特許第5981225号(P5981225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981225
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   H02K1/27 501D
   H02K1/27 501K
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-122708(P2012-122708)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-251930(P2013-251930A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】泉 雅宏
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−182824(JP,A)
【文献】 特開2006−033982(JP,A)
【文献】 特開2002−247784(JP,A)
【文献】 米国特許第5463262(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に延びると共に少なくとも一つの永久磁石が内部に挿入される磁石挿入孔が形成された回転子積層鉄心であって、
前記磁石挿入孔の外周側の面または内周側の面は、前記積層方向と直交する方向に延びる凸部及び凹部が前記積層方向において交互に並ぶ凹凸面であり、
前記凸部は、
前記永久磁石とは非接触の状態で前記永久磁石のうち前記積層方向における各端部に対向するようにそれぞれ配置されており、
前記磁石挿入孔内において前記永久磁石が傾いた状態で樹脂によって固定されるのを抑制する機能を有し、
前記凹部は、内部に前記樹脂を溜める機能を有し、
前記永久磁石は、前記凹部内に溜まる前記樹脂により前記磁石挿入孔のうち前記凹凸面とは反対側の面に押しつけられることを特徴とする回転子積層鉄心。
【請求項2】
請求項1に記載の回転子積層鉄心において、前記磁石挿入孔内には、前記積層方向において一列に並ぶように複数の前記永久磁石が挿入されており、
前記凸部は、前記各永久磁石とは非接触の状態で前記各永久磁石のうち前記積層方向における各端部に対向するようにそれぞれ配置されていることを特徴とする回転子積層鉄心。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転子積層鉄心において、前記磁石挿入孔の入口近傍であって且つ前記磁石挿入孔のうち前記凹凸面とは反対側の面に前記積層方向において延びると共に前記磁石挿入孔内への前記樹脂の注入路として機能する樹脂注入溝が形成されており
前記樹脂注入溝と前記凹部とは連通していることを特徴とする回転子積層鉄心。
【請求項4】
請求項に記載の回転子積層鉄心において、前記樹脂注入溝は前記磁石挿入孔のうち前記凹凸面とは反対側の面の中央に形成されることを特徴とする回転子積層鉄心。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の回転子積層鉄心において、前記樹脂注入溝は前記積層方向から見て半円形状を呈することを特徴とする回転子積層鉄心。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の回転子積層鉄心において、前記凸部の厚さは1〜4mmであることを特徴とする回転子積層鉄心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子積層鉄心に設けられた複数の磁石挿入孔に、それぞれ永久磁石が挿入され樹脂固定される回転子積層鉄心に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石挿入孔に挿入された永久磁石を、磁石挿入孔のうち回転子積層鉄心の外周側の面あるいは内周側の面のいずれか一方の面に寄せて、樹脂固定する回転子積層鉄心が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、磁石挿入孔の一方の幅方向端部に形成された樹脂を注入するための注入口と、他方の幅方向端部に形成された樹脂を排出するための排出孔とを有し、磁石挿入孔の外周側の面に樹脂の回り込みを促進する溝を形成することで、樹脂が磁石挿入孔の外周側に回り込み、永久磁石を磁石挿入孔の内周側の面に寄せて固定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4734957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では、磁石挿入孔の一方の幅方向端部より樹脂が注入されるため、樹脂が永久磁石を磁石挿入孔の内周側の面に押し付ける力が永久磁石の両端部で均等にならず、傾いて固定される原因となる。さらに、樹脂の回り込みを促進する溝が小さすぎるため、樹脂が溝に流入しても永久磁石を内周側の面に押し付けるほどの力は発生せず、結果、永久磁石を磁石挿入孔の内周側の面に押し付けて固定することはできない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、回転子積層鉄心に挿入された永久磁石を磁石挿入孔の内周側の面もしくは外周側の面のいずれか一方の面に寄せ、かつ、永久磁石が傾くことなく固定することのできる回転子積層鉄心を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
回転子積層鉄心に形成された複数の磁石挿入孔にそれぞれ挿入された永久磁石を前記磁石挿入孔の外周側の面または内周側の面に寄せ、樹脂で前記回転子積層鉄心に固定する回転子積層鉄心において、前記磁石挿入孔の前記永久磁石を寄せる面と反対側の面に、樹脂溜り部と、前記永久磁石の上下端部と対向する部分に形成された磁石保持部とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記の回転子積層鉄心において、前記磁石挿入孔の前記永久磁石を寄せる面と反対側の面に、前記回転子積層鉄心の軸方向に沿って形成された樹脂注入溝を有し、前記樹脂注入溝と前記樹脂溜り部とは連通していることを特徴とする。
【0009】
上記の回転子積層鉄心において、前記樹脂注入溝は前記磁石挿入孔の前記永久磁石を寄せる面と反対側の面の中央に形成されることを特徴とする。
【0010】
