特許第5981417号(P5981417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エモヴィ インコーポレーテッドの特許一覧

特許5981417膝関節病状評価および診断補助のための方法ならびにシステム
<>
  • 特許5981417-膝関節病状評価および診断補助のための方法ならびにシステム 図000002
  • 特許5981417-膝関節病状評価および診断補助のための方法ならびにシステム 図000003
  • 特許5981417-膝関節病状評価および診断補助のための方法ならびにシステム 図000004
  • 特許5981417-膝関節病状評価および診断補助のための方法ならびにシステム 図000005
  • 特許5981417-膝関節病状評価および診断補助のための方法ならびにシステム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981417
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】膝関節病状評価および診断補助のための方法ならびにシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   A61B5/10 310G
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-508334(P2013-508334)
(86)(22)【出願日】2011年5月3日
(65)【公表番号】特表2013-528419(P2013-528419A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】CA2011000514
(87)【国際公開番号】WO2011137515
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2014年3月14日
(31)【優先権主張番号】12/772,701
(32)【優先日】2010年5月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512285384
【氏名又は名称】エモヴィ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】EMOVI INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ネイラ メズガーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジャック ドゥ ギース
(72)【発明者】
【氏名】ガイ グリマード
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド バイラルゲオン
(72)【発明者】
【氏名】ヨセフ オウアクリム
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド パレント
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドレ フエンテス
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ラヴィネ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール ランガー
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−261525(JP,A)
【文献】 特表2003−500648(JP,A)
【文献】 特開2003−250780(JP,A)
【文献】 特開2008−113872(JP,A)
【文献】 特開2009−238196(JP,A)
【文献】 特表2003−524490(JP,A)
【文献】 特開2002−291707(JP,A)
【文献】 特開2001−128958(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/096419(WO,A1)
【文献】 特表2006−510451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の膝関節の問題を同定し、かつ、明らかにするための方法であって、
患者により着用されたセンサーから生体力学的データを受信する工程であって、当該生体力学的データは、前記膝関節の運動の一周期全体における前記膝関節の運動を代表する、工程;
処理装置において、前記生体力学的データに基づいた連続的な生体力学的特性を生成する工程であって、前記連続的な生体力学的特性は、前記膝関節の運動の周期の割合の関数として、前記膝関節に対する前記生体力学データを代表する連続曲線を含み、前記連続曲線は入力の集合と出力の集合との関係であり、前記入力は前記膝関節の運動の一周期全体の終了の割合を表し、前記出力は、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の伸展−屈曲の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の外転−内転の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の内−外回転の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた鉛直床反力、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた内側/外側床反力及び
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する患者に加えられた後部/前部床反力を表す、工程;
前記処理装置、前記膝関節の前記連続的な生体力学的特性を、前記生体力学的データを代表する連続的な曲線の前記出力の全てを扱うことにより膝関節問題の複数の部類の1つに分類する工程であって、当該分類は、パターン認識技術を、前記連続的な生体力学特性及び前記複数の部類の前記1つの部類に関連した標準生体力学的特性に適用することにより行われ、前記複数の部類の各部類は、少なくとも1つの膝関節問題に対応する、工程;
前記分類に基づいて、前記処理装置、前記複数の部類の前記1つの部類の前記少なくとも1つの膝関節問題を含むように前記問題を同定する工程;および
