【文献】
Yassine Mofid et al,In-vivo imaging of skin under stress: potential of high-frequency (20 mhz) static 2-d elastography,IEEE TRANSACTIONS ON ULTRASONICS, FERROELECTRICS, AND FREQUENCY CONTROL,2006年 5月,vol.53, no.5,pp.925-935
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係り、
図1は超音波内視鏡システムの構成図、
図2は非吸引時における超音波探触子と胃壁との関係を模式的に示す説明図、
図3は吸引時における超音波探触子と胃壁との関係を模式的に示す説明図、
図4は先端部を示す斜視図、
図5は先端部を示す端面図である。
【0015】
図1に示す本実施形態の超音波内視鏡システム1は、例えば、胃及び十二指腸用の超音波内視鏡(以下、単に内視鏡ともいう)2を有する。この内視鏡2は、体腔内に挿入される細長の挿入部5と、この挿入部5の基端に設けられた操作部6と、この操作部6から延出するユニバーサルコード7と、を備えて構成されている。
【0016】
挿入部5は、先端硬質部10と、先端硬質部10の基端に位置する湾曲部11と、湾曲部11の基端に位置して操作部6に至る細径且つ長尺で可撓性を有する可撓管部12と、を備え、これらが先端側から順に連設されて要部が構成されている。
【0017】
図2〜
図5に示すように、先端硬質部10には、超音波による音響的画像情報を得るための超音波ユニット15が設けられている。本実施形態の超音波ユニット15はコンベックス型の超音波ユニットであり、この超音波ユニット15は、筐体であるノーズピース16と、超音波観察部としての超音波探触子17と、を有して構成されている。
【0018】
ノーズピース16は、例えば、凸型の部分円弧状をなす組織当接面16aを有し、この組織当接面16aは先端硬質部10の先端面10aよりも前方に突出されている(
図4,5参照)。
【0019】
超音波探触子17は、凸型の部分円弧状に配列された複数の超音波振動子17aと、これら超音波振動子17aの前方を覆う音響レンズ17bと、を有して構成されている(
図2,3参照)。この超音波探触子17は、ノーズピース16の組織当接面16aの略中央に配設されている(
図4,5参照)。また、超音波探触子17の音響レンズ17bは、ノーズピース16の組織当接面16aとともに先端硬質部10の先端面10aよりも前方に突出され、これにより、超音波探触子17は主として内視鏡挿入方向前方の生体組織等を走査することが可能となっている。
【0020】
また、例えば、
図4,5に示すように、先端硬質部10の先端面には、観察光学系を構成する観察窓20と、照明光学系を構成する一対の照明窓21a,21bと、穿刺針等の処置具が導出される吸引口としての吸引兼鉗子口22と、観察窓20に向けて空気や水等の流体を噴出する送気送水ノズル23と、先端硬質部10の前方(すなわち、超音波探触子17の突出方向)に向けて水等の流体を噴出する副送水チャンネル口24と、が設けられている。
【0021】
ここで、吸引兼鉗子口22には、流体管路としての機能を備えた処置具挿通チャンネル25の先端側が連通されている。この吸引兼鉗子口22から導出される処置具を超音波探触子17の走査領域As内に配置するとともに、超音波探触子17の近傍で良好な吸引力を発揮させるため、吸引兼鉗子口22は、その中心軸O1が、先端硬質部10の先端面上において、超音波探触子17の走査方向(中心線L1)の延長線上に位置するよう配置されている(
図5参照)。また、先端硬質部10の先端面10a上において、観察窓20、照明窓21a、及び送気送水ノズル23は、吸引兼鉗子口22の一側にまとめて配置され、照明窓21b及び副送水チャンネル口24は吸引兼鉗子口22の他側にまとめて配置されている。
【0022】
