【文献】
Jean-Charles Fruchart et al.,Simultaneous Measurement of Plasma Apolipoproteins A-I and B by Electroimmunoassay,CLIN. CHEM.,1982年,28/1,59-62
【文献】
RAINWATER D L,DISTRIBUTION OF SPECIFIC APOLIPOPROTEINS DETERMINED BY IMMUNOBLOTTING OF BABOON LIPOPROTEINS RESOLVED BY POLYACRYLAMIDE GRADIENT GEL ELECTROPHORESIS,BIOCHEMICAL GENETICS,英国,PLENUM PRESS CO.,1992年 4月 1日,V30 N3-4,P143-158
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書が開示する発明は、体液、例えば、血清、血漿、滑液及び腹水におけるアポリポ蛋白、リポ蛋白粒子、蛋白質及び脂質のレベルを、リポ蛋白粒子数の指標として総合的に決定するアセンブリ、方法、システム及び装置に関する。これらレベルはリポ蛋白粒子数に関連する種々の疾患が発症するリスクの指標として使用することができる。さらに、数々の詳細を示すことにより、本明細書に記載した例示的な実施形態を完全に理解できるであろう。しかし、当業者であれば、本明細書に記載した例示的な実施形態は、特定の詳細説明なしに実施できることは理解できるであろう。他の例では、方法、手順及び成分は、本明細書に記載した実施形態が判りにくくならないよう、詳細には説明しない。
【0017】
以下の定義及び説明は、以下の説明を明確かつ明瞭に変更しない限り、又はその意味を適用するとき無意味又はほぼ無意味な構成にならない限り、いかなる将来的な構成をも含むことを意味しまた意図するものである。用語の構成が無意味又はほぼ無意味になる場合、定義はウェブスター辞書、第3版から引いてくるべきである。定義及び/又は解釈は、本明細書に特別に記載しない限り、又は取り込みが有効性を維持するのに必要な場合でない限り、関連する、しないに係わらず、他の特許出願、特許又は特許公報から取り込むべきではない。
【0018】
本明細書に使用する用語「リポ蛋白粒子」は、蛋白質及び脂質の双方を含む粒子について言及する。
【0019】
本明細書に使用する用語「リポ蛋白粒子数」は、体液内に存在するリポ蛋白粒子の個数について言及する。
【0020】
本明細書に使用する用語「アポリポ蛋白」は、脂質と結び付いてリポ蛋白粒子を形成する蛋白質について言及する。アポリポ蛋白のユニークな性質は、リポ蛋白粒子に対する化学量論的関係性であり、リポ蛋白粒子数を見積もることができる。
【0021】
用語「リポ蛋白(a)粒子」は、小文字アルファベットの「a」付きで言及され、本明細書中(Lp(a)−P)とも称されるリポ蛋白粒子はジスルフィド結合によってアポリポ蛋白Bに結合したアポリポ蛋白(a)を有するLDL状粒子について言及する。
【0022】
用語、心臓血管疾患(CVD:cardiovascular disease)、冠動脈疾患(CAD:coronary artery disease)及び冠動脈性心疾患(CHD:coronary heat disease)は、本明細書中互換的に使用される。
【0023】
リポ蛋白粒子及びアポリポ蛋白を分離し、また分析するアセンブリ、方法、装置、及びシステムをも本明細書に開示する。このアセンブリ、方法、装置及びシステムを使用して、種々のリポ蛋白粒子及びアポリポ蛋白よりなるリポ蛋白粒子のレベルによって、どの被験者が所定病状に対するリスクがより高いかを決定する。所定のリポ蛋白粒子の一部としてのコレステロール、リン脂質及びトリグリセリドの存在をも検出可能である。
【0024】
このアセンブリ、方法、装置及びシステムは、種々のアポリポ蛋白に関して免疫学的に探査すべき、同時発生的で修正可能な、チャージ/サイズに関するリポ蛋白粒子分離を可能にすることも開示する。このアセンブリ、方法、装置及びシステムは、リポ蛋白粒子を直接測定する改良した方法を提供する。ApoB、Lp(a)−P、及びLDL−P粒子のレベルが上昇することは、心臓血管疾患のリスクが上昇することに相関することが知られている。
【0025】
分離及び検出を向上するには多くのやり方がある。しかし、電気泳動分離と免疫学的検出の組合せによれば、これまでは入手できなかった、心臓血管疾患を含む疾患に関する臨床情報、リスク評価を提供することができる。
