特許第5981022号(P5981022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5981022超高密度コヒーレントWDMシステムに関する信号対ノイズ比の柔軟性のある最適化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981022
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】超高密度コヒーレントWDMシステムに関する信号対ノイズ比の柔軟性のある最適化
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2507 20130101AFI20160818BHJP
   H04B 10/516 20130101ALI20160818BHJP
   H04B 10/079 20130101ALI20160818BHJP
【FI】
   H04B9/00 251
   H04B9/00 516
   H04B9/00 179
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-502226(P2015-502226)
(86)(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公表番号】特表2015-513278(P2015-513278A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】EP2013055992
(87)【国際公開番号】WO2013143976
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年11月20日
(31)【優先権主張番号】12305365.4
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルノーディエ,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン−パルド,オリオール
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/030897(WO,A1)
【文献】 特開2009−188788(JP,A)
【文献】 特開2009−239555(JP,A)
【文献】 特開2012−109711(JP,A)
【文献】 Ying Jiang 他,「Electronic Pre-Compensation of Narrow Optical Filtering for OOK, DPSK and DQPSK Modulation Formats」,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,2009年 8月15日,VOL.27 NO.16,p.3689-3698
【文献】 藤森 崇文 他,「プリイコライゼーションによる43Gbps光信号のスペクトル狭窄化補償の一検討」,電子情報通信学会技術研究報告 光通信システム,日本,社団法人電子情報通信学会,2010年10月21日,Vol.110 No.257,p.97-102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DMとよばれる光波長分割多重化された、少なくとも2つの異なる帯域幅に調整可能な伝送チャネルを備えるWDMグリッドの、調整可能な帯域幅の伝送チャネル(111)で光信号を対応する光受信機(230)に送信するように構成された光送信機(210)であって、
WDM伝送チャネルの所与の帯域幅についての、光送信機(210)から受信された第1の光信号に基づいて対応する光受信機(230)において構成された等化フィルタ(270)のスペクトル応答に関する情報を受信するように構成されたプロファイリングユニット(217)と
パルス整形フィルタを使用して第2の系列のデータシンボル(211)をフィルタリングして、その結果、フィルタリングされた系列のデータシンボル(211)をもたらすように構成されたパルス整形フィルタユニット(212)であって、光送信機(210)が、光送信機(210)をWDM伝送チャネル(111)の所与の帯域幅に適応させるために、WDM伝送チャネルの所与の帯域幅についての等化フィルタ(270)のスペクトル応答に関する情報に基づいて、パルス整形フィルタの周波数応答(404、405)を適応させるように構成された、パルス整形フィルタユニット(212)と
フィルタリングされた系列のデータシンボル(211)を、光受信機(230)に送信されるべき第2の光信号に変換するように構成されたデジタル−光変換器(214、215、216)とを備える、光送信機(210)。
【請求項2】
前記パルス整形フィルタが、前記等化フィルタ(270)の前記スペクトル応答に関する情報に依存するプリエンファシスフィルタであり、さらに
パルス整形フィルタユニット(212)が、フィルタリングされた系列のデータシンボル(211)を、WDM伝送チャネル(111)の帯域幅に適応させられたデフォルトの送信機フィルタを使用してさらにフィルタリングするように構成される、請求項1に記載の光送信機(210)。
【請求項3】
前記パルス整形フィルタが、前記等化フィルタ(270)の前記スペクトル応答に関する情報に依存するプリエンファシスフィルタとWDM伝送チャネル(111)の帯域幅に適応させられたデフォルトの送信機フィルタの組み合わせに対応する、請求項1に記載の光送信機(210)。
【請求項4】
プロファイリングユニット(217)が、
前記等化フィルタ(270)の前記スペクトル応答に関する情報に基づいて、前記等化フィルタ(270)のフィルタ応答を近似する周波数応答を有するプリエンファシスフィルタを決定するように構成される、請求項2または3に記載の光送信機(210)。
【請求項5】
前記等化フィルタ(270)の前記スペクトル応答に関する情報が、
前記等化フィルタ(270)の周波数応答を近似する適合曲線の1つまたは複数の適合パラメータ、
前記等化フィルタ(270)の1つまたは複数のフィルタ係数、および
フィルタの所定のリストに対する、対応する受信機(230)において選択された等化フィルタを識別するインデックスのうちのいずれか、または複数を備え、前記選択された等化フィルタの周波数応答が、前記等化フィルタ(270)の周波数応答を近似する、請求項1から4のいずれかに記載の光送信機(210)。
【請求項6】
WDMとよばれる光波長分割多重化された、少なくとも2つの異なる帯域幅に調整可能な伝送チャネルを備えるWDMグリッドの、調整可能な帯域幅の伝送チャネル(111)上で、対応する送信機(210)から光信号を受信するように構成された光受信機(230)であって、
光送信機(210)から受信された第1の光信号をデジタル信号に変換するように構成され、デジタル信号が、第1の系列のデータシンボルを表す、光−デジタル変換器(231)と、
