(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のカードコネクタは、カムが設けられた摺動ケースを摺動させるので部品点数が多く、小型化が困難である。特許文献2のカードコネクタは、カム部とフォロワーとの係合状態が加工精度に極度に依存するので、量産化が困難である。また、特許文献2のカードコネクタの動作は、カードの面取りされた部分、すなわち斜めに切欠かれた部分の形状に依存するため、例えば切欠きの無いカードに対応できないおそれがある。
【0007】
本発明は上記問題点を解決し、カードの切欠き形状に依存しないイジェクト機能を有し、小型化が可能なカードコネクタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明のカードコネクタは、
挿入方向に挿入されてきたカードを受け入れる受入空間が形成されたハウジングと、
上記受入空間に挿入されてきたカードに押されこのカードを排出方向に付勢しながらこの受入空間奥側まで移動する可動腕部を有するトーションばねと、
上記カードに押されて上記受入空間奥まで移動し、次いでこのカードへの押込力の解除に伴って排出方向に移動し始めた上記可動腕部を、この排出方向への更なる移動を阻止するロック位置に案内し、このロック位置にある上記可動腕部が上記カードにより上記挿入方向に押されたときに、この可動腕部をこのロック位置から解放する解放経路へと案内する案内機構とを備え
ている。
【0009】
本発明のカードコネクタでは、トーションばねの可動腕部が、カードに押され奥側に移動し、この可動腕部が案内機構によってロック位置および解放経路へ案内される。本発明のカードコネクタによれば、プッシュ/プッシュ形式のイジェクト機能がカードの切欠きに依存せず実現できる。さらに、トーションばね以外にはスライドする部材が不要なので、小型化が可能である。
【0010】
ここで
、本発明のカードコネクタ
はさらに、上記案内機構が、上記可動腕部の、上記受入空間に挿入されてきたカードに押されて移動する第1の移動経路上に設けられた、上記挿入方向奥側に向かってこの挿入方向に対し斜めに傾き、上記挿入方向奥側に移動してきた上記可動腕部に第1面が押されて傾き角度を減じる向きに弾性変形し、この可動腕部の、この挿入方向奥側への通過に伴って弾性変形が解除されて斜めに傾いた形状に戻り、上記カードへの押込力の解除に伴って上記排出方向に戻ってきたこの可動腕部を、上記第1面に対する裏面である第2面で上記ロック位置に向けて案内する第1の弾性舌片を備えたものであ
る。
【0011】
例えばハート型溝の底の形状によって案内経路を切換える溝カムとは異なり、弾性舌片自体が変形することによって案内する経路が切換えられる。このため、トーションばねの可動腕部が弧に沿って移動しても確実に案内される。
【0012】
また、上記本発明のカードコネクタにおいて、上記第1の弾性舌片が、上記ロック位置に、上記可動腕部の上記排出方向への移動を阻止するロック部を有することが好ましい。
【0013】
ロック部が弾性舌片に設けられることで、部品点数が減少する。
【0014】
また、上記本発明のカードコネクタにおいて、上記ハウジングは、上記受入空間に受け入れたカードの一面が露出する皿形状のこの受入空間を有し、当該カードコネクタは、この受入空間に受け入れたカードのこの一面に沿って広がる金属板のシェルをさらに備え、
上記可動腕部が、上記受入空間を向いた
シェルの内面に対する裏面である
シェルの外面に沿って移動して上記案内機構に案内される被案内部と、この被案内部と繋がり、上記受入空間に入り込んで挿入されてきたカードの当接を受けてこのカードに押される当接部とを有することが好ましい。
【0015】
トーションばねの可動腕部が、案内機構に案内される被案内部とカードの当接を受ける当接部との双方を有するため、被案内部と当接部が別の部材である場合に比べて、部品点数が低減される。
【0016】
また、上記本発明のカードコネクタにおいて、上記案内機構が、上記金属板の加工により上記シェルの上記奥側の一部に設けられたものであることが好ましい。
【0017】
案内機構が、シェルの一部であることにより、部品点数および組立て工数がさらに低減される。
【0018】
