(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2又は3に記載の多層防水シートにおいて、前記アルミ箔の他方の面側には樹脂系塗料がコーティングされていることを特徴とする請求項2又は3に記載の開口部を有する棟支持材。
前記多層防水シートの防水シート開口部と前記換気シートの換気シート開口部とが換気できる状態は、前記防水シート開口部と前記換気シート開口部における小さいほうの開口面積の天井面積に対する割合が1/1600以上であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の開口部を有する棟支持材。
前記換気シートは、さらに、前記換気シート本体部の棟木と当接する部位が、長手方向に前記多層防水シートと固定されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の開口部を有する棟支持材。
請求項6乃至8の何れか1項に記載の開口部を有する棟支持材において、当該開口部を有する棟支持材が棟木に装着された状態では、前記換気シートにおける棟木と当接するシート固定部位と前記多層防水シート取付部との間隔は、前記多層防水シートにおける棟木当接防水シート部と換気シート取付部との間隔と大略同じ程度に構成されていることを特徴とする開口部を有する棟支持材。
前記換気シートは、前記換気シート本体部と前記棟瓦側開口設置部との間に換気シート折曲部が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の開口部を有する棟支持材。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面によって本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の開口部を有する棟支持材の一形態を説明する構成斜視図で、(a)は装着される棟木の頂面方向から長手方向に見た平面斜視図、(b)は横手方向の斜視図である。
本発明の開口部を有する棟支持材は、多層防水シート20と換気シート40とを一体に構成すると共に、多層防水シート20の防水シート開口部28と換気シート40の換気シート開口部(422,442)とが換気できる状態で、開口部を有する棟支持材が棟木を覆う状態で屋根材に取り付けられることができる。本発明の開口部を有する棟支持材をこのように屋根材に取り付けると、換気機能が充実して、小屋裏にある湿気を屋外に排出することで、野地板等での結露発生を防止できる。
具体的には、多層防水シート20に換気シート40の両端が粘着テープや接着剤等を用いて取り付けられる。換気シート40の構造については、後で詳細に説明することにし、まず多層防水シート20の構造の詳細を説明する。
【0018】
図2は、開口部を有する棟支持材の一実施の形態を説明する構成図で、多層防水シート20に換気シート40を取付けた状態を示している。
図2(a)は上面から見た平面図、(b)は
図2(a)のb−b方向から見た横手方向断面図、(c)は下面から見た底面図、(d)は
図2(a)d−d方向から見た側面図である。二方向折り重ね状態の多層防水シート10には、横手方向折返し重合せ部Tと長手方向折返し重合せ部Lとを形成した二方向折り重ね状態のものを用いているので、多層防水シート20は長手方向だけでなく横手方向にも延伸性を有する。
【0019】
図において、開口部を有する棟支持材は、多層防水シート20を適宜の長さに調整して用いると共に、粘着テープ25、剥離紙26、換気シート貼付部27、防水シート開口部28、棟木当接防水シート部29を有している。また、多層防水シート20には、換気シート貼付部27を介して換気シート40が取り付けられている。換気シート40は、多層防水シート20における棟木との当接部となる棟木当接防水シート部29と防水シート開口部28を覆う状態で、多層防水シート20に装着されている。
図2(b)に示すように、換気シート40は、その両端部を起立させて、多層防水シート20を底面として展開した状態とすることが出来て、棟部への装着を容易にしている。なお、換気シート40は、その両端部を折り畳んで多層防水シート20と重ねた状態とすると、開口部を有する棟支持材の運搬や保管の便宜を図ることができる。
なお、多層防水シート20と換気シート40は、その棟木と当接する中央部29、412を長手方向に接着して、両者の一体性を高めてもよい。この場合、換気シート40の両端部42、44を起立させると、換気シート40の中央部412が接着された状態を維持するため、多層防水シート20を底面として、換気シート40の両端部42、44が展開した状態となり、断面が大略三角形となる。
【0020】
図2(a)に示すように、多層防水シート20は、棟木との当接部となる中央部分を介して左右対称の形状を有している。多層防水シート20には、長手方向折返し重合せ部Lが換気シート40に沿って左右に夫々一箇所設けられている。
【0021】