等化フィルタ(270)を使用してデジタル信号をフィルタリングして、フィルタリングされたデジタル信号をもたらすように構成された等化ユニット(234)と、
WDM伝送チャネル(111)の伝達関数を補償するため、対応する送信機(210)において第1の系列のデータシンボルに適用されるパルス整形フィルタを補償するため、および光受信機(230)を伝送チャネル(111)の所与の帯域幅に適応させるために、前記フィルタリングされたデジタル信号に基づいて等化フィルタ(270)を適応させるように構成された適応ユニット(272)と、
WDM伝送チャネル(111)の所与の帯域幅に光送信機(210)を適応させるためにパルス整形フィルタの周波数応答を変更するために、等化フィルタ(270)のスペクトル応答に関する情報を対応する送信機(210)に供給するように構成されたフィードバックユニット(237)とを備える、光受信機(230)。
【請求項7】
第1の光信号が、第1の偏波と、第2の偏波とを備える偏波多重化された光信号であり、
デジタル信号が、それぞれ、同相成分と、直交位相成分とをそれぞれが備える第1の偏波成分と、第2の偏波成分とを備え、
等化ユニット(234)が、偏波多重分離ユニット(234)であり、
フィルタリングされたデジタル信号が、第1の偏波成分と、第2の偏波成分とを備え、
等化フィルタ(270)が、バタフライ構造の、複数の有限インパルス応答フィルタ(以下、複数のFIRフィルタとする(271)を備え、さらに
フィードバックユニット(237)が、複数のFIRフィルタ(271)に基づいて、前記等化フィルタ(270)の前記スペクトル応答に関する情報を決定するように構成される、請求項6に記載の光受信機(230)。
【請求項8】
フィードバックユニット(237)が、
第1の偏波、および第2の偏波に関する複数のFIRフィルタ(271)のコモンモード成分をそれぞれ決定し、さらに
第1の偏波、および第2の偏波に関するコモンモード成分に基づいて、前記等化フィルタ(270)の前記スペクトル応答に関する情報を決定するように構成される、請求項7に記載の光受信機(230)。
【請求項9】
前記等化フィルタ(270)の前記スペクトル応答に関する情報が、前記等化フィルタ(270)から導き出されるフィルタのフィルタ係数を備える、請求項6から8のいずれかに記載の光受信機(230)。
【請求項10】
フィードバックユニット(237)が、
前記等化フィルタ(270)の周波数応答を近似し、さらに
前記等化フィルタ(270)の近似された周波数応答に基づいて、前記等化フィルタ(270)の前記スペクトル応答に関する情報を決定するように構成される、請求項6から8のいずれかに記載の光受信機(230)。
【請求項11】
前記等化フィルタ(270)を近似することが、1つまたは複数の適合パラメータを使用して前記等化フィルタ(270)の周波数応答を適合させることを備え、さらに
前記等化フィルタ(270)の前記スペクトル応答に関する情報が、1つまたは複数の適合パラメータを備える、請求項10に記載の光受信機(230)。
【請求項12】
前記等化フィルタ(270)を近似することが、フィルタの所定のリストからフィルタを選択することを備え、
選択されたフィルタの周波数応答が、前記等化フィルタ(270)の周波数応答を近似し、さらに
前記等化フィルタ(270)の前記スペクトル応答に関する情報が、フィルタの所定のリストに対する、選択されたフィルタを識別するインデックスを備える、請求項10に記載の光受信機(230)。
【請求項13】
WDMとよばれる光波長分割多重化された、伝送に適応させられた光伝送システム(200)であって、
請求項1からのいずれかに記載の光送信機(210)と、
請求項から12のいずれかに記載の光受信機(230)と、
光受信機(230)から光送信機(210)に等化フィルタ(270)のスペクトル応答に関する情報を伝送するように構成されたフィードバック経路(260)とを備える、光伝送システム(200)。
【請求項14】
フィードバック経路(260)が、
光伝送システム(200)の制御プレーン(260)と、
光受信機(230)を備える遠端トランスポンダから光送信機(210)を備える近端トランスポンダに至るWDM伝送チャネルのうちのいずれか、または複数を備える、請求項13に記載の光伝送システム(200)。
【請求項15】
光送信機(210)と、対応する光受信機(230)とを備える光伝送システム(200)の信号対ノイズ比を高めるための方法であって、光送信機が、WDMとよばれる光波長分割多重化された、少なくとも2つの異なる帯域幅に調整可能な伝送チャネルを備えるWDMグリッドの、調整可能な帯域幅の伝送チャネル(111)で光受信機(230)に光信号を送信するように構成されており、方法が、
WDM伝送チャネル(111)の所与の帯域幅について、光受信機(230)において構成された等化フィルタ(270)のスペクトル応答に関する情報を受信するステップと
光送信機(210)でパルス整形フィルタを使用して系列のデータシンボル(211)をフィルタリングして、その結果、フィルタリングされた系列のデータシンボル(211)をもたらすステップであって、パルス整形フィルタの周波数応答(404、405)が、WDM伝送チャネル(111)の所与の帯域幅に対して光送信機(210)を適応させるために、WDM伝送チャネルの所与の帯域幅についての前記等化フィルタ(270)のスペクトル応答に関する情報に基づいて構成される、ステップと、
フィルタリングされた系列のデータシンボル(211)を光信号に変換するステップと、
光信号を光受信機(230)に送信するステップとを備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、光通信システムに関する。詳細には、本出願は、高効率波長分割多重化(WDM)光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高スペクトル効率光通信システムは、光通信ネットワークにおける容量増加の予期される要求に対処するために有益である。この文脈で、マルチレベル変調フォーマット(例えば、四位相偏移変調、QPSK)と併せて、偏波多重化(PDM)、ならびにデジタルコヒーレント検出技法が研究されている。偏波分割多重化された四位相偏移変調(PDM−QPSK)が、コヒーレント検出と対にされて、112Gb/秒(通常、100Gb/秒と呼ばれる)の伝送レートを実現するのに使用され得る。このフォーマットは、隣接する2つのWDMチャネル(すべてのWDMチャネル101が同一のチャネル幅を有する、図1のWDMチャネル図100に示される)の間の50GHzグリッドに基づく標準のWDM伝送システムにおいて、2b/秒/Hzというスペクトル効率をもたらす。そのような100Gb/秒システムのスペクトル効率を高める可能な1つのアプローチが、PDM−8QAM、PDM−16QAMなどの、より高レベルの変調フォーマットを使用することである。しかし、そのようなフォーマットは、通常、光ノイズに対して、より低い感度を有するとともに、非線形効果に対して、より弱い耐性を有し、したがって、PDM−QPSKと比べて、伝送可能距離が短くなることをもたらし得る。
