(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一主面側に配されたフィルム層および他主面側に配された、前記フィルム層よりもヤング率が低い接着層を含むとともに厚み方向に貫通するビア孔が形成された樹脂層と、該樹脂層の前記他主面に配された第1導電層と、前記樹脂層の前記一主面に配された第2導電層と、前記ビア孔の内壁に被着しているとともに前記第1導電層および前記第2導電層に接続したビア導体とを備え、
前記ビア孔は、前記フィルム層を厚み方向に貫通するとともに前記一主面側から前記他主面側に向かって幅が小さくなる第1貫通部と、前記接着層における前記一主面側の領域を厚み方向に貫通するとともに前記一主面側から前記他主面側に向かって幅が小さくなる第2貫通部と、前記接着層における前記他主面側の領域を厚み方向に貫通するとともに前記一主面側から前記他主面側に向かって幅が小さくなる第3貫通部とを含んでおり、
前記ビア孔の貫通方向に対する前記第1貫通部の内壁の傾斜角は、前記ビア孔の貫通方向に対する前記第2貫通部の内壁の傾斜角よりも小さく、かつ前記ビア孔の貫通方向に対する前記第3貫通部の内壁の傾斜角は、前記ビア孔の貫通方向に対する前記第2貫通部の内壁の傾斜角よりも小さいことを特徴とする配線基板。
第1導電層上に、該第1導電層と反対側である一主面側にフィルム層および前記第1導電層側である他主面側に配された、前記フィルム層よりもヤング率が低い接着層を含む樹脂層を形成する工程と、
第1レーザー加工を用いて、前記フィルム層を厚み方向に貫通するとともに前記一主面側から前記他主面側に向かって幅が小さくなる第1貫通部および前記接着層を厚み方向に貫通するとともに前記一主面側から前記他主面側に向かって幅が小さくなる第2貫通部を含むとともに、前記第1導電層の一部を露出した貫通孔を、該貫通孔の貫通方向に対する前記第1貫通部の内壁の傾斜角が、前記貫通孔の貫通方向に対する前記第2貫通部の内壁の傾斜角よりも小さくなるように、前記樹脂層に形成する工程と、
第2レーザー加工を用いて、前記第2貫通部の前記接着層における前記他主面側の領域を、前記一主面側から前記他主面側に向かって幅が小さくなり、かつ前記貫通孔の貫通方向に対する内壁の傾斜角が前記貫通孔の貫通方向に対する前記第2貫通部の内壁の傾斜角よりも小さい第3貫通部としつつ、前記貫通孔をビア孔とする工程と、
該ビア孔内にビア導体を形成する工程と、
該ビア導体に接続した第2導電層を前記樹脂層の一主面に形成する工程とを備えたことを特徴とする配線基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施形態における配線基板を含む実装構造体を、
図1を参照しつつ詳細に説明する。
【0009】
図1(a)に示す実装構造体1は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置またはその周辺機器等の電子機器に使用されるものである。この実装構造体1は、電子部品2と、該電子部品2に接続されたバンプ3と、該バンプ3を介して電子部品2をフリップチップ実装した配線基板4とを含んで構成されている。この実装構造体1は、マザーボード等の外部回路基板(図示しない)に搭載される。外部回路基板から配線基板4を介して電子部品2に信号および電源が供給されることによって、電子部品2が駆動および制御され、実装構造体1は所望の機能を発揮する。
【0010】
電子部品2は、例えばICまたはLSI等の半導体素子を用いることができる。該半導体素子は、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウムまたは炭化珪素等の半導体材料によって形成することができる。電子部品2の厚みは、例えば0.1mm以上1mm以下である。電子部品2の各方向への熱膨張率は、例えば2ppm/℃以上4ppm/℃以下である。電子部品2のヤング率は、例えば130GPa以上190GPa以下である。
なお、電子部品2の熱膨張率は、市販のTMA装置(Thermo Mechanical Analysis)を用いて測定される。また、電子部品2のヤング率は、市販のDMA装置(Dynamic Mechanical Analysis)を用いて測定される。以下、各部材の熱膨張率およびヤング率は、電子部品2と同様に測定される。
