(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸気マニホールド及び排気マニホールドを有するエンジンと、前記エンジンの排気ガスを浄化処理する排気ガス浄化装置を備えており、前記エンジンの上部側に取付け台を介して前記排気ガス浄化装置を搭載しているエンジン装置であって、
前記排気マニホールドが、前記排気ガス浄化装置の長手中途部に設けられた浄化入口管と連結するとともに、前記取付け台が、前記排気ガス浄化装置の両端それぞれを支持する入口側ブラケット体及び出口側ブラケット体を有しており、
前記出口側ブラケット体が吸気側ブラケット及び排気側ブラケットを備え、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットの一端側同士を前記エンジン上方で互いに締結し、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットの各他端側を前記エンジン側に連結しており、
前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットのうちいずれか一方に前記排気ガス浄化装置の一端側を連結するとともに、
前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットのうちいずれか一方に仮止めノッチを形成し、残る他方に設けた係止軸体を前記仮止めノッチに係止可能に構成している、
エンジン装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、DPFにおいては、経年使用でスートフィルタに堆積する粒子状物質を、エンジンの駆動時に燃焼除去させてスートフィルタを再生させる技術がある。よく知られるように、スートフィルタ再生動作は、排気ガス温度が再生可能温度(例えば300℃程度)以上で生ずるから、DPFを通過する排気ガス温度は再生可能温度以上であることが望ましい。このため、以前から、DPFを排気ガス温度が高い位置、すなわちエンジンに直接搭載したいという要請がある。
【0005】
しかし、エンジンにDPFを取り付ける場合は、駆動によるエンジン振動が排気ガス浄化装置に直接伝わるおそれがあり、適切なDPFの取付け構造を考慮しなければ、DPF内に収容されるディーゼル酸化触媒やスートフィルタが振動によって破損することが懸念される。
【0006】
一方、エンジンの搭載スペースは搭載対象の作業機によって様々だが、近年は、軽量化やコンパクト化の要請で、搭載スペースに制約がある(狭小である)ことが多い。このため、エンジンにDPFを直接搭載するに当たっては、DPFをできるだけコンパクトにレイアウトする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、上記のような現状を検討して改善を施したエンジン装置を提供することを技術的課題としている。
【0008】
本願発明は、吸気マニホールド及び排気マニホールドを有するエンジンと、前記エンジンの排気ガスを浄化処理する排気ガス浄化装置を備えており、前記エンジンの上部側に取付け台を介して前記排気ガス浄化装置を搭載しているエンジン装置であって、前記排気マニホールドが、前記排気ガス浄化装置の長手中途部に設けられた浄化入口管と連結するとともに、前記取付け台が、前記排気ガス浄化装置の両端それぞれを支持する
入口側ブラケット体及び出口側ブラケット体を有しており、
前記出口側ブラケット体が吸気側ブラケット及び排気側ブラケットを備え、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットの一端側同士を前記エンジン上方で互いに締結し、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットの各他端側を前記エンジン側に連結しており、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットのうちいずれか一方に前記排気ガス浄化装置の一端側を連結するとともに、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットのうちいずれか一方に仮止めノッチを形成し、残る他方に設けた係止軸体を前記仮止めノッチに係止可能に構成しているというものである。
