特許第5981366号(P5981366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981366
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】振動溶着部構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/06 20060101AFI20160818BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20160818BHJP
【FI】
   B29C65/06
   B60R21/205
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-36835(P2013-36835)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-162174(P2014-162174A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋介
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−265162(JP,A)
【文献】 特開2007−007968(JP,A)
【文献】 特開2006−256325(JP,A)
【文献】 特開2006−181999(JP,A)
【文献】 特開2004−009708(JP,A)
【文献】 特開2007−118859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/06
B60R 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶着用基材と、溶着部品とが、一方向へ延びる溶着リブを介して接合された溶着部を有し、
該溶着部が、前記溶着用基材に設定された接合面と、前記溶着部品に、前記接合面に対して当接可能に設けられた当接面とを有して、
前記接合面と当接面とが、それぞれ溶着リブの延設方向へ延びる一対の辺部と、前記溶着リブの幅方向へ延びる一対の辺部とを有する矩形状のものとされ、
前記溶着用基材と溶着部品との間に、前記接合面に対する当接面の当接位置を規定するための位置規定部が設けられた振動溶着部構造において、
前記位置規定部が、矩形状をした前記接合面と当接面との対角位置またはその近傍に対して、前記溶着リブの幅方向へ位置決め可能に、少なくとも2箇所設けられ、
対角の第1のコーナー部に設けられる第1の前記位置規定部が、
前記接合面の外側部分近傍に立設された位置決め用の突出部と、
前記当接面から外方へ張出されて、前記突出部を収容可能な位置決め用の収容部と、を有し、
対角の第2のコーナー部に設けられる第2の前記位置規定部が、前記接合面の外側部分近傍に立設されて、前記当接面の縁部を、直接または間接的に係止する位置決め用の係止部を有することを特徴とする振動溶着部構造。
【請求項2】
前記収容部が、前記突出部を溶着リブの延設方向に対し僅少な間隙を有して挿通させるルーズ孔部を備えると共に、
前記収容部が、前記突出部を、前記溶着リブの幅方向に対して位置規定するための位置規定面を有することを特徴とする請求項1に記載の振動溶着部構造。
【請求項3】
前記収容部が、前記ルーズ孔部の前記溶着用基材側に、溶着リブの延設方向に対して、前記突出部の基部側が広くなり、前記突出部の先端側が狭くなる傾斜面部を有することを特徴とする請求項2に記載の振動溶着部構造。
【請求項4】
前記位置決め用の収容部が、前記溶着用基材とは反対の側に、前記ルーズ孔部を延長するための厚肉部を有することを特徴とする請求項2または請求項3記載の振動溶着部構造。
【請求項5】
前記位置決め用の収容部が、前記ルーズ孔部の周囲に前記溶着用基材側へ突出する突縁部を有し、該突縁部の内周部分に、前記突出部の前記収容部への導入を案内する導入テーパ部を有することを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の振動溶着部構造。
【請求項6】
前記溶着用基材がエアバッグリッド部材であり、前記溶着部品が前記エアバッグリッド部材の裏面側に振動溶着される樹脂製補強部材であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の振動溶着部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置規定の容易化と、位置規定部の破損防止とを行い得るようにした振動溶着部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルなどの車両用内装パネルが設置されている。
