(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981363
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】ロータ及びロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/27 20060101AFI20160818BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
H02K1/27 501G
H02K15/03 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-29085(P2013-29085)
(22)【出願日】2013年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-158397(P2014-158397A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】松下 満彦
【審査官】
池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−178478(JP,A)
【文献】
特開2007−330030(JP,A)
【文献】
特開2003−174744(JP,A)
【文献】
特開昭63−117646(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0229350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアの外周面にリングマグネットの内周面を軸方向において螺旋状に接着固定してなるロータであって、
前記ロータコアの外周面と前記リングマグネットの内周面との間に、ロータコアとリングマグネットを接着固定するための接着剤が軸方向において離間されるようにして螺旋状に複数周塗布されてなる接着固定部を有しており、
前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の内で前記接着固定部を有する周面では、軸方向において前記接着固定部間の部位が前記接着剤により接着固定されていない螺旋状の非接着固定部となっており、該非接着固定部には、前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の内で前記接着固定部を有する周面よりも径方向に窪んだ溝部が前記接着固定部に沿って螺旋状に形成されていることを特徴とするロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータにおいて、
前記ロータコアの外周面又は前記リングマグネットの内周面の内で、前記溝部が形成されていない方の周面には、前記溝部に嵌合している嵌合部が形成されていることを特徴とするロータ。
【請求項3】
ロータコアの外周面にリングマグネットの内周面を軸方向において螺旋状に接着固定してなるロータであって、
前記ロータコアの外周面と前記リングマグネットの内周面との間に、ロータコアとリングマグネットを接着固定するための接着剤が軸方向において離間されるようにして螺旋状に複数周塗布されてなる接着固定部を有しており、
前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の内で前記接着固定部を有する周面では、軸方向において前記接着固定部間の部位が前記接着剤により接着固定されていない螺旋状の非接着固定部となっており、該非接着固定部は、前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の内で前記接着固定部を有する周面に対して径方向に窪むことなく該周面と連続する面となっていることを特徴とするロータ。
【請求項4】
ロータコアの外周面にリングマグネットの内周面を軸方向において螺旋状に接着固定してなるロータの製造方法であって、
前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の少なくとも一方に接着剤が軸方向において離間されるようにして螺旋状に複数周塗布された後、前記ロータコア及び前記リングマグネットの少なくとも一方を、螺旋状に塗布された前記接着剤に沿って相対的に回転させながら、前記リングマグネットに前記ロータコアを挿入して、前記接着剤により前記リングマグネットと前記ロータコアとを固定させることを特徴とするロータの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のロータの製造方法において、
前記ロータコアの外周面又は前記リングマグネットの内周面には前記接着剤を塗布する塗布面よりも径方向に窪んだ溝部が、軸方向において前記塗布面間に位置するように螺旋状に連続的に形成され、
前記ロータコアの外周面又は前記リングマグネットの内周面の内で、前記溝部が形成されない方の周面には、前記溝部と嵌合されて溝部に沿って螺旋状に案内する嵌合部が形成されるものであり、
前記嵌合部と前記溝部とで、前記ロータコア及び前記リングマグネットの少なくとも一方を、螺旋状に塗布された前記接着剤に沿って相対的に回転させながら、前記リングマグネットに前記ロータコアが挿入されることを特徴とするロータの製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載のロータの製造方法において、
