特許第5981413号(P5981413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5981413取付システム及びそれとともに用いるディスペンサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981413
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】取付システム及びそれとともに用いるディスペンサー
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/20 20060101AFI20160818BHJP
   B65D 83/08 20060101ALI20160818BHJP
   B65D 25/52 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   B65D25/20 V
   B65D83/08 G
   B65D25/52 B
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-257357(P2013-257357)
(22)【出願日】2013年12月12日
(62)【分割の表示】特願2009-520893(P2009-520893)の分割
【原出願日】2007年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-61951(P2014-61951A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2014年1月14日
(31)【優先権主張番号】60/830,979
(32)【優先日】2006年7月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/830,764
(32)【優先日】2006年7月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/851,622
(32)【優先日】2006年10月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/864,169
(32)【優先日】2006年11月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】ボドジアク,ダグラス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ,ジェイムズ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ニューボウルド,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】オリアリー,ティモシー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィンドルスキ,デイビッド シー.
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−117881(JP,A)
【文献】 特開平10−211666(JP,A)
【文献】 特開平02−195098(JP,A)
【文献】 特開平08−192876(JP,A)
【文献】 特表2002−508432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/20
B65D 25/52
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業面に取り付け可能なディスペンサーであって、
スロットを有する上方部材と、
外表面を有し、前記上方部材に取り付けられて該上方部材とともにハウジングを画定する下方部材と、
前記ハウジング内に配置され、扇状に折りたたまれた形状に組み立てられたシートの積層体と、
第1表面、および該第1表面とは反対側の第2表面を有し、該第2表面と前記作業面との間に陰圧を生じさせることによって該作業面に吸着可能な高分子の保持フィルムと、
前記下方部材の前記外表面に取り付け可能な取付機構であって、前記保持フィルムの前記第1表面に固着され、前記保持フィルムよりも小さい表面積を有する、取付機構と、を備え、
前記下方部材の前記外表面は、前記取付機構が取り付けられる領域とは異なる領域に、前記第1表面に面して形成された粗化領域を含み、