前記同定された問題を記憶装置に記録し、処理装置と連携して診察中に当該問題にアクセス可能とする工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記分類する工程が、前記連続的な生体力学的特性を、標準生体力学的特性の集合と比較する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受信する工程が、前記運動が前記膝関節により行われている時に前記生体力学的データを受信する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パターン認識技術が、パラメトリック手法、非パラメトリック手法、神経ネットワーク、最近傍分類法、射影法、決定木法、確率統計的手法、教師なし学習での遺伝的アルゴリズムおよびクラスタリング技法のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに、前記連続的な生体力学的特性を、以前に同一の膝関節について生成された過去の生体力学的特性と比較する工程;ならびに、前記比較に基づいて、前記問題の進行および前記膝関節に施された治療の効果のうち少なくとも1つを定量化する工程、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生体力学データは動作の第1平面、動作の第2平面及び動作の第3平面のうち少なくとも1つから収集され、前記生体力学的データを受信する工程が、運動学的データおよび動的データのうち少なくとも1つを受信する工程を含み、前記動作の第1平面、前記動作の第2平面および前記動作の第3平面は、伸展−屈曲が起こる前記膝関節の運動の平面、外転−内転が起こる前記膝関節の運動の平面および内−外回転が起こる前記膝関節の運動の平面をそれぞれ代表する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記同定する工程が、少なくとも2つの膝関節問題を含むように前記問題を同定する工程を含み、前記複数の部類の前記1つの部類は、前記少なくとも2つの膝関節問題に関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記処理装置が、前記少なくとも2つの膝関節問題の各問題についてそれぞれの重症度に基づいて、前記少なくとも2つの膝関節問題を整列する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記連続的な生体力学特性及び前記標準生体力学的特性に前記パターン認識技術を適用する前記適用工程が、前記連続的な生体力学的特性と、前記標準生体力学的特性との間の類似性の量を決定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記問題の同定を含むためのレポートを生成する工程;および前記問題の同定と共に前記レポートを表示する工程を含み、前記レポートが、前記少なくとも1つの膝関節問題についての名前;前記類似性の量;および前記少なくとも1つの膝関節問題に関連した問題領域の表示を有する前記連続的な生体力学的特性:のうち少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記分類する工程が、前記生体力学的特性と、前記標準生体力学的特性の集合の少なくとも1つとの間の類似性の量を決定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
患者の膝関節の問題を同定し、かつ、明らかにするための装置であって、
患者が着用するためのセンサーであって、前記膝関節の運動の一周期全体における前記膝関節の運動を代表する生体力学的データを収集する、センサー;
前記センサーと連通しているプロセッサー;および
前記プロセッサーによりアクセス可能なメモリーデバイスであって、プロセッサーに:
前記センサーからの前記生体力学的データの受信;
前記連続的な生体力学的データに基づいた生体力学的特性の生成であって、前記連続的な生体力学的特性は、前記膝関節の運動の周期の割合の関数として、前記膝関節に対する前記生体力学データを代表する連続曲線を含み、前記連続曲線は入力の集合と出力の集合との関係であり、前記入力は前記膝関節の運動の一周期全体の終了の割合を表し、前記出力は、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の伸展−屈曲の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の外転−内転の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の内−外回転の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた鉛直床反力、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた内側/外側床反力及び
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた後部/前部床反力を表す、生成;
前記生体力学的データを代表する連続的な曲線の前記出力の全てを扱うことによる、前記膝関節の前記連続的な生体力学的特性の、膝関節問題の複数の部類の1つへの分類であって、当該分類は、パターン認識技術を、前記連続的な生体力学特性及び前記複数の部類の1つに関連した標準生体力学的特性に適用することにより行われ、前記複数の部類の各部類は、損傷、病状及び生体力学欠損のうち少なくとも1つを含む少なくとも1つの膝関節問題に対応する、分類;
前記分類に基づいた、前記複数の部類の前記1つの部類の前記少なくとも1つの膝関節問題を含むような前記問題の同定;および
医学的な診察中に前記問題の検索を可能とするための前記同定された問題の記録、
を実行させるために、プロセッサーにより検索されるための命令を記憶する、メモリーデバイス;
を具える、装置。
【請求項13】
さらに、前記同定された問題を表示するための表示装置を備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
さらに、ユーザーが前記プロセッサーに作用することを可能とするためのグラフィカル
・ユーザー・インターフェース(GUI)を備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記センサーが、光学追跡装置;電磁追跡装置および加速度計のうち少なくとも1つを有する3次元膝運動アナライザーを備える、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記連続的な生体力学特性及び前記標準生体力学的特性への前記パターン認識技術の適用のための命令が、前記プロセッサーに前記連続的な生体力学的特性と前記標準生体力学的特性との比較を実行させるための命令を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記センサーが、生体力学的データとして、運動学的データおよび動的データのうち少なくとも1つを収集するためのセンサーを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記センサーが、唯一の入力として運動学的データを収集するための運動学的センサーを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項19】
プロセッサーに膝関節の問題の同定を実行させるための命令を記憶したコンピューターでの読み取りが可能な媒体であって、
前記命令は、前記プロセッサーに:
患者により着用されたセンサーからの、生体力学的データの受信であって、当該生体力学的データは、前記膝関節の運動の一周期全体における前記膝関節の運動を代表する、受信;
