特許第5981301号(P5981301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981301
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】熱式ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/18 20060101AFI20160818BHJP
   G01N 25/18 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   G01N27/18
   G01N25/18 K
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-237438(P2012-237438)
(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2014-89048(P2014-89048A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中野 洋
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌大
(72)【発明者】
【氏名】浅野 哲
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 保夫
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−010670(JP,A)
【文献】 特開平08−136490(JP,A)
【文献】 特開平08−136491(JP,A)
【文献】 特開2000−146886(JP,A)
【文献】 特開2011−137679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/10、27/14−27/24
G01N 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と前記発熱体を加熱制御する加熱制御装置とを有する熱式ガスセンサにおいて、
前記加熱制御装置は、前記発熱体を第1の温度に加熱制御する期間と、前記発熱体を前記第1の温度よりも低い第2の温度に加熱制御する期間と、前記発熱体を前記第1の温度及び前記第2の温度よりも低い100〜150℃の範囲の第3の温度に加熱制御する期間とを設けて前記発熱体を加熱制御し、
前記第2の温度に加熱制御する期間を待機期間とし、前記第1の温度及び前記第3の温度に加熱制御する期間に前記発熱体を含むセンサ素子による検出動作を行い、
前記第1の温度に加熱制御される期間よりも前記第2の温度に加熱制御される期間を長く設定したことを特徴とする熱式ガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の熱式ガスセンサにおいて、
空洞部を有する基板と前記基板に積層され前記空洞部を覆う絶縁膜で構成される薄膜支持体とを有し、前記発熱体は前記薄膜支持体に形成され、前記第の温度は前記基板の温度よりも高い温度に設定され、前記発熱体を含むセンサ素子の出力に基づいて湿度を検出することを特徴とする熱式ガスセンサ。
【請求項3】
請求項2に記載の熱式ガスセンサにおいて、
前記加熱制御装置は、
前記発熱体と第1の抵抗が直列接続された第1の直列回路と、第2の抵抗体と第3の抵抗体と第4の抵抗体と第5の抵抗体とが直列接続された第2の直列回路とを並列に接続したブリッジ回路と、
前記発熱体と前記第1の抵抗体との間の接続点の電圧を第1の入力とし、前記第2の抵抗体と前記第3の抵抗体との間の第1の接続点の電圧、前記第3の抵抗体と前記第4の抵抗体との間の第2の接続点の電圧又は前記第4の抵抗体と前記第5の抵抗体との間の第3の接続点の電圧のいずれかを選択して第2の入力とする差動増幅器と、
を備え、
前記第1の接続点の電圧、前記第2の接続点の電圧又は前記第3の接続点の電圧のいずれかを選択することにより前記発熱体の加熱温度が切り替わるように構成されたことを特徴とする熱式ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測ガスの熱伝導の変化から、例えば、流量、温度、圧力、濃度、湿度、その他のガスの物理量を測定する熱式ガスセンサに関わる。
【背景技術】
【0002】
熱式ガスセンサは、ガスの熱伝導の変化を用いて、例えば、流量、温度、圧力、濃度、湿度、その他のガスの物理量の測定を行うために使われ、ガスの熱伝導の変化はガス中に晒された発熱体の放熱量により測定される。
【0003】
熱式ガスセンサは、種々の技術分野で使用されており、自動車用の内燃機関等においては、低燃費化を図るために、吸入空気の流量、温度、圧力に加え湿度等の環境状態を高精度に計測することが求められている。また熱式ガスセンサは、水素を燃料とする自動車用の内燃機関において、水素濃度を検出することで内燃機関を最適に運転するためにも使用される。
