特許第5981314号(P5981314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5981314-半導体素子のためのボンディングワイヤ 図000013
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981314
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】半導体素子のためのボンディングワイヤ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   H01L21/60 301F
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-248968(P2012-248968)
(22)【出願日】2012年11月13日
(65)【公開番号】特開2013-110410(P2013-110410A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2013年1月21日
【審判番号】不服2015-905(P2015-905/J1)
【審判請求日】2015年1月16日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0121882
(32)【優先日】2011年11月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511213476
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チュン ユン−キュン
(72)【発明者】
【氏名】リュ ジェ−スン
(72)【発明者】
【氏名】タルク ヨン−ドク
【合議体】
【審判長】 河口 雅英
【審判官】 加藤 浩一
【審判官】 鈴木 匡明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−288962(JP,A)
【文献】 特開2007−142271(JP,A)
【文献】 特開昭64−87736(JP,A)
【文献】 特開2010−278474(JP,A)
【文献】 特開2010−167490(JP,A)
【文献】 特開2010−171378(JP,A)
【文献】 特開昭62−10231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/60
C22C5/06
H01L33/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01wt%〜1.00wt%にて亜鉛(Zn)、およびスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
0.03wt%〜10wt%にて銅(Cu)、金(Au)、およびパラジウム(Pd)からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含み、
残りが銀(Ag)および他の不可避の不純物からなる(ただし、亜鉛(Zn)および銅(Cu)を含み、残りが銀(Ag)および不可避の不純物からなる銀(Ag)合金を除き、0.05wt%のスズ(Sn)および0.5wt%の金(Au)を含み、残りが銀(Ag)および不可避の不純物からなる銀(Ag)合金を除く)、半導体素子のためのボンディングワイヤ。
【請求項2】
0.01wt%〜1.00wt%にて亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、およびニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
0.03wt%〜10wt%にて銅(Cu)、金(Au)、およびパラジウム(Pd)からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含み、
0.001wt%〜0.05wt%にてカルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、およびイットリウム(Y)からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含む、残りが銀(Ag)および他の不可避の不純物からなる、半導体素子のためのボンディングワイヤ。
【請求項3】
LEDチップ、前記LEDチップに電力を供給するためのリードフレーム、および前記LEDチップと前記リードフレームを接続するためのボンディングワイヤを含む、発光ダイオード(LED)パッケージであって、前記ボンディングワイヤは、請求項1または2に係る半導体素子のためのボンディングワイヤである、発光ダイオード(LED)パッケージ。
【請求項4】