【0003】
100Gb/秒の光伝送システムのスペクトル効率をさらに高める別のアプローチが、WDMチャネルを密に詰める、すなわち隣接するWDMチャネル間のチャネル間隔を狭めることである。3b/秒/Hzまたは4b/秒/Hzのスペクトル効率を有する伝送が、それぞれ、33GHzグリッド上、および25GHzグリッド上で(従来の50GHzグリッドではなく)100Gb/秒のPDM−QPSKチャネルを使用して実現され得る。
【0004】
柔軟性のあるグリッドWDMシステムが、伝送される容量と伝送可能距離の間の(最適な)トレードオフに依存して帯域幅占有率を最適化するために使用され得る。例として、固定の50GHzグリッドを有するのではなく、異なる幅のチャネルスロットを定義するために(ITUグリッドから始めて)12.5GHzの粒度を有する、ある程度柔軟性のあるシステムアーキテクチャが、使用されることが可能である。このことは、光パス障害と要求される容量の間の(最適な)トレードオフに依存して、所定の範囲内でチャネル密度を変えることを可能にする。このことが、異なるWDMチャネル111、123が異なるチャネル幅を有する、図1のWDMチャネル図110に示される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Godard、IEEE Tr.Comm、vol.28、no.11、1867−1875頁、1980年
【非特許文献2】S.J.Savory他、「Digital Equalization of 40Gbit/s per Wavelength Transmission over 2480km of Standard Fiber without Optical Dispersion Compensation」、Proceedings of ECOC2006、Cannes、France、paper Th2.5.5、2006年9月
【非特許文献3】ITU−T標準G.709
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より狭いチャネル間隔で機能するWDMシステムは、伝送可能距離が少ししか短くならないようにしながら、システム容量を増加させる効率的な方法であるように見える。しかし、伝送チャネルの光受信機における信号対ノイズ比(SNR)の最適化は、異なる幅(例えば、50GHz、37.5GHz、25GHzなど)のWDMチャネル111、112に関して使用される異なるフィルタリング関数が、光信号を異なる様態で歪ませるので、柔軟性のあるグリッドシステムにおいて難易度が高い。本出願は、前述した技術的問題に対処する。詳細には、本出願は、光伝送システムの対応する光受信機におけるSNRを高めるために、光伝送システムの送信機において適切な光フィルタを選択するための方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
或る態様によれば、光送信機が説明される。この光送信機は、対応する光受信機に光波長分割多重化された(WDM)伝送チャネルで光信号を送信するように構成される。WDM伝送チャネルは、WDMチャネルの所定のグリッドに依存することが可能な所定の帯域幅を有し得る。帯域幅は、WDMチャネルのグリッドに従って調整可能であり得る。例として、帯域幅は、12.5GHzというグリッド粒度で調整可能であり得る。この光送信機は、WDM伝送チャネルの帯域幅を調整するように構成され得る。
【0008】
この光送信機は、等化フィルタに関する情報を受け取るように構成されたプロファイリングユニットを備え、その等化フィルタは、対応する光受信機において構成されている、または調整されている。その等化フィルタは、対応する光受信機によって、光受信機に対してWDM伝送チャネルを介して光送信機から送信された第1の光信号が被る歪みを補償するのに使用され得る。第1の光信号は、通常、第1の系列のデータシンボルを表す。詳細には、第1の光信号は、光搬送波信号を、第1の系列のデータシンボルから導き出された系列のシンボルで変調することによって得られていることが可能である。このコンテキストで、その等化フィルタが、光送信機において実行されたパルス整形フィルタリングを補償するように、対応する光受信機によって使用され得る。そのようなパルス整形フィルタリングは、第1の系列のデータシンボルを調整し、その結果、第1の光信号をWDM伝送チャネルの帯域幅に調整するために、光送信機において実行され得る。このため、等化フィルタは、光送信機から受信された第1の光信号に基づいて、対応する光受信機において構成されていることが可能である。
【0009】
さらに、光送信機は、パルス整形フィルタを使用して第2の系列のデータシンボルをフィルタリングして、その結果、フィルタリングされた系列のデータシンボルをもたらすように構成されたパルス整形フィルタユニットを備える。パルス整形フィルタの周波数応答は、等化フィルタに関する情報に依存し得る。つまり、パルス形成フィルタは、光受信機から受信された等化フィルタに関する情報に応じて調整され得る。
【0010】
さらに、光送信機は、フィルタリングされた系列のデータシンボルを、WDM伝送チャネルを介して光受信機に送信されるべき第2の光信号に変換するように構成されたデジタル−光変換器を備えることが可能である。このデジタル−光変換器は、1つまたは複数のデジタル−アナログ変換器(DAC)と、光搬送波信号をフィルタリングされた系列のシンボルで変調して、第2の光信号をもたらすための変調ユニットとを備えることが可能である。
【0011】
このため、光送信機は、光送信機のパルス形成フィルタを、対応する光受信機から受信された情報に基づいて構成して、その結果、光受信機において受信される信号の信号対ノイズ比(SNR)を高めるように構成され得る。このプロセスは、光送信機および光受信機の立ち上げ段階(例えば、WDM伝送チャネルの帯域幅の変更の後に続く)中に実行され得る。例として、光送信機が、第1の光信号に関する第1の系列のデータシンボルをフィルタリングする際に、デフォルトの送信機フィルタを(パルス整形フィルタとして)使用するように構成され得る。次に、光受信機が、受信された第1の光信号に基づいて等化フィルタを適応させ、さらに等化フィルタに関する情報を光送信機に供給することが可能である。次に、光送信機が、等化フィルタに関する情報に基づいてパルス整形フィルタを調整し、さらに(デフォルトの送信機フィルタではなく)その調整されたパルス整形フィルタを使用して(第1の光信号の後に続く)第2の光信号を生成することが可能である。その結果、光送信機および光受信機が、WDM伝送チャネルの(変更された)帯域幅に適応させられることが可能である。
【0012】
