特許第5981373号(P5981373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981373
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   E02F9/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-58686(P2013-58686)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-181550(P2014-181550A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】中原 剛
(72)【発明者】
【氏名】緒方 永博
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−200023(JP,U)
【文献】 特開2012−067484(JP,A)
【文献】 特開2013−002236(JP,A)
【文献】 特開2000−073401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B60K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転部を囲繞するキャビン内に、運転席を載設したシートマウントカバーを、エンジンルームの前上部をケーシングする状態で配設し、キャビンの後には、エンジンルームの後部をケーシングするボンネットを隣接させて配設した作業車両であって、
シートマウントカバーの左右側端面には、キャビンの左右側壁と略同一垂直面の一部を形成して外部に露出する左・右点検用扉を開閉自在に配設して、各点検用扉を開放することで、キャビンの外部からエンジンルーム内をメンテナンス可能としたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
エンジンルームの前上部内には、エンジンの上部や、エンジンの上方に配設してエンジンから排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置や、排気ガス浄化装置の外周面に備えた電装部品を、左・右点検用扉と左右方向に対面させて配設したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両、詳しくは運転席の下にシートマウントカバーで略被覆されたエンジンルームを配置した運転部をキャビンにより囲繞する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両の一形態として特許文献1に開示されたものがある。すなわち、特許文献1には、運転部の運転席を支持するシートマウントカバー(内部カバー)内に、エンジンルームが配設された構造が開示されている。このように、運転席下の空間をエンジンルームとして使用することで無駄なスペースを削減し、作業車両の小型化を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−52679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した特許文献1では、エンジンルーム内のエンジンや周辺機器等をメンテナンスする際に、作業車両の小型化に伴い運転部のスペースも必要最小限に構成されているため、キャビン内で上述したメンテナンスを行うためのスペースを確保できない。従って、キャビンやボンネット、及びシートマウントカバー周辺の機器を取り外した後にシートマウントカバーを取り外してからでなければメンテナンスを行うことができず、メンテナンス作業が非常に煩雑で、多くの労力が必要であった。
【0005】
そこで、本発明は、エンジンルーム内のエンジン、及びその周辺機器のメンテナンス等を容易化した作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような目的を達成するために、本発明は、以下のようなものを提供する。
【0007】
請求項1記載の発明に係る作業車両は、運転部を囲繞するキャビン内に、運転席を載設したシートマウントカバーを、エンジンルームの前上部をケーシングする状態で配設し、キャビンの後には、エンジンルームの後部をケーシングするボンネットを隣接させて配設した作業車両であって、シートマウントカバーの左右側端面には、キャビンの左右側壁と略同一垂直面の一部を形成して外部に露出する左・右点検用扉を開閉自在に配設して、各点検用扉を開放することで、キャビンの外部からエンジンルーム内をメンテナンス可能としたことを特徴とする。
