(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981261
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】ねじ回し工具用のアタッチメント
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
B25B21/00 Q
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-172022(P2012-172022)
(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-30870(P2014-30870A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳二
【審査官】
須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−276371(JP,A)
【文献】
特開2004−306223(JP,A)
【文献】
米国特許第05615587(US,A)
【文献】
特開2005−246530(JP,A)
【文献】
実開平05−020873(JP,U)
【文献】
実開平04−063359(JP,U)
【文献】
特開2007−061919(JP,A)
【文献】
特開平07−269528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B21/00−21/02
B25B23/00−23/18
B23P19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ回し工具におけるねじを回すビットの先端部分に、着脱自在に取り付けられて、雄ねじまたは雌ねじが形成されたねじ部材を回す、アタッチメントであって、
全体が合成樹脂により形成されて、
一端に、前記ビットの先端部分への取付部を備えるとともに、他端に、前記ねじ部材を回すべくそのねじ部材の被係合部に係合する、ねじ部材係合部を備え、
前記取付部には、前記ビットの先端部分が挿入される挿入空間部が設けられ、
前記取付部は、前記挿入空間部を形成する周面が、前記ビットの断面多角形状の軸部の外周と接して、前記ビットに対して回り止めされ、また、
前記取付部は、前記挿入空間部の軸心と交差する方向に弾性変形可能な弾性片を備え、
前記弾性片には、前記挿入空間部に側方から進入するよう突出する凸部が設けられ、その凸部が、前記挿入空間部内の前記ビットを保持するようそのビットの外周と係合し、かつ、前記弾性片による弾性力に抗して、前記ビットを前記挿入空間部に対して抜き差し可能であり、また、
前記取付部は、前記凸部が設けられた前記弾性片を含めて全体が一体に形成され、かつ、前記弾性片は、その弾性片を囲むように前記取付部の内外を貫通するU字状の孔があけられることで形成されることを特徴とする、ねじ回し工具用のアタッチメント。
【請求項2】
前記弾性片は、前記挿入空間部の軸心の方向に沿って延びるように形成されることを特徴とする、請求項1に記載のねじ回し工具用のアタッチメント。
【請求項3】
前記弾性片は、前記取付部の先端を向く側が自由端となり、その反対側が基端となるよう形成されて、その弾性片の自由端側に、前記凸部が設けられることを特徴とする、請求項2に記載のねじ回し工具用のアタッチメント。
【請求項4】
前記弾性片は、前記ビットの断面多角形状の軸部の一の面と対面する位置に設けられることを特徴とする、請求項2または3に記載のねじ回し工具用のアタッチメント。
【請求項5】
前記ねじ部材は、前記被係合部を有するナットまたはボルトであって、
前記アタッチメントは、前記他端に、内部に前記被係合部が進入するとともに内周面が前記ねじ部材係合部となる、ソケット部を備え、また、
前記アタッチメントは、前記ソケット部と前記取付部との間に中間筒部を備え、その中間筒部は、内側が、前記ソケット部の内部と連通して、前記ナットが螺合するボルト材の軸部が進入する、逃がし空間となっていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のねじ回し工具用のアタッチメント。
【請求項6】
