【実施例】
【0030】
図1は、本実施例の油分濃度計測装置10を構成要素として有する工業用洗浄機1の概略の構成を示している。工業用洗浄機1は、ワークに付着した油分を除去するための装置であり、油分濃度計測装置10の他に、第1洗浄槽11、第2洗浄槽12、蒸気洗浄・乾燥槽13、一時貯留槽14、蒸留槽15、熱交換器16、エゼクタ17、再生後洗浄液貯留槽18、試料セル洗浄液槽19を有する。
図1中に示した太い実線は液体の流路を、太い破線は気体の流路を、細い直線の破線は電気信号の経路を、それぞれ示している。
【0031】
(1) 工業用洗浄機1の全体構成及び動作
本実施例の油分濃度計測装置10について説明する前に、まず、工業用洗浄機1の全体構成及びワークの洗浄の動作を説明する。第1洗浄槽11及び第2洗浄槽12には、槽内に貯留される洗浄液に超音波振動を付与する超音波振動子が設けられている。また、超音波によるキャビテーションを生じ易くするために、第1洗浄槽11及び第2洗浄槽12内は真空ポンプにより減圧され、洗浄液の脱気が行われる。これら第1洗浄槽11及び第2洗浄槽12に洗浄液を貯留したうえで、ワークを洗浄液に浸漬し、超音波振動を付与することにより、ワークが洗浄される。ここで、後述の理由により、第1洗浄槽11内の洗浄液よりも第2洗浄槽12内の洗浄液の方が油分の含有量が少なくなることから、まず第1洗浄槽11でワークを洗浄し、次にそのワークを第2洗浄槽12で洗浄することにより、洗浄液中の油分がワークに再付着することを最小限に抑えることができる。
【0032】
第2洗浄槽12には、後述のように蒸留槽15によって油分が除去された再生後洗浄液が再生後洗浄液貯留槽18から流入する。第1洗浄槽11と第2洗浄槽12は第2オーバーフロー管122で接続されている。第2オーバーフロー管122は、第1洗浄槽11との接続位置よりも第2洗浄槽12との接続位置の方が高くなっており、再生後洗浄液の流入によって第2洗浄槽12内の洗浄液の液面が後者の接続位置よりも高くなると、第2洗浄槽12内の洗浄液の一部が自然に第1洗浄槽11に移動する。従って、前述のように、第1洗浄槽11内の洗浄液よりも第2洗浄槽12内の洗浄液の方が油分の含有量が少なくなる。また、第1洗浄槽11と一時貯留槽14は第1オーバーフロー管112で接続されており、第2洗浄槽12からの洗浄液の流入によって第1洗浄槽11内の洗浄液の液面が第1オーバーフロー管112の接続位置よりも高くなると、第1洗浄槽11中の洗浄液の一部が自然に第1オーバーフロー管112を通って一時貯留槽14に移動する。
【0033】
蒸留槽15にはフロート弁151が設けられており、蒸留槽15内の液体が蒸留により所定量以下になると、洗浄液が一時貯留槽14から蒸留槽15内に導入される。蒸留槽15内にはヒータ(図示せず)により加熱されると共に、エゼクタ17により減圧される。これにより、洗浄液は油分を液体として残して蒸発し、熱交換機16で凝縮されたうえで、再生後洗浄液貯留槽18に貯留され、前述のように第2洗浄槽12に返送される。
【0034】
蒸気洗浄・乾燥槽13は、第2洗浄槽12で洗浄されたワークに対して上述のように蒸気洗浄及び乾燥を行うための槽である。蒸気洗浄に使用された蒸気、及びワークの表面に残留していたものが除去された洗浄液は、第2洗浄槽12に返送される。また、第1洗浄槽11及び第2洗浄槽12の減圧や洗浄液の蒸発により生じた気体は、一時貯留槽14内の使用済み洗浄液に回収される。なお、試料セル洗浄液槽19は、後述の試料セル103を洗浄するための洗浄液(油分濃度計測の対象である洗浄液とは異なる)が貯留される槽である。
【0035】
第1洗浄槽11は、洗浄液を槽内から取り出し、フィルタを通して槽内に戻す第1循環濾過系111を有する。第2洗浄槽12にも同様の第2循環濾過系121が設けられている。これら循環濾過系は、粒径10μm程度以上のパーティクルを除去するものであって、油分を除去することができない。
【0036】