また、上記本発明のカードコネクタにおいて、上記案内機構がさらに、上記ロック位置にある上記可動腕部が上記受入空間に受け入れられた状態にあるカードに押されて移動する第2の移動経路上に配備され、上記挿入方向奥側に向かってこの挿入方向に対し斜めに傾き、上記ロック位置からこの挿入方向奥側に移動してきた上記可動腕部に第1面が押されて傾き角度を減じる向きに弾性変形し、この可動腕部の、この挿入方向奥側への通過に伴って弾性変形が解除されて斜めに傾いた形状に戻り上記カードへの押込力の解除に伴って上記排出方向に戻ってきたこの可動腕部を、この第1面に対する裏面である第2面で上記解放経路に向けて案内してこの可動腕部に上記カードを上記受入空間から排出させる第2の弾性舌片を備えたことが好ましい。
【0019】
ロック位置にある可動腕部の解放についても、第2の弾性舌片自体が変形することによって案内する面が切換えられる。このため、トーションばねの可動腕部が確実に案内される。
【0020】
また、上記本発明のカードコネクタにおいて、上記案内機構がさらに、
上記第1の移動経路上に配備され、上記挿入方向奥側から上記排出方向に向かってこの挿入方向に対し斜めに傾き、この挿入方向奥側に移動してきた上記可動腕部を上記第1の弾性舌片を押す向きに案内する第1のカム片と、
上記第2の移動経路上に配備され、上記挿入方向奥側から上記排出方向に向かってこの挿入方向に対し斜めに傾き、この挿入方向奥側に移動してきた上記可動腕部を上記第2の弾性舌片を押す向きに案内する第2のカム片とを備えたことが好ましい。
【0021】
可動腕部が、カム片の案内によって弾性舌片を確実に変形させるため、可動腕部の経路が確実に切り替えられる。
【0022】
また、上記本発明のカードコネクタにおいて、上記案内機構がさらに、上記挿入方向奥側が支持された片持ち梁形状を有し上記第1の弾性舌片の上記第2面に向かって上記排出方向に延びた第3のカム片であって、この第1の弾性舌片のこの第2面に案内されて上記排出方向に移動してきた上記可動腕部を、上記ロック位置に向けて、この第1の弾性舌片のこの第2面と、この第2面に面する、当該第3のカム片の第1面との間を通過させ、このロック位置にあるこの可動腕部の上記挿入方向への移動の際は、この第1の弾性舌片のこの第2面に沿う移動を阻止し当該第3のカム片の上記第1面に対する裏面である第2面で上記解放経路に案内して、この可動腕部に上記カードを上記受入空間から排出させる第3のカム片を備えたものであってもよい。
【0023】
第1の弾性舌片の変形により、第3のカム片の第1面および第2面を切換えて案内させることによって、トーションばねの可動腕部が確実に案内される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、カードの切欠き形状に依存せず、小型化が可能なカードコネクタが実現する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
図1は、本発明のカードコネクタの第1実施形態を示す平面図である。また、
図2は、
図1に示すカードコネクタの側面図である。
【0028】
図1および
図2には、カードコネクタC1と、カードコネクタC1に装着されるカードJが示されている。カードJにはICが内蔵されている。カードJは、例えばSDカードである。ここで、カードJがカードコネクタC1に挿入される方向を挿入方向Pと称し、挿入方向Pの反対方向を排出方向Eと称する。
【0029】
カードJは、概略矩形の板状であり、カードJの挿入方向Pにおける前端縁の一方の端には切欠き(面取り)Nが形成されている。また、カードJには、複数の電気接点Qが設けられている。電気接点Qは、
図1に示す姿勢において下面、すなわち
図1に表れる面の反対面に配置されている。
【0030】
カードコネクタC1は、ハウジング1、シェル2、コンタクト3、およびトーションばね4を備えている。
【0031】
ハウジング1は、絶縁性の樹脂材料からなる成型品である。シェル2は、金属板を打抜き加工および折曲げ加工することで形成されている。ハウジング1およびシェル2は、双方とも概略矩形状である。ハウジング1には、挿入されてきたカードJを受け入れる皿状の受入空間11が形成されている。したがって、シェル2が無い場合、カードJは、受入空間11に受け入れられた状態で、一面(