【0008】
かかる作業車両では、シートマウントカバーの左右両側にキャビンの外部からエンジンルーム内の機材等をメンテナンス可能な開閉自在の点検用扉を配設したことで、キャビン等の作業車両の構成部品を取り外すことなく、キャビンの外部からエンジンルーム内に配設された機材等のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0009】
請求項2記載の発明に係る作業車両は、請求項1記載の発明に係る作業車両であって、エンジンルームの前上部内には、エンジンの上部や、エンジンの上方に配設してエンジンから排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置や、排気ガス浄化装置の外周面に備えた電装部品を、左・右点検用扉と左右方向に対面させて配設したことを特徴とする。
【0010】
かかる作業車両では、メンテナンスの頻度が高い排気ガス浄化装置をエンジンルーム内に配設したことで、キャビンの外部から排気ガス浄化装置のフィルタや電装部品等の取外し交換等といったメンテナンスが容易になると共に、エンジンから排気ガス浄化装置までの排気経路の短縮化を図ることができるので、排気ガス浄化装置の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運転席の下のエンジンルームに対して、キャビンの外部から開閉自在の点検用扉を配設しているため、キャビン等の作業車両の構成部品を取り外すことなく、エンジンルーム内の機材等を容易にメンテナンスすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る作業車両の側面図。
図2】運転部の斜視図。
図3】運転部の側面図。
図4】運転部の平面図。
図5】点検用扉の上側を示す図2中のI−I線断面図。
図6】左側の点検用扉を開蓋した状態を示す側面説明図。
図7】右側の点検用扉を開蓋した状態を示す側面説明図。
図8】エンジン上方前方に排気ガス浄化装置を配設した状態を示す斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の要旨は、運転席42の下にシートマウントカバー31で略被覆されたエンジンルーム45を配置した運転部23をキャビン21により囲繞する作業車両Aにおいて、シートマウントカバー31の左右両側にキャビン21の外部からエンジンルーム45内をメンテナンス可能な開閉自在の点検用扉100L,100Rを配設したことにある。すなわち、キャビン21等の作業車両Aの構成部品を取り外すことなく、キャビン21の外部からエンジンルーム45内のメンテナンス等を容易に行うことが可能となる点検用扉100を備えたシートマウントカバー31構造を有する作業車両Aに関するものである。
【0014】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。すなわち、図1に示すAは、本発明に係る作業車両であり、作業車両Aは土砂等の掘削作業や積み込み作業等を行うアーティキュレート式のホイルローダである
【0015】
[作業車両全体の概要説明]
作業車両Aは、図1に示すように、フロント部A1のフロントフレーム1の後端部とリヤ部A2のリヤフレーム2の前端部とを、上下方向に軸線を向けた枢支軸3により枢支連結して、枢支軸3を中心にフロント部A1とリヤ部A2とが平面視で「く」字状に中折れ(アーティキュレート)するようにしている。つまり、作業車両Aは、車体を適宜中折れ状態となすことで、急旋回可能となしている。
【0016】
フロントフレーム1は、左右一対の前車輪4,4により支持されて、ローダ5を装備している。ローダ5は、フロントフレーム1から立ち上げて形成した左右一対のアーム支柱6,6の上端部に、左右一対のリフトアーム7,7の基端部をそれぞれ上下回動自在に取り付け、両リフトアーム7,7の先端部にバケット8を横架状にかつ上下回動自在に取り付けている。各リフトアーム7,7の中途部と各アーム支柱6,6の中途部との間にはそれぞれリフトアームシリンダ9,9を介設している。両リフトアーム7,7の中途部間に介設したベルクランク支持片10には上下方向に伸延するベルクランク11の中途部を前後揺動自在に取り付けている。そして、両アーム支柱6,6の間にはフロントフレーム1から前上方へ向けてシリンダ支持片12を突設し、シリンダ支持片12の先端部とベルクランク11の上端部との間にバケットシリンダ13を介設する一方、ベルクランク11の下端部とバケット8との間には連動リンク14を介設している。