前記粗化領域は、前記第1表面が前記外表面に接触したときの該第1表面と該外表面との接触面積を減少させて該第1表面と該外表面との間に生じる吸着力を低減させるように形成される、ディスペンサー。
【請求項2】
前記粗化領域の少なくとも一部を覆うように、前記保持フィルムの前記第1表面と前記下方部材の前記外表面との間に配置されるアクティベーションカードをさらに備える、請求項1に記載のディスペンサー。
【請求項3】
前記保持フィルムは、ポリウレタン、又はエチレン−プロピレンジエンモノマー由来のポリマーである、請求項1に記載のディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本発明は、ともに2006年7月14日に出願された米国特許仮出願第60/830764号及び同第60/830979号、2006年10月13日に出願された米国特許仮出願第60/851622号、並びに2006年11月3日に出願された米国特許仮出願第60/864169号に対する優先権を主張し、これらはそれぞれ、参照することによりその全文が組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、取付システム及び取付システムと併用されるディスペンサーに関する。取付システムがディスペンサーに取り付けられている時、ディスペンサー内に配置されたシートを片手で取り出すことができる。
【背景技術】
【0003】
物品と表面との間に吸着をもたらすことができる多くの装置が存在する。例えば、吸着カップは、装飾品を陳列するために、又は所望の位置に品物を保持するために、窓及びドアのような表面上に用いることができる。典型的な吸着カップは、円形周縁部と、一旦吸着カップが実装されると、陳列表面と接触することを目的とする凹面とを有する。多くの場合、吸着カップは、垂直面であろうと、水平面であろうと、品物を所定の位置に保持する。表面から吸着カップを取り外すために、ユーザは典型的に、例えば、2つの間に装置を割り込ませることにより、吸着カップと表面との間の吸着を壊す。品物を表面に取り付けるために用いられる他の装置としては、接着剤及び強磁性材料が挙げられる。しかしながら、これらの材料は、装置の相対運動及び用い得る表面の種類に関して制限がある。例えば、取付装置として強磁性材料を使用する場合には、陳列表面は必ず金属系材料に制限される。
【0004】
米国特許第5,014,946号(グルーバー(Gruber))には、可撓性プレートの内表面に位置する締結点において比較的剛性である保持部材の底面に連結された可撓性プレートを特徴とする保持部材を含む保持、維持及び付着手段が開示されている。可撓性プレートは、傾斜力又は傾倒力(tilting or tipping force)を加えた時、引取力(drawing-off force)も同様に剛性保持部材に加えられるように、可撓性プレートが定置される表面の凹凸に適合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
使用が容易であり、木材から金属、プラスチック表面に及ぶ種々の表面上で用いることができる他の取付システムに対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の取付システム及びディスペンサーは、テーブルの上面のような作業面との間に一時的に取付られる。本明細書は取付システムとともに用いられるディスペンサーに主に焦点をあてるが、非ディスペンサー品も同様に用いることができる。
【0007】
一態様では、本発明は、(a)第1主要面を有し、ASTMD790規格に従って測定した時、約50MPa未満の曲げ弾性率を有し、ASME B46.1規格に従って算出した時、約1マイクロメートル未満の粗度パラメータRを有する高分子の保持フィルムと、(b)保持フィルムの第1主要面上に配置されている取付機構と、を含む取付システムに関する。保持フィルムは第1表面領域を有する。取付機構は第2表面領域を有する。第1表面領域の第2表面領域に対する比は約10:1〜3:1である。一実施形態では、保持フィルムは円形状であり、一方取付機構は正方形又は円形のいずれかである。
【0008】