図2(b)に示すように、長手方向折返し重合せ部Lが存在するため、多層防水シート20は、上段多層防水シート部201、上段折曲げ部202、折返し多層防水シート部203、下段折曲げ部204、下段多層防水シート部205を左右対称に有している。また、
図2(c)に示すように、棟木装着用折り目部206は、多層防水シート20の下面に現れており、多層防水シート20を棟木に装着する際の折り曲げ部位である。典型的な多層防水シート20の形状は、横手方向に関しては、棟木装着用折り目部206の間隔T
206と、折返し多層防水シート部203を折り重ねた状態での棟木装着用折り目部206と下段多層防水シート部205との両端の間隔Tr,Tlを用いて、(Tr+T
206+Tl)となっている。他方、多層防水シート20の長手方向の長さL
allは、棟の長さや多層防水シート20の全体重量と作業性の観点から、適宜に定める。
【0022】
粘着テープ25は、ブチル系、EPDM系またアスファルト系の材料よりなるテープ材が好ましい。壁際用簡便施工装置の長手方向の裾部Mに幅10mm〜50mm(好ましくは30mm)装着することが好ましい。剥離紙26は、粘着テープ25が瓦等の屋根葺材に開口部を有する棟支持材を取り付けるのに用いられるまでの、粘着テープ25の粘着性を防止する作用をするものである。換気シート40には、例えばポリプロピレン製、ポリエステル製等の合成又は天然の繊維材料よりなる布、或いはエラストマーシートを用いるとよい。
【0023】
横手方向折返し重合せ部Tは、屋根材の凹凸に馴染ませるように貼り付けるため、折返し重合せ部Tを連続して設け、折返し重合せ部T同士の間隔Lpは5mm〜20mmであり、延伸率Exptが110%〜160%であることが好ましい。長手方向折返し重合せ部Lは、主に屋根材の谷部に沿うように長手方向に延伸させるため、折返し多層防水シート部203の横手方向の長さT
203を20mm〜40mm確保することが好ましい。
【0024】
換気シート貼付部27は、上段多層防水シート部201の上段折曲げ部202に近い側に設けられたもので、換気シート40の両端部が貼付される。換気シート貼付部27は、換気シート40の取付けを確実にするために、上段多層防水シート部201の両縁部の近傍に長手方向に連続して設けられる。なお、多層防水シート20に対する換気シート40の取付けは、例えばホットメルト型の接着剤や粘着剤を用いた貼付を用いると良いが、これに限定されるものではなく、熱シート融着や縫い付け若しくは機械的な係合であってもよい。機械的な係合には、面状に設けられた傘状の数mm程度の微細な突起部と、対抗面に設けられる曲率が数mm程度のループ状の係止部とを組み合わせたものが含まれる。
【0025】
防水シート開口部28は、上段多層防水シート部201の両側に位置する棟木装着用折り目部206と上段折曲げ部202との間に、長手方向に連続して設ける。防水シート開口部28の形状は、換気シート40で被覆された状態で換気性が確保できるように定めるのがよい。
図2(c)に示すように、防水シート開口部28は長手方向に二列形成してあり、開口率として、開口部の有効面積の天井面積に対する割合が1/1600以上を確保するように定めるとよい。なお、防水シート開口部28は長手方向に一列又は三列以上形成してあってもよい。
棟木当接防水シート部29は、上段多層防水シート部201の大略中央部に設けられるもので、その幅は、屋根に多層防水シート20を装着する場合に、当接する棟木の幅に相当している。
【0026】
本発明の開口部を有する棟支持材によれば、多層防水シート10を棟部用に適宜の形状に裁断しているので、横手方向折返し重合せ部Tを延伸することで、屋根材の凹凸に対応できると共に、長手方向折返し重合せ部Lを延伸することで、屋根材の段差への対応だけでなく、水返しの役目も果たす。また、作業者にとっても、横手方向への薄手のエラストマーシートの弾性とアルミ箔の保形性を有するシートのため、手に馴染みやすいため、平坦な屋根瓦の葺かれている領域と比較して、棟瓦部のように屋根傾斜の異なる領域の境界において類型的に生じやすい施工不良の発生が防止でき、施工時間の短縮につながる。
【0027】
続いて、本発明の開口部を有する棟支持材に用いられる多層防水シートを説明する。
図3は多層防水シートの構成図で、
図3(a)は多層防水シートについて
図3(b)のA−A方向の断面図、
図3(b)は多層防水シートの構成斜視図である。
【0028】
図において、多層防水シート10は、例えば
図3(b)に示すように、この多層防水シートの長手方向(Length direction)の途中に該長手方向と直交する横手方向(Transverse direction)にわたって横手方向折返し重合せ部Tを形成し、該長手方向にわたって長手方向折返し重合せ部Lを形成した二方向折り重ね状態としている。
【0029】
図3(a)、(b)に示すように、横手方向折返し重合せ部Tの間隔Lpは、屋根形状の凸凹形状の複雑さに対応するため、適宜に定める。また、横手方向折返し重合せ部Tが存在するため、多層防水シート10は、上段多層防水シート部101、上段折曲げ部102、折返し多層防水シート部103、下段折曲げ部104、下段多層防水シート部105、連結多層防水シート部106を有している。そして、折返し多層防水シート部103を展開すると、上段多層防水シート部101と下段多層防水シート部105との間隔が、折返し多層防水シート部103の長手方向長さL