【0026】
本発明によるシステム、方法、アセンブリ及び装置の利点は、リポ蛋白粒子分離、成分の総合的検出、及び免疫学的認識を、同一ゲルにおいて同時に利用可能であり、どのアポリポ蛋白の、又はトリグリセリド、リン脂質、及びコレステロールに限定しない他の成分の、どの位の量が、どの位の量の所定リポ蛋白粒子に結合しているかを識別する能力を提供する点である。複数のゲル、複数の器具及び/又は複数の方法を使用してこの情報を検出する必要がないことは有益である。この情報を同時に検出することができることの理由は、複数のゲル、複数の器具及び/又は複数の方法を使用するときに変動を生ずることである。同時検出はこの変動源を排除する。
【0027】
脂質代謝
脂肪酸、コレステロール、モノアシルグリセロール及び胆汁酸は、腸内で吸収される。胆汁酸は腸内胆汁として見られ、脂肪を乳化するミセルの形成によって脂肪を消化するのに役立つ。胆汁酸は、食後腸内に分泌されるまで胆嚢内に蓄えられる。腸の上皮細胞はトリアシルグリセロールを合成する。コレステロールの一部はエステル化されて、コレステロールエステルを形成する。腸内細胞は、トリアシルグリセロール、コレステロールエステル、リン脂質、遊離コレステロール及びアポリポ蛋白からカイロミクロンを形成する。
【0028】
アポリポ蛋白
アポリポ蛋白は、リポ蛋白粒子の蛋白質成分である。アポリポ蛋白は、コレステロールエステル及びトリアシルグリセリドを含むリポ蛋白粒子を被覆する。リポ蛋白粒子の被覆は、非エステル化コレステロール、リン脂質、アポリポ蛋白よりなる。アポリポ蛋白のユニークな性質は、リポ蛋白粒子に対する化学量論的関係性であり、リポ蛋白粒子数を見積もることができる。これらリポ蛋白粒子は、疎水性成分を血流に乗って循環させる道を与える。異なるリポ蛋白粒子としては、カイロミクロン−P,VLDL−P,IDL−P,LDL−P,HDL−Pがある。リポ蛋白粒子は、サイズ、比重、アポリポ蛋白成分、及び脂質成分が変動する。各分類内には異質性があり、各分類は類似の物理的特性を共有する。条件を変化させることにより、分類内で異なる粒子を可視化することができる。このようにすることは臨床的メリットがあり、これはすなわち、例えば、ある1つの分類はアテローム生成的であり、また他の1つの分類はアテローム防護的であり得るからである。
図1はリポ蛋白粒子代謝を示す図である。
【0029】
アポリポ蛋白A(ApoA)族(ファミリー)は、HDL−P及びトリグリセリドに富むリポ蛋白粒子に見られる主要な蛋白質である。HDL−Pの一部としてのApoAは、肝臓外の組織から遊離コレステロールを除去するのに関与し、またレシチン・アシル転移酵素(アシルトランスフェラーゼ)を活性化させる役割も果たす。アポリポ蛋白Aは、コレステロール転移を組織からHDL−Pに向かわせる酵素を活性化し、またHDL−P認識及び肝臓に結合する受容体にも関与する。
【0030】
アポリポ蛋白Aには複数の形態がある。最も共通する形態は、ApoA−I及びApoA−IIである。アポリポ蛋白A(A−I,A−II,A−IV)は、カイロミクロン及びHDL−Pに見られる。ApoA−Iは、HDL−Pに付着する主要なアポリポ蛋白Aである。ApoA−Iは、レシチン・コレステロール・アシル転移酵素を活性化させ、またApoA−IIはその活性化を調節する。レシチン・コレステロール・アシル転移酵素は、遊離コレステロールをコレステロールエステルに転換させる。ApoA−IV分泌は、脂肪が腸内に吸収されるとき増加する。ApoA−IV分泌は、さらに、レシチン・コレステロール・アシル転移酵素を活性化させるよう機能する。
【0031】
ApoA−Iは、ApoA−IIよりも比率がより多い(約3〜1)。ApoAのレベルがより低いと、一般的に心臓血管疾患(CVD)及び抹消血管疾患の存在に相関する。ApoA−Iは、HDLコレステロール(HDL−C)よりもアテローム生成リスクに関するよりよい指標となり得る。若干の遺伝性障害者は、ApoA−I欠如を引き起し、HDL粒子のレベルを低くする。これら障害者は、LDL粒子が増加する脂質異常症にかかる傾向がある。このことは、アテローム性動脈硬化症になる速度を速める。ApoAのレベルは、無αリポタンパク血症(家族性高比重リポ蛋白欠乏症としても知られている)。
【0032】