前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の内で前記接着剤を塗布する周面では、軸方向において該接着剤を塗布する塗布面間の部位が接着剤を塗布しない螺旋状の非塗布面となっており、該非塗布面は、前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の内で前記接着剤を塗布する周面に対して径方向に窪むことなく前記塗布面と連続する面となっていることを特徴とするロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ及びロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータは、例えばロータコアの外側にリングマグネットを接着剤を用いて固定するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−220044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなロータでは、接着剤によりロータコアとリングマグネットを固定する際に、例えば空気だまりが発生すると接着剤が偏ることとなる。これにより、例えばマグネットの同軸度が低下してコギングトルクの悪化や磁気振動の増大を招く虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、接着固定の際の空気だまりを減少させることができるロータ及びロータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するロータは、ロータコアの外周面にリングマグネット
の内周面を
軸方向において螺旋状に接着固定してなるロータであって、前記ロータコアの外周面
と前記リングマグネットの内周面
との間に、ロータコアとリングマグネットを接着固定するための接着剤が軸方向において離間されるようにして螺旋状に複数周塗布されてなる接着固定部を有
しており、前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の内で前記接着固定部を有する周面では、軸方向において前記接着固定部間の部位が前記接着剤により接着固定されていない螺旋状の非接着固定部となっており、該非接着固定部には、前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の内で前記接着固定部を有する周面よりも径方向に窪んだ溝部が前記接着固定部に沿って螺旋状に形成されている。
【0007】
この構成によれば、ロータコアの外周面及びリングマグネットの内周面の少なくとも一方に、接着剤が螺旋状に塗布されてなる接着固定部を有するため、ロータコアとリングマグネットを接着固定することができる。このとき、接着固定部(接着剤)は軸方向に離間されるように螺旋状とされるため、その離間する部位も螺旋状とされることとなる。これにより、その離間する部位を介して空気を接着固定部(接着剤)内から抜くことが可能となるため、接着固定部(接着剤)内で空気だまりの発生を減少させることができる。
【0009】
この構成によれば
、溝部を利用して空気を接着固定部(接着剤)内から抜くことが可能となる。このため、接着固定部(接着剤)内で空気だまりの発生をより確実に減少させることができる。
【0010】
上記ロータにおいて、前記ロータコアの外周面又は前記リングマグネットの内周面の内で、前記溝部が形成され
ていない方の周面には、前記溝部
に嵌合
している嵌合部が形成され
ていることが好ましい。
【0011】
上記課題を解決するロータは、ロータコアの外周面にリングマグネットの内周面を軸方向において螺旋状に接着固定してなるロータであって、前記ロータコアの外周面と前記リングマグネットの内周面との間に、ロータコアとリングマグネットを接着固定するための接着剤が軸方向において離間されるようにして螺旋状に複数周塗布されてなる接着固定部を有しており、前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の内で前記接着固定部を有する周面では、軸方向において前記接着固定部間の部位が前記接着剤により接着固定されていない螺旋状の非接着固定部となっており、該非接着固定部は、前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の内で前記接着固定部を有する周面に対して径方向に窪むことなく該周面と連続する面となっている。
この構成によれば、ロータコアの外周面及びリングマグネットの内周面の少なくとも一方に、接着剤が螺旋状に塗布されてなる接着固定部を有するため、ロータコアとリングマグネットを接着固定することができる。このとき、接着固定部(接着剤)は軸方向に離間されるように螺旋状とされるため、その離間する部位も螺旋状とされることとなる。これにより、その離間する部位を介して空気を接着固定部(接着剤)内から抜くことが可能となるため、接着固定部(接着剤)内で空気だまりの発生を減少させることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するロータの製造方法は、ロータコアの外周面にリングマグネット