【0003】
そして、このインストルメントパネルの助手席側の部分には、緊急時に助手席乗員を保護するための安全装置として、助手席用のエアバッグ装置が設置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記した助手席用のエアバッグ装置は、袋状のエアバッグ本体を折畳んで収納するエアバッグモジュールと、このエアバッグモジュールの上方に設置されたエアバッグリッド部とを備えている。
【0005】
そして、エアバッグモジュールは、その下部を、インストルメントパネルの内部に配設された上記車体強度部材に対し、締結用部材を介して締結固定される。
【0006】
また、エアバッグモジュールは、その上部が、エアバッグリッド部材の裏面側に対し、樹脂製補強部材を介して取付けられる。この樹脂製補強部材は、エアバッグリッド部材の裏面側に振動溶着などによって固定される。
【0007】
エアバッグリッド部材(溶着用基材)と樹脂製補強部材(溶着部品)との間には、両者の位置を規定するための位置規定部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−265162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載された振動溶着部構造では、上記した位置規定部の構成が複雑になっていたため、エアバッグリッド部材と樹脂製補強部材とを位置規定するための作業に手間が掛かるという問題があった。
【0010】
また、振動溶着の際に位置規定部が破損しても、破損によって発生した破片の管理ができないので、位置規定部の破損が起きない構造にしたいという要望があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、
溶着用基材と、溶着部品とが、一方向へ延びる溶着リブを介して接合された溶着部を有し、
該溶着部が、前記溶着用基材に設定された接合面と、前記溶着部品に、前記接合面に対して当接可能に設けられた当接面とを有して、
前記接合面と当接面とが、それぞれ溶着リブの延設方向へ延びる一対の辺部と、前記溶着リブの幅方向へ延びる一対の辺部とを有する矩形状のものとされ、
前記溶着用基材と溶着部品との間に、前記接合面に対する当接面の当接位置を規定するための位置規定部が設けられた振動溶着部構造において、
前記位置規定部が、矩形状をした前記接合面と当接面との対角位置またはその近傍に対して、前記溶着リブの幅方向へ位置決め可能に、少なくとも2箇所設けられ、
対角の第1のコーナー部に設けられる第1の前記位置規定部が、
前記接合面の外側部分近傍に立設された位置決め用の突出部と、
前記当接面から外方へ張出されて、前記突出部を収容可能な位置決め用の収容部と、を有し、
対角の第2のコーナー部に設けられる第2の前記位置規定部が、前記接合面の外側部分近傍に立設されて、前記当接面の縁部を、直接または間接的に係止する位置決め用の係止部を有することを特徴とする。
請求項2に記載された発明は、上記において、
前記収容部が、前記突出部を溶着リブの延設方向に対し僅少な間隙を有して挿通させるルーズ孔部を備えると共に、
前記収容部が、前記突出部を、前記溶着リブの幅方向に対して位置規定するための位置規定面を有することを特徴とする。
請求項3に記載された発明は、上記において、
前記収容部が、前記ルーズ孔部の前記溶着用基材側に、溶着リブの延設方向に対して、前記突出部の基部側が広くなり、前記突出部の先端側が狭くなる傾斜面部を有することを特徴とする。
請求項4に記載された発明は、上記において、
前記位置決め用の収容部が、前記溶着用基材とは反対の側に、前記ルーズ孔部を延長するための厚肉部を有することを特徴とする。
請求項5に記載された発明は、上記において、
前記位置決め用の収容部が、前記ルーズ孔部の周囲に前記溶着用基材側へ突出する突縁部を有し、該突縁部の内周部分に、前記突出部の前記収容部への導入を案内する導入テーパ部を有することを特徴とする。
請求項6に記載された発明は、上記において、
