(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981304
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】回転霧化式塗装機
(51)【国際特許分類】
B05B 5/04 20060101AFI20160818BHJP
B05B 3/10 20060101ALI20160818BHJP
B05B 1/32 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
B05B5/04 A
B05B3/10 B
B05B1/32
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-240043(P2012-240043)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-87756(P2014-87756A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】梅本 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 勇
【審査官】
松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−99343(JP,A)
【文献】
特表2009−519128(JP,A)
【文献】
特開平4−90864(JP,A)
【文献】
実開昭55−67293(JP,U)
【文献】
実開平1−151862(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/32
B05B 3/10
B05B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の塗装機本体と、前記塗装機本体内に設けられたエアモータにより回転される中空の筒部と、その筒部の先端に設けられた回転霧化頭と、前記筒部内においてその軸線方向に延設され、前記回転霧化頭に塗料及び洗浄剤を選択的に供給する共通の供給経路が形成された金属製のフィードチューブとを備えた回転霧化式塗装機であって、
前記フィードチューブの先端には、前記回転霧化頭に向けて前記塗料を吐出する開口を有する弾性素材製のノズル部材が設けられ、
前記ノズル部材における前記開口は、前記塗料の供給圧力の高低を問わず常時開放状態を維持するとともに、前記開口の断面積は、前記塗料の供給圧力に応じて可変である
ことを特徴とする回転霧化式塗装機。
【請求項2】
前記ノズル部材における前記開口は、前記塗料及び前記洗浄剤の非吐出時において前記フィードチューブにおける前記供給経路の先端部内径よりも小径となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の回転霧化式塗装機。
【請求項3】
前記ノズル部材は、先端側に行くに従って先細りした形状であり、前記開口は、前記塗料の供給圧力が高くなるほど拡径することを特徴とする請求項1または2に記載の回転霧化式塗装機。
【請求項4】
前記ノズル部材における先端側の壁厚は、基端側の壁厚よりも薄いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回転霧化式塗装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転霧化頭を用いて塗料を噴霧する回転霧化式塗装機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディや自動車部品の塗装においては、厳しい塗装品質が要求されるため、均一で高品質の塗装を行うことができる回転霧化式塗装機が用いられている。この塗装機は、回転霧化頭を備え、回転霧化頭を回転させることで生じる遠心力によって塗料を霧化して噴霧する。
【0003】
また、例えば自動車ボディの塗装ラインでは、塗装色の異なる自動車ボディが混在して搬送されるため、自動車ボディに応じて色替塗装することができるように回転霧化式塗装機が構成されている。そして、その塗装機において、前色塗料から次色塗料に色替えをする際、洗浄剤を用いて塗装機内の塗料供給経路中に残存した塗料を洗浄することで色混じりを防止している。
