(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981277
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
G01D5/244 F
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-197655(P2012-197655)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-52313(P2014-52313A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 太志
(72)【発明者】
【氏名】林 康一
【審査官】
平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−033206(JP,A)
【文献】
特開平07−324941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の変位に対応して周期的に変化する互いに90度位相の異なる2相の正弦波のセンサ出力信号を出力する位置検出センサと、
前記センサ出力信号のオフセット値を記憶するオフセット記憶器と、
前記センサ出力信号から前記オフセット記憶器が記憶するオフセット値を除去するオフセット除去手段と、
前記オフセット値除去後の前記センサ出力信号を測定対象の位置を表す位置信号に変換する内挿手段と、
前記位置信号を速度信号に変換する速度変換手段と、
前記センサ出力信号を入力とする低域通過フィルタと、
所定のタイミングで前記低域通過フィルタの出力値を前記オフセット記憶器に記憶させるオフセット設定手段と、
を備える位置検出装置において、
前記低域通過フィルタは、初段が1次のデジタル低域通過フィルタであり、
前記初段のデジタル低域通過フィルタは、前記センサ出力信号のフィルタ処理を開始する時に、フィルタ出力信号の初期値を、当該デジタル低域通過フィルタの定常状態のフィルタ出力信号の近似値とし、
さらに、前記初段のデジタル低域通過フィルタは、一方の前記センサ出力信号をフィルタ処理する際、他方のセンサ出力信号に所定の係数を乗じて定常状態のフィルタ出力信号の近似値を生成する、
位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検出装置であって、前記所定の係数は、前記速度信号に基づき定められる、位置検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の位置検出装置であって、
前記所定の係数は、
前記2相のセンサ出力信号のうち位相が遅れた信号のフィルタ処理においては、前記初段のデジタル低域通過フィルタのカットオフ周波数を前記速度信号で除算し、これに−1を乗じた値であり、
前記2相のセンサ出力信号のうち位相が進んだ信号のフィルタ処理においては、前記初段のデジタル低域通過フィルタのカットオフ周波数を前記速度信号で除算した値である、
位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の変位に対応して周期的に変化する互いに90°位相の異なる2相のセンサ出力信号に基づき位置の検出を行う位置検出装置に関し、特にセンサ出力信号に含まれるオフセット値の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
位置センサは、測定対象の位置の変化に対して周期的に値が変化する互いに位相が90°異なる2相の信号を出力する。位置センサからの出力信号に含まれるオフセット値の経時変化を除去し、オフセット値除去後の信号を位置情報に変換する位置検出装置について下記特許文献1や下記特許文献2に開示されている。
【0003】
位置センサからの出力信号に含まれるオフセット値は、周囲温度の変化や位置センサを構成する部材等の特性変化により変化を生じる。この経時変化するオフセット値を除去するため、特許文献1,2に記載された位置検出装置では、位置センサからの出力信号に対しデジタル低域通過フィルタによるフィルタ処理を施し、オフセット値を抽出する。そして、抽出されたオフセット値を位置センサからの出力信号から減算することで、オフセット値を除去する。