前記ソケット部は、その内部に前記ナットの被係合部が少なくとも二つ入る長さを有するとともに、前記ねじ部材係合部が、それら被係合部に係合することを特徴とする、請求項5に記載のねじ回し工具用のアタッチメント。
【請求項7】
前記弾性片は、前記挿入空間部の周方向に沿って延びるように形成されて、その一方側が自由端となり、反対側が基端となることを特徴とする、請求項1に記載のねじ回し工具用のアタッチメント。
【請求項8】
ねじ回し工具におけるねじを回すビットの先端部分に、着脱自在に取り付けられて、雄ねじまたは雌ねじが形成されたねじ部材を回す、アタッチメントであって、
全体が合成樹脂により形成されて、
一端に、前記ビットの先端部分への取付部を備えるとともに、他端に、前記ねじ部材を回すべくそのねじ部材の被係合部に係合する、ねじ部材係合部を備え、
前記取付部には、前記ビットの先端部分が挿入される挿入空間部が設けられ、
前記取付部は、前記挿入空間部を形成する周面が、前記ビットの断面多角形状の軸部の外周と接して、前記ビットに対して回り止めされ、また、
前記取付部は、前記挿入空間部の軸心と交差する方向に弾性変形可能な弾性片を備え、
前記弾性片には、前記挿入空間部に側方から進入するよう突出する凸部が設けられ、その凸部が、前記挿入空間部内の前記ビットを保持するようそのビットの外周と係合し、かつ、前記弾性片による弾性力に抗して、前記ビットを前記挿入空間部に対して抜き差し可能であり、また、
前記取付部は、前記凸部が設けられた前記弾性片を含めて全体が一体に形成され、かつ、前記弾性片は、その延びる方向の両側が基端となって、その中央に、前記凸部が設けられることを特徴とする、ねじ回し工具用のアタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ねじを回すビットの先端部分に取り付けられる、ねじ回し工具用のアタッチメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転工具にビットが取り付けられて用いられるねじ回し工具において、そのビットに、ボルトやナットを締め付けるためのソケット体を取り付けることがあった(例えば、特許文献1参照)。
図11に示すように、このソケット体31は、ビット30への装着部32と、ボルトやナットに係合する係合孔33aを有するソケット部33とを備えていた。そして、装着部32には、ビット30を抜け止めするために、ビット30の凹溝30aに係合するボール34と、そのボール34を凹溝30a側に付勢するばね体35とが設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−276371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のソケット体31においては、装着部32に、別部材であるボール34やばね体35が必要であって、それらボール34やばね体35が、一般には金属製であったことから、ソケット体31の製造コストが高くならざるを得なかった。また、このようにボール34やばね体35が金属製であったため、このソケット体31を、電装品を有する作業環境で使用する際には、注意を要した。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、安価に製造することができ、かつ、絶縁性を高めることができる、ねじ回し工具用のアタッチメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るねじ回し工具用のアタッチメントは、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係るねじ回し工具用のアタッチメントは、ねじ回し工具におけるねじを回すビットの先端部分に、着脱自在に取り付けられて、雄ねじまたは雌ねじが形成されたねじ部材を回す、アタッチメントである。このアタッチメントは、全体が合成樹脂により形成されて、一端に、前記ビットの先端部分への取付部を備えるとともに、他端に、前記ねじ部材を回すべくそのねじ部材の被係合部に係合する、ねじ部材係合部を備える。ここで、前記取付部には、前記ビットの先端部分が挿入される挿入空間部が設けられる。そして、前記取付部は、前記挿入空間部を形成する周面が、前記ビットの断面多角形状の軸部の外周と接して、前記ビットに対して回り止めされる。また、前記取付部は、前記挿入空間部の軸心と交差する方向に弾性変形可能な弾性片を備える。そして、前記弾性片には、前記挿入空間部に側方から進入するよう突出する凸部が設けられ、その凸部が、前記挿入空間部内の前記ビットを保持するようそのビットの外周と係合し、かつ、前記弾性片による弾性力に抗して、前記ビットを前記挿入空間部に対して抜き差し可能である。