図1に表れる上面)がハウジング1から露出する。シェル2は、この一面に沿って広がるように、ハウジング1に取り付けられている。受入空間11は、ハウジング1とシェル2の間に設けられ、挿入口11aで外部に開口した空洞である。カードJは挿入口11aから受入空間11へ挿入方向Pに挿入される。ここで、挿入方向Pに垂直な、ハウジング1からシェル2を向いた方向を上方向Uと称し、上方向Uとは反対方向を下方向Dと称する。また、上方向Uおよび下方向Dを含む方向を上下方向UDと称する。
【0032】
コンタクト3は、カードJの電気接点Qと電気的に接続する部材である。コンタクト3は、金属板を打抜き加工および折曲げ加工することで形成されている。コンタクト3は、ハウジング1内にインサート成形等によって保持されている。
図1には、複数のコンタクト3および複数の電気接点Qのうち一部が示されている。
【0033】
[トーションばね]
図3は、
図1に示すトーションばねを単体で示す斜視図である。
【0034】
トーションばね4は、典型的にはピアノ線に代表される金属線を曲げ加工することで形成された部材である。トーションばね4は、コイル部41と、このコイル部41の両側の端から延びた可動腕部42および固定腕部43とを有する。可動腕部42および固定腕部43は、ほぼ直線状に延びた細い丸棒状の部分である。可動腕部42は、固定腕部43よりも長く、当接部421および被案内部422を有する。当接部421は、直線状に延びた可動腕部42の途中を折曲げることによって形成された突起である。被案内部422は、可動腕部42のうち、当接部421よりも先端側の部分である。
【0035】
図1に示すように、コイル部41はハウジング1に支持されており、固定腕部43はハウジング1に固定されている。可動腕部42は、コイル部41を中心として回転自在であり、シェル2の上面22aに沿って移動する。ここで、上面22aは、シェル2の、受入空間11を向いた内面に対する外面である。ただし、可動腕部42の一部は内面に沿って移動する場合がある。可動腕部42は、コイル部41の弾性力によって排出方向Eに付勢されている。
【0036】
シェル2には、トーションばね4のコイル部41を中心とした弧状のスリット21が設けられている。当接部421は、スリット21を貫通して、受入空間11に突出している。当接部421は、受入空間11に挿入方向Pに入り込んできたカードJの前端、より詳細には、カードJの前端のうち切欠きN以外の部分に当接する。当接部421は、カードJの当接を受けてカードJに押されながら、スリット21に沿って挿入方向Pに移動する。ただし、可動腕部42は、コイル部41を中心として回転するため、トーションばね4の当接部421は、挿入方向Pと厳密に平行ではなく、コイル部41を中心とした弧に沿って挿入方向Pに移動する。当接部421は、カードJの前端に押されて挿入方向Pに移動するとともに、カードJの前端に沿って摺動することとなる。
【0037】
[案内機構]
図4は、
図1に示すカードコネクタの案内機構の部分を示す拡大図である。
図4のパート(A)は平面図であり、パート(B)はパート(A)のB−B線概略断面図である。
【0038】
シェル2には、トーションばね4の可動腕部42を案内する案内機構22が設けられている。案内機構22は、金属板の加工によりシェル2の挿入方向P奥側の一部に設けられた部分である。つまり、案内機構22はシェル2と一体に形成されている。案内機構22は、カードコネクタC1に挿入された状態のカードJより上方向Uの位置に配置されている。案内機構22は、第1の弾性舌片222、第2の弾性舌片223、舌片基部224、第1のカム片225、および第2のカム片226を有する。
【0039】
第1の弾性舌片222および第2の弾性舌片223は、舌片基部224から二股状に分かれて挿入方向P奥側に向かって突出している。第1の弾性舌片222の全体は、挿入方向Pに対し斜めに傾いて延びた形状を有し、途中にロック部22Lを有する。ロック部22Lは、挿入方向Pに延びた第1の弾性舌片222の途中で、上方向Uに折れ曲がった鉤状の部分である。第1の弾性舌片222は、ロック部22Lの上端でさらに折れ曲がり、挿入方向Pに対し斜め上方に傾き角度を有して延びている。第2の弾性舌片223は、第1の弾性舌片222とほぼ平行に、挿入方向Pに対し斜め上方に傾いて延びている。第2の弾性舌片223は、第1の弾性舌片222よりも下方向Dに配置されており、第2の弾性舌片223と第1の弾性舌片222との間には、トーションばね4の被案内部422の太さよりも大きい隙間が空いている。第1の弾性舌片222は、トーションばね4の可動腕部42を、ロック部22Lに案内する。また、第2の弾性舌片223は、ロック部22Lにある可動腕部42を、ロック部22Lから解放する解放経路へと案内する。