【0004】
図6に示されるように、従来の回転霧化式塗装機31において、塗料供給装置(図示略)から供給される塗料W1は、塗装機本体32内に設けられた1本のフィードチューブ33を通してその先端の開口34から回転霧化頭35(ベルカップ)に供給される。回転霧化頭35は、塗装機本体32内に設けられたエアモータ36により回転される。そして、その遠心力により、回転霧化頭35に付着した塗料W1が均一に展延され、さらに塗料W1が霧化された状態で回転霧化頭35から噴霧される。この構成の回転霧化式塗装機31において、吐出可能な塗料W1の吐出量(吐出可能領域)は、例えば150cc/min〜600cc/minとなっている。また、回転霧化頭35のセンターコーン部37には、色替え洗浄時に使用するセルフクリーニング穴38が形成されている。センターコーン部37は回転の中心部に位置するため、そのセンターコーン部37には遠心力が加わり難い。このため、フィードチューブ33を通じて供給された洗浄剤(シンナーなどの洗浄液)をセルフクリーニング穴38に流すことで、センターコーン部37の洗浄が行われる。セルフクリーニング穴38はテーパ状に貫通形成されており、回転霧化頭35の遠心力によってそのセルフクリーニング穴38内には回転霧化頭35の前面側から背面側に引き込むようなポンピンク効果が作用する。このため、吐出可能領域内の吐出量となるよう設定された塗料W1が開口34からセンターコーン部37に供給された場合、その塗料W1はセルフクリーニング穴38を通過しないようになっている。
【0005】
因みに、特許文献1の回転霧化式塗装機では、内筒と外筒とからなるフィードチューブが設けられており、内筒内には、塗料及び洗浄剤が選択的に供給される供給経路が設けられている。また、フィードチューブの内筒と外筒との間には、洗浄剤が供給される供給経路が設けられ、その先端には、洗浄剤が供給されたときに開弁するチェック弁が設けられている。このチェック弁は、塗料供給時には閉じられており、洗浄剤が外部に流出するのを阻止している。
【0006】
さらに、特許文献2には、印加される電圧により伸長する圧電素子を備え、その圧電素子の伸長に基づいてノズル口径を可変させる吐出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−42360号公報
【特許文献2】特開平10−156250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、回転霧化式塗装機31を用いて、例えば自動車ボディを塗装する場合、ボンネットなどの塗装領域が広い場所の塗装では、塗料W1の吐出量を多くし、ピラーなどの塗装領域が狭い場所の塗装では、塗料W1の吐出量を少なくする必要がある。ところが、従来の回転霧化式塗装機31では、吐出可能領域が150cc/min〜600cc/minと狭いため、吐出量の調整を的確に行い塗装品質を向上させることが困難となる場合がある。
【0009】
具体的に、回転霧化式塗装機31において、フィードチューブ33により小吐出量(150cc/min以下)の塗料W1を供給すると、フィードチューブ33の先端の開口34が広いため、塗料W1の流速が低下する。この場合、塗料W1は開口34から下方に流れ落ちるため、回転霧化頭35のセンターコーン部37に塗料W1を安定して供給できなくなる。このため、回転霧化頭35において塗料W1が均一に展延されなくなり、回転霧化頭35から吐出される霧化塗料の液糸が不均一となることで息継ぎと呼ばれる塗装不良が生じてしまう。
【0010】
また、回転霧化式塗装機31において、フィードチューブ33により大吐出量(600cc/min以上)の塗料W1を供給すると、フィードチューブ33の開口34が狭いため、塗料W1の供給圧力が高くなる。この場合、その供給圧力が回転霧化式塗装機31の付帯機器であるホースや塗料供給装置等の耐圧を超えてしまうといった問題が生じる。また、フィードチューブ33の開口34から回転霧化頭35に供給される塗料W1の流速が速くなる。このため、セルフクリーニング穴38を通じて塗料W1が飛び出してしまい、スピットと呼ばれる塗装不良が生じる。
【0011】