103の二倍の範囲で調整できる。長手方向折返し重合せ部Lの間隔Lpに適合するように、長手側折返し多層防水シート部103の長手方向長さL
103と長手側連結多層防水シート部106の長手方向長さL
106が定められる。
【0030】
また、
図3(b)に示すように、長手方向折返し重合せ部Lが存在するため、多層防水シート10は、長手延伸側上段多層防水シート部121、長手延伸側上段折曲げ部122、長手延伸側折返し多層防水シート部123、長手延伸側下段折曲げ部124、長手延伸側下段多層防水シート部125を有している。そして、長手延伸側折返し多層防水シート部123を展開すると、長手延伸側上段多層防水シート部121と長手延伸側下段多層防水シート部125との間隔が、長手延伸側折返し多層防水シート部123の横手方向長さT
123の二倍の範囲で調整できる。
【0031】
横手方向折返し重合せ部Tは、屋根材の凹凸に馴染ませるように貼り付けるため、横手方向折返し重合せ部Tを連続して設け、横手方向折返し重合せ部T同士の間隔Lpと延伸率Exptは、主に被覆対象となる屋根材の凹凸に応じた適宜の価とすることが好ましい。ここで、横手方向折返し重合せ部Tの延伸率Exptは、例えば次式で定義することができる。
Expt=(Lp+2L
103)/Lp (1)
【0032】
長手方向折返し重合せ部Lは、主に被覆対象となる屋根材の段差のような凸凹形状に適合するように長手方向に延伸させるため、長手延伸側折返し多層防水シート部123を適宜の長さ確保することが好ましい。ここで、長手方向折返し重合せ部Lの延伸率Explは、例えば多層防水シート10の横手方向の長さT
allを用いて次式で定義することができる。
Expl=(T
all+2T
123)/T
all (2)
【0033】
本態様の多層防水シートによれば、当該二方向折り重ね状態の多層防水シートを用いているので、横手方向折返し重合せ部Tを延伸することで、屋根材の凹凸に対応できると共に、長手方向折返し重合せ部Lを延伸することで、屋根材の段差への対応だけでなく、屋根材の段差による隙間に対して水返しの役目も果たす。
【0034】
図4は、本発明の開口部を有する棟支持材に用いられる多層防水シートを説明する構成図である。図において、多層防水シート50は、焼付樹脂系塗料51、アルミ箔52、接着剤53、合成樹脂製フィルム54の四層構造になっている。ここで、焼付樹脂系塗料51は、耐久性と耐引裂性を考慮し、エポキシ系やアクリルシリコン系等の樹脂系塗料の塗布厚を2μm〜20μm、好ましくは3μm〜10μm、特に好ましくは5μm〜8μm程度を焼付け加工するのがよい。塗布厚が2μm未満であれば、十分な耐久性や耐食性の向上が得られない。塗布厚が20μmを超えると、塗布回数が増大して製造効率が低下する。焼付樹脂系塗料51は、多層防水シートの屋根装着時の表側に設けられるので、顔料を適切に選択することで多様な色彩や模様を選択できる。焼付樹脂系塗料51は、更にアルミ箔52の表面への加工性を考慮して定められる。焼付樹脂系塗料51には、エポキシ樹脂系塗料またはアクリル樹脂系塗料、または近年では住宅の長寿命化を図るため、耐久性が特に重要視されることから、シリコン系またはフッ素樹脂系塗料が現実的である。また、ポリウレタン系、塩化ゴム系、塩化ビニール系などでもよい。
【0035】
アルミ箔52は、作業者が手加工により成形するため、軟質アルミニウムであり、厚みが40μm〜120μm(好ましくは60μm)程度が好ましい。アルミ箔52の厚みは、貼り合せられる合成樹脂製フィルム54の厚さと熱収縮力、作業者が多層防水シートを屋根材の凹凸に対応できるように変形する場合の作業性、並びに多層防水シートを製造するために用いる織り機の能力により定まる。そして、アルミ箔52の厚みの下限側は、次の要件により定まる。
【0036】
(i)アルミ箔52と合成樹脂製フィルム54とを貼り合わせる工程における巻き巣の発生頻度。
(ii)アルミ箔52が合成樹脂製フィルム54を積層固定する力に対し、列理方向への熱収縮力が大きくなり、合成樹脂製フィルム54がアルミ箔52から剥離してしまうこと。
(iii)アルミ箔52が形状を保持する力に対し、列理方向への熱収縮力が大きくなり、アルミ箔52が表面側に丸まってしまうこと。
(iv)アルミ箔52が実際に施工される現場における、風力で変形しない保持力(保形性)。
【0037】
他方、アルミ箔の厚さの上限は、作業者が多層防水シートを手加工で屋根材の凹凸に対応できるように変形できる程度の低剛性が必要である。さらに、アルミ箔52と合成樹脂製フィルム54の厚さは、多層防水シートを製造するために用いる織り機で織ることができる剛性である必要がある。これら三要件を充足するアルミ箔52の厚さとしては、40μm〜120μmが好ましい。
【0038】
