特許第5981180号(P5981180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 荏原冷熱システム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5981180-ターボ冷凍機及びその制御方法 図000002
  • 特許5981180-ターボ冷凍機及びその制御方法 図000003
  • 特許5981180-ターボ冷凍機及びその制御方法 図000004
  • 特許5981180-ターボ冷凍機及びその制御方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981180
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】ターボ冷凍機及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/10 20060101AFI20160818BHJP
   F25B 1/053 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   F25B1/10 Q
   F25B1/053 B
   F25B1/053 M
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-63316(P2012-63316)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-194999(P2013-194999A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】503164502
【氏名又は名称】荏原冷熱システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100093942
【弁理士】
【氏名又は名称】小杉 良二
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】入江 毅一
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−032123(JP,A)
【文献】 特開2009−236430(JP,A)
【文献】 特開昭53−064854(JP,A)
【文献】 特開2009−002635(JP,A)
【文献】 実開平02−004166(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0247071(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/10
F25B 1/053
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却流体から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、冷媒を多段の羽根車によって圧縮する多段ターボ圧縮機と、圧縮された冷媒ガスを冷却流体で冷却して凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒液の一部を蒸発させて蒸発した冷媒ガスを前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分に供給する中間冷却器であるエコノマイザとを備えたターボ冷凍機において、
前記エコノマイザと前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分とを連通する流路に設けられ、前記流路を開閉する制御弁と、
前記圧縮された冷媒ガスを、前記エコノマイザを通過させずに前記凝縮器から前記蒸発器に戻すホットガスバイパス流路と、
前記ホットガスバイパス流路に設けられたホットガスバイパス弁と、
前記蒸発器を流れる冷水の少なくとも温度に基づいて前記ターボ冷凍機の冷凍容量を算出する制御装置とを備え、
前記多段ターボ圧縮機は、前記多段羽根車を回転させる圧縮機モータと、該圧縮機モータを駆動するインバータと、前記多段羽根車への冷媒ガスの吸込流量を調整する開度可変なベーンとを備えており、
前記制御装置は、前記冷凍容量の低下に従って、
前記インバータを介して前記多段ターボ圧縮機の回転速度を低下させる第1の制御ステップと、
前記ベーンの開度を小さくする第2の制御ステップと、
前記制御弁を閉じる第3の制御ステップと、
前記ホットガスバイパス弁を開く第4の制御ステップをこの順に実行し、
前記制御装置は、前記第3の制御ステップにおいて、前記制御弁を閉じると同時またはその直後に、前記ベーンの開度を大きくすることを特徴とするターボ冷凍機。
【請求項2】
前記制御弁は、その開度が可変に構成されており、
前記制御装置は、前記第3の制御ステップにおいて、前記制御弁の開度を前記冷凍容量の低下に従って減少させることを特徴とする請求項1に記載のターボ冷凍機。
【請求項3】