また、前記取付部は、前記凸部が設けられた前記弾性片を含めて全体が一体に形成され、かつ、前記弾性片は、その弾性片を囲むように前記取付部の内外を貫通するU字状の孔があけられることで形成される。
【0007】
このアタッチメントによると、アタッチメントの一端の取付部を、ねじ回し工具のビットの先端部分に取り付けるにあたって、ビットの先端部分が挿入される挿入空間部の周面が、ビットの断面多角形状の軸部の外周と接することで、取付部、つまりはアタッチメントは、ビットに対して回り止めされる。そして、取付部は、凸部が設けられた弾性片を備えており、その凸部が、挿入空間部内のビットの外周と係合して、そのビットの先端部分を挿入空間部内に保持する。ここで、凸部の、ビットの外周への係合にあたっては、凸部が、ビットの外周に形成された凹溝等の凹部に入り込むようにして、そのビットの外周に係合してもよく、また、凸部が、ビットの平坦な外周を弾性片による弾性力により圧接するようにして、そのビットの外周に係合してもよい。そして、このアタッチメントの他端には、ねじ部材の被係合部に係合するねじ部材係合部が設けられている。そこで、ねじ部材係合部を、ねじ部材の被係合部に係合させて、アタッチメントをビットを介して回すことで、このねじ部材を締めたり緩めたりすることができる。ここにおいて、アタッチメントは、全体が合成樹
脂により形成されている。こうして、弾性片および凸部を含めて、アタッチメントの全体を合成樹脂により形成することで、このアタッチメントを安価に製造することができる。そして、アタッチメントの全体を合成樹脂とすることで、絶縁性を高めることができる。また、このアタッチメントは、本来のねじ回し工具の付属物となるものであって、アタッチメントを用いることなく、ビットで直接ねじを回すこともでき、必要に応じて、アタッチメントが着脱される。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係るねじ回し工具用のアタッチメントは、請求項1に記載のアタッチメントにおいて、前記弾性片は、前記挿入空間部の軸心の方向に沿って延びるように形成される。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係るねじ回し工具用のアタッチメントは、請求項2に記載のアタッチメントにおいて、前記弾性片は、前記取付部の先端を向く側が自由端となり、その反対側が基端となるよう形成されて、その弾性片の自由端側に、前記凸部が設けられる。これにより、凸部から取付部の先端までの距離を短くすることができ、ビットが短い場合であっても、この取付部がねじ回し工具の本体と干渉するのを避けることができる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係るねじ回し工具用のアタッチメントは、請求項2または3に記載のアタッチメントにおいて、前記弾性片は、前記ビットの断面多角形状の軸部の一の面と対面する位置に設けられる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係るねじ回し工具用のアタッチメントは、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のアタッチメントにおいて、前記ねじ部材は、前記被係合部を有するナットまたはボルトであって、前記アタッチメントは、前記他端に、内部に前記被係合部が進入するとともに内周面が前記ねじ部材係合部となる、ソケット部を備える。そして、前記アタッチメントは、前記ソケット部と前記取付部との間に中間筒部を備え、その中間筒部は、内側が、前記ソケット部の内部と連通して、前記ナットが螺合するボルト材の軸部が進入する、逃がし空間となっている。
【0012】
また、請求項6に記載の発明に係るねじ回し工具用のアタッチメントは、請求項5に記載のアタッチメントにおいて、前記ソケット部は、その内部に前記ナットの被係合部が少なくとも二つ入る長さを有するとともに、前記ねじ部材係合部が、それら被係合部に係合する。これにより、ボルト材にナットが二つ螺合する場合であっても、それらナットを、このアタッチメントを用いて同時に回すことができる。