【0009】
【0010】
【0011】
上記エンジン装置において、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットのうちいずれか一方に、前記エンジンを吊り上げるための吊上げ金具の下端側を締結しているというもの
としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によると、取付け台のうち排気ガス浄化装置の一端側を支持するものとして、吸気側ブラケット及び排気側ブラケットを備え、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットの一端側同士を互いに締結し、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットの各他端側を前記エンジン側に連結するから、前記取付け台を前記吸気側ブラケットと前記排気側ブラケットとに分離構成することになり、前記各ブラケット単品では軽量化を図りながら、相互の締結によって支持強度を十分に確保して、前記排気ガス浄化装置を前記エンジンに安定的に搭載できる。従って、前記エンジンの振動等による前記排気ガス浄化装置の劣化・損傷を防止して、前記排気ガス浄化装置の耐久性向上に寄与できる。
【0013】
本願発明によると、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットのうちいずれか一方に前記排気ガス浄化装置の一端側を連結するから、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットのうちいずれか一方を前記排気ガス浄化装置の一端側に連結した状態で前記エンジンに載せ降ろしでき、前記エンジンに対する前記排気ガス浄化装置の組付け作業性向上を図れる。また、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットのうち残る他方を、例えばエンジン吊り上げ用の吊上げ金具の取付け座に用いることも可能である。
【0014】
本願発明によると、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットのうちいずれか一方に仮止めノッチを形成し、残る他方に設けた係止軸体を前記仮止めノッチに係止可能に構成しているから、前記係止軸体と前記仮止めノッチとの係合によって、一方の前記ブラケットに対する他方の前記ブラケットの組付け位置、ひいては、前記エンジンに対する前記排気ガス浄化装置の搭載位置を簡単に位置決めできる。また、前記排気ガス処理装置の全重量を支えながら、ボルト締結等の組付け作業や取外し作業をする必要がなくなり、前記排気ガス浄化装置の載せ降ろし作業時や、前記排気ガス浄化装置の組立分解作業時の手間を大幅に軽減できる。
【0015】
本願発明によると、前記吸気側ブラケット及び前記排気側ブラケットのうちいずれか一方に、前記エンジンを吊り上げるための吊上げ金具の下端側を締結するから、前記排気ガス浄化装置を支持する高剛性部品である前記両ブラケットのうちいずれかを前記吊上げ金具に対する締結部に兼用して、部品点数を抑制しながら、前記エンジンに前記吊上げ金具を強固に締結できる(前記エンジンに対する前記吊上げ金具の連結強度を確保できる)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。まず、
図1〜
図7を参照しながら、実施形態におけるコモンレール式のエンジン1の概略構造について説明する。なお、以下の説明では、出力軸3に沿う両側部(出力軸3を挟んだ両側部)を左右、冷却ファン9配置側を前側、フライホイル11配置側を後側、排気マニホールド7配置側を左側、吸気マニホールド6配置側を右側と称し、これらを便宜的に、エンジン1における四方及び上下の位置関係の基準としている。
【0018】
図1〜