前記連続的な生体力学的データに基づいた生体力学的特性の生成であって、前記連続的な生体力学的特性は、前記膝関節の運動の周期の割合の関数として、前記膝関節に対する前記生体力学データを代表する連続曲線を含み、前記連続曲線は入力の集合と出力の集合との関係であり、前記入力は前記膝関節の運動の一周期全体の終了の割合を表し、前記出力は、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の伸展−屈曲の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の外転−内転の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の内−外回転の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた鉛直床反力、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた内側/外側床反力及び
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた後部/前部床反力を表す、生成;
前記生体力学的データを代表する連続的な曲線の前記出力の全てを扱うことによる、前記膝関節の生体力学的特性を膝関節問題の複数の部類の1つへの分類であって、
当該分類は、パターン認識技術を、前記連続的な生体力学特性及び前記複数の部類の1つに関連した標準生体力学的特性に適用することにより行われ、前記複数の部類の各部類は、損傷、病状及び生体力学欠損のうち少なくとも1つを含む少なくとも1つの膝関節問題に対応する、分類;
前記分類に基づいた、前記複数の部類の前記1つの部類の前記少なくとも1つの膝関節問題を含むような前記問題の同定;および
診察中に前記問題にアクセス可能とするために、処理装置と連携して記憶装置への前記同定された問題の記録、
を実行させるためのコーディングを含む、
コンピューターでの読み取りが可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年5月3日に出願された米国特許出願第12/772,701号の優先権を主張する。
【0002】
本明細書は、膝関節運動の解析方法および解析装置の分野に関する。より詳しくは、本明細書は、運動学的データに基づく、膝関節の病状および損傷を評価するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ほぼ全ての産業国において、心疾患の直後で、そして、癌および神経疾患より前で、筋骨格疾患が2番目に最も重要な健康関連のコストを表すことが調査により示された。筋骨格疾患に関しては、筋骨格疾患は、軟骨、骨、筋肉、靭帯および腱の疾患を言う。現在進行している平均寿命の増加に伴い、筋骨格の問題は、人々の間にさらに広がっており、利用可能な薬理学的治療および治療用装置の数の増大をもたらしている。新しい治療法の出現に伴い、膝関節の損傷と病状を検出、評価および観察するための新しい機器が発達した。
【0004】
膝は、適正な機能のために、完璧に連動した3次元領域の運動を必要とする極めて複雑な関節である。したがって、膝関節機能は、3次元平面の1つにおける膝関節の骨の運動を反映する定量化された機能的なアプローチを用いることにより、当該膝関節機能の3次元的な構成要素の解析を通じて、より良く評価される。
【0005】
現在の方法は、放射線検査(X線、MRI、およびCTスキャン等)の使用を伴う。しかし、斯かる検査は、通常、膝関節の様々な機能的な側面を評価する能力に関して制限があり、通常、膝関節が運動している間は、検査を行えない(すなわち、斯かる検査は本来静的である)。
【0006】
膝関節機能を評価するために用いられる他の既存の方法は、通常、手動の検査(靭帯の弛緩)と組み合わされた静的な画像化を伴う。これらの検査は、手動の検査と患者のコンプライアンスに依存するため、ある程度の主観性により損なわれる。
【0007】
いくつかの既存の方法は、大腿骨に関して脛骨の前後方向の運動の定量化が可能である(KT−1000等)。しかし、これらの方法は、通常、並進運動の静的な評価の実行に限定されるため、膝関節の正確かつ信頼できる評価を行うことができない。斯かる方法は、運動が膝関節によって行われるものであるため、概して、旋回を行うことに適していない。
【0008】
したがって、前記先行技術に関連した欠点を処理する、または少なくとも有用な代替手段を提供する、膝関節の機能および疾患または病状を評価するための改良された装置および方法が必要である。
【発明の概要】
【0009】
一の実施形態によれば、患者の膝関節の問題を同定し、かつ、明らかにするための方法が提供される。一の実施形態によれば、前記方法は、患者により着用されたセンサーから生体力学的データを受信する工程、および前記生体力学的データに基づいた連続的な生体力学的特性を生成する工程であって、前記連続的な生体力学的特性は、前記膝関節の運動の周期の割合の関数として、前記膝関節に対する前記生体力学データを代表する連続曲線を含み、前記連続曲線は入力の集合と出力の集合との関係であり、前記入力は前記膝関節の運動の一周期全体の終了の割合を表し、前記出力は、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の伸展−屈曲の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の外転−内転の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の内−外回転の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた鉛直床反力、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた内側/外側床反力及び
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する患者に加えられた後部/前部床反力を表す、工程、を含み、当該生体力学的データは前記膝関節の運動の一周期全体における前記膝関節の運動を代表する。また、前記方法は、処理装置、前記膝関節の前記連続的な生体力学的特性を、前記生体力学的データを代表する連続的な曲線の前記出力の全てを扱うことにより膝関節問題の複数の部類の1つに分類する工程であって、当該分類は、パターン認識技術を、前記連続的な生体力学特性及び前記複数の部類の前記1つの部類に関連した標準生体力学的特性に適用することにより行われ、前記複数の部類の各部類は、少なくとも1つの膝関節問題に対応する、工程;前記分類に基づいて、処理装置、前記複数の部類の前記1つの部類の前記少なくとも1つの膝関節問題を含むように前記問題を同定する工程;および前記同定された問題を記憶装置に記録し、処理装置と連携して診察中に当該問題にアクセス可能とする工程、を含む。
【0010】
他の実施形態によれば、前記分類する工程は、前記連続的な生体力学的特性を、標準生体力学的特性の集合と比較する工程を含む。
【0011】
他の実施形態によれば、前記受信する工程は、前記運動が前記膝関節により行われている時に前記生体力学的データを受信する工程を含む。
【0013】
他の実施形態によれば、前記パターン認識技術は、パラメトリック手法、非パラメトリック手法、神経ネットワーク、最近傍分類法、射影法、決定木法、確率統計的手法、教師なし学習での遺伝的アルゴリズムおよびクラスタリング技法のうち少なくとも1つを含む。
【0014】
他の実施形態によれば、前記方法は、さらに、前記連続的な生体力学的特性を、以前に同一の膝関節について生成された過去の生体力学的特性と比較する工程;ならびに、前記比較に基づいて、記問題の進行および前記膝関節に施された治療の効果のうち少なくとも1つを定量化する工程、を含む。