【0013】
また、請求項7に記載の発明に係るねじ回し工具用のアタッチメントは、請求項1に記載のアタッチメントにおいて、前記弾性片は、前記挿入空間部の周方向に沿って延びるように形成されて、その一方側が自由端となり、反対側が基端となる。
【0014】
また、請求項8に記載の発明に係るねじ回し工具用のアタッチメントは、
ねじ回し工具におけるねじを回すビットの先端部分に、着脱自在に取り付けられて、雄ねじまたは雌ねじが形成されたねじ部材を回す、アタッチメントである。このアタッチメントは、全体が合成樹脂により形成されて、一端に、前記ビットの先端部分への取付部を備えるとともに、他端に、前記ねじ部材を回すべくそのねじ部材の被係合部に係合する、ねじ部材係合部を備える。ここで、前記取付部には、前記ビットの先端部分が挿入される挿入空間部が設けられる。そして、前記取付部は、前記挿入空間部を形成する周面が、前記ビットの断面多角形状の軸部の外周と接して、前記ビットに対して回り止めされる。また、前記取付部は、前記挿入空間部の軸心と交差する方向に弾性変形可能な弾性片を備える。そして、前記弾性片には、前記挿入空間部に側方から進入するよう突出する凸部が設けられ、その凸部が、前記挿入空間部内の前記ビットを保持するようそのビットの外周と係合し、かつ、前記弾性片による弾性力に抗して、前記ビットを前記挿入空間部に対して抜き差し可能である。また、前記取付部は、前記凸部が設けられた前記弾性片を含めて全体が一体に形成され、かつ、前記弾性片は、その延びる方向の両側が基端となって、その中央に、前記凸部が設けられる。
このアタッチメントによると、アタッチメントの一端の取付部を、ねじ回し工具のビットの先端部分に取り付けるにあたって、ビットの先端部分が挿入される挿入空間部の周面が、ビットの断面多角形状の軸部の外周と接することで、取付部、つまりはアタッチメントは、ビットに対して回り止めされる。そして、取付部は、凸部が設けられた弾性片を備えており、その凸部が、挿入空間部内のビットの外周と係合して、そのビットの先端部分を挿入空間部内に保持する。ここで、凸部の、ビットの外周への係合にあたっては、凸部が、ビットの外周に形成された凹溝等の凹部に入り込むようにして、そのビットの外周に係合してもよく、また、凸部が、ビットの平坦な外周を弾性片による弾性力により圧接するようにして、そのビットの外周に係合してもよい。そして、このアタッチメントの他端には、ねじ部材の被係合部に係合するねじ部材係合部が設けられている。そこで、ねじ部材係合部を、ねじ部材の被係合部に係合させて、アタッチメントをビットを介して回すことで、このねじ部材を締めたり緩めたりすることができる。ここにおいて、アタッチメントは、全体が合成樹脂により形成されている。こうして、弾性片および凸部を含めて、アタッチメントの全体を合成樹脂により形成することで、このアタッチメントを安価に製造することができる。そして、アタッチメントの全体を合成樹脂とすることで、絶縁性を高めることができる。また、このアタッチメントは、本来のねじ回し工具の付属物となるものであって、アタッチメントを用いることなく、ビットで直接ねじを回すこともでき、必要に応じて、アタッチメントが着脱される。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係るねじ回し工具用のアタッチメントによれば、ビットに取り付けるための弾性片および凸部を含めて、アタッチメントの全体を合成樹脂により形成することで、このアタッチメントを安価に製造することができ、かつ、アタッチメントの全体を合成樹脂とすることで、絶縁性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の一実施の形態の、アタッチメントを、凹部を有するビットに取り付けた状態を示す縦面図である。
【
図2】同じく、アタッチメントを、外周が平坦なビットに取り付けた状態を示す縦断面図である。
【
図5】同じく、
図4におけるA−A線による断面図である。
【
図6】同じく、アタッチメントの拡大平面図である。
【
図7】同じく、アタッチメントの拡大底面図である。
【
図8】同じく、アタッチメント付のねじ回し工具を用いた第1施工過程を示す断面図である。
