【実施例1】
【0043】
<構成>以下、構成について説明する。
(構成1)
この実施例の振動溶着部構造は、
図2〜
図4に示すように(主に、
図3参照)、溶着用基材31(例えば、エアバッグリッド部材5)と、溶着部品32(例えば、樹脂製補強部材15)とが、一方向へ振動する振動溶着によって接合された溶着部33を有するものとされる。
この溶着部33が、上記溶着用基材31に設定された接合面34と、上記溶着部品32に、上記接合面34に対して当接可能に設けられた当接面35とを有するものとされる。
上記接合面34と当接面35とが、それぞれ振動溶着の振動方向
(溶着リブ28の延設方向)へ延びる一対の辺部36と、上記振動方向と直交する方向
(溶着リブ28の幅方向)へ延びる一対の辺部37とを有するほぼ矩形状のものとされる。
そして、上記溶着用基材31と溶着部品32との間に、上記接合面34に対する当接面35の当接位置を規定するための位置規定部27が設けられる。
【0044】
そして、上記位置規定部27が、矩形状をした上記接合面34と当接面35との対角位置またはその近傍に対して、振動方向と直交する方向へ位置決め可能に、少なくとも2箇所設けられる。
対角の第1のコーナー部38(またはその近傍)に設けられる第1の位置規定部27が、上記接合面34の外側部分近傍に立設された位置決め用の突出部41と、上記当接面35から外方へ張出されて、上記突出部41を収容可能な位置決め用の収容部42とを有するものとされる。
対角の第2のコーナー部39(またはその近傍)に設けられる第2の位置規定部27が、上記接合面34の外側部分近傍に立設されて、上記当接面35の縁部を、直接または間接的に係止する位置決め用の係止部43を有するものとされる。
【0045】
(補足説明1)
ここで、上記した「溶着用基材31」は、溶着部品32が溶着される被溶着部材とされる。
上記した「溶着部品32」は、溶着用基材31に溶着する溶着部材とされる。
【0046】
上記した「振動溶着」は、文字通り、振動によって、溶着用基材31と溶着部品32とを溶融接着する接合方法である。この場合、溶着用基材31の接合面34に溶着部品32の当接面35を当接して、溶着用基材31の接合面34と溶着部品32の当接面35との間に全面におよぶ一定方向の振動を加圧状態で与えることにより溶着を行うようにする。
【0047】
上記した「溶着部33」は、文字通り、振動溶着によって接合された部分である。
【0048】
上記した「接合面34」は、溶着用基材31の裏面側に形成される。
【0049】
上記した「当接面35」は、溶着部品32の、接合面34と対向する部分に形成される。接合面34と当接面35とは、基本的に同じ大きさおよび形状を有するものとされる。当接面35には、溶着リブ28が設けられる。溶着リブ28は、当接面35から接合面34へ向けて一体的に突設される。
【0050】
上記した「振動方向」は、この場合、
ほぼ車幅方向とされている。そして、上記した溶着リブ28は振動方向へ向けて延設される。この場合、溶着リブ28は、車幅方向に延設されている。また、溶着リブ28は、樹脂製補強部材15における、ドア補強部21,22と外周フランジ部23との全域に対して複数本設けられている。
【0051】
上記した「振動方向と直交する方向」は、文字通り、振動方向に対して直交する方向である。この場合には、ほぼ車両前後方向とされている。
【0052】
上記した「位置規定部27」は、溶着用基材31に対して溶着部品32を取付ける際に、正しい位置に正確に設置できるようにするための補助となるものである。
【0053】
上記した「位置決め用の突出部41」は、溶着用基材31(の裏面)から溶着部品32の側へ向けて一体的に突設される。
【0054】
上記した「位置決め用の収容部42」は、溶着部品32に対して一体形成される。この収容部42は、突出部41が貫通される孔部とされるのが好ましい。なお、上記した突出部41は、収容部42から先端部が突出される程度の長さに形成されるのが好ましい。
【0055】
上記した「位置決め用の係止部43」は、溶着用基材31(の裏面)から溶着部品32の側へ向けて一体的に突設される。
【0056】
(構成2)
図4、
図5に示すように、上記した収容部42が、上記突出部41を振動方向に対し僅少な間隙45を有して挿通させるルーズ孔部46を備えたものとされる。
そして、上記収容部42が、上記突出部41を、振動方向と直交する方向に対して位置規定するための位置規定面47を有するものとされる。
【0057】
(補足説明2)