図1に示すように、操作部6には、湾曲部11を所望の方向に湾曲操作するためのアングルノブ30と、送気及び送水操作を行うための送気送水ボタン31と、吸引操作を行うための吸引ボタン32と、内視鏡2に関する各種機能の中から任意の機能を割り当てることが可能な複数のボタンスイッチ33と、体内に導入する処置具の入口となる処置具挿入口34と、が配設されている。ここで、本実施形態において、ボタンスイッチ33のうちの何れかは、例えば、超音波ユニット15を用いたエラストグラフィ観察の開始及び終了を指示するためのスイッチとして設定することが可能となっている。また、処置具挿入口34は、挿入部5の内部から延在する処置具挿通チャンネル25(
図2,3参照)に連通されている。
【0023】
ユニバーサルコード7の一端側は、折れ止め部40を介して操作部6の側部に連設されている。一方、ユニバーサルコード7の他端側である延出端には、スコープコネクタ部41が設けられている。このスコープコネクタ部41の端部には、図示しない光源装置に着脱自在な光源側コネクタ42が設けられている。光源側コネクタ42には、挿入部5側から延在するライトガイド42a及び送気管42bの基端部が突設されるとともに、図示しない電気接点が配設されている。また、スコープコネクタ部41の一側部には、超音波観測装置50に着脱自在な超音波コネクタ43と、図示しないビデオプロセッサに着脱自在な電気コネクタ44と、が並んで設けられている。また、スコープコネクタ部41の一側部において、超音波コネクタ43と電気コネクタ44との間には、吸引装置55に着脱自在な吸引口金47が設けられている。さらに、スコープコネクタ部41の他側部には、加圧管45a及び送水管45bの基端部が突設されるとともに、超音波内視鏡用送液装置(図示せず)に着脱自在な副送水口金46が設けられている。
【0024】
ここで、
図2,3に示すように、吸引口金47は、流体管路としての吸引チャンネル48を介して処置具挿通チャンネル25に連通されている。また、例えば、スコープコネクタ部41内において、吸引チャンネル48の中途には、第1流量調整部としての調整弁49が介装されている。この調整弁49は、例えば、常閉の電磁ソレノイド弁によって構成されている。そして、調整弁49は、任意のデューティ比によって開弁時間が制御されることにより、吸引チャンネル48及び処置具挿通チャンネル25を介して吸引兼鉗子口22に伝達する吸引用負圧を任意の状態に制御することが可能となっている。より具体的には、調整弁49は、例えば、開弁時間が任意のデューティ比によって周期的にデューティ制御されることにより、吸引兼鉗子口22に伝達される吸引用負圧を任意の2以上の状態に変化させることが可能となっている(例えば、任意の2つの状態に周期的に変化させることが可能となっている)。なお、この調整弁49は、スコープコネクタ部41内に代えて、操作部6内等に設けることも可能である。ここでいう吸引用負圧には、負圧がゼロ(大気圧)の状態も含まれる。
【0025】
図1〜3に示すように、本実施形態の吸引装置55は、吸引用負圧を発生するポンプユニット56と、ポンプユニット56に併設されるトラップ容器57と、を有して構成されている。ポンプユニット56は蠕動式ポンプ60を有し、この蠕動式ポンプ60は、負圧管61を介してトラップ容器57の上部に連通されている。また、トラップ容器57の底部には、負圧チューブ62の一端が臨まされ、この負圧チューブ62の他端は、吸引口金47を介して吸引チャンネル48に接続されている。この吸引装置55において、ポンプユニット56の蠕動式ポンプ60が駆動されると、この蠕動式ポンプで発生した負圧(吸引用負圧)は、負圧管61及びトラップ容器57を介して、吸引チャンネル48内に伝達される。すなわち、本実施形態において蠕動式ポンプ60は、負圧発生部としての機能を実現する。
【0026】
図1に示すように、超音波観測装置50は、超音波接続ケーブル51を介して、超音波コネクタ43に接続されている。この超音波観測装置50は、超音波探触子17を駆動制御するとともに、この駆動制御により超音波探触子17で受信した超音波エコー信号(超音波信号)に基づいて各種超音波画像を生成する。例えば、超音波観測装置50は、受信した超音波エコー信号の増幅を輝度に対応付けたBモード画像の生成等を行うことが可能となっている。
【0027】
