(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
机の後端部に上下開口の配線空間を設けて、この配線空間からケーブル類を机上に引き出すことは広く行われている。配線空間を形成する手段としては、天板の後端部を部分的に切欠く場合と、天板の後ろに左右横長のパネルやビーム等のバック部材を配置し、天板とバック部材との間の空間を配線空間とする場合とがある。後者の場合は、配線空間は天板の後面に沿って左右に長く延びることになる(但し、脚等の支持部材の箇所では配線空間は途切れることになる。)。
【0003】
いずれにしても、配線空間はカバーで覆われていることが普通であり、前者のように天板の後部を部分的に切欠くことで配線空間を形成した机のカバーの例が、特許文献1,2に記載されている。なお、カバーは
、配線作業を容易に行えるように着脱式又は開閉式になっているのが普通であり、また、一般に、カバーを取り付けた状態でも配線機能が維持されるように、配線空間は部分的に開口している(配線通路が残っている。)。
【0004】
特許文献1では、カバーは天板の上面に重なり得るように板状になっており、カバーの前後位置を調節することで開口面積を調節できるようになっている。他方、特許文献2では
、カバーは左右横長の軸心回りに回動するようになっており、カバーを跳ね上げ回動させると
、配線空間を大きく開口させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明で方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用するが、これは、机を普通の姿勢で使用する人の向きを基準にしている。従って、机の間口方向が左右方向であり、奥行き方向が前後方向である。前と後ろについては、使用者に近い側を前として、使用者から遠い背面の箇所を後ろとして
定義している。
【0017】
(1).机の概略
図1〜3に示すように、机は
、平面視四角形(長方形)の天板1と
、これを左右両側部において支持する左右の脚2とを有する。天板1は木質系であるが、スチール製のものを使用することも可能である。脚2は、棒状の前後脚支柱3,3′をその上端において水平状の上フレーム4で連結した門型になっており、上フレーム4に前後一対のスペーサ5をボルトで固定し、このスペーサ5に天板1をボルトで固定している。従って、天板1と上フレーム4との間には
、ケーブル類を挿通できる程度の間隔が空いている。
【0018】
脚支柱3,3′及び上フレーム4は中空で概ね四角形になっており、両者に嵌入する側面視L形の連結ブラケットを介して一体に連結されている。また、左右脚2における後部脚支柱3の上部間にはビーム6が配置されており、ビーム6と左右の後部脚支柱3とがボルトで固定されている。なお、ビーム6の固定手段としては、後部脚支柱3の内側面に、ビーム6の端部に嵌入する連結用ブラケット突起(図示せず)を固定し、この連結用ブラケット突起にビーム6をボルトで固定している。
【0019】
天板1の後端部のうち左右中間部には、後ろ向きに開口した平面視四角形の切り開き部7を形成しており、この切り開き部7を配線通路と成している。そして、切り開き部7には
、これを塞ぐカバー8を装着している。カバー8は着脱自在である。天板1の後部は、切り開き部7を形成したことで強度が弱くなるおそれがある。そこで、天板1のうち切り開き部7を挟んだ左右両側の部位は、ビーム6に取り付けた天板支持ブラケット9で下方から支持されている。
【0020】
また、ビーム6の下部には、ケーブル受け10と
、その上方に位置したコネクタサポート11とが取り付けられている。ケーブル受け10は、ビーム6に左右スライド自在に取り付けられている。ビーム6に
は、複数のケーブル受け10を装着することも可能である。
【0021】
図3(A)に示すように、ビーム6は、後部脚支柱3の上端部でかつ略後半部に連結されている。そして、
図4に明瞭に示すように、ビーム6は、手前に突出した上下の折り返し部12a,12bを有するチャンネル状の基板12を有しており、基板12の前面に