【0015】
他の実施形態によれば、前記生体力学データは動作の第1平面、動作の第2平面及び動作の第3平面のうち少なくとも1つから収集され、前記生体力学的データを受信する工程は、運動学的データおよび動的データのうち少なくとも1つを受信する工程を含み、前記動作の第1平面、前記動作の第2平面および前記動作の第3平面は、伸展−屈曲が起こる前記膝関節の運動の平面、外転−内転が起こる前記膝関節の運動の平面および内−外回転が起こる前記膝関節の運動の平面をそれぞれ代表する
【0017】
他の実施形態によれば、前記同定する工程は、少なくとも2つの膝関節問題を含むように前記問題を同定する工程を含み、前記複数の部類の前記1つの部類は、前記少なくとも2つの膝関節問題に関連している。
【0018】
他の実施形態によれば、前記方法は、さらに、前記処理装置が、前記少なくとも2つの膝関節問題の各問題についてそれぞれの重症度に基づいて、前記少なくとも2つの膝関節問題を整列する工程を含む。
【0019】
他の実施形態によれば、前記連続的な生体力学特性及び前記標準生体力学的特性に前記パターン認識技術を適用する前記適用工程は、前記連続的な生体力学的特性と、前記標準生体力学的特性との間の類似性の量を決定する工程を含む。
【0020】
他の実施形態によれば、前記方法は、さらに、前記問題の同定を含むためのレポートを生成する工程;および前記問題の同定と共に前記レポートを表示する工程を含み、前記レポートが、前記少なくとも1つの膝関節問題についての名前;前記類似性の量;および前記少なくとも1つの膝関節問題に関連した問題領域の表示を有する前記連続的生体力学的特性:のうち少なくとも1つを含む。
【0021】
他の実施形態によれば、前記方法は、さらに、前記少なくとも1つの膝関節問題に関連した既に確立された治療に基づいた提案を生成する工程を含む。
【0022】
他の実施形態によれば、患者の膝関節の問題を同定し、かつ、明らかにするための装置が提供される。前記装置は、患者が着用するためのセンサーであって、前記膝関節の運動の一周期全体における前記膝関節の運動を代表する生体力学的データを収集する、センサー;前記センサーと連通しているプロセッサー;および前記プロセッサーによりアクセス可能なメモリーデバイス、を含む。前記メモリーデバイスは、プロセッサーに以下を実行させるために、プロセッサーにより検索されるための命令を記憶する:前記センサーからの前記生体力学的データの受信;前記連続的な生体力学的データに基づいた生体力学的特性の生成であって、前記連続的な生体力学的特性は、前記膝関節の運動の周期の割合の関数として、前記膝関節に対する前記生体力学データを代表する連続曲線を含み、前記連続曲線は入力の集合と出力の集合との関係であり、前記入力は前記膝関節の運動の一周期全体の終了の割合を表し、前記出力は
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の伸展−屈曲の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の外転−内転の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の内−外回転の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた鉛直床反力、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた内側/外側床反力及び
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた後部/前部床反力を表す、生成前記生体力学的データを代表する連続的な曲線の前記出力の全てを扱うことによる、前記膝関節の前記連続的な生体力学的特性の、膝関節問題の複数の部類の1つへの分類であって、当該分類は、パターン認識技術を、前記連続的な生体力学特性及び前記複数の部類の1つに関連した標準生体力学的特性の集合に適用することにより行われ、前記複数の部類の各部類は、損傷、病状及び生体力学欠損のうち少なくとも1つを含む少なくとも1つの膝関節問題に対応する、分類;前記分類に基づいた、前記複数の部類の前記1つの部類の前記少なくとも1つの膝関節問題を含むような前記問題の同定;および医学的な診察中に前記問題の検索を可能とするための前記同定された問題の記録。
【0023】
他の実施形態によれば、前記装置は、さらに、前記同定された問題を表示するための表示装置を備える。
【0024】
他の実施形態によれば、前記装置は、さらに、ユーザーが前記プロセッサーに作用することを可能とするためのグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)を備える。
【0025】
他の実施形態によれば、前記センサーは、光学追跡装置;電磁追跡装置および加速度計のうち少なくとも1つを有する3次元膝運動アナライザーを備える。
【0026】
他の実施形態によれば、前記連続的な生体力学特性及び前記標準生体力学的特性への前記パターン認識技術の適用のための命令は、前記プロセッサーに前記連続的な生体力学的特性と前記標準生体力学的特性との比較を実行させるための命令を含む。
【0027】
他の実施形態によれば、前記センサーは、生体力学的データとして、運動学的データおよび動的データのうち少なくとも1つを収集するためのセンサーを含む。
【0028】
他の実施形態によれば、前記センサーは、唯一の入力として運動学的データを収集するための運動学的センサーを含む。
【0029】
他の実施形態によれば、プロセッサーに膝関節の問題の同定を実行させるための命令を記憶したコンピューターでの読み取りが可能な媒体が、提供される。前記命令は、前記プロセッサーに、以下を実行させるためのコーディングを含む:患者により着用されたセンサーからの、生体力学的データの受信であって、当該生体力学的データは、前記膝関節の運動の一周期全体における前記膝関節の運動を代表する、受信;前記連続的な生体力学的データに基づいた生体力学的特性の生成であって、前記連続的な生体力学的特性は、前記膝関節の運動の周期の割合の関数として、前記膝関節に対する前記生体力学データを代表する連続曲線を含み、前記連続曲線は入力の集合と出力の集合との関係であり、前記入力は前記膝関節の運動の一周期全体の終了の割合を表し、前記出力は
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の伸展−屈曲の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の外転−内転の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者の前記膝関節の内−外回転の程度、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた鉛直床反力、
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた内側/外側床反力及び