【0004】
図3は下記特許文献1の
図1を元に、本発明の説明のため、必要のない装置等を省略した従来技術を示す図である。位置検出センサ1は、可動部の位置の測定結果を示す測定位置信号ASおよびACを出力する。測定位置信号ASおよびACは、可動部の位置の変化に対して周期的に値が変化するアナログ信号である。また、測定位置信号ASおよびACの位相は互いに異なり、これらの位相差は90°である。測定位置信号ASおよびACは、これらが対となって可動部の位置を示す。例えば、可動部が回転するものであれば、これの回転に伴って周期的に変化する信号を得て、この信号に基づき可動部の角度位置が得られる。
【0005】
A/D変換器2は、測定位置信号ASをデジタル信号に変換し、デジタル測定位置信号DSとして減算器12および1次のデジタル低域通過フィルタ4に出力する。A/D変換器3は、測定位置信号ACをデジタル信号に変換し、デジタル測定位置信号DCとして減算器13および1次のデジタル低域通過フィルタ5に出力する。
【0006】
1次のデジタル低域通過フィルタ4は、デジタル測定位置信号DSに対し、1次のデジタル低域通過フィルタ処理を施した信号SDC1を出力し、1次のデジタル低域通過フィルタ6は、信号SDC1に対し、さらに1次のデジタル低域通過フィルタ処理を施し、結果的にデジタル測定位置信号DSの2次のデジタル低域通過フィルタ処理を施した信号SDC2を記憶器8に出力する。
【0007】
1次のデジタル低域通過フィルタ5は、デジタル測定位置信号DCに対し、1次のデジタル低域通過フィルタ処理を施した信号CDC1を出力し、1次のデジタル低域通過フィルタ7は、信号CDC1に対し、さらに1次のデジタル低域通過フィルタ処理を施し、結果的にデジタル測定位置信号DCの2次のデジタル低域通過フィルタ処理を施した信号CDC2を記憶器9に出力する。
【0008】
記憶器8は、オフセット設定手段10から出力された設定信号SETの値が1であるときは、信号SDC2の値をオフセット値SOFとして記憶する。記憶器8は、設定信号SETの値が1である間、このような記憶動作を所定の時間間隔で行い、記憶内容を更新する。一方、記憶器8は、オフセット設定手段10から出力された設定信号SETの値が0であるときは、現在記憶している値を維持し更新は行わない。
【0009】
記憶器9は、オフセット設定手段10から出力された設定信号SETの値が1であるときは、信号CDC2の値をオフセット値COFとして記憶する。記憶器9は、設定信号SETの値が1である間、このような記憶動作を所定の時間間隔で行い、記憶内容を更新する。一方、記憶器9は、オフセット設定手段10から出力された設定信号SETの値が0であるときは、現在記憶している値を維持し更新は行わない。
【0010】
記憶器8は、オフセット値SOFを減算器12に出力し、記憶器9は、オフセット値COFを減算器13に出力する。減算器12は、デジタル測定位置信号DSからオフセット値SOFを減算し、減算結果を内挿手段14に出力する。減算器13は、デジタル測定位置信号DCからオフセット値COFを減算し、減算結果を内挿手段14に出力する。内挿手段14は、可動部の位置を示す位置信号POSを減算器12および13から出力された信号に基づいて生成し出力する。この位置信号POSは、位置検出装置の検出結果として、可動部の移動制御等に用いることができる。
【0011】
速度変換器11は、位置信号POSの時間微分である速度信号VELを求め、オフセット設定手段10に出力する。オフセット設定手段10は、速度信号VELに基づいて設定信号SETを1次のデジタル低域通過フィルタ4および5と記憶器8および9に出力する。オフセット設定手段10が、速度信号VELに基づいて設定信号SETを出力する内部構造は特許文献1,2に開示されており、本発明の説明上必要性がないため、説明を省略する。
【0012】
1次のデジタル低域通過フィルタ4によるオフセット算出の式は、時間tにおける位置検出センサ1からのデジタル測定位置信号DS(t)、オフセット算出値をSDC1(t)、前記1次のデジタル低域通過フィルタ4、5の係数をKfとすると式1で表すことができる。
SDC1(t)=SDC1(t-1)+(DS(t)−SDC1(t-1))*Kf ・・・(式1)
【0013】