図7に示すように、建設土木機械や農作業機といった作業機に搭載される原動機としてのエンジン1は、連続再生式の排気ガス浄化装置2(DPF)を備えている。排気ガス浄化装置2によって、エンジン1から排出される排気ガス中の粒子状物質(PM)が除去されると共に、排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)が低減される。
【0019】
エンジン1は、出力軸3(クランク軸)とピストン(図示省略)とを内蔵するシリンダブロック4を備える。シリンダブロック4上にシリンダヘッド5を搭載している。シリンダヘッド5の右側面に吸気マニホールド6を配置する。シリンダヘッド5の左側面に排気マニホールド7を配置する。すなわち、エンジン1において出力軸3に沿う両側面に、吸気マニホールド6と排気マニホールド7とを振り分けて配置する。シリンダヘッド5の上面にヘッドカバー8を配置する。エンジン1において出力軸3と交差する一側面、具体的にはシリンダブロック4の前面に、冷却ファン9を設ける。シリンダブロック4の後面にマウンティングプレート10を設ける。マウンティングプレート10に重なるようにフライホイル11を配置する。
【0020】
出力軸3にフライホイル11を軸支する。作業機の作動部に出力軸3を介してエンジン1の動力を取り出すように構成している。また、シリンダブロック4の下面にはオイルパン12を配置する。オイルパン12内の潤滑油は、シリンダブロック4の右側面に配置されたオイルフィルタ13を介して、エンジン1の各潤滑部に供給される。
【0021】
シリンダブロック4の右側面のうちオイルフィルタ13の上方(吸気マニホールド6の下方)には、燃料を供給するための燃料供給ポンプ14を取付ける。電磁開閉制御型の燃料噴射バルブ(図示省略)付きの3気筒分のインジェクタ15をエンジン1に設ける。各インジェクタ15に、燃料供給ポンプ14及び円筒状のコモンレール16及び燃料フィルタ(図示省略)を介して、作業機に搭載される燃料タンク(図示省略)を接続する。
【0022】
前記燃料タンクの燃料が燃料フィルタ(図示省略)を介して燃料供給ポンプ14からコモンレール16に圧送され、高圧の燃料がコモンレール16に蓄えられる。各インジェクタ15の燃料噴射バルブをそれぞれ開閉制御することによって、コモンレール16内の高圧の燃料が各インジェクタ15からエンジン1の各気筒に噴射される。なお、マウンティングプレート10にエンジン始動用スタータ18を設けている。エンジン始動用スタータ18のピニオンギヤはフライホイル11のリングギヤに噛み合っている。エンジン1を始動させる際は、スタータ18の回転力にてフライホイル11のリングギヤを回転させることによって、出力軸3が回転開始する(いわゆるクランキングが実行される)。
【0023】
シリンダヘッド5の前面側(冷却ファン9側)には、冷却水ポンプ21が冷却ファン9のファン軸と同軸状に配置されている。エンジン1の左側、具体的には冷却水ポンプ21の左側方に、エンジン1の動力にて発電する発電機としてのオルタネータ23が設けられている。出力軸3の回転にて、冷却ファン駆動用Vベルト22を介して、冷却ファン9と共に冷却水ポンプ21及びオルタネータ23が駆動する。作業機に搭載されるラジエータ19(
図3及び
図4参照)内の冷却水が、冷却水ポンプ21の駆動によって、シリンダブロック4及びシリンダヘッド5に供給され、エンジン1を冷却する。
【0024】
オイルパン12の左右側面には、機関脚取付け部24がそれぞれ設けられている。各機関脚取付け部24には、防振ゴムを有する機関脚体(図示省略)をそれぞれボルト締結可能である。実施形態では、作業機における左右一対のエンジン支持シャーシ25にオイルパン12を挟持させ、当該オイルパン12側の機関脚取付け部24を各エンジン支持シャーシ25にボルト締結することによって、作業機の両エンジン支持シャーシ25がエンジン1を支持する。
【0025】
図4〜
図7に示すように、吸気マニホールド6の入口部には、EGR装置26(排気ガス再循環装置)を介してエアクリーナ(図示省略)を連結する。EGR装置26は主としてエンジン1の右側、具体的にはシリンダヘッド5の右側方に配置されている。エアクリーナに吸い込まれた新気(外部空気)は、当該エアクリーナにて除塵及び浄化された後、EGR装置26を介して吸気マニホールド6に送られ、エンジン1の各気筒に供給される。