(2) 本実施例の油分濃度計測装置10の構成
次に、工業用洗浄機1中の油分濃度計測装置10の構成について詳細に説明する。油分濃度計測装置10は、後述のように第1洗浄槽11や第2洗浄槽12等の槽と接続される流路101と、流路101中に設けられた送液ポンプ102と、流路101中の送液ポンプ102よりも下流側に設けられた試料セル103と、リファレンス測定用のリファレンスセル1031と、光照射部104と、光検出部105と、後述の計算等を行うパーソナルコンピュータ(PC)106を有する。
【0037】
流路101の流入部1011は、第1中継管113を介して第1洗浄槽11に接続されていると共に、第2中継管123を介して第2洗浄槽12に接続されている。第1中継管113には第1中継開閉弁11Vが、第2中継管123には第2中継開閉弁12Vが、それぞれ設けられている。また、流路101の流入部1011は、蒸留槽15及び再生後洗浄液貯留槽18にも接続されており、それぞれ、蒸留槽15には蒸留槽開閉弁15Vが、再生後洗浄液貯留槽18には再生後洗浄液貯留槽開閉弁18Vが設けられている。
【0038】
流路101の流出部1012は、一時貯留槽14に接続されている。従って、油分濃度計測装置10において測定に用いられた洗浄液は、一時貯留槽14を経て蒸留槽15により蒸留され、最終的には油分が除去された状態で第2洗浄槽12に返送される。なお、測定に用いられた洗浄液を流出部1012から、その洗浄液が収容されていた槽に直接返送するようにしてもよい。
【0039】
試料セル103及びリファレンスセル1031はいずれも、紫外線の吸収が少ない石英製のセルである。流路101には、通常の測定時には試料セル103が接続され、リファレンスを測定する時にはリファレンスセル1031が接続される。リファレンスセル1031には、油分を含まない洗浄液が封入されている。光照射部104は、当該紫外連続光を試料セル103内の洗浄液(測定対象液)に照射するものであり、当該紫外連続光を生成する光源と、当該光源で生成された紫外連続光を入射端から入力して出射端から試料セル103内の洗浄液に照射する光ファイバを有する。光検出部105は、当該紫外連続光のうち試料セル103内の洗浄液を透過した透過光の強度を波長毎に検出するものであり、上述の透過光量測定手段に該当する。この光検出部105は、透過光を分光する分光器と、当該透過光を入射端から入力して出射端から分光器に出射する光ファイバと、分光器で検出した波長毎の透過光量の強度をデジタル信号に変換する信号変換部を有する。
【0040】
PC106は、
図2に示すように、吸光度算出部1061、油分濃度決定方法選択部1062、低濃度用油分濃度決定部1063、高濃度用油分濃度決定部1064、リファレンスデータ記録部1065、検量線記録部1066、基準値記録部1067、条件入力部1068、及び測定制御部1069を有する。これら各部のうち吸光度算出部1061、低濃度用油分濃度決定部1063、高濃度用油分濃度決定部1064、油分濃度決定部1064の詳細については、本実施例の油分濃度計測装置10の動作と共に後述する。リファレンスデータ記録部1065には、油分を含有しない洗浄剤について予め測定された透過光量のスペクトルのデータ(リファレンスデータ)が記録されている。検量線記録部1066には、ワークの加工に使用し得る油分のグループ毎に、油分の濃度が既知である試料を用いて予め測定したデータに基づいて作成された第1検量線及び第2検量線が収容されている。第1検量線及び第2検量線の例は後述する。基準値記録部1067には、油分濃度決定部1064において使用する基準値のデータが収容されている。条件入力部1068は、測定者がキーボードやマウス等の入力デバイスを用いて後述の測定条件を入力するものである。測定制御部1069は、光照射部104における光源からの光の照射の開始及び終了や、上記各部の処理の開始及び終了等の制御を行う。
【0041】
(3) 本実施例の油分濃度計測装置10の動作