0.01wt%〜1.00wt%にて亜鉛(Zn)、およびスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、さらに、0.03wt%〜10wt%にて銅(Cu)、金(Au)、およびパラジウム(Pd)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、残りが銀(Ag)および他の不可避の不純物からなる(ただし、亜鉛(Zn)および銅(Cu)を含み、残りが銀(Ag)および不可避の不純物からなる銀(Ag)合金を除き、0.05wt%のスズ(Sn)および0.5wt%の金(Au)を含み、残りが銀(Ag)および不可避の不純物からなる銀(Ag)合金を除く)、銀(Ag)合金を、モールドに注入し、前記銀(Ag)合金を融解する工程と、
融解した前記銀(Ag)合金を連続鋳造する工程と、
連続鋳造した前記銀(Ag)合金を引き抜く工程と、
を含む、半導体素子のための結合ワイヤを製造する方法。
【請求項5】
0.01wt%〜1.00wt%にて亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、およびニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、さらに、0.03wt%〜10wt%にて銅(Cu)、金(Au)、およびパラジウム(Pd)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、さらに、0.001wt%〜0.05wt%にて、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、およびイットリウム(Y)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、残りが銀(Ag)および他の不可避の不純物からなる、銀(Ag)合金を、モールドに注入し、前記銀(Ag)合金を融解する工程と、
融解した前記銀(Ag)合金を連続鋳造する工程と、
連続鋳造した前記銀(Ag)合金を引き抜く工程と、
を含む、半導体素子のための結合ワイヤを製造する方法。
【請求項6】
引き抜いた前記銀(Ag)合金の軟化熱処理を実施する工程をさらに含む、請求項4または5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディングワイヤ、より具体的には、半導体素子のためのボンディングワイヤ、および銀(Ag)が主成分として使用される、該ボンディングワイヤを用いる発光ダイオード(LED)パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
ボンディングワイヤは、ICチップまたはLEDチップおよび一般に金(Au)で製造されるリードフレームを電気接続するための金属線である。近年の世界の金(Au)の価格の急激な増加により、ボンディングワイヤを製造するコストを減少させるために、銅(Cu)ワイヤまたはボンディングワイヤのためにパラジウム(Pd)がコーティングされた銅(Cu)ワイヤを使用する試みがなされている。一部の製造業社は銅(Cu)ワイヤを大量生産しているが、銅(Cu)の特徴は金(Au)のものと等しくないため、継続された研究が金(Au)に基づいた合金ワイヤで行われている。
【0003】
金(Au)に基づいた合金ワイヤとして金(Au)−銀(Ag)合金ワイヤに関する研究が行われている。金(Au)−銀(Ag)合金ワイヤは、銀(Ag)(すなわち合金元素)が優れた電気伝導性を有し、金(Au)が完全な固溶体を形成するため、コストが減少できるという利点を有する。しかしながら、多量の金(Au)が金(Au)−銀(Ag)合金ワイヤに含まれるため、コストの減少に限界がある。さらに、銅ワイヤおよびパラジウム(Pd)でコーティングされた銅ワイヤは、反射性、すなわち、LEDの最も重要な機能が悪化するため、LEDパッケージにおいて使用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、コストを減少させる効果を有しながら、優れた信頼性および反射性の特性を有する新規の材料から作製されるボンディングワイヤを開発するための緊急の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、半導体素子のためのボンディングワイヤおよび銀(Ag)が主成分として使用される、該ボンディングワイヤを用いるLEDパッケージを提供することを目的とし、信頼性があり、従来の金(Au)合金ワイヤと取り替えることができる合金ボンディングワイヤを提供する利点を有する。本発明の別の実施形態は、銀(Ag)合金ボンディングワイヤが銀(Ag)合金ワイヤに特有の表面変色を防止でき、製造時に高いショート比が適用される、LEDパッケージを提供する。
【0006】
