(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981208
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】形成方法及びゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20160818BHJP
【FI】
A63B53/04 F
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-99180(P2012-99180)
(22)【出願日】2012年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-226204(P2013-226204A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】坂 航
【審査官】
中澤 真吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−261886(JP,A)
【文献】
特開2005−287534(JP,A)
【文献】
特開2009−034393(JP,A)
【文献】
特開2009−066312(JP,A)
【文献】
特開2009−178257(JP,A)
【文献】
米国特許第08113965(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0318243(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0300967(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0087270(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドにおいて、スコアラインよりも幅が狭い細溝を形成する形成方法であって、
フェース面に、前記細溝のもととなる基本溝を形成する第1工程と、
前記基本溝の少なくとも一方の側壁に窪みを形成することで、前記一方の側壁と前記フェース面との角度を、より小さくする第2工程と、
を備え、
前記細溝の幅が50μm以上400μm以下であり、
前記細溝の深さが10μm以上である形成方法。
【請求項2】
前記第2工程では、
前記基本溝の少なくとも一方の側壁にレーザ光を照射して窪みを形成する請求項1に記載の形成方法。
【請求項3】
前記第2工程では、
前記フェース面に対して垂直な方向から傾斜した方向にレーザ光を照射する請求項2に記載の形成方法。
【請求項4】
前記第1工程では、
前記フェース面にレーザ光を照射することで前記基本溝を形成する請求項2に記載の形成方法。
【請求項5】
前記第2工程では、前記角度を60度以上110度以下にする請求項1に記載の形成方法。
【請求項6】
前記細溝を、前記スコアラインと平行に形成した請求項1に記載の形成方法。
【請求項7】
前記一方の側壁が、前記基本溝の他方の側壁に対して前記フェース面の上側に位置する側壁である請求項6に記載の形成方法。
【請求項8】
フェース面に形成され、互いに平行な複数のスコアラインと、
前記フェース面に形成され、前記スコアラインよりも幅が狭い細溝と、
を備えたゴルフクラブヘッドであって、
前記細溝は、その一方の側壁に窪みが形成されたことにより、前記一方の側壁と前記フェース面との角度が、前記窪みの形成前よりも小さく、
前記細溝の幅が50μm以上400μm以下であり、
前記細溝の深さが10μm以上であるゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴルフクラブヘッドのフェース面にはトウ−ヒール方向に互いに平行な複数の直線状の溝が形成されている(例えば特許文献1及び2)。この溝はスコアライン、マーキングライン、フェースライン等と呼ばれている(本書においてはスコアラインと称する。)。このスコアラインは、打球のバックスピン量を増大させたり、或いは、雨天時やラフからのショットの場合に、打球のバックスピン量が著しく低減することを抑制する効果がある。また、スコアラインよりも細かい溝をフェース面に形成することで、バックスピン量の増大や雨天時等におけるバックスピン量の低減抑制を図ることが提案されている(例えば、特許文献3及び4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−224250号公報
【特許文献2】特開2004−141277号公報
【特許文献3】特開2011−234748号公報
【特許文献4】特開2011−234749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スコアラインのみではバックスピン量の増大効果や雨天時等におけるバックスピン量の低減抑制効果に限界がある。特に、競技用のゴルフクラブヘッドでは、スコアラインの仕様にルール上の制約があり、バックスピン量の更なる増大が困難である。そこで、スコアラインよりも細かい溝により、バックスピン量の増大効果や雨天時等におけるバックスピン量の低減抑制効果の更なる向上が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、スコアラインよりも細かい溝によるバックスピン量の増大効果やバックスピン量の低減抑制効果を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ゴルフクラブヘッドにおいて、スコアラインよりも幅が狭い細溝を形成する形成方法であって、フェース面に、前記細溝のもととなる基本溝を形成する第1工程と、前記基本溝の少なくとも一方の側壁に窪みを形成することで、前記一方の側壁と前記フェース面との角度を、より小さくする第2工程と、を備え