【
図10】この発明の他の実施の形態の、アタッチメントの、一部を破断した正面図である。
【
図11】従来のソケット体付きのねじ回し工具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明に係るねじ回し工具用のアタッチメントを実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜
図9は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、ねじ回し工具を示し、1aは、そのねじ回し工具1におけるねじを回すビットを示す。2は、雄ねじまたは雌ねじが形成されたねじ部材を示す。3は、前記ビット1aの先端部分に、着脱自在に取り付けられて、前記ねじ部材2を回す、アタッチメントを示す。
【0019】
このアタッチメント3は、全体が合成樹脂により形成(図示実施の形態においては、合成樹脂材料により、全体が一体に樹脂成形)されている。そして、アタッチメント3は、一端に、ねじ回し工具1におけるビット1a(図示実施の形態においては、十字穴付き小ねじ用のプラスの突部を先端に有するビット)の先端部分への取付部4を備えるとともに、他端に、ねじ部材2を回すべくそのねじ部材2の被係合部2aに係合する、ねじ部材係合部5を備える。
【0020】
ここで、取付部4には、前記ビット1aの先端部分が挿入される挿入空間部4aが設けられる。そして、取付部4は、挿入空間部4aを形成する周面が、ビット1aの断面多角形状の軸部の外周と接して、前記ビット1aに対して回り止めされる。
【0021】
そして、取付部4は、前記挿入空間部4aの軸心4bと交差する方向に弾性変形可能な弾性片4cを備える。この弾性片4cには、挿入空間部4aに側方から進入するよう突出する凸部4dが設けられる。ここにおいて、取付部4は、凸部4dが設けられた弾性片4cを含めて全体が一体に形成される。そして、凸部4dは、挿入空間部4a内の前記ビット1aを保持するようそのビット1aの外周と係合し、かつ、弾性片4cによる弾性力に抗して、前記ビット1aを挿入空間部4aに対して抜き差し可能となっている。なお、凸部4dの、ビット1aの外周への係合にあたっては、
図1に示すように、凸部4dが、ビット1aの外周に形成された凹溝等の凹部1bに入り込むようにして、そのビット1aの外周に係合してもよく、また、
図2に示すように、凸部4dが、ビット1aの平坦な外周を弾性片4cによる弾性力により圧接するようにして、そのビット1aの外周に係合してもよい。
【0022】
また、このアタッチメント3の他端のねじ部材係合部5が係合することとなるねじ部材2は、前記被係合部2aを有するナット201またはボルトであって、アタッチメント3は、前記他端に、内部に被係合部2aが進入するとともに内周面が前記ねじ部材係合部5となる、ソケット部6を備える。さらに、アタッチメント3は、ソケット部6と取付部4との間に中間筒部7を備え、その中間筒部7は、内側が、ソケット部6の内部と連通して、前記ナット201が螺合するボルト材10の軸部が進入する、逃がし空間7aとなっている。
【0023】
具体的には、アタッチメント3は、その一端から他端に向かって、取付部4と中間筒部7とソケット部6とが、それらの軸心が一直線を形成するようにして、並ぶように設けられている。
【0024】
取付部4においては、挿入空間部4aを形成する取付部4の内周面は、ビット1aの断面多角形状(図示実施の形態においては、断面六角形状)の軸部に合わせて、断面多角形状(図示実施の形態においては、断面六角形状)に形成されている。そして、取付部4の外周面は、内周面に合わせて、断面多角形状(図示実施の形態においては、断面六角形状)に形成されて、取付部4は、肉厚がほぼ一定となるように形成されている。また、取付部4の外周面には、その基端側に、補強のためのリブ4eが設けられている。
【0025】
ここにおいて、取付部4における前記弾性片4cは、その弾性片4cを囲むように取付部4の内外を貫通するU字状の孔4fがあけられることで形成される。この弾性片4cは、挿入空間部4aの軸心4b(つまり、取付部4の軸心)の方向に沿って延びるように形成されている。詳細には、弾性片4cは、取付部4の先端を向く側が自由端4xとなり、その反対側が基端4yとなるよう形成されて、その弾性片4cの自由端4x側に、前記凸部4dが設けられている。そして、この弾性片4cは、ビット1aの断面多角形状の軸部の一の面と対面する位置に設けられる。つまり、弾性片4cは、内外周面がともに断面多角形状の取付部4の一の面に設けられる。また、この弾性片4cに設けられる前記凸部4dは、挿入空間部4aの軸心4bの方向に対称に形成されている(