パルス整形フィルタは、等化フィルタに関する情報に依存して、プリエンファシスフィルタに対応することが可能である。このため、パルス整形フィルタユニットは、プリエンファシスフィルタを使用して第2の系列のデータシンボルをフィルタリングするように構成され得る。さらに、パルス整形フィルタユニットは、そのフィルタリングされた系列のデータシンボルを、デフォルトの送信機フィルタを使用してさらにフィルタリングするように構成されることが可能であり、デフォルトの送信機フィルタは、通常、WDM伝送チャネルの帯域幅に適応させられる。代替として、パルス整形フィルタは、等化フィルタに関する情報に依存するプリエンファシスフィルタと、WDM伝送チャネルの帯域幅に、通常、適応させられるデフォルトの送信機フィルタの組み合わせに対応してもよい。パルス整形フィルタがそのような組み合わせに対応する場合、パルス整形フィルタユニットは、(プリエンファシスフィルタとデフォルトの送信機フィルタを順次に適用する代わりに)単一の複合パルス整形フィルタを適用するように構成され得る。
【0013】
プロファイリングユニットは、プリエンファシスフィルタの周波数応答が等化フィルタのフィルタ応答を近似するようにプリエンファシスフィルタを決定するように構成され得る。この目的で、プロファイリングユニットは、等化フィルタに関する情報を利用することが可能である。例えば、等化フィルタに関する情報は、以下、すなわち、等化フィルタの周波数応答を近似する適合曲線の1つまたは複数の適合パラメータ、等化フィルタの1つまたは複数のフィルタ係数、および/または対応する受信機において選択されたフィルタを識別する、フィルタの所定のリストに対するインデックスのうちのいずれかまたは複数を備えることが可能であり、選択されたフィルタの周波数応答は、等化フィルタの周波数応答を近似する。
【0014】
さらなる態様によれば、対応する送信機からの光波長分割多重化された(WDM)伝送チャネルで光信号を受信するように構成された光受信機が説明される。この光受信機は、光送信機から受信された第1の光信号をデジタル信号に変換するように構成された光−デジタル変換器を備える。光受信機は、コヒーレント光受信機であり得る。このため、光−デジタル変換器は、1つまたは複数のペアのアナログ電気信号をもたらすコヒーレント光検出ユニットを備えることが可能であり、ペアのアナログ電気信号が、(成分とも呼ばれる)同相信号と、直交位相信号とを備える。さらに、光−デジタル変換器は、アナログ信号をデジタル信号に変換する1つまたは複数のアナログ−デジタル変換器(ADC)を備え得る。デジタル信号は、第1の光信号を変調するために光送信機において使用された第1の系列のデータシンボルを表す。
【0015】
光受信機は、等化フィルタを使用してデジタル信号をフィルタリングして、その結果、フィルタリングされたデジタル信号をもたらすように構成された等化ユニットを備える。さらに、光受信機は、WDM伝送チャネルにおける伝達関数を補償するため、さらに対応する送信機において第1の系列のデータシンボルに適用されたパルス整形フィルタ(例えば、デフォルトの送信機フィルタ)を補償するために、等化フィルタを適応させるように構成された適応ユニットを備える。適応ユニットは、デジタル信号(第1の光信号から導き出される)に基づいて、等化フィルタを決定するように構成され得る。例として、適応ユニットは、定包絡線アルゴリズムなどのブラインド適応技法を利用して、等化フィルタを決定することが可能である。代替として、またはさらに、適応ユニットは、適応技法に基づく訓練を利用してもよい。例として、第1の光信号が、光受信機に知られている系列の訓練シンボルを備えて、その結果、光受信機が等化フィルタをWDM伝送チャネルの伝達関数に、さらに/または光送信機のパルス整形フィルタによりうまく適応させることを可能にし得る。
【0016】
光受信機は、パルス整形フィルタを変更する目的で、等化フィルタに関する情報を対応する送信機に供給するように構成されたフィードバックユニットをさらに備える。このフィードバックユニットは、別のWDM伝送チャネルの制御プレーンを利用して、等化フィルタに関するこの情報を光送信機に送信することが可能である。
【0017】
さらに、光受信機は、フィルタリングされたデジタル信号に基づいて、第1の系列のデータシンボルを推定するように構成された判定ユニットを備えることが可能である。
【0018】
光受信機および光送信機は、偏波分割多重化された(PDM)光信号の伝送に適応させられることが可能である。このため、第1の光信号(および第2の光信号)は、第1の偏波、および第2の偏波をそれぞれ備える偏波分割多重化された光信号であることが可能であり、デジタル信号は、第1の偏波成分(または第1の偏波に関するデジタル信号)と、第2の偏波成分(または第2の偏波に関するデジタル信号)とを備えることが可能である。同様に、フィルタリングされたデジタル信号は、第1の偏波成分と、第2の偏波成分とを備えることが可能である。コヒーレント光受信機の場合、偏波成分のそれぞれが、それぞれ、同相成分と、直交位相成分とを備えることが可能である。
【0019】
PDMの場合、等化ユニットは、偏波多重分離ユニットであることが可能であり、さらに等化フィルタは、バタフライ構造の、FIRフィルタと呼ばれる複数の有限インパルス応答フィルタを備えることが可能である。フィードバックユニットは、その複数のFIRフィルタに基づいて、等化フィルタに関する情報を決定するように構成され得る。詳細には、フィードバックユニットは、それぞれ、第1の偏波、および第2の偏波に関するその複数のFIRフィルタのコモンモード成分を決定するように構成され得る。第1の(第2の)偏波に関するコモンモード成分は、例えば、フィルタリングされたデジタル信号の第1の(第2の)偏波に寄与する等化フィルタのFIRフィルタの合計に基づいて決定され得る。詳細には、第1の(第2の)偏波に関するコモンモード成分は、例えば、フィルタリングされたデジタル信号の第1の(第2の)偏波に寄与する等化フィルタのFIRフィルタから導き出された絶対応答の二乗の合計に基づいて決定され得る。このため、等化フィルタに関する情報は、第1の偏波および/または第2の偏波に関するコモンモードに基づいて決定され得る。
【0020】
前述したとおり、等化フィルタに関する情報は、等化フィルタから導き出されたフィルタのフィルタ係数を備えることが可能である。代替として、またはさらに、フィードバックユニットが、例えば、或る次数の多項式などの所定の適合曲線、または正弦適合曲線を使用して、等化フィルタの周波数応答を近似するように構成され、その結果、1つまたは複数の適合パラメータを使用して周波数応答を近似してもよい。この適合は、例えば、平均二乗誤差を小さくすること/最小化することによって実行され得る。フィードバックユニットは、等化フィルタの近似された周波数応答に基づいて、等化フィルタに関する情報を決定するように構成され得る。等化フィルタに関する情報は、1つまたは複数の適合パラメータを備えることが可能である。代替として、またはさらに、フィードバックユニットは、フィルタの所定のリストからフィルタを選択することによって、等化フィルタを近似するように構成されてもよい。選択されたフィルタの周波数応答は、等化フィルタの周波数応答を近似することが可能である(例えば、平均二乗誤差を小さくすること/最小化することによって)。そのような事例において、等化フィルタに関する情報は、場合により、ルックアップテーブル(LUT)の中に格納された、フィルタの所定のリストに対する、選択されたフィルタを識別するインデックスを備えることが可能である。