【0011】
バンプ3は、例えば鉛、錫、銀、金、銅、亜鉛、ビスマス、インジウムまたはアルミニウム等を含む半田等の導電材料によって形成することができる。
配線基板4は、コア基板5とコア基板5の両主面に配された一対の配線層6とを含んでいる。
【0012】
コア基板5は、配線基板4の剛性を高めるものである。コア基板5は、基体7と、該基体7を厚み方向に貫通する筒状のスルーホール導体8と、スルーホール導体8の内部に配された柱状の絶縁体9とを含んでいる。
【0013】
基体7は、コア基板5の主要部をなすものである。この基体7は、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂と、この樹脂に被覆されたガラスクロス等の基材と、樹脂中に分散したシリカフィラー等のフィラーとを含んでいる。この基体7の厚みは、例えば0.1mm以上1mm以下である。基体7の平面方向(XY平面方向)への熱膨張率は、例えば5ppm/℃以上30ppm/℃以下である。基体7の厚み方向(Z方向)への熱膨張率は、例えば15ppm/℃以上50ppm/℃以下である。基体7のヤング率は、例えば5GPa以上30GPa以下である。
【0014】
スルーホール導体8は、コア基板5の上下の配線層6を電気的に接続するものである。スルーホール導体8は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料によって形成することができる。なお、スルーホール導体8は、筒状ではなく、柱状であっても構わない。
【0015】
絶縁体9は、後述するビア導体12の支持面を形成するものである。この絶縁体9は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料によって形成することができる。
【0016】
一方、コア基板5の上下には、上述した如く、一対の配線層6が形成されている。配線層6は、コア基板5上に積層された複数の樹脂層10と、コア基板5上、樹脂層10同士の間および樹脂層10上に配された複数の導電層11と、樹脂層10を厚み方向に貫通して導電層11の一部を露出したビア孔Vと、ビア孔V内に配されているとともに導電層11に接続したビア導体12とを含んでいる。
【0017】
樹脂層10は、導電層11を支持する支持部材として機能するだけでなく、導電層11同士の短絡を防ぐ絶縁部材として機能するものである。この樹脂層10は、
図1(b)に示すように、コア基板5と反対側である一主面10a側に配されたフィルム層13と、コア基板側5である他主面10b側に配された接着層14とを含んでいる。この樹脂層10は、厚みが例えば5μm以上40μm以下である。
【0018】
フィルム層13は、接着層14よりもヤング率が高いことから、配線基板4の剛性を高め、応力が加わった際の配線基板4の反りや変形を抑制することができる。また、フィルム層13は、接着層14よりも平面方向における熱膨張率が低い。その結果、配線基板4の平面方向における熱膨張率を低減して、配線基板4と電子部品2との熱膨張率の差を低減することができ、この熱膨張率の差に起因した配線基板4の反りを抑制することができる。このフィルム層13は、例えば、樹脂と樹脂中に分散したフィラーとを含んでいる。また、フィルム層13の厚みは、例えば2μm上20μm以下である。フィルム層13の平面方向への熱膨張率は、例えば0ppm/℃以上15ppm/℃以下である。フィルム層13の厚み方向への熱膨張率は、例えば60ppm/℃以上150ppm/℃以下である。フィルム層13のヤング率は、例えば2.5GPa以上10GPa以下である。
フィルム層13の樹脂は、例えばポリイミドベンゾオキサゾール樹脂等のポリイミド樹脂等を用いることができ、各樹脂分子鎖の長手方向がフィルム層13の平面方向に平行である構造を有するフィルム状である。このような樹脂を用いることにより、フィルム層13のヤング率を高めるとともにフィルム層13の平面方向への熱膨張率を小さくすることができる。
