【実施例1】
【0018】
本発明の好適な一実施例である、沸騰水型原子力プラントに適用した実施例1の原子力プラントにおける核燃料物質取り出し方法を、
図2から
図8を用いて説明する。
【0019】
まず、本実施例の原子力プラントにおける核燃料物質取り出+し方法が適用される沸騰水型原子力プラントの概略構造を、
図1を用いて説明する。沸騰水型原子力プラントは、原子炉及び原子炉格納容器(以下、PCVという)9を備えている。PCV9は、原子炉建屋1内に設置されて、上端部に上蓋9Aが取り付けられて密封されている。PCV9は、内部に形成されたドライウェル10、及び冷却水13が充填された圧力抑制プールが内部に形成された環状の圧力抑制室12を有する。ドライウェル10に連絡されるベント通路の一端が、圧力抑制室12内の圧力抑制プールの冷却水13中に浸漬されている。圧力抑制室12は、原子炉建屋1内に形成された環状のトーラス室20内に配置される。
【0020】
原子炉は、上蓋3Aが取り付けられて構成される原子炉圧力容器(以下、RPVという)3、核燃料物質を含む複数の燃料集合体が装荷された炉心4、気水分離器(図示せず)及び蒸気乾燥器(図示せず)等を備えている。炉心4、気水分離器及び蒸気乾燥器はRPV3内に配置される。炉心4内に装荷された各燃料集合体は、下端部が炉心支持板6によって支持され、上端部が上部格子板5によって保持される。上部格子板5及び炉心支持板6はRPV3内に設置されている。気水分離器は上部格子板5よりも上方に配置され、蒸気乾燥器が気水分離器の上方に配置される。
【0021】
複数の制御棒案内管7が炉心支持板6の下方に配置されている。炉心4内の燃料集合体間に出し入れされて原子炉出力を制御する制御棒(図示せず)が、各制御棒案内管7内に配置されている。複数の制御棒駆動機構ハウジング8が、RPV3の下鏡に取り付けられている。制御棒駆動機構(図示せず)が、それぞれの制御棒駆動機構ハウジング8内に設置され、制御棒案内管7内の制御棒と連結されている。
【0022】
RPV3は、PCV9内の底部に設けられたコンクリートマット14上に設けられた円筒状のペデスタル15上に据え付けられている。内部空間11がペデスタル15内でRPV3の下方に形成されている。ペデスタル開口57が、ペデスタル15の側壁を貫通して形成され、ドライウェル10と内部空間11を連絡している。筒状のγ線遮蔽体16が、ペデスタル15の上端に設置され、RPV3を取り囲んでいる。複数の制御棒駆動機構ハウジング8が、RPV3の下鏡から内部空間11に向かって伸びている。グレーチング21が、ペデスタル開口57の位置でベデスタル15を取り囲んでPCV9とベデスタル15の間に設置される。
【0023】
原子炉建屋1の一部であるコンクリート製の筒状の生体遮へい体2が、PCV9の周囲を取り囲んでいる。運転床17が、原子炉建屋1内でPCV9の上方に形成される。燃料貯蔵プール18が運転床17に取り囲まれて形成されており、冷却水が燃料貯蔵プール18内に充填されている。炉心4から取り出された複数の使用済燃料集合体が、燃料貯蔵プール18内の冷却水中に保管されている。機器仮置きプール19も運転床17に取り囲まれて形成される。原子炉ウェル56が、燃料貯蔵プール18と機器仮置きプール19の間で、RPV3の上方に形成される。
【0024】
このような沸騰水型原子力プラントにおいて、原子炉がスクラムされて原子炉出力が低下した状態において、一時的に、沸騰水型原子力プラントの電流を供給する全部の電源が消失して非常用炉心冷却系が作動しなかった状態が生じたことを想定する。全部の電源が消失して非常用炉心冷却系のポンプ等が作動しなくなり、炉心4内の各燃料集合体内の冷却が損なわれた場合には、燃料集合体に含まれる核燃料物質が溶融し、溶融した核燃料物質がRPV3の底部に落下して更にPCV9の底部であるコンクリートマット14上に落下する可能性がある。
【0025】
万が一、このような溶融核燃料物質のRPV3の底部及びコンクリートマット14上への落下が生じた場合には、この溶融核燃料物質のPCV9外への取り出し、及び溶融核燃料物質の落下が生じた沸騰水型原子力プラントについては廃炉処理が実施される。
【0026】
本実施例は、核燃料物質の溶融が生じた、例えば、沸騰水型原子力プラントにおいて、RPV3の底部及びPCV9内でコンクリートマット14上に落下したその溶融核燃料物質をPCV9外へ取り出すものである。コンクリートマット14上に落下したその溶融核燃料物質は、ペデスタル15の内側及び外側に存在する。例えば、溶融核燃料物質23Aが炉心4に存在し、溶融核燃料物質23BがRPV3内の底部に落下している。さらに、溶融核燃料物質23C,23DがPCV9内でPCV9の底部、すなわち、コンクリートマット14上に落下している。溶融核燃料物質23Cがペデスタル15の内側に存在し、溶融核燃料物質23Dがペデスタル15の外側に存在する。溶融核燃料物質が存在する位置は、カメラ(例えば、CCDカメラ)を用いた調査により、事前に確認することができる。PCV9の底部に落下した溶融核燃料物質23C,23Dは、例えば、PCV9の外部からPCV9に設けられた配管貫通部を通してPCV9内の底部にCCDカメラを挿入することによって確認することができる。RPV3内の溶融核燃料物質は、後述の蒸気乾燥器及び気水分離器の除去(ステップS2)の後でカメラを用いて確認することができる。本実施例の原子力プラントにおける核燃料物質取り出し方法を、
図2から
図9を用いて以下に説明する。
【0027】
まず、原子炉建屋を覆うコンテナを設置する(ステップS1)。天井クレーン29が原子炉建屋1の上に設置され、天井クレーン29の一端部が地面に設置された支持部材により支持される。また、天井クレーン29の他端部はコンテナ28により支持される。横行台車35及び41が天井クレーン29に設けられる。コンテナ28が、原子炉建屋1及び天井クレーン29を覆って地面30に設置される(
図2参照)。
【0028】
PCV及びRPVの上蓋、蒸気乾燥器及び気水分離器を取り外す(ステップS2)。PCV9の上蓋9Aを取り外し、この上蓋9Aを横行台車41に設けられた第1巻き取り装置(図示せず)から延びるワイヤに取り付けられたフックに吊り下げる。ワイヤを第1巻き取り装置に巻き取ることによって上蓋9Aは上昇し、運転床17上の所定の位置に置かれる。RPV3から取り外された上蓋3Aが、そのフックに吊り下げられて第1巻き取り装置により引き上げられ、運転床17上の所定の位置に置かれる。RPV3内の蒸気乾燥器26及び気水分離器25が、順番に取り外されて冷却水が充填された機器仮置きプール19内に横行台車により搬送される(
