特許第5981245号(P5981245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5981245流路部材およびこれを用いた熱交換器ならびに半導体製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981245
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】流路部材およびこれを用いた熱交換器ならびに半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-147092(P2012-147092)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-11313(P2014-11313A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 和彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 弘幸
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−332518(JP,A)
【文献】 特開平03−108737(JP,A)
【文献】 特開2003−282692(JP,A)
【文献】 特開平06−074090(JP,A)
【文献】 実開昭57−089256(JP,U)
【文献】 特表2005−528790(JP,A)
【文献】 国際公開第99/041778(WO,A1)
【文献】 特開2012−009861(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/002499(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体部と側壁部と底板部と備え、前記蓋体部と前記側壁部と前記底板部とで構成され、外周部と中央部とがつながってなり内部を流体が流れる流路を有し、前記側壁部は、セラミックスからなるとともに、複数の板状体が積層された積層体からなり、前記流路は、個々の前記板状体の貫通孔の重なりからなり、前記側壁部に、前記貫通孔の大きさの変化による凹凸を有、該凹凸における最大の差が、前記流路部材の外周部より中央部の方が大きいことを特徴とする流路部材。
【請求項2】
前記凹凸における最大の差が、前記流路部材の外周部から中央部に向かって大きいことを特徴とする請求項1に記載の流路部材。
【請求項3】
前記流路が、スパイラル状であって、前記流体の供給口と排出口とを前記流路部材の外周部側に有するとともに、中央部側に前記流路の折り返し部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流路部材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の流路部材を用いてなることを特徴とする熱交換器。
【請求項5】
請求項に記載の熱交換器を備えることを特徴とする半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路部材およびこれを用いた熱交換器ならびに半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体シリコンウエハは、プラズマまたは電子ビームの照射により高温となり加工精度が低下することから強制的に冷却する必要がある。
【0003】
特許文献1には、静電チャックにセラミックスからなる冷媒流路を備え、吸着したウエハを冷却することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-108737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された流路を備える静電チャックでは、半導体シリコンウエハをプラズマまたは電子ビームを用いて加工した時に発生する熱が中央部にこもりやすく、依然として加工精度が低下しやすいという問題があった。
【0006】