本発明の例示的な実施形態は、5ppm〜10wt%にて亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、およびニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、残りが銀(Ag)および他の不可避の不純物を含む、半導体素子のためのボンディングワイヤを提供する。
【0007】
ボンディングワイヤはさらに、0.03wt%〜10wt%にて銅(Cu)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、金(Au)、およびパラジウム(Pd)からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0008】
ボンディングワイヤはさらに、3ppm〜5wt%にてベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、およびイットリウム(Y)からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0009】
本発明の別の例示的な実施形態に係る発光ダイオード(LED)パッケージは、LEDチップ、電力をLEDチップに供給するためのリードフレーム、およびLEDチップとリードフレームを結合するためのボンディングワイヤを含み、ここで、そのボンディングワイヤは半導体素子のためのボンディングワイヤである。
【0010】
本発明の別の例示的な実施形態に係る半導体素子のためのボンディングワイヤを製造する方法は、以下の工程を含む:5ppm〜10wt%にて亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、およびニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、残りが銀(Ag)および他の不可避の不純物を含む、銀(Ag)合金をモールドに注入し、銀(Ag)合金を融解する工程;融解した銀(Ag)合金を連続鋳造する工程;および連続鋳造した銀(Ag)合金を引き抜く工程。
【0011】
半導体素子のためのボンディングワイヤを製造する方法において、銀(Ag)合金はさらに、0.03wt%〜10wt%にて銅(Cu)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、金(Au)、およびパラジウム(Pd)からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0012】
半導体素子のためのボンディングワイヤを製造する方法において、銀(Ag)合金はさらに、3ppm〜5wt%にてベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、およびイットリウム(Y)からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0013】
半導体素子のためのボンディングワイヤを製造する方法はさらに、引き抜かれた銀(Ag)合金に対して軟化熱処理を実施する工程を含んでもよい。上記のような本発明の半導体素子のためのボンディングワイヤによれば、主成分として金(Au)より安い銀(Ag)を使用する銀(Ag)合金ボンディングワイヤは、高生産生を提供でき、表面変色を防ぎ、銀(Ag)に合金元素を付加することにより優れた信頼性および機械特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の例示的な実施形態に係る銀(Ag)合金ボンディングワイヤが適用されるLEDパッケージの構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明およびそれを達成するための方法の利点および特徴は、添付の図面と共に以下の実施形態から明らかとなるだろう。しかしながら、本発明は、開示される実施形態に限定されず、種々の方法で実施されてもよい。実施形態は、本発明の開示を完全にし、当業者が本発明の範囲を完全に理解できるように提供されている。本発明は特許請求の範囲により規定される。図面全体にわたって使用される同じ参照番号は同じまたは同様の部分を指す。
【0016】
本発明の例示的な実施形態に係る半導体素子のためのボンディングワイヤを添付の図面を参照して以下に詳細に記載する。参照のために、本発明を説明する際に、本発明の要旨を不必要に曖昧にしてしまう恐れがある場合、既知の機能および構造の詳細な説明は省略する。
【0017】
本発明の例示的な実施形態に係る半導体素子のためのボンディングワイヤは、5ppm〜10wt%にて亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、およびニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、残りが銀(Ag)および他の不可避の不純物を含む。
【0018】