図5参照)。そして、その凸部4dの少なくとも先端部分は、円弧状に形成されている。
【0026】
中間筒部7は、取付部4よりも径大となるよう形成されている。そして、この中間筒部7の、取付部4に近い位置の外周面には、リング状の凸条7cが二つ設けられている。さらに、この中間筒部7の、取付部4に近い位置には、内外を貫通する二つの孔7d、7dが、互いに対向するようにあけられている。これら孔7d、7dは、ねじ回し工具1を用いることなく、ねじ部材2を回す場合に用いられるものである。すなわち、これら孔7d、7dを貫通するように挿入したドライバー本体等の棒材を回すことで、アタッチメント3を回すことができる。
【0027】
また、中間筒部7の外周面には、縦に走るリブ7e、7eが設けられており、ねじ部材2を回す力をそれほど必要としない場合には、この中間筒部7における、リブ7eが設けられた部分を手で握ることでも、アタッチメント3を、手との間で滑ることなく回すことができる。このように、ねじ回し工具1を用いることなく、アタッチメント3を手で握って回すこともできるが、この場合に、アタッチメント3を、中間筒部7の、取付部4寄りの位置、例えば、二つの凸条7c、7cの間で(つまり、両凸条7c、7cを切断案内部として)、切断し、取付部4側を取り除いて使用してもよい。これにより、中間筒部7内の逃がし空間7aが外部に開口し、その開口からボルト材10の軸部を露出させることができる。そのため、そのナット201が螺合するボルト材10の軸部におけるナット201から突出する部分の長さが制限されることがない。ここにおいて、切断案内部は、二つの凸条7c、7cに限定されるものではなく、例えば、溝等であってもよい。
【0028】
ソケット部6は、中間筒部7よりも若干径大となるよう形成されている。このソケット部6の内周面、つまり前記ねじ部材係合部5は、被係合部2aとなる、ナット201とかボルトの頭部の形状に合わせた形状をしている。図示実施の形態においては、ナット201やボルトの頭部の、断面六角形状に合わせて、ねじ部材係合部5は、断面六角形状となっている。そして、このソケット部6は、その内部に、前記ナット201の被係合部2aが少なくとも二つ入る長さを有するとともに、前記ねじ部材係合部5が、それら被係合部2aに係合するように形成されている(
図8参照)。
【0029】
説明が前後するが、
図8〜
図9は、このアタッチメント3とねじ回し工具1とを用いて、ナット201を締め付ける例を示す。図中、符号11は、建物の基礎床面を示す。12は、配線・配管材を示す。13は、その配線・配管材12を基礎床面11に沿って配設する配線・配管材配設具を示す。この配線・配管材配設具13は、基礎床面11に固定されるベース板14と、そのベース板14から立設する二本のボルト材10、10と、ボルト材10、10間に渡されて配線・配管材12を下から支持する支持体15と、ボルト材10に螺合して支持体15を受ける、ナット201(ねじ部材2)としての規制ナット16と、ボルト材10、10間に渡されて配線・配管材12を上から押えて保持する保持体17と、ボルト材10に螺合して保持体17を押える、ナット201(ねじ部材2)としての押圧ナット18とからなる。ここにおいて、規制ナット16は、支持体15を下から受け止める受部16aと、その受部16aから支持体15を貫通するよう上方に延出する延出部16bとを備え、その延出部16bの先端には、回動操作可能な操作部16c(被係合部2a)が形成されている。押圧ナット18は、一般的なナットであって、そのナット自身が被係合部2aとなる。
【0030】
そこで、この配線・配管材12の配設にあたっては、
図8に示すように、始めに、保持体17を除いた配線・配管材配設具13を基礎床面11に固定する。この固定にあたっては、ねじ回し工具1を用いて、そのビット1aによりベース板14を貫通するねじ19を回すことで、ベース板14、ひいては配線・配管材配設具13を基礎床面11に固定する。そして、支持体15に配線・配管材12を載せる。さらに、ねじ回し工具1のビット1aの先端部分にアタッチメント3を取り付けて、そのアタッチメント3の付いたねじ回し工具1を用いて、規制ナット16と押圧ナット18とを同時に回し、支持体15と配線・配管材12の高さ位置を調整する。