本発明の流路部材は、流路部材の中央部において、流体との熱交換効率を向上させることにより、加工精度の低下を抑制した流路部材およびこれを用いた熱交換器ならびに半導体製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の流路部材は、蓋体部と側壁部と底板部と備え、前記蓋体部と前記側壁部と前記底板部とで構成され、外周部と中央部とがつながってなり内部を流体が流れる流路を有し、前記側壁部は、セラミックスからなるとともに、複数の板状体が積層された積層体からなり、前記流路は、個々の前記板状体の貫通孔の重なりからなり、前記側壁部に、前記貫通孔の大きさの変化による凹凸を有、該凹凸における最大の差が、前記流路部材の外周部より中央部の方が大きいことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の熱交換器は、上記構成の流路部材を用いたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の半導体製造装置は、上記構成の熱交換器を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流路部材によれば、流路側に面した側壁部の凹凸により流体の乱流が発生し、流路部材と流体との熱交換効率が向上できる。また、側壁部の流路側の凹凸における最大の差を、流路部材の外周部より中央部の方を大きくしたことから、流路部材の中央部での流体の乱流が大きくなり、熱交換効率を高くすることができる。
【0011】
また、本発明の熱交換器は、上記構成の流路部材を備えてなることから、流路部材の中央部での熱交換効率の高い熱交換器とすることができる。
【0012】
また、本発明の半導体製造装置は、上記構成の熱交換器を備えてなることから、加工精度の低下を抑制した半導体製造装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の流路部材の一例を示す、(a)は流路部材の斜視図であり、(b)は流体の流れる方向に沿う方向の断面図であり、(c)は(a)に示すB−B’線の断面図である。
図2】本実施形態の流路部材の他の一例を示す、(a)は流路部材の斜視図であり、(b)は流体の流れる方向に沿う方向の断面図であり、(c)は(a)に示すB−B’線の断面図であり、(d)は(a)に示すX−X’線またはZ−Z’線の断面図である。
図3】本実施形態の流路部材の流体が流れる方向に対して直交する断面形状の一例を示し、(a)および(c)は、図1(c)および図2(c)の断面図の破線Bで囲んだ部分を拡大した断面図であり、(b)および(d)は、図1(c)および図2(d)の断面図の破線Cで囲んだ部分を拡大した断面図である。
図4】本実施形態の流路部材の流体が流れる方向に対して直交する断面形状の他の一例を示し、流路の内側壁の凹凸の最大の差が外周部から中央部に向かって大きい状態を示す断面図である。
図5】本実施形態の流路部材の他の一例を示し、流体の流れる方向に沿う方向の断面図である。
図6】本実施形態の流路部材の他の一例を示し、流体の流れる方向に沿う方向の断面図であり、(a)は多角形(八角形)のスパイラル状流路、(b)は複数の円形流路が形成された複環状流路、(c)は蛇行状流路、さらに、(d)は蛇行状流路が外周部から中央部に向かって四方向から形成された蛇行放射状流路である。
図7】本実施形態の流路部材の側壁部の製造方法の一例を示す、(a)はセラミックグリーンシートに金型で貫通孔を加工するときの模式図であり、(b)はセラミックグリーンシートにレーザで貫通孔を加工するときの模式図であり、(c)は貫通孔を有する成形体の平面図である。
図8】本実施形態の流路部材を用いた熱交換器の一例を示す断面図である。
図9】本実施形態の熱交換器を用いた半導体製造装置の全体的なシステム構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
本発明の流路部材の実施の形態の一例を、図1図2および図3を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の流路部材の一例を示し、(a)は流路部材の斜視図であり、(b)は流体の流れる方向に沿う方向の断面図であり、(c)は(a)に示すB−B’線の断面図である。
【0017】
また、図2は、本実施形態の流路部材の他の一例を示し、(a)は流路部材の斜視図であり、(b)は流体の流れる方向に沿う方向の断面図であり、(c)は(a)に示すB−B’線の断面図であり、(d)は(a)に示すX−X’線またはZ−Z’線の断面図である。
【0018】
また、図3は、本実施形態の流路部材の流体が流れる方向に対して直交する断面形状の一例を示し、(a)および(c)は、図1(c)および図2(c)の断面図の破線Bで囲んだ部分を拡大した断面図であり、(b)および(d)は、図1(c)および図2(d)の断面図の破線Cで囲んだ部分を拡大した断面図であり、それぞれ(a)(b)は側壁部