、側面視凸形の補強材13を溶接で固着している。基板12の上下折り返し部12a,12bは、それぞれ後ろ向きの内向き片12a′,12b′を有する。また、補強材13は前向き凸部13aを有しており、そこで、ビーム6の内部には、補強材13
の前向き凸部13aを挟んだ上下両側に、蟻溝形式の上係合溝6aと下係合溝6bとが形成されている。
【0022】
天板支持ブラケット9は、ビーム6の上係合溝6aに嵌まる嵌合部9aと、天板1の下面にビスで固定される受け部9bと、これらを繋ぐ傾斜状のアーム部9cとを有している。受け部9bは平面視で半分が切り開き部7に露出しており、従って、平面視で略半分の部位が天板1に固定され、平面視で略半分の部位は
、後述するカバー受け19に下方から重なっている。
【0023】
コネクタサポート11は板金製品であり(樹脂製でもよい)、左右天板支持ブラケット9のアーム部9cの間に配置されている。コネクタサポート11は、コンセント11cを固定できる本体部11aを有しており、本体部11aの上端に、ビーム6の上係合溝6aに嵌まる左右一対の係合片11bを一体に形成している。
【0024】
コネクタサポート11の係合片11bは側面視下向き開口コの字形になっており、その先端が、ビーム6を構成する補強材13の凸部13aに設けたスリットに上から嵌まっている。コネクタサポート11の係合片11bに、天板支持ブラケット9における嵌合部9aのうちアーム部9cから内向きに張り出した部位が上から重なっている。ケーブル受け10は上向きに開口したトレー状の形態を成しており、その後端には、ビーム6の下係合溝6bに嵌まる嵌合部10aを設けている。
【0025】
(2).カバー及びその取り付け構造
次に、カバー8及びその取り付け構造を
、図5〜
図10に基づいて説明する。カバー8は樹脂製であり、例えば
図7に示すように、内部に小物を収容できるように浅いトレー状(箱状)の形態になっている
。
【0026】
従って、カバー8は
、底板14と前壁15と後ろ壁16と左右のサイド壁17とを有しており、かつ、内部には、後ろ壁16に寄った状態で左右横長の中仕切り18を設けている。前壁15と後ろ壁16と左右のサイド壁17とで、周壁が構成されている。カバー8は、全体として天板1の厚さよりやや薄い上下寸法になっている。また
、中仕切り18は各壁15,16,17よりも低い高さになっている。本実施形態のカバー8は前後の方向性はないので、左右横長の壁に前後の違いはないが、便宜的に
、中仕切り18に近いものを後ろ壁16と呼んでいる。
【0027】
天板1の切り開き部7には、カバー8を取り付けるためのカバー受け19が固定されている。カバー受け19は樹脂製であり、切り開き部7の内面に重なるように、板状の基部20と
、同じく板状の左右サイド部21とを有する平面視コの字形に形成されている。基部20及びサイド部21の上端には、天板1の上面に重なるフランジ片22を一体に設けている。フランジ片22の外周縁の上面は、天板1に向けて傾斜している。
【0028】
図9に示すように、切り開き部7の内周面のうち内底面7aの左右中間部と内側面7bの後端部とに、角形の凹溝32を形成している一方、カバー受け19の基部20とサイド部21とには、凹溝32に入り込む嵌合突起31を設けており、これら凹溝32と嵌合突起31と
によって位置決めをしていると共に、基部20とサイド部21とをビス25で切り開き部7に固定している。
【0029】
カバー受け19の基部20は
、切り開き部7の内底面7aに直接に重なっているが、カバー受け19のサイド部21には外向きのスペーサ片26を設けており、スペーサ片26が切り開き部7の内側面7bに当接している。従って、カバー受け19のサイド部21と切り開き部7の内側面7bとの間には空間が空いている。このため、サイド部21には、切り開き部7の内側面7bに当接する凹陥部27を設けており、ビス25の頭は凹陥部27に入り込んでいる。
【0030】
図5(A)や図7(B)示すように、カバー受け19の基部20とカバー8との間には、ケーブルCを机上に引き出すための通線部7aが開口している。そして、
図9(B)に明瞭に示すように、カバー受け19の基部20のうち左右両端寄りの部位に
、左右一対の仕切り部28を後ろ向きに突設しており、このため