別の態様では、本発明は、(a)スロットを有する上方部材と、上方部材に取り付けられて、ハウジングを形成する下方部材であって、外表面を有する下方部材と、(b)ハウジング内に配置され、扇状に折りたたまれた形状に組み立てられたシートの積層体と、(c)下方部材の外表面に取り付けられている第1表面を有する高分子の保持フィルムであって、ASTMD790規格に従って測定した時、約50MPa未満の曲げ弾性率を有し、ASME B46.1規格に従って算出した時、約1マイクロメートル未満の粗度パラメータRを有する保持フィルムと、を含むディスペンサーに関する。
【0009】
曲げ弾性率及び表面粗さにより規定される物理的特性を有する保持フィルムを含む取付システムにより、システムが陰圧を作り出し、金属製テーブルのような平滑面から木材製テーブルの上面のような粗面に及ぶ幅広い種類の表面に付着することが可能となる。保持フィルムが作業面と直接接触するように、ディスペンサーを取付システムと組み合わせて用いる時、ディスペンサーは作業面上を滑ることができる。滑り運動により、陰圧を増すことができると考えられる。シート材料がディスペンサーから取り出される時、陰圧により、ディスペンサーは所定の位置に保持される。
【0010】
本文書では、用語「約」は、すべての数値を修飾するものと見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】代表的なディスペンサーの分解図。
図2】組み立てた形態の図1のディスペンサーの等角図。
図3】別の代表的なディスペンサーの平面図。
図4】別の代表的なディスペンサーの平面図。
図5】ディスペンサーとともに用いることができる別の代表的な上方部材の等角図。
図6】別の代表的なディスペンサーの分解図。
図7】組み立てた形態の図6のディスペンサーの等角図。
図8】ディスペンサーとともに用いることができる下方部材の代表的な外面の底面図。
図9】ディスペンサーとともに用いることができる下方部材の別の代表的な外面の底面図。
図10】アクティベーションカードを備える別の代表的なディスペンサーの等角図。
図11図10のディスペンサーの底の分解図。
図12】使用前の図10のディスペンサーのアクティベーションカードの除去を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様は、高分子の保持フィルムと取付機構とを含む取付システムに関係する。吸着が壊れるまである位置に品物を保持する従来の吸着カップとは異なり、本取付システムは、ディスペンサーのような品物を、分配中静止状態に保ち、一方で作業面を横断するように押された時は、滑ることも可能である。ディスペンサーに加えて、取付システムは、例えば、缶、ボトル、瓶等のような液体収容容器、ティッシュの箱、及び紙パッドのような他の品物とともに用いることができる。
【0013】
保持フィルムは、非強化及び強化プラスチック並びに電気絶縁材料の曲げ特性に対するASTM D790規格試験方法に従って試験した時、50メガパスカル(MPa)未満、好ましくは25MPa未満、より好ましくは10MPa未満、最も好ましくは5〜7MPaの範囲の曲げ弾性率を有する。要約すれば、この試験方法は、試験条件が16mmのスパン及び5mm/分のクロスヘッド速度を含み、試料が25.4mmの幅及び50mmの長さを有する、3点曲げ試験を伴う。
【0014】
試料の試験領域全体にわたって算出した、保持フィルムの平均粗度パラメータ(R)は1マイクロメートル未満である。粗度測定値は、ASME B46.1規格に従って算出される。要約すると、この試験を進める上で、保持フィルムの試料は、金/パラジウムフィルムでまずコーティングされ(40mAの電流を使用して10秒)、フィルムの表面トポグラフィー又は粗さは、10×対物レンズ(objection)及び2%の変調閾値を用いるVSIモードで作動するワイコ(Wyko)NT3300光学干渉計を用いて測定した。有用な高分子の保持フィルムのショアーAデュロメータは、70未満である。フィルムの厚さは、0.25mm(0.01インチ)〜2.5mm(0.1インチ)である。好ましい範囲の曲げ弾性率、粗度、ショアーAデュロメータ、及び厚さは、一旦ディスペンサーに取り付けられると、より良好なフィルムのドレープを示す傾向がある、高分子フィルムの特徴である。好ましくは、保持フィルムは必要最低限量の可塑剤を有し、これは時間とともにフィルムの効果を変化させて、陰圧を作り出し、維持し得る。また、フィルムは、フィルムが定置される作業面を染色しないように、又はフィルムを物品に取り付けるために用いられる取付機構に影響を及ぼさないように、長期間、十分化学的に不活性であるべきである。