【0040】
第1のカム片225および第2のカム片226は、挿入方向P奥側から排出方向Eに向かって突出している。第1の弾性舌片222および第2の弾性舌片223は、互いに並んで挿入方向Pに延びている。第2のカム片226は、平面視において第1の弾性舌片222と第2の弾性舌片223との間に配置されている。
図4のパート(B)に示すように、第1のカム片225は、排出方向Eに対し斜め上方向Uに傾いて延びている。
【0041】
ここで、第1の弾性舌片222、第2の弾性舌片223、第1のカム片225、および第2のカム片226のそれぞれのうち上方向Uを向いた上面が本発明にいう第1の面の一例に相当し、下方向Dを向いた下面が本発明にいう第2の面の一例に相当する。
【0042】
第1のカム片225の先端は、シェル2の外面22aよりも上方向Uに配置されている。第1のカム片225の先端と外面22aとの間には、トーションばね4の被案内部422の太さよりも大きい隙間が空いている。第2のカム片226は、第1のカム片225よりも下方向Dに配置されている。第2のカム片226も、第1のカム片225とほぼ平行に、排出方向Eに対し斜め上方向Uに傾いて延びている。第2のカム片226の先端は、第1の弾性舌片222のうちの挿入方向Pで同じ位置の部分と同じ高さか、この部分よりも上方向Uに配置されている。
【0043】
第1の弾性舌片222の先端は、第1のカム片225のうちの挿入方向Pで同じ位置の部分と同じ高さか、この部分よりも上方向Uにある。また、第2の弾性舌片223の先端は、第2のカム片226のうちの挿入方向Pで同じ位置の部分と同じ高さか、この部分よりも上方向Uにある。
【0044】
[カードの挿入]
図4には、カードコネクタC1の途中まで挿入されてきたカードJの前端が示されている。
図4に示す位置にあるカードJは可動腕部42の当接部421に当接している。カードJは、
図4に示す位置よりもさらに挿入方向Pに挿入されると、当接部421を介して可動腕部42を押す。可動腕部42は、カードJに押され、シェル2の外面22aに沿って受入空間11(
図1参照)奥側まで移動する。可動腕部42は、弾性力でカードJを排出方向Eに付勢する。
【0045】
図5は、
図4に示す状態から、可動腕部が挿入方向に移動した状態を示す図である。
図5のパート(A)は平面図であり、パート(B)は概略断面図である。なお、
図5以降では、カードJの図示およびハッチングを省略する。
【0046】
可動腕部42は、カードJに押され、シェル2の外面22aに沿って移動する。可動腕部42がカードJに押されて移動する経路を第1の移動経路R1とする。第1の移動経路R1上には、第1のカム片225および第1の弾性舌片222が配置されている。挿入方向P奥側に移動してきた可動腕部42は、第1のカム片225の下面と、第1の弾性舌片222の上面との間に入り込む。第1のカム片225は、挿入方向P奥側に移動する可動腕部42を、第1の弾性舌片222を押す向きすなわち下方向Dに案内する。
【0047】
第1の弾性舌片222は、可動腕部42に上面が押されて、傾き角度が減じる向きに弾性変形する。すなわち、第1の弾性舌片222は、可動腕部42に押されない状態と比べて下方向Dに弾性変形する。
【0048】
図6は、
図5に示す状態から、可動腕部がさらに挿入方向に移動した状態を示す図である。
図6のパート(A)は平面図であり、パート(B)は概略断面図である。
【0049】
図6には、カードJ(
図4参照)が挿入方向Pの最奥まで押し込まれた状態が示されている。第1の弾性舌片222は、可動腕部42の被案内部422が挿入方向P奥側へ通過すると、弾性変形が解除されて斜めに傾いた形状に戻る。すなわち、第1の弾性舌片222は、上方向Uに戻り、第1の弾性舌片222の先端は、第1のカム片225と同じ高さか、第1のカム片225よりも上方向Uに位置する。第1の弾性舌片222が弾性変形から戻ることによって、可動腕部42の移動経路が切り替わる。
【0050】
図7は、
図6に示す状態から、可動腕部が排出方向に移動し始めた状態を示す図である。