前記溶着用基材がエアバッグリッド部材であり、前記溶着部品が前記エアバッグリッド部材の裏面側に振動溶着される樹脂製補強部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、接合面や当接面の対角位置またはその近傍に、少なくとも2箇所の位置規定部を設けることにより、少ない数の位置規定部で、溶着用基材に対して溶着部品を、溶着リブの延設方向や、溶着リブの幅方向や、回転方向に対して効果的に位置規定することができるようになる。
また、第1の前記位置規定部および第2の前記位置規定部を、接合面や当接面の外側に設けることにより、振動溶着部分の面積(溶着面積)を減らさなくて済むようになるので、位置規定部を、接合面や当接面の内側に設けた場合と比べて、より強固な溶着状態を得ることができる。
そして、第1の位置規定部を、突出部と収容部とによって構成することにより、作業者は、突出部が収容部に収容されたことを確認することで、確実に位置決め作業を行うことができる。しかも、第1の位置規定部の1個所のみにて突出部と収容部との収容状態を確認すれば良いので、位置規定作業が各段に容易となる。更に、振動溶着によって破損される可能性のある部位を1個所にまで減らすことができる。
また、第2の位置規定部を、上記した当接面の縁部を直接または間接的に係止するようにした係止部とすることにより、簡単な構成で効果的且つ確実に位置規定を行わせることができる。しかも、第2の位置規定部の係止状態は、溶着部品における比較的大きい当接面の縁部で確認することができるので、容易且つ確実に位置決め作業を行うことができる。更に、係止部を振動溶着によって破損されないものとすることができる。
請求項2に記載された発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、収容部が、突出部を溶着リブの延設方向に対し僅少な間隙を有して挿通させるルーズ孔部を備えることにより、振動溶着の際に突出部の基部が屈曲される角度を僅かであっても小さくすることができる。これによって、突出部の基部を破損し難くすることができる。
また、収容部が、突出部を、溶着リブの幅方向に対して位置規定するための位置規定面を有することにより、溶着リブの幅方向に対する位置規定を確実に行わせることができる。
請求項3に記載された発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、収容部が、ルーズ孔部の溶着用基材側に、溶着リブの延設方向に対して、突出部の基部側が広くなり、突出部の先端側が狭くなる傾斜面部を有することにより、振動溶着の際に突出部の基部が屈曲される角度をより小さくすることができる。
また、傾斜面部が存在する分だけ、ルーズ孔部の位置が、溶着用基材から面直方向へ離れることになるので、振動溶着の際に突出部の基部が屈曲される角度をより小さくすることができる。
これらにより、屈曲変形による突出部の破損や、破損による突出部の分離脱落を防止することができる。
請求項4に記載された発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、位置決め用の収容部の、溶着用基材とは反対側の部分に厚肉部を設けてルーズ孔部を反対側に延長することにより、位置決めに必要なルーズ孔部の孔長さを確保することができる。これによって、上記したように振動溶着の際に突出部の基部が屈曲される角度を小さくしつつ、位置決め精度を確保し向上することができる。
請求項5に記載された発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、位置決め用の収容部が、収容部の周囲に形成した溶着用基材側へ突出する突縁部の内周部分に導入テーパ部を有することにより、外部から直接目視できないような手探りの状況にあっても、導入テーパ部によって案内させることで、比較的容易に収容部へ突出部を挿入して位置規定を行わせることができるようになる。これにより、溶着用基材に対する溶着部品の設置および位置規定作業を容易化することができる。
請求項6に記載された発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、溶着用基材がエアバッグリッド部材であり、溶着部品が樹脂製補強部材であることにより、エアバッグリッド部材の裏面側に樹脂製補強部材を当接して振動溶着する際に、上記した位置規定の容易化と、位置規定部の破損防止との効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例にかかる振動溶着部構造を備えたインストルメントパネルの斜視図である。
図2図1の縦断面図である。
図3図2の振動溶着部構造を上方から見た平面図でる。