が単層の場合の流路の内側壁の凹凸の状態を示し、(c)(d)は側壁部が複層の場合の流路の内側壁の凹凸の状態を示している。
【0019】
図1(a)〜(c)および図2(a)〜(d)に示すように、本実施形態の流路部材101〜104は、蓋体部1と側壁部2と底板部3とにより構成され、外周部10bと中央部10aとがつながってなり内部を気体や液体などの流体11が流れる流路10を備えている。そして、流体11が流れる流路10の形状として、図1はスパイラル状、図2は直線状を示している。
【0020】
なお、流路部材101,102は図1において、流路部材101は側壁部2が単層の場合であり
、流路部材102は側壁部2が複層の場合である。また、流路部材103,104は図2において
、流路部材103は側壁部2が単層の場合であり、流路部材104は側壁部2が複層の場合である。
【0021】
そして、図3は、図1(c)および図2(c)(d)のそれぞれ破線B、Cで囲んだ部分を拡大した断面図を示し、側壁部2は流路10側に凹凸5を有するとともに、この凹凸5における凹の部分との凸部分との最大の差5aが、流路部材101〜104の外周部10bより中央部10aの方が大きいことが重要である(なお、以下、側壁部2の流路10側を、流路10の内側壁4と呼ぶ。)。
【0022】
本実施形態の流路部材101〜104は、流路10の内側壁4に凹凸5があり、内側壁4の凹凸5における最大の差5aが、流路部材101〜104の外周部10bより中央部10aの方が大きく形成されている。それにより、流路10の内側壁4の凹凸5により、流体11に乱流が発生し、流路部材101〜104と流体11との熱交換効率が向上できる。
【0023】
さらに、流路10の内側壁4の凹凸5における最大の差5aが、流路部材101〜104の外周部10bより中央部10aの方が大きく形成されている。それにより中央部10aでの流体11の乱流を大きくすることができ、流路部材101〜104の中央部10aにおける熱交換効率を高くすることができる。
【0024】
それゆえ、本実施形態の流路部材101〜104は、特に、中央部の発熱が大きい熱交換対象物を熱交換するための流路部材として用いると、熱交換対象物における温度の均一化を図ることができる。
【0025】
なお、本実施形態の流路部材101〜104の中央部10aおよび外周部10bとは、スパイラル状の流路部材101,102においては、図1(b)に示す破線Eで囲んだ円と破線Dで囲んだ円の間を外周部10bとし、破線Dで囲んだ内側の円の中を中央部10aとする。なお、ここで言う破線Eは流路10が形成されている範囲において、その最大径の範囲であり、破線Dとは前記最大径の50%に相当する径の範囲とすればよい。
【0026】
また、直線状の流路部材103,104においては、図2(b)に示す、流路10の長さ方向を3等分して、その中央の領域を中央部10aとし、それ以外の両端の領域を外周部10bとすればよい。
【0027】
また、流路10の内側壁4の凹凸5は、図3に示した矩形状に限らず、波形状や不規則な凹凸のものも含まれ、流路10の内側壁4の一方の内側壁4aと、流路10を挟んでこれに対向する内側壁4aの少なくも何れかに凹凸5があればよい。
【0028】
そして、本実施形態において、流路10の内側壁4の凹凸5の最大の差5aとは、図3(a)(b)に示す、側壁部2が単層である場合や、図3(c)(d)に示す側壁部2が複数の板状体を積層した複層である場合のいずれにおいても、外周部10bの凹凸5の段差の
差が最大の値のことを意味する。ここで、流体11が流れる方向に直交するように流路10を断面視したとき、流路10の内径寸法が同等であっても、中央部10aの内側壁4の凹凸5の最大の差5aが外周部10bの内側壁4の凹凸5の最大の差5aより大きいことは、乱流の発生が大きいばかりでなく、流体11と接触する内側壁4の表面積が広いことにもなり、流路部材101〜104の中央部10aでの熱交換効率を高くすることができる。
【0029】
また、流路10の内側壁4の凹凸5の最大の差5aを、外周部10bより中央部10aを大きく形成することで、流路の全体を凹凸5の最大の差5aで形成する場合に比べ、流路10の全体としての圧力損失が高まることを抑制できる。
【0030】
なお、図1図2では流体11の供給口6と排出口7とは流路部材101〜104の底板部3に設けた構造としているが、必ずしも、これに限定されるものではない。