前記ホットガスバイパス弁は、その開度が可変に構成されており、
前記制御装置は、前記第4の制御ステップにおいて、前記ホットガスバイパス弁の開度を前記冷凍容量の低下に従って増加させることを特徴とする請求項1に記載のターボ冷凍機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第4の制御ステップにおいて、前記ホットガスバイパス弁を開くと同時またはその直後に、前記ベーンの開度を大きくすることを特徴とする請求項1に記載のターボ冷凍機。
【請求項5】
被冷却流体から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、冷媒を多段の羽根車によって圧縮する多段ターボ圧縮機と、圧縮された冷媒ガスを冷却流体で冷却して凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒液の一部を蒸発させて蒸発した冷媒ガスを前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分に供給する中間冷却器であるエコノマイザとを備えたターボ冷凍機において、
前記エコノマイザと前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分とを連通する流路に設けられ、前記流路を開閉する制御弁と、
前記圧縮された冷媒ガスを、前記エコノマイザを通過させずに前記凝縮器から前記蒸発器に戻すホットガスバイパス流路と、
前記ホットガスバイパス流路に設けられたホットガスバイパス弁と、
前記蒸発器を流れる冷水の少なくとも温度に基づいて前記ターボ冷凍機の冷凍容量を算出する制御装置とを備え、
前記多段ターボ圧縮機は、前記多段羽根車を回転させる圧縮機モータと、前記多段羽根車への冷媒ガスの吸込流量を調整する開度可変なベーンとを備えており、
前記制御装置は、前記冷凍容量の低下に従って、
前記ベーンの開度を小さくする第1の制御ステップと、
前記制御弁を閉じる第2の制御ステップと、
前記ホットガスバイパス弁を開く第3の制御ステップをこの順に実行し、
前記制御装置は、前記第2の制御ステップにおいて、前記制御弁を閉じると同時またはその直後に、前記ベーンの開度を大きくすることを特徴とするターボ冷凍機。
【請求項6】
前記制御弁は、その開度が可変に構成されており、
前記制御装置は、前記第2の制御ステップにおいて、前記制御弁の開度を前記冷凍容量の低下に従って減少させることを特徴とする請求項5に記載のターボ冷凍機。
【請求項7】
前記ホットガスバイパス弁は、その開度が可変に構成されており、
前記制御装置は、前記第3の制御ステップにおいて、前記ホットガスバイパス弁の開度を前記冷凍容量の低下に従って増加させることを特徴とする請求項5に記載のターボ冷凍機。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第3の制御ステップにおいて、前記ホットガスバイパス弁を開くと同時またはその直後に、前記ベーンの開度を大きくすることを特徴とする請求項5に記載のターボ冷凍機。
【請求項9】
被冷却流体から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、冷媒を多段の羽根車によって圧縮する多段ターボ圧縮機と、圧縮された冷媒ガスを冷却流体で冷却して凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒液の一部を蒸発させて蒸発した冷媒ガスを前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分に供給する中間冷却器であるエコノマイザと、前記エコノマイザと前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分とを連通する流路に設けられ、前記流路を開閉する制御弁と、前記圧縮された冷媒ガスを、前記エコノマイザを通過させずに前記凝縮器から前記蒸発器に戻すホットガスバイパス流路と、前記ホットガスバイパス流路に設けられたホットガスバイパス弁と、前記蒸発器を流れる冷水の少なくとも温度に基づいてターボ冷凍機の冷凍容量を算出する制御装置とを備えたターボ冷凍機の制御方法であって、
前記冷凍容量の低下に従って、
前記多段羽根車に連結された圧縮機モータを駆動するためのインバータを介して前記多段ターボ圧縮機の回転速度を低下させる第1の制御ステップと、
前記多段羽根車への冷媒ガスの吸込流量を調整するベーンの開度を小さくする第2の制御ステップと、
前記制御弁を閉じる第3の制御ステップと、
前記ホットガスバイパス弁を開く第4の制御ステップをこの順に実行し、
前記第3の制御ステップにおいて、前記制御弁を閉じると同時またはその直後に、前記ベーンの開度を大きくすることを特徴とするターボ冷凍機の制御方法。
【請求項10】