マクロファージ(大喰細胞)からのコレステロール流出におけるHDL及びその主要なアポリポ蛋白であるApoA−Iの役割は、広範囲にわたって研究されてきた。HDL−PはApoA−I結合を競い合うが、ApoA−IはHDL−P結合を競い合うものではない。この観察は、HDL−P及びApoA−Iは、独特な受容体によって少なくとも部分的にマクロファージに結合していることを示唆する。例えば、前(pre-)β−HDL−P及び無脂質(lipid-free)のApoA−Iはスカベンジャー受容体(SR−BI)に対しては劣ったリガンドであり、このことは、ApoA−IはHDL−P結合を競い合う性質が欠如していることの証左である。逆に、ApoA−IはHDL−Pから解離し、したがって、無脂質(lipid-free)のApoA−Iは、ApoA−I結合部位をHDLが競い合うのに利用可能であることが分かった。(Lorenzi I, et al., BIJ Mol Med. 2008;171-183 参照。)HDLに対する他の競合相手であるApoA−IIは、動物モデルにおける前駆的アテローム生成をする性質(pro-atherogenic)を有することが分かっている。(Meyers CD and Kashyap ML., Curr Opin Cardiol, 2004; 19(4):366-373 参照。)
【0033】
アポリポ蛋白B(ApoB−100及びApoB−48)は、LDL−Pの蛋白質成分である。ApoBの1つの分子は、各LDL−Pにおけるリン脂質内に存在する。LDL粒子の90%以上はApoBよりなる。ApoBは、LDL−P複合体内でコレステロールを可溶化するよう機能し、このことはLDL−Pの輸送能力を向上させ、後にLDL−Pコレステロールを動脈壁に堆積させることになる。この堆積は心臓血管疾患につながる。ApoBは、カイロミクロン、VLDL−P,IDL−P及びLp(a)−Pの蛋白質成分でもある。ApoBは、大きな両親媒性の螺旋状をした糖タンパク質であり、2つのイソ型、すなわちApoB−100(肝細胞内で合成される)、及びApoB−48(カイロミクロンの構造的蛋白)を有する。カイロミクロンは、ApoB−48を含むとともに、ApoBを含む他のリポ蛋白粒子はApoB−100を含む。
【0034】
ApoBは、リポ蛋白粒子に作用する酵素の活性を調整し、リポ蛋白粒子複合体の構造的一体性を維持し、また特定細胞の表面受容体に対するリガンドとして作用することによってリポ蛋白粒子の摂取を容易にする。リポ蛋白粒子に作用する酵素としては、以下のものに限定しないが、リポ蛋白リパーゼ、レシチン・コレステロール・アシル転移酵素、肝性トリグリセリドリパーゼ、及びコレステロールエステル輸送タンパク質がある。ApoBのレベル上昇は、高リポ蛋白血症に見られる。ApoB−100は、無βリポ蛋白血症の病態では見られない。高レベルのApoB−100は、高リポ蛋白血症、重篤な狭心症、及び心筋梗塞に存在する。
【0035】
ApoB含有リポ蛋白粒子の増大した血漿濃度は、アテローム性動脈硬化を発症するリスク増大に関連する。ケースコントロール(症例対照)研究では、冠動脈性心疾患(CHD)の患者を認識するのに、血漿ApoB濃度が、他の血漿脂質及びリポ蛋白粒子よりも、一層識別力に優ることが分かった。(Eur Heart J. 2003; 24: 1601-10; Walldius G and Jungner I. J Intern Med. 2004; 255/2: 188-205; Walldius G, et al., J Intern Med. 2006;259-66; Yusuf S, et al. Lancet. 2004; 364: 937-52 参照。)CHDリスクを決定する上でのApoBの有用性は、将来に向けての研究で確かめられているが、リスクを予測する上でどの程度ApoB濃度が血清脂質よりも優れているかは変動し得るものであった。ApoBは、すべてのアテローム生成粒子又は潜在的アテローム生成粒子の成分であり、この成分としては、超低比重リポ蛋白粒子(VLDL−P)、中間比重リポ蛋白粒子(IDL−P)、低比重リポ蛋白粒子(LDL−P)、及びリポ蛋白(a)粒子(Lp(a)−P)があり、各粒子は1個のApoB分子を含有する。CVDを発症する被検者のリスクは、その被検者のリポ蛋白粒子の分布及びタイプに比例する。しかし、アテローム生成をするApoB含有リポ蛋白粒子は、それぞれ異なるアテローム生成を行う。ApoBは、循環するアテローム生成をするリポ蛋白粒子の数の直接的評価をもたらすものであるが、最適な臨床上のメリットは、ApoB測定を使用して、存在するリポ蛋白粒子の分布及びタイプを数量値化するときのみ得られる。総ApoBに対するCVDリスク測定は、上述した種々の粒子における存在によって左右される。粒子を分離することなく総ApoBを測定することは、どの粒子が関連するかを示さない。