【0031】
その後、
図9に示すように、保持体17を、配線・配管材12の延びる方向(つまり、紙面に直交する方向)から、ボルト材10、10間に渡す。そして、アタッチメント3の付いたねじ回し工具1を用いて、押圧ナット18を回すことで、配線・配管材12を保持体17で押えて保持する。
【0032】
次に、以上の構成からなるアタッチメント3の作用効果について説明する。このアタッチメント3によると、アタッチメント3の一端の取付部4を、ねじ回し工具1のビット1aの先端部分に取り付けるにあたって、ビット1aの先端部分が挿入される挿入空間部4aの周面が、ビット1aの断面多角形状の軸部の外周と接することで、取付部4、つまりはアタッチメント3は、ビット1aに対して回り止めされる。そして、取付部4は、凸部4dが設けられた弾性片4cを備えており、その凸部4dが、挿入空間部4a内のビット1aの外周と係合して、そのビット1aの先端部分を挿入空間部4a内に保持する(
図1、
図2参照)。そして、このアタッチメント3の他端には、ねじ部材2を回すべくそのねじ部材2の被係合部2aに係合する、ねじ部材係合部5が設けられている。そこで、ねじ部材係合部5を、ねじ部材2の被係合部2aに係合させて、アタッチメント3をビット1aを介して回すことで、このねじ部材2を締めたり緩めたりすることができる。
【0033】
ここにおいて、アタッチメント3は、全体が合成樹脂により形成されている。こうして、ビット1aに取り付けるための弾性片4cおよび凸部4dを含めて、アタッチメント3の全体を合成樹脂により形成することで、このアタッチメント3を安価に製造することができる。特に、図示実施の形態においては、アタッチメント3は、合成樹脂材料により、全体が一体に樹脂成形されおり、これにより、部品点数を増やしたりその複数部品を組み付けたりする必要がなく、このアタッチメント3を一層安価に製造することができる。そして、アタッチメント3の全体を合成樹脂とすることで、絶縁性を高めることができる。また、このアタッチメント3は、本来のねじ回し工具1の付属物となるものであって、アタッチメント3を用いることなく、ビット1aで直接ねじ19を回すこともでき、必要に応じて、アタッチメント3が着脱される。こうして、ビット1aを他のビット1aと交換するのではなく、アタッチメント3を取り付けるあるいは外すことで、簡単に二種類の使用に対応することができる。
【0034】
また、取付部4における弾性片4cは、挿入空間部4aの軸心4bの方向に延びるように形成されるとともに、取付部4の先端を向く側が自由端4xとなり、その反対側が基端4yとなるよう形成されて、その弾性片4cの自由端4x側に、ビット1aの外周と係合する凸部4dが設けられている。これによって、凸部4dから取付部4の先端までの距離を短くすることができ、ビット1aが短い場合であっても、この取付部4がねじ回し工具1の本体1cと干渉するのを避けることができる。
【0035】
また、弾性片4cは、取付部4において、前記ビット1aの断面多角形状の軸部の一の面と対面する位置に設けられる。このため、弾性片4cやその弾性片4cを形成する孔4fが、ビット1aに対応して断面多角形状の取付部4の内周面(つまり、挿入空間部4aを形成する周面)の角部を跨ぐことがなく、弾性片4cや孔4fによる取付部4の強度の低下を抑えることができる。
【0036】
また、
図1に示すように、ビット1aの外周に凹部1bが形成され、その凹部1bに、弾性片4cにおける凸部4dが入り込むようにして係合する場合には、その係合が安定する。もっとも、
図2に示すように、凸部4dが、ビット1aの平坦な外周を弾性片4cの弾性力で圧接することで、その外周に係合してもよい。この場合には、アタッチメント3が、自重でビット1aから脱落して外れることがない程度に、弾性片4cの弾性力(圧接力)が必要となるが、アタッチメント3は、合成樹脂製であって軽量であるため、容易に、アタッチメント3をビット1aから外れ難くすることができる。
【0037】