【0004】
湿度やガスの濃度を計測するガスセンサとしての熱式ガスセンサは、水分の吸収がなく、汚損などの耐環境性や長期安定性に優れている。特許文献1には、雰囲気中において加熱される抵抗体の抵抗値の変化に基づいて湿度を検知する湿度計が記載されている。この湿度計では、抵抗変化が雰囲気温度のみに影響される低温度に加熱したときに抵抗体の両端に生じる電圧と、抵抗変化が雰囲気の温度および湿度に感応する高温度に加熱したときに抵抗体の両端に生じる電圧とを比較して湿度を検知している。特許文献1には、検出素子に対し、時点t1から時点t2に至る50msの間は波高値が2mAでパルス幅が50msの小パルス電流を印加し、続いて、時点t2から時点t3に至る50msの間は波高値が8mAでパルス幅が50msの大パルス電流を印加し、時点t3から時点t4に至る100msの休止時間を置いて、再び小パルス電流と大パルス電流とを印加する電流パルス列により駆動する例が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、発熱体により感温抵抗体を加熱する加熱手段を有し、この加熱手段は発熱体に対して一定時間内に2つのパルス電圧を順番に印加することにより、感温抵抗体の温度を300℃以上の第1の温度と100℃〜150℃の第2の温度とに切り替え、それぞれの感温抵抗体の電圧降下に関連する出力電圧から湿度を検知する湿度センサが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、空洞部を有する基板と、空洞部に積層され、複数の絶縁層から構成される薄膜支持体と、薄膜支持体の絶縁層に挟持された第1の発熱体および第2の発熱体とを有し、第2の発熱体は第1の発熱体の周辺に配置され、第1の発熱体は第2の発熱体よりも高温に制御され、第1の発熱体に印加される電力に基づいて周囲ガスの濃度を測定するガスセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2889909号公報
【特許文献2】特許第3343801号公報
【特許文献3】特開2011−137679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の熱式ガスセンサでは、ガスの濃度変化を高精度に計測するために発熱体の加熱温度を300℃以上に高める必要がある。発熱体を高温で加熱すると発熱体の抵抗値が経時変化し計測精度の悪化や寿命の低下が起きる。経時変化の原因としては、高温に長時間さらされることによる酸化や、高温に加熱するため、発熱体に流れる電流によるマイグレーションなどがある。そのため可能な範囲で加熱を停止する期間を設けた構成が有効である。
【0009】
特許文献1の熱式ガスセンサ(湿度計)では、小パルス電流と大パルス電流とを印加し、再び小パルス電流と大パルス電流とを印加するまでの間に100msの休止時間を設けているが、この休止時間の間は検出素子に対して電流の供給を停止して検出素子の加熱制御を停止している。
【0010】
しかし、熱式ガスセンサのセンサ素子の加熱を停止すると、測定環境に浮遊する粒子などの汚損物質がセンサ素子に付着しやすくなる。また、湿度が高い環境である場合、結露により水滴が付着すると計測精度に誤差が発生する。また、駆動時と停止時のヒータの温度差による温度サイクルが頻繁に加わり熱応力による疲労が起きる。特に、内燃機関の吸入空気の湿度計測に用いる場合には、オイルやカーボンなどの汚損物の浮遊や、天候や地域による湿度環境の変化など厳しい条件のもとで高精度な湿度計測が望まれる。
【0011】
本発明の目的は、経時変化が少なく、耐汚損性が高く、温度サイクルによって生じる熱応力を緩和した熱式ガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の熱式ガスセンサは、発熱体と前記発熱体を加熱制御する加熱制御手段とを有する熱式ガスセンサにおいて、前記加熱制御手段は、前記発熱体を第1の温度に加熱制御する期間と、前記発熱体を前記第1の温度よりも低い第2の温度に加熱制御する期間と、前記発熱体を前記第1の温度及び前記第2の温度よりも低い100〜150℃の範囲の第3の温度に加熱制御する期間とを設けて前記発熱体を加熱制御し、前記第2の温度に加熱制御する期間を待機期間とし、前記第1の温度及び前記第3の温度に加熱制御する期間に前記発熱体を含むセンサ素子による検出動作を行い、前記第1の温度に加熱される期間よりも前記第2の温度に加熱される期間を長く設定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、センサ素子の経時劣化を低減し、耐汚損性を高め、温度サイクルによって生じる熱応力を緩和した高精度で信頼性の高い熱式ガスセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1参照におけるガスセンサの平面図。