図2参照)。
【0029】
水封入遮へい体をPCV内に充填する(ステップS3)。水封入遮へい体31のPCV9内への充填を
図2を用いて説明する。水封入遮へい体31は、耐圧性のゴムで作られた中空体の内部に放射線遮へい材である水を封入して構成されている。開閉可能な底が封鎖されて多数の水封入遮へい体31が充填されたバケット(図示せず)が、コンテナ28内で原子炉建屋1の外部の地面30上に置かれ、横行台車41から下がっているワイヤに設けられたフックに吊り下げられる。横行台車41の第1巻き取り装置にワイヤが巻き取られ、水封入遮へい体31が充填されたバケットが、運転床17よりも上方の位置まで引き上げられ、その後、横行台車41の移動によりPCV9の真上の位置まで搬送される。そのバケットの移動は、天井クレーン29に設けられた監視カメラ(図示せず)で撮影され、コンテナ28外の所定の位置に置かれたモニタ(図示せず)に表示される。そのバケットの側壁にもカメラが設置され、このカメラで撮影された映像も上記のモニタに表示される。水封入遮へい体31が充填されたバケットは、まず、RPV3の真上に位置され、上記の巻取り装置からワイヤを巻き戻すことにより、原子炉ウェル56内を下降し、さらにRPV3内を下降する。バケットがRPV3内の所定の高さまで下降したとき、バケットの底の開閉を操作するワイヤを引っ張ってその底を開放する(特開平10−220161号公報参照)。バケット内の水封入遮へい体31は、RPV3内の炉心4の上に堆積される。このようにして、水封入遮へい体31がRPV3内に充填される。バケットのRPV3内の下降は、バケットに取り付けられたカメラの映像により監視される。また、RPV3内における水封入遮へい体31の充填状況も、そのカメラの映像により監視される。バケットによるRPV3内への水封入遮へい体31の充填が繰り返され、RPV3内が水封入遮へい体31で満杯になったとき、RPV3内への水封入遮へい体31の充填作業が終了する。
【0030】
その後、水封入遮へい体31を充填したバケットがPCV9とRPV3の間の領域の真上まで移動されて停止される。上記の巻取り装置からワイヤを巻き戻すことにより、バケットが原子炉ウェル56内を下降し、さらにPCV9とRPV3の間の領域内を下降する。そのバケットが、例えば、PCV9内のグレーチング21付近まで下降したとき、バケットの底の開閉を操作するワイヤを引っ張ってその底を開放する。バケット内の水封入遮へい体31は、グレーチング21に向かって落下し、グレーチング21上に堆積される。バケットのグレーチング21付近までの下降は、バケットに取り付けられたカメラの映像を用いて判定される。
【0031】
空になったバケットは、横行台車41の巻取り装置によって運転床17まで引き上げられ、さらに、原子炉建屋1外でコンテナ28内の地面30上まで搬送される。空のバケットは横行台車のフックから取り外され、水封入遮へい体31が充填された別のバケットがそのフックに吊り下げられる。水封入遮へい体31を充填したこのバケットは、横行台車41により、前述したように、PCV9の上方まで移動され、PCV9とRPV3の間の領域内を下降される。所定の高さまで下降したとき、バケットの底が開放されて内部の水封入遮へい体31が落下する。このような作業を繰り返すことによって、多数の水封入遮へい体31がグレーチング21よりも上方でPCV9のドライウェル10内に充填される。やがて、水封入遮へい体31は、炉心4よりも上方でRPV3内に、さらに原子炉ウェル56内で運転床17の床面近くまで充填される。
【0032】
PCV9のドライウェル10内及び原子炉ウェル56内に充填された多数の水封入遮へい体31が、溶融核燃料物質23A〜23D等から放出される放射線を遮へいする。
【0033】
放射線遮へい作業台を設置する(ステップS4)。放射線遮へい作業台24が、原子炉建屋1外でコンテナ28内において天井クレーン29の横行台車41のフックに吊り下げられて原子炉ウェル56を覆って運転床に設置される(
図2参照)。放射線遮へい作業台24はリング状部材、回転テーブル及びスライド部材を有する。リング状部材、回転テーブル及びスライド部材は、鋼鉄製であり、放射線を遮へいする。支持部材であるリング状部材は、旋回しなく、原子炉ウェル56の周辺部を覆って運転床17上に設置される。回転テーブルは、リング状部材に旋回可能に取り付けられ、リング状部材の内側領域を覆っている。図示されていないが、リング状部材に設けられた第1モータの回転軸にピニオンが取り付けられ、このピニオンが回転テーブルの側面全周に亘って形成されたラックと噛み合っている。回転テーブルには、回転テーブルの半径方向に伸びる溝部が回転テーブルの中心から回転テーブルの周辺部に向って形成する。この溝部は回転テーブルを貫通している。スライド部材が、その溝部を覆って回転テーブルの半径方向に移動できるように回転テーブルの上面に設置される。図示されていないが、回転テーブルの上面に第2モータが設置され、この第2モータの回転軸に取り付けられたピニオンがスライド部材の側面に形成されたラックと噛み合っている。
【0034】
ボーリング装置及び切断装置を原子炉建屋内の運転床まで搬入する(ステップS5)。ボーリング装置32及び切断装置36(
図2参照)が、天井クレーン29を用いて原子炉建屋1外から原子炉建屋1内の運転床17まで搬入される。搬入された切断装置36は、機器仮置きプール19を跨いで設置された保持部材(図示せず)上に仮置きされる。切断装置36は本体部37、伸縮管38、噴射ノズル39、及びアブレシブ(例えば、アルミナ粒子)を含む高圧水を供給するアブレシブ供給装置(図示せず)を備える。伸縮管38は本体部37に取り付けられ、噴射ノズル39は伸縮管38の下端部に取り付けられる。アブレシブ供給装置と噴射ノズル39は高圧ホースで接続されている。アブレシブ供給装置は運転床17上に設置される。本体部37内には、伸縮管38を上下動する伸縮管駆動装置及び噴射ノズル39の駆動装置が設けられている。
【0035】