図4図3の部分拡大図である。
図5】ルーズ孔部の部分に設けた傾斜面部を示す部分拡大縦断面図であり、(a)は振動溶着中の振幅中央位置にある時の状態、(b)は振動溶着中の最大振幅位置にある時の状態を示すものである。
図6】タイト孔部とした場合の部分拡大縦断面図であり、(a)は振動溶着中の振幅中央位置にある時の状態、(b)は振動溶着中の最大振幅位置にある時の状態を示すものである。
図7】ルーズ孔部の部分に設けた厚肉部を示す部分拡大縦断面図である。
図8】ルーズ孔部の部分に設けた突縁部および導入テーパ部を示す部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態、および、それを具体化した実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
先ず、 図1図2を用いて、この実施の形態の背景となる構成(車両用エアバッグ構造)について説明する。
【0016】
図に示すように、自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネル1などの車両用内装パネルが設置されている。
【0017】
そして、このインストルメントパネル1の助手席側の部分に対し、緊急時に助手席乗員を保護するための安全装置として、助手席用のエアバッグ装置2を設置する。
【0018】
上記した助手席用のエアバッグ装置2は、図2に示すように、袋状のエアバッグ本体3を折畳んで収納するエアバッグモジュール4と、このエアバッグモジュール4の上方に設置されたエアバッグリッド部材5とを備えたものとされる。
【0019】
そして、エアバッグモジュール4は、その下部が、インストルメントパネル1の内部に配設された車体強度部材13に対し、ボルト、ナットなどの締結用部材14を介して締結固定される。
【0020】
また、エアバッグモジュール4は、その上部が、エアバッグリッド部材5の裏面側に対し、樹脂製補強部材15を介して取付けられる。なお、樹脂製補強部材15については、後述する。
【0021】
上記したエアバッグリッド部材5には、上記したインストルメントパネル1と一体に設けられた一体型のもの(いわゆるインスト一体型リッド)や、インストルメントパネル1とは別体に設けられて、インストルメントパネル1に形成されたリッド取付用開口部にほぼ面一状態で取付けられる別体型のもの(いわゆるインスト別体型リッド)などが存在している。
【0022】
そのため、一体型の場合、上記したエアバッグモジュール4は、インストルメントパネル1におけるインスト一体型リッド(エアバッグリッド部材5)の部分の内面に対して直接的に取付けられることになる(直接取付型)。また、別体型の場合、エアバッグモジュール4は、インスト別体型リッド(エアバッグリッド部材5)の内面に取付けられた状態で、このインスト別体型リッドと共に、インストルメントパネル1に(間接的に)取付けられることになる(間接取付型)。この場合には、一体型となっている。
【0023】
そして、この車両用エアバッグ構造では、エアバッグリッド部材5に対して、袋状のエアバッグ本体3が膨出する開口部(膨出用開口部。特に図示せず)を形成するためのドア部7,8が設けられる。このドア部7,8は、エアバッグリッド部材5の裏面側に形成された開裂線9によって画成される。
【0024】
そして、この開裂線9が、少なくとも、横方向へ延びる横開裂線部11と、この横開裂線部11の両端部を通って縦方向の両側へ延びる一対の縦開裂線部12と、を有する底面視「日」字状のものとされる。そして、底面視「日」字状をした横開裂線部11と一対の縦開裂線部12との間に、2枚のドア部7,8が形成可能とされる。
【0025】
更に、上記した2枚のドア部7,8の外側には、ドア外側部16が形成される。上記したドア部7,8は、エアバッグモジュール4の作動によって上記した開口部を開成させる可動部分であるのに対し、上記したドア外側部16はドア部7,8の外周を取囲む固定部分である。
【0026】
また、上記した樹脂製補強部材15は、少なくとも、上記した各ドア部7,8の裏面側にそれぞれ溶着固定される2枚のドア補強部21,22と、ドア外側部16の裏面側に溶着固定される外周フランジ部23と、上記したドア補強部21,22と外周フランジ部23との間に、上記した開口部を包囲するように設けられるモジュール取付枠部24とを有するものなどとされる。
【0027】