接着剤53は、アルミ箔52と合成樹脂製フィルム54の二層間の接着に用いられる。接着剤53により、二層間に起こる折り返した部位の応力を緩和でき、より折り曲げ加工性に富むシートが得られる。アルミ箔52と合成樹脂製フィルム54の二層間の接着には、ドライラミネーションと呼ばれる加工法で接着される。ドライラミネーションは、接着剤を有機溶剤で適当な粘度に希釈してフィルムに塗布し、乾燥後もう一方のフィルムと圧着して貼り合わせる方法である。接着剤53には、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤などがあり、耐熱性、耐薬品性、深絞り適性など、使用する接着剤の特性でラミネートフイルムの性能も決まる。
ドライラミネートには、有機溶剤で希釈する一般的な方法と、有機溶剤を使用しないで、加熱によって適当な粘度に調節後塗布する無溶剤タイプがある。また最近ではエマルジョンタイプ(水の中に接着剤を分散した水性タイプ)もある。
【0039】
合成樹脂製フィルム54には、例えばPET、ナイロン樹脂、塩化ビニールのような耐熱性が150℃以上ある合成樹脂であって、耐候性と耐引裂性の高い材料を用いるとよい。合成樹脂製フィルム54の厚さは、10μm〜80μmが好ましい。合成樹脂製フィルム54の厚さが80μmを超えると、次の理由により、製造効率が低下する。
(i)貼り合わせ工程における巻き巣が起こりやすくなる。
(ii)アルミ箔52が合成樹脂製フィルム54を積層固定する力(β)に対し、列理方向への熱収縮力(α)が大きくなり、合成樹脂製フィルム54がアルミ箔52から剥離してしまう。
(iii)アルミ箔52が形状を保持する力(γ)に対し、列理方向への熱収縮力(α)が大きくなり、アルミ箔52が表面側に丸まってしまう。
(iv)多層シート自体が硬くなるため、皺加工(プリーツ加工)の歩留まりと出来高が悪化する。
他方で、合成樹脂製フィルム54の厚さが10μm未満の場合は、開口部を有する棟支持材として25年から50年程度の長期間の使用において、耐候性と耐引裂性が確保できなくなる。本態様の多層防水シートによれば、作業者にとっては、横手方向への薄手の合成樹脂製フィルム54の弾性とアルミ箔52の保形性を有するシートのため、手に馴染みやすいため、施工不良が起き難く、施工時間の短縮につながる。
【0040】
合成樹脂製フィルム54とアルミ箔52の厚さ決定は、熱収縮性の条件を満たし、且つ織り機で織ることができ、且つ作業者が手加工で屋根材の凹凸に対応できることが好ましい。しかし、合成樹脂製フィルム54では耐久性が不足する場合には、多層防水シートの他の態様として、合成樹脂製フィルム54に代えて合成樹脂製シートを用いてもよい。合成樹脂製シートは、その厚さが80μm〜300μmが好ましい。合成樹脂製シートの厚さが300μmを超えると、開口部を有する棟支持材の製造効率や施工効率が低下する。合成樹脂製シートとしては、エラストマーシートや塩化ビニール製シート、ポリエチレン製シート、ポリスチレン製シート等の汎用樹脂を用いたシートを用いることができる。
他方で、合成樹脂製フィルムの場合には、接着層に代えて、アルミ箔52に直接合成樹脂製フィルムを熱融着することもできる。合成樹脂製シートの場合には、さらに樹脂系塗装層を設けてもよい。また、アルミ箔の一方の面には合成樹脂製シートを設け、他方の面には合成樹脂製フィルムの層を設けてもよい。
【0041】
表1は、開口部を有する棟支持材の各種態様を説明するものである。
【表1】
【0042】
次に、再び
図1と
図2(b)を参照して、換気シート40の構造の詳細を説明する。
換気シート40は、換気シート本体部41、棟瓦側開口設置部42、棟瓦側開口部422、多層防水シート取付部43、中間開口設置部44、中間開口部442、縫付ライン部46を有している。換気シート40には、ポリプロピレン、ポリエステルなどの繊維材料が用いられる。繊維材料としては、撥水性と耐久性のある繊維であればよい。換気シート40には、例えばエラストマーシートや樹脂製フィルムなどの撥水性と耐久性のあるものであればよく、また不織布や平織・綾織等の通常の布材料に用いられる織物構造でもよい。
換気シート本体部41は、多層防水シート20の防水シート開口部28を覆う横手方向の幅を有するもので、大略の幅として上段多層防水シート部201の両側に位置する上段折曲げ部202の間隔と同じ程度かやや狭くなっている。換気シート本体部41は、その厚みを多層防水シート20と比較して薄くするのがよいが、耐久性を確保する必要はあるので、耐候性と耐引裂性の高い繊維材料を用いるとよい。
【0043】
棟瓦側開口設置部42と中間開口設置部44は、換気シート本体部41の縁部と多層防水シート取付部43とで、断面ロの字状の筒部を形成している。棟瓦側開口設置部42は、換気シート40と多層防水シート20が棟木に装着された状態で、棟瓦の端部に近い外側の底部に位置する。中間開口設置部44は、換気シート40と多層防水シート20が棟木に装着された状態で、棟木や多層防水シート20に近い外側の底部に位置する。棟瓦側開口設置部42と中間開口設置部44は、換気シート40と多層防水シート20が棟木に装着された状態で、底部に位置することで、結露した水分が屋外に排出されることを促進すると共に、雨水の浸入を防止することや換気性能の確保を図っている。棟瓦側開口設置部42と中間開口設置部44は、それぞれ棟瓦側開口部422と中間開口部442を有している。棟瓦側開口部422と中間開口部442は、換気シート開口部として作用する。