ここで、上記した「僅少な間隙45」は、突出部41および収容部42の寸法誤差よりは大きく、そして、振動溶着の振動の振幅よりは小さいものとされる。この場合、突出部41および収容部42の寸法誤差を、例えば、合わせておおむね0.5ミリとし、振動の振幅を、例えば、往復3.0ミリとすると、上記した僅少な間隙45は、合わせて0.5ミリよりも大きく3.0ミリよりも小さい範囲に収まるように設定する。
【0058】
上記した「ルーズ孔部46」は、文字通り、
図6に示すような、(上記した僅少な間隙45を有さない)タイト孔部48ではないもののことである。この場合、ルーズ孔部46は、振動方向の辺および振動方向と直交する方向の辺を有する角孔などとされている。これに対して、突出部41は、振動方向の面および振動方向と直交する方向の面を有するもの(位置決めリブ)などとされている。
【0059】
上記した「位置規定面47」は、文字通り、振動方向と直交する方向の位置を規定するためのものであり、この場合には、
図4中の上側の辺に形成されている。
【0060】
(構成3)
図5に示すように、上記収容部42が、上記ルーズ孔部46の上記溶着用基材31側に、振動方向に対して、上記突出部41の基部側が広くなり、上記突出部41の先端側が狭くなる傾斜面部51を有するものとされる。
【0061】
(補足説明3)
ここで、上記した「突出部41の基部」は、突出部41の溶着用基材31側の(付根)部分のことである。
【0062】
上記した「突出部41の先端」は、突出部41の溶着用基材31から離れた側の部分のことである。
【0063】
上記した「傾斜面部51」は、振動溶着時に突出部41の基部との干渉部分を減らすための干渉低減形状部である。この干渉低減形状部は、突出部41の両側に広がるものとされる。この場合、干渉低減形状部は、車幅方向に対して広がるように形成されている。この場合、傾斜面部51は、収容部42の肉厚の半分程度の範囲に設けられている。
【0064】
(構成4)
図7に示すように、上記位置決め用の収容部42が、上記溶着用基材31とは反対の側に、上記ルーズ孔部46を延長するための厚肉部53を有するものとされる。
【0065】
(補足説明4)
ここで、上記した「厚肉部53」は、収容部42の、溶着用基材31とは反対側の面における、ルーズ孔部46の周囲に形成される。厚肉部53は、上記した傾斜面部51によるルーズ孔部46の減少分程度の厚みを有するものなどとされる。
【0066】
(構成5)
図8に示すように、上記位置決め用の収容部42が、上記ルーズ孔部46の周囲に上記溶着用基材31側へ突出する突縁部55を有し、この突縁部55の内周部分に、上記突出部41の上記収容部42への導入を案内する導入テーパ部56が形成される。
【0067】
(補足説明5)
ここで、上記した「突縁部55」は、収容部42の、溶着用基材31側の面における、ルーズ孔部46の周囲に形成される。突縁部55は、振動溶着後に溶着用基材31と溶着部品32との間に形成される隙間程度の高さを有するものなどとされる。
【0068】
上記した「導入テーパ部56」は、傾斜面部51と同じ傾斜角を有するものとしても良いし、異なる傾斜角を有するものとしても良い。
【0069】
なお、突縁部55および導入テーパ部56は、上記した厚肉部53と共に設けるようにしても、厚肉部53とは別に単独で設けるようにしても良い。
【0070】
(構成6)
既に上記したように、上記溶着用基材31がエアバッグリッド部材5とされる。
上記溶着部品32が上記エアバッグリッド部材5の裏面側に振動溶着される樹脂製補強部材15とされる。
【0071】
(補足説明6)
ここで、「エアバッグリッド部材5」は、上記したようなものである。
【0072】
また、「樹脂製補強部材15」は、上記したようなものである。
【0073】
この場合、第1の位置規定部27の収容部42は、車幅方向の両側に位置する辺部37の一方における、車両前方に位置する辺部36寄りの位置に設けられている。また、第2の位置規定部27の係止部43は、車両後方に位置する辺部36における、車幅方向の両側に位置する辺部37の他方に寄った位置に設けられている。但し、第1の位置規定部27と第2の位置規定部27との設置位置は、これに限るものではない。
【0074】
なお、溶着用基材31および溶着部品32は、エアバッグリッド部材5および樹脂製補強部材15を想定しているが、これらに限るものではなく、広く一般的に適用することが可能であることは、勿論である。
【0075】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(作用効果1)