ボーリング装置32は放射線遮へい作業台24のスライド部材の上面に設置される。ボーリング装置32は、本体部及びボーリングロッド33を備える。本体部には、図示されていないが、特開平5−302488号公報に記載されたように、ベース、ベースに垂直に取り付けられたガイドフレーム、ガイドフレームに沿って上下動するスピンドル(ボーリングロッド33を上下動させるボーリングロッド駆動装置)、ロッドコンテナ及びロッド掴み装置を備えており、さらに、吸引装置が設けられる。スピンドルは内管を回転させてカッター(ビット)を回転させる回転装置としても機能する。ボーリングロッド33内は溶融核燃料物質の切削片が通る通路となるが、このボーリングロッド33内の通路は吸引装置に連絡される。
【0036】
図示されていないが、冷却水供給装置により、炉心4内に冷却水が供給されている。この冷却水は炉心4内を下降してRPV3内の溶融核燃料物質23A及び23Bを冷却する。この冷却水は、RPV3からPCV9の底部まで落下し、PCV9底部に存在する溶融核燃料物質23C,23Dを冷却する。
【0037】
RPV内の溶融核燃料物質を取り出す(ステップS6)。RPV3内の溶融核燃料物質23A,23Bの取り出しを
図2を用いて説明する。スライド部材の上面に設置されたボーリング装置32のボーリングロッド33に設けられたカッターが、スライド部材に設けられた貫通孔を通して回転テーブルに形成された溝部内に挿入される。カッターがその溝部内に位置する状態で、回転テーブルが第1モータにより旋回されてスライド部材が第2モータにより回転テーブルの半径方向に移動され、水平方向における伸縮管32の位置決めを行う。例えば、カッターが水平方向で炉心4の中心に位置決めされる。ボーリングロッド33は、スピンドルの下降により、回転テーブルに形成された溝部を通して原子炉ウェル56及びRPV3内を下降される。一本のボーリングロッド33ではカッターが切削位置まで到達しないため、特開平5−302488号公報に記載されるように、ボーリング装置32のロッドコンテナ内のボーリングロッド33をロッド掴み装置により、原子炉ウェル内に挿入されたボーリングロッド33の上端部及びスピンドルに結合する。結合されたボーリングロッド33がスピンドルにより下降される。このように、ボーリングロッド33を継ぎ足しながら最も下方に位置するボーリングロッド33の下端部に位置するカッターを切削位置まで下降させる。カッターが炉心4の上端に達したとき、スピンドルの回転によりカッターが回転される。カッターが回転されると、本体部32に存在する吸引装置が駆動する。カッターが回転されているとき、ボーリングロッド33がスピンドルをガイドフレームに沿って下降させることにより下降され、カッターも下降される。カッターが回転されながらボーリングロッド33が下降することにより、炉心4内に残留している燃料集合体が上端から下方に向かって切削され、燃料集合体の切削片は吸引装置によりボーリングロッド33内を通して吸引される。吸引されてボーリングロッド33内を上昇した切削片は、吸引装置の切削片排出口から燃料貯蔵プール18内に置かれた核燃料物質収納缶40内に収納される。
【0038】
燃料集合体を切削しながらカッターが下降すると、やがて、カッターは溶融核燃料物質23Aを切削する。溶融核燃料物質23Aの切削片も燃料貯蔵プール18内の核燃料物質収納缶40に収納される。一つの核燃料物質収納缶40が切削片で満杯になったとき、吸引装置を停止して吸引装置の切削片排出口を燃料貯蔵プール18内の別の核燃料物質収納缶40に連絡する。切削片で満杯になった核燃料物質収納缶40は蓋で封鎖される。
【0039】
本実施例では溶融核燃料物質等の切削片を燃料貯蔵プール18内の核燃料物質収納缶40に収納しているが、後述のステップS12において用いる作業用プラットホーム44のプラットホーム部材58の下面に取り付けられた貯蔵室48と同様な貯蔵室を放射線遮へい作業台24のリング状部材の下面に下方に向かって取り付け、この貯蔵室内に複数の空の核燃料物質収納缶40を置き、吸引装置で吸引された溶融核燃料物質等の切削片をその核燃料物質収納缶40内に収納しても良い。
【0040】
ボーリングロッド33の下降により、カッターは溶融核燃料物質23Aを切削しながら下降され、やがて、RPV3の底部に存在する溶融核燃料物質23Bを切削する。溶融核燃料物質23Bの切削片もボーリングロッド33内を上昇し核燃料物質収納缶40内に収納される。カッターが溶融核燃料物質23Bを切削しながらRPV3の下鏡部の内面まで低下したとき、伸縮管駆動装置によるボーリングロッド33の下降が停止され、カッターの回転も停止される。
【0041】
スピンドルを上昇させてボーリングロッド33を上昇させる。ボーリングロッド33の上昇に伴い、特開平5−302488号公報に記載されているように、ロッド掴み装置を用いて上方に位置するボーリングロッド33がこれの下方に位置する他のボーリングロッド33との結合関係が解除されて取り外され、上方に位置するボーリングロッド33がロッドコンテナに収納される。取り外されたボーリングロッド33に結合されていた下方のボーリングロッド33の上端部がスピンドルに結合される。スピンドルの上昇によりスライド部材よりも上方に移動されたボーリングロッド33もロッド掴み装置により下方のボーリングロッド33から取り外されてロッドコンテナに収納される。このように、ボーリングロッド33が順次コンテナロッドに収納され、やがて、カッターが回転テーブルに形成された溝部内に到達したとき、ボーリングロッド33の上昇を停止する。スライド部材を回転テーブルの周辺部に向って移動させ、カッターを前述の切削位置よりも外側に所定幅だけ移動させて位置決めする。スライド部材は回転テーブルの半径よりも大きいので、スライド部材が回転テーブルの半径方向に移動したとしても、回転テーブルに形成された溝部はスライド部材で覆われている。カッターの位置決め後、スピンドルを下降させてボーリングロッド33を下降させ、ボーリングロッド33を順次接続してカッターを炉心4の上端の位置まで下降させる。その後、カッターを回転させて、前述したように、燃料集合体、溶融核燃料物質23A,23Bの切削を行う。
【0042】
以上のように、カッターの下降及び上昇が繰り返され、さらに、スライド部材の回転テーブルの半径方向における移動及び回転テーブルの旋回により、RPV3内の全ての燃料集合体、及び全ての溶融核燃料物質23A,23Bの切削が行われ、それらの切削片が核燃料物質収納缶40内に収納される。RPV3内の溶融核燃料物質23A,23Bの取り出し工程が終了する。燃料貯蔵プール18内の、切削片を収納した核燃料物質収納缶40は、横行台車41に吊り上げられてコンテナ28内で原子炉建屋1外の地上まで搬送される。この核燃料物質収納缶40は、放射線遮へい体に取り囲まれた搬送容器内に収納された状態でトレーラに載せられて、例えば、原子力発電所内の核燃料貯蔵施設まで搬送されて核燃料貯蔵施設内に貯蔵される。