【0017】
リヤフレーム2は、左右一対の後車輪20,20により支持されて、リヤフレーム2上にキャビン21とボンネット22を前後に隣接させて載設している。
【0018】
キャビン21は運転部23を囲繞する箱型に形成している。つまり、キャビン21は前後壁24,25と左右側壁26,26と天井部27とから形成しており、前壁24の上半部にはフロントガラス28を張設し、また、左側壁26の一部は開閉自在に取り付けた乗降用開閉29により形成している。
【0019】
運転部23は、図2図4に示すように、リヤフレーム2上に水平面状の床部30を張設して前半部を形成するとともに、段付き凸状のシートマウントカバー31を配設して後半部を形成している。床部30の前部には上下方向に伸延する筒状のステアリングコラム32を立設している。ステアリングコラム32の上面には冷・暖気分配ケース33と計器盤34を前後に隣接させて配設して、ステアリングコラム32の上面を閉塞している。ステアリングコラム32の後壁35は前低後高の傾斜状となす一方、計器盤34は前高後低の傾斜状となしている。ステアリングコラム32の後部中には上下方向に伸延するステアリングシャフト36をステアリングコラム32の後壁35に沿わせて傾斜状に配設するとともに、計器盤34の後部から上方へむけて突出させて、ステアリングシャフト36の上端部にはステアリング操作具としてのステアリングハンドル37を取り付けている。38はステアリングコラム32の直後方において、床部30上に配設した操作ペダル群38である。
【0020】
運転部23の後半部を形成するシートマウントカバー31は、上面部41に運転席42と、運転席42の右側に作業機レバー43とオプションレバー44を配設すると共に、エンジンルーム45の上部をケーシングしている。また、シートマウントカバー31の左右側端面には、キャビン21の左右側壁26,26と略同一垂直面の一部を形成する外部に露出する左・右点検用扉100L,100Rを配設している。シートマウントカバー31の上面部41の左右側端縁部には、点検用扉100の上側縁を後述するヒンジ構造104によって枢支連結して、点検用扉100を上下方向に開閉蓋自在としている。なお、48は足掛かり、49はリヤフェンダである。
【0021】
エンジンルーム45の上部内には、リヤフレーム2の後部に搭載したエンジンの一種であるディーゼルエンジン46(以下、エンジンとする)の上部やエンジン46から排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置47を配設している。
【0022】
シートマウントカバー31の背後に位置するリヤフレーム2上には仕切壁50を配設して、仕切壁50によりシートマウントカバー31の背面(後面)を閉塞するとともに、仕切壁50の上半部をシートマウントカバー31の上面部41よりも後上方へ傾斜状に延設して形成している。仕切壁50の上端縁部にはボンネット22の前端縁上部を枢支連結して、枢支連結部(図示せず)を中心にボンネット22を上下方向に開閉蓋自在としている。仕切壁50の後面上半部には図示しないECU(エンジンコントロールユニット)等を取り付け、これらをボンネット22により被覆している。
【0023】
上記のように構成した作業車両Aにおいて、本実施形態では、シートマウントカバー31の左右側端面に左・右点検用扉100L,100Rを配設して、作業車両Aの外側からエンジンルーム45内の上部に配設された各部のメンテナンスを行うことができるようにしている。また、エンジン46の上方前方にメンテナンスの頻度が高い排気ガス浄化装置47をエンジン46と一体となるように配設することで、排気ガス浄化装置47のメンテナンスが容易にできるようにしている。
【0024】
以下に、シートマウントカバー31の構造を中心に、点検用扉100の構造と排気ガス浄化装置47の配置等について具体的に詳説する。
【0025】
[点検用扉の周辺構造と排気ガス浄化装置の配置に関する説明]
図1に示すように、運転部23には運転部23を囲繞するキャビン21が配設されている。その内部では図2図4に示すように、エンジンルーム45をケーシングする状態でシートマウントカバー31が配設されており、シートマウントカバー31上の中央部に運転席42を載設している。
【0026】