また、例えば、ユーザ等によるボタンスイッチ33の操作等を通じてエラストグラフィ観察を開始する旨の指示がなされると、超音波観測装置50は、蠕動式ポンプ60を駆動させるとともに、調整弁49に対する制御を通じて、吸引チャンネル48に伝達される負圧の調整を行う。これにより、吸引チャンネル48及び処置具挿通チャンネル25を介して吸引兼鉗子口22に伝達される吸引用負圧が変化する。この吸引用負圧による吸引力は超音波探触子17の近傍において当該超音波探触子17の突出方向とは逆方向に生体組織を吸引するものであるため、吸引用負圧の作用により、超音波探触子17を移動させることなく、超音波探触子17が生体組織を押圧する押圧力が間接的に変化することとなる。その結果、超音波探触子17は異なる押圧状態における超音波信号を得ることが可能となる。そして、超音波観測装置50は、異なる押圧状態における超音波信号に基づいて生体組織の変形状態の変化(変位)を計測し、変位の計測結果に基づいてエラストグラフィ画像を生成する。
【0028】
具体例として、膵臓101の腫瘍/リンパ節転移等の検査を行うべく、胃壁100を介して膵臓101をエラストグラフィ観察する場合について
図2,3を参照して説明すると、先ず、観察に先立ち、体腔内に挿入された内視鏡2の先端硬質部10が、超音波探触子17を介して胃壁100及び膵臓101を所定の弱い押圧力にて押圧する位置に配置される。また、超音波観測装置50によって蠕動式ポンプ60が駆動されるとともに、調整弁49がデューティ制御される。これにより、例えば、吸引兼鉗子口22に吸引用負圧が伝達されていない状態(
図2参照)と、吸引兼鉗子口22に所定の吸引用負圧が伝達されている状態(
図3参照)と、が周期的に繰り返される。ここで、吸引兼鉗子口22に吸引用負圧が伝達されている状態では、その負圧によって超音波探触子17近傍の生体組織が引き寄せられる。その結果、超音波探触子17を胃壁100等に対して移動させることなく、超音波探触子17による胃壁100等に対する押圧力が増加される。すなわち、超音波探触子17による胃壁100等に対する押圧力が、吸引兼鉗子口22に吸引用負圧が伝達されていないときの押圧力(第1の押圧力)と、吸引兼鉗子口22に吸引用負圧が伝達されているときの押圧力(第1の押圧力よりも強い第2の押圧力)と、で周期的に変化する。そして、超音波観測装置50は、超音波探触子17による胃壁100等に対する押圧力が第1の押圧力と第2の押圧力との間で切り替わる毎に、超音波探触子17(超音波振動子17a)を駆動制御することにより、各押圧状態における超音波信号を取得する。
【0029】
このような実施形態によれば、先端硬質部10に配設された超音波探触子17と、超音波探触子17の近傍に設けられた吸引兼鉗子口22と、吸引兼鉗子口22に連通する処置具挿通チャンネル25及び吸引チャンネル48と、処置具挿通チャンネル25及び吸引チャンネル48を介して吸引兼鉗子口22に伝達する吸引用負圧を2以上の状態に可変調整する調整弁49と、を有することにより、先端部を大型化させることなく簡単な構成により、良好なエラストグラフィ画像を得ることができる。
【0030】
すなわち、吸引兼鉗子口22に伝達される吸引用負圧により超音波探触子17の近傍の生体組織を吸引することによって結果的に超音波探触子17に生体組織を押圧させる構成を採用することにより、体腔を機械的に押圧するための押圧機構等を内視鏡2の先端硬質部10に設けることなく簡単な構成により、良好なエラストグラフィ画像を得ることができる。特に、生体組織への押圧は吸引によるものであるため、超音波探触子17と生体組織との密着性を高めることができ、良好なエラストグラフィ画像を得ることができる。
【0031】
この場合において、超音波探触子17の走査方向(中心線L1)の延長線上に吸引兼鉗子口22を配置することにより、胃壁100等の生体組織を吸引用負圧によって音響レンズ17bに効率的に押し当てることができる。
【0032】
次に、
図6は本発明の第2の実施形態に係り、
図6は超音波内視鏡用吸引装置の概略構成図である。なお、本実施形態は、内視鏡2側に配設した第1の流量調整部としての調整弁49に代えて、第2の流量調整部としての調整弁70を超音波内視鏡用吸引装置55側に配設した点が、上述の第1の実施形態に対して主として異なる。その他、上述の第1の実施形態と同様な構成等については、同符号を付して適宜説明を省略する。