図2参照におけるガスセンサの断面図。
図3参照におけるガスセンサの加熱制御手段。
図4参照におけるガスセンサの動作を示すタイムチャート。
図5参照におけるガスセンサの発熱体の温度を示すタイムチャート。
図6】第の実施例におけるガスセンサの発熱体の抵抗劣化。
図7】第の実施例におけるガスセンサの発熱体の温度を示すタイムチャート。
図8参照におけるガスセンサの平面図。
図9参照におけるガスセンサの断面図。
図10参照におけるガスセンサの加熱制御手段。
図11参照におけるガスセンサの動作を示すタイムチャート。
図12参照におけるガスセンサの第1の発熱体の温度を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面に基づき詳細に説明する。以下の実施例では、自動車用の内燃機関の吸気システムに組み込まれ、吸気の湿度を測定する熱式ガスセンサに適用した例を説明する。
[参照例1]
【0016】
図1参照例を示す熱式ガスセンサの平面図、図2は、図1のセンサ素子1のII−II矢視断面図である。
【0017】
参照例の熱式ガスセンサのセンサ素子1は、単結晶シリコンで形成された基板2を有している。基板2には、空洞部4が形成されており、この空洞部4は絶縁膜3aで覆われ、絶縁膜3a上に発熱体5が形成されている。絶縁膜3a上には発熱体5や感温抵抗体6〜9が形成される。発熱体5は空洞部4上の絶縁膜3a上に形成され、感温抵抗体6〜9は空洞部4から外れた部分の絶縁膜3a上に形成される。さらに、発熱体5や感温抵抗体6〜9を保護するために表面は絶縁膜3bで覆われる。また、発熱体5、感温抵抗体6〜9に電圧、電流の供給、取り出しなどのための電極10a〜10fが形成される。さらに、電極10a〜10fは加熱制御装置12に金線ボンディングワイヤー11a〜11fなどにより電気的に接続される。
【0018】
発熱体5及び感温抵抗体6〜9としては、抵抗温度係数が高い材料として、例えば、白金(Pt)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)等が選定され、絶縁層3a、3bとしては酸化シリコン(SiO2)と窒化シリコン(Si3N4)が単層あるいは積層構成にて選定される。また,絶縁層3a、3bとして、ポリイミドなどの樹脂材料やセラミック、ガラスなどを単層あるいは積層構成にて選定することもできる。また、電極10a〜10fとしては、アルミニウム(Al)または金(Au)等が選定される。
【0019】
発熱体5、感温抵抗体6〜9、空洞部4、絶縁膜3a、3bおよび電極10a〜10fは、フォトリソグラフィーを利用した半導体微細加工技術、異方性エッチング技術を用いて形成される。特に、空洞部4は、単結晶シリコン基板2を異方性エッチングして形成するので、電極10a〜10fには、異方性エッチングに用いるアルカリエッチング溶液への耐性のある金属を用いる方が良い。
【0020】
また、アルミニウムなどのアルカリエッチング溶液に対する耐性の無い金属を使用するときは、電極10a〜10fをアルミニウムとシリコンの合金で構成して耐性を持たせるか、または、電極10a〜10fの上に保護材を形成しておいてから異方性エッチングを行うことが好ましい。
【0021】
図3は、本参照例における熱式ガスセンサのセンサ素子1の加熱制御装置12の構成図である。以下、図3を用いて、本参照例における熱式ガスセンサの加熱制御装置の構成を説明する。
【0022】
加熱制御装置12は、ブリッジ回路23に組み込まれた発熱体5に対してブリッジ回路23のバランスを維持するように加熱電流を供給し、発熱体5を所定の温度に制御する構成を有している。ブリッジ回路23も加熱制御装置12の一部を構成している。
【0023】
ブリッジ回路23は、発熱体5と固定抵抗13が直列接続された直列回路23aと、感温抵抗体6と感温抵抗体7と感温抵抗体8と感温抵抗体9が直列接続された直列回路23bとを並列に接続して構成される。固定抵抗13としては、抵抗温度係数ができるだけ小さいものが選定される。発熱体5と固定抵抗13との間の電圧(第1の分圧電圧)は差動増幅器15に入力される。感温抵抗体6と感温抵抗体7の間の電圧(第2の分圧電圧)はスイッチ回路14のスイッチSW3を介して差動増幅器15に入力される。感温抵抗体7と感温抵抗体8の間の電圧(第3の分圧電圧)はスイッチ回路14のスイッチSW2を介して差動増幅器15に入力される。感温抵抗体8と感温抵抗体9の間の電圧(第4の分圧電圧)はスイッチ回路14のスイッチSW1を介して差動増幅器15に入力される。スイッチ回路14は差動増幅器15に入力する電圧を電気的に開閉することで選択する。第1の分圧電圧は直列回路23aの分圧電圧として差動増幅器15の一方の入力端子(本参照例ではプラス端子)に入力され、第2の分圧電圧と第3の分圧電圧と第4の分圧電圧とは直列回路23bの分圧電圧として差動増幅器15の一方の入力端子(本参照例ではマイナス端子)に入力され、プラス端子の入力電圧とマイナス端子の入力電圧の差分に応じて差動増幅器15からブリッジ回路23への供給電流が変化する。