【0021】
さらなる態様によれば、波長分割多重化された(WDM)伝送に適応させられた光伝送システムが説明される。この光伝送システムは、本出願において概略を述べた態様のいずれかによる光送信機を備える。さらに、この光伝送システムは、本出願において概略を述べた態様のいずれかによる光受信機を備える。さらに、この光伝送システムは、光受信機から光送信機に、等化フィルタに関する情報を伝送するように構成されたフィードバック経路を備えることが可能である。フィードバック経路は、以下、すなわち、光伝送システムの制御プレーン、または光受信機を備える遠端トランスポンダから光送信機を備える近端トランスポンダに至るWDM伝送チャネルのうちの1つまたは複数を備えることが可能である。
【0022】
別の態様によれば、光送信機と、対応する光受信機とを備える光伝送システムの信号対ノイズ比および全体的なパフォーマンスを向上させるための方法が説明される。この方法は、等化フィルタに関する情報を受け取ることを備え、等化フィルタは、光受信機において構成されている。この方法は、パルス整形フィルタを使用して、系列のデータシンボルをフィルタリングすることに進み、その結果、フィルタリングされた系列のデータシンボルをもたらす。パルス整形フィルタの周波数応答は、等化フィルタに関する情報に依存する。さらに、この方法は、フィルタリングされた系列のデータシンボルを光信号に変換すること、および/またはその光信号を光受信機に送信することを備えることが可能である。
【0023】
さらなる態様によれば、ソフトウェアプログラムが説明される。ソフトウェアプログラムは、コンピューティングデバイス上で実行されると、プロセッサ上で実行されるように、さらに本出願で概略を述べた方法ステップを実行するために構成されることが可能である。
【0024】
別の態様によれば、記憶媒体が説明される。この記憶媒体は、コンピューティングデバイス上で実行されると、プロセッサ上で実行されるように、さらに本出願で概略を述べた方法ステップを実行するために構成されたソフトウェアプログラムを備えることが可能である。
【0025】
さらなる態様によれば、コンピュータプログラム製品が説明される。このコンピュータプログラム製品は、コンピュータ上で実行されると、本出願で概略を述べた方法ステップを実行するための実行可能命令を備えることが可能である。
【0026】
本特許出願において概略を述べた好ましい実施形態を含む方法およびシステムは、スタンドアロンで使用されても、本明細書で開示されるその他の方法およびシステムと組み合わせで使用されてもよいことに留意されたい。さらに、本特許出願において概略を述べる方法およびシステムのすべての態様は、任意に組み合わされることが可能である。詳細には、特許請求の範囲の特徴は、互いに任意に組み合わされることが可能である。
【0027】
本発明は、添付の図面を参照して例示的な様態で後段で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】固定周波数グリッド上、および柔軟性のある周波数グリッド上の例示的なWDMチャネルを示す図である。
図2a】例示的な光伝送システムを示すブロック図である。
図2b】偏波デマルチプレクサユニットにおいて使用される例示的なフィルタバンクを示すブロック図である。
図3】光伝送システムにおける送信機および受信機における例示的な光フィルタの周波数応答を示す図である。
図4】光伝送システムの受信機において決定された1つまたは複数のフィルタに基づいて、送信機における光フィルタを構成するための例示的な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
概説のセクションにおいて概略を述べたとおり、異なる幅のWDMチャネルが、光伝送システムの容量を光伝送パス上の障害に適応させるのに使用され得る。異なるチャネル幅(チャネル間隔)を有するWDMチャネル111、112が、図1のWDMチャネル図110に示される。WDMチャネル111の幅を適応させる際、WDMチャネル111の送信機において使用される送信機フィルタは、通常、WDMチャネル111のより小さい帯域幅、またはより大きい帯域幅に適応させられなければならない。そのような送信機フィルタは、隣接するWDMチャネル111、112の間のクロストークを低減するために、主にパルス整形のために使用される。このため、送信機フィルタは、パルス整形フィルタとも呼ばれ得る。送信機フィルタの周波数応答は、対応する受信機における電気信号対ノイズ比(SNR)を最適化する(すなわち、高めるために)設計され得る。送信機フィルタをWDMチャネル111の変更された幅に適応させるために、送信機フィルタは、可変の減衰プロファイルを備えて、その結果、送信機フィルタのカットオフ周波数を、WDMチャネル111の変更された幅に調整することを可能にし得る。本出願において、受信機側における受信されるSNRが最適化される(すなわち、高められる)ように送信機側で使用されるフィルタリングプロファイルを動的に決定することが提案される。このため、全体的な光伝送チャネルのパフォーマンスを最適化する送信機フィルタを決定することが提案される。(コヒーレント)受信機において使用される(線形)適応等化器のうちの1つまたは複数の等化器の応答を解析することによって、送信機側でフィルタリングプロファイルを最適化することが提案される。受信機における1つまたは複数の適応等化器は、CMA、つまり、定包絡線アルゴリズム、または他のブラインド適応技法を利用することが可能である。つまり、対応する受信機において利用可能である光伝送チャネルの伝達関数に関する情報に基づいて、送信機における送信機フィルタを決定することが提案される。このため、WDMチャネル111の幅を変更し、さらに送信機における送信機フィルタをその変更されたWDMチャネル111に自動的に適応させることが可能であり、その自動的に適応させられた送信機フィルタは、受信機におけるSNRを最適化する(すなわち、高める)。
【0030】
図2aは、送信機210と、光伝送パス250と、受信機230とを備える例示的な光伝送システム200を示す。さらに、光伝送システム200は、光伝送システム200を管理するのに使用され得る制御プレーン260を備える。制御プレーン260は、通常、ネットワークプロトコルスイートGMPLS(汎用マルチプロトコルラベルスイッチング)を利用する。例として、制御プレーン260は、光伝送パス250上で使用されるWDMチャネル111の幅を変えるよう送信機210および受信機230に命令するのに使用され得る。
【0031】