【0036】
現在では、ApoBが、心臓血管疾患(CVD)に関して、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL−C)よりも高い予測性を示すという明確なコンセンサスがあり、またアメリカ糖尿病協会(ADA)及びアメリカ心臓病学単科大学(ACC)からの最近の総意的協議レポートでは、ApoBの測定が重要であると認識している。(Kannel WB, et al., Ann Intern Med 1979;90:85-91 and Jeyarajah, EJ, et al., Clin Lab Med 2006; 26:847-70参照。)実施形態においては、ApoB及びLDL−Pのレベル上昇は、被検者の心臓血管疾患のリスクが高いことを意味するものとする。実施形態においては、ApoB、LDL−P及びLp(a)−Pのレベル上昇は、被検者の心臓血管疾患のリスクが高いことを意味するものとする。
【0037】
アポリポ蛋白C(ApoC−1,C−II,C−III)は、カイロミクロン粒子、VLDL粒子、IDL粒子及びHDL粒子の成分である。ApoC−IIは、リポ蛋白リパーゼの活性化因子であり、その欠損症は、カイロミクロン及びトリアシルグリセロールの蓄積を招く。高いレベルのApoC−IIは、狭心症及び心筋梗塞の指標となる。アポリポ蛋白C−II(ApoC−II)は、胃腸管から吸収された大きな粒子に見られる特別なタイプの蛋白質である。さらに、それは、ほとんどコレステロールで構成される超低比重リポ蛋白粒子(VLDL−P)にも見られる。ApoC−IIは、毛細血管内でリポ蛋白リパーゼ(LPL)を活性化する役目を担うアポリポ蛋白であり、したがって、カイロミクロン粒子及びVLDL−Pの異化作用を開始する。それは、またHDL−Pにも見られる。このApoC−IIの欠損症は、絶食中の深刻な高トリグリセリド血症及び高乳糜血症に存在する。
【0038】
ApoC−II測定は、高脂血症(脂質異常症)の特別なタイプ又は原因を決定するのに役立てることができる。家族性リポ蛋白リパーゼ欠損症の人はApoC−IIの量が多いことがあり得る。ApoC−IIレベルが高いことに関連する他の疾患としては、狭心症及び心臓麻痺がある。低レベルのApoC−IIは、家族性ApoC−II欠損症と称されるまれな症状を有する人に見られる。
【0039】
ApoC−IIIは、超低比重リポ蛋白粒子(VLDL−P)に見られる。ApoC−IIIは、リポ蛋白リパーゼ及び肝性リパーゼを抑制し、またトリグリセリド高含有粒子の肝取り込みを抑制すると考えられる。
【0040】
ApoA−I,ApoC−III及びApoA−IVの遺伝子は、ラット及び人双方のゲノムに密接に関連している。ApoA−I及びApoA−IV遺伝子は同一らせん構造(ストランド)から転写されるとともに、ApoA−I及びApoC−III遺伝子は収斂的に転写される。ApoC−IIIレベルの上昇は、高トリグリセリド血症の発症を誘発する。
【0041】
アポリポ蛋白DはHDL−Pの僅かな成分である。ApoDの高濃度は、種々の疾患、例えば肉眼的乳腺嚢胞症及びアルツハイマー病に関連する。
【0042】
アポリポ蛋白E(ApoE−2,E−3及びE−4)は、カイロミクロン及びIDL−Pに見られる。ApoEは、肝細胞及び体皮細胞における受容体に結合する。ApoEは、トリグリセリド高含有粒子の構成成分の標準的な異化作用に必須である。ApoEは、リポ蛋白粒子代謝及び心臓血管疾患に重要であると当初は認識されていた。それは、脂質を組織に輸送し、コレステロールを器官から肝臓に輸送し、VLDL−P及びカイロミクロンを除去することによりリポ蛋白粒子を代謝させ、またアテローム性動脈硬化症を形成する。リポ蛋白粒子におけるApoEの部分は、ApoEリポ蛋白粒子をLDL−P受容体に結合する仲立ちをする。HDL−Pに結合したApoEは、作用薬(アゴニスト)で誘発された血小板凝集を血小板における部位に結合することによって抑制する。ApoE遺伝子の異なる3種のアレル(対立遺伝子)、すなわちApoE e2, e3及びe4がある。ApoEe4は、晩期発症型アルツハイマー病のリスクが増大することに関連する。
【0043】