図3のフローチャートを用いて、本実施例の油分濃度計測装置10の動作を説明する。以下では一例として、第1洗浄槽11に貯留されている洗浄液を測定する場合について説明するが、第2洗浄槽12、蒸留槽15、再生後洗浄液貯留槽18に貯留されている液を測定する場合も同様である。
【0042】
まず、測定者が条件入力部1068において所定の測定条件を入力したうえで、測定開始の指示を入力することにより、測定が開始される。ここで入力される測定条件は、測定対象の洗浄液を用いて洗浄されるワークに付着していた加工油が属するグループを特定するための、加工油の用途に関する情報であって、例えばワークの材料(アルミニウム等の軟らかい材料か、ステンレス鋼等の硬い材料か)や加工方法(切削加工か、打ち抜き・プレス加工か)が挙げられる。あるいは、ワークに付着していた加工油のメーカ及び型番が分かっている場合には、それらメーカ及び型番を入力するようにしてもよい。
【0043】
測定が開始されると、まず、所定の測定開始操作を行う(ステップS1)。測定開始操作には、条件入力部1068で選択された第1洗浄槽11に接続された第1中継開閉弁11Vを開放すること等がある。これにより、第1洗浄槽11内の洗浄液の一部が、第1中継管113及び流路101を通って試料セル103に到達する。なお、第1洗浄槽11における洗浄液の容量が120Lであるのに対して、流路101における洗浄液の流量は約0.1L/分に過ぎないうえに、最終的には蒸留を経て洗浄液が第1洗浄槽11に返送されるため、この測定が洗浄に与える影響は皆無である。
【0044】
光照射部104は試料セル103内の洗浄液に対して紫外連続光を照射し、光検出部105は洗浄液を透過した透過光を検出する(ステップS2)。光検出部105では、透過光を分光し、波長λ毎の透過光量の強度、すなわち透過光量のスペクトルI(λ)をデジタル信号に変換する。
【0045】
次に、透過光量のスペクトルI(λ)のデジタル信号がPC106に入力され、吸光度算出部1061において、吸光度のスペクトルが算出される(ステップS3)。吸光度算出部1061では、リファレンスデータ記録部1065から、油分を含有しない洗浄液における透過光量のスペクトルのデータI
0(λ)を取得し、測定対象液である洗浄液の吸光度A(λ)を式
A(λ)=log
10(I
0(λ)/I(λ))
により求める。
【0046】
続いて、ステップS4において油分濃度決定方法選択部1062は、得られた洗浄液の吸光度A(λ)のうち、油分を含まない洗浄液を用いて予め測定された透過光量のスペクトルのピーク波長(所定波長)λ
pにおける吸光度A(λ
p)が所定値以下であるか否かを求める。そして、この吸光度A(λ
p)が所定値以下である場合にはステップS51に進み、所定値よりも大きい場合にはステップS52に進む。
【0047】
ステップS51に進んだ場合には、低濃度用油分濃度決定部1063により、以下のように油分の濃度を決定する。低濃度用油分濃度決定部1063は検量線選択部を有しており、まず、当該検量線選択部が検量線記録部1066から条件入力部1068で入力された条件に合致する油分のグループに対応した第1検量線のデータを取得する。第1検量線は、上記所定波長λ
pにおける、油分を含む洗浄液の吸光度と油分の濃度の関係を示している。低濃度用油分濃度決定部1063は、当該所定波長λ
pにおける測定対象液である洗浄液の吸光度A(λ
p)の値に対応する、第1検量線における濃度の値を当該測定対象液の濃度値として決定する。
【0048】
ステップS52に進んだ場合には、高濃度用油分濃度決定部1064により、以下のように油分の濃度を決定する。高濃度用油分濃度決定部1064は低濃度用油分濃度決定部1063と同様の検量線選択部を有しており、まず、当該検量線選択部が検量線記録部1066から、条件入力部1068で入力された条件に合致する油分のグループに対応した第2検量線のデータを取得する。第2検量線は、吸光度が所定の値(所定吸光度)となる波長と油分の濃度の関係を示している。ここで所定吸光度は、測定精度を勘案して吸光度スペクトルから適宜定められる。高濃度用油分濃度決定部1064は、測定対象液である洗浄液の吸光度A(λ)が当該所定吸光度になるときの波長の値に対応する、第2検量線における濃度の値を当該測定対象液の濃度値として決定する。