【0043】
ステップS6においてボーリングロッド33は水封入遮へい体31が充填された原子炉ウェル56及びPCV9内のドライウェル10を下降させる。このとき、カッターの下降位置に存在する各水封入遮へい体31の中空体は、カッターの下降によりカッターが押し付けられて破裂する。水封入遮へい体31内の水が下方へ落下する。水封入遮へい体31の破裂によりボーリングロッド33の下降が容易になる。もし、水封入遮へい体31に遮られてボーリングロッド33の下降が困難になった場合には、カッターを回転させて水封入遮へい体31の中空体を切削すればよい。
【0044】
RPV3内の溶融核燃料物質23A,23Bの切削のために、ボーリングロッド33の下降及び上昇を何回か繰り返すと、RPV3上方で破裂した水封入遮へい体31が多くなる。このため、放射線遮へいに支障が生じる場合には、ボーリングロッド33が下降されて水封入遮へい体31が破裂した領域に、上方より新たな水封入遮へい体31を充填する。この追加の水封入遮へい体31の充填は、放射線遮へい作業台24のスライド部材に形成された開口部(図示せず)を通して行われる。スライド部材に設けられた開口部は、通常、放射線遮へい材で作られた開閉可能な蓋(図示せず)で封鎖されており、追加の水封入遮へい体31の充填はその蓋を開けて行われる。
【0045】
RPV及びγ線遮へい体を切断し除去する(ステップS7)。RPV3及びγ線遮蔽体16の切断を容易に行うために、原子炉ウェル56、及びPCV9のドライウェル10内に充填された水封入遮へい体31の一部が除去される(
図3参照)。これらの水封入遮へい体31の除去には、特開平11−350516号公報に記載された、開閉可能なカバー部で覆われるバケット本体部を有するパワーショベル用バケットが用いられる。このパワーショベル用バケットが、天井クレーン29の横行台車41に吊り下げられて放射線遮へい作業台24のスライド部材に形成された前述の開口部(追加の水封入遮へい体31の充填に使用)から回転テーブルの溝部を通して原子炉ウェル56内に挿入される。パワーショベル用バケットを原子炉ウェル56に挿入するときには、開口部を封鎖しているその蓋が開けられる。パワーショベル用バケットのカバー部を開いてバケット本体部で原子炉ウェル56内の複数の水封入遮へい体31をすくい上げてバケット本体部内に収納し、カバー部を閉じてパワーショベル用バケットを運転床17の上方まで引き上げる。このパワーショベル用バケットのバケット本体部内の複数の水封入遮へい体31は、放射線遮へい体で囲まれた領域内で収納容器内に収納される。水封入遮へい体31で一杯になった収納容器は蓋で密封されて燃料貯蔵プール18内に一時的に保管される。このようにして、RPV3の切断箇所がドライウェル10内に充填された水封入遮へい体31の上方に顔を出すように、ドライウェル10等の内部の水封入遮へい体31が原子炉ウェル56外に除去される。例えば、RPV3の上端から下方に向かって約60cmの領域が、ドライウェル10内に充填されて最も上方に位置する各水封入遮へい体31よりも上方に位置している。
【0046】
放射線遮へい作業台24のスライド部材上に設置されたボーリング装置32を、取り外して横行台車41で吊り上げて運転床17上の所定の位置まで移送する。その後、切断装置36が、横行台車41に吊り下げられて放射線遮へい作業台24のスライド部材上に設置される(
図3参照)。切断装置36の伸縮管38がスライド部材に形成された前述の貫通孔内に挿入され、回転テーブルに形成された前述の溝部内を通して原子炉ウェル56内に挿入される。スライド部材を回転テーブルの半径方向に移動させて伸縮管38の下端に取り付けられた噴射ノズル39をRPV3の切断位置の内面付近の位置の真上に位置させる。
【0047】
また、横行台車35から吊り下げられたハンドリング装置34が、スライド部材及び溝部を通して回転テーブルよりも下方に下降される。横行台車35に設けられた第2巻き取り装置が駆動されて第2巻き取り装置に巻き付けられたワイヤが巻き戻され、このワイヤに取り付けられたハンドリング装置34が、下降し、そしてRPV3の切断する部分を掴む(
図3参照)。ハンドリング装置34には監視カメラが設置され、この監視カメラで撮影した映像が前述のモニタに表示される。伸縮管駆動装置を駆動して伸縮管38の下端部に設けられた噴射ノズル39をRPV3内でRPV3の切断位置に対向する位置まで下降させる。アブレシブ供給装置から噴射ノズル39にアルミナ粒子を含む高圧水を供給し、噴射ノズル39からRPV3の内面に向かってアルミナ粒子を含む高圧水を噴射させる。RPV3が、噴射された、アルミナ粒子を含む高圧水によって切断される。伸縮管38を下降させながら噴射ノズル39から噴射するアルミナ粒子を含む高圧水により、RPV3の上端からRPV3を軸方向において所定長さ(例えば、50cm)切断し、そして、伸縮管38の下降を停止した状態で回転テーブルを旋回させて、噴射ノズル39から噴射するアルミナ粒子を含む高圧水によりRPV3を周方向に所定長さだけ切断する。その後、伸縮管38を上昇させて噴射ノズル39を上昇させ、RPV3を軸方向に切断する。RPV3の切断状況はハンドリング装置34に設置された監視カメラで監視される。このようにして切断されたRPV3のある大きさの切断片は、ハンドリング装置34に掴まれており、第2巻き取り装置でワイヤを巻き取ることによってこの切断片が引き上げられる。引き上げられたRPV3の切断片は、原子炉ウェル56の底面に置かれた収納容器42内に収納される。
【0048】
伸縮管38を下降させて噴射ノズル39をRPV3の上端から50cm下方の位置に合わる。噴射ノズル39からアルミナ粒子を含む高圧水を噴射させて、前回に引き続いて回転テーブルを旋回させながらRPV3を周方向に切断する。RPV3のこの切断部分はハンドリング装置34に掴まれている。RPV3が周方向に所定長さ切断された後、伸縮管38の上昇によって回転している噴射ノズル39がRPV3を軸方向に切断しながら上昇する。RPV3のこの切断片も原子炉ウェル56内の前述の収納容器42に収納される。このように、噴射ノズル39から噴射されるアルミナ粒子を含む高圧水によって、RPV3が周方向に順次切断され、その後、軸方向にも順次切断される。RPV3を取り囲んでいるγ線遮へい体16も、RPV3と同様に、噴射ノズル39から噴射されるアルミナ粒子を含む高圧水によって順次切断され、切断片が原子炉ウェル56の底面に置かれた複数の収納容器42内に順次に収納される。切断片で満杯になった収納容器42は、蓋をし、横行台車41により、順次、放射線遮へい作業台24のスライド部材に形成された前述の開口部を通して原子炉ウェル56から運転床17上の放射線遮へい体で取り囲まれた領域に移送される。蓋により密封された収納容器42は燃料貯蔵プール18内に移送される。ペデスタル15の上端よりも上方に存在するRPV3及びγ線遮へい体16が切断されてすべて除去される。