【0024】
スイッチ回路14としては、MOSトランジスタなどを用いた半導体スイッチで形成することができる。この場合、電気的に高速に切り替えることが可能であるとともに、加熱制御装置12をLSIとして1チップにすることができ、小型化が可能である。差動増幅器15の出力はブリッジ回路23の発熱体5と感温抵抗体と6の間に接続され、発熱体5に加熱のための電流を供給する。
【0025】
発熱体5の加熱温度はスイッチ回路14のスイッチSW1〜SW3のうちどれを閉じるかによって変更することができる。SW1を閉じた場合、もっとも高温に制御され、SW3を閉じた場合もっとも低い温度に制御される。SW2のみ閉じた場合、SW1を閉じた場合とSW3を閉じた場合の間の温度に制御される。このように簡易な構成で複数の温度に切替ることが可能である。
【0026】
このような加熱制御装置12を用いた場合、湿度が変化すると発熱抵抗体5を所定の温度に加熱するための電力が変化する。したがって、差動増幅器15の加熱電圧Vh1の変化を取り出し演算すことにより湿度計測が可能である。加熱電圧Vh1は、差動増幅器17により増幅され、サンプルホールド回路18、AD変換器19、さらにデジタルシグナルプロセッサ20に取り込まれ、演算することにより高精度な湿度データHoutを得ることができる。また、スイッチ回路14およびサンプルホールド回路18は、スイッチ制御回路21により制御される。
【0027】
スイッチ制御回路21は発振器22を基にスイッチ回路14の開閉タイミングやサンプルホールド回路の動作信号を生成する。また、スイッチ制御回路21は加熱制御手段12の外部からの信号STBに基づいて動作させることもできる(スタンバイ機能)。外部信号STBを用いれば例えば内燃機関の制御装置であるECUからの指令にもとづいて、発熱体5の加熱温度を切り替えることができる。電源をOFFにすることで加熱を完全に停止することもできるが、発熱体5が加熱されなくなり汚損が進行してしまう。このスタンバイ機能によって、湿度計測が不要な期間は、発熱体5の加熱温度を切替えることにより、省電力化が可能になるとともに、センサ素子の汚損を低減し、復帰後の湿度検出までの動作を速めることもできる。
【0028】
図4は、本参照例におけるガスセンサのセンサ素子1の加熱制御装置12の動作を示すタイミングチャートである。以下、図3図4を用いて、本参照例における熱式ガスセンサの加熱制御装12置の動作を説明する。
【0029】
図4におけるCLKは発振器22により生成したクロック波形である。tsw1〜tsw3はスイッチ回路14のスイッチSW1〜SW3の開閉を指示する信号であり。ONで「閉」、OFFで「開」になる。スイッチSW1〜SW3の開閉タイミングとしては、まずCLKのタイミングt1においてtsw2がONになり、スイッチ回路14のスイッチSW2が「閉」になる。つぎにCLKのタイミングt4においてtsw1がONになり、スイッチ回路14のスイッチSW1が「閉」になる。つぎにCLKのタイミングt7においてtsw3がONになり、スイッチ回路14のスイッチSW3が「閉」になる。これらのスイッチSW1〜SW3の「閉」となる期間としては、SW3が“閉”となる期間がもっとも長い。
【0030】
図4におけるVh1は図3における差動増幅器15の出力電圧値の変動、すなわち発熱体5を加熱する電圧を示している。Vh1が大きいと発熱体5の加熱温度が高くなる。Vh1はSW1〜SW3のうちどのスイッチを閉じているかによって変化する。tsw2がONのときVh1は発熱体5の温度が100℃〜150℃の範囲の一定温度に加熱するために必要な電圧値となる。tsw1がONのときVh1は発熱体5の温度が300℃以上の一定温度に加熱するために必要な電圧値となる。tsw3がONのときVh1は発熱体5の温度が100℃以下の一定温度に加熱するために必要な電圧値となる。
【0031】
以下の説明においては、スイッチSW1がONになり発熱体5が300℃以上の一定温度に加熱される場合の加熱温度を第1の温度、スイッチSW3がONになり発熱体5が100℃以下の一定温度に加熱される場合の加熱温度を第2の温度、スイッチSW2がONになり発熱体5が100℃〜150℃の範囲の一定温度に加熱される場合の加熱温度を第3の温度とする。
【0032】
参照例では、第2の温度の温度範囲は100℃以下であり、第3の温度は100℃〜150℃の範囲であり、第2の温度と第3の温度とを共に100℃にすると、第2の温度と第3の温度とが同じになってしまう。第2の温度と第3の温度とは、第2の温度が第3の温度よりも低くなるように、上記各温度範囲内で異なる温度に設定される。
【0033】
図4におけるVh2は図3における差動増幅器17により湿度によるVh1の変化を増幅した電圧である。具体的にはVh1と基準電圧源16の差電圧を増幅した値となる。
【0034】