フィルム層13のフィラーは、複数のフィラー粒子からなり、例えば酸化ケイ素からなるシリカフィラーを用いることができる。フィラー粒子の各方向への熱膨張率は、例えば0ppm/℃以上7ppm/℃以下である。また、フィラー粒子のヤング率は、例えば20GPa以上30GPa以下である。フィルム層13におけるフィラーの含有割合は、例えば0.5体積%以上3体積%以下である。なお、フィルム層13の複数の断面における無機絶縁粒子の占める面積比率(面積%)の平均値を含有割合(体積%)とみなす。
【0019】
接着層14は、フィルム層13よりもヤング率が低いことから、厚み方向に隣接したフィルム層13同士を接着するとともに、導電層11の側面およびコア基板5と反対側の一主面に接着して導電層11を固定するものである。この接着層14は、樹脂を含む。なお、接着層14は、ヤング率の観点からフィラーを含まないことが望ましいが、フィルム層13と同様のフィラーを含んでいても構わない。接着層14の厚みは、例えば2μm以上20μm以下である。接着層14の各方向への熱膨張率は、例えば140ppm/℃以上200ppm/℃以下である。接着層14のヤング率は、例えば0.05GPa以上5GPa以下である。
接着層14の樹脂は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、またはアミド樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0020】
導電層11は、接地用配線、電力供給用配線または信号用配線として機能するものである。導電層11の側面およびコア基板5と反対側の一主面は、接着層14に接着しており、コア基板5側の他主面は、フィルム層13または基体7に接着している。導電層11は、
図1(b)に示すように、フィルム層13または基体7に被着したスパッタ膜15と、スパッタ膜15上に配された電解めっき部16とを含んでいる。導電層11の厚みは、例えば3μm以上20μm以下である。
【0021】
スパッタ膜15は、スパッタリング法によって樹脂層10上に形成された膜であり、導電層11を樹脂層10に接着させる下地膜として機能するものである。このスパッタ膜15は、樹脂層10に被着した、例えばニッケル、クロムまたはニッケルクロム合金からなる第1膜と、第1膜に被着した、例えば銅からなる第2膜とを有する。中でも、第1膜がニッケルクロム合金からなり、第2膜が銅からなることが望ましい。その結果、第1膜が樹脂層10および第2膜との接着強度が高いため、導電層11と樹脂層10との接着強度を高めることができる。このスパッタ膜15の厚みは、例えば20nm以上100nm以下である。スパッタ膜15の各方向への熱膨張率は、例えば10ppm以上15ppm以下である。また、スパッタ膜15のヤング率は、例えば170GPa以上210GPa以下である。
【0022】
電解めっき部16は、電解めっき法によってスパッタ膜15上に形成された部分であり、スパッタ膜15よりも導電率が高いとともに厚みが大きいことから、導電層11の導電性を高める導体部として機能するものである。電解めっき部16は、銅からなる。この電解めっき部16の厚みは、例えば2μm以上30μm以下である。電解めっき部16の平面方向および厚み方向への熱膨張率は、例えば16ppm以上18ppm以下である。電解めっき部16のヤング率は、例えば100GPa以上130GPa以下である。
【0023】
ここで、
図1(b)に示すように、1つの樹脂層10に注目した場合に、樹脂層10の他主面10b側に配された導電層11を第1導電層11aとし、樹脂層10の一主面10a側に配された導電層11を第2導電層11bとする。
【0024】
ビア孔Vは、樹脂層10の一主面10a側から他主面10b側に向かって幅が小さくなるテーパー状である。また、ビア孔Vは、平面視(XY平面)において円形状である。ビア孔Vの内壁Wは、樹脂層10の一部からなり、ビア孔Vの底面Bは、第1導電層11aの一部からなる。ビア孔Vの内壁Wおよび底面Bには、ビア導体12が被着している。ビア孔Vの一主面10a側の開口の幅(直径)は、例えば10μm以上40μm以下であり、ビア孔Vの他主面10b側の開口の幅(直径)は、例えば5μm以上36μm以下である。
ビア導体12は、樹脂層10を介して厚み方向に離れた第1導電層10aおよび第2導電層10bに接続しており、第1導電層10aおよび第2導電層10bを電気的に接続するものである。ビア導体12は、ビア孔V内に充填されており、厚み方向に沿って直線状に配列したスタックドビアをなしている。このビア導体12は、ビア孔Vの内壁Wおよび底面Bに被着したスパッタ膜15と、スパッタ膜15上に配された電解めっき部16とを含んでいる。