送信機210は、例えば、ASIC(特定用途向け集積回路)として実装され得る、第1のデジタルシグナルプロセッサ218を備える。図示される例において、偏波多重化された光信号のための送信機210が示される。第1のデジタルシグナルプロセッサ218は、光信号の2つの偏波のための2つの系列のシンボル(例えば、QPSKシンボル)211をそれぞれもたらす。この2つの系列のシンボル211は、光信号の2つの偏波に関する2つの送信機フィルタ212のバンクによってそれぞれフィルタリングされる。或る実施形態において、2つの送信機フィルタ212は、同一であるが、他の実施形態において、2つの送信機フィルタ212は、光信号のそれぞれの偏波に専用である。さらに、送信機210は、パルス整形フィルタのリストを与えるためのLUT(ルックアップテーブル)213を備えることが可能である。デジタル−アナログ変換器(DAC)214のペアが、フィルタリングされた系列のシンボル211をペアの電気信号に変換するのに使用される。このペアの電気信号は、伝送パス250を介して伝送される光信号の2つの偏波を(ドライバ215および変調器216、例えば、MZM、つまり、マッハ−ツェンダ変調器を使用して)変調するのに使用される。
【0032】
図2aに示される光受信機230は、受信された光信号をペアの複素デジタル信号に変換するように構成されたコヒーレント光受信機であり、各デジタル信号は、同相成分と、直交位相成分とを備える。この目的で、コヒーレンス受信機は、コヒーレント検出器と、アナログ−デジタル変換器(ADC)231のバンクとを備えることが可能である。さらに、光受信機230は、判定ユニット236において2つの系列のシンボル211を回復するために、そのペアのデジタル信号を処理する第2のデジタルシグナルプロセッサ238(例えば、ASIC)を備える。そのペアのデジタル信号を処理することは、通常、CD補償232と、クロック回復(DCR)233と、搬送波周波数/搬送波位相推定235とを備える。
【0033】
さらに、この処理は、通常、偏波多重分離−等化ユニット234を備える。偏波多重分離ユニット234は、チャネル等化のため、および/または偏波多重分離のために使用される1つまたは複数の等化フィルタを備えることが可能である。偏波多重分離ユニット234は、通常、バタフライ構造に構成された4つのFIR(有限インパルス応答)フィルタ271のバンク270を備える(図2b参照)。FIRフィルタ271のフィルタタップは、適応ユニット272を備えるフィードバックループ内で決定されて、絶えず適応させられることが可能である。適応ユニット272は、「ブラインド」の様態でフィルタタップを絶えず適応させるCMAアルゴリズムを実行することが可能である。つまり、CMAアルゴリズムは、受信された光信号から導き出されたデジタル信号のペアのサンプルだけに基づいて、FIRフィルタ271のフィルタタップを決定する。これらのフィルタタップは、偏波多重分離ユニット234の下流の(すなわち、FIRフィルタバンク270を用いたフィルタリングの後に)フィルタリングされた信号が所定の信号特性を示すように、通常、決定される。例として、単位振幅の信号の場合、CMAは、偏波多重分離ユニット234の出力における誤差項E=(|Sout|−1)の大きさを最小限に抑えようと試みることが可能であり、|Sout|は、偏波多重分離ユニット234の出力信号Soutの強度(または振幅)である。
【0034】
CMAアルゴリズムは、Godard(IEEE Tr.Comm、vol.28、no.11、1867−1875頁、1980年)によって導入され、CMAアルゴリズムの説明は、参照により組み込まれている。さらに、CMAは、S.J.Savory他、「Digital Equalization of 40Gbit/s per Wavelength Transmission over 2480km of Standard Fiber without Optical Dispersion Compensation」、Proceedings of ECOC2006、Cannes、France、paper Th2.5.5、2006年9月という文献においても説明される。この文献におけるCMAの説明は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0035】
偏波多重分離ユニット234のFIRフィルタ271は、
【0036】
【数1】
として表されることが可能であり、
i、j=1、2は、4つのFIRフィルタ271のそれぞれを識別するインデックスであり、さらにcij、n=0、...、N−1は、それぞれのFIRフィルタ271のN個のフィルタタップであり、Nは、10の範囲内にある。FIRフィルタ271は、いわゆるコモンモード成分と、いわゆるディファレンシャルモード成分という2つのフィルタ成分に通常、分割され得る。ディファレンシャルモード成分は、2つの直交偏波信号成分の偏波面を正しく識別するために、受信された信号の偏波面を調整することを主に担う。コモンモード成分は、隣接するWDMチャネルに対する特定のWDMチャネルの干渉に起因し得る、受信された信号内の望ましくないクロストーク歪みを除去することを主に担う。このため、コモンモード成分は、特定のWDMチャネルの信号部分を、隣接するWDMチャネルを出所とする信号部分から分離することに通常、向けられる。
【0037】
11(z)およびH21(z)を、偏波多重分離ユニット234の入力でペアのデジタル信号273、274をミキシングして、(偏波多重分離ユニット234の出力で)第1の偏波多重分離されたデジタル信号275をもたらすFIRフィルタ271であるものとする。これら2つのFIRフィルタのコモンモード成分は、これら2つのFIRフィルタH11(z)およびH21(z)から導き出された二乗絶対値応答の合計の平方根として決定され得る。もたらされるフィルタは、第1の偏波に関するコモンモードFIRフィルタ成分、または第1のコモンモードフィルタと呼ばれ得る。同様に、第2の偏波に関するコモンモードFIRフィルタ成分(または第2のコモンモードフィルタ)が、偏波多重分離ユニット234の入力でペアのデジタル信号273、274をミキシングして、(偏波多重分離ユニット234の出力で)第2の偏波多重分離された信号276をもたらすフィルタH12(z)およびH22(z)から決定され得る。これらのコモンモード成分は、例えば、フィードバックユニット237において決定され得る。
【0038】
このため、コヒーレント受信機230は、通常、線形適応等化器(例えば、CMA、判定指向型LMS(最小平均二乗)などを利用する)を使用して、伝送の後の受信された偏波トリビュタリを多重分離する。これらの線形等化器は、通常、スペクトルの最高周波数を強化することによって、シンボル間干渉によって生じるペナルティを軽減しようと試みる。低い光SNRで、このことは、信号帯域幅に包含されるノイズの強化を生じさせて、その結果、パフォーマンスを低下させる可能性がある。この問題を回避するために、受信機230における線形等化器応答のスペクトルプロファイルを使用して、送信機210における送信機フィルタ212によって使用されるフィルタリングプロファイルを構成して、その結果、受信される帯域幅に対する送信される信号のエネルギーを最大化する(すなわち、増加させる)ことが提案される。この目的で、CMAのスペクトル応答が、フィードバックユニット237内の低速マイクロコントローラにおいて解析され得る。つまり、CMAアルゴリズムは、シンボルレートと比べて、(例えば、シンボルレートと比べて1/10または1/100の)より低い更新レートで通常、動作する。その結果、CMAのスペクトル応答の決定、すなわち、FIRフィルタ271の決定は、受信されるデジタル信号の処理と比べて、より低いプロセッサレートで実行され得る。