図4におけるtshは図3に示すスイッチ制御回路により生成した信号であり、サンプルホールド回路18の動作を制御する信号である。tshがONのときサンプルホールド回路18は入力電圧Vh2を読み込む。tshがOFFのときは読み込んだVh2の電圧値を保持する。サンプルホールド回路18がVh2を読み込むタイミングとしては、スイッチSW1またはスイッチSW2が「閉」の期間(t2、t5)である。このt2とt5のタイミングで読み込んだ値Vh3(L)とVh3(H)とは、図3のAD変換器19により読み込まれデジタルデータとなる。さらに、デジタルシグナルプロセッサ20によりVh3(L)とVh3(H)の値を用いて絶対湿度Houtが計算される。
【0035】
図5はスイッチSW1〜SW3の動作による発熱体5の温度変化を示したものである。スイッチSW2が「閉」(tsw2がON)のとき(期間d1)、発熱体5は100℃〜150℃の範囲の第3の温度Th3に保持される。スイッチSW1が「閉」(tsw1がON)のとき(期間d2)、発熱体5は300℃以上の範囲の第1の温度Th1に保持される。スイッチSW3が「閉」(tsw3がON)のとき(期間d3)、発熱体5は100℃以下範囲の第2の温度Th2に保持される。期間d3においても発熱体5は通電され加熱制御されている。このため、第2の温度Th2は、周囲の温度やセンサ素子1の基板2の温度Tbよりも高い温度である。
【0036】
湿度の計測には発熱体5の温度がTh3の期間d1とTh1の期間d2を設けこの2温度の状態における発熱体5の加熱電圧のデータが必要である。したがって、期間d1及び期間d2は湿度計測のための期間(検出動作期間)である。発熱体5の温度がTh2の期間d3は湿度計測のための動作を停止している期間(待機期間)である。これらの期間d1、d2、d3の内、待機期間であるd2の期間がもっとも長い。
【0037】
本構成における効果を説明する。上記のd2の状態を設けることによって、発熱体5の温度を下げる期間を設けることができ、センサ素子1(特に発熱体5)の劣化を低減することができる。発熱体5の温度が下がると劣化の進行を低減することができるためである。また、d2の状態は基板温度Tbよりも発熱体5とその周辺が高温に保持されているため、発熱体5の周辺は加熱による空気の分子運動の増加により、汚損物質となる粒子に反発させることができ、汚損物質の付着を低減することができる。また、湿度が高い環境である場合、結露による水滴の付着を防止することができる。また、待機期間d3において発熱体5を加熱してその温度を高めることにより、発熱体5を加熱しない場合と比べて、期間d1、d2、d3を通じて上下する発熱体5の温度差が低減し、温度サイクルによる膨張収縮を繰り返すストレスによる疲労を低減することができる。これらの期間d1、d2、d3の内、d3の期間がもっとも長くなるようにデューティ比を設定することにより温度差によるストレスを受ける回数を低減することができるとともに、高温になる期間d2を相対的に短くすることができ、より劣化の進行を低減することができる。
【実施例1】
【0038】
本発明を適用してなるさらに効果的な実施例を説明する。本実施例は参照例1のガスセンサにおいてさらに汚損による誤差を低減しした構成である。
【0039】
図6は、多結晶シリコンなどのSi材料や、白金(Pt)などの金属材料で形成した発熱体5の抵抗劣化を評価した結果である。Si材料では200℃以上において劣化の進行が加速し抵抗値の変動が大きくなる。Ptなどの金属材料では、300℃以上において劣化の進行が加速し抵抗値の変動が大きくなる。したがって、Si材料では劣化の進行を遅らせるために加熱温度を200℃以下に下げる期間を設けることで効果がえられる。Ptなどの金属材料においては300℃以下に下げる期間を設けることによって効果が得られる。一方、汚損物となる粒子の付着を低減するためには発熱体5が高温であるほどより低減効果が得られる。参照例1では図5における期間d3での発熱体5の温度Th2の設定値としてTh3より低い100℃以下としたが、さらに高温でも発熱体5の抵抗劣化の抑制効果が得られる。したがって、単結晶シリコンの場合は100℃〜200℃、Ptの場合は100℃から300℃の範囲であればよい。参照例1にくらべ劣化が加速しない範囲で発熱体5を高温化することができ汚損をより低減することができる。
【0040】
上記のように汚損を低減するには、劣化の進行が加速しない範囲で加熱温度を高めることが必要である。従来の構成で第1の温度Th1と第3の温度Th3の2温度で制御し、Th3の期間を長く設定することも可能であるが、Th3の温度は湿度による空気の熱伝導率の変化が小さい条件であることが必要である。そのため、Th3が100℃〜150℃の範囲から外れた高温度に設定されると高精度な湿度計測ができなくなる。そこで、本実施例ではTh1、Th3に加えてTh3より高温でTh1よりも低温となる第2の温度Th2の期間を設定することでさらに耐汚損性を高めている。
【0041】