被冷却流体から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、冷媒を多段の羽根車によって圧縮する多段ターボ圧縮機と、圧縮された冷媒ガスを冷却流体で冷却して凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒液の一部を蒸発させて蒸発した冷媒ガスを前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分に供給する中間冷却器であるエコノマイザと、前記エコノマイザと前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分とを連通する流路に設けられ、前記流路を開閉する制御弁と、前記圧縮された冷媒ガスを、前記エコノマイザを通過させずに前記凝縮器から前記蒸発器に戻すホットガスバイパス流路と、前記ホットガスバイパス流路に設けられたホットガスバイパス弁と、前記蒸発器を流れる冷水の少なくとも温度に基づいてターボ冷凍機の冷凍容量を算出する制御装置とを備えたターボ冷凍機の制御方法であって、
前記冷凍容量の低下に従って、
前記多段羽根車への冷媒ガスの吸込流量を調整するベーンの開度を小さくする第1の制御ステップと、
前記制御弁を閉じる第2の制御ステップと、
前記ホットガスバイパス弁を開く第3の制御ステップをこの順に実行し、
前記第2の制御ステップにおいて、前記制御弁を閉じると同時またはその直後に、前記ベーンの開度を大きくすることを特徴とするターボ冷凍機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エコノマイザを備えたターボ冷凍機に係り、特に多段圧縮エコノマイザサイクルを用いたターボ冷凍機及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍空調装置などに利用されるターボ冷凍機は、冷媒を封入したクローズドシステムで構成され、冷水(被冷却流体)から熱を奪って冷媒が蒸発して冷凍効果を発揮する蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した冷媒ガスを圧縮して高圧の冷媒ガスにする圧縮機と、高圧の冷媒ガスを冷却水(冷却流体)で冷却して凝縮させる凝縮器と、前記凝縮した冷媒を減圧して膨張させる膨張弁(膨張機構)とを、冷媒配管によって連結して構成されている。そして、圧縮機として冷媒ガスを多段の羽根車によって多段に圧縮する多段圧縮機を用いた場合は、凝縮器と蒸発器の間の冷媒配管中に設置した中間冷却器であるエコノマイザで生じる冷媒ガスを圧縮機の中間段(多段の羽根車の中間部分)に導入することが行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−236430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ターボ冷凍機には、運転環境によってはその冷凍容量(冷凍能力)をゼロ近くまで低下させることを要求される場合がある。しかしながら、従来のターボ冷凍機では冷凍容量をゼロ近くまで低下させることができず、そのような要求に応えることができなかった。
本発明は、上述した従来の問題点を解決するためになされたものであり、冷凍容量を限りなくゼロ近くまで下げることができるターボ冷凍機およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の第1の態様は、被冷却流体から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、冷媒を多段の羽根車によって圧縮する多段ターボ圧縮機と、圧縮された冷媒ガスを冷却流体で冷却して凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒液の一部を蒸発させて蒸発した冷媒ガスを前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分に供給する中間冷却器であるエコノマイザとを備えたターボ冷凍機において、前記エコノマイザと前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分とを連通する流路に設けられ、前記流路を開閉する制御弁と、前記圧縮された冷媒ガスを、前記エコノマイザを通過させずに前記凝縮器から前記蒸発器に戻すホットガスバイパス流路と、前記ホットガスバイパス流路に設けられたホットガスバイパス弁と、前記蒸発器を流れる冷水の少なくとも温度に基づいて前記ターボ冷凍機の冷凍容量を算出する制御装置とを備え、前記多段ターボ圧縮機は、前記多段羽根車を回転させる圧縮機モータと、該圧縮機モータを駆動するインバータと、前記多段羽根車への冷媒ガスの吸込流量を調整する開度可変なベーンとを備えており、前記制御装置は、前記冷凍容量の低下に従って、前記インバータを介して前記多段ターボ圧縮機の回転速度を低下させる第1の制御ステップと、前記ベーンの開度を小さくする第2の制御ステップと、前記制御弁を閉じる第3の制御ステップと、前記ホットガスバイパス弁を開く第4の制御ステップをこの順に実行し、前記制御装置は、前記第3の制御ステップにおいて、前記制御弁を閉じると同時またはその直後に、前記ベーンの開度を大きくすることを特徴とする。