・前記膝関節の一周期全体の終了の割合に対応する前記患者に加えられた後部/前部床反力を表す、生成;前記膝関節の生体力学的特性を膝関節問題の複数の部類の1つへの分類であって、当該分類は、パターン認識技術を、前記連続的な生体力学特性及び前記複数の部類に関連した標準生体力学的特性に適用することにより行われ、前記複数の部類の各部類は、損傷、病状及び生体力学欠損のうち少なくとも1つを含む少なくとも1つの膝関節問題に対応する、分類;前記分類に基づいた、前記複数の部類の前記1つの部類の前記少なくとも1つの膝関節問題を含むような前記問題の同定;および診察中に前記問題にアクセス可能とするために、処理装置と連携して記憶装置への前記同定された問題の記録。
【0030】
本明細書では、用語「運動学的データ」は、例えば、膝関節に含まれる骨等の身体部材にかかるいかなる物理的力に関わらず、当該身体部材の位置、速度および加速度の組み合わせを反映するデータを言う。運動学的データは、アニメーションタイプの映画の製作時に用いられるようなモーションセンサーを用いることにより得ることができる。
【0031】
これに対して、用語「動的」は、前記膝関節にかかる力を言い、一方、床反力は、例えば、歩行周期の間に、地面等、所定の面から手足にかかる力を言う。床反力および動的データの両方は、手足および地面等の様々な領域に配置された力センサーを用いることにより得ることができる。
【0032】
加えて、本明細書において、用語「標準」は、代表的であることを意味するとして用いられる。したがって、「標準生体力学的特性」は、具体的に知られた膝関節問題もしくは膝関節問題の部類を代表するものとして知られている、またはそれらに関連している、生体力学的特性を言うことを意図している。斯かる標準特性は、例えば、診断された問題を有する多数の対象の特性から集めることができ、そのデータは全ての対象について任意に正規化または平均化される。
【0033】
本開示のさらなる特徴および利点が、添付の図面との組み合わせを含めた、以下の詳細な説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1aは、膝関節の大腿骨および脛骨の図であり、従来技術に関連した一般知識に従った、当該膝関節の動作の3つの平面を示す。図1bは、一の実施形態に従った、センサーを有する患者の膝関節の図であり、図1aの動作の3つの平面を示す。
図2図2は、他の実施形態に従った、膝関節問題を同定し、かつ、明らかにするための装置の模式図である。
図3図3は、一の実施形態に従った、膝関節問題を同定し、かつ、明らかにするための方法のフローチャートである。
図4図4aは、一の実施形態に従った、歩行周期の間の膝関節の伸展−屈曲の程度のグラフである。図4bは、一の実施形態に従った、歩行周期の間の膝関節の外転−内転の程度のグラフである。図4cは、一の実施形態に従った、歩行周期の間の膝関節の内外回転の程度のグラフである。
図5図5aは、一の実施形態に従った、歩行周期の間に加えられた鉛直床反力のグラフである。図5bは、一の実施形態に従った、歩行周期の間に加えられた内側/外側床反力のグラフである。図5cは、一の実施形態に従った、歩行周期の間に加えられた後部/前部床反力のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
添付図面全体を通じて、同種の特徴が同種の参照符号により特定される。
【0036】
添付図面を参照して、膝関節の病状および損傷を検出するための膝関節の評価用の、評価ならびに診断の装置および方法を説明する。説明される装置および方法は、(i)膝関節運動の機能;(ii)前記膝関節の生体力学についての病状および/または損傷の影響;(iii)前記膝関節生体力学的機能に施された治療の効果、を定量化するために適応される。
【0037】
加えて、本明細書で説明される装置および方法は、発見されることが推定される問題への斯かる先回り入力を必要とせず、このことは、現在入手可能な装置および方法とは正反対である。これらは、通常、評価される膝関節についての特定の問題が該当するであろう推定部類に関して、それらが、多重分類を実行する(すなわち、前記問題が斯かる複数の部類の1以上に該当することを同定する)ために、先回り入力を必要とする、ということに限定される。
【0038】
ここで図面、特に図1bを参照すると、標準的な患者90、ここでは人間、が示されており、ここで、膝関節の運動学的データは、患者90により着用された膝関節を覆う3次元運動学的データのセンサー装置92を用いて、収集される。前記センサー装置92は、非浸潤性であり、患者90の皮膚表面にとどまる。斯かる目的のために多くの種類のセンサー装置を用いることができる。例としては、光学追跡装置;電磁追跡装置および加速度計が挙げられる。
【0039】
図1aおよび1bに示されるように、膝関節は、動作の3つの異なる平面に従い動くことができる;これらの各々は、自由度2が可能である。
【0040】
動作の第1平面−矢印M1により示される屈曲−伸展:この動作は、脚を大腿部の後ろ方向(屈曲)に向けて、および離して(伸展)動かすための膝関節の運動の容量を言う。
【0041】
動作の第2平面−矢印M2により示される外転−内転:この動作は、脚を身体の中心軸に向けて弧を描くように動かすための膝関節の運動の容量を言う。一例として、「カウボーイのような」振る舞いを有する対象では外転−内転平面は明らかであるが、この種の運動は、通常、多くの人間の患者ではわずかである。
【0042】
動作の第3平面−矢印M3により示される内−外回転:この動作は、膝関節それ自体の周り(または脚の縦平面に実質的に沿った回転軸周り)に回転させるための膝関節の運動の容量を言う。
【0043】
センサー装置は、上述した動作の3つの平面の各々を反映した運動学的データを測定する。したがって、収集された当該運動学的データは、患者の膝関節につき運動の3つの平面(自由度6)を表す。
【0044】
ほとんどの膝関節疾患(変形性膝関節症、前十字靭帯断裂、半月板断裂、膝蓋大腿部痛症候群かもしれない)は、膝関節運動に明確な影響があるため、膝運動の間に収集された特定の運動学的データに関連することがある。逆に、異常な膝関節運動は、運動学的データの記録により決定され、また、いくつかの場合では、特定の膝関節損傷および/または病状の発症に関する患者の傾向を示す。
【0045】
データベースは、標準生体力学的特性を記憶し、当該特性のそれぞれが、所定の膝関節病状および/または損傷に関連する。これらの標準特性の各々が、様々な患者から収集された運動学的データに基づいて最初から組み込まれている。所定の標準特性について、イメージおよび鑑定等の様々な手段の集合を用いて行われた様々な診断は、前記標準特性に関する最終診断が正確であることを確実にするために、互いに関連している。この方法では、前記標準特性は、それぞれ、損傷および/または病状の種類に関連している。
【0046】
前記標準特性を患者の膝関節の生体力学的特性と比較することにより、少なくとも膝関節問題の分類が、以下により詳細に説明されるように、イメージ法を使用することなく直接的かつ自動的に、そして、信頼性のある定量化されたレベルにより、達成される。
【0047】
図2は、他の実施形態に従った膝関節問題を同定し、かつ、明らかにするための装置の略図である。装置100は、処理装置104、メモリー106、グラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)108、表示装置110およびデータベース112、と連通しているセンサー102のセットを有する。
【0048】