特許文献1の回転霧化式塗装機では、フィードチューブの内筒内にて塗料が供給され、内筒と外筒との間に洗浄剤が供給される構成を採用しており、塗料の吐出可能領域を拡げるといった構成は設けられていない。従って、フィードチューブを使用して塗料の吐出可能領域を超えて塗料を吐出する場合、上述した息継ぎやスピットなどの塗装不良が生じてしまう。
【0012】
また、特許文献2の吐出装置では、ノズルの口径を可変するために圧電素子が設けられているが、回転霧化式塗装機においては、その圧電素子を用いることが困難である。具体的には、回転霧化式塗装機31は、エアモータ36により回転霧化頭35を回転させる構成であるため、フィードチューブ33の開口34の周囲には圧電素子などのアクチュエータを設けるスペースを確保することができない。さらに、回転霧化式塗装機31では、回転霧化頭35に高電圧を加え、その回転霧化頭35で霧化された塗料粒子を帯電させた状態で噴霧(静電塗装)している。従って、回転霧化式塗装機31において、電気的に作動する圧電素子などのアクチュエータを用いると、高電圧が加わることによってそのアクチュエータが誤動作してしまう。
【0013】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗料の吐出可能領域を拡げ、効率よく塗装することができる回転霧化式塗装機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、筒状の塗装機本体と、前記塗装機本体内に設けられたエアモータにより回転される中空の筒部と、その筒部の先端に設けられた回転霧化頭と、前記筒部内においてその軸線方向に延設され、前記回転霧化頭に塗料及び洗浄剤を選択的に供給する共通の供給経路が形成された金属製のフィードチューブとを備えた回転霧化式塗装機であって、前記フィードチューブの先端には、前記回転霧化頭に向けて前記塗料を吐出する開口を有する弾性素材製のノズル部材が設けられ、前記ノズル部材における前記開口は、前記塗料の供給圧力の高低を問わず常時開放状態を維持するとともに、前記開口の断面積は、前記塗料の供給圧力に応じて可変であることを特徴とする回転霧化式塗装機をその要旨とする。
【0015】
手段1に記載の発明によると、フィードチューブには、塗料及び洗浄剤を選択的に供給する共通の供給経路が形成され、その先端に、弾性素材製のノズル部材が設けられている。そして、ノズル部材における開口は、常時開放状態を維持するとともに、その断面積が塗料の供給圧力に応じて可変する。具体的には、ノズル部材は、塗料の供給圧力が低い場合(小吐出量の場合)には開口の断面積が小さくなり、塗料の供給圧力が大きい場合(大吐出量の場合)には開口の断面積が大きくなる。このようなノズル部材を設けると、塗料の吐出量に応じて開口の断面積が変動することで、ノズル部材から吐出する塗料の流速を適度な流速に保つことができ、小吐出量から大吐出量の塗料を安定して回転霧化頭に供給することができる。従って、本発明の回転霧化式塗装機を用いれば、従来技術と比較して下限側や上限側の吐出可能領域を拡げた場合でも、塗装不良(息継ぎやスピット等)を回避することができ、均一で高品質の塗装を行うことができる。
【0016】
手段2に記載の発明は、手段1において、前記ノズル部材における前記開口は、前記塗料及び前記洗浄剤の非吐出時において前記フィードチューブにおける前記供給経路の先端部内径よりも小径となるように設定されていることをその要旨とする。
【0017】
手段2に記載の発明によると、塗料及び洗浄剤の非吐出時おいて、ノズル部材における開口はフィードチューブにおける供給経路の先端部内径よりも小径であるため、塗料の吐出時にはノズル部材の開口に塗料の供給圧力が加わり易くなる。このため、塗料の供給圧力に応じてノズル部材の開口を容易に変形させることができる。そして、ノズル部材の開口の断面積が変わることで、塗料を安定して回転霧化頭に供給することができる。
【0018】
手段3に記載の発明は、手段1または2において、前記ノズル部材は、先端側に行くに従って先細りした形状であり、前記開口は、前記塗料の供給圧力が高くなるほど拡径することをその要旨とする。
【0019】