【0039】
送信機210におけるきついフィルタリングがCMAフィルタのスペクトル応答に(すなわち、FIRフィルタ271に)与える影響の例が、図3に示される。33GHz帯域幅インターリーバで(すなわち、図3に示される周波数応答300を有する送信機フィルタ212で)32ギガボーPDM−QPSK信号を実験的にフィルタリングした後、受信機230におけるFIRフィルタ271のスペクトル応答301は、高い周波数の明確な強化を示す。高い周波数のこの強化は、低いOSNRにおけるノイズ強化につながって、その結果、光伝送システム200のパフォーマンスを低下させる可能性がある。
【0040】
受信機230におけるノイズ強化の効果を小さくするために、FIRフィルタ271のスペクトル応答301を送信機210に供給して、その結果、送信機210が、受信機230におけるノイズの望ましくない強化を低減する適切な送信機フィルタ212を設計することを可能にすることが提案される。このことは、制御プレーン260を利用して行われ得る。詳細には、受信機230が、FIRフィルタ271の周波数応答301に関する情報を制御プレーン260に送ることが可能であり、制御プレーン260が、この情報を送信機210に転送することが可能である。代替として、またはさらに、本出願の後のセクションで概略を述べるとおり、ダイレクトアップストリーム通信プロセスが使用されてもよい。そのようなダイレクトアップストリーム通信プロセスは、制御プレーン260を介した通信より高速であって、その結果、ダイナミクスを高めることが可能である。
【0041】
受信機230から送信機210に送信される情報の量を減らすために、FIRフィルタ271のスペクトル応答301は、近似されてもよいことに留意されたい。この目的で、FIRフィルタ応答は、例えば、所定の次数の多項式によって、または正弦関数によって適合させられることが可能である。その結果、少数の適合パラメータだけが、受信機230から送信機210に送信される。代替として、またはさらに、受信機230と送信機210が、デフォルトのスペクトル応答の共通リスト(フィルタリング関数のバンクとも呼ばれる)を利用してもよい。受信機230(詳細には、フィードバックユニット237)が、そのリストから、FIRフィルタ271の実際のスペクトル応答301を最もよく近似するデフォルトのスペクトル応答を選択するように構成され得る。この事例では、そのリストからのインデックスだけが送信機230に送信されることが可能である。次に、送信機230が、その送信されたインデックスを使用して共通リストからデフォルトのスペクトル応答を回復するように構成される(例えば、プロファイリングユニット217を使用して)。
【0042】
FIRフィルタ271のスペクトル応答301に関する情報(例えば、FIRフィルタ係数、適合パラメータ、および/またはデフォルトのフィルタの共通リストに対するインデックス)は、送信機210によって、送信機フィルタ212において実行されるパルス整形を変更し、その結果、偏波多重分離234の後に信号対ノイズ比を最適化し(すなわち、高め)、したがって、光伝送システム200のパフォーマンスを最適化する(すなわち、高める)のに使用され得る。
【0043】
前段で概略を述べたとおり、偏波多重分離ユニット234のFIRフィルタ271は、通常、コモンモード成分を備える。詳細には、第1の偏波、および第2の偏波に関して、それぞれ、特定のコモンモード成分が決定されることが可能である。第1の偏波に関するコモンモード成分は、第1のコモンモード成分と呼ばれることが可能であり、第2の偏波に関するコモンモード成分は、第2のコモンモード成分と呼ばれることが可能である。第1のコモンモード成分は、H11(z)およびH21(z)から導き出されることが可能であり、第2のコモンモード成分は、H12(z)およびH22(z)から導き出されることが可能である。図3に示される周波数応答301は、第1のコモンモード成分または第2のコモンモード成分の周波数応答に対応する。このため、受信機230(例えば、フィードバックユニット237)は、第1のコモンモード成分および/または第2のコモンモード成分に関する情報を送信機210に(例えば、送信機210のプロファイリングユニット217に)供給するように構成され得る。
【0044】
図4は、32ギガボーPDM−QPSK実験データを使用してFIRフィルタ271に基づいて送信機フィルタ212を構成するための例示的なスキーム400を示す。PDM−QPSKデータ211は、周波数応答401を有する標準の33GHzチャネルフィルタを使用してフィルタリングされる。受信機230で、偏波多重分離ユニット234(例えば、CMAアルゴリズムを使用する)が、FIRフィルタ271のバンク270をもたらす。FIRフィルタ271の第1のコモンモードまたは第2のコモンモードのスペクトル応答402が、図4に示される。FIRフィルタ271の第1のコモンモード成分および第2のコモンモード成分のスペクトル応答402は、送信機210にフィードバックされる、適合させられたスペクトル応答403をもたらすように適合させられて、その結果、受信機230から送信機210に送信されるべきデータの量を減らすことが可能である。
【0045】
送信機210のプロファイリングユニット217が、受信機230から受信された情報を使用して、送信機フィルタ212のスペクトル応答を構成して、その結果、伝送チャネルのSNRを高めることが可能である。代替として、標準の送信機フィルタ405(フィルタ401に対応する)を使用してフィルタリングすることに先立って、プリエンファシスフィルタ404が系列のシンボル211に適用されてもよい。つまり、時間領域において送信機フィルタ212のパルス整形を変更することと同様に、チャネル応答が、受信機230から受信されたフィルタリングプロファイルを使用して送信機側で変更されることが可能である。送信機210で実行されるフィルタリングのこの変更の後、受信機230におけるFIRフィルタ271のスペクトル応答406は、より平坦になり、これにより、低いOSNRにおけるノイズ強化を小さくし、光伝送システム200のパフォーマンスを向上させる。実験が、例えば、フィルタ最適化による0.5dBのOSNR向上を示している。この向上は、よりきついフィルタリングの場合、つまり、33GHz未満、例えば、25GHzにおけるフィルタリングの場合、さらに大きいはずである。
【0046】
