1の頭部200の下面204を上方から当接しつつ下方に向かって押圧する。これにより、ボルト1の頭部200の全体が板状部材300の他方の面304の内部に圧入される。当然、頭部200に形成された複数の突起206もまた、板状部材300の他方の面304の内部に圧入される。よって、ボルト1と板状部材300との結合力が向上する。具体的には、ボルト1が板状部材300に対して周方向に回動する事態、及び、ボルト1が軸方向に沿って移動して板状部材300から抜ける事態を抑えることができる。
さらに、複数の突起206が板状部材300の他方の面304に圧入されると、これに伴い、他方の面304から押し出された材料が、ボルト1の軸部100に形成された係合溝110に退避ないし流入する(
図1及び
図2参照)。すなわち、係合溝110は、複数の突起206によって他方の面304から押し出された材料によって満たされる。これにより、ボルト1と板状部材300との結合力が向上する。具体的には、ボルト1が板状部材300に対して周方向に回動する事態、及び、ボルト1が軸方向に沿って移動して板状部材300から抜ける事態を抑えることができる。(この意味において、係合溝110は、板状部材300から押し出された材料を容易に受け入れるため、複数の突起206にできるだけ近い位置に(例えば隣接して)配置されることが好ましいといえる。
図1及び
図2には、一例として、係合溝110が複数の突起206の上方に延びる様子が示されているが、係合溝110は、複数の突起206と略同一の高さに延びるように構成されるようにしてもよい。)
第2の装置の支持部20は、その支持面が板状部材300の他方の面304に当接すると、ボルト1の頭部200をそれ以上板状部材300の他方の面304に圧入することはできない。よって、ボルト1の頭部200の下面204と板状部材300の他方の面304とは、協働して略同一の平らな平面を形成すること、すなわち、所謂「面一」に形成される。これにより、板状部材300が固着されたボルト1(別言すれば、板状部材310を備えたボルト1)が得られる。
【0018】
なお、この後、選択的には、
図3(d)に示すように、板状部材300に対して、開口30aが形成された板状部材30を固定したい場合には、開口30aにボルト1の軸部100を通して、板状部材30を板状部材300に当接させた状態で、ナット40をボルト1の軸部100に形成されたネジ溝106に係合させることによって、ナット40が板状部材30を板状部材300に向かって押圧する。これにより、板状部材300に固着したボルト1を用いて、板状部材30を板状部材300に固定することができる。
【0019】
本実施形態に係るボルト1は、板状部材300に圧入されるものであるため、ボルト1(の少なくとも板状部材300に圧入される頭部200及び頭部200に形成される複数の突起206)は、板状部材300に圧入された後にも略同一の形状を維持して板状部材300への結合力を高めるために、板状部材300を構成する材料よりも大きな硬度を有する材料により形成されることが好ましい。
【0020】
1−3.突起の個数について
図4は、複数の突起206の上面206aに沿った面を切断面としてみた
図1に示したボルトの断面図である。なお、
図4には、具体例を示すことを目的として、ボルト1の各部の寸法(単位はmm)が記載されている(また、
図4には示されていないが、各突起206の高さは、約0.5mm〜約1.0mmが好ましい)。
【0021】
図4には、好ましい例として、複数の突起206が10個の突起を含む様子を示している。今、
図4に示された複数の突起206が板状部材300に圧入された状態にあることを考える。
【0022】
ボルト1が板状部材300に対して時計回り(又は反時計回り)の方向に回動することを規制するように機能するのは、ボルト1に形成された突起206である。すなわち、突起206の側面206b、206dがこれに隣接する板状部材300の材料に当接して、ボルト1が板状部材300に対して回動しないように機能している。その意味において、形成される突起206の数が多い(少ない)程、ボルト1と板状部材300との結合力を増加(低下)させるものと考えられる。
【0023】