、通線部7aは左右3つのエリアに区分されている。これにより、ケーブル類Cを左右に捌いた状態で机上に引き出すことができる。なお、仕切り部28は、カバー8の前向き移動限度も規制している。
【0031】
仕切り部28は
、横向き張り出し部28aを有する平面視L形に形成されており、このため、横向き張り出し部28aと基部20との間は細幅部7cになっている。この細幅部7cには、通信線のような細いケーブルCを通すことができる。
図7に示すように、横向き張り出し部28aの前面には、左右外側に行くに従って前後幅が小さくなる平面視三角形のリブ29を形成している。このため、細いケーブルCをリブ29と基部20との間に挟み込むことができる。なお、仕切り部28は左右の横向き張り出し部28aを有する平面視T形にすることも可能である。
【0032】
仕切り部28は
、下向きの垂下片28bを有していてポケット状に形成されており、垂下片28bで囲われた内側にビス25の頭が配置されている。すなわち、カバー受け19の基部20は、仕切り部28の箇所において天板1にビス25で固定されている。カバー受け19の内角部の下端には
、平面視三角形のコーナー30を設けている。カバー受け19における基部20のうち左右中間部と左右端部との3カ所、及び、サイド部21の先端部には、補助の位置決め突起31を突設している。他方、切り開き部7の内面には、位置決め突起31が嵌まる位置決め穴32を空けている。
【0033】
カバー受け19におけるサイド部21の下端には、カバー8の左右側部が載る支持片35を内向きに突設している。支持片35はサイド部21の全長には延びておらず、サイド部21の前端と後端との間に配置されている。
【0034】
カバー8は支持片35で支持された状態で前後2つの位置に変更自在であると共に、左右横長の軸心回りに跳ね上げ回動させることができる。また、既述のようにカバー受け19に対しては着脱自在である。
【0035】
そして、カバー8をカバー受け19に前後位置変更自在及び跳ね上げ回動自在並びに着雑自在と成すための手段として、本実施形態では、
図8や
図9(B)や
図10から容易に理解できるように、カバー8における左右サイド壁17の外面に、
係合手段として、前後一対の係合凹部36を設けている一方、カバー受け19のサイド部21には、
同じく係合手段として、前後一対ずつの係合凹部36に選択的に嵌まる係合凸部37を設けている。係合凹部36及び係合凸部37は
、球の一部を成すように曲面に形成されている。例えば
図9(B)に示すように、カバー8における左右サイド壁17の外面には、横長の凹み(或いはリブ)を多段に形成している。
【0036】
係合凹部36は、凹陥部27の前後両側に位置した片持ち梁状の舌状片38の先端に設けられている。すなわち、舌状片38はその付け根を除いてスリット39で囲われており、このため、樹脂の持つ弾性により、舌状片38は係合凹部36が左右動するように撓み変形し得る。既述のように、カバー受け19のサイド部21と切り開き部7の内側面7bとの間には空間が空いているが、この空間の存在により、舌状片38がカバー8から逃げる方向に大きく撓み変形することが許容されている。
【0037】
係合凹部36をカバー8に設けて、係合凸部37をカバー受け19に設けることも可能である。また、係合凹部36と係合凸部37とは曲面構造にすることに限らず、例えば、係合凸部37をピン状に形成して係合凹部36を丸穴に形成することも可能である。また、係合凹部36と係合凸部37とを円錐状又は台錘状に形成することも可能である。更に、係合凹部36は雌型嵌合部の一例で係合凸部37は雄型嵌合部の一例であるが、他の係合手段により、カバー8を
、着脱自在及び前後位置変更自在並びに回動自在と成すことが可能である。係合凹部36と係合凸部37とを球面状やテーパ状に形成すると、誘い込み効果により、着脱が容易になる。
【0038】
図8に示すように、手前に位置した一対の係合凹部36の前後間隔W1と
、後ろに位置した一対の係合凹部36の前後間隔W1とは同じ寸法に設定されており、また、前後対の係合凹部36の間隔寸法W2と前後係合凸部37の間隔寸法W
2も、同じ寸法になっている。また、嵌合凹部36はカバー8の上下中間高さ位置に設けられており、上下面からの寸法W3は、係合凸部37と支持片35との上下間隔寸法W3′と同じになっている。