【0006】
本発明の第2の態様は、被冷却流体から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、冷媒を多段の羽根車によって圧縮する多段ターボ圧縮機と、圧縮された冷媒ガスを冷却流体で冷却して凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒液の一部を蒸発させて蒸発した冷媒ガスを前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分に供給する中間冷却器であるエコノマイザとを備えたターボ冷凍機において、前記エコノマイザと前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分とを連通する流路に設けられ、前記流路を開閉する制御弁と、前記圧縮された冷媒ガスを、前記エコノマイザを通過させずに前記凝縮器から前記蒸発器に戻すホットガスバイパス流路と、前記ホットガスバイパス流路に設けられたホットガスバイパス弁と、前記蒸発器を流れる冷水の少なくとも温度に基づいて前記ターボ冷凍機の冷凍容量を算出する制御装置とを備え、前記多段ターボ圧縮機は、前記多段羽根車を回転させる圧縮機モータと、前記多段羽根車への冷媒ガスの吸込流量を調整する開度可変なベーンとを備えており、前記制御装置は、前記冷凍容量の低下に従って、前記ベーンの開度を小さくする第1の制御ステップと、前記制御弁を閉じる第2の制御ステップと、前記ホットガスバイパス弁を開く第3の制御ステップをこの順に実行し、前記制御装置は、前記第2の制御ステップにおいて、前記制御弁を閉じると同時またはその直後に、前記ベーンの開度を大きくすることを特徴とする。
【0007】
本発明の他の態様は、被冷却流体から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、冷媒を多段の羽根車によって圧縮する多段ターボ圧縮機と、圧縮された冷媒ガスを冷却流体で冷却して凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒液の一部を蒸発させて蒸発した冷媒ガスを前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分に供給する中間冷却器であるエコノマイザと、前記エコノマイザと前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分とを連通する流路に設けられ、前記流路を開閉する制御弁と、前記圧縮された冷媒ガスを、前記エコノマイザを通過させずに前記凝縮器から前記蒸発器に戻すホットガスバイパス流路と、前記ホットガスバイパス流路に設けられたホットガスバイパス弁と、前記蒸発器を流れる冷水の少なくとも温度に基づいてターボ冷凍機の冷凍容量を算出する制御装置とを備えたターボ冷凍機の制御方法であって、前記冷凍容量の低下に従って、前記多段羽根車に連結された圧縮機モータを駆動するためのインバータを介して前記多段ターボ圧縮機の回転速度を低下させる第1の制御ステップと、前記多段羽根車への冷媒ガスの吸込流量を調整するベーンの開度を小さくする第2の制御ステップと、前記制御弁を閉じる第3の制御ステップと、前記ホットガスバイパス弁を開く第4の制御ステップをこの順に実行し、前記第3の制御ステップにおいて、前記制御弁を閉じると同時またはその直後に、前記ベーンの開度を大きくすることを特徴とする。
【0008】
本発明のさらに他の態様は、被冷却流体から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、冷媒を多段の羽根車によって圧縮する多段ターボ圧縮機と、圧縮された冷媒ガスを冷却流体で冷却して凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒液の一部を蒸発させて蒸発した冷媒ガスを前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分に供給する中間冷却器であるエコノマイザと、前記エコノマイザと前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分とを連通する流路に設けられ、前記流路を開閉する制御弁と、前記圧縮された冷媒ガスを、前記エコノマイザを通過させずに前記凝縮器から前記蒸発器に戻すホットガスバイパス流路と、前記ホットガスバイパス流路に設けられたホットガスバイパス弁と、前記蒸発器を流れる冷水の少なくとも温度に基づいてターボ冷凍機の冷凍容量を算出する制御装置とを備えたターボ冷凍機の制御方法であって、前記冷凍容量の低下に従って、前記多段羽根車への冷媒ガスの吸込流量を調整するベーンの開度を小さくする第1の制御ステップと、前記制御弁を閉じる第2の制御ステップと、前記ホットガスバイパス弁を開く第3の制御ステップをこの順に実行し、前記第2の制御ステップにおいて、前記制御弁を閉じると同時またはその直後に、前記ベーンの開度を大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、(1)インバータによる多段ターボ圧縮機の回転速度制御、(2)ベーン開度の制御、(3)エコノマイザサイクルの停止、および(4)ホットガスバイパス、の4段階の制御により、冷凍容量をゼロ近くまで下げることができる。