【0026】
EGR装置26は、エンジン1の排気ガスの一部(EGRガス)と新気とを混合させて吸気マニホールド6に供給するEGR本体ケース27と、エアクリーナにEGR本体ケース27を連通させる吸気スロットル部材28と、排気マニホールド7にEGRクーラ29を介して接続される再循環排気ガス管30と、再循環排気ガス管30にEGR本体ケース27を連通させるEGRバルブ部材31とを備えている。
【0027】
すなわち、吸気マニホールド6には、EGR本体ケース27を介して吸気スロットル部材28が連結されている。EGR本体ケース27には、再循環排気ガス管30の出口側を接続する。再循環排気ガス管30の入口側は、EGRクーラ29を介して排気マニホールド7に接続する。EGRバルブ部材31内のEGR弁の開度を調節することによって、EGR本体ケース27へのEGRガスの供給量が調節される。なお、EGR本体ケース27は、吸気マニホールド6に着脱可能にボルト締結される。
【0028】
上記の構成において、エアクリーナから吸気スロットル部材28を介してEGR本体ケース27内に新気を供給する一方、排気マニホールド7からEGR本体ケース27内にEGRガスを供給する。エアクリーナからの新気と排気マニホールド7からのEGRガスとがEGR本体ケース27内で混合された後、当該混合ガスが吸気マニホールド6に供給される。エンジン1から排気マニホールド7に排出された排気ガスの一部を吸気マニホールド6からエンジン1に還流することによって、高負荷運転時の最高燃焼温度が低下し、エンジン1からのNOx(窒素酸化物)の排出量が低減する。
【0029】
エンジン1の上面側のうち排気マニホールド7の上方、すなわちシリンダヘッド5の左側方で排気マニホールド7の上方には、排気ガス浄化装置2を配置する。この場合、排気ガス浄化装置2の長手方向をエンジン1の出力軸3と平行に延びるように、排気ガス浄化装置2の姿勢を設定している。排気ガス浄化装置2の排気上流側の外周部に浄化入口管36を設ける。浄化入口管36を排気マニホールド7の出口部に連結する。エンジン1の各気筒から排気マニホールド7に排出された排気ガスは、排気ガス浄化装置2等を経由して外部に放出される。
【0030】
次に、従前の図に
図8〜
図12をも加えて、排気ガス浄化装置2の構造について説明する。排気ガス浄化装置2は、浄化入口管36を有する浄化ケーシング38を備える。浄化ケーシング38の内部に、二酸化窒素(NO2)を生成する白金等のディーゼル酸化触媒39と、捕集した粒子状物質(PM)を比較的低温で連続的に酸化除去するハニカム構造のスートフィルタ40とを、排気ガス移動方向に直列に並べている。ディーゼル酸化触媒39及びスートフィルタ40は、浄化ケーシング38に収容されるガス浄化フィルタに相当するものである。なお、浄化ケーシング38の排気ガス出口41に排気管を介して例えば消音器やテールパイプを連結し、排気ガス出口41から消音器やテールパイプを介して排気ガスを外部に排出する。
【0031】
上記の構成において、ディーゼル酸化触媒39の酸化作用によって生成された二酸化窒素(NO2)がスートフィルタ40内に取り込まれる。エンジン1の排気ガス中に含まれる粒子状物質はスートフィルタ40に捕集され、二酸化窒素(NO2)によって連続的に酸化除去される。エンジン1の排気ガス中の粒状物質(PM)の除去に加え、エンジン1の排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)の含有量が低減される。
【0032】
浄化ケーシング38の排気上流側の外周部に浄化入口管36を設ける。実施形態の浄化入口管36は上向きに開口した半割筒型に形成されている。浄化ケーシング38に形成された排気ガス流入口(図示省略)を覆うように、浄化入口管36のうち大径側である矩形状の上向き開口端部を浄化ケーシング38の外周部に溶接固定している。浄化入口管36の排気ガス取込み側は浄化ケーシング38の長手方向中央側に位置している。浄化入口管36の排気ガス取込み側を排気マニホールド7の出口部に締結している。
【0033】