【0031】
次に、図4は、本実施形態の流路部材の流体が流れる方向に対して直交する断面形状の一例を示し、流路の内側壁の凹凸の最大の差が外周部から中央部に向かって大きい状態を示す断面図である。
【0032】
図4に示す、本実施形態の流路部材105は、内側壁4の凹凸5の最大の差5aが外周部10bから中央部10aに向かって大きくなるように形成されている。それにより、流路10の
内側壁4の凹凸5により発生する流体11の乱流が、外周部10bから中央部10aに向かって大きくなるため、流路部材105の熱交換効率は中央部10aが最も高く、外周部10bに向か
って低くなる。流路部材を用いて熱交換する熱交換対象物は、中央部における発熱が多く、そのような熱交換対象物を流路部材の中央部に配置するため、本実施形態の流路部材105を用いることで、特に高温となる中央部の温度を下げることができることから、中央部
と外周部との温度勾配が緩やかになり、温度をより均一化することができる。
【0033】
ここでは、スパイラル状で側壁部2が複層で構成された流路部材105を用いて説明した
が、流路10の形状や、また、側壁2が単層、複層は問わない。さらに、流路10の内側壁4の凹凸5の最大の差5aが、外周部側10bから中央部側10aに向かって大きいとは、連続的に変化する場合や、段階的に変化することのいずれの場合であってもよい。
【0034】
図5は、本実施形態の流路部材の他の一例を示し、流体の流れる方向に沿う方向の断面図である。
【0035】
本実施形態の流路部材106は、外周部10bに流路10の供給口6と排出口7とを備え、中
央部10aに流路の折り返し部8を有するスパイラル状の流路10を有している。なお、流路10は外周部10bと中央部10aとがつながっており、かつ、流路10の内側壁4に凹凸5を有するとともに、凹凸5における最大の差5aが、外周部10bより中央部10aの方が大きい(図示せず)。
【0036】
このような構成とすれば、流路部材106の流路10の供給口6から入った流体11は、流路10の内側壁4の凹凸5により乱流が発生し、流路部材106との熱交換を行ないながら中央部10aへ流れていく。そして、内側壁4の凹凸5における最大の差5aが大きい中央部10aにおいて、流体と流路部材106との熱交換効率が最も高くなる。また、流路10の中央部10
aの折り返し部8から往路に沿って排出口7まで復路が形成されているため、折り返し部8で流体11と流路部材106との熱交換がピークに達した後、復路においては、隣り合う往
路の流体11との熱交換も行なうため、隣り合う流路10同士および流路10間の隔壁にあたる側壁部2の温度のバラツキが小さくなり、流路部材106の流路10間の温度差を、より小さ
くできる。
【0037】
また、流路10をこのような形状とすることにより、流路部材106の流体11の供給口6と
排出口7とを近接して配置したことから、供給口6と排出口7とに繋ぐ配管を一箇所にまとめることができる。それにより装置の構造の簡略化ができメンテナンスも容易になる。
【0038】
なお、本実施形態の流路部材は、側壁部はセラミックスからなり、複数の板状体が積層された積層体からなることが好ましい。
【0039】
例えば、図4に示す流路部材105は、側壁部2が3層の積層体からなっていて、流路10
の内側壁4には、凹凸5を有することから、側壁部2となる個々の板状体に予め流路10となる貫通孔を作製し、その後、複数の板状体を積層した積層体に蓋体部1および底板部3を接合することにより、凹凸5の最大の差を容易に変更して形成することができる。
【0040】
そして、流路部材101〜106の側壁部2がセラミックスからなるときは、例えば、流体11として、金属腐食性の高い臭化リチウムなどを冷媒として用いたとしても側壁部2の腐食を抑えることができる。それにより流路10間の隔壁を構成する側壁部2が劣化することを抑制できる。
【0041】
また、蓋体部1と底板部3とは、セラミックスや金属、または、樹脂などの材料で作製してもよいが、耐熱性および耐食性に富み、蓋体部1は熱伝導性が高く、電極などの配線層を直付けができる絶縁性部材であることが望ましい。
【0042】
ここで、側壁部2、蓋体部1および底板部3の材料の一種であるセラミックスとしては、アルミナ,窒化珪素,窒化アルミ,炭化珪素,ムライトおよびジルコニアのいずれか、もしくは、これらの複合材料を用いることができ、未焼成のセラミックグリーンシートに流路10となる貫通孔を加工すればよい。もし、焼成後のセラミック焼結体に側壁部2の流路10となる貫通孔を形成するときは、機械加工が容易なマシナブルセラミックスと呼ばれる雲母やチタン酸アルミニウムなどを含有したセラミック材やガラスセラミック材を用いることが好ましい。