したがって、ターボ冷凍機の低負荷運転が可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、インバータを備えないターボ冷凍機においても、冷凍容量をゼロ近くまで下げることができる。すなわち、(1)ベーン開度の制御、(2)エコノマイザサイクルの停止、および(3)ホットガスバイパス、の3段階の制御により、冷凍容量をゼロ近くまで下げることができる。したがって、ターボ冷凍機の低負荷運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るターボ冷凍機の一実施形態を示す模式図である。
図2】4段階の制御に従ってターボ冷凍機の運転領域が4つに分けられることを示すグラフである。
図3】第3の制御ステップにおいて制御弁を閉じることにより冷凍容量が低下する様子を説明するためのモリエル線図である。
図4】本発明に係るターボ冷凍機の他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るターボ冷凍機及びその制御方法の実施形態を図面を参照して説明する。図1乃至4において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明に係るターボ冷凍機の一実施形態を示す模式図である。図1に示す実施形態においては、二段圧縮単段エコノマイザサイクルを用いたターボ冷凍機について説明する。図1に示すように、ターボ冷凍機は、冷媒を圧縮する多段ターボ圧縮機TCと、圧縮された冷媒ガスを冷却水(冷却流体)で冷却して凝縮させる凝縮器4と、冷水(被冷却流体)から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器5と、凝縮器4と蒸発器5との間に配置される中間冷却器であるエコノマイザ6と、エコノマイザ6の前後に設置され凝縮冷媒を減圧して膨張させる膨張機構8,8とを備え、これら各機器を冷媒が循環する冷媒配管9によって連結して構成されている。
【0014】
図1に示す実施形態においては、多段ターボ圧縮機TCは、二段ターボ圧縮機からなり、一段目羽根車1と、二段目羽根車2と、これらの羽根車1,2を回転させる圧縮機モータ3と、圧縮機モータ3を駆動するインバータ14とから構成されている。圧縮機モータ3およびこれに連結された羽根車1,2の回転速度は、インバータ14によって変速可能となっている。さらに、インバータ14は制御装置20に接続されており、圧縮機モータ3および羽根車1,2の回転速度は、インバータ14を介して制御装置20によって制御される。
【0015】
一段目羽根車1の吸込側には、冷媒ガスの羽根車1,2への吸込流量を調整するベーン15が設けられている。このベーン15は放射状に配置されており、各ベーン15が自身の軸心を中心として互いに同期して所定の角度だけ回転することにより、ベーン15の開度が変更される。多段ターボ圧縮機TCのサージング防止のためにベーン15の最小開度は0°ではなく、ベーン15が完全に閉じないようになっている。例えば、ベーン15の最小開度は10°である。ベーン15の開度は、制御装置20によって制御される。
【0016】
一段目羽根車1の吐出側と二段目羽根車2の吸込側とは、流路10によって接続されている。多段ターボ圧縮機TCにおいては、蒸発器5から一段目羽根車1に導入された冷媒ガスは一段目羽根車1により一段目の圧縮が行われ、次に流路10によって二段目羽根車2に導入された冷媒ガスは二段目羽根車2により二段目の圧縮が行われ、その後、凝縮器4に送られる。
【0017】
エコノマイザ6と前記流路10とは流路11によって接続されており、エコノマイザ6で分離された冷媒ガスは多段ターボ圧縮機TCの多段の圧縮段(この例では2段)の中間部分(この例では一段目と二段目の間の部分)に導入されるようになっている。エコノマイザ6内の液面は、液面計LVによって測定され、その測定値は制御装置20に送られるようになっている。エコノマイザ6と多段ターボ圧縮機TCとを接続する流路11には、電動式の制御弁7が設けられており、エコノマイザ6から多段ターボ圧縮機TCの圧縮段への冷媒ガスの供給および供給停止が制御できるようになっている。制御弁7は、その開度が調整できるように構成されており、例えば開度可変な電動弁が制御弁7として使用される。制御弁7の開度は制御装置20により制御される。
【0018】