浄化ケーシング38の排気下流側の端部には蓋体42を溶接固定する。浄化ケーシング38の排気下流側の端部を蓋体42によって塞いでいる。蓋体42の略中央部に排気ガス出口41を開口させている。浄化ケーシング38の排気上流側の端部には入口側蓋体43を溶接固定する。浄化ケーシング38の排気上流側の端部は入口側蓋体43によって塞いでいる。
【0034】
浄化ケーシング38には、サーミスタ形の排気ガス温度センサ57を設ける。実施形態の排気ガス温度センサ57は一対あり、それぞれからセンサ配管57aを延出させる。各センサ配管57a先端の検出部分は、ディーゼル酸化触媒39よりも排気上流側、並びにディーゼル酸化触媒39とスートフィルタ40との間にそれぞれ突入していて、それぞれの空間内の排気ガス温度を検出する。排気ガス温度センサ57にて排気ガス温度を電気信号に変換して、エンジンコントローラ(図示省略)に出力するように構成している。
【0035】
浄化ケーシング38に排気圧力センサ44を取り付けている。排気圧力センサ44はスートフィルタ40の上流側と下流側との間の排気ガスの圧力差を検出するものであり、排気ガスの圧力差を電気信号に変換して、エンジンコントローラ(図示省略)に出力するように構成している。スートフィルタ40の上下流間の排気圧力差に基づき、スートフィルタ40における粒子状物質の堆積量を演算し、スートフィルタ40内の詰り状態が把握される。
【0036】
浄化ケーシング38の中間挟持フランジ45に、貫通穴付きのセンサ締結部46を、浄化ケーシング38の外周部のうちヘッドカバー8側に位置するように設ける。そして、電気配線コネクタ44aを一体的に設けた排気圧力センサ44及び各排気ガス温度センサ57の電気配線コネクタ57bを、センサブラケット58に取り付けている。この場合、センサブラケット58は略L字板状に形成されたアルミニウム製のものであり、軽量化されている。センサブラケット58の水平板部に断熱兼振動防止シート(図示省略)を介して排気圧力センサ44を取り付け、センサブラケット58の鉛直板部に断熱兼振動防止シート(図示省略)を介して各排気ガス温度センサ57の電気配線コネクタ57bを縦並びに取り付けている。このように構成すると、各種センサ44,57の電気配線コネクタ44a,57bがひとまとまりになるから、電気配線コネクタ44a,57bに対する配線関係の集約化を容易に実行できる。配線作業も簡単になる。
【0037】
排気圧力センサ44には、上流側センサパイプ47及び下流側センサパイプ48の一端側がそれぞれ接続される。浄化ケーシング38内のスートフィルタ40を挟むように、上流側及び下流側の各センサ配管ボス体49,50を浄化ケーシング38に設ける。管継手ボルト53を介して、各センサパイプ47,48の他端側に設けられた締結ボス体51,52を各センサ配管ボス体49,50に締結する。
【0038】
上記の構成において、スートフィルタ40の上流(流入)側の排気ガス圧力と、スートフィルタ40の下流(流出)側の排気ガス圧力の差(排気ガスの差圧)が、排気圧力センサ44によって検出される。スートフィルタ40に捕集された排気ガス中の粒子状物質の残留量が排気ガスの差圧に比例するから、スートフィルタ40に残留する粒子状物質量が所定以上に増加したときに、排気圧力センサ44の検出結果に基づき、スートフィルタ40の粒子状物質量を減少させる再生制御(例えば排気温度を上昇させる制御)が実行される。また、再生制御可能範囲以上に、粒子状物質の残留量がさらに増加したときには、浄化ケーシング38を着脱分解して、スートフィルタ40を掃除し、粒子状物質を人為的に除去するメンテナンス作業が行われる。
【0039】
上記のように、排気ガス浄化装置2の外周部のうちヘッドカバー8側に、排気ガス浄化装置2に対する各種センサ44,57(検出部材)用の電気配線コネクタ44a,57bを配置すると、排気ガス浄化装置2の上端とほぼ変わらないかそれよりも低い高さに、電気配線コネクタ44a,57bを位置させることが可能になり、排気ガス浄化装置2を含むエンジン1全高に対して、電気配線コネクタ44a,57bの配置の影響を少なくできるか又はなくせる。このため、排気ガス浄化装置2を組み付けたエンジン1において、全高を極力低く抑えるのに効果的であり、エンジン1のコンパクト化に貢献する。
【0040】