【0043】
また、セラミックス以外の材料で側壁部2を作製するときには、銅,SUS,アルミニウ
ムまたはこれらの合金からなる板状体を用いれば、プレス成型により、流路10となる貫通孔を形成し、積層する個々の板状体の貫通孔の大きさを変化させることにより、本実施形態の流路10の内側壁4に凹凸5を形成できる。
【0044】
図6は本実施形態の流路部材の、他の一例を示し、流体の流れる方向に沿う方向の断面図であり、(a)は多角形(八角形)のスパイラル状流路、(b)は複数の円形流路が形成された複環状流路、(c)は蛇行状流路、さらに、(d)は蛇行状流路が外周部から中央部に向かって四方向から形成された蛇行放射状流路である。
【0045】
図6(a)に示す流路部材107は、側壁部2に形成された流路10が、多角形(八角形)
のスパイラル状であり、これまで説明したスパイラル状の流路10の曲率が徐々に変化する円形の流路部材101,102および106に比べ作製が容易となる。
【0046】
例えば、NC制御によるパンチングマシンを用いてスパイラル状の流路10となる貫通孔を形成するとき、多角形のスパイラル状の流路10である流路部材107の側壁部2に、直線
状の貫通孔を形成するポンチの種類がひとつでよく、このポンチで加工した貫通孔を繋ぎ合わせることにより四角形などの多角形のスパイラル状の流路10となる貫通孔を形成でき、流路部材101,102および106の流路10のような曲率の異なる多数の円弧状のポンチを数
種類揃える必要もない。
【0047】
図6(b)に示す流路部材108は、多重の半円形の流路10を対照的に配置し、流体の供
給口6と排出口7とを外周部10bに近接して備え、それぞれ対照的な方向に半円状に延伸し半円の折り返しを繰り返し、中央部10aで左右の流路10がつながり折り返し部8となるものである。
【0048】
このような流路部材107であると、例えば、セラミックグリーンシートに貫通孔を形成
して側壁部2を形成したとき、側壁部2となるセラミックグリーンシートの流路10と隣接する流路10間のセラミックグリーンシートの端は固定されずフリーな状態となるものの、約半周分を一方の側壁部2で固定されて繋がっているため、製造工程上でのセラミックグリーンシートの取り扱いが容易となる。つまり、図1に示すスパイラル状の流路部材101
の側壁部2をセラミックグリーンシートで作製すると、中央部から端までは一つの螺旋になり中央部が固定されていないため取り扱い時に垂れ下がるという問題があるが、上記の流路部材107となる側壁部2では、半円に細分化されている分、取り扱い上の問題の発生
を軽減できる。
【0049】
図6(c)に示す流路部材109は、流路10が外周部10bから中央部10aを経由して他方
の外周部10bまで蛇行を繰り返す蛇行状である。
【0050】
このような形状であれば、NC制御によるパンチングマシンで側壁部2となるセラミックスグリーンシートに、直線流路と曲線流路とを形成するためのポンチを準備することにより、容易に所望の貫通孔を形成でき、曲率の異なる多数の円弧状のポンチを揃える必要もない。また流路全体の長さを長くすることもできる。
【0051】
図6(d)に示す流路部材110は、流路10が外周部10bから中央部10a向かって蛇行を
繰り返すが、外周部10bの四方向が対照的に配置された放射状で、それぞれの蛇行流路は一筆書き状につながり、折り返し部8は中央部10aにあり、供給口6と排出口7とは外周部10bに近接して配置されている。
【0052】
このような形状であれば、セラミックグリーンシートに側壁部2の流路10となる貫通孔を形成したときに、セラミックグリーンシートの中央部10aは、四方向の外周部10bと繋がって固定されているため、製造工程での取り扱いにおける中央部10aが垂れ下がるという問題の発生を低減できる。
【0053】
次に、本実施形態の流路部材101〜104の側壁部2の製造方法の一例を説明する。なお、その他の本実施形態である流路部材105〜110については、以下の製造方法に準じるため、説明は割愛する。
【0054】
まず、材料としては、銅やアルミウムまたはそれらの合金や、セラミックスを用いて、側壁部2をシート状の板状体を作製する。なお、材料としては上記外のほか、高熱伝導性や耐熱性、高強度、耐食性に富むものであればよい。
【0055】