一の実施形態では、センサー102は、膝関節の運動の間、前記膝関節の様々な部分の位置、速度および加速度を追跡するための追跡装置(図示せず)を有し、膝関節運動が行われるにつれて、膝関節運動に関連した運動学的データを生成する。この場合では、センサー102は、患者の膝関節または評価段階にある手足の他の部分に付着されるように適応された検出装置である。他の場合では、センサー102は、後述するように、動的データおよび床反力のいずれか1または組み合わせを測定するように位置決めされた力センサーである。センサー102の他の例は、これらに限定されないが、カメラ、加速度計およびジャイロスコープを含み、これらは、それぞれ、例えば、患者の大腿骨および脛骨に位置決めされる。任意の場合に、センサー102は、前記運動に関連し、前記運動が行われるにつれて生体力学的データを生成する。
【0049】
膝関節運動は、例えば、歩行、しゃがみ込み、突き出しまたはこれらの運動の組み合わせを含む。前記生体力学的データは、運動の少なくとも1つの次元に係る膝関節運動を代表する。一旦、生体力学的データが収集されると、または収集されるにつれて、当該データはセンサー102から処理装置104に送られ、メモリー106に任意に記憶される。
【0050】
一旦、処理装置104で受信され、前記運動が終わった後または前記運動が行われている間のいずれかに、前記生体力学的データは、メモリー106に記憶された命令に従い処理装置104で処理される。斯かる処理が、前記膝関節の生体力学的特性をもたらす。前記生体力学的特性は、前記生体力学的データに基づいて生成され、図1aおよび1bに関して上述したように、前記膝関節の動作の3つの平面M1、M2およびM3の少なくとも1つを表す。
【0051】
標準特性は、膝関節問題の少なくとも1つの部類と関連してデータベース112に記憶される。1つの部類は、1以上の膝関節問題を有し、当該膝関節問題は、膝関節の生体力学についての定量化可能な効果に関連することが知られており;そのため、膝関節の生体力学的特性についての定量化可能な効果に関連することが知られている。
【0052】
前記部類が単一の膝関節問題を規定する場合、次に、前記部類は、膝関節の特定の公知の膝関節損傷、病状または生体力学的欠損を規定する。前記部類が、種々の公知の膝関節問題を再編成する場合、次に、前記部類は、損傷、病状および生体力学的欠損の組み合わせに関連し、これらは、例えば、膝関節問題の任意の特定のカテゴリーに該当するように、医療分野において通常、文書化される。一の実施形態では、各部類に関連した前記標準特性は、生体力学的特性であり、当該特性は、一の特定の膝関節問題、または複数の特定の膝関節問題を表すものとして、医療分野において認められている。
【0053】
さらに図2について、前記標準特性は、処理装置104によって、データベース112から検索される。次いで、処理装置104は、これらの標準特性および生体力学的特性にパターン認識技術を適用することにより、開始し、そこから処理装置104によって、解析中の前記膝関節の生体力学的特性の分類が作成される。
【0054】
前記パターン認識および分類は、処理装置104において行われる。メモリー106に記憶された命令(コーディングとも言われる)に従って、種々のパターン認識(パターン分類とも言われる)技術を用いることができる。例えば、前記生体力学的特性に基づく自動化された機械分類および意思決定を提供する任意の種類の機械学習技術のような、前記生体力学的特性と前記標準特性との間のパターン認識を実装した任意のコンピューターを用いることができる。考えられる実装の包括的でないリストは、パラメトリックまたは非パラメトリック手法、神経ネットワーク、最近傍分類法、射影法、および決定木法、確率統計的手法、遺伝的アルゴリズムならびに教師なし学習およびクラスタリング技法、を含む。
【0055】
処理装置104は、前記パターン認識技術からの結果に基づいて、前記膝関節の生体力学的特性を、公知の膝関節問題のいくつかの部類の1つに分類し始める。
【0056】
一旦、前記生体力学的特性の分類が行われると、問題が、前記生体力学的特性が分類された前記部類に基づいて同定され、そして、当該同定された問題は、処理装置104により出力される。より詳しくは、前記同定された問題は、前記生体力学的特性が処理装置104により分類された膝関節問題の前記部類における前記膝関節問題に対応する。例えば、前記生体力学的特性が、半月板断裂に関連した標準特性のある部類に分類された場合、次にその同定された問題は、前記半月板断裂に対応するかまたは前記半月板断裂を少なくとも含む。一例では、前記生体力学的特性が、2以上の問題に関連した1の部類に分類された場合に、前記同定された問題は、2以上の膝関節問題を実際に組み合わせることができる。
【0057】
前記標準特性に加えて、データベース112は、前記膝関節についての前記生体力学的特性、任意の種類の患者識別データ、およびセンサー102から受信した前記生体力学的データ、を記憶することができる。一の実施形態では、データベース112は、標準特性の複数の集合を記憶し、各集合は、特定の部類の病状および/または損傷および/または生体力学的欠損に関連する。
【0058】
GUI108と表示装置110は、互いに連通し、そして処理装置104と(加えて、一の実施形態では、メモリー106と)連通している。GUI108は、個別の場合にいずれか適切な、解析中の膝関節についての分類および前記同定された問題のいずれか一方または組み合わせを受信する。しかしながら、いずれの場合でも、GUI108は、前記分類および前記特定の同定された問題のいずれか一方または組み合わせを、関係する前記膝関節問題の説明を含めて、表示装置110上に表示する。また、GUIは、前記生体力学的データから生成された生体力学的特性を表示してもよい。
【0059】
ユーザーは、GUIにより、特定のディスプレー設定が表示装置110上で起動され、ユーザーの選択に従って、前記同定された問題に関連する前記生体力学的特性、前記診断および前記標準特性のいずれかまたは組み合わせを表示するように、相互作用することができる。
【0060】
さらに図2について、一の実施形態では、センサー102は、米国特許第7,291,119号に記載されたような3次元膝運動アナライザー、そして、膝関節の脛骨−大腿骨運動についての運動学的データを得るのに適した追跡センサーのセットを有する、一般に入手可能な3次元膝運動アナライザーとして具現化される。しかしながら、センサー102は、加速度、位置および速度を測定することができる、光学、電磁気、加速度計等の入手可能な技術のいずれか1つまたは組み合わせに基づく、任意の種類の動的1次元、2次元または3次元膝アナライザーであってもよい。
【0061】
上述した装置に加えて、一の実施形態では、装置100は、図3に関連して説明される方法300の以下に詳細に述べる工程のいずれかを実行するために適応される。例えば、装置100の一実施形態は、前記運動の間に(すなわち、時間に関して)前記膝関節の定量化された機能を出力するように適応される。また、同じ手法で、装置100は、同一の膝関節について、現在の生体力学的特性をより古い(過去のまたは以前のとも言う。)生体力学的特性と比較し、例えば、前記現在の生体力学的特性と前記過去の生体力学的特性の間の所定期間における、前記問題の進行(改善または低下)を定量化するように適応することもできる。また、他の任意の機能は、病状、損傷および生体力学的欠損等の複数の同定された膝関節問題の、それらの個々の重要性、優先またはこれらの組み合わせの程度の観点からの整列;前記生体力学的特性を生成し、表示する前の、前記生体力学的データの正規化;および解析中の患者の膝関節についての完全なレポートの生成、を含む。