以下に、FIRフィルタ271に関するフィードバック情報を送信機210に供給するための、受信機230と送信機210の間の直接フィードバックリンクの可能な実施例が説明される。この目的で、受信機230および送信機210は、受信機230を備える(遠端)トランスポンダと、送信機210を備える(近端)トランスポンダの間でアップストリーム通信パス、つまり、逆方向通信パスを利用する。遠端トランスポンダと近端トランスポンダは、光通信システム200のWDMチャネル211、212上でデータ(すなわち、ペイロードデータ)を交換するために使用される通信プロトコルを利用することが可能である。詳細には、遠端トランスポンダ230と近端トランスポンダ210は、ITU−T標準G.709において指定される光トランスポートネットワーク(OTN)プロトコルフレームワークを利用することが可能である。OTNフレームワークは、光通信システム200にわたってペイロードをどのようにルーティングすべきかを定義する。ペイロードデータは、いわゆるフレームに埋め込まれ、各フレームは、フレームオーバヘッドを備える。フレームオーバヘッドは、複数のフィールド(バイト)を備え、この複数のフィールドは、光通信システム200のネットワーク要素(例えば、受信機230を備える遠端トランスポンダと送信機210を備える近端トランスポンダ)の間で特定の通信チャネルおよび制御チャネルを実装するのに使用され得る。OTNフレーム(通常、光トランスポートユニット(OTUk)フレームと呼ばれる)のオーバヘッドは、近端トランスポンダおよび遠端トランスポンダによって直接にアクセス可能である。
【0047】
したがって、遠端トランスポンダ(受信機230を備える)は、遠端トランスポンダから近端トランスポンダ(送信機210を備える)に光通信チャネルを介して送信されるOTUkフレームのオーバヘッドの所定のバイトの中に、FIRフィルタ271のフィルタ応答に関する情報を挿入して、その結果、送信機フィルタ212のプロファイルをどのように構成すべきかについて近端トランスポンダに知らせることが可能である。このため、フィードバック通信リンクは、遠端トランスポンダ(受信機230を備える)と近端トランスポンダ(送信機210を備える)の間の帯域内通信リンクとして実施されることが可能である。
【0048】
本出願において、間隔の狭いWDM伝送システムに関して送信機フィルタを決定するためのスキームが説明されてきた。このスキームは、WDM伝送チャネルの受信機における等化器フィルタの周波数応答に基づいて、特定のWDM伝送チャネルに関する送信機フィルタを決定することを可能にする。その結果、WDM伝送チャネルのパフォーマンスが向上させられることが可能である。詳細には、提案されるスキームは、超高密度WDMシステムのコンテキストにおいてコヒーレント受信機における信号対ノイズ比の最適化を可能にする。さらに、提案されるスキームは、超高密度WDMシステムにおけるきつくフィルタリングされた信号のパフォーマンスの柔軟性のある最適化を可能にし、このとが、より長い最大伝送距離をもたらす。
【0049】
提案されるスキームは、WDM伝送チャネルの立ち上げ段階(例えば、WDM伝送チャネルの帯域幅の変更の後に続く、またはWDMチャネルの初期セットアップの後に続く)中に実行され得る。さらに、提案されるスキームは、送信機におけるパルス整形を変化するチャネル条件に適応させるために、定期的に実行され得る。前述したとおり、送信機フィルタの構成は、PDM信号の各偏波に関して別々に実行され得る。代替として、両方の偏波に関して共通の送信機フィルタが使用されてもよい。共通の送信機フィルタが使用される場合、FIRフィルタのすべてのフィルタのコモンモードに関する情報が、受信機から送信機にフィードバックされ得る。FIRフィルタのすべてのフィルタのコモンモードは、FIRフィルタのすべてのフィルタの合計および/または平均として導き出され得る。
【0050】
この説明、および図面は、提案される方法およびシステムの原理を単に例示するに過ぎないことに留意されたい。このため、当業者は、本明細書で明示的に説明されることも、示されることもないものの、本発明の原理を実現し、本発明の趣旨および範囲に含められる様々な構成を考案することができることが認識されよう。さらに、本明細書で使用されるすべての実施例は、提案される方法およびシステムの原理、ならびに当技術分野を進展させることに寄与する本発明者らによる概念を読者が理解することを助ける教育上の目的だけを主に、明確に意図しており、そのような特に記載される実施例および条件に限定することなしに解釈されるべきものである。さらに、本発明の原理、態様、および実施形態について述べる本明細書のすべての記述、ならびにそのような原理、態様、および実施形態の特定の実施例は、そのような原理、態様、および実施形態の均等物を包含することを意図している。
【0051】
さらに、前述した様々な方法のステップ、および説明されるシステムの構成要素は、プログラミングされたコンピュータによって実行され得ることに留意されたい。本明細書で、一部の実施形態は、マシン可読またはコンピュータ可読であるとともに、命令のマシン実行可能プログラムまたはコンピュータ実行可能プログラムを符号化するプログラムストレージデバイス、例えば、デジタルデータ記憶媒体を範囲に含むことも意図しており、前記命令は、前記前述した方法のステップのいくつか、またはすべてを実行する。プログラムストレージデバイスは、例えば、デジタルメモリ、磁気ディスクや磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハードドライブ、または光学的に読み取り可能なデジタルデータ記憶媒体であり得る。また、実施形態は、前述した方法の前記ステップを実行するようにプログラミングされたコンピュータを範囲に含むことも意図している。
【0052】
さらに、本特許出願において説明される様々な要素の機能は、専用のハードウェア、ならびに適切なソフトウェアに関連してソフトウェアを実行することができるハードウェアを介して提供され得ることに留意されたい。プロセッサによって提供される場合、それらの機能は、単一の専用プロセッサによって提供されても、単一の共有されるプロセッサによって提供されても、いくつかが共有され得る、複数の個々のプロセッサによって提供されてもよい。さらに、「プロセッサ」または「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行することができるハードウェアだけを指すものと解釈されるべきではなく、限定なしに、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェアを格納するための読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および不揮発性ストレージを暗黙に含み得る。従来の、さらに/またはカスタムの他のハードウェアが含められることも可能である。
【0053】
最後に、本明細書のいずれのブロック図も、本発明の原理を実現する例示的な回路の概念図を表すことに留意されたい。同様に、フローチャート、流れ図、状態遷移図、疑似コードなども、コンピュータ可読媒体として実質的に表され、したがって、コンピュータまたはプロセッサによって、そのようなコンピュータまたはプロセッサが明示されるか否かにかかわらず、実行されることが可能である様々なプロセスを表すことが認識されよう。
図1
図2a
図2b
図3
図4