【0049】
PCV9のドライウェル10内の水封入遮へい体31の除去、及びRPV3及びγ線遮蔽体16のアルミナ粒子を含む高圧水による切断は繰り返しながら行われる。
【0050】
PCVを切断して除去する(ステップS8)。PCV9の切断及び切断片の搬送を
図4を用いて説明する。PCV9のドライウェル10内の水封入遮へい体31は前述したように除去されるため、PCV9の切断を開始する時点では、PCV9のドライウェル10内でペデスタル15の上端よりも少し上方の位置まで充填されている。放射線遮へい作業台24のスライド部材を回転テーブルの半径方向に移動して伸縮管38の下端部に取り付けられた噴射ノズル39を、PCV9の真上の位置まで移動させる。RPV3の切断と同様に、伸縮管38をPCVの上端から所定距離だけ下降させて水平方向に所定距離移動させ、その後、伸縮管38をPCVの上端に向かって移動させる。この伸縮管38の動きに応じてアルミナ粒子を含む高圧水を噴射する噴射ノズル39も移動し、その高圧水によってPCV9が切断される。PCV9の切断部分がハンドリング装置34に掴まれているため、PCV9の切断片は横行台車35の第2巻き取り装置でワイヤを巻き取ることによって引き上げられ、原子炉ウェル56の底に置かれた収納容器内に収納される。このようにして、PCV9は上端から下方に向かって順次切断されて除去される。PCV9がペデスタル15の上端付近まで切断して除去されたとき、PCV9の切断は停止される。
【0051】
生体遮へい体内面の除染を実施する(ステップS9)。PCV9をペデスタル15の上端付近まで除去した後、生体遮へい体2の内面の除染が実施される(
図5参照)。除染は除染装置51を用いて行われる。除染装置51は、支持部材52、高圧水を供給するポンプ(図示せず)、ポンプに接続された噴射ノズル60、及び噴射ノズル60が取り付けられて噴射ノズル60を上下方向に移動させる移動装置59を有する。移動装置59は支持部材52に沿って移動可能に支持部材52に取り付けられる。
【0052】
除染装置51は、放射線遮へい作業台24のスライド部材に設置され、支持部材52がスライド部材に形成された貫通孔に挿入されて下方に向かって伸びており、噴射ノズル60及び移動装置59は放射線遮へい作業台24よりも下方に位置している。噴射ノズル60は移動装置59に取り付けられる。スライド部材をPCV9の半径方向に移動させて噴射ノズル60を生体遮へい体2の内面に対向させる。ポンプを駆動して噴射ノズル60に高圧水を供給し、この高圧水を噴射ノズル60から生体遮へい体2の内面に向かって噴射する。生体遮へい体2の内面は、噴射された高圧水によって除染される。放射線遮へい作業台24の回転テーブルの旋回及び前述の移動装置59の駆動により、ドライウェル10内に充填された水封入遮へい体31のうち最も上方に位置する水封入遮へい体31よりも上方において、生体遮へい体2の内面全体が除染される。この除染が終了した後、除染装置51及び放射線遮へい作業台24が天井クレーン29の横行台車41を用いて除去される。
【0053】
生体遮へい体の内側に放射線遮へい体を設置する(ステップS10)。除染された生体遮へい体2の内面に対向してその内面の全面を覆うように複数の放射線遮へい体43が設置される(
図6参照)。放射線遮へい体43は短冊状の形状をしている。生体遮へい体2の周方向に配置されて最も上方に位置する各放射線遮へい体43は運転床17から吊り下げられる。最も上方に位置する各放射線遮へい体43の下方においても、複数の放射線遮へい体43が生体遮へい体2の上下方向に配置され、これらの放射線遮へい体43はそれぞれ運転床17から吊り下げられて上下方向のそれぞれの位置で生体遮へい体2の周方向に配置されている。
【0054】
作業用プラットホームをPCV内に設置する(ステップS11)。放射線遮へい体43が設置され状態で作業用プラットホーム44が設置される(
図7参照)。作業用プラットホーム44は生体遮へい体2の内側の領域で設置された放射線遮へい体43の内側に配置される。作業用プラットホーム44は、プラットホーム部材58、懸垂部材45、複数の支持部材47及び貯蔵室48を有する。プラットホーム部材58は放射線遮へい材で作られている。
【0055】
プラットホーム部材58は、生体遮へい体2の内側に配置された放射線遮へい体43の内側を下降可能な大きさの円状の第1プラットホーム部材、及びペデスタル15の上端付近の位置で第1プラットホーム部材とPCV9の内面との間に配置される扇形状の複数の第2プラットホーム部材を有する。複数の第2プラットホーム部材は第1プラットホーム部材を取り囲んでいる。運転床17上で第1プラットホーム部材に例えば8本の懸垂部材45を第1プラットホーム部材の周方向に等間隔に配置して第1プラットホーム部材の上面に機械的結合手段(例えば、ボルト及びナット)にて取り付ける。8本の懸垂部材45を取り付けた第1プラットホーム部材を、横行台車41に吊り下げて原子炉ウェル56内を下降させる。各懸垂部材45の上端が運転床17の床面近くまで下降したとき、第1プラットホーム部材の下降を停止する。その後、各懸垂部材45の上端に懸垂部材45を機械的結合手段により継ぎ足し、再び、第1プラットホーム部材を下降させる。このように懸垂部材45を継ぎ足しながら第1プラットホーム部材をペデスタル15の上端付近まで下降させる。そして、引っ掛け部材46がそれぞれの懸垂部材45の上端部に機械的結合手段にて取り付けられる。これらの引っ掛け部材46が運転床17の床面上に置かれる。第1プラットホーム部材は、8本の懸垂部材45及び各懸垂部材45に取り付けられた引っ掛け部材46によって運転床17に吊り下げられる。この状態で、第1プラットホームは切断されて残っているPCV9の底部の上端付近でペデスタル15の真上に位置している。各懸垂部材45と放射線遮へい体43(