シートマウントカバー31は板金で構成しており、略箱状のエンジンルームケーシング機能を有するように構成されている。シートマウントカバー31は、床部30から上方へ立ち上げ状に形成した略四角形板状の前壁面部40と、前壁面部40の上端縁部から後方へ水平に延設して形成した略四角形板状の上面部41とから形成して、これらの左右側端面を左・右ルーム開放口101L,101Rとして左・右点検用扉100L,100Rによりルーム開放口101L,101Rを開閉自在に閉蓋している。なお、点検用扉100の構造等については後述する。
【0027】
また、シートマウントカバー31は、床部30の左右幅と略同一幅に形成している。このようにシートマウントカバー31を左右方向に伸延して形成していることから、シートマウントカバー31の強度が低下しないようにする必要がある。そのため、シートマウントカバー31の内側であって、左・右ルーム開放口101L,101Rの近傍において、前壁面部40の裏面と上面部41の裏面とに当接するように補強フレーム102,102を形成している。補強フレーム102は、側面視略L字状の角パイプで形成され、垂直方向の端部は床部30と連結され、水平方向の端部は仕切壁50と連結されている。補強フレーム102によって、シートマウントカバー31に対する前方、上方、及び左右方からの外力に対して充分な強度を有することができる。
【0028】
キャビン21の左右側壁26,26の後下端部は、運転部23の一部を形成するシートマウントカバー31の前壁面部40と上面部41の左右側縁部に沿わせて凹状に形成して、キャビン21により運転部23の一部を形成するシートマウントカバー31の前面及び上面を囲繞するとともに、キャビン21から左・右点検用扉100L,100Rを左右側方へ露出させている。すなわち、作業車両Aの外部から左・右点検用扉100L,100Rを開閉自在となっている。
【0029】
シートマウントカバー31上にはステアリングハンドル37の直後方に位置させて運転席42を配置している。具体的には、シートマウントカバー31上は略平面となっているので運転席42を支持するための特別な支持台を別途設ける必要がなく運転席42をそのまま載置固定することができるので、エンジンルーム45と運転部23とをこのような簡素な構造で各々の上下位置の取り合いが可能となる。
【0030】
なお、運転席42の座面外底部には運転席取付用ブラケット(図示せず)を連設しており、該ブラケットをボルト(図示せず)にてシートマウントカバー31の上面に固設することにより運転席42の固定を行っている。
【0031】
シートマウントカバー31上の運転席42の右側にはレバー支持ケース110を配設している。レバー支持ケース110の上面部には、2個のレバー43,44を配設しており、運転席42に近い側には作業機レバー43を、その外側には作業機レバー43よりも短いオプションレバー44が突出している。作業機レバー43は前後左右方向に傾倒操作可能であり、作業機レバー43にはリフトアーム制御弁(図示せず)を介してリフトアーム7,7のリフトアームシリンダ9,9を油圧接続して、作業機レバー43の前後方向の傾倒操作にリフトアームシリンダ9,9の伸縮動作を連動させて、リフトアーム7,7を昇降作動可能としている。また、作業機レバー43にはバケット制御弁(図示せず)を介してバケット8のバケットシリンダ13を油圧接続して、作業機レバー43の左右方向の傾倒操作にバケットシリンダ13の伸縮動作を連動させて、バケット8を上下回動作動可能としている。オプションレバー44は、バケット8の換わりに把持アーム(図示せず)等のバケット8とは異なる機能を有するオプションアーム(図示せず)を取り付けた際の油圧制御を行うためのものである。オプションレバー44は前後方向に傾倒操作可能であり、オプションレバー44にはオプションアーム制御弁(図示せず)を介してオプションアームのオプションアーム作動シリンダ(図示せず)を油圧接続して、オプションレバー44の前後方向の傾倒操作にオプションアーム作動シリンダ(図示せず)の伸縮動作を連動させて、オプションアームを作動可能としている。また、これらのレバー43,44はシートマウントカバー31の内部において、夫々の機構に対応した第一作業機レバーリンク機構120、第二作業機レバーリンク機構121、オプションレバーリンク機構122を備えている。
【0032】
シートマウントカバー31の下方はエンジンルーム45の上部を形成しており、エンジンルーム45の上部内には、図6図7に示すように、エンジン46、排気ガス浄化装置47、及び電装部品や駆動系統器材、及び作業機レバー43とオプションレバー44の各リンク機構120,121,122が収納されている。すなわち、エンジンルーム45の略中央部にはエンジン46を配設し、その上方前方である運転席42の略下方には排気ガス浄化装置47、右側には各リンク機構120,121,122を配設している。