1次のデジタル低域通過フィルタ5によるオフセット算出の式は、時間tにおける位置検出センサ1からのデジタル測定位置信号DC(t)、オフセット算出値をCDC1(t)、前記1次のデジタル低域通過フィルタ4、5の係数をKfとすると式2で表すことができる。
CDC1(t)=CDC1(t-1)+(DC(t)−CDC1(t-1))*Kf ・・・(式2)
【0014】
図4は1次のデジタル低域通過フィルタ4にて行われる1次のデジタル低域通過フィルタ処理のブロック図を示す。減算器15はデジタル測定位置信号DSと記憶器16が前回出力した信号SDC1が入力され、減算信号SUBを出力する。乗算器17は減算信号SUBと記憶器18に記憶されている1次のデジタル低域通過フィルタ4の係数Kfを入力として、乗算信号MULを出力する。加算器19は乗算器17から出力される乗算信号MULと記憶器16が前回出力した信号SDC1が入力され、セレクト回路20に加算信号ADDを出力する。記憶器21は1次のデジタル低域通過フィルタ4の初期値0が記憶されており、信号0をセレクト回路20に出力する。
【0015】
セレクト回路20はオフセット設定手段10から出力された設定信号SETの値が0から1に変化した際、初めて記憶器8が1次のデジタル低域通過フィルタ6の出力信号SDC2をオフセット値SOFとして記憶する場合、記憶器18が出力する信号0を信号SELとして出力する。それ以外の場合は、記憶器16が前回出力した信号SDC1を元に式1の処理を施した、加算器19から出力される加算信号ADDを信号SELとして出力する。
【0016】
記憶器16は、オフセット設定手段10から出力された設定信号SETの値が0である間、現在記憶している値を維持し更新は行わない。一方、オフセット設定手段10から出力された設定信号SETの値が0から1に変化した時、または1である間は、セレクト回路20のSEL信号を記憶し、所定の時間間隔で記憶内容は随時更新される。そして、デジタル測定位置信号DSの1次の低域通過フィルタ処理を施した信号SDC1として、1次のデジタル低域通過フィルタ6に出力する。
【0017】
1次のデジタル低域通過フィルタ5に関しても、
図4に示す低域通過フィルタ処理のブロック図と同様の処理を行い、デジタル測定位置信号DCの1次の低域通過フィルタ処理を施した信号CDC1を1次のデジタル低域通過フィルタ7に出力するため、説明を省略する。
【0018】
結果的にオフセット設定手段10から出力された設定信号SETの値が0の場合は、1次のデジタル低域通過フィルタ4、5から出力される信号SDC1、CDC1は変化しない。また、設定信号SETの値が0から1に変化した時の時間を0とすると、時間0における1次のデジタル低域通過フィルタ4、5から出力される信号SDC1(0)、CDC1(0)は式3、4で表される。
SDC1(0)=0+(DS(0)−0)*Kf ・・・(式3)
CDC1(0)=0+(DC(0)−0)*Kf ・・・(式4)
また、設定信号SETの値が1でかつ前記時間が0以降の場合は(時間tとする)、信号SDC1(t)、CDC1(t)は前記で示した式1、式2で表される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2001−033206号公報
【特許文献2】特開2010−197380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図5は式1及び式3で処理される1次のデジタル低域通過フィルタを表計算ツール等でシミュレーションをした波形図である。波形22はデジタル測定位置信号DS、波形23はデジタル測定位置信号DSと90度位相が異なるデジタル測定位置信号DCを表す。
波形24はデジタル測定位置信号DSに対し、式1による1次のデジタル低域フィルタ処理を施した定常状態での波形である。波形25は時間tが0の時、オフセット算出初期値を0、つまり式3の処理を実施し、時間0以降は式1による1次のデジタル低域フィルタ処理を施した過渡状態での波形である。
【0021】
1次のデジタル低域フィルタ処理を施した定常状態での波形24は元信号であるデジタル測定位置信号DS(波形22)をほぼ積分した波形で変動しており、過渡状態である波形25は、定常状態である波形24に対し、誤差が生じる。また、オフセット算出値が収束するまでに時間がかかってしまう。