【0015】
好適な高分子フィルムとしては、ポリウレタン、及びエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)で製造されたゴムが挙げられる。市販のEPDMフィルムとしては、マクマスター−カー(McMaster-Carr)(アトランタ(Atlanta)、ジョージア州)から、製品番号8610K81及び8143K11で入手可能なものが挙げられる。
【0016】
取付機構は、機械的ベース又は接着剤ベースであってよい。適切な取付機構の選択は、ユーザの嗜好並びに使用される物品に応じて決定される。取付機構は、典型的には、保持フィルムの中央に位置する。必要に応じて、取付機構は、保持フィルムの複数の部位に配置することができる。好適な機械的ベースの取付システムとしては、米国特許第6,972,141号(ブリーズ(Bries)ら)に記載されているもののような再閉鎖可能な締結具が挙げられる。
【0017】
好適な接着剤ベースの取付機構は、3M社からコマンド(Command)(商標)ブランドで入手可能である、曲線的な非接着剤エンドタブを有する伸長剥離接着剤ストリップである。接着剤ストリップは、1つの側面が下方部材の外面に付着し、同時にもう一方の側面が保持フィルムの第1表面に付着する、両面接着部を含む。非接着性エンドタブを引っ張ることにより、消費者は両表面から伸長剥離接着剤を解放する。このように、保持フィルムは、必要に応じて、新規ディスペンサー上で再利用することができる。さらに別の好適な接着剤ベースの取付機構は、3M社から製品番号4462W及び4466Wで市販されているもののような、両面テープである。さらに別の好適な接着剤ベースの取付機構は、通常は液体形態で供給されるシアノアクリレート接着剤の使用を伴う。液体接着剤は、保持フィルム上に分配され、下方部材の外面に適用され、そこで液体接着剤が硬化することにより、2層を合わせて結合することができる。3M(商標)スコッチ−ウェルド(Scotch-Weld)(商標)瞬間接着剤、製品表記CA40Hは、本発明で用いることができる好適なシアノアクリレート接着剤である。この特定の接着剤は、室温(約23℃)で硬化する。
【0018】
保持フィルムと比較して取付機構のデザイン及び大きさは、実質的に垂直な力が、取付システムが取り付けられている物品にかけられる時、フィルムと作業面との間の陰圧に影響を及ぼすことができる。本発明の一実施形態では、円形形状を有する保持フィルム及び円形又は正方形形状のいずれかを有する取付機構が好適である。保持フィルム及び取付機構の他の形状もまた本発明で用いることができる。一実施形態では、保持フィルムの表面積の、取付機構の表面積に対する比は、10:1〜3:1である。取付機構は、典型的には、保持フィルムの中央近くに位置する。保持フィルムをディスペンサーに取り付けた後、ディスペンサーの側面図は、保持フィルムがわずかに取付部位へ載っていることを示す。
【0019】
ここで図を参照すると、図1は、本発明の代表的なディスペンサーの分解図を示し、これは扇状に折りたたまれ(しばしば「z」折りと呼ばれる)積層体38に配置された多数(約50〜100を超える)のシートを分配するのに特に有用である。かかるシートは米国特許第4,907,825号(マイルズ(Miles)ら)に開示されている。ディスペンサーは、実質的に円形である周縁部を有するカバー(「上方部材」とも呼ばれる)20を含む。上方部材は、円形周縁部の対向する半分から延在する2つの側部22及び該2つの側部の間に配置された突出部24を有する。突出部は、側部から延在する2つの側壁25により形成される。突出部はまた、周縁部の対向する領域で終端する2つの傾斜壁29を有する。突出部の頂上部には、積層体状のシートを取り出すことができる適切な大きさの孔部(一般に「スロット」と呼ばれる)26が存在する。所望により、上方部材は、凹部27、及び1つの側部上に切欠き部28をさらに含む。
【0020】