【0033】
上述したように、エンジンルーム45の上部を囲繞するシートマウントカバー31の左右側端面には左・右ルーム開放口101L,101Rを夫々設けている。ルーム開放口101は長手方向を前後方向とする側面視略長方形状の開口であり、エンジンルーム45の上部内を左・右ルーム開放口101L,101Rから透視可能としている。従って、ルーム開放口101からはエンジンルーム45内のエンジン46上部左右側の機器等が点検可能となる。
【0034】
具体的には、図6に示すように、左ルーム開放口101Lからはエンジン46の一部と排気ガス浄化装置47等が視認でき、図7に示すように、右ルーム開放口101Rからはエンジン46の一部と各リンク機構120,121,122を視認できるため、これらを容易にメンテナンスすることができる。
【0035】
また、エンジン46の上方前方の左右側に配設されたエンジン機材等は、後部のボンネット22を開放しても手が届かなかったり、暗所で視認が困難なためメンテナンスが容易でなかったが、本実施形態においては、エンジンルーム45の前方左右部に集合したエンジン用関連機材の点検を左・右ルーム開放口101L,101Rから容易に行うことが可能となる。
【0036】
ここで、排気ガス浄化装置47の概略構造と配置について、図8を参照しながら説明する。排気ガス浄化装置47は、ディーゼルエンジン46から排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置である。従って、排気ガス浄化装置47はエンジン46の排気経路に介挿されることになる。
【0037】
排気ガス浄化装置47は、エンジン46から排出される排気ガスの入口を兼ねた取付フランジ132側を上流側とする。また、排気ガス浄化装置47内部において上流側にディーゼル酸化触媒133を、下流側にスートフィルタ134を直列配置している。ディーゼル酸化触媒133は、排気ガス中のNOxを酸化させてNOを生成し、NOの酸化作用によってスートフィルタ134に捕捉された煤等の粒状物質の再燃焼を促進する。また、スートフィルタ134は、排気ガス中の煤等の粒状物質を捕捉するように構成している。従って、排気ガス浄化装置47は、エンジン46から排出される排気ガスの温度を高温に保った状態で、しかも、排気経路中における流速の低下等が生じないように、可能な限りエンジン46の排気マニホールド130の直後に配設することが望ましい。なお、排気ガス浄化装置47の外周面には電装部品である上流温度センサ135、中流温度センサ136、下流温度センサ137の三個の温度センサと、上流差圧センサ138、下流差圧センサ139の二個の差圧センサを着脱自在に備えている。
【0038】
しかし、従来のように、シートマウントカバー等を除去しなければエンジンルーム45の上部内のメンテナンスができないシートマウントカバーの構造であれば、メンテナンス頻度が高い排気ガス浄化装置47について各フィルタ133,134の取外し交換や、電装部品135,136,137,138,139の取外し交換等といったメンテナンスを行うには非常に大きな労力が必要となるため、排気ガス浄化装置47をエンジン46と一体となるようにエンジン46の上方に配設することが懸念されていた。そのためメンテナンスが容易なボンネット22の近傍等、エンジン46から離れた場所に排気ガス浄化装置47を配設しなければならず、排気ガス浄化装置47の効率低下が問題となっていた。
【0039】
本発明においては、上述したようにシートマウントカバー31の左右側端面に左・右ルーム開放口101L,101Rを設けることで、キャビン21やボンネット22、及びシートマウントカバー31周辺の機器やシートマウントカバー31を取り外すことなく、作業車両Aの外側からエンジンルーム45の前方左右部に集合したエンジン用関連機材や排気ガス浄化装置47の各フィルタ133,134の取外し交換や、電装部品135,136,137,138,139の取外し交換等といったメンテナンスや点検を容易に行うことが可能となる。
【0040】