図7は本実施例におけるスイッチSW1〜SW3の動作タイミングと発熱体5の温度変化を示したものである。
【0042】
スイッチSW3が「閉」(tsw3がON)のとき、発熱体5は100℃〜150℃の範囲の第3の温度Th3に保持される。スイッチSW1が「閉」(tsw1がON)のとき、発熱体5は300℃以上の範囲の第1の温度Th1に保持される。スイッチSW2が「閉」(tsw2がON)のとき、発熱体5は100℃〜200℃の範囲の第2の温度Th2に保持される。湿度の計測には発熱体5の温度がTh1の期間d2とTh3の期間d1を設けこの2温度の状態における発熱体5の加熱電圧のデータを用いる。したがって、期間d2及び期間d1は湿度計測のための期間(検出動作期間)である。発熱体5の温度がTh2の期間d3は湿度計測のための動作を停止している期間(待機期間)である。これらの期間d1、d2、d3の内d3の期間がもっとも長い。
【0043】
第3の温度Th3を100℃〜150℃の範囲とし、第2の温度Th2をTh3と一致させてもよい。この場合、第2の温度Th2を第3の温度Th3よりも高くする場合と比べて、耐汚損性は劣ることになるが、参照例1に比べて耐汚損性は向上する。尚、この場合、第3の温度Th3(すなわち第2の温度Th2)に加熱制御される期間は第1の温度Th1に加熱制御される期間よりも長く設定される。
【0044】
本実施例では、参照例1に対して、第2の温度Th2に加熱制御するときに閉じられるスイッチと第3の温度Th3に加熱制御するときに閉じられるスイッチとが入れ替わっている。また、第2の温度Th2も参照例1に対して異なる温度に設定されている。このため、ブリッジ回路23を構成する感温抵抗体6、7、8の抵抗値は参照例1に対して変更されている。
【0045】
本構成における効果を説明する。上記のd3の状態を設けることによって、発熱体5の温度を劣化を抑制或いは劣化に影響しない温度まで下げる期間を設けることができ、劣化を低減することができる。また、d3の状態は参照例1よりも高温に保持されているため、発熱体5の周辺は加熱による空気の分子運動の増加により、汚損物質となる粒子に反発させることができ、付着をより低減することができる。また、湿度が高い環境である場合、結露による水滴の付着を防止することができる。また、待機期間d3における発熱体5の温度を検出動作期間d1における温度よりも高くしたことにより、参照例1と比べてさらに、期間d1、d2、d3を通じて上下する発熱体5の温度差が低減し、温度サイクルによる膨張収縮を繰り返すストレスによる疲労を低減することができる。これらの期間d1、d2、d3の内d3の期間がもっとも長くなるようにデューティ比を設定することにより温度差によるストレスを受ける回数を低減することができるとともに、高温になる期間d2を相対的に短くすることができ、より劣化の進行を低減することができる。
[参照例2]
【0046】
図8は、本発明の第参照例を示す熱式ガスセンサ31の平面図である。図9は、図8のセンサ素子31のIX−IX矢視断面図である。
【0047】
参照例の熱式ガスセンサのセンサ素子31は、単結晶シリコンで形成された基板2を有している。基板2には、空洞部4が形成されており、この空洞部4は絶縁膜3aで覆われ、空洞部4上の絶縁膜3a上に第1の発熱体35と第2の発熱体36が形成されている。さらに、第1の発熱体35や第2の発熱体36を保護するために表面は絶縁膜3bで覆われる。また、第1の発熱体35、第2の発熱体36に電圧、電流の供給、取り出しのための電極40a〜40dが形成される。さらに、電極40a〜40dは加熱制御装置42に金線ボンディングワイヤー41a〜41dなどにより電気的に接続される。
【0048】
図8に示すように、第1の発熱体35の周辺を取り囲むように第2の発熱体36を配置することにより、第1の発熱体35の周囲温度が第2の発熱体36の温度(Th2)で維持され、周囲温度T3への依存性(影響)を低減することが可能である。また本参照例では、参照例1及び実施例1のように湿度計測のためにTh1とTh3との二温度条件での発熱体の電圧・電流を測定する必要がなく、Th1の一温度条件での測定で発熱体35の電圧または電流に基づいて絶対湿度を計測することが可能な構成である。
【0049】
図10は、本参照例におけるセンサ素子31の加熱制御装置42の構成図である。以下、図10を用いて、本参照例における熱式ガスセンサの動作について説明する。
【0050】
参照例では、第一の発熱体35が組み込まれたブリッジ回路49と第二の発熱抵抗体36が組み込まれたブリッジ回路53が設けられている。ブリッジ回路49はブリッジ回路49のバランスを維持するように第一の発熱体35の加熱電流を制御する。ブリッジ回路53はブリッジ回路53のバランスを維持するように第二の発熱体36の加熱電流を制御する。ブリッジ回路49とブリッジ回路53とは加熱制御装置42の一部を構成している。
【0051】