【0044】
棟瓦側開口部422と中間開口部442は、開口部の有効面積の天井面積に対する割合が1/1600以上を確保するように、その開口部の形状と設置密度を定めるとよい。棟瓦側開口部422と中間開口部442は、例えば多層防水シート20の防水シート開口部28よりも小さな開口部が横手方向に二列又は三列設けられるとよい。開口部の孔を小さくすることで、雨水の浸入を防止することができる。開口部の孔を小さくすると、開口部の有効面積の天井面積に対する割合を確保するために、開口部の孔を横手方向に複数列設けると共に、その間隔を狭くして開口部の有効面積を確保するのが良い。なお、棟瓦側開口部422と中間開口部442は、開口部の有効面積の天井面積に対する割合を確保できる開口部形状のものが、一列設けられていてもよい。さらに、防水シート開口部28と棟瓦側開口部422又は中間開口部442の形状は、開口部の有効面積の天井面積に対する割合が1/1600以上を確保できると共に、荒天時における雨水の屋根裏への浸入を防止できるものであればよいので、両者の大小関係は適宜に定めてよい。
【0045】
例えば、防水シート開口部28と棟瓦側開口部422又は中間開口部442における開口部は、長手方向1メートル単位あたりの開口面積として、20〜400cm
2くらいがよく、さらに好ましくは60〜200cm
2くらいがよく、最も好ましくは80〜140cm
2くらいがよい。長手方向1メートル単位あたりの開口面積として、20cm
2以下では、棟の全長にわたって開口部を有する棟支持材を設置しても、開口部の有効面積の天井面積に対する割合が1/1600以上を確保するのが困難になる。他方、400cm
2以上では、開口部を有する棟支持材の開口部が大きくなりすぎて、荒天時の浸水防止が困難になる。
【0046】
換気棟の有効天井面積は、例えばフラット35(住宅金融支援機構)の融資基準に基づいて計算するとよい。当該融資基準では、『軒裏又は小屋裏の壁のうち屋外に面するものに吸気孔が設けられ、小屋裏のできるだけ頂部に排気筒その他の器具を用いて排気孔が設けられ、かつ、吸気孔の有効面積の天井面積に対する割合が900分の1以上であり、排気孔の有効面積の天井面積に対する割合が1600分の1以上であること。』と規定されている。
そこで、棟に対する開口部を有する棟支持材の設置は、例えば住宅金融支援機構の現在の基準による融資条件である、開口部の有効面積の天井面積に対する割合が1/1600以上を確保できればよく、従って開口部を有する棟支持材を棟の長さ方向に渡って全部に設置してもよく、また部分的に設置してもよい。部分的に開口部を有する棟支持材を棟に設置する場合は、開口部を有する棟支持材の設置されない棟部については、通常の換気機能のない防水シートを設置してよい。
【0047】
多層防水シート取付部43は、換気シート貼付部27に取り付けられる部位であり、本発明の開口部を有する棟支持材を屋根に装着した状態で、換気シート本体部41の横手方向両側の縁部に沿って位置している。ここでは、多層防水シート取付部43は、棟瓦側開口設置部42と中間開口設置部44を介して、換気シート本体部41の横手方向両側の縁部と二重の経路で接続するように、長手方向に連続して位置している。
縫付ライン部46は、例えば一枚の布状のシートの両端を折り畳んで換気シート40の両端縁部に棟瓦側開口設置部42と中間開口設置部44を設ける場合に、換気シート40の両端を折り返して換気シート本体部41の裏面に縫い付ける場合に現れる、縫い糸の線状の部位である。なお、換気シート40の両端を折り返して換気シート本体部41に固定する場合に、縫い糸に代えて、接着剤、粘着剤、熱融着、圧着等の手段を用いてもよい。
【0048】
さらに
図6と
図5(c)を参照して、換気シート40の構造の詳細を説明する。
図5(c)は、本発明の開口部を有する棟支持材を屋根に装着した状態を説明する要部断面図である。
図6は、本発明の開口部を有する棟支持材に用いられる換気シートの展開図である。
換気シート40は、さらに、換気シート折曲部424、426、444、446を有している。換気シート折曲部424は、換気シート本体部41と棟瓦側開口設置部42の間に位置する折り曲げ線である。換気シート折曲部426は、棟瓦側開口設置部42と多層防水シート取付部43の間に位置する折り曲げ線である。換気シート折曲部444は、多層防水シート取付部43と中間開口設置部44の間に位置する折り曲げ線である。換気シート折曲部446は、中間開口設置部44と換気シート本体部41の縫付ライン部46の間に位置する折り曲げ線である。換気シート折曲部424、426、444は山折となっている。これに対して、換気シート折曲部426は谷折りとなっており、換気シート本体部41に縫い付けるのが容易になっている。
