特許第5981103号(P5981103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981103
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   H02K41/03 A
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-142207(P2011-142207)
(22)【出願日】2011年6月27日
(65)【公開番号】特開2013-9563(P2013-9563A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(72)【発明者】
【氏名】唐 玉▲棋▼
(72)【発明者】
【氏名】杉田 聡
(72)【発明者】
【氏名】宮入 茂徳
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0033157(US,A1)
【文献】 特許第4385406(JP,B2)
【文献】 国際公開第2011/001668(WO,A1)
【文献】 特開2011−120405(JP,A)
【文献】 特開2009−247068(JP,A)
【文献】 実開昭51−007605(JP,U)
【文献】 特開2009−100617(JP,A)
【文献】 特開2008−086144(JP,A)
【文献】 特開平07−322595(JP,A)
【文献】 特開2010−288418(JP,A)
【文献】 特開平09−172767(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/046161(WO,A1)
【文献】 特開2005−124334(JP,A)
【文献】 特開2007−306704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に往復移動する直動軸及び前記直動軸に取付けられた複数の永久磁石からなる1以上の永久磁石列を備えてなる可動子と、前記可動子が内部空間内を往復移動するように巻線導体がコイル状に巻回されてなる複数の励磁巻線が、前記直動軸の軸線に沿って並ぶように配置された構造を有する固定子とを備えてなる複数のリニアモータユニットと、
前記複数のリニアモータユニットのそれぞれの前記固定子の外側に設けられて、前記複数のリニアモータユニットのそれぞれの磁気回路の一部を構成するバックヨークとを備え、
前記複数のリニアモータユニットは、それぞれの前記直動軸が平行に並ぶように配置されており、
前記バックヨークは、磁性材料からなり、前記複数のリニアモータユニットを全体的に包む包囲部を備えたバックヨーク・アセンブリによって構成されており、
前記固定子は、内部に前記可動子が配置され且つ前記励磁巻線が装着される絶縁パイプを備えており、
前記絶縁パイプの前記軸線方向の両端には、前記直動軸の両端を軸線方向に移動可能に且つ周方向に回転不可能に支持する軸受が固定された一対のエンドブラケットが固定された状態にあり、
前記バックヨーク・アセンブリは、前記一対のエンドブラケットに亘って配置された状態にあり、
前記直動軸は、同じ極性の磁極が向き合うように並べられた複数の前記永久磁石からなる前記永久磁石列が収容される筒状の直動軸本体と、前記直動軸本体の前記軸線方向の両端に接続されて前記軸受にそれぞれ支持される一対の直動軸端部材とからなり、
前記直動軸本体と前記一対の直動軸端部材とは、連結ピースにより連結された状態にあり、
前記直動軸本体は、前記連結ピースの外周部に嵌合されて固定された状態にあり、
前記直動軸端部材は、前記連結ピースの内周部に嵌合されて固定された状態にあり、
前記連結ピースの前記外周部は、前記直動軸本体の長手方向中心側に位置する滑面部と、前記直動軸本体の長手方向中心から離れた側に位置する粗面部とを有しており、
前記直動軸本体の両端部は、接着剤を介して前記滑面部と前記粗面部の両方に接触して配置されていることを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記バックヨーク・アセンブリは、前記包囲部の内部に固定されて、隣接する2つの前記リニアモータユニット間を仕切って両者の間に共通磁気回路を形成する仕切り壁部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記バックヨーク・アセンブリの前記包囲部は、前記複数のリニアモータユニットが並ぶ方向に分割面が延びるように組み合わされた分割可能な第1及び第2の分割アセンブリから構成され、