半導体素子のためのボンディングワイヤはさらに、0.03wt%〜10wt%にて銅(Cu)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、金(Au)およびパラジウム(Pd)からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0019】
半導体素子のためのボンディングワイヤはさらに、3ppm〜5wt%にてベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、およびイットリウム(Y)からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。銀(Ag)は、本発明に係るボンディングワイヤを形成する基礎材料であり、99.99wt%(4−9グレード)またはそれ以上の純度を有し得る。銀(Ag)は、優れた電気伝導性および面心立法(FCC)構造を有する。銀(Ag)は、従来のボンディングワイヤで一般に使用されている金(Au)と取り替えることができるので、ボンディングワイヤが製造される場合のコスト削減効果があり得る。
【0020】
本発明による主成分として銀(Ag)を用いるボンディングワイヤの合金原子の合金比および原子の特性は以下の通りである:
第1群の原子
第1群の原子は、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)およびニッケル(Ni)を含む。半導体素子において、銀(Ag)ボンディングワイヤまたは銀(Ag)合金ボンディングワイヤは、半導体チップのパッドに接続される。結合時において、銀(Ag)ボンディングワイヤまたは銀(Ag)合金ボンディングワイヤは、外部環境の影響により容易に変色し得る。本発明に係る第1群の原子は表面変色を防止する機能を有する。
【0021】
種々の実験により、第1群の原子が5ppm未満で含まれる場合、第1群の原子は、表面変色、低い引き抜き性、および低い信頼性を有し、第1群の原子が0.01〜10wt%にて含まれる場合、表面変色を有さず、優れた引き抜き性および信頼性を有することが示されている。従って、第1の元素の適切な含有量は5ppm〜10wt%である。
【0022】
第2群の原子
第2群の原子は、銅(Cu)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、金(Au)、およびパラジウムを含む。第2群の原子は、室温および高温にて引っ張り強度を増加させ、ループが形成された後のたるみまたは傾斜などのループ形状の屈曲または変形を抑制するように機能する。さらに、第2群の原子は、引き抜き性を増加させるために機能するので、生産生を向上させる。超低ループが形成される場合、第2群の原子は、ボールネック部分にて降伏力を上げることによって引っ張り強度を増加させるように機能する。従って、ボールネック部分の損傷が減少または取り除かれるという効果が存在する。特に、ボンディングワイヤは小さな直径を有するが、ボールネックの損傷が抑制され得る。
【0023】
銅(Cu)は、銀(Ag)と同じFCC結晶構造を有し、室温および高温強度、特に剪断強度を改良し、再結晶構造を改質する機能をする。
【0024】
さらに、銅(Cu)は、ロジウム(Rh)およびパラジウム(Pd)より高温および高湿度にてより高い信頼性を有し、少量の銅(Cu)はロジウム(Rh)およびパラジウム(Pd)の効果を改良し得る。しかしながら、多量の銅(Cu)が加えられる場合、酸化の問題が生じ、ボンディングワイヤが強力になるため、パッドが損傷する。
【0025】
ボンディングワイヤの信頼性およびMTBAを改良するためにロジウム(Rh)およびパラジウム(Pd)が加えられる。多量のロジウム(Rh)およびパラジウム(Pd)が加えられる場合、抵抗が増加し得、ボンディングワイヤが強力になり、MTBAが短くなり得るため、パッドが損傷し得る。
【0026】
銀(Ag)と共に白金(Pt)は、完全な固溶体を形成し、圧縮ボールおよびアルミニウムパッドの接着強度の劣化を抑制し得る。
【0027】
第2群の原子が0.03wt%未満で加えられる場合、効果はない。第2群の原子が10wt%超で加えられる場合、フリーエアボールが形成されるくぼみ現象が生じ、完全な球体を形成することが困難になる。従って、第2群の原子の適切な含有量は0.03wt%〜10wt%である。
【0028】
第3群の原子
第3群の原子は、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)およびイットリウム(Y)を含む。第3群の原子は、銀(Ag)に対して均一に分配され、そこに固体が溶解され、格子においてストレスの相互作用を生じるので、室温における強度を改善する。従って、第3群の原子は、ボンディングワイヤの引っ張り強度を改良するように機能し、ループ形状を安定させ、ループ高さの偏向を減少させるのに優れた効果を有する。