図7では図示せず)の間に複数の支持部材47が配置され、これらの支持部材47は該当する懸垂部材45に機械的結合手段にて取り付けられる。
【0056】
複数の第2プラットホーム部材が横行台車41により第1プラットホーム部材の上に降ろされ、これらの第2プラットホーム部材が第1プラットホーム部材の周囲に配置され、第1プラットホーム部材に機械的結合手段にて取り付けられる。各第2プラットホームはペデスタル15よりも外側に位置している。貯蔵室48が一つの第2プラットホーム部材の下面に取り付けられている。
【0057】
PCVの底部に落下した溶融核燃料物質を取り出す(ステップS12)。ボーリング装置32を天井クレーン29の横行台車41に吊り下げてプラットホーム部材58上に降ろす。プラットホーム部材58の、ペデスタル15の真上に位置する第1プラットホーム部材は、放射線遮へい作業台24と同様に、図示されていないが、回転テーブル及びスライド部材を有する。回転テーブル及びスライド部材も放射線遮へい材で作られている。プラットホーム部材58よりも下方でPCV9内には、多数の水封入遮へい体31が充填されている。ステップS6で述べたように、ボーリング装置32のボーリングロッド33をペデスタル15の内側の内部空間11内でコンクリートマット14上に落下した溶融核燃料物質23Cを切削する(
図8参照)。すなわち、ガイドフレームに沿ってスピンドルを下降させて最下端部に位置するボーリングロッド33に設けられたカッターを溶融核燃料物質23Cの表面に接触させる。スピンドルによりカッターを回転させながらカッターを下降させる。カッターにより切削によって生じた溶融核燃料物質23Cの切削片は、ボーリング装置32の吸引装置によって吸引され、吸引装置の排出口に接続されたホース(図示せず)を通して貯蔵室48内の核燃料物質収納管40内まで移送される。回転テーブルを回転させながら、溶融核燃料物質23Cを切削して貯蔵室48内の核燃料物質収納管40に収納される。一つの核燃料物質収納管40が切削片で満杯になったとき、貯蔵室48内の別の核燃料物質収納管40にその切削片が収納される。
【0058】
落下していた溶融核燃料物質23Cの全てが切削されて貯蔵室48内の核燃料物質収納缶40に収納された後、ベデスタル15の外側でコンクリートマット14上に落下した溶融核燃料物質23Dも、ボーリング装置32により、同様に、切削されて貯蔵室48内の核燃料物質収納管40に収納される。溶融核燃料物質23Dの落下位置は事前の調査によって予め分かっているので、落下した溶融核燃料物質23Dの真上の位置には、放射線遮へい作業台24に設けられる、回転テーブル(図示せず)及びスライド部材(図示せず)を有する第2プラットホーム部材が配置される。落下した溶融核燃料物質23Dを切削する際には、ボーリング装置32がその第2プラットホーム部材に設けられたスライド部材に設置される。
【0059】
落下していた溶融核燃料物質23Dの全てが切削されて貯蔵室48内の核燃料物質収納缶40に収納されたとき、PCV9内の全ての溶融核燃料物質(溶融核燃料物質23A〜23D)の切削及び回収作業が終了する。その後、貯蔵室48内の各核燃料物質収納缶40は、横行台車41に吊り下げられた状態で貯蔵室48内に設けられた除染装置49により除染され、その後、生体遮へい体2の内側を通って運転床17上まで引き上げられる。これらの核燃料物質収納缶40は、運転床17上で放射線遮へい体に取り囲まれた搬送容器内に収納され、横行台車41により、原子炉建屋1外でコンテナ28内の地面30まで降ろされる。この搬送容器は、トレーラに積載されて核燃料貯蔵施設まで搬送される。
【0060】
PCVの底部及びペデスタルを切断し取り出す(ステップS13)。PCV9の底部及びペデスタル15の切断及び取り出し工程を
図9を用いて説明する。PCV9の底部及びペデスタル15の切断を行う前に、ステップS7と同様に、パワーショベル用バケットを用いて、プラットホーム部材58よりも下方でPCV9内に存在する多数の水封入遮へい体31をプラットホーム部材58よりも上方に取り出す。
【0061】
PCV9の底部及びペデスタル15の切断は、RPV3、γ線遮へい体16及びPCV9の切断と同様に、噴射ノズルからアルミナ粒子を含む高圧水を噴射して行う。プラットホーム部材58のスライド部材に設置された切断装置53は、ステップS7で用いる切断装置36と同じ構成を有する。切断装置53は、伸縮管54、噴射ノズル55、及びアブレシブ(例えば、アルミナ粒子)を含む高圧水を供給するアブレシブ供給装置(図示せず)を備える。伸縮管54の長さは切断装置36の伸縮管38の長さよりも短くなっている。噴射ノズル55をペデスタル15に対向させる。ハンドリング装置34と同じ構成を有するハンドリング装置61でペデスタルの切断部分を掴む。ハンドリング装置61には監視カメラが設けられている。この監視カメラで監視しながら、噴射ノズル55からペデスタル15に向かってアルミナ粒子を含む高圧水を噴射してペデスタル15を切断する。ペデスタル15の切断片はハンドリング装置56によって貯蔵室48内の収納容器42に収納される。ペデスタル15が切断されて除去された後、PCV9の底部が切断装置53によって同様に切断される。PCV9の底部の切断片も、ハンドリング装置61に掴まれて貯蔵室48内の収納容器42に収納される。やがて、PCV9の底部も全て切断されて除去される。破裂してPCV9の底部に残存している水封入遮へい体31の中空体も、ハンドリング装置61で掴んで貯蔵室48内の収納容器42に収納される。
【0062】
貯蔵室48内に存在する、溶融核燃料物質の切断片を収納した核燃料物質収納管40、及びペデスタル15等の切断片を収納した収納容器42は、順次、横行台車41に吊り下げられて運転床17よりも上方まで引き上げられ、コンテナ28内で原子炉建屋1外の地面30まで移動される。この地面30に待機しているトレーラにそれらが載せられ、貯蔵建屋まで搬送される。
【0063】
以上により、RPV3内に存在する溶融核燃料物質及びPCV9の底部に落下した溶融核燃料物質の取り出し作業が終了する。
【0064】
本実施例によれば、内部に水を充填した多数の水封入遮へい体31が原子炉ウェル56及びPCV9のドライウェル10内に充填されるので、PCV9に万が一漏えい箇所が存在する場合でもPCV9の漏えい箇所を確認する検査及びPCV9の漏えい箇所を封鎖する作業を行う必要が無く、多数の水封入遮へい体31内の水により、実質的に、PCV9内を水が充填された状態にすることができる。このため、水封入遮へい体31内の水により放射線を遮へいすることができるため、炉心4内の核燃料物質が溶融した場合でも、RPV3内の溶融核燃料物質を原子炉建屋1外に取り出すのに要する時間を短縮することができる。