前記仕切り壁部は、前記第1及び第2の分割アセンブリに嵌め合わせ構造を介して固定された状態になっている請求項2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記第1及び第2の分割アセンブリは、同じ寸法及び形状を有していることを特徴とする請求項3に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記第1及び第2の分割アセンブリは、磁性板から成るプレス加工品であることを特徴とする請求項3に記載のリニアモータ。
【請求項6】
前記複数の励磁巻線には、それぞれ前記励磁巻線に電力を供給するリード線が接続されており、
前記第1及び第2の分割アセンブリの少なくとも一方には、前記リード線が通過する貫通穴が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のリニアモータ。
【請求項7】
前記貫通穴は前記軸線方向に延びるスリットからなり、
前記貫通穴の前記軸線方向中心と、前記第1の分割アセンブリまたは前記第2の分割アセンブリの前記軸線方向中心との間の寸法は、1/4τp〜1/2τp(τp=前記複数の永久磁石のピッチ)の範囲内であり、
前記貫通穴の前記軸線方向の長さ寸法が(n−1/2)τp〜(n+1/2)τp
(n=自然数,τp=前記複数の永久磁石のピッチ)であることを特徴とする請求項6に記載のリニアモータ。
【請求項8】
前記連結ピースの前記外周部には、複数の凹部があり、
前記直動軸本体の両端部には、前記複数の凹部に嵌合する複数の凸部があることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動子が固定子に対して往復移動するリニアモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第4385406号公報には、軸線方向に往復移動する直動軸及び直動軸に取付けられた永久磁石列を備えてなる可動子と、可動子が内部空間内を往復移動するように巻線導体がコイル状に巻回されてなる複数の励磁巻線が配置された構造を有する固定子とを備えた複数のリニアモータユニットが示されている。複数のリニアモータユニットは、それぞれ直動軸が平行に並ぶように配置されている。複数のリニアモータユニットのそれぞれの固定子の外側には、複数のリニアモータユニットのそれぞれの磁気回路の一部を構成する磁性材料のパイプからなるバックヨークが設けられている。そして、バックヨークが設けられた複数のリニアモータユニットは、ブロック状のフレームとカバーとに挟まれて支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4385406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のリニアモータでは、パイプからなるバックヨークを複数のリニアモータユニットにそれぞれ取り付けるため、製造が煩雑であった。また、複数のリニアモータユニットを支持するブロック状のフレーム及びカバーを用いる必要があり、リニアモータの体積及び重量が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、複数のリニアモータユニットに容易にバックヨークを取り付けることができるリニアモータを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、上記目的に加えて、リニアモータの体積及び重量を小さくできるリニアモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のリニアモータは、複数のリニアモータユニットとバックヨークとを備えている。複数のリニアモータユニットは、軸線方向に往復移動する直動軸及び直動軸に取付けられた複数の永久磁石からなる1以上の永久磁石列を備えてなる可動子と、可動子が内部空間内を往復移動するように巻線導体がコイル状に巻回されてなる複数の励磁巻線が直動軸の軸線に沿って並ぶように配置された構造を有する固定子とを備えた複数のリニアモータユニットを用いる。複数のリニアモータユニットは、それぞれ直動軸が平行に並ぶように配置されている。バックヨークは、複数のリニアモータユニットのそれぞれの固定子の外側に設けられて、複数のリニアモータユニットのそれぞれの磁気回路の一部を構成する。そして、バックヨークは、磁性材料からなり、複数のリニアモータユニットを全体的に包む包囲部を備えたバックヨーク・アセンブリによって構成されている。