なお、この実施の形態では、本発明の開口部を有する棟支持材を屋根に装着した状態で、換気シート本体部41の横手方向両側の縁部と多層防水シート取付部43とは、棟瓦側開口設置部42と中間開口設置部44の二重の経路で繋がっている。他の態様としては、棟瓦側開口設置部42と中間開口設置部44は、何れか一方のみでもよい。
【0049】
図5は、開口部を有する棟支持材の施工状態を説明する要部拡大断面図で、(a)は屋根の棟部近傍における開口部を有する棟支持材の納まり状態を説明する要部断面図、(b)は開口部を有する棟支持材の棟部近傍における作業態様を説明する要部断面図、(c)は開口部を有する棟支持材の効用を説明する要部断面図である。
図5(b)に示すように、開口部を有する棟支持材の裾部を棟木の上辺を軸にして下ろすことで、棟包の内側に納まることを示した図である。
図5(c)に示すように、開口部を有する棟支持材が雨水を遮断して、空気を通している状態を説明している。
【0050】
図5(a)において、施工対象となる建造物の屋根の棟部30には、棟木31、棟木支持材32、ルーフィング33、桟木34、屋根材35、棟包36、ビス37、木ズリ38、野地板39が用いられている。さらに、棟部30には、小屋裏開口部301も存在している。ここで、棟木31は、屋根の最上部に、桁行(けたゆき)方向に取り付ける横木をいう。棟木支持材32は、例えば発泡ポリスチレンのような樹脂製や専用金具が好ましく、棟木31を支持する棟木接触部321と、棟木31とルーフィング33までの間隙に設けられて支持する縦支持部322と、棟を境として両側に傾斜しているルーフィング33と接触する逆Y字形接触部323とを有している。ルーフィング33は、防水作用のあるシート状の部材で、屋根材35が瓦の場合にはアスファルト系シートが用いられる。
【0051】
桟木34は、屋根の瓦35をとめるときに使用する部材で、屋根材35を引掛けるため材に直交して間に挟む小角材である。屋根材35には、典型的には瓦やスレートを用いるが、瓦のような厚型の屋根材を用いるとよい。棟包36は、棟木31を被覆して防水を確実にするもので、耐久性の高い金属板や屋根材と同質素材が用いられる。ビス37は、棟包36を棟木31に固定するのに用いるもので、金属製の剛性が高く耐久性の高い材料が用いられる。木ズリ38は、桟木34の下に垂直に設置する幅20mm程度のテープ状のもので、桟木34に雨水が溜まらず、流れ落ちる。野地板39は、屋根瓦などを固定する屋根面の下地合板をいい、垂木の上に合板を張り、その上にルーフィング33を施工してある。
【0052】
このように構成された施工対象となる建造物の屋根の棟部近傍における、開口部を有する棟支持材の設置手順を次に説明する。
図7は、横手方向折返し重合せ部(T)と長手方向折返し重合せ部(L)が設けられた開口部を有する棟支持材の設置方法を説明する流れ図、
図8は棟の長手方向に開口部を有する棟支持材を敷設する場合を説明する斜視図である。まず、
図5(b)(i)に示すように、開口部を有する棟支持材の長手方向の中央部を、棟木31の上側面に屋根の棟方向と並行に設置する(ステップ100)。次に、開口部を有する棟支持材を棟木31にステープル等で仮止めする(ステップ102)。ステープル等を打つのは、多層防水シート20における棟木との当接部となる中央部分とするのがよい。
【0053】
次に、
図5(b)(ii)・(iii)に示すように、開口部を有する棟支持材の横手方向の裾部を、棟木31に接する棟木装着用折り目部206を起点として押し下げる(ステップ104)。この場合、長手方向折返し重合せ部Lを押し下げる程度としては、裾部24を棟包36の内側の墨打ち位置に納まる程度にするのがよい。
この開口部を有する棟支持材の形状変更時に、多層防水シート20の防水シート開口部28と、換気シート40の棟瓦側開口部422および中間開口部442とが換気できる状態に、換気シート40の棟瓦側開口設置部42と中間開口設置部44が展開する(ステップ106)。ここでは、多層防水シート20に装着された換気シート40の両端近傍部が袋状または三角形状に展開される。これに付随して、棟瓦側開口設置部42と中間開口設置部44は、折り畳んだ状態から其々が起き上がった姿勢となり、棟瓦側開口部422と中間開口部442とが多層防水シート20の防水シート開口部28と換気できる形状になる。
【0054】
そこで、開口部を有する棟支持材が棟木に装着された状態では、この開口部を有する棟支持材の形状変更により換気性能が確保される。即ち、換気シート40における棟木31と当接するシート固定部位412と多層防水シート取付部43との間隔(L
412−43)は、多層防水シート20における棟木当接防水シート部29と換気シート貼付部27との間隔(L
29−27)と大略同じ程度に構成されている。そこで、開口部を有する棟支持材の横手方向の裾部を、棟木31に接する棟木装着用折り目部206を起点として押し下げると、換気シート折曲部424、426、444、446が有効に作用して、換気シート本体部41の端部、棟瓦側開口設置部42、多層防水シート取付部43、中間開口設置部44および縫付ライン部46によって、断面ロの字形の管状通気路が換気シート本体部41の縫付ライン部46近傍の端部に形成される。