図1に示すように構成されたターボ冷凍機の冷凍サイクルでは、多段ターボ圧縮機TCと凝縮器4と蒸発器5とエコノマイザ6とを冷媒が循環し、蒸発器5で得られる冷熱源で冷水が製造されて負荷に対応し、冷凍サイクル内に取り込まれた蒸発器5からの熱量および圧縮機モータ3から供給される多段ターボ圧縮機TCの仕事に相当する熱量が凝縮器4に供給される冷却水に放出される。一方、エコノマイザ6にて分離された冷媒ガスは多段ターボ圧縮機TCの多段圧縮段の中間部分に導入され、一段目羽根車1からの冷媒ガスと合流して二段目羽根車2により圧縮される。2段圧縮単段エコノマイザサイクルによれば、エコノマイザ6による冷凍効果部分が付加されるので、その分だけ冷凍効果が増加し、エコノマイザ6を設置しない場合に比べて冷凍効果を増加させることができる。
【0019】
図1に示すように、ターボ冷凍機は、冷媒ガスを凝縮器4から蒸発器5に導くホットガスバイパス流路25と、このホットガスバイパス流路25を開閉するためのホットガスバイパス弁26とを備えている。ホットガスバイパス弁26は、その開度が調整可能に構成されており、例えば開度可変な電動弁から構成されている。通常の冷凍運転では、ホットガスバイパス弁26は閉じられている。ホットガスバイパス弁26を開くと、多段ターボ圧縮機TCによって圧縮された冷媒ガスは、エコノマイザ6を通らずに凝縮器4から蒸発器5に送られる。
【0020】
ターボ冷凍機は、蒸発器5に流入する冷水の温度を測定する第1の温度測定器としての温度センサS1と、蒸発器5から流出する冷水の温度を測定する第2の温度測定器としての温度センサS2と、蒸発器5を流れる冷水の流量計FMとをさらに備えている。温度センサS1,S2および流量計FMは制御装置20に接続されており、温度センサS1,S2および流量計FMの出力値は制御装置20に送られるようになっている。
【0021】
制御装置20は、温度センサS1,S2によって取得された冷水入口温度T1および冷水出口温度T2の差ΔTと、流量計FMによって取得された冷水の流量とに基づいて、冷凍機の現在の冷凍容量を算出する。より具体的には、温度差ΔTと冷水の流量との積から現在の冷凍負荷を求めることができる。あるいは、制御装置20は、単に冷水入口温度T1から冷凍機の現在の冷凍容量を算出してもよい。この場合、流量計FMは省略してもよい。
【0022】
制御装置20は、冷水出口温度T2が所定の目標温度に維持されるように、インバータ14、ベーン15、制御弁7、およびホットガスバイパス弁26を制御する。蒸発器5を流れる冷水の流量が一定の条件下では、ターボ冷凍機の冷凍容量(冷凍負荷)は、冷水入口温度T1に依存する。すなわち、冷水入口温度T1が低くなると、ターボ冷凍機の冷凍容量を下げる必要がある。近年では、ターボ冷凍機の冷凍容量を20%未満にまで下げることが要求されることがある。本発明の冷凍機は、以下に説明する4段階制御によりその冷凍容量をゼロ近くまで連続的に(すなわち滑らかに)低下させることができる。
すなわち、制御装置20は、
(1)インバータ14による多段ターボ圧縮機TCの回転速度制御、
(2)ベーン15の開度制御、
(3)制御弁7を閉じることによるエコノマイザサイクルの停止、
(4)ホットガスバイパス、
の4段階で冷凍容量を低下させる。
【0023】
第1の制御ステップでは、算出された冷凍容量が低下するにしたがって、制御装置20はインバータ14の出力周波数を制御して羽根車1,2の回転速度を低下させる。冷凍容量がさらに低下して所定の値に達すると、制御装置20は、第2の制御ステップとして、ベーン15の開度を小さくする。ベーン15の開度は、冷凍容量の低下に従って減少される。
【0024】
さらに冷凍容量が低下してベーン15がその最小開度まで閉じると、制御装置20は、第3の制御ステップとして、制御弁7の開度を小さくする。制御弁7の開度は、冷凍容量の低下に従って減少される。さらに冷凍容量が低下して制御弁7が完全に閉じると、制御装置20は、第4の制御ステップとして、ホットガスバイパス弁26を開く。具体的には、制御弁7が完全に閉じた後、ホットガスバイパス弁26の開度を冷凍容量の低下に従って増加させる。
【0025】
このように、演算により求められた冷凍容量に従って、インバータ制御(第1の制御ステップ)、ベーン制御(第2の制御ステップ)、制御弁7によるエコノマイザサイクルの制御(第3の制御ステップ)、およびホットガスバイパス弁制御(第4の制御ステップ)をこの順に実行することにより、ターボ冷凍機の冷凍容量(冷凍負荷)を100%から0%近くまで低下させることができる。
【0026】
図2は、上記4段階の制御に従ってターボ冷凍機の運転領域が4つに分けられることを示すグラフである。図2に示すサージングラインは、多段ターボ圧縮機TCの吸込流量に対して運転ヘッドが高すぎると、サージングが起こるラインである。したがって、ターボ冷凍機は、このサージングラインよりも低い運転可能上限ライン以下の領域内で運転される。図2に示すように、ターボ冷凍機の運転領域は、インバータ制御領域、ベーン制御領域、エコノマイザサイクル制御領域、およびホットガスバイパス弁制御領域の4つの領域に分割される。このように4つの制御ステップに従ってターボ冷凍機が運転されるので、ターボ冷凍機の冷凍容量(冷凍能力)を滑らかに低下させることができる。特に、本発明によれば、冷凍容量を100%から0%近くまで滑らかに(連続的に)低下させることができる。
【0027】