の内周面を
軸方向において螺旋状に接着固定してなるロータの製造方法であって、前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の少なくとも一方に接着剤が軸方向において離間されるようにして螺旋状に複数周塗布された後、
前記ロータコア及び前記リングマグネットの少なくとも一方を、螺旋状に塗布された前記接着剤に沿って相対的に回転させながら、前記リングマグネットに前記ロータコアを挿入して、前記接着剤により前記リングマグネットと前記ロータコアとを固定させる。
【0013】
この構成によれば、ロータコアの外周面及びリングマグネットの内周面の少なくとも一方に、接着剤が螺旋状に塗布されてなる接着固定部を有するため、ロータコアとリングマグネットを接着固定することができる。このとき、接着固定部(接着剤)は軸方向に離間されるように螺旋状とされるため、その離間する部位も螺旋状とされることとなる。これにより、その離間する部位を介して空気を接着固定部(接着剤)内から抜くことが可能となるため、接着固定部(接着剤)内で空気だまりの発生を減少させることができる。
【0015】
この構成によれば、ロータコア及びリングマグネットの少なくとも一方を、螺旋状に塗布された接着剤に沿って相対的に回転させながら、リングマグネットにロータコアを挿入することで、接着剤間の空気層(接着剤が離間した部位)が一端から他端まで連通した状態をより確実に維持することができる。また、接着剤が熱等で膨張しても、空気層があることで膨張した体積を逃がすことができるため、接着剤の膨張力によってマグネット等が破損することを抑えることができる。
【0016】
上記ロータの製造方法において、前記ロータコアの外周面又は前記リングマグネットの内周面には前記接着剤を塗布する塗布面よりも径方向に窪んだ溝部が、軸方向において前記塗布面間に位置するように螺旋状に連続的に形成され、前記ロータコアの外周面又は前記リングマグネットの内周面の内で、前記溝部が形成されない方の周面には、前記溝部と嵌合されて溝部に沿って螺旋状に案内する嵌合部が形成されるものであり、前記嵌合部と前記溝部とで、前記ロータコア及び前記リングマグネットの少なくとも一方を、螺旋状に塗布された前記接着剤に沿って相対的に回転させながら、前記リングマグネットに前記ロータコアが挿入されることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、ロータコアの外周面又はリングマグネットの内周面の内で、溝部が形成されない方の周面に、嵌合部が形成されるため、溝部に沿って嵌合部を移動させることができるため、ロータコアとリングマグネットとを組み付ける際に、相対的に回転させながら組み付ける(挿入する)ことができる。これにより、接着剤間の空気層である溝部が一端から他端まで連通した状態をより確実に維持することができる。また、接着剤が熱等で膨張しても、溝部(空気層)があることで膨張した体積を逃がすことができるため、接着剤の膨張力によってマグネット等が破損することを抑えることができる。
上記ロータの製造方法において、前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の内で前記接着剤を塗布する周面では、軸方向において該接着剤を塗布する塗布面間の部位が接着剤を塗布しない螺旋状の非塗布面となっており、該非塗布面は、前記ロータコアの外周面及び前記リングマグネットの内周面の内で前記接着剤を塗布する周面に対して径方向に窪むことなく前記塗布面と連続する面となっている。
【発明の効果】
【0018】
本発明のロータ及びロータの製造方法によれば、接着固定の際の空気だまりを減少させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、モータの一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態のモータ10のケース11は、有底円筒状をなすケース本体11aとこのケース本体11aの開口部を閉塞するエンドフレーム11bとを有する。ケース本体11aの内周面にはステータ12が備えられる。
【0021】
図1に示すように、ステータ12は、略円筒状をなし、ステータコア13とコイル14とを備える。ステータコア13は、周方向に沿って配設された複数のティース部13a(
図1では、2つのみ図示)を備える。各ティース部13aは、ステータコア13の外周側で連結されて一体的に構成されている。各ティース部13aには、インシュレータ15を介してコイル14が巻装されている。
【0022】
図1に示すように、ステータ12には、前記エンドフレーム11b側の軸方向一端面を覆うようにターミナルホルダ16が固定されている。ターミナルホルダ16は、絶縁樹脂にて略円筒状に形成されている。ターミナルホルダ16は、給電用ターミナル16aを備え、この給電用ターミナルには前記コイル14が結線され、図示しない制御回路と給電用ターミナル16aにより電気的に接続されている。
【0023】
図1に示すように、ステータ12の内側にはロータ17が備えられている。ロータ17は、ステータコア13の内周面との間に一定の隙間を有して配置されている。ロータ17は、回転軸18と、この回転軸18に固定されたロータコア19と、このロータコア19の外周に配置されたリングマグネット20と、ロータコア19及びリングマグネット20を覆うカバー21とを備える。