しかし、ボルト1が板状部材300に対して時計回り(又は反時計回り)の方向に回動することを規制するように機能するのは、隣接する2つの突起206の間に配置された板状部材300の材料であるともいえる。すなわち、隣接する2つの突起206の間に配置された板状部材300の材料が、複数の突起206の側面206b、206dに当接して、ボルト1が板状部材300に対して回動しないように機能している。その意味において、形成される突起206の数が多すぎると、隣接する突起206の間に配置される板状部材300の堆積は非常に小さくなるから、ボルト1と板状部材300との結合力を低下させるものと考えられる。
【0024】
このような2つの観点を考慮すると、複数の突起206は8個〜10個の突起を含む場合に、ボルト1と板状部材300との結合力をより効果的に増加させることができる。
【0025】
別の観点から考えると、複数の突起206が配置される領域として、例えば、
図4に点線で示すような環状の領域Rに着目する。環状の領域Rは、軸部100の外周面108と複数の突起206の外面(側面)206cとの間に延びる領域である。この領域Rの面積をS
Rとし、形成されたすべての突起206の上面206aの面積の合計をS
Pとすると、次の式により表現される範囲内において、複数の突起206の個数を決定することが好ましいといえる。
S
R/2=S
P 〜 S
R/3=S
P
すなわち、複数の突起206の上面206aの面積の合計が、環状の領域Rの面積の約30%〜約50%を占めるように、複数の突起206の個数を決めることが最も好ましいといえる。なお、複数の突起206の上面206aの面積の合計が、環状の領域Rの面積の約30%〜約80%を占めるように、複数の突起206の個数を決めるようにしてもよい。
【0026】
1−4.突起の形状について
複数の突起206の各々の形状は、
図4に示すように、上面206aが略台形状又は略楔状を成し、各側面206b、206c、206dが頭部200の上面202に略垂直に延びる(但し、側面206eは軸部100の外周面108に結合される)ように形成されることが、最も好ましい。
【0027】
すなわち、各突起206の上面206aは、外周面108に結合される側面206eの周方向の長さが、この側面206eに対向する側面206cの周方向の長さより小さくなるように、形成される。これにより、各突起206の側面206b、206dは、軸部100の中心軸Oに対向するように形成される。よって、例えば、各突起206の側面206b、206dに対して周方向に向かう力が作用した場合(すなわち、ボルト1が板状部材300に対して回動するような外力が作用した場合)、そのような力は、中心軸Oに向かうことになる。これにより、ボルト1が板状部材300に対して回動する(ことにより板状部材300から外れる)事態を抑えることができる。すなわち、ボルト1と板状部材300との結合力を増加させることができる。
【0028】
なお、比較例として、側面206eの周方向の長さが側面206cの周方向の長さより大きくなるように、各突起206が形成された場合を考える。この場合、各突起206の側面206b、206dは、軸部100の中心軸Oには対向しない。よって、例えば、各突起206の側面206b、206dに対して周方向に向かう力が作用した場合(すなわち、ボルト1が板状部材300に対して回動するような外力が作用した場合)、そのような力は、中心軸Oに向かうのではなく、中心軸Oから離れる方向に向かう。これにより、ボルト1は板状部材300に対して回動し易くなる。
【0029】
なお、各側面206b、206c、206dが頭部200の上面202に略垂直に延びることは、必須の要件ではなく、上面202に対して傾斜するように形成されるものとすることもできる。
【0030】
また、
図4には、最も好ましい例として、複数の突起206の各々が互いに同一の形状を有する様子が示されているが、各突起206の形状は、必ずしも同一である必要はない。
【0031】
2.実施形態に係るナット
図5は、本発明の一実施形態に係るナットの構成例を示す斜視図である。
図5に例示されるように、一実施形態に係るナット2は、上述したボルト1と同様に、大きく分けて、軸部400と、軸部400に結合した頭部500と、を含む。
軸部400は、一端402から他端404まで延び、全体として円筒状の形状を有する。軸部400には、軸方向に沿って延びる貫通孔406が形成されている。貫通孔406の内周面には、軸方向に沿って螺旋状に延びる溝(ネジ溝)408が形成されている。また、軸部400の外周面410には、一端402の付近において周方向に延びる係合溝412が形成されている。