【0022】
この現象により、従来の位置検出装置では、過渡状態でのオフセット算出値に誤差を生じさせ、かつオフセット算出値が収束するまでに時間が生じることになり、位置検出誤差が増大することがあった。
【0023】
本発明はこのような問題点に対してなされたものである。すなわち、位置検出装置において、位置センサからの出力信号のオフセット算出における、過渡状態でのオフセット算出誤差を低減、オフセット収束時間の短縮を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の位置検出装置は、位置センサからのセンサ出力信号を低域通過させる低域通過フィルタを有する。この低域通過フィルタの出力値に基づきオフセット値が設定される。この低域通過フィルタの初段は、1次のデジタル低域通過フィルタである。以下、この初段の1次のデジタル低域通過フィルタを初段フィルタと記す。本発明の位置検出装置においては、オフセット値生成のためにフィルタ処理を開始する時の初期値を、初段フィルタの定常状態の出力信号の値としている。現実には、オフセット値が定まる以前に定常状態の出力信号を決定できないので、近似的に求めた値とする。定常状態における出力信号の近似値を初期値として入力することにより、開始時点から、初段フィルタの出力信号が、オフセットを含んだ定常状態の出力信号に近い値となる。これにより、出力信号が早期に収束する。初段フィルタの出力信号が早期に収束することにより低域通過フィルタ全体の出力信号も、早期に収束する。
【0025】
初段フィルタの定常状態の出力信号は、初段フィルタの入力信号を積分し、利得を乗じたものであり、初段フィルタへの入力信号、つまりセンサ出力信号が正弦波であれば、初段フィルタの出力信号は、入力信号に対して位相が90°遅れた正弦波信号となる。したがって、オフセット値生成のためのフィルタ処理開始時に初段フィルタに入力する値は、初段フィルタに入力されるセンサ出力信号に対し位相が90°遅れた正弦波信号の値に基づくものとできる。定常状態の正弦波信号の振幅は、測定対象の速度が初段フィルタのカットオフ周波数より十分に大きい場合には、初段フィルタのカットオフ周波数を、位置センサの出力信号に基づき算出した測定対象の速度で除算した値となる。この値は、前出の利得である。
【0026】
位置センサの2相のセンサ出力信号が、互いに90°の位相差を有する正弦波であれば、初段フィルタの定常状態における出力信号の近似値をこれらの正弦波信号から生成することができる。
【0027】
初段フィルタの定常状態の正弦波信号の振幅は、初段フィルタのカットオフ周波数を、位置センサの出力信号に基づき算出した測定対象の速度で除算した値になる。この除算結果、またはこの除算結果に−1を乗じた値を適切なセンサ出力信号に乗算することにより、定常状態の正弦波信号を生成することができる。
【0028】
具体的には、2相のセンサ出力信号のうち位相の遅れたセンサ出力信号(以下、A相出力信号と記す。)の積分が、もう一方の位相が進んだセンサ出力信号(以下、B相出力信号と記す。)に−1を乗じたものと一致する。したがって、初段フィルタにA相出力信号を入力した場合の定常状態の初段フィルタの出力信号は、B相出力信号に−1および上記の除算結果(利得)を乗算したものとなる。B相出力信号の積分は、A相信号と一致する。したがって、初段フィルタにB相出力信号を入力した場合の定常状態の初段フィルタの出力信号は、A相出力信号に上記の除算結果(利得)を乗じたものとなる。
【0029】
上記の除算結果(利得)は、速度信号に応じて変化するが、オフセット値を生成する時の速度を所定の値または所定の範囲に限定していれば、除算結果は一定であるか、または大きくは変わらない値である。したがって、その都度、除算を行う必要はなく、固定値により代用してもよい。
【発明の効果】
【0030】
低域通過フィルタ処理を用いたオフセット値生成の開始時点において、初段フィルタの入力に、初段フィルタの定常状態における出力信号の近似値に基づく値を初期値とすることで、低域通過フィルタの出力値が早期に収束し、オフセット値を早期に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本実施形態の位置検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す初段の低域通過フィルタの内部構成を示すブロック図である。