そして、銅やアルミニウムであれば、プレス成型やパンチングマシンなどにより流路10となる貫通孔を形成するためのポンチを取り付けて側壁部2を作製する、或いは、レーザ加工による加工でもよく、それらの板状体を積層し、金属ロウなどを用いて接合することにより流路部材101〜104が得られる。
【0056】
次に、セラミックスからなる側壁部2で流路部材101〜104を作製する製造方法について、次の3つの方法を説明する。
(1)セラミック焼結体からなる板状体に、流路10となる貫通孔を形成し側壁部2を作製し、次にこの板状体、蓋体部1、底板部3を重ね合わせる方法。
(2)側壁部2となるセラミックグリーンシートからなる板状体を複数積層後、流路10となる貫通孔を形成し、蓋体部1、底板部3を重ね合わせて焼成する方法。
(3)セラミックグリーンシートの板状体に、流路10となる貫通孔を形成し側壁部2を作製し、この板状体、蓋体部1、底板部3を重ね合わせて焼成する方法。
【0057】
先ず上記(1)の製造方法として、セラミック焼結体の板状体に、流路10となる貫通孔を形成する方法としては、レーザ加工や、湿式ビーズブラスト加工や超音波ドリル加工があり、セラミックの生成形体への加工ではないことから、寸法精度の高いものを作製できる。
【0058】
また、上記(2)による製造方法はとしては、積層した側壁部2となるセラミックグリーンシートの板状体の厚みに応じて、プレス成型,パンチングマシン,レーザ加工,乾式または湿式のブラスト加工によればよく、特に、砥粒の残留の問題を考えれば、ドライアイス,アイスまたは水などのブラスト加工が適している。
【0059】
上記(3)による製造方法は、未焼成のセラミックグリーンシートに流路10となる貫通孔を形成し、側壁部2が複層であれば、その後積層するため、最も製造コストを抑えられ、かつ、複雑な形状にも対応して形成することが可能である。
【0060】
以下、(3)の製造方法について、一例としてセラミックがアルミナの場合について説明する。
【0061】
まず、酸化アルミニウム(アルミナ)質の側壁部2を作製する場合には、アルミナやシリカ,マグネシア,カルシアなどの原料粉末にアクリル樹脂系やブチラール樹脂系などの有機バインダーおよび溶剤を適宜混合して作製したスラリーを公知のドクターブレード法や、或いは、ロールコンパクション法などで、シート状のセラミックグリーンシートを成形する。
【0062】
次に、セラミックグリーンシートへの流路10となる貫通孔の加工方法は、所望のポンチを用いるプレス成型や、パンチングマシンによる方法,レーザ加工,ドライアイスなどによる乾式ブラスト,ガラスビーズブラスト,サンドブラストおよび水ブラストなどによる加工方法があり、それぞれの方法を適宜用いればよい。
【0063】
図7は本実施形態の流路部材の側壁部の製造方法の一例を示す、(a)はセラミックグリーンシートに金型で貫通孔を加工するときの模式図であり、(b)はセラミックグリーンシートにレーザで貫通孔を加工するときの模式図であり、(c)は貫通孔を有する成形体の平面図である。
【0064】
例えば、図1で示すようなスパイラル状の流路部材101および102の側壁部2の厚みは、0.3〜2mmほどの厚みの単層もしくは、それらを複数枚積層したもので作製され、製造
コストを抑え量産するにはプレス加工やレーザ加工が適している。
【0065】
図7(a)に示すプレス成型装置18による製造方法であれば、金型に取り付けるポンチ18aとして、図3(a)(b)に示す流路10に対応する段差をつけたものを使用し、セラミックグリーンシート16を打ち抜くことにより、図3(a)(b)に示す単層の側壁部2に、矩形状の凹凸となる貫通孔17aを形成できる。
【0066】
また、図7(b)に示すレーザ加工装置19による製造方法であれば、レーザビームの焦点をセラミックグリーンシート16の一方の主面側から厚み方向の中程まで加工し、さらに、セラミックグリーンシート16の裏面側に主面側とずれた位置に同様に加工することによ
り矩形状の凹凸の貫通孔17aを有する成形体17を形成できる。なお、レーザ加工装置19のレーザ発振方式はCOやYAGレーザでよい。
【0067】
さらに、図3(c)(d)や図4に示す、側壁部2が積層の場合の製造方法は、プレス成型、レーザ加工や、上述したその他の加工のいずれでも可能である。
【0068】
次に、蓋体部1および底板部をセラミックグリーンシート16を用いて、プレス成型やレーザ加工などにより作製する。(ここでは、流路部材101〜104がセラミックスからなる場合について記載する。)。