【0025】
ビア導体12のスパッタ膜15は、樹脂層10の一主面10a側に配された導電層11のスパッタ膜15と一体的に形成されており、導電層11のスパッタ膜15と同様の機能、材料および厚みを有する。
ビア導体12の電解めっき部16は、ビア孔V内のスパッタ膜15に取り囲まれた領域に充填されているとともに、樹脂層10の一主面10a側に配された導電層11の電解めっき部16と一体的に形成されており、導電層11の電解めっき部16と同様の機能および材料を有する。
【0026】
ところで、樹脂層10の厚み方向における熱膨張率がビア導体12の厚み方向における熱膨張率よりも大きいことから、電子部品2の実装時や作動時の熱が配線基板4に加わると、樹脂層10とビア導体12との厚み方向における熱膨張率の違いに起因して、樹脂層10がビア導体12よりも厚み方向に大きく熱膨張して第1導電層11aおよび第2導電層11bを押圧する。この際、ビア導体12の幅が第2導電層11b側から第1導電層11a側に向かって小さくなっていると、ビア導体12と第1導電層11aとの接続部に応力が集中しやすい。
【0027】
一方、本実施形態において、ビア孔Vは、
図1(b)に示すように、フィルム層13を厚み方向に貫通するとともに樹脂層10の一主面10a側から他主面10b側に向かって幅が小さくなる第1貫通部V1と、接着層に14おける樹脂層10の一主面10a側の領域を厚み方向に貫通するとともに樹脂層10の一主面10a側から他主面10b側に向かって幅が小さくなる第2貫通部V2と、接着層14における樹脂層10の他主面10b側の領域を厚み方向に貫通するとともに樹脂層10の一主面10a側から他主面10b側に向かって幅が小さくなる第3貫通部V3とを含んでおり、ビア孔Vの貫通方向(Z方向)に対する第3貫通部V3の内壁W3の傾斜角は、ビア孔Vの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2の傾斜角よりも小さい。
その結果、ビア孔Vの貫通方向に対する第3貫通部V3の内壁W3の傾斜角がビア孔Vの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2の傾斜角よりも小さいため、第3貫通部V3においてビア導体12と第1導電層11aとの接続面積を増加させることができる。したがって、ビア導体12と第1導電層11aとの接続部における接続強度を高め、この接続部におけるクラックの発生を抑制することができる。それ故、ビア導体12と第1導電層11aとの間の断線の発生を抑制し、ひいては配線基板4の電気的信頼性を向上させることができる。
【0028】
また、ビア孔Vの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2がビア孔Vの貫通方向に対する第3貫通部V3の内壁W3の傾斜角よりも大きいため、第2貫通部V2の内壁W2とビア導体12との接着面積を増加させることができる。したがって、ビア導体12と貫通孔Vの内壁Wとの接着強度を高め、ビア導体12および貫通孔Vの内壁Wの剥離を抑制することができる。それ故、この剥離に起因したビア導体12におけるクラックの発生を抑制することができるため、ビア導体12における断線の発生を抑制し、ひいては配線基板4の電気的信頼性を向上させることができる。
また、ビア孔Vの貫通方向に対する傾斜角が異なる第2貫通部V2および第3貫通部V3がフィルム層13ではなく接着層14を貫通している。したがって、応力が集中しやすい第2貫通部V2の内壁W2と第3貫通部V3の内壁W3との接続部が、フィルム層13よりもヤング率が低い接着層14の一部からなるため、この接続部における応力の集中に起因したビア導体12におけるクラックの発生を抑制することができる。それ故、ビア導体12における断線の発生を抑制し、ひいては配線基板4の電気的信頼性を向上させることができる。
【0029】