【0008】
本発明のように、バックヨークを複数のリニアモータユニットを全体的に包む包囲部を備えたバックヨーク・アセンブリによって構成すれば、複数のリニアモータユニット全体に対して一組のバックヨーク・アセンブリを組み合わせるだけで複数のリニアモータユニットに容易にバックヨークを取り付けることができる。また、本発明のリニアモータでは、バックヨークをそのまま外部の被取付部材等に取り付ければよく、従来のように、複数のリニアモータユニットを支持するブロック状のフレーム及びカバー等の部材を用いる必要がない。そのため、リニアモータの体積及び重量を小さくできる。
【0009】
バックヨーク・アセンブリは、前述の包囲部の内部に固定されて、隣接する2つのリニアモータユニット間を仕切って両者の間に共通磁気回路を形成する仕切り壁部を備えているのが好ましい。このようにすれば、隣接する2つのリニアモータユニットの間に共通磁気回路を容易に形成することができる。
【0010】
バックヨーク・アセンブリの包囲部は、複数のリニアモータユニットが並ぶ方向に分割面が延びるように組み合わされた分割可能な第1及び第2の分割アセンブリから構成し、仕切り壁部は、第1及び第2の分割アセンブリに嵌め合わせ構造を介して固定することができる。このようにすれば、第1及び第2の分割アセンブリと仕切り壁部とを組み合わせるだけでバックヨーク・アセンブリを容易に組み立てられる。
【0011】
第1及び第2の分割アセンブリは、同じ寸法及び形状を有しているのが好ましい。このようにすれば、1種類の分割アセンブリを第1及び第2の分割アセンブリのいずれの分割アセンブリにも用いることができる。
【0012】
第1及び第2の分割アセンブリは、磁性板をプレス加工して成形することができる。このようにすれば、第1及び第2の分割アセンブリの形状が複雑な形状であっても、プレス加工により容易に第1及び第2の分割アセンブリを形成できる。また、磁性板を用いるので、リニアモータの体積及び重量を小さくできる。
【0013】
通常、複数の励磁巻線には、それぞれ励磁巻線に電力を供給するリード線が接続されている。この場合、第1及び第2の分割アセンブリの少なくとも一方には、リード線が通過する貫通穴を形成するのが好ましい。このようにすれば、リード線を容易に外部に導出できる。
【0014】
貫通穴は軸線方向に延びるスリットから構成することができる。この場合、貫通穴の軸線方向中心と、第1の分割アセンブリまたは第2の分割アセンブリの軸線方向中心との間の寸法は1/4τp〜1/2τp(τp=前記複数の永久磁石のピッチ)の範囲内とし、貫通穴の軸線方向の長さ寸法は(n−1/2)τp〜(n+1/2)τp(n=自然数,τp=前記複数の永久磁石のピッチ)とするのが好ましい。このようにすれば、スリット端部によるコギングの影響を小さくできる。
【0015】
固定子は、内部に可動子が配置され且つ励磁巻線が装着される絶縁パイプを備えることができる。その場合、絶縁パイプの軸線方向の両端には、直動軸の両端を軸線方向に移動可能に且つ周方向に回転不可能に支持する軸受が固定された一対のエンドブラケットを固定する。そして、バックヨーク・アセンブリは、一対のエンドブラケットに亘って配置するのが好ましい。このようにすれば、絶縁パイプに励磁巻線が装着するだけで容易に複数の励磁巻線を配置することができる。そして、バックヨーク・アセンブリをしっかりと複数のリニアモータユニットに固定できる。
【0016】
直動軸は、同じ極性の磁極が向き合うように並べられた複数の永久磁石からなる永久磁石列が収容される筒状の直動軸本体と、直動軸本体の軸線方向の両端に接続されて一対の軸受にそれぞれ支持される一対の直動軸端部材とから構成することができる。その場合、直動軸本体と一対の直動軸端部材とは、連結ピースにより連結し、直動軸本体は、連結ピースの外周部に嵌合して固定し、直動軸端部材は、連結ピースの内周部に嵌合して固定するのが好ましい。このようにすれば、嵌合作業だけで容易に直動軸本体と一対の直動軸端部材とを連結ピースを介して接続できる。