【0049】
ステップS51又はステップS52を経た後、ステップS6において、条件入力部1068から測定操作の終了を指示する測定終了信号が入力されているか否かを確認する。当該信号が入力されていなければステップS2に戻り、当該信号が入力されていれば、第1中継開閉弁11Vの閉鎖等の終了動作を行った(ステップS7)うえで測定を終了する。こうして、当該測定終了信号が入力されるまで、試料の濃度の測定が繰り返し行われる。
【0050】
第1検量線は1つの油分のグループに対して、1種類ずつのみ用意してもよいが、値の異なる複数の所定波長に対して1つずつ、合わせて複数種用意してもよい。この場合、低濃度用油分濃度決定部1063は、複数の所定波長においてそれぞれ、測定で得られた吸光度と当該所定波長に対応する濃度値を第1検量線から1つずつ求め、得られた複数の濃度値の平均値を当該測定対象液の濃度値として決定する。第2検量線においても同様に、1つの油分のグループに対して、1種類ずつのみ用意してもよいが、値の異なる複数の所定吸光度に対して1つずつ、合わせて複数種用意してもよい。この場合、高濃度用油分濃度決定部1064は、複数の所定吸光度においてそれぞれ、測定で得られた吸光度A(λ)が当該所定吸光度になるときの波長の値に対応する濃度値を第2検量線から1つずつ求め、得られた複数の濃度値の平均値を当該測定対象液の濃度値として決定する。
【0051】
ここまでは、第1洗浄槽11内の洗浄液における油分の濃度を測定する方法として説明したが、工業用洗浄機1内に設けた各弁を操作して流路101内に流入する液を切り替えることにより、第2洗浄槽12、蒸留槽15、あるいは再生後洗浄液貯留槽18に貯留された液における油分の濃度も同様の方法により測定することができる。第1洗浄槽11及び第2洗浄槽12の油分を連続的に測定することにより、ワークの洗浄の品質を管理することができる。具体的には例えば、第1洗浄槽11又は第2洗浄槽12にワークを投入した後、所定の時間が経過しても油分の濃度が安定せずに上昇する場合には、洗浄能力が低下することから、第1洗浄槽11又は第2洗浄槽12における洗浄時間を長くする。他の例として、再生後洗浄液貯留槽18中の再生液における油分濃度が所定の上限値に近づいた場合には、蒸留の能力が低下していることが想定されるため、蒸留槽15内の残液の煮詰め・排油を行うことが挙げられる。また、この再生液中の油分濃度の上昇速度が所定値を超える場合には、蒸留の際の温度が高すぎることが想定されるため、当該温度を低下させる。あるいは、蒸留槽15内の残液における油分の濃度も同様の方法により測定することができ、それにより得られる油分の濃度に基づいて、煮詰め・排油のタイミングを判定してもよい。
【0052】
(4) 吸光度、並びに第1検量線及び第2検量線のデータの例
表1に示した10種類の油分についてそれぞれ、同じ成分の洗浄液に異なる濃度で混合した複数の試料を作製し、本実施例の油分濃度計測装置により吸光度のスペクトルを取得したうえで第1検量線及び第2検量線を作成した。これら10種類の油分は表1に示す4つのグループに分類される。第1グループは、加工対象物がアルミニウム等の鉄よりも軟らかい金属に限定される切削油、第2グループは、加工対象物が鉄やステンレス鋼等の硬い金属であってもよい切削油、第3グループは、ステンレス鋼等の硬い金属に深い穴を空ける際に用いる切削油であると共に、プレス・打抜き油にも使用されるもの、第4グループは、第3グループよりも添加剤の添加量が多いプレス・打抜き油である。
【表1】
【0053】
図4〜