アポリポ蛋白Hは、カルジオリピンに結合するよう機能する。抗カルジオリピン抗体は、梅毒、硬化症及び狼瘡(ループス)に見られ、また、幾つかの疾患において、抗体は、活性化すべきApoHを必要とし、血小板によるセロトニン放出を抑制し、また血小板の凝集を防止する。ApoHも、血小板によるセロトニン放出を抑制し、また血小板の凝集を防止する。
【0044】
リポ蛋白粒子
リポ蛋白粒子の輪郭は、異なる被検者毎に異なり、また同一の被検者でも異なる時間毎に異なる。カイロミクロンは、腸内で生成され、消化された脂肪を組織に輸送する。リポ蛋白リパーゼは、トリアシルグリセロールを加水分解して脂肪酸を形成する。カイロミクロンは最も大きな浮遊性粒子の一つである。VLDL−Pは、肝臓内でのカイロミクロン代謝の際に遊離脂肪酸から形成される。リポ蛋白リパーゼは、トリアシルグリセロールを加水分解して脂肪酸を形成する。IDL−Pは、VLDL−Pの加水分解されていないトリアシルグリセロールである。IDL−Pは、肝性リパーゼによりLDL−Pになる。HDL−Pは、末梢組織からコレステロールを肝臓に輸送する役割を行う。HDL−Pは肝臓及び腸内で合成される。
【0045】
LDL粒子はLDL−P受容体に結合する。受容体との結合の際、LDL−Pは血液から除去される。細胞はLDL−P内のコレステロールを使用して細胞膜形成及びホルモン合成を行う。LDL−PはLDLコレステロールを動脈壁に堆積させ、このことが心臓血管疾患に関与する。
図1に示すように、LDL−Pは、動脈壁の内側に溜まると炎症を引き起こす。マクロファージがこの炎症部位に付着し、マクロファージがLDL−Pを取り込むとき、細胞を泡立て、さらに炎症させることになる。比重がより低いLDL−Pは、より大きい浮遊性LDL−Pよりも、コレステロールエステルを含む。
【0046】
リポ蛋白(a)粒子(Lp(a)−P)の構造は、ジスルフィド(二硫化)結合によってアポリポ蛋白Bに結合したアポリポ蛋白Aを有するLDL状粒子の構造である。リポ蛋白(a)粒子は凝固の役割を担うものであり、また動脈壁にコレステロールを堆積させるよう免疫細胞を刺激する。アポリポ蛋白Bに対する抗体は、Lp(a)−Pが泳動している(migrate)領域における2つのバンドを認識する。1つのバンドは、先にHDL−Pとともに泳動し、上述したように、リポ蛋白粒子分離及び免疫学的検出を同時に行う方法を使用して検出した。泳動差は、Lp(a)−Pのイソ型における荷電/サイズの分化に関連し得る。高いリポ蛋白(a)粒子レベルは心臓血管疾患のリスクがより高いことを示す。とくに、2つのバンドのうちより緩慢に泳動し、またより陰極性が高いバンドが高レベルであることは、心臓血管疾患が高いリスクにあることを示す指標である。したがって、Lp(a)−Pは診断に関する統計学的リスク評価に有用である。Lp(a)−Pは、LDL−Pプラーク堆積を促進するよう作用する。Lp(a)−Pのレベルは、アテローム生成事象で増大する。陽極性のLp(a)−Pは、以前は認識されていなかった。
【0047】
Lp(a)−Pは、血栓形成とアテローム性動脈硬化との間の関連性を有し、線維素溶解カスケード反応におけるプラスミノーゲン機能を阻害する。多くの研究から、種々の心臓血管障害、例えば末梢血管疾患、脳血管障害及び若年性冠動脈疾患に高いLp(a)−P濃度が関係していることが立証されている。老齢のアメリカ人に対する1つの大きな研究は、とくに、Lp(a)−Pのレベル上昇が、血管障害からの発作、死のリスク増大、また人々におけるあらゆる病気原因からの死のリスク増大を予見することを立証した。(Fried LP, et al. Ann Epidemiol 1991;3:263-76参照。)
【0048】
低比重リポ蛋白コレステロール(LDL−C)は、心臓血管疾患リスクを評価する測定に使用されてきた。しかし、HDL−Cの変動性に起因して、ApoBが循環するLDL粒子(LDL−P)の数に関するよりよい測定対象であり、したがって、リスク指標に関して慣行的LDL−Cよりも信頼性の高い指標である。なぜなら、ApoB及びLDL−Pの化学量論が1:1であるからである。総ApoBの合計は、LDL−P(大きな浮遊性粒子及び低比重粒子)+VLDL+IDL+Lp(a)+カイロミクロンにおけるApoB捕集合を含むが、これに限定するものではない。リポ蛋白粒子の数量的指標としてのApoBレベルの測定は、個別測定又は慣行的なLDL−C分析によるリスク情報を越えて、アテローム硬化性心疾患のリスクに関する付加的な情報を提供する。空腹時血漿インスリンレベル及びLDL粒子サイズの測定も、有用な情報を提供する。