【0024】
回転軸18は、その両端部を一対の軸受22,23にて回転可能に支持されている。一方の軸受22は前記ケース本体11aの底部の径方向中央部に設けられており、他方の軸受23は前記エンドフレーム11bの径方向中央部に設けられている。一対の軸受22,23は、ステータ12及びターミナルホルダ16を軸方向に挟むように配置されている。
【0025】
図2及び
図3に示すように、ロータコア19は、ロータコア本体30と鍔部31とを有している。ロータコア本体30は略円柱状をなしており、その外周面30aには螺旋状の溝部32が形成されている。溝部32は、ロータコア19の径方向における質量中心が軸線L1上となるように形成されている。また、ロータコア本体30の外周面30aとリングマグネット20の内周面20aとの間に螺旋状に接着剤が塗布されてなる接着固定部40を有している。接着固定部40はロータコア19とリングマグネット20とを接着固定するものである。接着固定部40は、軸方向に略等間隔離間されるようにして接着剤が螺旋状に複数周(本実施形態では略4周)塗布されて形成される。
【0026】
図2に示すようにロータコア本体30の径方向中央には、回転軸18を挿通する挿通孔30bが回転軸18の軸線L1方向に形成されている。
また、ロータコア19は、
図1に示すように、ロータコア19の外周に固定されたリングマグネット20がステータ12と対向するように回転軸18に対して固定されている。因みに、ステータ12はターミナルホルダ16とともにケース11に収容されているため、軸受22,23間の中央よりもケース本体11aの底部寄りの位置に固定されている。従って、ロータコア19は回転軸18において2つの軸受22,23間の中央から軸線L1に沿ってケース本体11aの底部側(反ターミナルホルダ16側)にずれた位置に固定されている。前記鍔部31は、ロータコア本体30の軸方向端部から径方向外側に向かって延設され、円環状をなしている。鍔部31の外径は、軸方向に略一定となっている。また、ロータコア本体30の反鍔部31側の端部は、端部側ほど直径が小さくなるようなテーパ面30cが形成されており、このテーパ面30cが形成される端部側からリングマグネット20が組み付けられるようになっている。
【0027】
図2に示すように、ロータコア本体30の外周には円筒状のリングマグネット20が配置されている。
図4に示すようにリングマグネット20は、予めその内周面20aの塗布面20bに接着剤が螺旋状に塗布された状態で前記ロータコア19と組み付けられて接着固定されるものである。リングマグネット20の内周面20aには、径方向内側に突出する嵌合突起部20cが軸線L1方向の一端側に形成される。
【0028】
図1に示すように前記カバー21は非磁性体よりなり、円筒部21aと、底部21bと、折曲げ部21cとから構成されている。円筒部21aの軸方向の長さは、ロータコア19の軸方向の長さと等しく形成されている。従って、鍔部31の外周面31a及びリングマグネット20の径方向外側の外周面20dは、円筒部21aにて覆われている。カバー21の底部21bは、円筒部21aの軸方向一端から径方向内側に向かって延設されており、ロータコア本体30の端面30eと当接する。
【0029】
図2に示すように折曲げ部21cは、前記円筒部21aにおける底部21bと逆側の軸方向一端から全周にわたって延設され、周方向のいずれの場所でもその幅が一定に形成されている。この折曲げ部21cは、ロータコア本体30の外周にリングマグネット20が配置され、カバー21がロータコア19に装着された後に、その全周が鍔部31の反リングマグネット20側の端面31bに向けて径方向内側に折り曲げられる。折曲げ部21cがこのように折り曲げられることにより、カバー21は、前記円筒部21aの内周面が鍔部31の外周面31a及びリングマグネット20の径方向外側の外周面20dに当接されてリングマグネット20をロータコア19により強固に固定する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態のモータ10はレゾルバ35を有する。レゾルバ35は、レゾルバ用ロータ36とレゾルバ用ステータ37とから構成されている。このレゾルバ35は、ロータ17の回転位置を検出するためのものである。レゾルバ用ロータ36は、ロータ17の回転軸18において鍔部31との間に間隔を空けた位置に固定されている。そして、レゾルバ用ステータ37は、レゾルバ用ロータ36の外周側で該レゾルバ用ロータ36と対向するように前記エンドフレーム11bに固定されている。そして、前記制御回路は、レゾルバ35にて検出されたロータ17の回転位置に応じてステータ12に電圧を供給する。
【0031】
上記のように構成されたモータ10では、前記制御回路から電圧が供給されると、ステータ12にて回転磁界が発生される。そして、この回転磁界に応じてロータ17が回転される。
【0032】
次に、本実施形態のロータ17のリングマグネット20とロータコア19との組み付け方法(ロータ17の製造方法)について説明する。
ロータコア19(ロータコア本体30)の外周面30aの塗布面30dと、リングマグネット20の内周面20aの塗布面20bに予め接着剤を螺旋状に塗布する。このとき、それぞれの面30d,20bに塗布される接着剤は軸方向において離間するように、溝部32に沿って塗布される。