【0029】
ベリリウム(Be)およびカルシウム(Ca)は、改良された固溶体により銀(Ag)結晶格子を変形させる。従って、ベリリウム(Be)およびカルシウム(Ca)は、ボンディングワイヤの機械的強度を増加させ、ボンディングワイヤの再結晶温度を低下させ、ループの高さを増加させ得る。
【0030】
第3群の原子が3ppm未満で加えられる場合、上記の効果を得ることは難しい。第3群の原子が5wt%を超えて加えられる場合、引っ張り強度が減少するため、破損がボールネック部分で起こり得る危険性がある。従って、第3群の原子の適切な含有量は3ppm〜5wt%である。
【0031】
本発明に係る半導体素子のためのボンディングワイヤは、銀(Ag)および合金元素に加えて不可避の不純物を含み得る。しかしながら、不純物は本発明の範囲を限定しない。
【0032】
本発明の別の例示的な実施形態に係るLEDパッケージは、第1群の原子から第3群の原子を含むボンディングワイヤを用いて製造され得る。すなわち、本発明にかかるLEDパッケージ100は、LEDチップ10、LEDチップに電源を供給するためのリードフレーム20、およびLEDチップ10とリードフレーム20を結合するためのボンディングワイヤ50を含む。
【0033】
より具体的には、図1を参照すると、本発明に係るLEDパッケージ100は、リードフレーム20およびリードフレーム20に形成されるキャビティ30の底部に取り付けられるLEDチップ10を含む。電極40およびLEDチップ10の上面上の電極パッドはボンディングワイヤ50により結合される。蛍光物質60がキャビティ30の内側にコーティングされ、LEDパッケージ100を完成させるために硬化される。
【0034】
本発明に係る主成分として銀(Ag)を用いる銀(Ag)合金ボンディングワイヤはボンディングワイヤ50として使用される。本発明の別の例示的な実施形態に係る半導体素子のためのボンディングワイヤを製造する方法は、5ppm〜10wt%にて亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、およびニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、残りが銀(Ag)および他の不可避の不純物を含む、銀(Ag)合金をモールドに注入し、銀(Ag)合金を融解する工程と、溶解した銀(Ag)合金を連続鋳造する工程と、次いで連続鋳造した銀(Ag)合金を引き抜く工程とを含む。
【0035】
銀(Ag)合金はさらに、0.03wt%〜10wt%にて銅(Cu)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、金(Au)、およびパラジウム(Pd)からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0036】
銀(Ag)合金はさらに、3ppm〜5wt%にてベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、およびイットリウム(Y)からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0037】
半導体素子のためのボンディングワイヤを製造する方法はさらに、引き抜かれた銀(Ag)合金に対して軟化熱処理を実施する工程を含む。本発明を、本発明に係るボンディングワイヤを製造する方法および製造したボンディングワイヤの物理特性の評価結果を参照してより詳細に記載する。
【0038】
<銀(Ag)合金ボンディングワイヤを製造する方法>
0.01wt%にて亜鉛(Zn)(すなわち、第1群の原子)、0.5wt%にて金(Au)(すなわち、第2群の原子)、0.5wt%にてパラジウム(Pd)(すなわち、第2群の原子)、0.005wt%にてカルシウム(Ca)(すなわち、第3群の原子)を含み、残りが銀(Ag)および他の不可避の不純物を含む、銀(Au)合金をモールドに注入し、次いで溶解した。
【0039】
溶解した銀(Ag)合金を連続鋳造し、引き抜き、次いで引き抜きにより硬化されたボンディングワイヤを軟化させるために軟化熱処理に供した。本発明におけるボンディングワイヤの信頼性を評価するために使用した圧力チャンバ試験において、チャンバ条件は、85℃の温度、2気圧の圧力、85%の相対湿度、および504時間以上で5Vを含んだ。この条件において、ボンディングワイヤ材料を維持した後、次いでボール引き抜き試験(BPT)を実施することにより評価した。BPTの時間において、持ち上げを決定するための基準は、破損がボールネックにおいて生じないことであり、ボール接着部分をパッドから持ち上げた。
【0040】
試験の結果として、ボール持ち上げ率が0%である場合、優れていると評価した。ボール持ち上げ率が0%より高く2%未満である場合、良好と評価し、ボール持ち上げ率が2%より高く5%未満である場合、平均と評価し、ボール持ち上げ率が5%より高い場合、不良と評価した。