【0049】
リポ蛋白粒子及びアポリポ蛋白に対する分析
本発明によるシステム、方法、装置及びアセンブリを使用して、体液、例えば血清、血漿、滑液又は腹水における成分レベルの濃度を決定することができ、これら濃度は特定疾患を発症するリスクの指標である。相関性を同定した後、診断検査を設計し、この設計は、疾患発症のリスクを決定し、疾患を診断し、又は疾患処置をモニタリングする効率的でコスト的に有効な方法を得るように行う。診断検査は、これに限定するものではないが、酵素結合による免疫吸着法(ELISA:enzyme-linked immunosorbent assay)を含む方法又は従来既知である他の方法を使用することができる。
【0050】
実施形態において、ApoB及びLDL−Pのレベル上昇は、被検者における心臓血管疾患のリスクが増大していることを意味する。実施形態において、ApoB及びLp(a)−Pのレベル上昇は、被検者における心臓血管疾患のリスクが増大していることを意味する。本発明によるシステム、方法、装置及びアセンブリによれば、ApoB及びLDL−Pによる、又はApoB及びLp(a)−Pによるアテローム形成を決定することができる。本発明によるシステム、方法、装置及びアセンブリによれば、種々の画分、例えばLp(a)−Pを分離する能力が得られる。
【0051】
一実施形態において、アポリポ蛋白に対するポリクローナル抗体は、精製したアポリポ蛋白及びアジュバント(免疫賦活剤)をラビット又は類似のホスト動物に注入することによって生ずる。追加的免疫付与は定期的に行うことができる。血液を定期的に採取して抗体タイター(力価)を決定する。抗体は、血液を凝固させ、上澄み血清を取り出すことによって血液から精製する。代案として、抗体は、商業的供給源から購入する、又は当業者に既知の任意な他の方法によって製造することができる。
【0052】
一実施形態において、電気泳動法を使用してリポ蛋白粒子を分離し、リポ蛋白粒子及びアポリポ蛋白の関連するレベルを決定する。電気泳動の処理中、電界をマトリクス(架橋ポリマー)に加える。マトリクス又は媒体は、ポリアクリルアミド、アガロース、セルロースアセテート、又は他の適当な導電性マトリクス状物質とすることができる。
【0053】
一実施形態において、ゲル電気泳動は一次元的なものとすることができる。他の実施形態において、ゲル電気泳動は二次元的なものとすることができる。実施形態において、分画電気泳動を行うことができる。一実施形態において、ゲル電気泳動はアガロース又はポリアクリルアミドを使用する。SDS−PAGE(ポリアクリルアミド)ゲルは、サイズに基づいて蛋白質を分離し、これはすなわち、SDSが負の荷電で蛋白質を被覆するからである。アガロースゲルにおける蛋白質の分離は荷電により行う。一実施形態において、従来既知の任意の適当なタイプである電気泳動法を使用することができる。
【0054】
一実施形態において、セルロースアセテート電気泳動法を行う。セルロースアセテート電気泳動法は、蛋白質をその荷電に基づいて分離する。電気泳動によりリポ蛋白粒子を分離した後、マトリクスを着色し、脂質着色剤、例えばファット・レッド(Fat Red)7B、スダンブラック(Sudan Black)B、クソール・ファースト・ブルー(Luxol fast blue)、又は四酸化オスミウムを使用して脂質を検出することができる。コレステロールは酵素反応試薬を使用して視覚化することができる。アミドブラック10Bを使用して血清蛋白を着色することができる。他の実施形態において、特定のリポ蛋白粒子を、着色以外の他の方法により検出することができる。若干の実施形態において、関心のあるリポ蛋白粒子用の抗体又は他の物性を使用することができる。コレステロールは、コレステロール検出に関して既知の技術における任意の試薬を使用して現像することができる。一実施形態において、フォルマザン(formazan)を使用してコレステロールを検出する。
【0055】
一実施形態において、ゲルにおける分離したリポ蛋白粒子をニトロセルロースのような薄膜に転写し、所望の検出方法に曝すことができる。ゲル又は薄膜は、試薬を含む洗槽内で定温放置することにより、又は試薬を含有するフィルムにゲル又は薄膜を曝すことにより、又は従来既知の他の方法に曝すことにより、着色剤又は抗体に曝すことができる。一実施形態において、試薬を含有するフィルムは、透明であり、迅速に溶解し、支持でき、またシステムに必要な感度を補完するものとすべきである。フィルム上における、探索すべきゲルの特定レーンに対応する、異なる位置に、異なる試薬を設けることができる。一実施形態において、薄膜は、リポ蛋白粒子に対する抗体で探索し、これに続いてラベル付けした二次的抗体による検出を行う。二次的抗体は、放射能ラベル付け又は酵素的ラベル付けしたものとすることができる。各バンドにおける光学的濃度を、デンシトメトリー法で決定することができる。一実施形態において、プロセッサを使用して光学的濃度を相関付けることができる。