上記の回転子積層鉄心において、前記磁石保持部の厚さは1〜4mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、磁石挿入孔に注入した樹脂が、磁石挿入孔の永久磁石を寄せる側の面と反対側の面に設けられた樹脂溜り部に多く流れ込むことによって、永久磁石が寄せる側の面に押し付けられ固定される。また、この際、磁石保持部によって永久磁石が垂直に保持されるため、永久磁石が傾くことなく固定される。
【0012】
請求項2の発明によれば、磁石挿入孔の永久磁石を寄せる側の面と反対側の面に設けられた樹脂注入溝から樹脂を注入することで樹脂溜り部により多くの樹脂が流れ込み、永久磁石が寄せる側の面に押し付けられ固定される効果を高めることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、樹脂注入溝が永久磁石を寄せる側の面と反対側の面の中央に形成されるため、樹脂の流れが永久磁石の幅方向で左右均等となり、永久磁石を寄せる側の面に押しつける力も永久磁石の幅方向で左右均等となり、永久磁石が傾くことなく固定される効果を高めることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、磁石保持部により樹脂溜り部が小さく形成され、永久磁石を寄せる側の面に押し付ける力が弱くなるのを抑えつつ、樹脂注入溝から樹脂を圧入する際に磁石保持部の表面が変形することなく永久磁石を樹脂固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態に係る回転子積層鉄心の平面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る回転子積層鉄心の磁石挿入孔周辺を示した平面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る回転子積層鉄心の磁石挿入孔周辺を示した縦断面図であり、(A)は図2中のA−A断面を示し、(B)は図2中のB−B断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る回転子積層鉄心について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る回転子積層鉄心10の平面図である。回転子積層鉄心10には永久磁石12がそれぞれ挿入される複数の磁石挿入孔11が形成される。
【0017】
図2は、図1の回転子積層鉄心10の磁石挿入孔11周辺の拡大図である。磁石挿入孔11は永久磁石12よりも径が大きく、永久磁石12と磁石挿入孔11との間には隙間が形成される。この永久磁石12と磁石挿入孔11との隙間に樹脂を充填することによって、永久磁石12を磁石挿入孔11に固定することができる。ここで、永久磁石12は、磁石挿入孔11の内周側の面もしくは外周側の面のいずれか一方(この実施の形態では外周側の面)に寄せて固定される。磁石挿入孔11には、永久磁石12を寄せる側の面とは反対側の面(この実施の形態では内周側の面)に断面が略半円形である樹脂注入溝15が形成される。
【0018】
図3は、回転子積層鉄心10の磁石挿入孔11周辺の縦断面図である。ここで、図3(A)は、図2中のA−A断面を示し、図3(B)は、図2中のB−B断面を示す。図3(A)に示すように、磁石挿入孔11の内周側の面には、樹脂注入溝15が軸方向に沿って形成されており、また、図3(B)に示すように、磁石挿入孔11の内周側の面には、注入された樹脂が流れ込む樹脂溜り部13及び永久磁石12を保持する磁石保持部14が形成されている。樹脂注入溝15と樹脂溜り部13とは連通するように形成されている。
【0019】
磁石挿入孔11に樹脂を注入する際、樹脂挿入孔11の内周側の面に形成された樹脂注入溝15より樹脂を注入する。樹脂注入の初期段階において、樹脂注入溝15から注入された樹脂の多くが樹脂挿入孔11の内周側の面に形成された樹脂溜り部13に流れ込むことによって、永久磁石12を樹脂挿入孔11の外周側の面に押し付ける力が発生する。その結果、永久磁石12は磁石挿入孔11の外周側の面に寄せられた状態で磁石挿入孔11に固定される。
【0020】
樹脂注入溝15が磁石挿入孔11の内周側の面の中央に形成されることで、樹脂注入溝15から樹脂溜り部13への樹脂の流れが永久磁石12の幅方向で左右均等となり、永久磁石12を磁石挿入孔11の外周側の面に押しつける力も永久磁石12の幅方向で左右均等となり、永久磁石12が傾いて固定されることを防ぐことができる。
【0021】
樹脂溜り部13と樹脂注入溝15は回転子積層鉄心10の半径方向内側に形成されており、樹脂注入溝15と永久磁石12との距離aと樹脂溜り部13と永久磁石12との距離bが同じであることが好ましい。樹脂注入溝15と永久磁石12との距離aが大きいと、樹脂が樹脂注入溝15に流れ込む量が多くなり、永久磁石12が磁石挿入孔11の外周側の面に押し付けられるまでに時間がかかり、永久磁石12が外周側の面に押し付けられるよりも先に、樹脂が外周側の面に回り込むことがある。
【0022】
樹脂注入の際、磁石挿入孔11に挿入された永久磁石12は、磁石挿入孔11の内周側の面の永久磁石12の上下端部と対向する部分に所定の範囲で形成された磁石保持部14によって垂直に保持されている。図3(B)に示すように、永久磁石12が複数(この実施の形態では2つ)に分割されている場合は、磁石挿入孔11の内周側の面の分割された各永久磁石12の上下端部と対向する部分にそれぞれ磁石保持部14を形成する。
【0023】
磁石保持部14は、永久磁石12が傾いて固定されるのを防ぐとともに、永久磁石12が傾くことによって樹脂溜り部13が堰き止められるのを防いでいる。磁石保持部14が厚すぎる(範囲が大きすぎる)と樹脂溜り部13が小さく形成され、永久磁石12を磁石挿入穴11の外周側の面に押し付ける力が弱くなる。また、磁石保持部14が薄すぎると樹脂注入溝15から樹脂を圧入する際に磁石保持部14の表面が変形する恐れがあるため、磁石保持部14の厚さは1〜4mm程度とするのが好ましい。
【0024】
ここまで、樹脂注入溝15から樹脂を注入する場合の説明をしたが、樹脂注入溝15が設けられていなくても、磁石挿入孔11の内周側の隙間から樹脂を注入することで、永久磁石12を外周側の面に寄せて固定する効果が得られる。
【0025】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、樹脂溜り部や樹脂注入溝、磁石保持部を磁石挿入孔の内周側の面に設けたが、磁石挿入孔の外周側の面に設けてもよい。
【0026】
10:回転子積層鉄心、11:磁石挿入孔、12:永久磁石、13:樹脂溜り部、14:磁石保持部、15:樹脂注入溝

図1
図2
図3