本実施形態において、ビア孔Vの貫通方向に対する第1貫通部V1の内壁W1の傾斜角は、ビア孔Vの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2の傾斜角よりも小さい。その結果、ビア導体12よりも厚み方向に大きく熱膨張した樹脂層10が第1貫通部V1の内壁W1を押圧する力を低減することができる。接着層14よりもヤング率が高いことから加わる力が大きくなりやすいフィルム層13の一部である第1貫通部V1の内壁W1を押圧する力を低減することができるため、この押圧に起因したビア導体12と第1導電層11aとの接続部に加わる応力を低減することができ、この接続部におけるクラックの発生を良好に抑制することができる。
【0030】
本実施形態において、ビア孔Vの貫通方向に対する第3貫通部V3の内壁W3の傾斜角は、ビア孔Vの貫通方向に対する第1貫通部V1の内壁W1の傾斜角よりも小さい。その結果、第3貫通部V3においてビア導体12と第1導電層11aとの接続面積を増加させて、ビア導体12と第1導電層11aとの接続部における接続強度を高めることができる。さらに、第1貫通部V1の内壁W1とビア導体12との接着面積を増加させて、第1貫通部V1の内壁W1とビア導体12との剥離を抑制し、ひいてはこの剥離に起因した第2導電層11bにおけるクラックの発生を抑制することができる。なお、ビア孔Vの貫通方向に対する第3貫通部V3の内壁W3の傾斜角は、ビア孔Vの貫通方向に対する第1貫通部V1の内壁W1の傾斜角と同じであっても構わない。
【0031】
本実施形態において、ビア孔Vの貫通方向に対する第1貫通部V1の内壁W1の傾斜角は、例えば0°以上15°以下である。また、ビア孔Vの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2の傾斜角は、例えば15°以上30°以下である。また、ビア孔Vの貫通方向に対する第3貫通部V3の内壁W3の傾斜角は、例えば0°以上10°以下である。なお、ビア孔Vの貫通方向に対する各内壁W1〜W3の傾斜角は、配線基板4の厚み方向に沿った断面において、ビア孔Vの貫通方向(Z方向)と各内壁W1〜W3との間の角度を測定することによって求めることができる。
【0032】
本実施形態において、ビア導体12は、ビア孔Vの内壁W(樹脂層10の一部)および底面B(第1導電層11aの一部)に被着したスパッタ膜15を含んでいる。その結果、ビア孔Vの幅が一主面10a側から他主面10b側に向かって小さくなっていることから、スパッタ膜15をビア孔Vの内壁Wおよび底面Bに良好に被着させることができ、スパッタ膜15の未形成領域を低減し、ビア孔Vの内壁Wおよび底面Bとビア導体12との接着強度を高めることができる。
【0033】
また、ビア孔Vの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2の傾斜角がビア孔Vの貫通方向に対する第3貫通部V3の内壁W3の傾斜角よりも大きいため、スパッタ膜15を形成する際に、第2貫通部V2の内壁W2に被着したスパッタ膜15の一部は、第3貫通部V3の内壁W3に被着したスパッタ膜15の一部よりも厚くなりやすい。その結果、第2貫通部V2の内壁W2とスパッタ膜15との接着強度を高め、ひいては貫通孔Vとビア導体12との接着強度を高めることができる。また、第3貫通部V3は、ビア孔Vの底面Bに近接しており、ビア孔Vの底面Bのスパッタ膜15上に電解めっき部16が形成されることから、ビア孔Vの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2の傾斜角を小さくしても、第2貫通部V2の内壁W2とビア導体12との接着強度を維持することができる。
また、ビア孔Vの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2の傾斜角がビア孔Vの貫通方向に対する第1貫通部V1の内壁W1の傾斜角よりも大きいため、スパッタ膜15を形成する際に、第2貫通部V2の内壁W2に被着したスパッタ膜15の一部は、第1貫通部V1の内壁W1に被着したスパッタ膜15の一部よりも厚くなりやすい。その結果、第2貫通部V2の内壁W2とスパッタ膜15との接着強度を高めることができる。
【0034】
本実施形態において、第2貫通部V2の内壁W2に被着したスパッタ膜15の一部の厚みは、第3貫通部V3の内壁W3に被着したスパッタ膜15の一部の厚みよりも大きい。また、第2貫通部V2の内壁W2に被着したスパッタ膜15の一部の厚みは、第1貫通部V1の内壁W1に被着したスパッタ膜15の一部の厚みよりも大きい。また、第3貫通部V3の内壁W3に被着したスパッタ膜15の一部の厚みは、第1貫通部V1の内壁W1に被着したスパッタ膜15の一部の厚みよりも大きい。