【0017】
連結ピースの外周部は、直動軸本体の長手方向中心側に位置する滑面部と、直動軸本体の長手方向中心から離れた側に位置する粗面部とを有しており、直動軸本体の両端部は連結ピースの滑面部と粗面部の両方に接触して配置するのが好ましい。このようにすれば、直動軸本体と連結ピースとの同芯を保ちつつ直動軸本体と連結ピースとをしっかりと固定できる。
【0018】
また、連結ピースの外周部に複数の凹部を形成し、直動軸本体の両端部に、複数の凹部に嵌合する複数の凸部を形成することができる。このようにすれば、連結ピースの複数の凹部と直動軸本体の複数の凸部との嵌合により、連結ピースと直動軸本体とを強固に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のリニアモータの一例の正面図である。
図2図1に示すリニアモータの右側面図である。
図3図1に示すリニアモータに用いる1個のリニアモータユニットの断面図である。
図4図3の部分拡大図である。
図5図4において連結ピース及び直動軸端部材を断面で表した図である。
図6】(A)及び(B)は図1に示すリニアモータに用いる励磁巻線が装着された絶縁パイプの正面図及び右側面から見た部分拡大断面図である。
図7図1に示すリニアモータに用いるエンドブラケットの断面図である。
図8】(A)及び(B)は図1に示すリニアモータに用いる第1の分割アセンブリ(第2の分割アセンブリ)の正面図及び右側面図である。
図9図1に示すリニアモータに用いる仕切り壁部の平面図である。
図10】本発明のリニアモータで用いることができる他の連結ピースの断面図である。
図11】本発明のリニアモータで用いることができるさらに他の連結ピースの断面図である。
図12】本発明の他の実施の形態のリニアモータの正面図である。
図13図12に示すリニアモータの右側面図である。
図14図12に示すリニアモータの底面図である。
図15図12図14に示すリニアモータを2個組み合わせて用いる例を示す正面図である。
図16】本発明のさらに他の実施の形態のリニアモータの正面図である。
図17図16に示すリニアモータの右側面図である。
図18】本発明のさらに別の実施の形態のリニアモータの正面図である。
図19図18に示すリニアモータの右側面図である。
図20】本発明のリニアモータで用いることができる他の可動子の部分断面図である。
図21】(A)及び(B)は、図20に示す可動子に用いる連結ピースの平面図及び断面図である。
図22図20に示す可動子の形成方法を説明するために用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1及び図2は、本発明のリニアモータの一例の正面図及び右側面図である。本図に示すように、本例のリニアモータ1は、6個のリニアモータユニット3とバックヨーク5とを有している。1個のリニアモータユニット3は、図3に示すように、可動子7と固定子9とを有している。なお、図3は、リニアモータユニット3の断面図であるが、理解を容易にするため、後述する一対の直動軸端部材19A,19B、永久磁石21及び連結ピース25は、平面で表している。可動子7は、直動軸11と、永久磁石列13と、リニアスケール15とを有している。直動軸11は、直動軸本体17と、一対の直動軸端部材19A,19Bとを有しており、軸線方向に往復移動する。図4及び図5に示すように、直動軸本体17は、非磁性のステンレスからなる円筒形のパイプからなり、内部には永久磁石列13が収容されている。なお、図4図3の部分拡大図であり、図5図4において後述する連結ピース25及び直動軸端部材19Aを断面で表わした図である。永久磁石列13は、複数の円柱形の永久磁石21が鉄などの磁性材料からなるスペーサ23を介して並べた構造を有している。複数の永久磁石21は、隣り合う2つの永久磁石が軸線方向に同じ極性の磁極が向き合うように並べられている。
【0021】