【0062】
装置100が、センサー102から生体力学的データを受信すると説明される一方、斯かる生体力学的データは、一の実施形態では、運動力学的データのみを表す。しかしながら、他の実施形態では、前記生体力学的データは、運動力学的データ、動的データおよび床反力のいずれか1つまたは組み合わせである。一の実施形態では、患者データ、専門的診断データ、および臨床情報等の追加データを同様に受信する。装置100は、本明細書で記載される機能を提供するために、前記運動力学的データのみに基づくことができる(すなわち、一の実施形態では、前記運動力学的データは、処理装置104への唯一の入力である)。
【0063】
図3は、一の実施形態に従った、膝関節を評価し、そして膝関節問題を同定するための方法300のフローチャートである。
【0064】
工程302では、生体力学的データが、センサーから受信される。前記生体力学的データは、膝関節により行われる運動を代表し、図1a〜1bを参照して定義された運動の3つの平面の1つに従う。一の実施形態では、前記生体力学的データは、前記運動が前記膝関節により行われている間に受信される。
【0065】
工程304では、生体力学的特性が、受信された前記生体力学的データに基づいて生成される。前記生体力学的特性は、前記運動が行われるにつれて、前記膝関節の動作の前記3つの平面の少なくとも1つを表す。
【0066】
工程306では、前記生体力学的特性は、標準特性の少なくとも1つの集合に適用されたパターン認識技術を用いることにより、膝関節問題の少なくとも1つの部類に分類される。前記標準生体力学的特性の集合は、膝関節問題の複数の部類の1つにあらかじめ関連付けられている(すなわち、2以上の集合がある場合、各集合は個々の集合に関連付けられている)。
【0067】
一の実施形態では、工程306は、前記生体力学的特性を標準生体力学的特性の集合と比較する工程を含む。一の実施形態では、相関モデルが使用される。
【0068】
また、上述したように、膝関節問題の1つの部類は、前記膝関節の生体力学に影響を有すると知られている1以上の公知の膝関節問題を規定する(すなわち、前記生体力学的特性は、前記膝関節問題の1以上を反映する)。前記部類が単一の膝関節問題に関連する場合、次いで当該部類は、膝関節に関連した特定の公知の膝関節損傷、病状または生体力学的欠損を規定する。前記部類が、様々な公知の膝関節問題を再編成する場合、次いで、当該部類は、例えば、損傷、病状および生体力学的欠損のいずれか1つの組み合わせと関連付けられる。斯かる問題は、膝関節問題の所定の特定の種類に該当するように、医療分野において通常、文書化される。場合によっては、1の生体力学的特性が複数の部類に分類され、その場合、前記膝関節は、複数種類の膝関節問題を包含する欠損症を有する。
【0069】
工程308では、解析中の特定の膝関節に適した膝関節問題が、工程306の結果に基づいて同定される。前記複数の部類の各部類が、少なくとも1つの特定の膝関節問題(すなわち、病状、損傷または生体力学的欠損)を表すため、前記生体力学的特性が分類された部類に係る前記少なくとも1つの部類は、前記膝関節についての特定の膝関節問題を表す。斯かる膝関節問題が該当する物の同定は、この方法300に従ってコンピューターデバイスによって行われ、それにより、医学的診断における支援を行う。
【0070】
工程310では、前記同定された問題は、例えば、さらなる解析、報告または、電子メールまたは認証されたユーザーに宛てた他のネットワーク基盤の通知等の任意の種類の出力に表示するために記録される。
【0071】
一の実施形態では、工程306は、前記生体力学的特性を複数の膝関節問題に関連した複数の部類の1つに分類する工程を含み、工程308で同定された前記問題は、2以上の問題を含む。斯かる場合、方法300は、考えられる膝関節問題のリストについてあらかじめ規定された優先のレベルのセットに従って、前記複数の同定された問題の整列という他の任意の工程(図3に図示せず)を含む。代替的にまたは付加的に、前記整列は、前記診断された膝関節問題の各問題に関連する個々の重症度に従って行われる。
【0072】
一の実施形態では、優先レベルのセットが、ユーザーのグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)との作用を経て、ユーザーが手動で前記レベルを入力することにより、設定される。他の実施形態では、前記レベルは、方法300を実装する処理装置にデフォルトで設定される。
【0073】
診断された膝関節問題の重症度を評価するために、まず、前記診断された膝関節問題に関連した前記1以上の標準生体力学的特性を規定し、一の実施形態では、前記患者の生体力学的特性が含まれるデータ範囲が決定され、工程306における前記パターン認識を経て適合する。この範囲内に適合する前記患者の生体力学的特性の状態が、重症度を規定するために解析される。前記患者の生体力学的特性が、前記標準特性内のデータ範囲の末端内に規定される状態を有する特定の場合では、例えば、前記重症度は、前記状態が前記データ範囲の中央部内に規定される場合よりも高いと考えられている。また、任意の種類のエラー解析技術に基づく、重症度を決定するための他の技術を用いてもよい。
【0074】
一の実施形態では、工程304は、前記運動の間の経過時間に関連した前記膝関節の機能を定量化する工程を含む。
【0075】
一の実施形態では、工程306で適用される前記パターン認識技術は、任意の種類のコンピューター実装されたパターン認識であり、当該パターン認識は、例えば、前記生体力学的特性および標準特性に基づく、自動化された機械分類および意思決定を可能とする機械学習技術を含む。
【0076】
工程306における前記分類は、一の実施形態では、類似性(密着性とも言われる)の量を決定する工程を含む。前記類似性の量は、同定工程308に依存する。前記類似性の量は、工程308において行われる分類における信頼性の程度も表すため、当該類似性の量は、信頼性の指標としても役立つ。
【0077】
さらに図3に関して、図示される工程310に加えて、方法300は、一例では、ユーザーの作用を可能とするグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)を表示する工程を含む。例えば、前記ユーザーは、選択を入力することができ、または特定のデータの特定の種類の表示を要求することができる。
【0078】
加えて、方法300は、所定のフォーマットに従った前記生体力学的特性を表示する工程も任意に含む。前記フォーマットは、ユーザーが入力した選択またはデフォルトで設定されたようなものでもよい。一の実施形態では、前記表示する工程は、前記運動の間に前記モーションセンサーにより動作の3つの平面が感知されるにつれて、当該動作の3つの平面の少なくとも1つに斯かるデータを表すためのグラフのセットを生成する工程を任意に含む。一の実施形態では、動作の前記平面は、角度に関して提供され、そして前記膝関節の運動の間の経過時間は、行われた運動の割合に関して提供される。グラフの例が、図4a、4bおよび4cにより提供され、当該グラフは、それぞれ、図1に関して上述したような動作の3つの平面M1、M2およびM3の各平面について、平面角度対経過した運動の割合のグラフを表す。より詳しくは、図4aは、屈曲−伸展平面M1を表し;図4bは、外転−内転平面M2を表し;そして、図4cは、内−外回転平面M3を表す。