【0033】
図6に示すように、本実施形態の調整弁70は、例えば、ポンプユニット56において、負圧チューブ62の中途に介装されている。
【0034】
この調整弁70は、例えば、常閉の電磁ソレノイド弁によって構成されている。そして、調整弁70は、超音波観測装置50により、任意のデューティ比によって開弁時間が制御されることにより、吸引チャンネル48に伝達される吸引用負圧を任意の状態に制御することが可能となっている。より具体的には、調整弁70は、例えば、開弁時間が任意のデューティ比によって周期的にデューティ制御されることにより、吸引チャンネル48に伝達される吸引用負圧を任意の複数の状態に変化させることが可能となっている(例えば、任意の2つの状態に周期的に変化させることが可能となっている)。
【0035】
このような実施形態によれば、上述の第1の実施形態と略同様の作用効果を奏することができる。加えて、本実施形態では、超音波内視鏡用吸引装置55内に調整弁70を設けることにより、吸引兼鉗子口22等を備えた内視鏡2においては、何等設計変更等することなく、良好なエラストグラフィ画像を得ることができる。
【0036】
ここで、本実施形態において、超音波内視鏡用吸引装置55により流量調整を行うための構成としては、種々の変形が可能である。
【0037】
例えば、負圧チューブ62に調整弁70を介装する構成に代えて、
図7に示すように、負圧管61の中途に第2流量調整部としての調整弁70を介装することも可能である。
【0038】
また、例えば、蠕動式ポンプ60に代えて、
図8に示すように、ポンプユニット56を構成するポンプとして容積式ポンプ72を採用することも可能である。この場合、例えば、
図9に示すように、ポンプユニット56を構成する容積式ポンプ72は、そもそも、負圧の発生時に所定の脈動を伴うものであるため、調整弁を用いることなく、吸引チャンネル48に伝達する吸引用負圧を周期的に変化させることができる。すなわち、
図8に示す変形例では、容積式ポンプ72次隊が流体導出部及び第2流量調整部としての機能を実現する。なお、このような構成においては、容積式ポンプ72で発生した負圧が減衰することを抑制するため、トラップ容器57の容積等は可能な限り小さく設定されていることが望ましい。
【0039】
或いは、容積式ポンプ72に代えて、例えば、
図10に示すように、ポンプユニット56を構成するポンプとしてDCポンプ73を採用し、このDCポンプ73に電力供給する手段としてAC電源74を利用することで出力電圧を周期的に変化させ、調整弁を用いることなく、吸引チャンネル48に伝達する吸引用負圧を周期的に変化させることも可能である。さらにDCポンプ73とAC電源74の間に電源制御部を介在させ、AC電源の電圧周期を変調させてもよい。
【0040】
また、例えば、
図11に示すように、DCポンプ73の下流側において、負圧チューブ62の中途に第2流量調整部としてのリリーフ弁75を介装し、このリリーフ弁75の機械的な作用により、DCポンプ73から伝達される負圧を変化させることも可能である。すなわち、このような構成において、DCポンプ73は、例えば、所定の高負圧を発生するよう駆動される。そして、DCポンプ73と大気開放通路75aとの間における負圧チューブ62の内圧が減圧されて所定の高負圧以上となったとき、リリーフ弁75が機械的に大気開放通路75aを開放し、これにより、DCポンプ73と大気開放通路75aとの間における負圧チューブ62内の負圧が低下する。一方、大気開放通路75aの開放によって、DCポンプ73と大気開放通路75aとの間における負圧チューブ62の内圧が所定の低負圧未満となったとき、リリーフ弁75が機械的に大気開放通路75aを閉塞し、これにより、負圧チューブ62の負圧が再び上昇する。このような動作をリリーフ弁75が繰り返すことにより、吸引チャンネル48を流通する流体の流量が周期的に変化される。
【0041】
また、例えば、