そして、上記したドア補強部21,22が、上記したドア部7,8よりも一回り小さく形成されることにより、2枚のドア補強部21,22と外周フランジ部23との間には、底面視「日」字状をした上記開裂線9の一部を取り囲むように、底面視H字状のスリット部25が形成される(図3参照)。
【0028】
また、上記したドア補強部21,22とモジュール取付枠部24との間には、ドア部7,8およびドア補強部21,22が開く際の回転中心となるヒンジ部26が設けられる。
【0029】
そして、エアバッグリッド部材5と樹脂製補強部材15との間には、両者を位置規定するための位置規定部27が設けられる。
【0030】
また、上記したドア補強部21,22やドア外側部16のエアバッグリッド部材5側の面には、上記した溶着を行うための溶着リブ28が設けられる。
【0031】
更に、上記したモジュール取付枠部24の側面には、エアバッグモジュール4を取付けるための係止用孔部29が設けられる。
【0032】
そして、上記したエアバッグモジュール4は、その上部を、上記したモジュール取付枠部24の内部に挿入した状態で配設されると共に、その上部に設けられたフック部4aが、モジュール取付枠部24(の前後)の側面に形成された係止用孔部29に対し、遊嵌状態で挿入配置され、係止可能な状態とされる。
【0033】
ここで、補足説明を行うと、上記した「エアバッグリッド部材5」は、樹脂製のパネル状部材などとされる。このエアバッグリッド部材5は、例外的な部分を除いて、基本的に均一な板厚を有するものなどとされる。
上記した「エアバッグ本体3」は、上記したように袋状をしており、緊急時に、作動流体が注入されることによって展開し、車室内へ膨出されるようになっている。
【0034】
上記した「開口部」は、文字通り、エアバッグ本体3がエアバッグリッド部材5を通って車室内へ膨出し得るようにするために、緊急時にエアバッグリッド部材5に貫通形成されるものである。この開口部は、実質的にほぼ長方形状または正方形状のものとされる。
【0035】
上記した「ドア部7,8」は、緊急時にエアバッグリッド部材5に上記した開口部を形成するために設けられるものであり、この場合には、上記した開口部を車両前後方向にほぼ二等分した大きさのものとされる。
【0036】
上記した「開裂線9」は、文字通り、エアバッグリッド部材5を開裂するための線状をした部分である。この開裂線9は、溝など連続状のものとしても良いし、ミシン目などのような不連続状のものとしても良い。
【0037】
上記した「横方向」は、この場合、ほぼ車幅方向とされる。
上記した「横開裂線部11」は、文字通り、開裂線9の横方向へ延びる部分を構成するものである。
【0038】
上記した「縦方向」は、この場合、ほぼ車両前後方向とされる。
上記した「縦開裂線部12」は、文字通り、開裂線9の縦方向へ延びる部分を構成するものである。
【0039】
そして、上記した助手席用のエアバッグ装置2は、以下のように作動する。
【0040】
即ち、緊急時に、エアバッグ本体3は袋状に膨らまされる。そして、袋状に膨らんだエアバッグ本体3の圧力でエアバッグリッド部材5が押され、エアバッグリッド部材5に形成された開裂線9が開裂されてドア部7,8が開くことにより、エアバッグリッド部材5に形成された開口部から袋状のエアバッグ本体3が車室内へ膨出することになる。このエアバッグ本体3の車室内への膨出によって、座席の所定位置に着座している乗員を保護・拘束することができる。
【0041】
このドア部7,8は、エアバッグリッド部材5の裏面側に開裂線9を形成することによって画成することができる。この際、開裂線9を、横方向の両側へ延びる横開裂線部11と、この横開裂線部11の両端部を通って縦方向へ延びる一対の縦開裂線部12とを有する、底面視「日」字状のものなどとすることにより、横開裂線部11と一対の縦開裂線部12との間に、観音開きする2枚のドア部7,8が形成される。
【0042】
そして、以上のような背景となる構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【実施例1】
【0043】
<構成>以下、構成について説明する。
(構成1)
この実施例の振動溶着部構造は、図2図4に示すように(主に、図3参照)、溶着用基材31(例えば、エアバッグリッド部材5)と、溶着部品32(例えば、樹脂製補強部材15)とが、一方向へ振動する振動溶着によって接合された溶着部33を有するものとされる。
この溶着部33が、上記溶着用基材31に設定された接合面34と、上記溶着部品32に、上記接合面34に対して当接可能に設けられた当接面35とを有するものとされる。