【0079】
再び図3に関し、そして、GUIが表示される実施形態では、ユーザーが、前記GUIに作用して、表示について前記生体力学的特性の一部を任意に選択および拡大することができる。このオプションにより、前記ユーザーは、前記運動の間の特定の時間における角運動の特定の角度を視覚化することができる;このことは、比較的微妙な膝関節の動作を検出することに役立つ。
【0080】
さらに方法300に関して、工程302は、運動学的データ、動的データおよび床反力を反映するデータのうち少なくとも1つを、生体力学的データとして受信する工程を含む。動的データおよび床反力データは、検出機器を備えた歩行板およびトレッドミル等の検出装置から受信する。
【0081】
一の実施形態では、工程302は、患者情報データ、および医療実施者によりシステムに入力されたデータ等の臨床情報データ等(または当該患者を記憶しているデータベースから検索されたおよび、または当該患者に関する臨床データ)の追加のデータを受信する工程を任意に含む。患者データは、患者識別を含んでいてもよく、一方、臨床データは、当該患者に関する以前の診断、または、例えば、健康相談員により入力された任意の他の記録を含んでいてもよい。工程302において、他の情報源から受信することができる一方、方法300および本明細書に記載の他の全ての任意の工程は、唯一の入力として、モーションセンサーのセットから受信する運動学的データを用いて達成できる。
【0082】
工程302が、動的データを受信する工程を含む場合、工程304は、生体力学的特性内に任意に表示される動的データと共に前記生体力学的特性を表示する工程を含む。床反力についても同様である。一の実施形態では、前記動的データまたは床反力を表示する工程は、例えば、前記運動が行われている間に働く3種類の力に係るグラフのセットを生成する工程を含む。一の実施形態では、これらの力は、それぞれ、図5a、5bおよび5cに示したグラフのように、それぞれ、鉛直力、外側−内側力および後部−前部力に対応する。図5a、5bおよび5cに示したグラフでは、床反力の量は、前記患者の体重(BW)の割合として与えられ、一方、前記運動(ここでは歩行周期)の間の経過時間は、前記運動の終了の割合に関して与えられる。
【0083】
上記に加えて、方法300は、他の工程を含んでいてもよく、当該他の工程では、前記生体力学的特性が、同一の膝関節について生成された過去の生体力学的特性と比較される。斯かる比較に基づいて、施された治療の成功または不成功の評価を与えるために、治療の効果が定量化される。同じ方法で、ある期間における膝関節状態の低下/進行を、同様の比較から評価することができる。一例では、斯かる比較は、過去および現在の特性(または治療前特性および治療後特性)を重ねる工程を含む。
【0084】
さらに図3に関して、工程304は、前記膝関節について正規化された生体力学的特性を生成するために、工程302において受信した生体力学的データを正規化する工程を任意に含む。あるいは、このオプションは、所定のフォーマットに従った前記生体力学的特性を表示する工程の前に、工程310中または工程310の後に、行われてもよく、ここで、前記フォーマットをする工程は、前記データの正規化をする工程を含む。
【0085】
最後に、一の実施形態では、方法300は、レポートの生成も提供することができる。前記レポートは、患者データ、前記生体力学的特性(ユーザーの好みのようにフォーマットされた)、および方法300の実行の結果としての同定された問題に関するデータ等の情報を含んで形成される。一例では、動的データ、床反力のデータ、またはこれらの組み合わせも、任意にユーザーの好みのようにフォーマットされて、前記レポート中で提供される。
【0086】
また、医療実施者の記録および前記患者の目的に対する指示、または他の実施者等の他の臨床データが、前記レポートの一部であってもよい。
【0087】
以下は、一般的なレポートに見られるデータの例を提供する:医療従事者の名前;診察日;患者の名前;前記診察および報告のいずれか1つに関係する他の人間の名前;事情の簡単な記載(例えば、患者の年齢;膝関節痛の左右;任意の損傷の詳細;適切ならば出来事の日付および説明;入手可能な場合は以前の診察の種類および日付:入手可能な場合は以前の関連する膝関節損傷および/または病状);評価の間に行われた運動の種類;前記運動学的データから記録され、前記生体力学的特性を反映した生体力学的欠損の記述的要約(例えば、歩行の荷重をかける段階の間の屈曲運動における欠損、押出段階の間の限定された膝関節屈曲;荷重をかける段階の間の重要な内脛骨回転);荷重をかける段階の時間、他の膝(データが入手可能な場合)と比べた一の膝に関する力、破壊および押付における欠損等の働く力についてのデータの解析を経て記録された生体力学的欠損の任意の他の記述的要約(すなわち、動的力もしくは床反力、またはこれらの組み合わせ);ビデオデータに関する他の記録(前記特性に与えられる場合)−すなわち、例えば、跛行の何らかの兆候;検査後の結論;診断および治療の提案。
【0088】
処理装置に方法300の上述した実施形態を実行させるための命令を有するコンピューターで読み取り可能な媒体も、本開示により意図される。
【0089】
図4aに関して、一の実施形態に従った、健康な範囲と比べた、歩行周期の間の患者の1つの膝関節の伸展−屈曲の程度のグラフが示されている。図4bは、一の実施形態に従った、歩行周期の間の患者の1つの膝関節の外転−内転の程度の他のグラフであり;そして、図4cは、一の実施形態に従った、歩行周期の間の患者の1つの膝関節の内転−外転の程度のさらに別のグラフである。これらの図全てにおいて、灰色の範囲は、一般的な健康な対象に見られるような健康な膝関節運動の表示を規定する。実線は、前記患者の膝関節についての平均角運動を表し、そして、破線は、健康な膝関節の運動に関する標準偏差を表す。
【0090】
レポートが生成され、図4a、4bおよび4cにおけるグラフ等のグラフに関する分析のコメントを含む。例えば、図4aから、(地面への足の接触開始から(運動が歩行である場合)、荷重をかける段階、支持段階、押出段階、振れ段階まで)運動における各段階についての平面動作の程度を同定することが可能である。前記角運動の全振幅も角度に関して与えられ、これは、健康な範囲または不健康な範囲のいずれかに該当するように定量化される。
【0091】
同様の分析のコメントが、図5a、5bおよび5cのグラフ等のグラフにより与えられるような、動的データ(入手可能な場合)に関するレポートにおいて与えられる:図5aは、一の実施形態に従った、歩行周期の間に患者に加えられた鉛直床反力のグラフである;図5bは、一の実施形態に従った、歩行周期の間に患者に加えられた内側/外側床反力のグラフである;そして図5cは、一の実施形態に従った、歩行周期の間に患者に加えられた後部/前部床反力のグラフである。全ての力が患者の体重(BW)の割合として表されるのに対して、時間は、歩行周期の終了の割合として表される。
【0092】
好適な実施形態が、これまで説明され、添付の図面において示されてきたが、当業者にとって、本開示の本質から逸脱せずに、それらに変更がされてもよいことは明らかである。斯かる変更は、本開示の範囲に含まれると見込まれる変形と考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5