図3は、第3の制御ステップにおいて制御弁7を閉じることにより冷凍容量が低下する様子を説明するためのモリエル線図である。制御弁7が開かれたときのエコノマイザ6による冷凍効果は、図3に示す斜線部で示されている。制御弁7を閉じると、エコノマイザ6による冷凍効果が失われるので、冷媒の多段ターボ圧縮機TCへの吸込流量を減ずることなく、冷凍容量を低下させることが可能となり、低負荷運転時での著しい効率低下を防ぐことができる。例えば、冷水入口温度T1が32℃、冷水出口温度T2が7℃の温度条件下では、制御弁7を閉じることで冷凍容量を約15%減ずることが可能である。この制御弁7の開度は、0〜100%の範囲で調整可能であるので、第3の制御ステップでは冷凍容量を滑らかに低下させることができる。
【0028】
他の実施形態として、制御弁7として、開閉動作のみの弁(すなわち、開度調整ができない弁)を使用してもよい。この場合、第3の制御ステップでは、制御弁7が閉じられた結果、冷凍容量が急激に低下することとなる。このような急激な冷凍容量の低下を避けるために、第3の制御ステップで制御弁7を閉じると同時に、ベーン15の開度を大きくすることが好ましい。このときのべーンの開度は、冷水出口温度T2が目標温度に維持されるために必要な開度であり、その時の運転状態に依存して変わりうる。ベーン15を開くタイミングは、制御弁7が閉じるのと同時でなくてもよく、制御弁7が閉じた直後であってもよい。
【0029】
ベーン15を開いた後のベーン15の開度は、演算により求められた現在の冷凍容量に従って制御される。その後、冷凍容量がさらに低下してベーン15が最低開度まで閉じたときは、次に上述の第4の制御ステップが実行される。すなわち、上述したように、現在の冷凍容量に従ってホットガスバイパス弁26を開く。
【0030】
本実施形態によれば、制御弁7が閉じると同時または直後にベーン15の開度を大きくすることにより、冷凍容量の急激な低下が回避され、冷凍容量を滑らかに下げることができる。また、制御弁7として、単に流路11を開閉するだけの簡単な構造の弁を使用することができる。したがって、そのような構造の弁が使用されている既存のターボ冷凍機にも本実施形態を適用することができる。
【0031】
さらに他の実施形態として、ホットガスバイパス弁26として、開閉動作のみの弁(すなわち、開度調整ができない弁)を使用してもよい。この場合、第4の制御ステップでは、ホットガスバイパス弁26が開かれた結果、冷凍容量が急激に低下することとなる。このような急激な冷凍容量の低下を避けるために、上述の実施形態と同様に、第4の制御ステップでホットガスバイパス弁26を開くと同時またはその直後に、ベーン15の開度を大きくすることが好ましい。このときのべーンの開度は、冷水出口温度T2が目標温度に維持されるために必要な開度であり、その時の運転状態に依存して変わりうる。その後、ベーン15の開度は、演算により求められた現在の冷凍容量に従って制御される。
【0032】
本実施形態をより詳細に説明する。第4の制御ステップでホットガスバイパス弁26を開く場合には、ホットガスバイパス弁26を開くと同時またはその直後にベーン15の開度を大きくする。このときのべーンの開度は、冷水出口温度T2が目標温度に維持されるために必要な開度である。その後、冷凍容量が低下するに従って、ベーン15の開度を減少させる。
【0033】
このように、ホットガスバイパス弁26を開くと同時またはその直後にベーン15の開度を大きくすることにより、冷凍容量の急激な低下が回避され、冷凍容量を滑らかに下げることができる。また、ホットガスバイパス弁26として、単にホットガスバイパス流路25を開閉するだけの簡単な構造の弁を使用することができる。したがって、そのような構造の弁が使用されている既存のターボ冷凍機にも本実施形態を適用することができる。
【0034】
上述したターボ冷凍機はインバータを備えたタイプであるが、図4に示すように、インバータを備えないタイプのターボ冷凍機も存在する。このタイプのターボ冷凍機では、以下の3段階制御により、その冷凍容量をゼロ近くまで連続的に(すなわち滑らかに)低下させることができる。
(1)ベーンの開度制御(第1の制御ステップ)
(2)制御弁7を閉じることによるエコノマイザサイクルの停止(第2の制御ステップ)
(3)ホットガスバイパス(第3の制御ステップ)
これら第1〜第3の制御ステップは、上述した第2〜第4の制御ステップと同じに実行される。したがって、このタイプのターボ冷凍機においても、その冷凍容量をゼロ近くまで連続的に低下させることが可能である。
【0035】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1 一段目羽根車
2 二段目羽根車
3 圧縮機モータ
4 凝縮器
5 蒸発器
6 エコノマイザ
7 制御弁
8 膨張機構
9,10,11 流路
14 インバータ
15 ベーン
20 制御装置
25 ホットガスバイパス流路
26 ホットガスバイパス弁
LV 液面計
S1,S2 温度センサ
FM 流量計
TC 多段ターボ圧縮機
図1
図2
図3
図4