排気ガス浄化装置2は、エンジン1の上面側のうち排気マニホールド7の上方で、シリンダヘッド5及び排気マニホールド7に対してエンジン1の出力軸3と平行に延びる姿勢で支持させている。このため、エンジン1に排気ガス浄化装置2を組み込んでから出荷可能なものでありながら、エンジン1の高剛性部品であるシリンダヘッド5及び排気マニホールド7を用いて、排気ガス浄化装置2を高剛性に支持でき、振動等による排気ガス浄化装置2の損傷を防止できる。また、排気マニホールド7に排気ガス浄化装置2を至近距離で連通できることになり、排気ガス浄化装置2を適正温度に維持し易く、高い排気ガス浄化性能の維持が可能になる。その結果、排気ガス浄化装置2の小型化にも貢献する。
【0041】
次に、
図8〜
図16を参照しながら、エンジン1に排気ガス浄化装置2を組み付ける構造について説明する。前述した通り、排気マニホールド7の出口部に、浄化ケーシング38の浄化入口管36の排気ガス取込み側を締結している。排気マニホールド7の排気ガスが浄化入口管36を介して排気ガス浄化装置2に供給される。排気マニホールド7は、排気ガス浄化装置2を支持するケーシング支持体としても機能している。この場合、排気マニホールド7は、浄化入口管36を介して浄化ケーシング38の長手中途部を支持する。
【0042】
図8〜
図10及び
図16に詳細に示すように、エンジン1には、排気ガス浄化装置2を支持固定するための入口側ブラケット体71及び出口側ブラケット体72を備えている。入口側ブラケット体71及び出口側ブラケット体72は、エンジン1の出力軸3と交差する方向に幅広に形成されている。入口側ブラケット体71及び出口側ブラケット体72は、エンジン1のシリンダヘッド5に着脱可能に固定される。入口側ブラケット体71及び出口側ブラケット体72は、シリンダヘッド5において出力軸3と交差する前面側及び後面側に振り分けて立設している。入口側ブラケット体71は、シリンダヘッド5の後面側に位置して、浄化ケーシング38の排気上流側を支持する。出口側ブラケット体72は、シリンダヘッドの前面側に位置して、浄化ケーシング38の排気下流側を支持する。入口側ブラケット体71及び出口側ブラケット体72は取付け台に相当するものである。
【0043】
図9、
図12及び
図14〜
図16に示すように、入口側ブラケット体71は前述の通り、シリンダヘッド5の後面側(マウンティングプレート10の上方)に配置される。入口側ブラケット体71の下端側をシリンダヘッド5の後面にボルト締結する。入口側ブラケット体71の上端側には、延長ブラケット76をボルト締結する。延長ブラケット76の先端側は、ボルト及びナットを介して、浄化ケーシング38の排気上流側の端部を塞ぐ入口側蓋体43に締結する。その結果、浄化ケーシング38の排気上流側は、入口側ブラケット体71を介してシリンダヘッド5の後面側に着脱可能に固定される。
【0044】
図10〜
図15に示すように、出口側ブラケット体72は前述の通り、シリンダヘッド5の前面側(冷却ファン9側)に配置される。実施形態の出口側ブラケット体72は、吸気側ブラケット91と排気側ブラケット92とに分離構成されている。
【0045】
吸気側ブラケット91の下端側をシリンダヘッド5の前面側にボルト締結する。吸気マニホールド6の上面には補強ブラケット93をボルト締結する。吸気側ブラケット91の後面側の上下中途部に補強ブラケット93の前面側を重ね合わせて、両者91,93をボルト締結する。なお、吸気側ブラケット91の前面側の上下中途部には、後述する第1吊上げ金具81を取り付ける。この場合、補強ブラケット93と第1吊上げ金具81とにより吸気側ブラケット91の上下中途部を挟持した状態で、これら三者81,91,93を共締めしている。
【0046】
排気側ブラケット92は、下向き開口略C字状の前枠板94の後面側に断面く字状の後枠板95を溶接固定したものである。実施形態では、浄化ケーシング38における出口挟持フランジ54のブラケット締結部54aに、スペーサ体96を介して前枠板95の基端側をボルト締結している。すなわち、排気側ブラケット92に排気ガス浄化装置2の一端側を連結している。なお、エンジン1に対する排気ガス浄化装置2の搭載位置によっては、吸気側ブラケット91に排気ガス浄化装置2の一端側に連結してもよい。
【0047】
図10、
図11、