【0032】
頭部500は、上面(一方の面)502と、上面502に対向する下面(他方の面)504とを有する。頭部500は、例えば、
図5に例示されているように、全体として略円板状に形成されたものであってもよい。頭部500の上面502は、軸部400の一端402に結合されている。
【0033】
頭部500の上面502には、複数の突起506が互いに間隔をおいて形成されている。複数の突起506の各々は、平らに延びる上面506aを有し、軸部400の外周面410に結合されている。各突起506の上面506aは、
図5に示されているように、頭部500の上面502に沿って延びるように(より好ましくは、上面502に略並行に延びるように)形成されたものであってもよい。また、各突起506の上面506aは、
図5に示されているように、略楔状又は略台形状に形成された上面506aを有するものであってもよい。また、各突起506の3つの側面506b、506c、506dは、頭部500の上面502に略垂直に延びて上面502に結合されるものであってもよい(もう1つの側面506eは、軸部400の外周面410に結合されている)。さらに、各突起506の上面506aと各側面との境界部分には、面取りが施されてもよい。このような突起506の構成は、上述したボルト1に形成された突起206と同様の構成を有するものであるので、その詳細な説明を省略する。
【0034】
上記構成を有するナット2は、ボルト1に関連して
図3を参照して説明したものと同様の方法により、板状部材300に固着されるものとすることができる。ボルト1におけると同様に、ナット2においても、頭部500に形成された複数の突起506が、板状部材300の他方の面304の内部に圧入される。よって、ナット2と板状部材300との結合力が向上する。具体的には、ナット2が板状部材300に対して周方向に回動する事態、及び、ナット2が軸方向に沿って移動して板状部材300から抜ける事態を抑えることができる。
【0035】
さらに、複数の突起506が板状部材300の他方の面304に圧入されると、これに伴い、他方の面304から押し出された材料が、ナット2の軸部400に形成された係合溝412に退避ないし流入する。すなわち、複数の突起506の上方に延びる係合溝412は、複数の突起506によって他方の面304から押し出された材料によって満たされる。これにより、ナット2と板状部材300との結合力が向上する。具体的には、ナット2が板状部材300に対して周方向に回動する事態、及び、ナット2が軸方向に沿って移動して板状部材300から抜ける事態を抑えることができる。(この意味において、係合溝412は、板状部材300から押し出された材料を容易に受け入れるため、複数の突起506にできるだけ近い位置に(例えば隣接して)配置されることが好ましいといえる。
図5には、一例として、係合溝412が複数の突起506の上方に延びる様子が示されているが、係合溝412は、複数の突起506と略同一の高さに延びるように構成されるようにしてもよい。)
【0036】
3.実施形態に係るボルト及びナットの効果
以上説明した様々な実施形態に係るボルト(ナット)においては、まず第1に、ボルト(ナット)を板状部材に固着する際に、従来から採用されていたスポット溶接を用いる必要がない。よって、電気代を大幅に抑えることができる。また、スポット溶接に起因して球が飛散してボルト(ナット)ないし他の鋼板に付着することがない。さらに、スポット溶接に起因して発生していたような板状部材における熱による変色を抑えることもできる。さらにまた、スポット溶接に起因して生じていたようなスパークによる危険性を抑えることもできる。
【0037】
第2に、ボルト(ナット)を板状部材に圧入して板状部材に固着した際には、ボルトの他方の面204(ナットの他方の面504)が板状部材の他方の面304と協働して略同一の平らな面を形成する(所謂面一となる)(
図3参照)。これにより、ボルトの他方の面204と板状部材の他方の面304とが協働して形成する平らな面は、他の部材の面と密着することができる。これにより、当該ボルト(ナット)が用いられる装置全体のサイズを抑えることができる。
【0038】