上記接合面34と当接面35とが、それぞれ振動溶着の振動方向(溶着リブ28の延設方向)へ延びる一対の辺部36と、上記振動方向と直交する方向(溶着リブ28の幅方向)へ延びる一対の辺部37とを有するほぼ矩形状のものとされる。
そして、上記溶着用基材31と溶着部品32との間に、上記接合面34に対する当接面35の当接位置を規定するための位置規定部27が設けられる。
【0044】
そして、上記位置規定部27が、矩形状をした上記接合面34と当接面35との対角位置またはその近傍に対して、振動方向と直交する方向へ位置決め可能に、少なくとも2箇所設けられる。
対角の第1のコーナー部38(またはその近傍)に設けられる第1の位置規定部27が、上記接合面34の外側部分近傍に立設された位置決め用の突出部41と、上記当接面35から外方へ張出されて、上記突出部41を収容可能な位置決め用の収容部42とを有するものとされる。
対角の第2のコーナー部39(またはその近傍)に設けられる第2の位置規定部27が、上記接合面34の外側部分近傍に立設されて、上記当接面35の縁部を、直接または間接的に係止する位置決め用の係止部43を有するものとされる。
【0045】
(補足説明1)
ここで、上記した「溶着用基材31」は、溶着部品32が溶着される被溶着部材とされる。
上記した「溶着部品32」は、溶着用基材31に溶着する溶着部材とされる。
【0046】
上記した「振動溶着」は、文字通り、振動によって、溶着用基材31と溶着部品32とを溶融接着する接合方法である。この場合、溶着用基材31の接合面34に溶着部品32の当接面35を当接して、溶着用基材31の接合面34と溶着部品32の当接面35との間に全面におよぶ一定方向の振動を加圧状態で与えることにより溶着を行うようにする。
【0047】
上記した「溶着部33」は、文字通り、振動溶着によって接合された部分である。
【0048】
上記した「接合面34」は、溶着用基材31の裏面側に形成される。
【0049】
上記した「当接面35」は、溶着部品32の、接合面34と対向する部分に形成される。接合面34と当接面35とは、基本的に同じ大きさおよび形状を有するものとされる。当接面35には、溶着リブ28が設けられる。溶着リブ28は、当接面35から接合面34へ向けて一体的に突設される。
【0050】
上記した「振動方向」は、この場合、ほぼ車幅方向とされている。そして、上記した溶着リブ28は振動方向へ向けて延設される。この場合、溶着リブ28は、車幅方向に延設されている。また、溶着リブ28は、樹脂製補強部材15における、ドア補強部21,22と外周フランジ部23との全域に対して複数本設けられている。
【0051】
上記した「振動方向と直交する方向」は、文字通り、振動方向に対して直交する方向である。この場合には、ほぼ車両前後方向とされている。
【0052】
上記した「位置規定部27」は、溶着用基材31に対して溶着部品32を取付ける際に、正しい位置に正確に設置できるようにするための補助となるものである。
【0053】
上記した「位置決め用の突出部41」は、溶着用基材31(の裏面)から溶着部品32の側へ向けて一体的に突設される。
【0054】
上記した「位置決め用の収容部42」は、溶着部品32に対して一体形成される。この収容部42は、突出部41が貫通される孔部とされるのが好ましい。なお、上記した突出部41は、収容部42から先端部が突出される程度の長さに形成されるのが好ましい。
【0055】
上記した「位置決め用の係止部43」は、溶着用基材31(の裏面)から溶着部品32の側へ向けて一体的に突設される。
【0056】
(構成2)
図4図5に示すように、上記した収容部42が、上記突出部41を振動方向に対し僅少な間隙45を有して挿通させるルーズ孔部46を備えたものとされる。
そして、上記収容部42が、上記突出部41を、振動方向と直交する方向に対して位置規定するための位置規定面47を有するものとされる。
【0057】
(補足説明2)
ここで、上記した「僅少な間隙45」は、突出部41および収容部42の寸法誤差よりは大きく、そして、振動溶着の振動の振幅よりは小さいものとされる。この場合、突出部41および収容部42の寸法誤差を、例えば、合わせておおむね0.5ミリとし、振動の振幅を、例えば、往復3.0ミリとすると、上記した僅少な間隙45は、合わせて0.5ミリよりも大きく3.0ミリよりも小さい範囲に収まるように設定する。
【0058】