接合面34や当接面35の対角位置またはその近傍に、少なくとも2箇所の位置規定部27を設けることにより、少ない数の位置規定部27で、溶着用基材31に対して溶着部品32を、振動方向や、振動方向と直交する方向や、回転方向に対して効果的に位置規定することができるようになる。
【0076】
また、第1の上記位置規定部27および第2の上記位置規定部27を、接合面34や当接面35の外側に設けることにより、振動溶着部分の面積(溶着面積)を減らさなくて済むようになるので、位置規定部27を、接合面34や当接面35の内側に設けた場合と比べて、より強固な溶着状態を得ることができる。
【0077】
そして、第1の位置規定部27を、突出部41と収容部42とによって構成することにより、作業者は、突出部41が収容部42に収容されたことを確認することで、確実に位置決め作業を行うことができる。しかも、第1の位置規定部27の1個所のみにて突出部41と収容部42との収容状態を確認すれば良いので、位置規定作業が各段に容易となる。更に、振動溶着によって破損される可能性のある部位を1個所にまで減らすことができる。
【0078】
また、第2の位置規定部27を、上記した当接面35の縁部を直接または間接的に係止するようにした係止部43とすることにより、簡単な構成で効果的且つ確実に位置規定を行わせることができる。しかも、第2の位置規定部27の係止状態は、溶着部品32における比較的大きい当接面35の縁部で確認することができるので、容易且つ確実に位置決め作業を行うことができる。更に、係止部43を振動溶着によって破損されないものとすることができる。
【0079】
(作用効果2)
図4に示すように、収容部42が、突出部41を振動方向に対し僅少な間隙45を有して挿通させるルーズ孔部46を備えることにより、
図5に示すように、振動溶着の際に突出部41の基部が屈曲される角度を僅かであっても小さくすることができる。これによって、突出部41の基部を破損し難くすることができる。
【0080】
これに対し、
図6に示すように、タイト孔部48とした場合には、振動溶着の際に突出部41の基部が屈曲される角度が上記よりも大きくなるので、突出部41の基部が破損する可能性が高くなる。
【0081】
また、収容部42が、突出部41を、振動方向と直交する方向に対して位置規定するための位置規定面47を有することにより、振動方向と直交する方向に対する位置規定を確実に行わせることができる。
【0082】
(作用効果3)
図5に示すように、収容部42が、ルーズ孔部46の溶着用基材31側に、振動方向に対して、突出部41の基部側が広くなり、突出部41の先端側が狭くなる傾斜面部51を有することにより、振動溶着の際に突出部41の基部が屈曲される角度をより小さくすることができる。
【0083】
また、傾斜面部51が存在する分だけ、ルーズ孔部46の位置が、溶着用基材31から面直方向へ離れることになるので、振動溶着の際に突出部41の基部が屈曲される角度をより小さくすることができる。
【0084】
これらにより、屈曲変形による突出部41の破損や、破損による突出部41の分離脱落を防止することができる。
【0085】
(作用効果4)
図7に示すように、位置決め用の収容部42の、溶着用基材31とは反対側の部分に厚肉部53を設けてルーズ孔部46を反対側に延長することにより、位置決めに必要なルーズ孔部46の孔長さを確保することができる。これによって、上記したように振動溶着の際に突出部41の基部が屈曲される角度を小さくしつつ、位置決め精度を確保し向上することができる。
【0086】
(作用効果5)
図8に示すように、位置決め用の収容部42が、収容部42の周囲に形成した溶着用基材31側へ突出する突縁部55の内周部分に導入テーパ部56を有することにより、外部から直接目視できないような手探りの状況にあっても、導入テーパ部56によって案内させることで、比較的容易に収容部42へ突出部41を挿入して位置規定を行わせることができるようになる。これにより、溶着用基材31に対する溶着部品32の設置および位置規定作業を容易化することができる。
【0087】
(作用効果6)
そして、溶着用基材31がエアバッグリッド部材5であり、溶着部品32が樹脂製補強部材15であることにより、エアバッグリッド部材5の裏面側に樹脂製補強部材15を当接して振動溶着する際に、上記した位置規定の容易化と、位置規定部27の破損防止との効果を得ることができる。
【0088】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。