図1のディスペンサーは、カバー20の周縁部と実質的に類似する形状を有する基部(「下方部材」とも呼ばれる)30をさらに含む。上方部材を下方部材に組み立てると、ハウジングが形成される。下方部材はまた、上方部材の切欠き部28に実質的に類似し、同一空間を占める、切欠き部31を有する。上方及び下方部材を組み立てると、2つの切欠き部は概して整列する。下方部材は、対向する内面30a及び外面(図示せず)を有する。任意の付勢機構、この場合はバネ32が、下方部材の内面上にある。任意のプレート34は、シートの積層体38に台を提供し、この積層体は、プレートの第1表面34a上に載っている。プレートの第2表面はバネに接触する。プレートは、その対向する端部35に任意のリブ36をさらに含む。リブは、個々のシートが取り出される時、それが一方の端部から他の端部へ往復する際に、積層体に止め具を提供する。米国特許第4,907,825号は、往復の概念を詳細に開示している。一実施形態では、上方部材は透明高分子材料で製造され、下方部材はその周縁部上に熱で活性化される接着剤のコーティングを有するカード用紙から製造され、2つの部分は熱封止を用いてともに組み立てられる。透明な上方部材は、ユーザがハウジングの内部を見ることを可能にするので、使用してよい。
【0021】
保持フィルム50は、取付機構40を介して下方部材の外面に取り付けられている。既に述べたように、保持フィルムと取付機構との組み合わせが取付システムを作り上げる。この特定の実施形態では、保持フィルムは実質的に円形であり、保持フィルムが切欠き部を含まないことを除いて、概して下方部材と同じ寸法のものである。一実施形態では、ディスペンサーは、7.62cm(3インチ)の保持フィルム直径を有し、取付機構は、保持フィルムの中央に取り付けられている2.54cm(1インチ)の正方形又は2.54cm(1インチ)の円形である。
【0022】
図2は、シート38aがスロットを貫いて延在し、分配の準備が整っているように組み立てられた図1のディスペンサー10の等角図を示す。図に示すように、上方及び下方部材の切欠き部のために、保持フィルムの一部が露出している。ユーザが保持フィルムと作業面との間の陰圧を壊したい時、ユーザは保持フィルムの露出部分を持ち上げる。分配モードでは、ユーザは、概して参照矢印Tで示した方向にシートを引っ張ることにより、ディスペンサー上に力を加える。保持フィルムと作業面との間の陰圧は、ディスペンサーを静止状態に維持し、ユーザが片手でシートを取り出すのを可能にする。換言すれば、ユーザは、ディスペンサーからシートを取り出す間、空いている方の手でディスペンサーを押し下げる必要がない。分配又は非分配モードのいずれかで、ユーザはディスペンサーを作業面上で滑らせることができる。この種の運動が、保持フィルムと作業面との間に閉じ込められ得る空気を逃がして、陰圧を上昇させると考えられる。ディスペンサーは、水平及び垂直作業面上で使用することができる。
【0023】
図3は、上方又は下方部材に切欠き部が存在しないことを除いて図1のディスペンサーに類似する、別のディスペンサー110の平面図である。上方部材は、円形周縁部の対向する半分から延在する2つの側部122と、その間に配置された突出部とを有する。突出部は、側部から延在する2つの側壁125、周縁部で交わる2つの傾斜壁129を含む。この場合、ユーザはまた、例えば、陰圧を壊すために、ディスペンサーを作業面の縁部に滑らせることにより、作業面上の保持フィルムの吸着を壊すことができる。
【0024】
図4は、2つの切欠き部が存在し、それが側部122の各側に存在することを除いて図1のディスペンサーに類似する、さらに別のディスペンサー210の平面図である。2つの側壁225を備える突出部が側部の間に配置されている。この特定のデザインにより、ユーザは、ディスペンサーの両側の吸着を壊すことができる。
【0025】
図1〜4に示した積層体は、扇状に折りたたまれた形状で、互いに解放可能に付着した複数の細長いシートを含む。それぞれのシートは、タブ端部、接着端部、並びに対向する第1及び第2表面を有する。第1表面は接着剤を含まず、好ましくは書き込み可能である。第2表面は、その接着端部上に再配置可能な接着剤を含み、これはタブ端部より大きく、また透明である。必要に応じて、タブ端部は印を含んでよく、又は鮮やかに着色されてもよい。シートが長さLを有する場合、タブ端部は長さの約30〜35%であり、一方接着端部はシートの長さの約65〜70%である。シートは、任意の2枚の隣接するシートに関して、あるシートのタブ端部が、次のシートに対して積層体の対向する端部に位置するように積み重ねられる。
【0026】
図5は、本発明で用いることのできる別の上方部材60の別の実施形態の等角図を示す。上方部材60は、スロット66が配置された頂上領域61に、2つの溝部63がスロットの各端部から延在することを除いて、図1の上方部材20に類似する。溝部は、突出部の長さに沿って、スロットに対してほぼ交差する。
【0027】