【0035】
第1貫通部V1の内壁W1に被着したスパッタ膜15の一部において、第1膜の厚みは例えば10nm以上30nm以下であり、第2膜の厚みは例えば100nm以上200nm以下である。第2貫通部V2の内壁W2に被着したスパッタ膜15の一部において、第1膜の厚みは、例えば20nm以上40nm以下であり、第2膜の厚みは例えば150nm以上300nm以下である。第3貫通部V3の内壁W3に被着したスパッタ膜15の一部において、第1膜の厚みは例えば5nm以上20nm以下であり、第2膜の厚みは80nm以上150nm以下である。なお、スパッタ膜15の各部分の厚みは、配線基板4の厚み方向に沿った断面において、スパッタ膜15の各部分の厚みを測定することによって求めることができる。
【0036】
次に、上述した実装構造体1の製造方法を、
図2ないし
図4を参照しつつ説明する。
【0037】
(1)
図2(a)に示すように、コア基板5を準備する。具体的には、例えば以下のように行う。
まず、例えば未硬化の樹脂シートを複数積層するとともに最外層に銅箔を積層し、該積層体を加熱加圧して硬化させることにより、基体7を作製する。なお、未硬化は、ISO472:1999に準ずるA‐ステージまたはB‐ステージの状態である。次に、例えばドリル加工やレーザー加工等により、基体7を厚み方向に貫通したスルーホールを形成する。次に、例えば無電解めっき法、電解めっき法、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等により、スルーホールの内壁に導電材料を被着させて、スルーホール導体8を形成する。次に、スルーホール導体8の内部に、樹脂材料等を充填し、絶縁体9を形成する。次に、導電材料を絶縁体9の露出部に被着させた後、従来周知のフォトリソグラフィー技術、エッチング等により、銅箔をパターニングして導電層11を形成する。
以上のようにして、コア基板5を作製することができる。
【0038】
(2)
図2(b)に示すように、コア基板5の上下に配線層6を形成し、配線基板4を作製する。具体的には例えば以下のように行う。
まず、未硬化の接着層前駆体を介して、フィルム層13を導電層11上に配置して積層体を形成する。次に、この積層体を加熱加圧することによって、接着層前駆体を硬化させて接着層14としつつ、導電層11上に樹脂層10を形成する。次に、レーザー加工を用いて、樹脂層10にビア孔Vを形成し、ビア孔V内に導電層11の少なくとも一部を露出させる。次に、スパッタリング法を用いて、樹脂層10の一主面10aとビア孔Vの内壁Wおよび底面Bとにスパッタ膜15を被着させる。
次に、電解めっき法を用いたセミアディティブ法によって、スパッタ膜15上に電解めっき部16を被着させて、ビア導体12および導電層11を形成する。
このようにして、樹脂層10、導電層11およびビア導体12を形成することができる。かかる工程を繰り返すことによって、樹脂層10および導電層11を複数層有する配線層6を形成することができる。その結果、配線基板4を作製することができる。
【0039】
次に、本実施形態におけるビア孔Vおよびビア導体12の形成方法について、
図3および
図4を参照しつつ詳細に説明する。
【0040】
まず、
図3(a)に示すように、第1導電層11a上に、第1導電層11aと反対側である一主面10a側にフィルム層13および第1導電層11a側である他主面10b側に配された、フィルム層13よりもヤング率が低い接着層14を含む樹脂層10を形成する。
【0041】
次に、
図3(b)に示すように、第1レーザー加工を用いて、フィルム層13を厚み方向に貫通するとともに一主面10a側から他主面10b側に向かって幅が小さくなる第1貫通部V1および接着層14を厚み方向に貫通するとともに一主面10a側から他主面10b側に向かって幅が小さくなる第2貫通部V2を含むとともに、第1導電層11aの一部を露出した貫通孔Hを樹脂層10に形成する。
【0042】
次に、