手段3に記載の発明によると、ノズル部材は、先端側に行くに従って先細りした形状であるため、塗料の吐出時において、ノズル部材の開口には塗料の供給圧力が加わり易くなる。このため、塗料の供給圧力が高くなるほどその開口を拡径させることができ、大吐出量の塗料を回転霧化頭に安定して供給することができる。
【0020】
手段4に記載の発明は、手段1乃至3のいずれかにおいて、前記ノズル部材における先端側の壁厚は、基端側の壁厚よりも薄いことをその要旨とする。
【0021】
手段4に記載の発明によると、ノズル部材において先端側の壁厚が薄いため、その先端に設けられた開口を塗料の供給圧力に応じて確実に変形させることができ、小吐出量から大吐出量の塗料を安定して回転霧化頭に供給することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように、手段1乃至4のいずれかに記載の発明によると、塗料の吐出可能領域を拡げることができ、効率よく塗装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施の形態の回転霧化式塗装機を示す側面図。
【
図2】一実施の形態の回転霧化式塗装機を示す要部断面図。
【
図4】吐出量が少ない状態でのノズル部材を示す断面図。
【
図5】吐出量が多い状態でのノズル部材を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0025】
図1に示されるように、本実施の形態の回転霧化式塗装機1は、例えば自動車ボディの塗装を行うための静電塗装機であり、ロボットアーム2の先端に装着されている。そして、図示しない制御装置がロボットアーム2を駆動制御することにより、回転霧化式塗装機1から噴霧される塗料の吹き付け方向や位置が変更される。
【0026】
図2に示されるように、回転霧化式塗装機1は、筒状の塗装機本体11と、塗装機本体11内に設けられたエアモータ12により回転される中空の筒部13と、筒部13の先端に設けられた回転霧化頭14(ベルカップ)と、筒部13内においてその軸線方向に延設される金属製のフィードチューブ15とを備える。筒部13は、円筒形状に形成されており、筒部13内において、その内面に接触しないようにフィードチューブ15が配置されている。
【0027】
フィードチューブ15には、回転霧化頭14に塗料及び洗浄剤を選択的に供給する共通の供給経路16が形成されている。このフィードチューブ15は、その基端側に塗料供給装置17が接続されている。塗料供給装置17は、塗装機本体11においてエアモータ12の後側に収納されている。塗料供給装置17は、図示しない制御装置の制御信号に基づいて、所定量の塗料や洗浄剤をフィードチューブ15の供給経路16に吐出するよう構成されている。具体的には、塗料供給装置17は、供給する塗料を異なる色の塗料に切り換えたり塗料から洗浄剤に切り換えたりするバルブや配管等を備えている。また、塗料供給装置17は、塗料や洗浄剤の吐出量を調整するためのポンプ等を備える。さらに、塗装機本体11には、回転霧化頭14に印加するための高電圧(例えば、−90kV)を発生する電圧印加手段としての高電圧発生器(図示略)が設けられている。この高電圧発生器によって回転霧化頭14に高電圧が印加され、回転霧化頭14で霧化された塗料粒子が帯電された状態で噴霧されるようになっている。
【0028】
本実施の形態において、フィードチューブ15の先端には、弾性素材製(例えば、フッ素系樹脂製)のノズル部材20が設けられている。
図2及び
図3に示されるように、ノズル部材20は、基端部がフィードチューブ15に固定されており、先端部には塗料を吐出する開口21を有している。なお、本実施の形態においてノズル部材20は円筒状に形成されており、開口21は円形状に形成されている。ノズル部材20は、開口21が回転霧化頭14の中心部にあるセンターコーン部23(
図2参照)に対向するよう配置され、開口21からセンターコーン部23に向けて塗料を吐出する。また、回転霧化頭14において、ノズル部材20の開口21と対向するセンターコーン部23には、セルフクリーニング穴24が形成されている。
【0029】
ノズル部材20における開口21は、塗料の供給圧力の高低を問わず常時開放状態を維持するとともに、開口21の断面積は、塗料の供給圧力に応じて可変である。より詳しくは、