また、ソケット部6は、その内部にナット201の被係合部2aが少なくとも二つ入る長さを有し、ねじ部材係合部5が、それら被係合部2a、2aに係合する。これにより、ボルト材10にナット201が二つ螺合する場合であっても、それらナット201、201を、このアタッチメント3を用いて同時に回すことができる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、アタッチメント3は、全体が一体に樹脂成形されなくとも、全体が合成樹脂により形成されるのであれば、例えば、取付部4とソケット部6とが別体となる等、複数部品から形成されて、それら合成樹脂製の複数部品か組み付けられてもよい。特に、アタッチメント3を、中間筒部7の取付部4寄りの位置、あるいは中間筒部7と取付部4との境界位置で分離してもよい。すなわち、アタッチメント3を、互いに着脱可能に組み付けられる、ソケット部6および中間筒部7とを備えた第1部材と、取付部4を備えた第2部材とで構成し、かつ、第1部材にあっては、中間筒部7における逃がし空間7aの、ソケット部6とは反対側を、外部に開口するようにしていもよい。そこで、ねじ回し工具1を用いることなく、アタッチメント3を手で握って回す場合には、第2部材を取り外して第1部材のみを用いることで、逃がし空間7aの開口からボルト材10の軸部を露出させることができる。そのため、そのナット201が螺合するボルト材10の軸部におけるナット201から突出する部分の長さが制限されることがない。そして、第1部材と第2部材とは着脱可能であることから、改めて第1部材と第2部材とを組み付けて用いることができる。
【0039】
また、取付部4の内周面(挿入空間部4aを形成する周面)は、ビット1aの断面六角形状の軸部に合わせて、断面六角形状に形成されているが、ビット1aの軸部が、断面四角形状であれば、取付部4の内周面は、断面四角形状に形成される。もっとも、両者の形状が一致する必要はなく、取付部4が、ビット1aに対して回り止めされるように、取付部4の内周面(挿入空間部4aを形成する周面)が、ビット1aの外周と係合する形状となっていればよい。すなわち、例えば、取付部4の内周面が、ビット1aの断面六角形状の軸部の、平行な一対の面とのみ接するよう、挿入空間部4aが、長孔状に形成されたり、取付部4の内周面の、断面六角形状の各辺が、挿入空間部4a側に凸となる弧状に形成されたりしてもよい。
【0040】
また、取付部4において、弾性片4cは、挿入空間部4aの軸心4bの方向に沿って延びなくとも、挿入空間部4aの周方向に沿って延びるように形成されて、その一方側が自由端となり、反対側が基端となってもよい。
【0041】
また、弾性片4cは、その延びる方向の両端が基端となって、その中央に、ビット1aの外周と係合する凸部4dが設けられてもよい。
【0042】
また、ソケット部6は、その内部にナット201の被係合部2aが少なくとも二つ入る長さを有しているが、一つ入る長さであってもよい。
【0043】
また、ソケット部6におけるねじ部材係合部5は、、被係合部2aとなる、ナット201とかボルトの頭部の、断面六角形状に合わせて、断面六角形状となっているが、被係合部2aが、断面四角形状であれば、ねじ部材係合部5は、それに合わせて断面四角形状となるが、必ずしも、両者が一致する必要はなく、ねじ部材係合部5が、ねじ部材2の被係合部2aに係合する形状を有しておればよい。
【0044】
また、アタッチメント3は、ナット201やボルトを回すためのソケット部6を備えるものでなくとも、
図10に示すように、例えばすりわりとか十字穴とかの溝(被係合部)付きのねじを回すために、先端に溝に係合する、マイナスとかプラスの係合突部5x(ねじ部材係合部5)が形成された軸部8を備えるものでもよい。ここで、係合突部5xは、ビット1aの先端の突部とは、種類あるいはサイズが異なるが、単にビット1aの長さを延長する目的であれば、種類およびサイズが同一であってもよい。
【0045】
また、ねじ回し工具1は、電動の工具であっても、手動の工具(例えば、ドライバー)であってもよく、その回動手段は特に問わない。
【符号の説明】
【0046】
1 ねじ回し工具
1a ビット
2 ねじ部材
2a 被係合部
201 ナット
3 アタッチメント
4 取付部
4a 挿入空間部
4b 軸心
4c 弾性片
4d 凸部
4x 自由端
4y 基端
5 ねじ部材係合部
6 ソケット部
7 中間筒部
7a 逃がし空間
10 ボルト材