図3に示すように、一対の直動軸端部材19A,19Bは、細長い円柱形を有している。一対の直動軸端部材19A,19Bは、直動軸本体17の軸線方向の両端に接続されて、後述する一対の軸受35にそれぞれスラスト方向にスライド可能に支持されている。図3に向かって右側に位置する直動軸端部材19Bには、リニアスケール15が取り付けられている。リニアスケール15は、リニアモータの外部に配置された図示しないリニアセンサと対向するように配置されている。リニアスケール15と図示しないリニアセンサとにより、可動子7の位置を検出する位置検出装置が構成される。なお、図2には、リニアスケールの図示は省略してある。一対の直動軸端部材19A,19Bは、図4及び図5に示すように、連結ピース25により直動軸本体17に連結されている。連結ピース25は、鉄、ステンレス等の金属材料からなり、図5に示すように、内部に中空部25aを有している。中空部25aは、小径部25bと、小径部25bより径寸法が大きく小径部25bの両側に位置する大径部25c,25dとを有している。言い換えるならば、中空部25aの軸線方向中央に近い部分に径方向内側に突出する突部25eが形成されている。また、図4に示すように、連結ピース25の外周部25fは、直動軸本体17の長手方向中心側に位置する表面が滑らかな滑面部25gと、直動軸本体17の長手方向中心から離れた側に位置する表面が粗い粗面部25hとを有している。粗面部25hは、加工器具で0.1〜0.3mm程度の棘のような傷をつけて形成されている。そして、直動軸本体17の両端部の内周面は、滑面部25gと粗面部25hとに接触して配置されている。本例では、連結ピース25の外周面25fに接着剤を塗布してから、連結ピース25を直動軸本体17内に圧入した。このため、連結ピース25と直動軸本体17とは塑性変形と接着力とによりしっかり固定される。一対の直動軸端部材19A,19Bは、図5に示すように、連結ピース25の内周部の大径部25cに嵌合されて固定されている。一対の直動軸端部材19A,19Bは端部に雌螺子が形成された孔部19cを有している。孔部19cに形成された雌螺子は、連結ピース25の中空部25a内に配置された螺子27に螺合されている。これにより、一対の直動軸端部材19A,19Bは、連結ピース25に強固に固定されている。
【0022】
図3に示すように、固定子9は、絶縁パイプ29と複数の励磁巻線31A〜31Iと一対のエンドブラケット33と一対の軸受35とを有している。絶縁パイプ29は、ガラエポや、絶縁塗料が表面に塗布されたステンレス等により形成されている。絶縁パイプ29は、図6(A)及び(B)に示すように、厚み0.2mm程度の円筒形の本体部29aと、本体部29aから径方向に延びる円環状形の10個の隔壁部29bとを有している。そして、隣接する2個の隔壁部29bの間には、励磁巻線31A〜31Iのそれぞれが配置されている。励磁巻線31A〜31Iは、巻線導体が隣り合う2つの隔壁部29b間に位置する絶縁パイプ29の本体部29a上にコイル状に巻回されて構成されている。励磁巻線31A〜31Iには、連続する3つの励磁巻線を一つのユニットとして、電気角で120度ずつ位相がずれた3相の励磁電流が供給される。この結果、励磁巻線31A〜31Iには、U相、V相、W相、U相、V相、W相、U相、V相、W相の順で電流が流れることとなる。励磁巻線31A〜31Iには、励磁巻線31A〜31Iにそれぞれ電力を供給する一対のリード線31jがそれぞれ接続されている。
【0023】
図7の断面図に示すように、一対のエンドブラケット33は、アルミ等の金属材料または加工性を有するプラスチックなどから形成されており、円筒形状を有している。1つのエンドブラケット33は、内部に中空部33aを有している。中空部33aは、小径部33bと小径部33bより径寸法の大きい大径部33cとを有している。絶縁パイプ29の端部は、エンドブラケット33の小径部33b内に嵌合されて固定されている。軸受35は、エンドブラケット33の大径部33cに嵌合されて固定されている。図3に示すように、一対の軸受35は、一対のエンドブラケット33にそれぞれ固定された状態で、可動子7の直動軸11の両端をスラスト方向(軸線方向)にスライド(移動)可能に且つ周方向に回転不可能に支持している。
【0024】
図1及び図2に戻って説明すると、上記において説明したリニアモータユニット3は、直動軸11が平行になるように6個並んでいる。そして、6個のリニアモータユニット3は、バックヨーク5により包まれている。
【0025】