図12に示すように、DCポンプ73の下流側において、負圧チューブ62の中途に第2流量調整部としての三方弁76を介装し、この三方弁76を超音波観測装置50等によって制御することにより、DCポンプ73で発生する負圧を変化させることも可能である。すなわち、このような構成において、超音波観測装置50は、三方弁76に対する制御を通じて、DCポンプ73を、負圧チューブ62の下流側と、大気開放通路76aと、に対して周期的に交互に接続する。これにより吸引チャンネル48に伝達される負圧が周期的に変化する。
【0042】
次に、
図13〜15は本発明の第3の実施形態に係り、
図13は先端部とキャップとを示す分解斜視図、
図14は非吸引時における超音波探触子と胃壁との関係を模式的に示す説明図、
図15は吸引時における超音波探触子と胃壁との関係を模式的に示す説明図である。なお、本実施形態は、内視鏡2の先端硬質部10にキャップ80を装着し、生体組織等の被検体に対する吸引効率の向上を図った点が上述の第1,第2の実施形態に対して主として異なる。その他、上述の第1,第2の実施形態と同様の構成については、同符号を付して適宜説明を省略する。
【0043】
図13〜
図15に示すように、本実施形態において、先端硬質部10の先端側外周には、筒状のキャップ80が嵌合等によって着脱自在に装着されている。より具体的には、このキャップ80は、硬質な樹脂等からなる円筒部材によって構成され、先端側が先端面10aよりも突出するよう基端側が先端硬質部10に外嵌されることにより、超音波探触子17及び吸引兼鉗子口22を囲繞するよう先端硬質部10に装着されている。そして、キャップ80は、超音波探触子17が被検体に当接された際に、被検体との間に負圧室80a(
図14,15参照)を形成し、吸引兼鉗子口22を介して導入された吸引用負圧を負圧室80a内に蓄えることが可能となっている。
【0044】
ここで、キャップ80の周壁には、負圧室80aの内外を連通するための微細なリーク孔81が穿設されている。なお、このリーク孔81は適宜省略することが可能である。
【0045】
このキャップを用いたエラストグラフィ観察の具体例として、膵臓101の腫瘍/リンパ節転移等の検査を行うべく、胃壁100を介して膵臓101をエラストグラフィ観察する場合について
図14,15を参照して説明すると、先ず、観察に先立ち、体腔内に挿入された内視鏡2の先端硬質部10が、超音波探触子17を介して胃壁100及び膵臓101を所定の弱い押圧力にて押圧する位置に配置される。これにより、キャップ80と胃壁100との間には、吸引兼鉗子口22に連通するとともに超音波探触子17を囲繞する負圧室80aが形成される。次いで、超音波観測装置50によって蠕動式ポンプ60が駆動されるとともに、調整弁49がデューティ制御される。これにより、例えば、吸引兼鉗子口22に吸引用負圧が伝達されていない状態(
図14参照)と、吸引兼鉗子口22に所定の吸引用負圧が伝達されている状態(
図15参照)と、が周期的に繰り返される。
【0046】
ここで、吸引兼鉗子口22に吸引用負圧が伝達されている状態では、負圧室80a内に吸引用負圧が蓄えられ、この蓄えられた負圧によって超音波探触子17近傍の生体組織が引き寄せられる。その結果、超音波探触子17を胃壁100等に対して移動させることなく、超音波探触子17による胃壁100等に対する押圧力が増加される。このとき、リーク孔81の作用により、負圧室80a内の負圧が急激に上昇することが防止され、超音波探触子17による胃壁100等に対する押圧力の急激な上昇が抑制される。一方、吸引兼鉗子口22を通じた負圧室80a内への吸引用負圧の導入が停止されると、負圧室80a内に蓄えられていた吸引用負圧は、リーク孔81を介して速やかに排出され、その結果、超音波探触子17による胃壁100等に対する押圧力が低下する。このように、超音波探触子17による胃壁100等に対する押圧力が、吸引兼鉗子口22に吸引用負圧が伝達されていないときの押圧力(第1の押圧力)と、吸引兼鉗子口22に吸引用負圧が伝達されているときの押圧力(第1の押圧力よりも強い第2の押圧力)と、で周期的に変化する。そして、超音波観測装置50は、超音波探触子17による胃壁100等に対する押圧力が第1の押圧力と第2の押圧力との間で切り替わる毎に、超音波探触子17(超音波振動子17a)を駆動制御することにより、各押圧状態における超音波信号を取得する。
【0047】