図7のパート(A)は平面図であり、パート(B)は概略断面図である。
【0051】
可動腕部42は、カードJ(
図4参照)への押込力の解除に伴って、
図6に示す位置から排出方向Eに戻る。第1の弾性舌片222は、可動腕部42の被案内部422を、今度は下面で案内する。より詳細には、被案内部422は、第1の弾性舌片222の下面と、第2のカム片226の上面との間を通る。このとき、被案内部422は、排出方向Eに対し斜め上方向Uに傾いて延びた第1のカム片225の下面に案内されることによって、第1の弾性舌片222を上方向Uに弾性変形させながら、ロック部22Lに向かって移動する。
【0052】
図8は、
図7に示す状態から、可動腕部がさらに排出方向に移動した状態を示す図である。
図8のパート(A)は平面図であり、パート(B)は概略断面図である。
【0053】
可動腕部42の被案内部422が、排出方向Eに移動する途中で第1の弾性舌片222を通過すると、第1の弾性舌片222は弾性変形した状態から、下方向Dに戻る。これによって、被案内部422の移動経路が切り替わる。
【0054】
被案内部422は、排出方向Eに移動すると、第1の弾性舌片222のロック部22Lに当接する。被案内部422がロック部22Lに当接した位置を、ロック位置と称する。被案内部422は、ロック位置に保持されることで、排出方向Eへの更なる移動が阻止される。したがって、カードJの排出方向Eへの戻りが止まる。
図8に示す状態は、
図1に示すカードJが、カードコネクタC1に装着完了した状態に対応する。このとき、カードJの電気接点QがカードコネクタC1のコンタクト3と接触する。
【0055】
[カードの取出し]
図9は、
図8に示す状態から、可動腕部が挿入方向に移動した状態を示す図である。
図9のパート(A)は平面図であり、パート(B)は概略断面図である。
【0056】
受入空間11(
図1参照)に受け入れられたカードJ(
図1参照)が、取出しのため挿入方向Pに押し込まれると、
図8に示す位置にある可動腕部42がカードJに押されて挿入方向Pに移動する。可動腕部42の被案内部422は、今度は、第2のカム片226の下面と、第2の弾性舌片223の上面との間の第2の移動経路R2を通る。この第2の移動経路R2上には、第2のカム片226と第2の弾性舌片223が配備されている。第2のカム片226は、排出方向Eに対し上方向Uに傾いて延びており、すなわち挿入方向Pに対し下方向Dに傾いて延びている。第2のカム片226は、挿入方向Pに移動してきた可動腕部42を下方向Dに押す向きに案内する。つまり、可動腕部42は、第2の弾性舌片223を上方向Uへの傾き角度を減じる向きすなわち下方向Dに弾性変形させながら移動する。
【0057】
図10は、
図9に示す状態から、可動腕部がさらに挿入方向に移動した状態を示す図である。
図10のパート(A)は平面図であり、パート(B)は概略断面図である。
【0058】
図10には、カードJ(
図4参照)が挿入方向Pの最奥まで押し込まれた状態が示されている。
【0059】
可動腕部42の被案内部422が挿入方向Pに移動する途中で第2の弾性舌片223を通過すると、第2の弾性舌片223は、弾性変形が解除されて上方向Uに斜めに傾いた形状に戻る。これによって、被案内部422の移動経路が切り替わる。
【0060】
図11は、
図10に示す状態から、可動腕部が排出方向に移動し始めた状態を示す図である。
図11のパート(A)は平面図であり、パート(B)は概略断面図である。
【0061】
可動腕部42は、カードJ(
図4参照)への押込力の解除に伴って、
図10に示す位置から排出方向Eに戻る。第2の弾性舌片223は、可動腕部42の被案内部422を、今度は下面で案内する。被案内部422は、さらに、舌片基部224の下面に沿った第3の移動経路である解放経路R3を排出方向Eに移動し、舌片基部224の縁から、外面22aに戻る。可動腕部42の排出方向Eへの移動に伴い、カードJ(
図1参照)は、受入空間11(
図1参照)から排出される。最終的に、可動腕部42は
図4に示す初期の状態に戻る。ここで、被案内部422をロック位置から解放する、
図9に示す第2の移動経路R2および
図11に示す解放経路R3の組合せが、本発明にいう解放経路の一例に相当する。
【0062】