上記した「ルーズ孔部46」は、文字通り、図6に示すような、(上記した僅少な間隙45を有さない)タイト孔部48ではないもののことである。この場合、ルーズ孔部46は、振動方向の辺および振動方向と直交する方向の辺を有する角孔などとされている。これに対して、突出部41は、振動方向の面および振動方向と直交する方向の面を有するもの(位置決めリブ)などとされている。
【0059】
上記した「位置規定面47」は、文字通り、振動方向と直交する方向の位置を規定するためのものであり、この場合には、図4中の上側の辺に形成されている。
【0060】
(構成3)
図5に示すように、上記収容部42が、上記ルーズ孔部46の上記溶着用基材31側に、振動方向に対して、上記突出部41の基部側が広くなり、上記突出部41の先端側が狭くなる傾斜面部51を有するものとされる。
【0061】
(補足説明3)
ここで、上記した「突出部41の基部」は、突出部41の溶着用基材31側の(付根)部分のことである。
【0062】
上記した「突出部41の先端」は、突出部41の溶着用基材31から離れた側の部分のことである。
【0063】
上記した「傾斜面部51」は、振動溶着時に突出部41の基部との干渉部分を減らすための干渉低減形状部である。この干渉低減形状部は、突出部41の両側に広がるものとされる。この場合、干渉低減形状部は、車幅方向に対して広がるように形成されている。この場合、傾斜面部51は、収容部42の肉厚の半分程度の範囲に設けられている。
【0064】
(構成4)
図7に示すように、上記位置決め用の収容部42が、上記溶着用基材31とは反対の側に、上記ルーズ孔部46を延長するための厚肉部53を有するものとされる。
【0065】
(補足説明4)
ここで、上記した「厚肉部53」は、収容部42の、溶着用基材31とは反対側の面における、ルーズ孔部46の周囲に形成される。厚肉部53は、上記した傾斜面部51によるルーズ孔部46の減少分程度の厚みを有するものなどとされる。
【0066】
(構成5)
図8に示すように、上記位置決め用の収容部42が、上記ルーズ孔部46の周囲に上記溶着用基材31側へ突出する突縁部55を有し、この突縁部55の内周部分に、上記突出部41の上記収容部42への導入を案内する導入テーパ部56が形成される。
【0067】
(補足説明5)
ここで、上記した「突縁部55」は、収容部42の、溶着用基材31側の面における、ルーズ孔部46の周囲に形成される。突縁部55は、振動溶着後に溶着用基材31と溶着部品32との間に形成される隙間程度の高さを有するものなどとされる。
【0068】
上記した「導入テーパ部56」は、傾斜面部51と同じ傾斜角を有するものとしても良いし、異なる傾斜角を有するものとしても良い。
【0069】
なお、突縁部55および導入テーパ部56は、上記した厚肉部53と共に設けるようにしても、厚肉部53とは別に単独で設けるようにしても良い。
【0070】
(構成6)
既に上記したように、上記溶着用基材31がエアバッグリッド部材5とされる。
上記溶着部品32が上記エアバッグリッド部材5の裏面側に振動溶着される樹脂製補強部材15とされる。
【0071】
(補足説明6)
ここで、「エアバッグリッド部材5」は、上記したようなものである。
【0072】
また、「樹脂製補強部材15」は、上記したようなものである。
【0073】
この場合、第1の位置規定部27の収容部42は、車幅方向の両側に位置する辺部37の一方における、車両前方に位置する辺部36寄りの位置に設けられている。また、第2の位置規定部27の係止部43は、車両後方に位置する辺部36における、車幅方向の両側に位置する辺部37の他方に寄った位置に設けられている。但し、第1の位置規定部27と第2の位置規定部27との設置位置は、これに限るものではない。
【0074】
なお、溶着用基材31および溶着部品32は、エアバッグリッド部材5および樹脂製補強部材15を想定しているが、これらに限るものではなく、広く一般的に適用することが可能であることは、勿論である。
【0075】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(作用効果1)
接合面34や当接面35の対角位置またはその近傍に、少なくとも2箇所の位置規定部27を設けることにより、少ない数の位置規定部27で、溶着用基材31に対して溶着部品32を、振動方向や、振動方向と直交する方向や、回転方向に対して効果的に位置規定することができるようになる。
【0076】
また、第1の上記位置規定部27および第2の上記位置規定部27を、接合面34や当接面35の外側に設けることにより、振動溶着部分の面積(溶着面積)を減らさなくて済むようになるので、位置規定部27を、接合面34や当接面35の内側に設けた場合と比べて、より強固な溶着状態を得ることができる。