【0039】
更に、前後端に位置した係合凹部36とカバー8の前後端との間隔寸法W4は、後ろに位置した係合突部37とサイド部21の後端との間隔寸法W4′と同じ寸法であると共に、手前に位置した係合凸部37と仕切り部28との間隔寸法W4″と同じ寸法になっている。また、
図5(A)に示すように、支持片35の後端と後ろ側の係合凸部37との間隔寸法W5は、カバー8の全体の厚さ寸法の半分の寸法W3と略同じか僅かに大きい寸法に設定している。
【0040】
(3).まとめ
以上の構成において、既述のとおり、舌状片38が撓み変形することで、カバー8の係合凹部36を係合凸部37は嵌脱させることができる。このため、カバー8は、舌状片38を撓み変形させることでカバー受け19に着脱自在である。この場合、W3とW3′とが同じ寸法であるため、カバー8は上下いずれに開口した姿勢であってもカバー受け19に取り付けることができ、このため、カバー8は、使用者の好みに等に応じて、単なる蓋として使用したり小物入れとして使用したり、使用態様を任意に選択できる。いずれの状態でも係合凸部37と係合凹部38とが嵌まり合っているため、カバー8は人が手が触れた程度では動かないように、安定した状態に保持されている。
【0041】
また、W2とW2′とが等しいため、カバー8は、ある程度の力をかけると前後にスライドさせて、係合凸部37を前後の係合凹部36のいずれかに選択して嵌合させることができる。これにより、カバー8と基部20との間の配線通路の間隔を2段階に広狭調節することができる。従って、配線通路の面積をケーブルの量に応じて変更できる。このため使い勝手がよい。
【0042】
図5(A)に示すように、カバー受け19の後端面はビーム6の後端面よりも若干の寸法W6だけ手前にずれている。そこで、この寸法W6を前後係合凹部36の間隔寸法W1と略同じに設定することにより、カバー8を平面視でビーム6の後ろにはみ出ないように設定することも可能であるし、逆に、W1をW6よりも大きい寸法に設定してもよい。但し、机を背中合わせに配置することも多いので、互いの干渉を回避するには、W1は
、W6と等しいか僅かに小さい寸法に設定するのが好ましいと言える。
【0043】
係合凸部37と係合凹部36
とは軸受けとしても機能するので、カバー8は
、後ろに位置した左右係合凸部37を結ぶ線O(
図5(B)参照)を中心にして跳ね上げ回動させることができる。ケーブルCを配線したり確認したりする場合は、カバー8を取り外すことも可能であるが、跳ね上げ回動させることにより、力を要せずに、ワンタッチ操作によって切り開き部7を大きく開口させることができる。
【0044】
本実施形態のように、カバー受け19をビス25で天板1に締結するにおいて、仕切り部28の箇所においてビス25で締結したり、凹陥部27の箇所においてビス25で締結したりすると、ビス25の頭は凹部に隠れているため、仮にねじ込み作業においてビス25の頭に傷が付いてバリが出てもケーブルCが接触することはないため、安全性を向上できる。なお、本実施形態のカバー8は前後左右表裏の方向性はないため、任意の姿勢に配置できる。
【0045】
(4).他の実施形態
図11では、カバーの別例である他の実施形態を示している。このうち(A)に示す例では、カバー8の底板14を中途高さに配置することにより、表裏両側に収納凹部を形成している(2つの収納凹部の深さを異ならせている。)。片方の壁16に近接した状態で中仕切り18を設けることで前後幅が僅かの横長溝を形成し、この横長溝をカード類の挿入に利用することも可能である。中仕切り18を複数設けることも可能であり、また、縦横に延びる仕切りを設けることも可能である。
【0046】
(B)に示す例では、付加機能部の例として、ペン立て穴56を設けている。この例では凹部がない側にペン立て穴56を設けているが、開口した部位にペン立て部を設けることも可能である。(C)に示す例では、凹所を塞ぐ回動式の蓋板57を設けている。蓋板57は、メモを
貼ったり写真を装着したりする表示板として機能させることも可能である。(D)に示す例では、底板14に浅い凹み59を形成して、表示板58を開閉自在に装着している。表示板58は
、不使用時には凹み59にぴったり収まるようになっている。