本実施形態のカードコネクタC1は、トーションばね4の可動腕部42が、カードJの排出と、ロック位置に対する案内および解除の機能を兼ねている。したがって、例えば、カム係合を駆動するためのスライダや、ハートカム溝と係合するカムロッドを備える必要が無い。このため、部品点数が低減され、カードコネクタの小型化が可能である。また、案内機構によってロック位置および解放経路へ案内される可動腕部42は、トーションばね4の一部であるため、カードJの、切欠き以外の先端縁に当接させることができる。したがって、イジェクト機能がカードの切欠きに依存せず実現できる。またさらに、トーションばね4の可動腕部42には、案内機構22に案内される被案内部422とカードJの当接を受ける当接部421との双方を一体に形成されているため、部品点数がさらに低減される。
【0063】
また、本実施形態のカードコネクタC1の案内機構22は、シェル2の一部に設けられているため、部品点数が低減される。
【0064】
また、案内機構22の第1の弾性舌片222および第2の弾性舌片223は、それ自体が変形することで可動腕部42の案内経路を切換えている。したがって、ハート型溝の底の段形状によって案内経路を切換える溝カムとは異なり、弧を描いて移動するトーションばね4の被案内部422であっても確実に案内することができる。
【0065】
また、案内機構22の第1及び第2のカム片225,226が、可動腕部42を第1及び第2の弾性舌片222,223を押す向きに案内することによって、可動腕部42が、弾性舌片222,223の弾性力に抗して、弾性舌片222,223を確実に弾性変形させることができる。
【0066】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明にあたっては、これまで説明してきた実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する。
【0067】
図12は、本発明のカードコネクタの第2実施形態を示す平面図である。
【0068】
図12に示すカードコネクタC2は、シェル6に形成された案内機構62の形状が、
図1に示す第1実施形態のカードコネクタC1と異なる。
【0069】
図13は、
図12に示すカードコネクタの案内機構の部分を示す拡大図である。
図13のパート(A)は平面図であり、パート(B)はパート(A)のC−C線概略断面図である。
【0070】
図13に示す案内機構62は、第1の弾性舌片622、第2の弾性舌片623、第1のカム片625、第2のカム片626、およびカム片基部627を有する。
【0071】
第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623は、互いに並んで、挿入方向Pに対し斜めに傾いて延びている。より詳細には、第1の弾性舌片622は、先端部が挿入方向Pに対し斜め上方向Uに延びている。また、第2の弾性舌片623の全体は、挿入方向Pに対し斜めに傾いて延びた形状を有し、途中にロック部62Lを有する。より詳細には、ロック部62Lは、挿入方向Pに延びた第1の弾性舌片622の途中で、上方向Uに鉤状に折れ曲がった部分である。第2の弾性舌片623は、ロック部62Lの上端でさらに折れ曲がり、挿入方向Pに対し斜め上方に傾いて延びている。
【0072】
カム片基部627は、平面視でシェル6の後端縁部から排出方向Eに突出し、途中から排出方向Eとは直角方向に曲がり水平方向に延びている。第1のカム片625および第2のカム片626は、カム片基部627から、排出方向Eに向かって突出している。
図13のパート(B)に示すように、第1のカム片625および第2のカム片626は、カム片基部627を介して、挿入方向P奥側が支持された片持ち梁形状を有している。第1のカム片625は、第2のカム片626よりも上方向Uに配置されている。第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623の先端は、第1のカム片625よりも可動腕部42の太さ分以上、下方向Dに配置されている。第2のカム片626は、第1の弾性舌片622の下面に向かって排出方向Eに延びている。より詳細には、第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623の先端は、第2のカム片626よりも可動腕部42の太さ分以上、上方向Uに配置されている。第2のカム片626の先端は、第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623と同じ高さか、または第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623よりも上方向Uに配置されている。