第3に、ボルト(ナット)を板状部材に圧入して板状部材に固着した際には、ボルト(ナット)に形成された複数の突起が板状部材に圧入される。これにより、ボルト(ナット)と板状部材との結合力を向上させることができる(特に、ボルト(ナット)が板状部材に対して回動する事態を抑えることができる)。
【0039】
第4に、ボルト(ナット)を板状部材に圧入して板状部材に固着した際には、複数の突起によって板状部材から押し出された材料が、ボルト(ナット)の軸部の外周面においてこれらの突起に近接ないし隣接して形成された周方向に沿って延びる係合溝の内部に流入する。これにより、ボルト(ナット)と板状部材との結合力を向上させることができる(特に、ボルト(ナット)が板状部材に対して軸方向に沿って移動して板状部材から抜ける事態を抑えることができる)。
【0040】
このように、様々な実施形態によれば、板状部材との結合力を向上させたボルト及びナットを提供することができる。
【0041】
4.実験結果について
以下、本実施形態に係るボルト(ナット)と板状部材との結合力が、特許文献1に開示されたボルトと板状部材との結合力に比べて著しく向上している事実について、説明する。
【0042】
4−1.特許文献1に係る実験結果
図6(a)及び
図6(b)は、それぞれ、特許文献1に開示されたボルトの構成を示す側面図及び上面図である。特許文献1に開示されたボルト(以下便宜上「比較例ボルト」という。)1Aは、軸部1aと軸部1aに結合された頭部1bとを含む。頭部1aには、複数(
図6には一例として3つ)の突起1cが形成されている。各突起1cは、略三角形状の断面形状を有する。
【0043】
比較例ボルト1Aは、板状部材(図示しない)に形成された開口に軸部1aを係合させた後、頭部1bに形成された複数の突起1cを板状部材の表面に圧入することによって、板状部材に固着される。
【0044】
まず、比較例ボルトについて第1の実験結果を下記表1に示す。
【表1】
【0045】
表1は、材質としてSWCH 10Rを用いて形成され、ネジ部の直径がM=6である比較例ボルトを3つ(サンプル1〜3)用意し、これらをそれぞれ板状部材に固着する。板状部材に固着された状態で時計回り方向にどれだけの大きさのトルクを比較例ボルトに係合したナットに適用した場合に比較例ボルトが板状部材から外れたかを示すものである。表1から分かるように、
約7〜10[N・m]というトルクが付加された場合に、板状部材に固定されていた比較例ボルトが板状部材に対して空転する状態となった。
【0046】
次に、比較例ボルトについて第2の実験結果を下記表2に示す。
【表2】
この表2の読み方は上記表1と同様である。この表2によれば、材質としてSWCH 10Rを用いて形成され、ネジ部の直径がM=8である比較例ボルトを3つ(サンプル1〜3)用いた場合には、
約3〜17[N・m]というトルクが付加されたときに、板状部材に固定されていた比較例ボルトが板状部材に対して空転する状態となった。
【0047】
4−2.実施形態に係る実験結果
実施形態について第1の実験結果を下記表3に示す。
【表3】
この表3の読み方は上記表1と同様である。この表3によれば、材料として45Kを用いて形成され、ネジ部の直径がM=8である実施形態に係るボルト(焼きが入っている)を3つ(サンプリ1〜3)用いた場合には、これらのボルトにナット(焼きが入っていない)を係合させ、このナットに対して
約39〜44[N・m]というトルクが付加されたときに、このナットが(ネジ山が破損したことにより)板状部材に対して空転し、板状部材が変形した。
【0048】
実施形態について第2の実験結果を下記表4に示す。
【表4】
この表4によれば、材料としてSWCH 10Rを用いて形成され、ネジ部の直径がM=6である実施形態に係るボルト(焼きが入っていない)を3つ(サンプル1〜3)用いた場合には、このボルトにナット(焼きが入っている)を係合させ、このナットに対して
約19[N・m]というトルクが付加されたときに、ボルトが(ネジ山が破損したことにより)板状部材に対して空転し、板状部材が変形した。
【0049】
実施形態について第3の実験結果を下記表5に示す。
【表5】
この実験では、強度をさらに増加させるために、焼きが実施形態に係るボルトに施されている。この表5によれば、材料としてSWCH 10Rを用いて形成され、ネジ部の直径がM=6である実施形態に係るボルト(焼きが入っている)を2つ(サンプル1及び2)用いた場合には、このボルトにナット(焼きが入っている)に対して