【
図3】従来の位置検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3に示す初段の低域通過フィルタの内部構成を示すブロック図である。
【
図5】シミュレーションにより得られた、1次のデジタル低域通過フィルタの入出力波形である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1、2は本発明の位置検出装置の実施形態を、
図3、4に対応させて示すブロック図であり、
図3、4と同じ機能のものは同じ符号とし、その説明を省略する。
【0033】
A/D変換器2は、測定位置信号ASをデジタル信号に変換し、デジタル測定位置信号DSとして減算器12および1次のデジタル低域通過フィルタ26、27に出力する。A/D変換器3は、測定位置信号ACをデジタル信号に変換し、デジタル測定位置信号DCとして減算器13および1次のデジタル低域通過フィルタ26、27に出力する。
【0034】
図2は1次のデジタル低域通過フィルタ26にて行われる1次のデジタル低域通過フィルタ処理のブロック図を示す。反転器30はデジタル測定位置信号DCが入力され、反転信号NDCを乗算器31に出力する。除算器32は記憶器33に記憶されている1次のデジタル低域通過フィルタ26のカットオフ周波数となる速度FVELから、速度変換器11が出力するVEL信号を除算し、除算信号FPを乗算器31に出力する。除算信号FPはカットオフ周波数となる速度FVELと速度信号VELの比率を表す。乗算器31は反転器30から出力される反転信号NDCと除算器32から出力される除算信号FPが入力され、乗算信号MUL2をセレクト回路20に出力する。
【0035】
セレクト回路20はオフセット設定手段10から出力された設定信号SETの値が0から1に変化した際、初めて記憶器8が1次のデジタル低域通過フィルタ28の出力信号SDC2をオフセット値SOFとして記憶する場合、乗算器31が出力する乗算信号MUL2を信号SELとして出力する。設定信号SETの値が0から1へと変化した時以外の場合は、記憶器16が前回出力した信号SDC1を元に式1の処理を施した、加算器19から出力される加算信号ADDを信号SELとして出力する。オフセット設定手段10は、例えば、速度変換器の出力である速度信号VELが所定の値、または所定の範囲になったとき設定信号SETを1とする。そして、速度信号VELが所定の値または所定の範囲から逸脱すると、設定信号SETを0とする。
【0036】
記憶器16は、オフセット設定手段10から出力された設定信号SETの値が0である間、現在記憶している値を維持し更新は行わない。一方、オフセット設定手段10から出力された設定信号SETの値が0から1に変化した時、または1である間は、セレクト回路20のSEL信号を記憶し、所定の時間間隔で記憶内容は随時更新される。そして、デジタル測定位置信号DSの1次の低域通過フィルタ処理を施した信号SDC1として、1次のデジタル低域通過フィルタ28に出力する。
【0037】
1次のデジタル低域通過フィルタ27は、
図2に示すブロック図とほぼ同様の処理が行われ、減算器15の入力はデジタル測定位置信号DCであること、反転器30がないこと、乗算器31の入力はデジタル測定位置信号DSであること、以外は同様の処理が行われ、デジタル測定位置信号DCの1次の低域通過フィルタ処理を施した信号CDC1を1次のデジタル低域通過フィルタ29に出力する。
【0038】
結果的にオフセット設定手段10から出力された設定信号SETの値が0の場合は、1次のデジタル低域通過フィルタ26、27から出力される信号SDC1、CDC1の値は変化しない。また、設定信号SETの値が0から1に変化した時の時間を0とすると、時間0における1次のデジタル低域通過フィルタ26、27から出力される信号SDC1(0)、CDC1(0)は式5、6で表される。
SDC1(0)=−DC(0)*FP+(DS(0)+DC(0)*FP)*Kf ・・・(式5)
CDC1(0)=DS(0)*FP+(DC(0)−DS(0)*FP)*Kf ・・・(式6)
また、設定信号SETの値が1でかつ前記時間が0以降の場合は(時間tとする)、信号SDC1(t)、CDC1(t)は前記で示した式1、式2で表される。