図6は、3M社から市販されているポストイット(Post-it)(登録商標)ノートのような、再配置可能なメモ用紙を分配するのに特に好適な、本発明の別のディスペンサーの分解図を示す。縁部を横切る再配置可能な接着剤のコーティング(典型的にはストライプ)を有するかかるメモ用紙は、紙ベースである。接着剤のストライプは、典型的には、メモ用紙の表面積の25%〜35%を被覆する。ディスペンサーは、実質的に互いに直交し、実質的に頂上部327に直交して配置されている4つの側壁325を備える実質的に箱のような形状を有する上方部材320を含む。側壁は頂上縁部325a及び底縁部325bを有する。スロット326が頂上部に配置されている。スロットは、所望の幅の再配置可能なメモ用紙を分配させるのに十分な幅を有する大きさである。ディスペンサーは、対向する内面330a及び外面(図示せず)を有する実質的に正方形の下方部材330をさらに含む。一実施形態では、上方及び下方部材は一体的に形成される。下方部材の内面上に配置されたバネ332は、頂上部327の内面に接触するように再配置可能なメモ用紙338の積層体を押す付勢機構として作用する。取付機構340を使用して、円形の保持フィルム350は下方部材の外面に付着する。この特定の実施形態は、保持フィルムの形状は下方部材の形状と類似してもよいが、必ずしも類似する必要がないことを示す。
【0028】
図7は、フラッグ338aがスロット326を貫いて延在し、保持フィルム350がディスペンサーの下方部材に取り付けられるように組み立てられた図6のディスペンサー310の等角図を示す。一実施形態では、ディスペンサーは7.9×7.9cm(3.125×3.125インチ)の長さ及び幅、並びに3.8cm(1.5インチ)の高さを有する。直径7.6cm(3インチ)の保持フィルム及び直径2.54cm(1インチ)の円形両面テープ又はシアノアクリレート接着剤を用いて、ディスペンサーの保持フィルム及び下方部材に取り付ける。
【0029】
図8は、本発明のさらに別の実施形態の下方部材の外面の底面図を示す。外面は、取付機構を受容するための中央平面領域331を有する。中央平面領域を取り囲むものは粗化領域332であり、これは下方部材をエンボス加工する又は穴を開けるなどの種々の方法により作製することができる。一実施形態では、粗化領域は複数の独特な隆起点を含む。粗化領域はまた、下方部材の外面に表面粗さを付与するコーティングを適用することによりもたらされ得る。この図は円形パターンとして粗化領域を示すが、他の形状及び配置を用いてもよい。例えば、隆起点を使用する時、それらは下方部材の外面領域全体に点在してもよい。一態様では、粗化領域は、下方部材の外面と保持フィルムの第1表面との間の接触表面積を低減するように機能する。従って、保持フィルムの第2表面と作業面との間の接触表面積は、下方部材の外面と保持フィルムの第1表面との間の接触表面積より大きい。この状況は、ディスペンサーからシートを取り出す行為によりディスペンサーが作業面から意図せず外れるという、予期しない、かつ、望ましくない状況を、低減しないまでも最小限に抑える。
【0030】
図9は、本発明で用いることができる、切欠き部431を有する下方部材430の別の代表的な外面430bの底面図を示す。この実施形態では、下方部材の外面と保持フィルムの第1表面との間の接触表面積は、穴部432の使用により低減されている。必要に応じて、穴部に加えて隔離棒(standoff bars)433を使用することもできる。
【0031】
図10は、図7のディスペンサーがプルタブ360aを有するアクティベーションカード360をさらに含む、別の代表的なディスペンサーの等角図を示す。プルタブは、消費者に使用前にカードを除去するよう指示する、予め印刷された印(例えば、「使用前に除去すること」)を含んでよい。アクティベーションカードは、例えば、紙及びプラスチックフィルムを含む種々の材料から製造することができる。アクティベーションカードは、保持フィルム350と下方部材の外面との間に位置し、一実施形態では、図8に示したもののような粗化領域を含む。
【0032】