このように、本実施形態に係る作業車両Aにおいては、エンジン46の上方に排気ガス浄化装置47を配設することが可能となる。具体的には、エンジン46の排気ガスを排出するための排気マニホールド130の装着フランジ131に、排気ガス浄化装置47の入口となる取付フランジ132を直接、連通連結することが可能となり、排気ガス浄化装置47をエンジン46と一体となるように配設することができる。なお、排気ガス浄化装置47は、フライホイールハウジング141の上面に形成された取付面(図示せず)に対して、排気ガス浄化装置47に形成された取付用フランジ(図示せず)とボルトによって締結固定している。また、排気ガス浄化装置47の各フィルター133,134を通過した浄化済みの排気ガスは、取付フランジ132と反対側に形成された排気ポート(図示せず)から排気マフラー140を通って外部へ排出される。
【0041】
以上、説明したように、シートマウントカバー31の左右側端面に左・右ルーム開放口101L,101Rを設けることで、排気ガス浄化装置47のメンテナンスを容易に行うことができるようになり、エンジン46の上方に排気ガス浄化装置47を配設した構成を採用することが可能となって、排気ガス浄化装置47による排気ガスの浄化効率を大幅に向上させることができる。
【0042】
なお、上述したエンジン46に対する排気ガス浄化装置47の配置箇所については、本実施形態に限定されるものではなく、ルーム開放口101から排気ガス浄化装置47を視認でき、メンテナンスが可能であれば、エンジン46の如何なる箇所に排気ガス浄化装置47を配置してもよく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0043】
次に、ルーム開放口101を開閉自在とする点検用扉100について、図2図5を参照して説明する。シートマウントカバー31の左右側端面には、ルーム開放口101を閉塞するようにシートマウントカバー31の左右側壁を構成する側面視略長方形状の左・右点検用扉100L,100Rを設けている。
【0044】
点検用扉100は、点検用扉100の上側縁とシートマウントカバー31の上面部41の左右側端縁においてヒンジ構造104により枢着している。具体的には、上面部41の左右側端縁の裏側直下において、左右側端縁の略全長に渡り前後方向を軸線方向とする扉用枢支軸103を軸止すると共に、扉用枢支軸103を挿通可能なように、点検用扉100の上側縁を全長に渡り内側に曲げて挿通用孔109を形成する。従って、挿通用孔109に扉用枢支軸103を挿通させることで、点検用扉100をルーム開放口101に対して上下に開閉自在とするヒンジ構造104が構成される。なお、扉用枢支軸103の両端部は、シートマウントカバー31の当該部分に軸受(図示せず)を形成して軸止している。
【0045】
また、上述した点検用扉100の開閉方法については、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、点検用扉100を左右に開閉自在としたり、点検用扉100を着脱式にする等、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0046】
また、図2図6図7に示すように、点検用扉100の下端部近傍には、ボルト孔105を三箇所形成しており、ボルト孔105,105,105に対応するナット106が溶接されたブラケット107を、リヤフレーム2側に形成している。従って、作業車両Aの外側から三個のボルト108で締結することで点検用扉100が固定される。
【0047】
以上、説明したように本実施形態に係る作業車両Aでは、シートマウントカバー31の左右両側にキャビン21の外部からエンジンルーム45内をメンテナンス可能な開閉自在の点検用扉100L,100Rを配設したことで、キャビン21等の作業車両Aの構成部品等を取り外すことなく、キャビン21の外部からエンジンルーム45内に配設された機材のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0048】
また、メンテナンスの頻度が高い排気ガス浄化装置47をエンジンルーム45内に配設したことで、キャビン21の外部から排気ガス浄化装置47の各フィルタ133,134や電装部品135,136,137,138,139等の取外し交換等といったメンテナンスが容易になると共に、エンジン46から排気ガス浄化装置47までの排気経路の短縮化を図ることができるので、排気ガス浄化装置47の効率を向上させることができる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
A 作業車両
21 キャビン
23 運転部
31 シートマウントカバー
42 運転席
45 エンジンルーム
47 排気ガス浄化装置
100 点検用扉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8