図7に、各グループにつき、表1に二重丸印を付した代表的な1種類の油分を含有する試料により得られた透過光量のスペクトル(a)及び吸光度のスペクトル(b)を示す。透過光量(吸光度)のスペクトルの測定は、各試料について約100ppm〜約50000ppmの範囲内で油分の濃度を変えながら多数回行ったが、
図4〜
図7ではそれぞれ、代表的な5つの濃度におけるスペクトルを示した。また、
図4〜
図7の各図の(a)及び(b)では代表的な4種類の油分の試料についてのみ示したが、他の6種類の油分の試料に関しても同様に透過光量のスペクトル及び吸光度のスペクトルを求めた。吸光度は、いずれの試料においても、波長290〜330nm付近にピークが見られる。
【0054】
次に、得られた吸光度のスペクトルに基づいて、グループ毎に第1検量線及び第2検量線を作成した。得られた各グループの第1検量線を
図4〜
図7の(c)に、第2検量線を
図4〜
図7の(d)に、それぞれ示す。各グループの検量線は、
図4〜
図7の(a)及び(b)に示した代表的な油分を含有する試料だけではなく、他の油分を含有する試料から得られた吸光度のスペクトルも用いて作成した。第1検量線は、グループ1では5000ppm以下、グループ2及び4では2600ppm以下、グループ3では3500ppm以下の濃度範囲で、所定波長における吸光度の値と濃度の関係を関数で近似することにより作成した。ここで第1検量線は、グループ1〜3については波長290nm及び295nm、グループ4については波長330nm及び335nmという、各グループ毎に2つの所定波長について作成した。ここでグループ4のみ波長290nm及び295nmにおける吸光度の値を使用しない理由は、濃度が約2000ppmであるときの吸光度が高く、透過光量が非常に低いため誤差が大きいと判断されるからである。また、近似する関数は、原則として1次関数としたが、グループ1では誤差が大きいため2次関数とした。
【0055】
第2検量線は、グループ1〜4のそれぞれについて定めた所定吸光度における波長と濃度の関係を関数で近似することにより作成した。所定吸光度は、濃度が約10000ppm以上の試料の吸光度を必ず含み、できるだけ濃度が約2000ppmの試料の吸光度を含むように定め、グループ1では0.5及び0.6、グループ2では0.9及び1.2、グループ3では1.6及び1.7、グループ4では1.8及び2.0とした。近似する関数は指数関数とした。
【0056】
以上のように、濃度が既知の試料を用いて第1検量線及び第2検量線を定めることができ、これら検量線を用いて、濃度が未知である試料に対する測定を行うことができる。その際、前述のステップS4で用いる吸光度A(λ
p)の所定値は、グループ1では4000ppm、グループ2及び4では2000ppm、グループ3では3000ppmとする。
【0057】
得られた第1検量線及び第2検量線を用いて、本発明の方法により測定液中の油分の濃度を計測する実験を行った。この実験においても、洗浄液は上記NS100を用い、添加する油分には上掲の表1に示す10種類のものを用いた。この実験では、洗浄液及び油分を秤量したうえで両者を混合することにより、濃度が既知(この濃度を「計算値」と呼ぶ)である試料を作製し、計算値と計測値の比較を行った。計測は、実機を用いて室温(20℃)で行うと共に、試料を48℃に加熱した状態においても行った。前者は上記10種の油分の全てについて行い、後者は表1に二重丸を付した4種の油分について行った。
【0058】
実験結果を
図8のグラフに示す。このグラフでは、計算値を横軸に、実験値を縦軸にとった。データ点は、実験値が計算値の±20%以内に収まれば、グラフ中の2本の破線の間に収まる。また、
図8では、全ての試料をデータを1つのグラフに掲載した。このグラフに示すように、大半の実験データは計算値の±20%以内に収まっているといえる。±20%程度の精度があれば、工業用洗浄機における洗浄条件や洗浄液の蒸留条件を設定するために用いるには十分である。