、前記細溝の幅が50μm以上400μm以下であり、前記細溝の深さが10μm以上である形成方法が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、フェース面に形成され、互いに平行な複数のスコアラインと、前記フェース面に形成され、前記スコアラインよりも幅が狭い細溝と、を備えたゴルフクラブヘッドであって、前記細溝は、その一方の側壁に窪みが形成されたことにより、前記一方の側壁と前記フェース面との角度が、前記窪みの形成前よりも小さ
く、前記細溝の幅が50μm以上400μm以下であり、前記細溝の深さが10μm以上であるゴルフクラブヘッドが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スコアラインよりも細かい溝によるバックスピン量の増大効果やバックスピン量の低減抑制効果を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの外観図。
【
図2】スコアライン及び細溝の断面図及び部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係るゴルフクラブヘッド1の外観図、
図2はスコアライン20及び細溝30の、その長手方向(トウ−ヒール方向)に直交する方向の断面図及び細溝30の部分拡大図である。
【0011】
同図の例はアイアン型のゴルフクラブヘッドに本発明を適用した例を示す。本発明は、アイアン型のゴルフクラブヘッド、特に、ミドルアイアン、ショートアイアン、ウェッジ型のゴルフクラブヘッドに好適であり、具体的には、ロフト角が30度以上70度以下、ヘッド重量が240g以上320g以下のゴルフクラブヘッドに好適である。しかし、本発明はウッド型やユーティリティー型(ハイブリッド型)のゴルフクラブヘッドにも適用可能である。
【0012】
ゴルフクラブヘッド1は、そのフェース面(打撃面)10に複数本のスコアライン20が形成されている。各々のスコアライン20はトウ−ヒール方向に延設された、互いに平行な直線状の溝であり、スコアライン20の長手方向と直交するd1方向に複数本形成されている。
図1及び
図2において、上側、下側とはゴルフクラブヘッド1のソール部を接地したときの上側、下側を意味する。
【0013】
本実施形態の場合、各々のスコアライン20の配設間隔(ピッチ)は等間隔(等ピッチ)であるが、配設間隔が異なっていてもよい。本実施形態において、スコアライン20の断面形状は、その長手方向の両端部(トウ側端部、ヒール側端部)を除き、同じである。また、各々のスコアライン20の断面形状は同じである。
【0014】
スコアライン20は、一対の側壁21と、底壁22とを有し、その断面形状は中心線CLsで左右対称な台形状に形成されている。なお、スコアライン20の断面形状は台形状に限られず、V字状等、他の形状でもよい。スコアライン20の縁23には丸みが形成されている。丸みの半径は例えば、0.05mm以上0.3mm以下である。
【0015】
スコアライン20の深さDs(底壁22とフェース面10との距離)は0.3mm以上が好ましい。ゴルフクラブヘッド1を競技用とする場合、ルールを充足する点で、深さDsは0.5mm以下とする。スコアライン20の幅Ws(30度測定法による幅)は0.6mm以上が好ましい。ゴルフクラブヘッド1を競技用とする場合、ルールを充足する点で、幅Wsは0.9mm以下とする。
【0016】
フェース面10には、複数の細溝30が形成されている。細溝30は、その幅Wがスコアライン20の幅Wsよりも狭い溝である。本実施形態の場合、細溝30はスコアライン20と平行で直線状に形成されている。しかし、スコアライン20と交差する方向に形成してもよく、また、曲線(例えば円弧状、楕円弧状等の弧状)に形成されてもよい。但し、直線状に形成した方が細溝30の加工が容易である。なお、各細溝30は一本の直線形状をなしているが、途中で途切れていてもよい。
【0017】
細溝30は隣接するスコアライン20間の領域に複数形成されている。なお、本実施形態では細溝30はスコアライン20の長手方向側方の領域には形成されていないが、ここに形成してもよい。
【0018】
細溝30は、上側の側壁31と下側の側壁32と底壁33とを有し、その断面形状は幅W方向の中心線CLで左右非対称である。本実施形態では、各細溝30が略同じ断面形状を有しているが、異なっていてもよい。幅Wは縁部31aと縁部32aとの間隔である。幅Wは例えば50μm以上400μm以下である。
【0019】
縁部31aはフェース面10と側壁31との境界部であり、縁部32aはフェース面10と側壁32との境界部である。細溝30の両側には隆起部34、34が形成されている。この隆起部34は細溝30をレーザ加工で形成することにより形成される。詳細は後述する。
【0020】
細溝30の深さDはフェース面10上の水等を排出する観点で、10μm以上であることが好ましい。ゴルフクラブヘッド1を競技用とする場合、ルールを充足する点で、深さDは25μm以下とする。その他、ゴルフクラブヘッド1を競技用とする場合、ルールを充足する点で、スコアライン20や細溝30の仕様をルールに適合するように設計する。
【0021】