【0055】
次に、多層防水シート20を屋根材35に取り付けるために、粘着テープ25の剥離紙26を剥がして、屋根材35の山部352に対して、開口部を有する棟支持材を長手方向に接着する(ステップ108)。ここで、ステップ104の開口部を有する棟支持材の長手方向の裾部を棟木31に対して押し下げと、粘着テープ25の剥離紙26を剥がすこととは、時間的に前者と後者を同時並行的に行ってよく、また後者の剥離を先に行ってから前者の押し下げを行っても良い。多層防水シートの長手方向の裾部を棟木31に対して押し下げる際に、粘着テープ25の剥離紙26を剥がしながら押し下げることで、同時並行的に作業でき、施工の手順を簡略化できる。
【0056】
他方、屋根材35の谷部354に対しては、当該谷部形状に沿うように、多層防水シートを長手方向に延伸させて接着する(ステップ110)。多層防水シートと屋根材35の山部352や谷部354との接着には、粘着テープ25を用いるのがよい。開口部を有する棟支持材の裾部を屋根材35に取り付けることで、長手方向折返し重合せ部Lが展開される(ステップ112)。屋根材35として日本瓦のように一枚の瓦に山部352と谷部354が存在するものを用いると、隣接する瓦相互の設置において山部352と谷部354の端部を旨く位置合わせすることで、換気性能が充実していると共に、雨水に対する耐性の高い、強固に一体構造の屋根が構成できる(ステップ114)。このとき、
図8に示すように、多層防水シートは、屋根材35の山部352や谷部354の形状に適合させると共に、棟木31の形状に適合させる必要がある。そこで、多層防水シートの横手方向折返し重合せ部Tに関しては、棟木31のように平坦な場合では重ね合せた状態で装着し、屋根材35の山部352や谷部354のように凸凹形状の場合は重ね合せた状態から展開状態にして、装着する。このようにして、開口部を有する棟支持材の設置が完了する(ステップ116)。
【0057】
図7に示す開口部を有する棟支持材の設置手順によれば、
図5(b)に示すように、多層防水シートの長手方向の裾部を棟木31に対して押し下げた位置が、棟包36からはみ出ることはない。これにより、棟包内の墨打ちをした所定位置に納まり、裾部が所定位置に届かない場合は、長手方向折返し重合せ部Lを横手方向に伸ばして屋根材35に接着できる。そこで、従来の多層防水シートに長手方向折返し重合せ部Lが存在しない場合において、多層防水シートがはみ出た場合に必要とされていた開口部を有する棟支持材の折り曲げ作業が、本実施形態では当該開口部を有する棟支持材の折り曲げ作業をする必要がなくなる。
【0058】
長手方向折返し重合せ部Lは、折返し多層防水シート部203を折り重ねた状態から横手方向に伸ばすことによって、棟木31の高さが各種の建築物によって相違する場合にも、単一の開口部を有する棟支持材で対処できる範囲が広がる。また、長手方向折返し重合せ部Lは、建造物の屋根内部への浸水を防止する止面戸と同様の機能を発揮する水返し部としても使用できると共に、さらに粘着テープ25の装着幅を広げることにも使用できる。さらに、換気シート40の棟瓦側開口設置部42も、多層防水シート20の長手方向折返し重合せ部Lと同様の作用をする。棟瓦側開口設置部42には棟瓦側開口部422が設けてあるが、換気シート40の底部なので排水が容易であると共に、棟瓦側開口部422は防水シート開口部28と比較して個別の開口部の形状を小さくすることで、雨水の浸入を困難にしている。
【0059】
図7(ステップ100)のように、多層防水シート長手方向の中央部を、棟木31の上側面に長手方向に固定することで、作業者は両手を用いて、
図5(a)に図示するように、多層防水シートの両裾部を屋根材35に隙間なく貼り付けることができる。また、棟包36部の外側に開口部を有する棟支持材の裾部が出ることがなく、意匠性も良好である。
【0060】
続いて、本発明の開口部を有する棟支持材の第2の実施形態を説明する。
図9は、本発明の開口部を有する棟支持材の第2の実施形態を説明する構成図で、(a)は上面から見た平面図、(b)は
図9(a)のb−b方向から見た横手方向断面図、(c)は下面から見た底面図、(d)は
図9(a)d−d方向から見た側面図である。なお、
図9において、前記
図2と同一作用をするものには同一符号を付して説明を省略する。
図9の実施形態では、
図2の実施形態と比較すると、横手方向折返し重合せ部(T)のみが設けられた多層防水シートを用いる点で共通しており、多層防水シートには長手方向折返し重合せ部(L)を省略してある点で相違する。
【0061】
図10は、本発明の第2の実施形態の開口部を有する棟支持材の施工状態を説明する要部拡大断面図で、(a)は屋根の棟部近傍における開口部を有する棟支持材の納まり状態を説明する要部断面図、(b)は開口部を有する棟支持材の棟部近傍における作業態様を説明する要部断面図、(c)は開口部を有する棟支持材の効用を説明する要部断面図である。なお、
図10において、前記