図3に示されるように、ノズル部材20における開口21の径D1は、塗料及び洗浄剤の非吐出時においてフィードチューブ15における供給経路16の先端部内径D2よりも小径となっている。また、ノズル部材20は、先端側に行くに従って先細りした形状であり、その先端側に設けられた開口21は、塗料の供給圧力が高くなるほど拡径する。さらに、ノズル部材20は、先端側の壁厚が基端側の壁厚よりも薄く形成されている。
【0030】
このように、ノズル部材20は、塗料の供給圧力に応じて開口21の断面積が可変するよう形成されている。このため、ノズル部材20における開口21を介して吐出可能な塗料の吐出量(吐出可能領域)は、80cc/min以上1000cc/min以下となり、従来の塗装機31の吐出可能領域(150cc/min〜600cc/min)よりも広く設定されている。本実施の形態において、塗料の供給圧力が最高値(塗料の吐出量が1000cc/min)となる状態でのノズル部材20における開口21の径は、塗料の非供給状態でのノズル部材20における開口21の径の1.5倍以上となっている。
【0031】
次に、本実施の形態の回転霧化式塗装機1の作用について説明する。
【0032】
先ず、回転霧化式塗装機1を用いて自動車ボディにおけるピラーなどの塗装領域が狭い場所の塗装を行う場合、塗料供給装置17からフィードチューブ15に供給される塗料の供給量が、例えば80cc/minに設定される。この場合、塗料W1の供給圧力が低くなるため、ノズル部材20における開口21は最も縮径した状態となる(
図4参照)。従って、ノズル部材20の開口21から吐出される塗料W1の流速が所定の速度以上に確保され、回転霧化頭14のセンターコーン部23に確実に供給される。この結果、回転霧化頭14において、塗料W1が均一に展延されて霧化される。そして、霧化された塗料W1が回転霧化頭14から均一に噴霧されることで、自動車ボディにおいて塗装領域の狭い場所がムラがなく均一に塗装される。
【0033】
一方、回転霧化式塗装機1を用いて自動車ボディにおけるボンネットなどの塗装領域が広い場所の塗装を行う場合、塗料供給装置17からフィードチューブ15に供給される塗料W1の供給量が、例えば1000cc/minに設定される。この場合、塗料W1の供給圧力が高くなるため、ノズル部材20における開口21は最も拡径した状態となる(
図5参照)。従って、ノズル部材20の開口21から吐出される塗料W1の流速が所定の速度以下に抑えられ、回転霧化頭14のセンターコーン部23に供給される。ここで、塗料W1の流速が適度に抑えられるため、塗料W1はセルフクリーニング穴24を通過することなく回転霧化頭14において確実に霧化される。そして、霧化された塗料W1が回転霧化頭14から均一に噴霧されることで、自動車ボディにおいて塗装領域の広い場所が効率よく均一に塗装される。
【0034】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0035】
(1)本実施の形態の回転霧化式塗装機1では、フィードチューブ15の先端に弾性素材製のノズル部材20が設けられ、ノズル部材20における開口21の径D1(断面積)が塗料W1の供給圧力に応じて変化する。このようにすると、塗料W1の吐出量が変化した場合でも、ノズル部材20の開口21から吐出する塗料の流速を適度な流速に保つことができ、小吐出量から大吐出量の塗料W1を安定して回転霧化頭14に供給することができる。従って、本実施の形態の回転霧化式塗装機1を用いれば、従来技術と比較して吐出可能領域を拡げることができ、塗装不良(息継ぎやスピット等)のない均一で高品質の塗装を行うことができる。
【0036】
(2)本実施の形態の回転霧化式塗装機1では、塗料W1及び洗浄剤の非吐出時おいて、ノズル部材20における開口21の径D1は、フィードチューブ15における供給経路16の先端部内径D2よりも小径となっている。このため、塗料W1の吐出時にはノズル部材20の開口21に塗料W1の供給圧力が加わり易くなり、塗料W1の供給圧力に応じてノズル部材20の開口21を容易に変形させることができる。そして、塗料W1の供給圧力に応じてノズル部材20の開口21の径D1(断面積)が変わることにより、塗料W1を安定して回転霧化頭14に供給することができる。
【0037】