図11は、中央に位置し、点線で示された取付機構340を有する保持フィルム350を備える図11のディスペンサーの底の分解図を示す。アクティベーションカードは、取付機構に適合するような大きさであり、取付機構に適合するように定置される開口部364を含む。開口部は、一般に取付機構の寸法よりわずかに大きい。アクティベーションカードは、ディスペンサー320への設置を可能にする斜めスリット362をさらに含む。アクティベーションカードのデザインは図7のディスペンサーに特に適しているが、他のデザインを用いてもよい。アクティベーションカードの設置の1つの代表的な方法は、スリット362を開き、アクティベーションカードを、保持フィルムと下方部材の外面との間を滑らせることである。この特定の実施形態では、アクティベーションカードの周囲は、下方部材の周囲と実質的に同じ寸法であり、下方部材の外面上の粗化領域332の実質的に全てではないまでも一部を被覆する。
【0033】
一実施形態では、アクティベーションカードは、紙又は高分子フィルムから製造され、7.6cm(3インチ)の辺長、直径3.81cm(1.5インチ)の中央穴部、2.54cm(1インチ)のスリット長さ、及び0.64cm(0.25インチ)のスリットギャップ距離を有する正方形形状のものである。図11に示したアクティベーションカードのデザインは、紙又は高分子フィルムを打ち抜くことにより製造できる。
【0034】
図12は、ディスペンサーの使用前のアクティベーションカードの除去を図式的に示す。ディスペンサーの底部が消費者にほぼ面して、ディスペンサーの外面からプルタブを持ち上げ(一般に、矢印で示した方向に)それを完全に除去する。アクティベーションカードを持ち上げることにより、保持フィルムが下方部材の外面から離れて曲がる。
【0035】
アクティベーションカードは、取付システムの使用を組み込む任意のディスペンサー又は任意の品物で用いることができる。
【実施例】
【0036】
上記試験方法に従って、以下の高分子フィルムの曲げ弾性率及び表面粗さを試験した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に列挙した保持フィルムを、次いで、0.008m/秒(20インチ/分)のクロスヘッド速度でインストロン試験機を用いる引張力の試験に供した。直径7.62cm(3インチ)の円形の各種フィルムを、2.54cm(1インチ)の正方形である両面テープを用いて、図1に示したものに類似するディスペンサーの7.62cm(3インチ)の円形下方部材に留めた。幅2.54cm(1インチ)のテープはディスペンサーの頂上領域に取り付けられたが、テープはインストロンつかみ具(Instron jaw)のリードとして機能した。保持フィルムを備えるディスペンサーを、オーク材のパネルのような異なる作業面上に定置した。全て木製である、試験された3種の作業面は、(a)カテドラル(cathedral)カットのオーク材ベニア、(b)ポリウレタンコーティングしたオーク材ベニア、及び(c)ラッカーコーティングしたオーク材ベニアであった。カテドラルカットのオーク材ベニアは、オーク材を木の年輪に対して接線方向に薄く切って、独特の頂点又は先端部を木目模様に作製したものである。カテドラルカットは、典型的には、木目を中心化して、カテドラルの尖塔に似た実質的に「V」字形をベニアの表面上に作製する必要がある。上記3種の木製表面の中では、カテドラルカットのベニアが最も粗い。
【0039】
作業面からディスペンサーを離れさせるのに必要な力の量を次に測定する。上記表1に列挙した5種の保持フィルムの中で、EPDMゴムが、常に3種の作業面全てに最も強い力を与えた。5種のフィルムの性能の格付けの観点では、EDPMが最も高い力値であり、続いてウレタンであった。サントプレン、ECH及びPETの間に関しては、全てウレタンより悪かった。
【0040】
本発明の特定の実施形態を示し、記載してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理の適用において考案することができる多数の可能な特定の構成を単に例示するものであることが理解される。多数の様々な他の配置が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によってこれらの原理に従って考案されることができる。このように、本発明の範囲は本出願に記載の構造に限定されるべきではなく、特許請求の範囲の文言によって記載の構造及びそれらの構造と同等のものによってのみ限定されるものである。
【0041】
本発明は、図を参照してよりよく説明することができる。
【0042】
これらの図は理想化されており、原寸に比例して描かれておらず、例示のみを目的とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12