このような実施形態によれば、先端硬質部10にキャップ80を装着して被検体との間に負圧室80aを形成することにより、吸引用負圧を利用した押圧力の制御を効果的に実現することができる。
【0048】
ここで、本実施形態において、先端硬質部10に装着するキャップの構成としては、種々の変形が可能である。
【0049】
例えば、
図16,17に示すように、硬質な樹脂等によって構成された硬性筒状部83の先端に、柔軟な樹脂等によって構成された軟性筒状部84を連結してキャップ80を構成することも可能である。このような構成において、軟性筒状部84は、負圧室80a内の負圧状態に応じて弾性変形する。この弾性変形によってキャップ80の全長が伸縮され、その結果、先端硬質部10の挿入軸方向に対する進退動作を実現することが可能となっている。そして、負圧室80a内に吸引用負圧が導入されて軟性筒状部84が収縮された際には、この収縮動作に連動して先端硬質部10が胃壁100等の被検体側に移動するため、超音波探触子17によって胃壁100等をより効果的に押圧することができる。すなわち、吸引用負圧による胃壁100等の移動と、先端硬質部10の移動との相乗効果により、超音波探触子17によって胃壁100等を効果的に押圧することができる。この場合において、軟性筒状部84は弾性的に伸縮するため、そのダンパ効果により、超音波探触子17による押圧力の急激な変動を抑制することができる。加えて、本変形例のキャップ80は、軟性筒状部84が被検体に当接することにより、被検体に対する負担が少なく、且つ、高い密着性にて被検体に当接させることができる。
【0050】
或いは、例えば、
図18,19に示すように、硬質な樹脂等によって構成された硬性筒状部85の中途に、柔軟な樹脂等によって構成された軟性筒状部86を介装してキャップ80を構成することも可能である。このような構成において、軟性筒状部86は、負圧室80a内の負圧状態に応じて弾性変形する。この弾性変形によってキャップ80の全長が伸縮され、その結果、先端硬質部10の挿入軸方向に対する進退動作を実現することが可能となっている。そして負圧室80a内に吸引用負圧が導入されて軟性筒状部84が収縮された際には、この収縮動作に連動して先端硬質部10が胃壁100等の被検体側に移動するため、超音波探触子17によって胃壁100等をより効果的に押圧することができる。この場合において、軟性筒状部86は弾性的に伸縮するため、そのダンパ効果により、超音波探触子17による押圧力の急激な変動を抑制することができる。加えて、本変形例のキャップ80は、硬性筒状部85の先端によって被検体に対する位置決めを的確に行った上で、軟性筒状部86によって被検体に対する先端硬質部10の傾き等を吸収することができ、安定的な押圧動作を実現することができる。
【0051】
或いは、例えば、
図20,21に示すように、硬質な樹脂等によって構成された硬性筒状部87の基端に、柔軟な樹脂等によって構成された軟性筒状部88を連結してキャップ80を構成することも可能である。このような構成において、軟性筒状部88は、負圧室80a内の負圧状態に応じて弾性変形する。この弾性変形によってキャップ80の全長が伸縮され、その結果、先端硬質部10の挿入軸方向に対する進退動作を実現することができる。この場合において、軟性筒状部88は弾性的に伸縮するため、そのダンパ効果により、超音波探触子17による押圧力の急激な変動を抑制することができる。加えて、本変形例のキャップ80は、軟性筒状部88が先端硬質部10の外周に嵌合するものであるため、先端硬質部10に対するキャップ80の気密性を高めることができる。
【0052】
或いは、例えば、
図22,23に示すように、硬質な樹脂等によって構成された第1,第2の硬性筒状部90,91を径方向の外内に重畳配置し、これら第1,第2の硬性筒状部90,91間を柔軟な樹脂等によって構成された軟性筒状部92によって連結してキャップ80を構成することも可能である。このように構成すれば、被検体に当接する第1の硬性筒状部90によって第2の硬性筒状部91がガイドされることにより、吸引用負圧の導入時等に挿入軸のぶれを発生させることなく、超音波探触子17による押圧動作を効率的に実現することができる。
【0053】
或いは、例えば、