【0041】
表1は、本発明に係るボンディングワイヤの成分の含有量を示す。以下の表1において、No.1〜No.71は、本発明に従って製造したボンディングワイヤの実験例を示し、各ボンディングワイヤの成分の含有量を表に示す。各成分の含有量の単位は重量パーセントであり、銀(Ag)の含有量は残りのバランス(Bal)を示す。
【0042】
【表1-1】
【0043】
【表1-2】
【0044】
【表1-3】
【0045】
【表1-4】
【0046】
【表1-5】
【0047】
【表1-6】
【0048】
【表1-7】
【0049】
表1において、実験の実施例1〜8は、亜鉛(Zn)(すなわち第1の群の原子)含有量を変化させることによって製造されたボンディングワイヤを示し、実験の実施例9〜16は、スズ(Sn)(すなわち、第1の群の原子)含有量を変化させることによって製造されたボンディングワイヤを示し、実験の実施例17〜24は、ニッケル(Ni)を変化させることによって製造されたボンディングワイヤを示す。
【0050】
さらに、実験の実施例25〜31は、銅(Cu)(すなわち、第2の群の原子)含有量を変化させることによって製造されたボンディングワイヤを示し、実験の実施例32および33は、白金(Pt)(すなわち、第2の群の原子)含有量を変化させることによって製造されたボンディングワイヤを示し、実験の実施例34および35は、ロジウム(Rh)およびオスミウム(Os)(すなわち、第2の群の原子)をそれぞれ加えることによって製造されたボンディングワイヤを示し、実験の実施例36〜38は、金(Au)(すなわち、第2の群の原子)含有量を変化させることによって製造されたボンディングワイヤを示し、実験の実施例39〜45は、パラジウム(Pd)(すなわち、第2の群の原子)含有量を変化させることによって製造されたボンディングワイヤを示す。
【0051】
実験の実施例46は、ベリリウム(Be)(すなわち、第3の群の原子)を加えることによって製造されたボンディングワイヤを示し、実験の実施例47〜50は、カルシウム(Ca)(すなわち、第3の群の原子)含有量を変化させることによって製造されたボンディングワイヤを示し、実験の実施例51〜55は、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、およびイットリウム(Y)(すなわち、第3の群の原子)をそれぞれ加えることによって製造されたボンディングワイヤを示す。
【0052】
実験の実施例56〜60は、亜鉛(Zn)(すなわち、第1の群の原子)含有量および銅(Cu)(すなわち、第2の群の原子)含有量を変化させることによって製造されたボンディングワイヤを示し、実験の実施例61〜64は、スズ(Sn)(すなわち、第1の群の原子)含有量および金(Au)(すなわち、第2の群の原子)含有量を変化させることによって製造されたボンディングワイヤを示し、実験の実施例65〜68は、ニッケル(Ni)(すなわち、第1の群の原子)含有量およびパラジウム(Pd)(すなわち、第2の群の原子)含有量を変化させることによって製造されたボンディングワイヤを示す。
【0053】
実験の実施例69は、亜鉛(Zn)(すなわち、第1の群の原子)含有物、金(Au)およびパラジウム(Pd)(すなわち、第2の群の原子)ならびにカルシウム(Ca)(すなわち、第3の群の原子)を含むボンディングワイヤを示す。実験の実施例70は、ニッケル(Ni)(すなわち、第1の群の原子)、金(Au)およびパラジウム(Pd)(すなわち、第2の群の原子)、およびイットリウム(Y)(すなわち、第3の群の原子)を含むボンディングワイヤを示す。実験の実施例71は、スズ(Sn)(すなわち、第1の群の原子)、銅(Cu)、金(Au)、およびパラジウム(Pd)(すなわち、第2の群の原子)、およびセリウム(Ce)(すなわち、第3の群の原子)を含むボンディングワイヤを示す。
【0054】
以下の表2は、表1に示した本発明に係るボンディングワイヤの物理特性の評価結果を示す。
【0055】
【表2-1】
【0056】
【表2-2】
【0057】
【表2-3】
【0058】
【表2-4】
【0059】
表2において、表面変色は、ワイヤの反射性に基づいて測定した結果であり、◎は優れた状態を示し、○は良好な状態を示し、△は通常の状態を示し、×は悪い状態を示す。
【0060】
FABはフリーエアボールの略語である。ボールボンディングを実施するための円形のFABは、二次結合後にEFO放出を用いることによってキャピラリーチップにおけるワイヤテイルにて形成され得る。従って、形成されたFAB形状に関して、完全な球体が優れた状態により示される。形成される場合、FAB形状は完全な球体であるが、かなり優れた状態により示されるワイヤの中心からわずかに外れる。形成される場合、FAB形状は、完全な球体からわずかに外れ、ワイヤの中心は通常の状態により示される。傾斜している場合、ボール(ワイヤの中心から非常に外れたFAB)および結合はできず、形成されたFAB形状は悪い状態により示される。