図3(c)に示すように、第2レーザー加工を用いて、第2貫通部V2の接着層14における他主面10b側の領域を、一主面10a側から他主面10b側に向かって幅が小さくなり、かつ貫通孔Hの貫通方向(Z方向)に対する内壁W3の傾斜角が貫通孔Hの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2の傾斜角よりも小さい第3貫通部V3としつつ、貫通孔Hをビア孔Vとする。
【0043】
次に、
図4(a)および(b)に示すように、ビア孔V内にビア導体12を形成するとともに、ビア導体12に接続した第2導電層11bを樹脂層10の一主面10aに形成する。
【0044】
上述したように、本実施形態においては、第1レーザー加工を用いて第1貫通部V1および第2貫通部V2を形成した後、第2レーザー加工を用いて第3貫通部V3を形成している。その結果、第1レーザー加工の後、第2レーザー加工を行なうことによって、ビア孔Vの貫通方向に対する内壁W3の傾斜角がビア孔Vの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2の傾斜角よりも小さい第3貫通部V3を形成することができる。したがって、上述した本実施形態のビア孔Vおよびビア導体12を形成することができる。
【0045】
また、第1レーザー加工で形成した貫通孔Hの底面Bに残存した樹脂の残渣を、第2レーザー加工で除去することができる。したがって、第2レーザー加工の後、ビア孔Vの底面Bに残存した樹脂の残渣を低減することができるため、ビア孔V内に形成されるビア導体12とビア孔Vの底面Bに露出した第1導電層11aの一部との接続不良の発生を抑制できる。特に、ビア孔Vの底面Bにおけるスパッタ膜15の形成不良の発生を抑制し、ビア導体12と第1導電層11aとの接続不良の発生を抑制することができる。
【0046】
本実施形態の第1レーザー加工においては、樹脂層10の一主面10aにレーザービームを照射して、一主面10a側から他主面10b側に向かって貫通孔Hを形成する。この際、トップハット型のレーザービームを用いて、このレーザービームのショット数を適宜調節することによって、ビア孔Vの貫通方向に対する第1貫通部V1の内壁W1の傾斜角を、ビア孔Vの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2の傾斜角よりも小さくすることができる。すなわち、第1貫通部V1においては、レーザービームの照射が十分に行なわれるため、ビア孔Vの貫通方向に対する第1貫通部V1の内壁W1の傾斜角が小さくなるのに対し、第2貫通部V2においては、レーザービームの照射が少ないため、トップハット型のレーザービームにおける中央部から周辺部にかけての強度の違いに応じた形状の内壁W2が形成され、ビア孔Vの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2の傾斜角が大きくなる。
【0047】
また、第1レーザー加工は、YAGレーザーを用いることが望ましい。その結果、例えばCO
2レーザーと比較して制御が容易となるため、ビア孔Vを所望の形状とすることができる。また、第1レーザー加工におけるレーザービームのエネルギー密度は、0.8J/cm
2以上1.5J/cm
2以下であることが望ましい。このエネルギー密度は、レーザー装置の出力設定によって調節される。
【0048】
本実施形態の第1レーザー加工において、レーザービームの照射は、断続的に行われる。すなわち、レーザービームを1回または複数回照射した後、間隔をあけて、レーザービームを1回または複数回照射することを繰り返し行う。このように、レーザービームに照射を複数のサイクルに分けて行なうことによって、貫通孔H内にて過剰な熱の蓄積を抑制することができる。第1レーザー加工における1サイクル当たりのショット数は、1回以上40回以下であること望ましい。また、第1レーザー加工におけるサイクル数は、3回以上60回以下であること望ましい。
【0049】