約37〜39[N・m]というトルクが付加されたときに、ボルトが(ネジ山が破損したことにより)板状部材に対して空転し、板状部材が変形した。
【0050】
実施形態について第4の実験結果を下記表6に示す。
【表6】
この表6によれば、材料としてSWCH 10Rを用いて形成され、ネジ部の直径がM=8である実施形態に係るボルト(焼きが入っていない)を3つ(サンプル1〜3)用いた場合には、このボルトにナット(焼きが入っている)を係合させ、このナットに対して
約39〜44[N・m]というトルクが付加されたときに、ボルトが(ネジ山が破損したことにより)板状部材に対して空転し、板状部材が変形した。
【0051】
実施形態について第5の実験結果を下記表7に示す。
【表7】
この実験では、強度をさらに増加させるために、焼きが実施形態に係るボルトに施されている。この表7によれば、材料としてSWCH 10Rを用いて形成され、ネジ部の直径がM=8である実施形態に係るナット(焼きが入っている)を2つ(サンプル1及び2)用いた場合には、このナットにボルト(焼きが入っている)を係合させ、このナットに対して
約60〜64[N・m]というトルクが付加されたときに、ボルトが(ネジ山が破損したことにより)空転し、板状部材が変形した。
【0052】
これらの実験結果を比較することから明らかであるように、比較例ボルトはその殆どが10[N・m]に満たないトルクを付加されることによって板状部材から外れる程度の結合力しか提供しないものである。これに対して、実施形態に係るボルトないしナットは、比較例ボルトに比べて
1桁大きいトルク(約19〜64[N・m])を付加されることによって板状部材が変形する結合力をもたらすものである。このような結合力における著しい差は、例えば、次の3つの要因によるものであると考えられる。
【0053】
まず第1に、実施形態に係るボルト(ナット)においては、複数の突起206(506)、がボルト(ナット)の軸部100の外周面108に結合されている(すなわち、複数の突起が軸部の外周面に隣接する位置に配置されている)(
図1〜
図3、
図5参照)。これにより、これらの複数の突起によって板状部材から押し出された材料が、ボルト(ナット)の軸部の外周面に形成された係合溝110の内部に確実に流入する。この結果、ボルト(ナット)と板状部材との結合力が向上していると考えられる。
【0054】
第2に、実施形態に係るボルト(ナット)においては、複数の突起206(506)の上面206a(506a)は、平らに形成されている(
図1〜
図3、
図5参照)。上面が平らである突起は、板状部材に圧入する際にはより大きな力を必要とするが、その一方、そのような突起の側面206b、206dの断面積が大きくなる。すなわち、ボルト(ナット)において板状部材に対して回動することを規制するように機能する領域の断面積が大きくなる。これにより、ボルト(ナット)と板状部材との結合力が向上していると考えられる。
【0055】
これに対して、比較例ボルト1A(
図6参照)においては、板状部材に圧入し易くなるように、各突起1Cの上面は、平らではなく尖っている。これにより、各突起の側面の断面積は必然的に小さくなる。すなわち、比較例ボルトにおいて板状部材に対して回動することを規制するように機能する領域の断面積は小さくなる。これにより、比較例ボルトと板状部材との結合力が不充分なものとなっていると考えられる。
【0056】
第3に、実施形態に係るボルト(ナット)においては、上述した理由により、複数の突起は8個〜10個(第1の実験結果〜第5の実験結果では10個)設けられる。このような突起の個数が適切であることによって、ボルト(ナット)と板状部材との間の結合力が向上していると考えられる。これに対して、特許文献1は、このような範囲の個数の突起を設けることを開示ないし示唆していない。
【解決手段】 一実施形態に係るボルトは、螺旋状に延びる溝が外周面において形成された軸部と、一方の面及び該面に対向する他方の面を有し、該一方の面において前記軸部の一端に結合された頭部であって、各々が前記一方の面に沿って延びる平らな上面を有し前記軸部の前記外周面に結合され前記一方の面の上において互いに間隔をおいて設けられた複数の突起、を含む頭部と、を具備する。