【0056】
サイズが変動するゲルを、種々の個数のレンズ群で走査することができる。1人の被検者用の血清(又は血漿、滑液又は腹水のような他の体液)を探査して、複数の成分を同定する及び/又は複数の被検者からの血清を検査することができる。一実施形態において、異なるサイズのゲルを走査するプロトコル(手順)は、そのサイズのゲルにおける分離を最適化するように行う変更を除いて、類似のものとする。
【0057】
一実施形態において、免疫固定を使用して、或るリポ蛋白粒子に関連する、したがって、1:1の化学量関連に起因するリポ蛋白粒子数を与える、或るアポリポ蛋白の量を検出することができる。一実施形態において、抗原(リポ蛋白粒子内のアポリポ蛋白)をゲルにおいて分離する。アガロースゲル電気泳動において、リポ蛋白は、そのサイズ及び荷電に基づいて泳動する。或る適切な状況下では、抗原及び抗体の結合により、その複合体をゲルから沈殿させる
【0058】
他の実施形態において、抗体を支持体に付着させる。抗原結合したリポ蛋白を含む分析すべき液体をその支持体に添加することができる。抗原が抗体に結合することにより、或るリポ蛋白粒子に関連し、したがって、リポ蛋白粒子数を得ることができる或るアポリポ蛋白の量を決定する。
【0059】
一実施形態において、体液、例えば血清、血漿、滑液及び腹水における物質レベルを決定することは、或る疾患に関連する特定ターゲットを検出する診断的分析として使用する。他の実施形態において、診断的分析は、多くのリポ蛋白粒子、アポリポ蛋白及び体液、例えば血清、血漿、滑液及び腹水に存在する他の物質を検出する。若干の実施形態においては、種々の形式の酵素結合による免疫吸着法(ELISA)を分析に使用することができる。
【0060】
図2につき説明すると、リポ蛋白粒子をゲルにおいてApo−AI、Apo−AII及びApo−Bに関して分離し、また着色した。
図3は、複数の患者からの試料を含み、Apo−Bの存在用に探索したゲルを示す。レーンに付けたラベルは患者番号を示す。
図4〜
図8は、
図3における種々の患者試料に対するレーンに存在するバンドの濃度測定走査を示す。画分値は、ピーク領域のパーセンテージを表す。
図4は、患者1(ラベル1)のレーンに対する濃度測定走査を示す。
図5は、患者2(ラベル2)のレーンに対する濃度測定走査を示す。
図6は、患者10(ラベル10)のレーンに対する濃度測定走査を示す。
図7は、患者12(ラベル12)のレーンに対する濃度測定走査を示す。
図8は、患者74(ラベル74)のレーンに対する濃度測定走査を示す。
【0061】
超遠心分離法により、リポ蛋白粒子をその比重に基づいて分離する。一実施形態において、不連続なNaCl/スクロース勾配を使用して超遠心分離法の分離を行う。一実施形態において、体液、例えば血清、血漿、滑液及び腹水を、脂質に対するバンドを視覚化するファット・レッド7Bで、又は蛋白質を視覚化するアシッド・バイオレットで予め着色することができる。画分は、管の底に対する穿刺によって分離することができる。一実施形態において、個別のリポ蛋白粒子における画分は、或るアポリポ蛋白の量に対して探索することができる。
【0062】
リポ蛋白粒子は、種々の方法によって分離することができる。一実施形態において、リポ蛋白粒子は、カラムクロマトグラフィによって分離することができる。一実施形態において、カラムクロマトグラフィはHPLCにおいて行うことができる。HPLC画分を収集し、また或るアポリポ蛋白の存在に関して探索する。一実施形態において、分離は、ELISA又は沈殿によって行うことができる。代案として、従来既知である任意の適当なタイプの分離プロトコルを使用することができる。
【0063】