【0039】
1次のデジタル低域通過フィルタ28は、1次のデジタル低域通過フィルタ処理を施した信号SDC1が入力され、1次のデジタル低域通過フィルタ処理を施し、結果的にデジタル測定位置信号DSの2次のデジタル低域通過フィルタ処理を施した信号SDC2を記憶器8に出力する。
【0040】
1次のデジタル低域通過フィルタ29は、1次のデジタル低域通過フィルタ処理を施した信号CDC1が入力され、1次のデジタル低域通過フィルタ処理を施し、結果的にデジタル測定位置信号DCの2次のデジタル低域通過フィルタ処理を施した信号CDC2を記憶器9に出力する。
【0041】
1次のデジタル低域通過フィルタ26で行われる、デジタル測定位置信号DSに対する、1次のデジタル低域通過フィルタ処理はアナログ低域通過フィルタ回路(アナログCR回路)と同様に考えることができ、定常状態での周波数特性の利得及び位相角は以下に示す式7で表される。
利得 = 1/√((VEL*C*R)
2+1) ・・・(式7)
位相角 = −tan
-1 (VEL*C*R) ・・・(式7)
ここでC*Rは1次のデジタル低域通過フィルタの時定数、VELは速度信号を表す。
【0042】
速度信号VELが時定数の逆数である1/(C*R)、つまりカットオフ周波数となる速度信号(以降FVELと記載)の場合、式7より利得は1/√2、位相角は−45°となる。
【0043】
一方、速度信号VELが速度信号FVELより十分大きい場合、例えば1000倍(VEL=1000/(C*R))とした場合、式7より利得はFVEL/VELと近似することができる。また、位相角は−90°となり、デジタル測定位置信号DSを積分し、FVEL/VEL倍した形とほぼ同じになる。
【0044】
以上より、速度信号VELが速度信号FVELより十分大きい場合、定常状態での1次のデジタル低域通過フィルタ26の出力信号SDC1は式8で近似することができる。
SDC1≒−DC*FP (FP=FVEL/VEL) ・・・(式8)
【0045】
式8に示す定常状態での1次のデジタル低域通過フィルタ26の出力近似値を1次のデジタル低域通過フィルタ処理のオフセット算出初期値として使用することにより、式5に示す式となる。そして式1に示すSDC1(t)は、定常状態での近似値を初期値として1次のデジタル低域通過フィルタ処理を施すため、迅速にオフセットの算出をすることが可能となり、過渡状態時の誤差軽減にもつながる。1次のデジタル低域通過フィルタ27で行われる、デジタル測定位置信号DCに対する、1次のデジタル低域通過フィルタ処理も同様に考えることができ、定常状態での1次のデジタル低域通過フィルタ27の出力信号CDC1は式9で近似することができる。
CDC1≒DS*FP (FP=FVEL/VEL) ・・・(式9)
【0046】
式9に示す定常状態での1次のデジタル低域通過フィルタ27の出力近似値を1次のデジタル低域通過フィルタ処理のオフセット算出初期値として使用することにより、式6に示す式となる。そして式2に示すCDC1(t)は、定常状態での近似値を初期値として1次のデジタル低域通過フィルタ処理を施すため、迅速にオフセットの算出をすることが可能となり、過渡状態時の誤差軽減にもつながる。
【0047】
上述の実施形態においては、低域通過フィルタは、A相、B相のそれぞれに対応して別個に設けられているが、一つを用意し、時分割にてA相、B相のオフセット値の生成を行ってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 位置検出センサ、2,3 AD変換器、4,5,6,7,26,27,28,29 1次のデジタル低域通過フィルタ、8,9,16,18,21,33 記憶器、10 オフセット設定手段、11 速度変換器、12,13,15 減算器、14 内挿手段、20 セレクト回路、30 反転器、17,31 乗算器、32 除算器、19 加算器、22 位置検出センサからのデジタル出力信号DS、23 位置検出センサからのデジタル出力信号DC、24 デジタル出力信号DSに対し、式1による低域フィルタ処理を施した定常状態での波形、25 時間0の時は、式3によるデジタル低域フィルタ処理を、時間t以降の時は、式1によるデジタル低域フィルタ処理を施した過渡状態での波形。