バックヨーク5は、6個のリニアモータユニット3のそれぞれの固定子9の外側に設けられて、6個のリニアモータユニット3のそれぞれの磁気回路の一部を構成している。このバックヨーク5は、第1及び第2の分割アセンブリ37A,37Bと5個の仕切り壁部39とを含むバックヨーク・アセンブリにより構成されている。第1及び第2の分割アセンブリ37A,37Bは、同じ寸法及び形状を有しており、厚み0.5〜1.0mmの珪素鋼板またはSPCCからなる磁性板をプレス加工して成形されている。第1及び第2の分割アセンブリ37A,37Bは同じ寸法及び形状を有しているので、1つの分割アセンブリの正面及び右側面を示す図8(A)及び(B)を参照して、その構造を説明する。図8(A)及び(B)に示すように、第1及び第2の分割アセンブリ37A,37Bは、アセンブリ本体37cとアセンブリ本体37cの軸線方向と直交する方向の両端に配置された一対の取付板部37dとを有している。アセンブリ本体37cは6個の円弧部37eを有している。円弧部37eのそれぞれは、固定子9の励磁巻線31A〜31Iの一部とそれぞれ対向している。6個の円弧部37eの中央には、励磁巻線31A〜31Iに接続されたリード線31j(図3参照)が通過する貫通穴37fがそれぞれ形成されている。貫通穴37fは、直動軸11の軸線方向中央に位置して軸線方向に延びるスリットからなり、軸線方向の長さ寸法Lが(n−1/2)τp〜(n+1/2)τp(n=自然数,τp=複数の永久磁石のピッチ:図3参照)である。貫通穴37fの軸線方向中心と、第1及び第2の分割アセンブリ37A,37Bの軸線方向中心との間の寸法は、1/4τp〜1/2τp(τp=前記複数の永久磁石のピッチ)の範囲内に設定するのが好ましい。本例では、図2に示すように、励磁巻線31A〜31Iに接続されたリード線31jを束ねた束38を貫通穴37fの一方の端部から外部に導出している。そして、各リード線31jと貫通穴37fの大部分とを絶縁材料からなるカバーまたは樹脂モールド材40で覆っている。6個の円弧部37eの隣接する2個の円弧部37eの間には、後述する仕切り壁部39を支持するために利用される貫通穴37gが3個ずつ形成されている。3個の貫通穴37gは、それぞれ直動軸11の軸線方向に延びるスリットからなり、軸線方向に等間隔に配置されている。一対の取付板部37dは細長い平板形状を有している。一対の取付板部37dには、リニアモータを外部の被取付部材に取り付けるための貫通孔37hが7個ずつ形成されている。第1の分割アセンブリ37Aの一対の取付板部37dは、第2の分割アセンブリ37Bの一対の取付板部37dにそれぞれ当接している。このため、図1に示すように、第1及び第2の分割アセンブリ37A,37Bは、6個のリニアモータユニット3が並ぶ方向に分割面Aが延びるように組み合わされる。そして、第1及び第2の分割アセンブリ37A,37Bと6個のリニアモータユニット3と後述する5個の仕切り壁部39は、所定の位置に並べ組み立てられて、エポキシ樹脂などからなる接着剤或いはモールド樹脂成型により一体化されている。図2に示されるように、第1及び第2の分割アセンブリ37A,37Bは、両者が組み合わされた状態で、6個のリニアモータユニット3の一対のエンドブラケット33の間に配置される。本例では、第1及び第2の分割アセンブリ37A,37Bにより、6個のリニアモータユニット3を全体的に包むバックヨーク5の包囲部が構成されている。
【0026】
5個の仕切り壁部39は、図9に示すように、第1及び第2の分割アセンブリ37A,37Bと同じ厚みの珪素鋼板またはSPCCからなる磁性板をプレス加工してそれぞれ成形されている。仕切り壁部39は、細長い板形状を有しており、壁部本体39aと、壁部本体39aの両側部から3個ずつ突出する突出部39bとを有している。1個の仕切り壁部39は、隣接する2つのリニアモータユニット3の間に配置されるように、一方の側部から突出する3個の突出部39bが第1の分割アセンブリ37Aの貫通穴37g内に嵌合され、他方の側部から突出する3個の突出部39bが第2の分割アセンブリ37Bの貫通穴37g内に嵌合されている。これにより、仕切り壁部39は、隣接する2つのリニアモータユニット3間を仕切って両者の間に共通磁気回路を形成する。
【0027】
本例のリニアモータによれば、6個のリニアモータユニット3全体に対して一組のバックヨーク・アセンブリ(第1及び第2の分割アセンブリ37A,37B及び5個の仕切り壁部39)を組み合わせるだけで容易にバックヨーク5を取り付けることができる。また、バックヨーク5の取付板部37dをそのまま外部の被取付部材等に取り付ければよく、従来のように、複数のリニアモータユニットを束ねるブロック状のフレーム及びカバー等の部材を用いる必要がない。そのため、リニアモータ1の体積及び重量を小さくできる。