【0077】
そして、第1の位置規定部27を、突出部41と収容部42とによって構成することにより、作業者は、突出部41が収容部42に収容されたことを確認することで、確実に位置決め作業を行うことができる。しかも、第1の位置規定部27の1個所のみにて突出部41と収容部42との収容状態を確認すれば良いので、位置規定作業が各段に容易となる。更に、振動溶着によって破損される可能性のある部位を1個所にまで減らすことができる。
【0078】
また、第2の位置規定部27を、上記した当接面35の縁部を直接または間接的に係止するようにした係止部43とすることにより、簡単な構成で効果的且つ確実に位置規定を行わせることができる。しかも、第2の位置規定部27の係止状態は、溶着部品32における比較的大きい当接面35の縁部で確認することができるので、容易且つ確実に位置決め作業を行うことができる。更に、係止部43を振動溶着によって破損されないものとすることができる。
【0079】
(作用効果2)
図4に示すように、収容部42が、突出部41を振動方向に対し僅少な間隙45を有して挿通させるルーズ孔部46を備えることにより、図5に示すように、振動溶着の際に突出部41の基部が屈曲される角度を僅かであっても小さくすることができる。これによって、突出部41の基部を破損し難くすることができる。
【0080】
これに対し、図6に示すように、タイト孔部48とした場合には、振動溶着の際に突出部41の基部が屈曲される角度が上記よりも大きくなるので、突出部41の基部が破損する可能性が高くなる。
【0081】
また、収容部42が、突出部41を、振動方向と直交する方向に対して位置規定するための位置規定面47を有することにより、振動方向と直交する方向に対する位置規定を確実に行わせることができる。
【0082】
(作用効果3)
図5に示すように、収容部42が、ルーズ孔部46の溶着用基材31側に、振動方向に対して、突出部41の基部側が広くなり、突出部41の先端側が狭くなる傾斜面部51を有することにより、振動溶着の際に突出部41の基部が屈曲される角度をより小さくすることができる。
【0083】
また、傾斜面部51が存在する分だけ、ルーズ孔部46の位置が、溶着用基材31から面直方向へ離れることになるので、振動溶着の際に突出部41の基部が屈曲される角度をより小さくすることができる。
【0084】
これらにより、屈曲変形による突出部41の破損や、破損による突出部41の分離脱落を防止することができる。
【0085】
(作用効果4)
図7に示すように、位置決め用の収容部42の、溶着用基材31とは反対側の部分に厚肉部53を設けてルーズ孔部46を反対側に延長することにより、位置決めに必要なルーズ孔部46の孔長さを確保することができる。これによって、上記したように振動溶着の際に突出部41の基部が屈曲される角度を小さくしつつ、位置決め精度を確保し向上することができる。
【0086】
(作用効果5)
図8に示すように、位置決め用の収容部42が、収容部42の周囲に形成した溶着用基材31側へ突出する突縁部55の内周部分に導入テーパ部56を有することにより、外部から直接目視できないような手探りの状況にあっても、導入テーパ部56によって案内させることで、比較的容易に収容部42へ突出部41を挿入して位置規定を行わせることができるようになる。これにより、溶着用基材31に対する溶着部品32の設置および位置規定作業を容易化することができる。
【0087】
(作用効果6)
そして、溶着用基材31がエアバッグリッド部材5であり、溶着部品32が樹脂製補強部材15であることにより、エアバッグリッド部材5の裏面側に樹脂製補強部材15を当接して振動溶着する際に、上記した位置規定の容易化と、位置規定部27の破損防止との効果を得ることができる。
【0088】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0089】
5 エアバッグリッド部材
15 樹脂製補強部材
27 位置規定部
31 溶着用基材
32 溶着部品
33 溶着部
34 接合面
35 当接面
36 辺部
37 辺部
38 第1のコーナー部
39 第2のコーナー部
41 位置決め用の突出部
42 位置決め用の収容部
43 位置決め用の係止部
45 僅少な間隙
46 ルーズ孔部
47 位置規定面
51 傾斜面部
53 厚肉部
55 突縁部
56 導入テーパ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8