図13及び
図15に示すように、排気側ブラケット92における前枠板94の先端側には、係止軸体としての埋込みボルト97を設けている。埋込みボルト97は前枠板94の前面から前向きに突出させる。一方、吸気側ブラケット91の上端側には、上向き開口状の仮止めノッチ98を形成する。すなわち、吸気側ブラケット91の上端側に形成される埋込みボルト97挿入用のボルト穴を上向き開放状に切り欠いて、仮止めノッチ98を形成する。吸気側ブラケット91上端側の仮止めノッチ98に、前枠板94の埋込みボルト97を係止可能に構成している。排気側ブラケット92における前枠板94の前面先端側を吸気側ブラケット91の後面上端側に重ね合わせて、埋込みボルト97を仮止めノッチ98に係合させることによって、吸気側ブラケット91に、排気側ブラケット92ひいては浄化ケーシング38を支持させる。
【0048】
埋込みボルト97と仮止めノッチ98との係合によって、浄化ケーシング38の排気下流側を所定位置に保持できる。つまり、埋込みボルト97と仮止めノッチ98との係合によって、吸気側ブラケット91に対する排気側ブラケット92の組付け位置、ひいてはエンジン1に対する排気ガス浄化装置2の搭載位置を簡単に位置決めできる。なお、実施形態とは逆に、吸気側ブラケット91に埋込みボルト97を設け、排気側ブラケット92に仮止めノッチ98を設けてもよい。仮止めノッチ98の開口方向は、埋込みボルト97との位置関係で設定すればよく、上向き開口状に限るものではない。
【0049】
図15に示すように、埋込みボルト97を仮止めノッチ98に係合させた状態で、排気側ブラケット92における前枠板94の前面先端側と、吸気側ブラケット91の後面上端側とをボルト締結する。次いで、埋込みボルト97に係止ナット99をねじ込んで(増し締めして)、吸気側ブラケット91及び排気側ブラケット92の一端側同士を互いに連結する。排気側ブラケット92における後枠板95の下端側をシリンダヘッド5の左側面前部にボルト締結する。その結果、浄化ケーシング38の排気下流側は、出口側ブラケット体72を介してシリンダヘッド5の前面及び左側面前部(前面側)に着脱可能に固定される。
【0050】
このように構成すると、埋込みボルト97と仮止めノッチ98との係合によって、吸気側ブラケット91に対する排気側ブラケット92の組付け位置、ひいてはエンジン1に対する排気ガス浄化装置2の搭載位置を簡単に位置決めできる。また、排気ガス処理装置2の全重量を支えながら、ボルト締結等の組付け作業や取外し作業をする必要がなくなり、排気ガス浄化装置2の載せ降ろし作業時や、排気ガス浄化装置2の組立分解作業時の手間を大幅に軽減できる。
【0051】
上記の記載並びに
図10〜
図15から明らかなように、取付け台のうち排気ガス浄化装置2の一端側を支持するもの(出口側ブラケット体72)として、吸気側ブラケット91及び排気側ブラケット92を備え、前記吸気側ブラケット91及び前記排気側ブラケット92の一端側同士を互いに締結し、前記吸気側ブラケット91及び前記排気側ブラケット92の各他端側を前記エンジン1(シリンダヘッド5)側に連結するから、前記取付け台(出口側ブラケット体72)を前記吸気側ブラケット91と前記排気側ブラケット92とに分離構成することになり、前記各ブラケット単品91,92では軽量化を図りながら、相互の締結によって支持強度を十分に確保して、前記排気ガス浄化装置2を前記エンジン1に安定的に搭載できる。従って、前記エンジン1の振動等による前記排気ガス浄化装置2の劣化・損傷を防止して、前記排気ガス浄化装置2の耐久性向上に寄与できる。
【0052】
上記の記載並びに
図10〜
図15から明らかなように、前記吸気側ブラケット91及び前記排気側ブラケット92のうちいずれか一方に前記排気ガス浄化装置2の一端側を連結するから、前記吸気側ブラケット91及び前記排気側ブラケット92のうちいずれか一方を前記排気ガス浄化装置2の一端側に連結した状態で前記エンジン1に載せ降ろしでき、前記エンジン1に対する前記排気ガス浄化装置2の組付け作業性向上を図れる。また、前記吸気側ブラケット91及び前記排気側ブラケット92のうち残る他方を、例えばエンジン1吊り上げ用の吊上げ金具81の取付け座に用いることも可能である。