本実施形態では、スコアライン20よりも幅が狭い細溝30を形成したことで、フェース面10とボールとの間の摩擦力を高めることができる。この結果、打球のバックスピン量を増大し、また、雨天時等におけるバックスピン量の低減を抑制できる。特に、縁部31aは縁部32aよりも鋭くなっているため、フェース面10とボールとの間の摩擦力を更に高めることができる。また、隆起部34が形成されているので、フェース面10とボールとの間の摩擦力を更に高めることができる。
【0022】
なお、ゴルフクラブヘッド1を競技用とする場合、ルールを充足する点で、隆起部34のフェース面10からの高さ(突出量)は5
μm以下であることが好ましい。また、フェース面10の表面粗さは、接触針の先端角度が30〜60度のコントレーサで180μ・inch以下であることが好ましい。
【0023】
次に、細溝30の形成方法について
図3及び
図4を参照して説明する。なお、フェース面10はゴルフクラブヘッド1に一体成形されていてもよいし、フェース面10を構成するフェース部材と、ヘッド本体とを別部材として接合してもよい。
【0024】
本実施形態では、レーザ加工により細溝30を形成する場合について説明する。
図3に示すように、細溝30を未形成の一次成形品1'は、治具2を介して不図示の加工装置に固定される。加工装置はレーザ光の照射部4を有する。そして、フェース面10に照射部4によりレーザ光を照射しながら、フェース面10(一次成形品1')又は照射部4を細溝30の形成方向に相対的に移動しながら、細溝30を形成する。
【0025】
細溝30の形成は2段階で行う。
図4はその説明図である。まず、フェース面10に細溝30のもととなる基本溝を形成する(第1工程)。状態ST1は一次成型品1’のフェース面10にレーザ光LBを照射している状態を示す。この場合は、レーザ光LBの照射方向をフェース面10に対して垂直な方向d2とし、フェース面10(一次成形品1')又は照射部4を細溝30の形成方向に相対的に移動する。
【0026】
その結果、状態ST2に示す基本溝30’が形成される。基本溝30’をレーザ加工により形成する結果として基本溝30’が盛り上がり、隆起部34、34が自然に形成される。基本溝30’は側壁31’、側壁32’及び底壁33’を有しており、同図の例では円弧状に形成されている。側壁31’とフェース面10との間の角度はθ0である。本実施形態のように側壁31’が曲面をなしている場合、角度θ0は側壁31’とフェース面10との縁部31a’における接線と、フェース面10との角度とする。
【0027】
次に、側壁31’とフェース面10との角度θ0を、より小さくする加工を行う(第2工程)。この加工では、基本溝30’の側壁31’にレーザ光を照射して側壁31’に窪みを形成する。
【0028】
状態ST3は側壁31’にレーザ光
LBを照射している状態を示す。この場合は、レーザ光LBの照射方向をフェース面10に対して垂直な方向d2から傾斜した方向d3とし、フェース面10(一次成形品1')又は照射部4を細溝30の形成方向に相対的に移動する。
【0029】
その結果、状態ST4に示すように細溝30が形成される。側壁31とフェース面10との間の角度はθ1(<θ0)である。本実施形態のように側壁31が曲面をなしている場合、角度θ1は側壁31とフェース面10との縁部31aにおける接線と、フェース面10との角度とする。角度はθ1が小さくなればなるほど、バックスピン量の増大が期待できるが、余り小さくすると縁部31aが脆くなる。よって、角度θ1は60度以上110度以下であることが好ましい。
【0030】
なお、側壁32’にもレーザー光を照射して側壁32’にも窪みを形成し、側壁32’とフェース面10との角度を、より小さくしてもよい。しかし、バックスピン量の増大効果は、打撃時に上側となる側壁31とフェース面10との角度θ1に依存し易い。したがって、加工の工数を下げる点で側壁31’側のみに窪みを形成することが好ましい。
【0031】
このようにして本実施形態では、細溝30を形成することができる。一般に、溝が細かければ細かい程、その断面形状を所望の断面形状とすることは容易ではない。しかし、レーザ光の照射により比較的簡易に細溝30を形成できる。その際、基本溝30’の形成を省略して、最初から状態ST3のレーザ光の照射を行うことも考えられる。しかし、最初から状態ST3のレーザ光の照射を行うとレーザ光がフェース面10で反射してうまく加工できない場合がある。本実施形態では、レーザ光の照射を、その向きを変えて2段階で行うことで、所望の断面形状を比較的簡易に得られる。
【0032】
本実施形態では、基本溝30’の形成をレーザ加工で行ったが、これに限られない。例えば、切削加工、鍛造又はエッチングにより形成してもよい。しかし、基本溝30’に対して状態ST3のレーザ加工を行う場合には、基本溝30’もレーザ加工とすることがより効率的である。また、状態ST3における側壁31’に対する窪みの形成はレーザ加工以外の加工方法(例えば、切削加工やエッチング)でもよい。しかし、レーザ加工であれば、比較的簡易に精度よく、側壁31’に窪みを形成できる。
【0033】
また、隆起部34、34は除去してもよい。
図5は隆起部34、34を除去した場合の細溝30の断面形状を例示している。隆起部34の除去は、例えば、切削加工や研磨加工で行うことができる。
【0034】
細溝30の形成後には、フェース面10の硬度を硬くする表面処理を行うことが好ましい。このような表面処理としては、浸炭処理、窒化処理、軟窒化処理、PVD(Physical Vepor Deposition)処理、イオンプレーティング、DLC(ダイヤモンド ライク カーボン)処理、めっき処理等が挙げられる。特に、浸炭処理や窒化処理といった、表面に別の金属層を形成せず、表面を改質する表面処理が好ましい。