図24,25に示すように、硬質な樹脂等によって構成された硬性筒状部93の基端に、柔軟な樹脂によって構成され、先端硬質部10の径方向に多重に折り返し可能(折り畳み可能)な軟性筒状部94を連結してキャップ80を構成することも可能である。このように構成すれば、被検体に当接する硬性筒状部93によって軟性筒状部94に被覆された先端硬質部10の外周がガイドされることにより、吸引用負圧の導入時等に挿入軸のふれを発生させることなく、超音波探触子17による押圧動作を効率的に実現することができる。また、軟性筒状部94が先端硬質部10の外周に嵌合するものであるため、先端硬質部10に対するキャップ80の気密性を高めることができる。
【0054】
次に、
図26,27は本発明の第4の実施形態に係り、
図26は超音波内視鏡システムの構成を示すブロック図、
図27は弾性画像生成処理ルーチンを示すフローチャートである。なお、本実施形態は、上述した第1の実施形態において行われるエラストグラフィ観察を行う際の具体的な制御例について詳細に説明するものである。このため、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同符号を付して適宜省略する。なお、具体的な説明は省略するが、上述の第2,第3の実施形態に対しても同様の制御が適用可能であることは勿論である。
【0055】
超音波観測装置50は、送信回路121と、送受信切替回路124と、受信回路125と、整相加算回路126と、信号処理回路127と、弾性画像生成用変位計測回路128と、弾性率演算回路129と、吸引機構制御回路132と、を備えている。
【0056】
送信回路121は、送信波形生成回路122と、送信遅延回路123と、を含んでいる。
【0057】
送信波形生成回路122は、超音波探触子17を構成する各振動素子17aを駆動するための信号波形を生成して出力するものである。
【0058】
送信遅延回路123は、超音波探触子17を構成する各振動素子17aの駆動タイミングを調節するものである。これにより、超音波探触子17から送信される超音波ビームの焦点と方向が制御され、超音波を所望の位置(深度)に収束させることができる。
【0059】
送受信切替回路124は、例えば、超音波の送受波を行うための複数の振動素子を順次選択するマルチプレクサを含み、送信回路121からの駆動信号を超音波探触子17へ送信すると共に、超音波探触子17からの超音波信号(エコー信号)を受信回路125へ送信する。
【0060】
受信回路125は、送受信切替回路124からの超音波信号を受信して、例えば増幅やデジタル信号への変換などの処理を行う。
【0061】
このように、本実施形態において、送信回路121(送信波形生成回路122及び送信遅延回路123)、送受信切替回路124、及び、受信回路125は、探触子制御部としての機能を実現する。
【0062】
整相加算回路126は、超音波信号を遅延させて位相を合わせてから加算する。
【0063】
信号処理回路127は、超音波診断モードにおいては、整相加算回路126からの超音波信号に座標変換や補間処理を行って、超音波画像を表示用画像として作成する。さらに、信号処理回路127は、弾性画像観察モード(エラストグラフィ画像観察モード)においては、弾性率演算回路29からの弾性画像を表示用画像として作成するか、または、弾性画像を超音波画像に重畳して表示用画像を作成する。
【0064】
弾性画像生成用変位計測回路128は、超音波信号に基づき被検体の画像用変位量(被検体の弾性画像を生成するための変位量)を計測する弾性画像用変位計測部である。
【0065】
弾性率演算回路129は、弾性画像生成用変位計測回路128により計測された画像用変位量に基づき、被検体の弾性率を演算する弾性率演算部である。この弾性率演算回路129は、被検体の座標毎に弾性率を演算するために、演算結果は2次元座標上に弾性率が分布する弾性画像となる。
【0066】