【0073】
ここで、第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623の組合せが、本発明にいう第1の段舌片の一例に相当する。また、第2のカム片626が本発明にいう第3のカム片の一例に相当する。
【0074】
続いて、カードJ(
図1参照)の挿入および排出時における、トーションばね4の可動腕部42の被案内部422の移動について説明する。本実施形態では、可動腕部42の被案内部422は、
図3のパート(B)に示す第1のカム片625、第2のカム片626、およびカム片基部627の周囲を巡るように移動する。
【0075】
[カードの挿入]
図14は、
図13に示す状態から、可動腕部が挿入方向に移動した状態を示す図である。
図14のパート(A)は平面図であり、パート(B)は概略断面図である。なお、
図14以降では、ハッチングを省略する。
【0076】
可動腕部42は、当接部421がカードJ(
図1参照)に押されることで挿入方向Pに移動する。挿入方向P奥側に移動してきた可動腕部42の被案内部422は、第1のカム片625と、第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623との間に入る。被案内部422は、第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623の上面に案内される。第2の弾性舌片623には、ロック部62Lを形成するよう折れ曲がっているが、第1の弾性舌片622は折れ曲がりを有さないため、可動腕部42のロック部62Lへの引掛かりが回避される。
【0077】
図15は、
図14に示す状態から、可動腕部がさらに挿入方向に移動した状態を示す図である。
図16のパート(A)は平面図であり、パート(B)は概略断面図である。
【0078】
図15には、カードJ(
図4参照)が挿入方向Pの最奥まで押し込まれた状態が示されている。可動腕部42の被案内部422は、第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623を通り過ぎると、下方向Dに移動する。被案内部422は、第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623よりも下方向Dに移動する。被案内部422の下方向Dへの移動は、第1のカム片625によって促進される。
【0079】
図16は、
図15に示す状態から、可動腕部が排出方向に移動し始めた状態を示す図である。
図16のパート(A)は平面図であり、パート(B)は概略断面図である。
【0080】
可動腕部42の被案内部422は、カードJ(
図4参照)への押込力の解除に伴って、
図15に示す位置から排出方向Eに戻る。第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623は、可動腕部42の被案内部422を、今度は下面で案内する。より詳細には、被案内部422は、ロック部62Lに向けて、第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623双方の下面と、第2のカム片626の上面との間を通過する。このとき、可動腕部42は、第2のカム片626に案内されることによって、第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623双方を上方向Uに弾性変形させながら移動する。
【0081】
可動腕部42の被案内部422が、排出方向Eに移動する途中で第2のカム片626を通過すると、第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623は弾性変形した状態から、下方向Dに戻る。これによって、被案内部422の移動経路が切り替わる。
【0082】
被案内部422は、第2の弾性舌片623のロック部62Lに当接する。被案内部422がロック部62Lに当接した位置を、ロック位置と称する。被案内部422は、ロック位置に保持されることで、排出方向Eへの更なる移動が阻止される。したがって、カードJ(