図5と同一作用をするものには同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
このように構成された施工対象となる建造物の屋根の棟部近傍における、開口部を有する棟支持材の設置手順を次に説明する。
図11は、横手方向折返し重合せ部(T)が設けられた開口部を有する棟支持材の設置方法を説明する流れ図である。なお、
図11において、
図7と同様のステップとなる箇所では、
図7の対応するステップの説明を援用することとして、ここではその概略のみを説明する。
まず、
図10(b)(i)に示すように、開口部を有する棟支持材の長手方向の中央部を、棟木31の上側面に屋根の棟方向と並行に設置する(ステップ200)。次に、開口部を有する棟支持材を棟木31にステープル等で仮止めする(ステップ202)。ステープル等を打つのは、多層防水シート20における棟木との当接部となる中央部分とするのがよい。
【0063】
次に、
図10(b)(ii)・(iii)に示すように、開口部を有する棟支持材の横手方向の裾部を、棟木31に接する棟木装着用折り目部206を起点として押し下げる(ステップ204)。この開口部を有する棟支持材の形状変更時に、多層防水シート20の防水シート開口部28と、換気シート40の棟瓦側開口部422および中間開口部442とが換気できる状態に、換気シート40の棟瓦側開口設置部42と中間開口設置部44が展開する(ステップ206)。
【0064】
次に、多層防水シート20を屋根材35に取り付けるために、粘着テープ25の剥離紙26を剥がして、屋根材35の山部352に対して、開口部を有する棟支持材を長手方向に接着する(ステップ208)。他方、屋根材35の谷部354に対しては、当該谷部形状に沿うように、多層防水シートを長手方向に延伸させて接着する(ステップ210)。多層防水シートと屋根材35の山部352や谷部354との接着には、粘着テープ25を用いるのがよい。そして、開口部を有する棟支持材の裾部を屋根材35に取り付ける(ステップ212)。屋根材35として日本瓦のように一枚の瓦に山部352と谷部354が存在するものを用いると、隣接する瓦相互の設置において山部352と谷部354の端部を旨く位置合わせすることで、換気性能が充実していると共に、雨水に対する耐性の高い、強固に一体構造の屋根が構成できる(ステップ214)。このようにして、開口部を有する棟支持材の設置が完了する(ステップ216)。
【0065】
本発明の開口部を有する棟支持材の設置方法によれば、多層防水シートが折り曲げ加工性と耐久性も併せ持つので、開口部を有する棟支持材を施工後、裾部の下面に装着されている粘着テープ25の接着力とアルミ箔53の形保性によって、屋根材35への接着に大きく貢献する。例えば、仮に経年後に粘着テープ25の粘着力の低下があった場合でも、アルミ箔53の保形性によって、屋根材35から剥離する危険性が減るので、これに伴い漏水の危険性も減るため、結果的に建造物の高耐久化に寄与するものである。
【0066】
また、本発明の開口部を有する棟支持材によれば、棟木31や棟木支持材32に対して、次のような特徴がある。即ち、棟木支持材32は、従来のように防錆加工された金属製の場合には剛性に乏しく、風や積雪などで揺れたり曲がってしまう課題があった。しかし、棟木支持材として、棟木接触部321、縦支持部322、逆Y字形接触部323を有する樹脂製棟支持材32を用いることで、堅牢性を確保して、長期間使用しても倒れることが防止できる。さらに、開口部を有する棟支持材は多層防水シートの引張強さも有しているため、仮に棟木31や棟木支持材32が倒れようとしても、多層防水シートの保形性や粘着テープ25の粘着力によって姿勢が保持される。
【0067】
以上、添付図面を参照して、この発明の実施形態を説明したが、この発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々の形態に変更可能である。例えば、上記実施例においては、開口部を有する棟支持材の用途として屋根用防水シートを兼用する場合を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、雨水が建築物に浸入しやすい箇所における雨止めシール材として利用できる。
【課題】棟瓦や冠瓦を支える棟木支持具を堅固に固定できると共に、さらに換気機能が充実していて野地板の結露発生を防止できると共に、強風を伴う雨があっても屋根の内側への浸水防止対策が図れている開口部を有する棟支持材を提供すること。
【解決手段】多層防水シート20の長手方向と直交する横手方向にわたって設けられた横手方向折返し重合せ部(T)と、多層防水シート20の換気シート貼付部27よりも棟木当接部側に形成された防水シート開口部28とを有する多層防水シート20と、多層防水シート20の防水シート開口部28と換気できる状態で、多層防水シート20の長手方向に沿って両端部が取り付けられた換気シート40であって、換気シート40の多層防水シート取付部43と棟木側当接部412との間に設けられた換気シート開口部422、442とを有する換気シート40とを備える。