センサ素子31の駆動回路は、第一の発熱体35の加熱電流を制御する駆動回路部分50と、第二の発熱体36の加熱電流を制御する駆動回路部分51とによって構成され、第一の発熱体35と第2の発熱体36とに対して加熱電流を供給する。この場合、第一の発熱体35は第一の温度Th1に制御され、第二の発熱体36は第一の温度Th1よりも低温である第二の温度Th2に制御される。
【0052】
センサ素子31の駆動回路のうち駆動回路部分50は、発熱体35と固定抵抗39とが直列接続された直列回路49aと、固定抵抗37と固定抵抗38とが直列接続された直列回路49bとを並列に接続して構成されたブリッジ回路49を有する。発熱体35と固定抵抗39との接続端電位が差動増幅器15に入力される。固定抵抗37と固定抵抗38との接続端電位はスイッチ回路46のスイッチSW1を介して差動増幅器15に入力される。スイッチ回路46にはスイッチSW2が設けられ所定の基準電位を持つ基準電圧源47を差動増幅器15の入力に接続している。
【0053】
発熱体35の加熱温度はスイッチ回路46のスイッチSW1、SW2のうちどれを閉じるかによって変更することができる。SW1を閉じた場合、所定の温度Th1に加熱制御され、SW2が閉じた場合、加熱制御が停止する。基準電圧源47の電圧は発熱抵抗体35と固定抵抗39との間の電圧よりも十分高い電圧である。こうすることによって、SW2が選択された場合、差動増幅器15の出力がほぼゼロになり加熱制御を停止することができる。すなわち、差動増幅器15の負側の入力電圧を大きくして出力がほぼゼロになるようにしている。これにより、差動増幅器15からブリッジ回路49への電流供給が停止する。
【0054】
差動増幅器15からブリッジ回路49への電流供給を完全に停止するだけであれば、差動増幅器15の出力側とブリッジ回路49とを接続する配線52に接続を開閉するスイッチを設けても良い。この場合、基準電圧源47とスイッチSW1とスイッチSW2とが不要になり、スイッチSW1の部分は常時電気的に接続されていればよい。
【0055】
発熱体36の加熱制御を行う駆動回路部分51は、発熱体36と固定抵抗45とが直列接続された直列回路53aと、固定抵抗43と固定抵抗44とが直列接続された直列回路53bとを並列に接続して構成されるブリッジ回路53を有する。発熱体36と固定抵抗45との接続端の電位と、固定抵抗43と固定抵抗44との接続端の電位とが差動増幅器48に入力される。差動増幅器48の出力端子は発熱体36と固定抵抗43との間に接続され、入力電圧の差に応じた電圧を印加することにより加熱制御される。この構成により、発熱体36の温度が100℃以上の一定温度である第二の温度Th2になるようにフィードバック制御される。
【0056】
このような加熱制御装置42の場合、湿度が変化すると発熱抵抗体35を所定の温度に加熱するための電力が変化する。したがって、差動増幅器15の加熱電圧Vh1の変化を取り出すことにより湿度計測が可能である。加熱電圧Vh1は、差動増幅器17により増幅され、サンプルホールド回路18、AD変換器19により高精度な湿度データHoutを得ることができる。また、スイッチ回路46およびサンプルホールド回路18は、スイッチ制御回路21により制御される。スイッチ制御回路21は発振器22のクロック信号CLKに基づいてスイッチ回路14の開閉タイミングやサンプルホールド回路18の動作信号を生成する。また、スイッチ制御回路21は加熱制御装置12の外部からの信号STBに基づいて動作させることもできる。
【0057】
図11は、本参照例における熱式ガスセンサのセンサ素子31の加熱制御装置42の動作を示すタイミングチャートである。以下、図10図11を用いて、本参照例における熱式ガスセンサの加熱制御装置の動作を説明する。
【0058】
図11におけるCLKは発振器22により生成したクロック波形である。tswはスイッチ回路46のスイッチSW1、SW2の開閉を指示する信号であり。ハイレベルでSW1が「閉」、ローレベルでSW2が「閉」になる。スイッチSW1、SW2の開閉タイミングとしては、まずCLKのタイミングt1においてtswがハイレベルになり、スイッチ回路14のスイッチSW1が「閉」になる。つぎにCLKのタイミングt4においてtswがローレベルになり、スイッチ回路14のスイッチSW2が「閉」になる。これらのスイッチSW1、SW2の「閉」となる期間としては、SW2が“閉”となる期間がもっとも長い。
【0059】
図11におけるVh1は図10おける差動増幅器15の出力電圧値の変動、すなわち発熱体35を加熱する電圧を示している。Vh1が大きいと発熱体35の加熱温度が高くなる。Vh1はSW1、SW2のうちどのスイッチを閉じているかによって変化する。tswがハイレベルのとき発熱体35の温度が400℃〜500℃の範囲の一定温度に加熱するために必要なVh1となる。tswがローレベルのとき発熱体35の加熱が停止する。このとき発熱体35の温度は発熱体36の温度とほぼ同程度になる。
【0060】