図1参照)の排出方向Eへの戻りが止まる。
図16に示す状態は、カードJ(
図1参照)がカードコネクタC2に装着完了した状態である。
【0083】
[カードの取出し]
図17は、
図16に示す状態から、可動腕部が挿入方向に移動した状態を示す図である。
図17のパート(A)は平面図であり、パート(B)は概略断面図である。
【0084】
カードJ(
図1参照)が、取出しのため挿入方向Pに押し込まれると、
図16に示す位置にある可動腕部42がカードJに押されて挿入方向Pに移動する。第2のカム片626と、第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623との間の経路は、第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623が弾性変形から戻ったことで塞がれている。つまり、可動腕部42の被案内部422は、第1の弾性舌片622および第2の弾性舌片623の下面に沿う移動が阻止されている。したがって、被案内部422は、今度は、第2のカム片626の下面に案内され、カム片基部627よりも挿入方向Pに移動する。カム片基部627よりも挿入方向Pに移動した被案内部422は、可動腕部42の弾性力によって上方向Uに戻る。
【0085】
図18は、
図17に示す状態から、可動腕部が排出方向に移動し始めた状態を示す図である。
図18のパート(A)は平面図であり、パート(B)は概略断面図である。
【0086】
可動腕部42は、カードJ(
図4参照)への押込力の解除に伴って、
図17に示す位置から排出方向Eに戻る。可動腕部42の被案内部422は、第1のカム片625よりも挿入方向P奥側から、第1のカム片625の上面を案内されて排出方向Eに移動する。この結果、可動腕部42は
図13に示す状態に戻る。可動腕部42の排出方向Eへの移動に伴い、カードJ(
図1参照)は排出される。
【0087】
本実施形態のカードコネクタC2は、カム係合を駆動するためのスライダや、ハートカム溝と係合するカムロッドを備える必要が無い。このため、部品点数が低減され、カードコネクタの小型化が可能である。また、イジェクト機能がカードの切欠きに依存せず実現できる。また、案内機構62は、シェル6の一部に設けられているため、部品点数が低減される。
【0088】
また、案内機構22の第1の弾性舌片222および第2の弾性舌片223は、それ自体が変形することで可動腕部42の案内経路を切換えている。したがって、例えばハート型溝の底の段形状によって案内経路を切換える溝カムとは異なり、弧を描いて移動するトーションばね4の被案内部422であっても確実に案内することができる。
【0089】
なお、上述した実施形態には、本発明にいうカム片の例として、シェル2,6の一部として設けられたカム片が示されている。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、カム片は、例えばハウジングの一部に形成されたものであってもよく、また、シェルやハウジングとは別の部材であってもよい。
【0090】
また、上述した実施形態には、本発明にいうカードの例として、SDカードが示されている。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、カードは、例えばSIMカードであってもよい。
【0091】
また、上述した第1実施形態には、カム片を有する案内機構22が示されている。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、可動腕部が上下方向への変形を抑えて移動方向に移動する場合には、案内機構にカム片が設けられないものであってもよい。
【0092】
また、上述した第1実施形態では、第1のカム片225よりも下に移動した可動腕部42が、その次に第1の弾性舌片222よりも下に移動し、その次に第1のカム片225よりも下に移動し、そして、その次に第2の弾性舌片223よりも下に移動していく。本発明はこれに限られるものではなく、各片の配置および可動腕部の移動順は上下逆であってもよい。これに関連して、本発明にいう第1の面および第2の面は、実施形態で示した各片の上面および下面とは逆であってもよい。