(3)本実施の形態の回転霧化式塗装機1において、ノズル部材20は、先端側に行くに従って先細りした形状であるため、塗料W1の吐出時において、ノズル部材20の開口21には塗料W1の供給圧力が加わり易くなる。このため、塗料W1の供給圧力が高くなるほどその開口21を拡径させることができ、大吐出量の塗料W1を回転霧化頭14に安定して供給することができる。
【0038】
(4)本実施の形態の回転霧化式塗装機1において、ノズル部材20における先端側の壁厚は、基端側の壁厚よりも薄く形成されている。この場合、塗料W1の供給圧力に応じてノズル部材20の開口21を確実に変形させることができ、小吐出量から大吐出量の塗料W1を安定して回転霧化頭14に供給することができる。
【0039】
(5)本実施の形態の回転霧化式塗装機1において、ノズル部材20は、耐溶剤性に優れたフッ素系樹脂からなるので、長期間にわたって塗料W1や洗浄剤を確実に吐出することができる。
【0040】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0041】
・上記実施の形態の回転霧化式塗装機1では、円形状の開口21を有する円筒状のノズル部材20を用いたが、これに限定されるものではない。弾性素材を用いて形成されるノズル部材20であって、塗料W1の供給圧力に応じて開口21の断面積が可変するものであれば、その形状は適宜変更してもよい。具体的には、例えば、三角形状や四角形状などの多角形状の開口21を有し、その開口21の形状に応じた多角筒状のノズル部材20を用いてもよい。また、ノズル部材20の開口21は、塗料W1の非吐出時及び小吐出時の形状と大吐出時の形状とで異なっていてもよい。例えば、塗料W1の非吐出時及び小吐出時では細長いスリット形状の開口21とし、大吐出時には幅を広くした形状(四角形状や円形状)の開口21に変形させるものでもよい。なおこの場合、塗料W1の供給圧力が最高値となる状態でのノズル部材20の開口21の断面積は、塗料W1の非供給状態での開口21の断面積の5倍以上であることが好ましい。このようなノズル部材20を用いることにより、小吐出量から大吐出量の塗料W1を安定して回転霧化頭14に供給することができる。
【0042】
・上記実施の形態の回転霧化式塗装機1では、ノズル部材20における開口21を介して吐出可能な塗料W1の吐出量(吐出可能領域)は、80cc/min以上1000cc/min以下であったが、これに限定されるものではない。塗装部品のサイズや形状に応じた適切な吐出量となるよう、ノズル部材20の形状や開口21のサイズなどを適宜変更してもよい。
【0043】
・上記実施の形態の回転霧化式塗装機1は、自動車ボディを塗装するものであったが、バンパーなどの自動車部品やそれ以外の部品を塗装してもよい。
【0044】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0045】
(1)手段1乃至4のいずれかにおいて、前記弾性素材がフッ素系樹脂であることを特徴とする回転霧化式塗装機。
【0046】
(2)手段1乃至4のいずれかにおいて、前記塗料の供給圧力が最高値となる状態での前記ノズル部材における前記開口の断面積は、前記塗料の非供給状態での前記ノズル部材における前記開口の断面積の5倍以上であることを特徴とする回転霧化式塗装機。
【0047】
(3)手段1乃至4のいずれかにおいて、前記塗料の供給圧力が最高値となる状態での前記ノズル部材における前記開口の径は、前記塗料の非供給状態での前記ノズル部材における前記開口の径の1.5倍以上であることを特徴とする回転霧化式塗装機。
【0048】
(4)手段1乃至4のいずれかにおいて、前記ノズル部材における前記開口を介して吐出可能な前記塗料の吐出量は、80cc/min以上1000cc/min以下であることを特徴とする回転霧化式塗装機。
【0049】
(5)手段1乃至4のいずれかにおいて、前記回転霧化頭に高電圧を印加する電圧印加手段を備え、前記回転霧化頭で霧化された塗料粒子が帯電された状態で噴霧されることを特徴とする回転霧化式塗装機。
【符号の説明】
【0050】
1…回転霧化式塗装機
11…塗装機本体
12…エアモータ
13…筒部
14…回転霧化頭
15…フィードチューブ
16…供給経路
20…ノズル部材
21…開口
W1…塗料