図11におけるVh2は図10における差動増幅器17により湿度によるVh1の変化を増幅した電圧である。具体的にはVh1と基準電圧源16の差電圧を増幅した値となる。
【0061】
図11におけるtshは図10に示すスイッチ制御回路により生成した信号であり、サンプルホールド回路18の動作を制御する信号である。tshがONのときサンプルホールド回路18は入力電圧Vh2を読み込む。tshがOFFのときは読み込んだVh2を保持する。サンプルホールド回路18がVh2を読み込むタイミングとしては、スイッチSW1が「閉」の期間(t1〜t4)である。このときに読み込んだ値Vh3は、図10のAD変換器19により読み込まれデジタルデータとなる。本参照例では発熱体36により発熱体35の環境温度(周囲温度)の変化を低減した構成であるため、このデジタルデータが絶対湿度Houtとなる。
【0062】
図12はスイッチSW1、SW2の動作タイミングと発熱体35の温度変化を示したものである。スイッチSW1が「閉」(tswがハイレベル)のとき、発熱体5は400℃〜500℃の範囲の第一の温度Th1に保持される。スイッチSW2が「閉」(tswがローレベル)のとき、発熱体35は200℃から300℃の範囲の第二の温度Th2(発熱体36の温度)に保持される。
【0063】
湿度の計測には発熱体35の温度がTh1の期間d1を設けこの状態における発熱体35の加熱電圧のデータが必要である。したがって、期間d1は湿度計測のための期間(検出動作期間)である。発熱体35の温度がTh2の期間d2は湿度計測のための動作を停止している期間(待機期間)である。これらの期間d1、d2の内d2の期間がもっとも長い。
【0064】
発熱体35が第二の温度Th2に保持されるd2の期間は発熱体35への通電は停止されている。このd2の期間は発熱体36の通電(加熱制御)により発熱体35の温度が第二の温度Th2に保持されることになる。
【0065】
本構成における効果を説明する。上記のd2の状態を設けることによって、発熱体35の温度を下げる期間を設けることができ劣化を低減することができる。発熱体35の温度が下がると劣化の進行を低減することができるためである。また、d2の状態では発熱体35の周辺の温度が発熱体36の加熱により基板2の温度Tbよりも高温に保持されているため、空気の分子運動の増加により、汚損物質となる粒子に反発させることができ、発熱体35に対する汚損物質の付着を低減することができる。また、湿度が高い環境である場合、結露による水滴の付着を防止することができる。また、期間d1から期間d2に切り替わることにより発熱体35に生じる温度差が低減し、温度サイクルによる膨張収縮を繰り返すストレスによる疲労を低減することができる。これらの期間d1、d2の内d2の期間がもっとも長くなるようにデューティ比を設定することにより温度差によるストレスを受ける回数を低減することができるとともに、高温になる期間d1を相対的に短くすることができ、より劣化の進行を低減することができる。
【0066】
また、本構成によれば発熱体35の加熱制御を停止しても、発熱体36により加熱されている。したがって発熱体36の加熱制御を停止することにより発熱体35に流れる電流をほぼゼロにすることできる。これにより、電流が流れることによる発熱体35の劣化(エレクトロマイグレーション)を低減することができる。とくに発熱体35の劣化を低減することは、湿度計測が発熱体35に基づいて検出されるため重要である。
【0067】
上記各参照及び実施例において、発熱体として熱線や板状のものを用いてセンサ素子部分を構成することも可能である。ただし、上記各参照及び実施例で説明した単結晶シリコンで形成された基板に空洞部を形成してセンサ素子を構成する実施例では、センサ素子部の熱容量を小さくすることができる。このため、上記各参照及び実施例例で説明したセンサ素子は、応答性に優れており、待機期間における待機温度から検出動作期間における検出動作温度まですぐに回復することができ、本発明の課題を解決するための形態としてより好適である。
【符号の説明】
【0068】
1…センサ素子、2…基板、3a、3b…絶縁膜、4…空洞部、5…発熱体、6〜9…感温抵抗体、10a〜10f…電極、11a〜11f…金線ボンディングワイヤー、12…加熱制御手段、13…固定抵抗、14…スイッチ回路、15…差動増幅器、16…基準電圧源、17…差動増幅器、18…サンプルホールド回路、19…AD変換器、20…デジタルシグナルプロセッサ、21…スイッチ制御回路、22…発振器、23…ブリッジ回路、31…センサ素子、35…発熱体、36…発熱体、37〜39…固定抵抗、40a〜40d…電極、41a〜41d…金線ボンディングワイヤー、42…加熱制御手段、43〜45…固定抵抗、46…スイッチ回路、47…基準電圧減、48…差動増幅器、49…ブリッジ回路、50…ブリッジ回路49の駆動回路、51…ブリッジ回路53の駆動回路、53…ブリッジ回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12