【0061】
FAB形状特性はまた、表面変色のマークと同じ意味により示される。高湿度信頼性は、プレッシャークッカー試験(PCT)において接着強さ(BPT値)により示される。銀(Ag)合金ワイヤは30μmの直径を有し、PCTは約96時間、121℃にて実施した。接着強さの信頼性において、◎は優れた状態を示し、○はかなり優れた状態を示し、△は通常の状態を示し、×は悪い状態を示す。
【0062】
プロセス可能性は、銀(Ag)合金ワイヤの1kmあたりに切断したワイヤの数により測定した。プロセス可能性は、値の減少により良好な特徴を有する。寿命試験において、100nm厚の酸化層が銀(Ag)合金ワイヤに形成するのにかかる時間をデータにより示した。寿命試験は値の増加により良好な特徴を有する。表1から2から、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、およびニッケル(Ni)含有量(すなわち、第1の添加成分)は、実験の実施例1〜24において銀(Ag)合金ワイヤの表面変色に影響を及ぼすことが見られ得る。
【0063】
実験の実施例1〜24において、銀(Ag)合金ワイヤは、0.01〜10wt%の亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、およびニッケル(Ni)含有量において優れた表面変色、引き抜き性、および信頼性を有し、FAB形状特性は、5wt%またはそれより高い亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、およびニッケル(Ni)含有量で影響を及ぼすことが見られ得る。実験の実施例25〜31において、銅(Cu)含有量(すなわち、第2の群の成分)は、銀(Ag)合金ワイヤの表面変色に影響を及ぼすことが見られ得る。銅(Cu)含有量が1%未満である場合、銀(Ag)合金ワイヤの表面変色は優れた特徴を有する。銅(Cu)含有量が0.1%またはそれより高い場合、優れたプロセス可能性の特徴が示し始める。他方で、銀(Ag)合金ワイヤの信頼性およびFAB形状は悪影響を与えることが見られ得る。
【0064】
実験の実施例36〜45において、金(Au)およびパラジウム(Pd)含有量(すなわち、第2の群の成分)は信頼性に対して優れた効果を有し、パラジウム(Pd)含有量を有する銀(Ag)合金ワイヤの表面変色は、プロセス可能性に関して良好な特性を有することが見られ得る。実験の実施例51〜55において、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、およびイットリウム(Y)(すなわち、第3の群の成分)は、銀(Ag)合金ワイヤの接着強さおよび引き抜き特性を表わす。実験の実施例56〜60において、亜鉛(Zn)および銅(Cu)を含む合金の特性が知られ得る。接着強さは増加し、引き抜き特性は亜鉛(Zn)および銅(Cu)含有量の増加により良好になることが見られ得る。
【0065】
実験の実施例61〜64において、スズ(Sn)および金(Au)を含む合金の特徴が知られ得る。引き抜き特性はスズ(Sn)および金(Au)含有量の減少により優れ、接着強さおよび寿命時間はスズ(Sn)および金(Au)の増加により増加することが見られ得る。実験の実施例65〜68において、ニッケル(Ni)およびパラジウム(Pd)を含む合金の特性が知られ得る。強さは、ニッケル(Ni)およびパラジウム(Pd)含有量の増加により向上し、パラジウム(Pd)の引き抜き特性および強度は向上することが見られ得る。実験の実施例69〜71において、金(Au)およびパラジウム(Pd)を含む三元合金またはそれ以上から作製された銀(Ag)合金ワイヤの特性が知られ得る。金(Au)およびパラジウム(Pd)含有量が増加する場合、接着強さおよび引き抜き特性は優れるが、電気特性は減少する傾向がある。金(Au)およびパラジウム(Pd)が含まれる場合、信頼性は優れた特性であり、寿命期間が増加するという優れた特性が存在する。
【0066】
本発明は、本発明の例示的な実施形態に基づいて記載してきたが、本発明に関する当業者は、本発明が、本発明の技術的精神または本質的な特徴から逸脱せずに種々の方法で実施され得ることを理解するだろう。
【0067】
従って、上記の実施形態は例示であり、全ての態様から制限的ではないことが理解されるだろう。本発明の範囲は、詳細な説明よりむしろ添付の特許請求の範囲により規定され、本発明は、添付の特許請求の範囲の意味および範囲およびそれらの等価物から導かれる全ての修飾または変更を含むとみなされるべきである。
【符号の説明】
【0068】
10:LEDチップ
20:リードフレーム
30:キャビティ
40:電極
50:ボンディングワイヤ
60:蛍光物質
100:LEDパッケージ
図1