【0028】
なお、本発明のリニアモータでは、図4及び図5に示す連結ピース以外にも図10及び図11の断面図に示すような種々の連結ピースを採用できる。図10に示す連結ピースは、中空部内の突部を除いて図4及び図5に示す連結ピース25と同じ構造を有している。そのため、突部以外の部材には、図4及び図5に付した符号に100を加えた数の符号を付して、その説明を省略する。本例の連結ピース125は、突部125eに雌螺子125jが形成されている。そのため、連結ピース125の中空部125a内に配置された螺子(図5の螺子27を参照)は、突部125eの雌螺子125jにも螺合される。
【0029】
図11に示す連結ピース225は、中空部を有しておらず、連結ピース本体225kと連結ピース本体225kから一対の直動軸端部材(図5の直動軸端部材19Aを参照)側に突出する突出部225mとを有している。突出部225mには雄螺子225nが形成されている。雄螺子225nは、一対の直動軸端部材の端部の孔内に形成された雌螺子に螺合される。本例の連結ピース225を用いれば、螺子を用いずに、一対の直動軸端部材を連結ピース225に固定できる。
【0030】
図12図14は、本発明の他の実施の形態のリニアモータの正面図、右側面図及び底面図である。なお、図13は後述するリニアスケール315及びリニアセンサ347を取り付ける前の状態を示している。本例のリニアモータは、バックヨークを除いて図1図9に示すリニアモータと同じ構造を有している。そのため、バックヨーク以外の部材には、図1及び図2に付した符号に300を加えた数の符号を付して、その説明を省略する。本例のリニアモータのバックヨーク305の第1の分割アセンブリ337Aには、リニアモータ301を外部の被取付部材に取り付ける際に用いる第1及び第2の取付用部材341A,341Bが取付けられている。第1及び第2の取付用部材341A,341Bは、いずれもアルミのブロックにより直方体に近い形状に形成されている。第1及び第2の取付用部材341A,341Bのバックヨーク305に対向する面341cは、バックヨーク305と接触するようにバックヨーク305の外面に沿った形状を有している。また、第1及び第2の取付用部材341A,341Bは、第1及び第2の分割アセンブリ337A,337Bの取付板部337dに設けられた貫通孔を貫通して第1及び第2の取付用部材341A,341B内に形成された雌螺子に螺合する螺子343により、第1及び第2の分割アセンブリ337A,337Bに固定されている。図13に向かって右側の第2の取付用部材341Bには6個の凹部341eが形成されている。直動軸311が図14に向かって左側に移動すると、リニアスケール315の端部は、凹部341e内に入り込む。また、図14に示すように、第2の取付用部材341Bには、リニアスケール315と対向するようにリニアセンサ347が取り付けられている。
【0031】
本発明のリニアモータは、複数個組み合わせて使用することもできる。図15は、図12図14に示すリニアモータを2個組み合わせて用いる例を示す正面図である。この例では、第2の分割アセンブリ337B同士が対向するように、一方のリニアモータ301Aと他方のリニアモータ301Bとが相互に向かい合って並んでいる。そして、一方のリニアモータ301Aの第2の分割アセンブリ337Bの複数の円弧部337eは、他方のリニアモータ301Bの第2の分割アセンブリ337Bの複数の円弧部337eの隣接する2個の円弧部337eの間と対向している。
【0032】
図16及び図17は、本発明のさらに他の実施の形態のリニアモータの正面図及び右側面図である。本例のリニアモータは、バックヨークを除いて図1図9に示すリニアモータと同じ構造を有している。そのため、バックヨーク以外の部材には、図1図9に付した符号に400を加えた数の符号を付して、その説明を省略する。本例のリニアモータのバックヨーク405の第1及び第2の分割アセンブリ437A,437Bは、同じ寸法及び形状を有しており、厚み0.5〜1.0mmの珪素鋼板またはSPCCからなる磁性板をプレス加工して成形されている。第1及び第2の分割アセンブリ437A,437Bは、アセンブリ本体437cとアセンブリ本体437cの両端に配置された一対の取付板部437dとをそれぞれ有している。アセンブリ本体437cは、矩形の平板形状の底壁部437jと、底壁部437jの軸線方向と直交する方向に対向する2辺から立ち上がる一対の側壁部437kとを有している。