【0065】
RPV3内の溶融核燃料物質を切削するためにボーリング装置32のカッターが設けられたボーリングロッド33を下降させるときに、原子炉ウェル56及びPCV9内に充填されている水封入遮へい体31が破裂して原子炉ウェル56及びPCV9内に空間が形成される。本実施例では、この空間内に新しい水封入遮へい体31が充填され、溶融核燃料物質23A,23Bから放出される放射線を遮へいすることができる。このため、溶融核燃料物質23A,23Bの取り出しを安全な状態で行うことができる。
【0066】
本実施例では、RPV3及びγ線遮へい体16の切断を、PCV9内に充填された多数の水封入遮へい体31をPCV9外に取り出してRPV3及びγ線遮へい体16を最も上方に位置する各水封入遮へい体31よりも上方に露出させて行うので、充填された水封入遮へい体31が、切断手段である、アルミナ粒子を含む高圧水を噴射する噴射ノズル39の移動の邪魔にならず、噴射ノズル39をRPV3の周方向に容易に移動させることができる。このため、RPV3及びγ線遮へい体16の切断を短時間に行うことができる。
【0067】
PCV9の上部を除去した後、PCV9の上部を取り囲んでいた生体遮へい体2の内面を除染し、生体遮へい体2の内面に対向して放射線遮へい体43を設置するので、PCV9の底部に落下した核燃料物質23C,23Dを除去するために用いる作業用プラットホーム44の設置を行う作業員の被ばく線量を低減することができる。
【0068】
PCV9内の底部に作業用プラットホーム44を設置してこの作業用プラットホーム44を利用して、具体的には、作業用プラットホーム44のプラットホーム部材58に設けたボーリング装置32を用いて、PCV9の底部に落下した溶融核燃料物質23C,23Dを切削して回収するので、溶融核燃料物質23C,23Dの切削及び回収を容易に行うことができる。
【0069】
本実施例ではPCV9の切断及び除去(ステップS8)をRPV3及びγ線遮へい体16の切断及び除去(ステップS7)が終了した後に行っているが、PCV9の切断及び除去とRPV3及びγ線遮へい体16の切断及び除去を交互に行っても良い。
【0070】
本実施例では、耐圧性のゴムで作られた中空体の内部に放射線遮へい材である水を封入して構成された水封入遮へい体31をPCV9内に充填しているが、水封入遮へい体31の替りに、例えば、密封された耐圧ゴム製の中空体内に放射線遮へい材である複数の鉛粒子(または鉛の粉体)または複数の鉄粒子(または鉄の粉体)を封入して構成された放射線遮へい体を用いても良い。鉛粒子(または鉛の粉体)または複数の鉄粒子(または鉄の粉体)を封入した放射線遮へい体を用いる場合、この放射線遮へい体のPCV9内への充填及びPCV9内からの取り出しは、放射線遮へい体である水封入遮へい体31と同様に行われる。鉛粒子(または鉛の粉体)または複数の鉄粒子(または鉄の粉体)を封入し放射線遮へい体は、実施例1と同様に、溶融核燃料物質を切削するときに下降するボーリングロッド33の下端部が、複数の鉛粒子(または鉛の粉体)または複数の鉄粒子(または鉄の粉体)を封入して構成された放射線遮へい体の中空体に押し付けられたとき、実施例1と同様に、ゴム製の中空体はボーリングロッド33の押し付けにより破裂する、または、ボーリングロッド33に設けられたカッターの回転により切削される。この中空体内の鉛粒子(または鉛の粉体)または鉄粒子(または鉄の粉体)は、ボーリング装置32の吸引装置で吸引されて収納容器内に回収される。このため、ボーリングロッド33の炉心4に向かっての下降が可能になり、RPV3内の溶融核燃料物質23A,23Bの切削及び吸引が可能になる。
【0071】
もし、中空体として例えば、密封された金属製の容器を用いてその放射線遮へい体を金属製の容器内に複数の鉛粒子(または鉛の粉体)または複数の鉄粒子(または鉄の粉体)を封入して構成した場合には、RPV3内の溶融核燃料の切削のために下降されるボーリングロッド33に設けられたカッターを回転させながらボーリングロッド33を下降させることにより中空体を切削すると共に、内部の鉛粒子(または鉛の粉体)または複数の鉄粒子(または鉄の粉体)をボーリング装置32の吸引装置で吸引しながらボーリングロッド33を下降させる必要がある。吸引された鉛粒子(または鉛の粉体)または複数の鉄粒子(または鉄の粉体)は上記と同様に収納容器内に回収される。水を密封された金属製容器内に充填して放射線遮へい体を構成しても良い。
【0072】
或る量の水を水封入遮へい体31、または或る量(個数)の鉛粒子または鉄粒子を封入した放射線遮へい体を用いることによって、放射線遮へい材である或る量の水、或る量の鉛粒子(または鉛の粉体)または或る量の鉄粒子(または鉄の粉体)を一度に運ぶことができてPCV9内に充填することができるので、放射線遮へい材をPCV9内に充填するのに要する時間を短縮できる。また、RPV3等の切削のために放射線遮へい材をPCV9外に取り出す場合でも、中空体内に放射線遮へい材を封入した放射線遮へい体を取り出すので、放射線遮へい材のPCV9外への取り出し作業に要する時間を短縮することができる。
【実施例2】
【0073】
本発明の他の好適な実施例である、沸騰水型原子力プラントに適用した実施例2の原子力プラントにおける核燃料物質取り出し方法を
図10を用いて説明する。
【0074】
本実施例の原子力プラントにおける核燃料物質取り出し方法では、RPV3及びγ線遮へい体16の切削及び除去(ステップS7)、PCV9の切断及び除去(ステップS8)、生体遮へい体2の内面の除染(ステップS9)、及び生体遮へい体2の内側への放射線遮へい体43の設置(ステップS10)の各作業が、実施例1のようにシリーズではなく、PCV9の軸方向を複数区分に分け、運転床17からPCV9に吊り下げられる放射線遮へい作業台24を利用し、PCV9の下方に向かって区分ごとに該当する工程の作業が実施される。また、ステップS11で設置される作業用プラットホーム44は、放射線遮へい作業台24を一部の構成に用いる。本実施例で実施される他のステップは、実施例1に実施されるステップと同じである。
【0075】