【0053】
上記の記載並びに
図10〜
図15から明らかなように、前記吸気側ブラケット91及び前記排気側ブラケット92のうちいずれか一方に仮止めノッチ98を形成し、残る他方に設けた係止軸体97を前記仮止めノッチ98に係止可能に構成しているから、前記係止軸体97と前記仮止めノッチ98との係合によって、一方の前記ブラケット91(92)に対する他方の前記ブラケット92(91)の組付け位置、ひいては、前記エンジン1に対する前記排気ガス浄化装置2の搭載位置を簡単に位置決めできる。また、前記排気ガス処理装置2の全重量を支えながら、ボルト締結等の組付け作業や取外し作業をする必要がなくなり、前記排気ガス浄化装置2の載せ降ろし作業時や、前記排気ガス浄化装置2の組立分解作業時の手間を大幅に軽減できる。
【0054】
特に上記のように、入口側ブラケット体71及び出口側ブラケット体72の下端側をシリンダヘッド5に締結することによって、エンジン1に対する排気ガス浄化装置2の取付け基準位置を高精度に設定できる。このため、後処理装置であるマフラー等に比べて重量の重い排気ガス浄化装置2であっても、所定の位置に適正に搭載できる。
【0055】
次に、
図6〜
図12及び
図16を参照しながら、エンジン1を作業機に載せ降ろしする際に用いる吊上げ金具81,82及びその取付け構造について説明する。実施形態のエンジン1は一対の吊上げ金具81,82を備えている。重量物である排気ガス浄化装置2付きエンジン1を安定した姿勢で(バランスさせて)吊り上げるため、一対の吊上げ金具81,82はエンジン1において出力軸3と交差する両側面側に振り分けて配置される。実施形態の吊上げ金具81,82は、エンジン1におけるシリンダヘッド5の前面側と後面側とに振り分けている。一対の吊上げ金具81,82のうち第2吊上げ金具82は長板状の金属板材である。第2吊上げ金具82の上端側には、例えばワイヤロープ等を挿通させるための貫通吊り穴86を形成している。第2吊上げ金具82の下端側はシリンダヘッド5の後面にボルト締結している。
【0056】
第1吊上げ金具81も長板状の金属板材である。第1吊上げ金具81の上端側には、例えばワイヤロープ等を挿通させるための貫通吊り穴83を形成している。第2吊上げ金具82の下端側はシリンダヘッド5の後面にボルト締結している。第1吊上げ金具81の下端側は吸気側ブラケット91にボルト締結している。この場合、吸気マニホールド6の上面にボルト締結された補強ブラケット93と第1吊上げ金具81の下端側とにより、吸気側ブラケット91の上下中途部を挟持させ、当該挟持状態でこれら三者81,91,93を共締めしている。なお、実施形態とは逆に、第1吊上げ金具81を排気側ブラケット92に設けてもよい。
【0057】
第1吊上げ金具81の強度は、吸気側ブラケット91や補強ブラケット93の強度に比べて小さく設定されている。このため、例えばエンジン1吊り上げの際に過大な外力がかかると、吸気側ブラケット91や補強ブラケット93よりも先に第1吊上げ金具81の方が塑性変形したり破損したりする。すなわち、エンジン1吊上げによる吸気側ブラケット91及び補強ブラケット93の変形を防止でき、その結果、エンジン1吊上げ時に排気ガス浄化装置2に外力が加わるのを抑制できる。
【0058】
上記の構成において、エンジン1を作業機に載せ降ろしする際は、両吊上げ金具81,82に形成された貫通吊り穴83,86に例えばワイヤロープを挿通させ、ワイヤロープをチェンブロックのフック等に係止して、エンジン1を吊り上げることになる。
【0059】
上記の記載並びに
図6〜
図10から明らかなように、前記吸気側ブラケット91及び前記排気側ブラケット92のうちいずれか一方に、前記エンジン1を吊り上げるための吊上げ金具81の下端側を締結するから、前記排気ガス浄化装置2を支持する高剛性部品である前記両ブラケット91,92のうちいずれかを前記吊上げ金具81に対する締結部に兼用して、部品点数を抑制しながら、前記エンジン1に前記吊上げ金具81を強固に締結できる(前記エンジン1に対する前記吊上げ金具81の連結強度を確保できる)。
【0060】
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。