【0033】
一対の取付板部437dは、図8に示す一対の取付板部37dと同じ寸法及び形状を有している。そして、第1の分割アセンブリ437Aの一対の取付板部437dは、第2の分割アセンブリ437Bの一対の取付板部437dにそれぞれ接触している。
【0034】
バックヨーク405の5個の仕切り壁部439は、図9に示す仕切り壁部39と同じ形状を有している。そして、1個の仕切り壁部439は、隣接する2つのリニアモータユニット403の間に配置された状態で第1及び第2の分割アセンブリ437A,437Bに固定されている。
【0035】
本例のリニアモータ401では、バックヨーク405と6個のリニアモータユニット403との間の空隙部には、エポキシからなる接着剤またはモールド樹脂成型材445が充填されている。本例のリニアモータでは、第1及び第2の分割アセンブリ437A,437Bのアセンブリ本体437cの底壁部437jが矩形の平板形状を有しているので、第1及び第2の分割アセンブリ437A,437Bを容易に形成でき、リニアモータを簡単に製造できる。
【0036】
図18及び図19は、本発明のさらに別の実施の形態のリニアモータの正面図及び右側面図である。本例のリニアモータは、バックヨークを除いて図16及び図17に示すリニアモータと同じ構造を有している。そのため、バックヨーク以外の部材には、図16及び図17に付した符号に100を加えた数(図1図9に付した符号に500を加えた数)の符号を付して、その説明を省略する。本例のリニアモータのバックヨーク505の第1及び第2の分割アセンブリ537A,537Bに含まれる一対の取付板部537dは、アセンブリ本体537cの軸線方向の両端に配置されている。本例のリニアモータ501並びに図16及び図17に示すリニアモータ401は、外部の被取付部材の取付位置に応じて適宜に採用すればよい。
【0037】
図20は、本発明のリニアモータで用いることができる他の可動子の部分断面図である。
【0038】
本例の可動子では、直動軸本体及び連結ピースを除いて図4及び図5に示すリニアモータの可動子と同じ構造を有している。そのため、直動軸本体及び連結ピース以外の部材には、図4及び図5に付した符号に600を加えた数の符号を付して、その説明を省略する。図21(A)及び(B)に示すように、本例のリニアモータの連結ピース625の外周部625fの表面は、全体が滑らかな滑面になっている。また、外周部625fには、径方向に対向する2つの矩形の凹部625iが形成されている。図20に示すように、直動軸本体617には、連結ピース625の2つの凹部625iにそれぞれ嵌合する凸部617aが形成されている。凸部617aは、図22に示すように、プレス機Pにより、連結ピース625を嵌合した直動軸本体617をプレスして形成した。連結ピース625と直動軸本体617は、凹部625iと凸部617aとの嵌合により、強固に固定される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、複数のリニアモータユニット全体に対して一組のバックヨーク・アセンブリを組み合わせるだけで複数のリニアモータユニットに容易にバックヨークを取り付けることができる。そのため、リニアモータの製造が容易になる。また、本発明のリニアモータでは、バックヨークをそのまま外部の被取付部材等に取り付ければよいので、複数のリニアモータユニットを支持するブロック状のフレーム及びカバー等の部材を用いる必要がなく、リニアモータの小型化、軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 リニアモータ
3 リニアモータユニット
5 バックヨーク
7 可動子
9 固定子
11 直動軸
13 永久磁石列
17 直動軸本体
19A,19B 一対の直動軸端部材
25 連結ピース
25g 滑面部
25h 粗面部
29 絶縁パイプ
31A〜31I 励磁巻線
31j リード線
33 エンドブラケット
35 軸受
37A,37B 第1及び第2の分割アセンブリ
39 仕切り壁部
図1
図2
図3
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図5
図6
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