本実施例でも、実施例1と同様に、コンテナ28の設置(ステップS1)、蒸気乾燥器及び気水分離器等の取り外し(ステップS2)、水封入遮へい体31のPCV9内への充填(ステップS3)、放射線遮へい作業台24の設置(ステップS4)、ボーリング装置32及び切断装置36の搬入(ステップS5)及びRPV3内の溶融核燃料物質の取り出し(ステップS6)が順次実施される。その後、本実施例において行われる、RPV3及びγ線遮へい体16の切削及び除去(ステップS7)、PCV9の切断及び除去(ステップS8)、生体遮へい体2の内面の除染(ステップS9)、生体遮へい体2の内側への放射線遮へい体43の設置(ステップS10)、及び作業用プラットホーム44の設置(ステップS11)について説明する。
【0076】
PCV9の切断及び除去(ステップS8)が実施される前に、実施例1におけるステップS7と同様に、原子炉ウェル56、及びPCV9のドライウェル10内に充填された水封入遮へい体31の一部が除去される。この水封入遮へい体31の一部の除去によってPCV9内に充填された最上位に位置する水封入遮へい体31は、上蓋3Aを取り外したRPV3の上端よりも少し上方に位置している。この状態で、運転床17に設置された放射線遮へい作業台24が取り外される。この放射線遮へい作業台24よりも外径が小さくて生体遮へい体2の上部の内径よりも少し小さい外径を有する別の放射線遮へい作業台24が、実施例1で用いる第1プラットホーム部材と同様に例えば8本の懸垂部材45を周方向に等間隔に配置して機械的結合手段(例えば、ボルト及びナット)で取り付けられた状態で、横行台車41に吊り下げられて原子炉ウェル56内を下降される。最上位に位置する水封入遮へい体31より上方で原子炉ウェル56の底面付近まで放射線遮へい作業台24が下降された後、引っ掛け部材46がそれぞれの懸垂部材45の上端部に機械的結合手段にて取り付けられ、これらの引っ掛け部材46が運転床17の床面上に置かれる。このようにして、運転床17から吊り下げられた放射線遮へい作業台24が原子炉ウェル56内に位置している(
図10参照)。
【0077】
その後、原子炉ウェル56に面する生体遮へい体2の内面に対して除染作業(ステップS9)が実施され、除染された生体遮へい体2の内側に放射線遮へい体43が運転床17からつりさげられた状態で配置される。生体遮へい体2の内面の除染により、汚染された水が放射線遮へい作業台24の上面にも落下するため、除染作業終了後に、放射線遮へい作業台24の上面も水を用いて洗浄される。
【0078】
そして、RPV3が、上端から例えば60cm、充填された最上位に位置する水封入遮へい体31から露出するように、PCV9内のPCV9のドライウェル10内に充填された水封入遮へい体31の一部が前述したように除去される。RPV3の前述の露出した部分(上端から軸方向の長さ約50cmの部分)が、吊り下げられた放射線遮へい作業台24のスライド部材上に設置された切断装置36を用いて周方向に順次切断され、原子炉ウェル56の底面に置かれた収納容器42(
図3参照)内に収納される(ステップS7)。次に、PCV9が、切断装置36を用いて周方向に順次切断され、原子炉ウェル56の底面に置かれた収納容器42内に収納される(ステップS8)。PCV9はRPV3と同じ高さまで切断されて除去される。PCV9の切断作業が終了した後、放射線遮へい作業台24は、横行台車41に吊り下げられて各懸垂部材45と引っ掛け部材46の結合状態が解除された後、横行台車41の第1巻き取り装置からワイヤを巻き戻すことにより、下降される。放射線遮へい作業台24が切断されたRPV3の上端の位置付近まで下降したとき、放射線遮へい作業台24の下降が停止される。放射線遮へい作業台24に取り付けられた8本の懸垂部材45の新たな懸垂部材45を機械的結合手段によりそれぞれ継ぎ足し、継ぎ足された各懸垂部材45の上端部を運転床17に取り付けられている各引っ掛け部材46に機械的手段により結合する。
【0079】
下降された放射線遮へい作業台24よりも上方に存在し且つ先に設置された放射線遮へい体43の下端よりも下方に存在する、生体遮へい体2の内面に対して、除染が実施される(ステップS9)。除染された生体遮へい体2の内側に放射線遮へい体43が配置される(ステップS10)。
【0080】
その後、50cmずつ充填されている水封入遮へい体31が除去され、RPV3及びγ線遮へい体16の切削及び除去(ステップS7)、PCV9の切断及び除去(ステップS8)、生体遮へい体2の内面の除染(ステップS9)、生体遮へい体2の内側への放射線遮へい体43の設置(ステップS10)及び放射線遮へい作業台24の下降が繰り返して行われる。本実施例において、放射線遮へい作業台24が
図7に示されたプラットホーム部材58の位置まで下降して生体遮へい体2の内側に放射線遮へい体43が配置されたとき、それらの一連の工程が終了する。なお、RPV3の切断が開始された後、生体遮へい体2の内面の除染及び生体遮へい体2の内側への放射線遮へい体43の設置も50cmずつ行うように説明したが、生体遮へい体2の内面の除染及び生体遮へい体2の内側への放射線遮へい体43の設置は、1mずつまたは1.5mずつ行っても良い。
【0081】
その後、作業用プラットホーム44の設置(ステップS11)が実施される。本実施例における作業用プラットホーム44の設置には、放射線遮へい作業台24をプラットホーム部材58の第1プラットホーム部材として利用し、扇形状の複数の第2プラットホーム部材が、実施例1で用いる作業用プラットホーム44と同様に、放射線遮へい作業台24の周囲に配置され、放射線遮へい作業台24に取り付けられる。本実施例では、懸垂部材45がステップS7〜S10の各工程が終了して放射線遮へい作業台24を下降するたびに継ぎ足されるため、実施例1のように、生体遮へい体2の内側に全放射線遮へい体43を設置した(ステップS10)後に懸垂部材45を一度に取り付ける必要はない。
【0082】
放射線遮へい作業台24を利用した作業用プラットホーム44の設置が終了した後、実施例1と同様に、ステップS12及びS13の各工程が実施される。
【0083】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例では、ステップS7〜S10の各工程が放射線遮へい作業台24を生体遮へい体2内で下降させながら行われるので、切断装置36の伸縮管38の長さを短くすることができる。このため、本実施例で用いる切断装置36は、実施例1で用いる切断装置36よりも小型化することができる。