【0069】
次に、側壁部2が複層であるときは、セラミックグリーンシート16を成型した成形体17の表面に、セラミックグリーンシート16を作製するときと同じバインダーを糊剤として用い、成形体17の表面に塗布し、次にこれらの成形体17を積層し、さらにこの積層体を挟むように、蓋体部1および底板部3となる成形体と同様に糊剤を塗布した後重ね合わせる。なお、糊剤の塗布は、公知のスクリーン印刷などにより行なえばよい。
【0070】
次に、これらの積層体を、トンネルキルンにて最高温度が1100〜1600℃の範囲で焼成することにより本実施形態の流路部材流路部材101〜104を作製できる。
【0071】
図8は、本実施形態の流路部材を用いた熱交換器の一例である断面図を示している。
【0072】
本実施形態の熱交換器201は、本実施形態の流路部材101〜104を用いてなる。ここで、
流路10はスパイラル状であって、流体11は、流路部材101,102の底板部3の下方の外周部側の供給口6に接続されたパイプ22から流路10に入り、中央部側の底板部3に設けられた排出口7に供給口6と同様に接続されたパイプ22を通って排出される。
【0073】
本実施形態の流路部材101〜104を用いた熱交換器201は、コンパクトであっても、中央
部側での熱交換効率が高く、流路10全体での圧力損失が高まることを抑制できるため、熱交換器の小型化が可能で、さらに、流体11を送出するポンプなどを含め熱交換装置の小型化も可能となる。
【0074】
図9は、本実施形態の熱交換器を用いた半導体製造装置の全体的なシステム構成の一例を示す概略図である。
【0075】
図9に示す本実施形態の半導体製造装置301は、本実施形態の流路部材101〜104の蓋体
部1の上方に金属部材25を接合した熱交換器201を用いてなる半導体製造装置301である。
【0076】
例えば、半導体製造装置301の一例であるプラズマ処理装置であれば、熱交換器201の金属部材25を半導体シリコンウエハ29を処理するための下部電極25として利用でき、プラズマ処理装置28の中の上部にアンテナ電極26を設け、それぞれの電極25,26を電源27と接続し、流路部材101〜104に供給口6に接続された供給用のパイプ22から流体11を流し、また、排出口7に接続された排出用のパイプ22から流体11を排出する構造となっている。
【0077】
例えば、静電チャック23は、冷却のための熱交換器201と下部電極である金属部材25と
これらを支持する支持部材24とからなる。静電チャック23によって把持された半導体シリコンウエハ29は、プラズマ処理により高温となるが、外周部は熱伝導性の高い窒化珪素などからなる支持部材24が近接しているため、熱交換器201との熱交換に加えて支持部材24
からの吸熱があり、半導体シリコンウエハ29が高温となることを抑制している。
【0078】
そして、半導体シリコンウエハ29の中央部の冷却は、熱交換器201のみとなるが、特に
中央部における熱交換効率を高くしてあることから、半導体シリコンウエハ29の全体の温度が上昇することを制御される。それにより、寸法精度の高い加工が可能となる。
【0079】
このように、本実施形態の半導体製造装置301は、本実施形態の熱交換器201に金属部材25を接合し、下部電極を兼ねると共に、半導体シリコンウエハ29の載置台ともなることから、シンプルな構造で、かつ、熱交換効率の高い半導体製造装置301とすることができる
【0080】
本実施形態の半導体製造装置301は、プラズマ処理装置の他に、スバッタ装置、レジス
ト塗布装置、CVD装置等やエッチング処理装置として用いることができる。
【0081】
また、(以下図示せず)本実施形態の流路部材101〜110およびこれを用いた熱交換器201は、蓋体部1の上方に半導体素子を実装した車載用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体装置として用いることもできる。
【符号の説明】
【0082】
101〜110:流路部材
1:蓋体部
2:側壁部
3:底板部
4:内側壁
5:凹凸、5a:最大の差
6:供給口
7:排出口
8:折り返し部
10:流路、10a:中央部、10b:外周部
11:流体
16:セラミックグリーンシート
17:成形体、17a:成形体
18:プレス成型装置、18a:ポンチ
19:レーザ加工装置
201:熱交換器
301:半導体製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9