このように、本実施形態において、整相加算回路126、信号処理回路127、弾性画像生成用変位計測回路128、及び、弾性率演算回路129は、弾性画像生成部としての機能を実現する。 吸引機構制御回路132は、例えば、ユーザ等によるボタンスイッチ33の操作等を通じてエラストグラフィ観察を開始する旨の指示がなされると(すなわち、弾性画像観察モードが選択されると)、被検体に対する自動加圧(減圧)制御処理を行う。すなわち、吸引機構制御回路132は、所定の周期毎に、所定のデューティ比で調整弁49を開弁制御し、この開弁制御を通じて吸引兼鉗子口22に伝達する吸引用負圧を制御することにより、超音波探触子17が被検体を押圧する押圧状態を間接的に変化させる。このような調整弁49に対する制御は、被検体の拍動等の自発変位に同期させて行うことが望ましく、例えば、吸引用負圧の伝達によって超音波探触子17による被検体の押圧力を増加させる本実施形態においては、被検体の自発変位が最小となるタイミングで吸引用負圧が最も小さくなるよう(或いは、吸引用負圧がゼロとなるよう)制御されることが望ましい。
【0067】
このように、本実施形態において、吸引機構制御回路132は、押圧制御部としての機能を実現する。
【0068】
モニタ140は、信号処理回路27からの表示用画像を表示する。
【0069】
次に、
図27は、弾性画像生成処理ルーチンを示すフローチャートである。
【0070】
超音波内視鏡システム1が弾性画像観察モードに設定されると、
図27に示す処理が開始される。
【0071】
するとまず、吸引機構制御回路132における自動加圧制御処理を起動する(ステップS1)。
【0072】
そして、超音波探触子17から超音波の送受信を行い(ステップS2)、診断対象となる被検体の変位量(画像用変位量)を弾性画像生成用変位計測回路128により計測する(ステップS3)。
【0073】
次に、ステップS3で計測された画像用変位量に基づいて、弾性率演算回路129は、被検体の弾性率を、被検体の座標毎に演算する(ステップS4)。
【0074】
演算された弾性率は、座標と共に信号処理回路127へ送信されて、表示用の弾性画像として構成される(ステップS5)。この弾性画像は、必要に応じてさらに超音波画像と重畳されて表示用画像が作成され、モニタ140に表示される。
【0075】
その後、処理を終了するか否かを判定し(ステップS6)、まだ終了しない場合には、次のフレームの弾性画像を生成するために、ステップS2へ行って上述したような処理を繰り返して行う。
【0076】
一方、処理を終了すると判定された場合には、吸引機構制御回路132による自動加圧制御処理を終了させてから(ステップS7)、この弾性画像生成処理を終了する。
【0077】
ここで、詳細な説明は省略するが、例えば、
図28に示すように、上述の第2の実施形態で示した構成に対し、本実施形態を適用することが可能であることは勿論である。
【0078】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。例えば、上述の実施形態においては、膵臓101の腫瘍/リンパ節転移等の検査を行うべく超音波内視鏡システム1によるエラストグラフィ観察を行う場合の一例について説明したが、本発明を用いたエラストグラフィ観察は、慢性膵炎、肝臓の腫瘍/リンパ節転移、肝硬変、縦隔(食道)の腫瘍/リンパ節転移、前立腺の腫瘍/リンパ節転移等の各種検査にも適用が可能である。
【0079】
また、上述の実施形態においては、吸引兼鉗子口を用いて吸引用負圧を超音波探触子の近傍に伝達する構成の一例について示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、吸引用負圧を伝達する開口部及び当該開口部に対する負圧伝達経路等については、種々の変形が可能であることは勿論である。
【0080】
また、上述の各実施形態及び各変形例の構成を適宜組み合わせてもよいことは勿論である。
【0081】
本出願は、2014年10月28日に日本国に出願された特願2014−219676号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲に引用されるものとする。
先端硬質部10に配設された超音波探触子17と、超音波探触子17の近傍に設けられた吸引兼鉗子口22と、吸引兼鉗子口22に連通する処置具挿通チャンネル25及び負圧チャンネル48と、処置具挿通チャンネル25及び負圧チャンネル48を介して吸引兼鉗子口22に伝達する吸引用負圧を2以上の状態に可変調整する制御弁49と、を有して超音波内視鏡2を構成する。