本実施形態の第2レーザー加工は、第1レーザー加工よりも、レーザービームのビーム径が小さく、かつレーザービームのエネルギー密度が高い。その結果、第2レーザー加工におけるレーザービームのビーム径が小さいことによって、第1貫通部V1および第2貫通部V2の形状を維持しつつ、接着層14における他主面10b側の領域においては、第2レーザー加工におけるレーザービームのエネルギー密度が高いことによって、ビア孔Vの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2の傾斜角よりもビア孔Vの貫通方向に対する内壁W3の傾斜角が小さい第3貫通部V3を形成することができる。なお、第1レーザー加工および第2レーザー加工において、他のレーザー条件を調節することによって、第2貫通部V2の内壁W2および第3貫通部V3の内壁W3の傾斜角を変更しても構わない。
【0050】
本実施形態の第2レーザー加工は、第1レーザー加工と同様に複数のサイクルに分けてレーザービームの照射を行ない、第1レーザー加工よりも1サイクル当たりのショット数が少ない。その結果、第2レーザー加工においては、第1レーザー加工よりも熱を逃がすことができるため、ビア孔Vの形状の変形を抑制し、かつビア孔Vの底面Bに露出した第1導電層11aの損傷を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の第2レーザー加工は、第1レーザー加工よりもサイクル数が多い。その結果、第2レーザー加工後における、ビア孔Vの底面Bにおける接着層14の残渣を低減し、ビア導体16と第1導電層11aとの接続信頼性を高めることができる。
第2レーザー加工は、第1レーザー加工と同様にYAGレーザーを用いることが望ましい。第2レーザー加工におけるレーザービームのエネルギー密度は、1.5J/cm
2以上2J/cm
2以下であることが望ましい。このエネルギー密度は、レーザー装置の出力調整により調節される。第2レーザー加工における1サイクル当たりのショット数は、1回以上20回以下であること望ましい。また、第2レーザー加工におけるサイクル数は、5回以上200回以下であること望ましい。
【0052】
本実施形態においては、スパッタリング法を用いて、ビア孔V内にスパッタ膜15を形成することによって、スパッタ膜15を含むビア導体12を形成する。このような場合において、上述した如く、ビア孔Vの幅が一主面10a側から他主面10b側に向かって小さくなっているため、ビア孔Vの内壁Wに良好にスパッタ膜15を形成することができる。また、ビア孔Vの貫通方向に対する第2貫通部V2の内壁W2の傾斜角がビア孔Vの貫通方向に対する第3貫通部V3の内壁W3の傾斜角よりも大きいため、第2貫通部V2の内壁W2に被着したスパッタ膜15の一部を、第3貫通部V3の内壁W3に被着したスパッタ膜15の一部よりも厚くすることができる。
【0053】
本実施形態においては、ビア導体12および第2導電層11bは、一体的に形成される。なお、ビア導体12および第2導電層11bは、一体的に形成されなくてもよく、例えば、ビア導体12を形成した後、第2導電層11bを形成しても構わない。
【0054】
(3)配線基板4にバンプ3を介して電子部品2をフリップチップ実装することにより、
図1(a)に示す実装構造体1を作製することができる。
【0055】
本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0056】
また、上述した本発明の実施形態においては、電子部品3を配線基板4にフリップチップ実装した構成を例に説明したが、電子部品2を配線基板4にワイヤボンディング実装しても構わないし、電子部品2を配線基板4に内蔵しても構わない。
【0057】
また、上述した本発明の実施形態においては、導電層11およびビア導体12がスパッタ膜15を含む構成を例に説明したが、導電層11およびビア導体12はスパッタ膜15以外の下地膜を含んでいても構わない。この場合、下地膜は、例えば、無電解めっき法、蒸着法またはCVD法によって形成することができる。
【0058】
また、上述した本発明の実施形態においては、導電層11およびビア導体12が電解めっき部16を含む構成を例に説明したが、導電層11およびビア導体12は電解めっき部16以外の導体部を含んでいても構わない。この場合、導体部は、例えば、無電解めっき法、蒸着法またはCVD法によって形成することができる。
【0059】
また、上述した本発明の実施形態においては、ビア導体12がビア孔V内に充填された構成を例に説明したが、ビア導体12はビア孔Vの内壁Wに被着していれば良く、ビア導体12は膜状であっても構わない。