【0033】
その後、リングマグネット20の嵌合突起部20c側の端部とロータコア本体30のテーパ面30cが形成される側(反鍔部31側)の端部とが近接されて、螺旋状の前記溝部32の一端側に嵌合突起部20cが嵌合する。このとき、ロータコア本体30にテーパ面30cが形成されていることで、前記嵌合突起部20cが形成されたリングマグネット20を外挿して溝部32と嵌合突起部20cとを容易に嵌合させることが可能となっている。
【0034】
そして、嵌合突起部20cが溝部32に沿って螺旋状に案内されることで、リングマグネット20がロータコア本体30に対して相対的に回転されながら挿入されて組み付けられる。ここで、前記溝部32に沿って回転されることで、螺旋状に塗布された前記接着剤に沿って回転されることと同じこととなる。
【0035】
そして、例えば嵌合突起部20cが溝部32の他端側と当接することで、リングマグネット20とロータコア19との組み付けが完了する。
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
【0036】
(1)ロータコア19(ロータコア本体30)の外周面30a及びリングマグネット20の内周面20aに、接着剤が螺旋状に塗布されてなる接着固定部40を有するため、ロータコア19とリングマグネット20を接着固定することができる。このとき、接着固定部40(接着剤)は軸方向に離間されるように螺旋状とされるため、その離間する部位も螺旋状とされることとなる。これにより、その離間する部位を介して空気を接着固定部40(接着剤)内から抜くことが可能となるため、接着固定部40(接着剤)内で空気だまりの発生を減少させることができる。これにより、例えばリングマグネット20をロータコア19に組み付けた際のそれぞれの径方向中心の一致度合い(同軸度)を向上させることができるため、コギングトルクの増加を抑えたり、振動の増加を抑えることができる。また、空気だまりの発生を抑えることで、リングマグネット20とロータコア19の密着状態を確保することができるため、リングマグネット20の割れ等を抑えることができる。
【0037】
(2)ロータコア19(ロータコア本体30)の外周面30aに、接着剤を塗布する塗布面30dよりも径方向に窪んだ溝部32が、軸方向において前記塗布面30d間に位置するように螺旋状に連続的に形成されることで、この溝部32を利用して空気を接着固定部40(接着剤)内から抜くことが可能となる。このため、接着固定部40(接着剤)内で空気だまりの発生をより確実に減少させることができる。
【0038】
(3)リングマグネット20の内周面20a(溝部が形成されない方の周面)に、溝部32と嵌合される嵌合突起部20cが形成されるため、溝部32に沿って嵌合突起部20cを移動させることができるため、ロータコア19とリングマグネット20とを組み付ける際に、相対的に回転させながら組み付ける(挿入する)ことができる。これにより、接着剤間の空気層を構成する溝部32が一端から他端まで連通した状態をより確実に維持することができる。また、接着剤が熱等で膨張しても、溝部32(空気層)があることで膨張した体積を逃がすことができるため、接着剤の膨張力によってリングマグネット等が破損することを抑えることができる。
【0039】
尚、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ロータコア19に螺旋状の溝部32を形成する構成としたが、
図5に示すように溝部を省略した構成を採用してもよい。この場合、嵌合部(嵌合突起部)も省略する。このような場合であっても嵌合部及び溝部が存在している状態と同一となるようにして、リングマグネット20をロータコア本体30に組付ける。すなわち、リングマグネット20を治具で保持し、該治具をロータコア19の接着剤の螺旋塗布状態と一致させて軸移動及び回転をさせて、リングマグネット20をロータコア本体30に組付けることが好ましい。
【0040】
また、溝部32をリングマグネット20側に形成して、ロータコア19側に嵌合突起部20cを形成してもよい。
・上記実施形態並びに上記各構成では、リングマグネット20に、前記溝部32と嵌合する嵌合突起部20cを設ける構成としたが、省略した構成を採用してもよい。
【0041】
・上記実施形態では、リングマグネット20とロータコア19との両方に接着剤を塗布する構成としたが、少なくとも一方に接着剤を塗布して接着固定部40を有する構成としてもよい。
【0042】
・上記実施形態では、リングマグネット20を軸線L1中心に回転させながらリングマグネット20とロータコア19とを組み付ける構成としたが、これに限らない。例えば、ロータコア19を軸線L1中心に回転させながらリングマグネット20とロータコア19とを組み付けたり、ロータコア19とリングマグネット20を軸線L1中心に互いに逆方向に回転させながら組み付けたりしてもよい。また、リングマグネット20とロータコア19の両方を回転させない状態で組み付けてもよい。
【符号の説明】
【0043】
17…ロータ、19…ロータコア、20…リングマグネット、20a…内周面、20c…嵌合突起部(嵌合部)、30d…塗布面、20d,30a,31a…外周面、32…溝部、40…接着固定部。