一実施形態において、デンシトメトリー法を使用して、リポ蛋白粒子及びアポリポ蛋白のレベルを数量値化する。バンドの光学的濃度は、バンドを露光させ、また透明ゲルを透過する光量の減少を測定することにより決定する。他の方法を使用してバンドに存在するリポ蛋白粒子及びアポリポ蛋白のレベルを数量値化することができる。プロセッサを濃度計に接続し、各リポ蛋白粒子及びアポリポ蛋白に関するバンドの光学的濃度を決定及び分析することができる。濃度計によって決定した値は、実際の値と陽性対照との比として得る。バンドの数量値化にデンシトメトリー法を使用することは、従来周知である。(例えば、米国特許第4,572,671号、及び同第7,682,795号参照。)
【0064】
一実施形態において、アポリポ蛋白は、アポリポ蛋白とこのアポリポ蛋白を目指すポリクローナル抗体との結合の際の沈殿によって検出する。一実施形態において、リポ蛋白粒子又はアポリポ蛋白の有無は、視覚的に検出することができる。他の実施形態において、蛋白質着色剤を使用して、アポリポ蛋白と抗体との結合を検出する。一実施形態において、ラベル付けした二次的抗体を使用してアポリポ蛋白と抗体との結合を検出する。
【0065】
特定疾患の発症リスクは、1つの成分対その成分の実際レベルに基づく他の成分の比によって決定することができる。異なる分離又は検出方法は、比又は実際レベルを使用することができる。例えば、比は、ゲル電気泳動を使用する場合のリスクを検出するのに好適であり、また実際レベルは、ELISAを使用する場合に好ましい。しかし、任意の検出方法において、いずれも使用することができる。
【0066】
疾患のリスク指標としてあり得る、可能性のあるリポ蛋白粒子及び/又はアポリポ蛋白ターゲットを同定した後、種々の組合せを調査して、どの組合せが最良の指標かを決定する。例えば、リポ蛋白粒子レベルは、特定疾患リスクのよい指標であり得るが、付加的な成分のレベルを分析することが被検者におけるその疾患発症リスクを予測する能力を向上させる場合がある。大量収集した試料におけるターゲットとするリポ蛋白粒子及びアポリポ蛋白のレベルを分析し、またこれら試料に関して入手可能な疾患データと比較し、どれが特定疾患リスクの最良指標かを決定する。実施形態において、診断的分析は、この情報を使用して準備する。
【0067】
心臓血管疾患リスクを決定する分析
LDLは動脈壁にLDLコレステロールを堆積させ、このことは心臓血管疾患に関与する。コレステロールが動脈壁の内側に溜まると炎症を引き起こす。この炎症に基づいてマクロファージが出現する。マクロファージは、LDLを取り込むとき泡沫細胞となり、さらなる炎症を引き起こす。炎症は心臓血管疾患のリスクを示す。
【0068】
本明細書が開示する実施形態は、どのくらい多くのApoBが、種々のリポ蛋白粒子源に存在するかを決定する。この分析によれば、被検者におけるリポ蛋白粒子及びアポリポ蛋白によるアテローム形成の評価を可能にする。これら測定は、被検者が心臓血管疾患を発症するリスク決定の分析を行うことができ、また治療をモニタリングする方法を与えることができる。高レベルのApoB及びLDL粒子は、心臓血管疾患リスクが増大したことを示す。一実施形態において、この方法は、番号固有リポ蛋白粒子を評価する方法を与える。この方法によれば、種々のアポリポ蛋白に関して免疫学的に探索すべき、荷電/サイズ的に修正可能なリポ蛋白粒子分離を同時に行うことができる。この方法は、リポ蛋白粒子の直接測定を行う。さらに、この方法は、特定リポ蛋白粒子のどの位のレベルが所定疾患に関するリスク増大を示すかを決定するメカニズムを与える。
【0069】
本明細書に記載する発明の実施形態において、免疫特異性と同時荷電分離能力とを組み合わせて特定リポ蛋白粒子レベルを決定する。ApoBが成分となっている各リポ蛋白粒子タイプにおけるApoB含有量の化学量論的比率は1:1である。例えば、ゲル電気泳動法による血清リポ蛋白粒子分離により、ApoBの画分を得る。その検出方法は、臨床的情報を与え、この情報を利用して簡単で使い易くまた迅速な診断的分析を行うことができ、この分析によって特定疾患に関与するリポ蛋白粒子を検出することができる。従来既知の他の方法を、適所に又はゲル電気泳動に付加して使用することができる。この分析は、蛋白質着色剤又は脂質着色剤を有するリポ蛋白粒子及びアポリポ蛋白を抗体で検出する。(
図2参照。)従来既知の他の検出方法を使用することができる。ゲルの内容物をニトロセルロースのような薄膜に転写することができる。ゲル若しくは薄膜を薬剤含有洗槽内で定温放置することにより、又はゲル若しくは薄膜を試薬含有フィルムに曝すことにより、又は従来既知の方法に曝すことにより、着色剤又は抗体に曝すことができる。一実施形態においてゲルは、アシッド・バイオレットで着色する。一実施形態において、ゲルをオイルレッドOで着色する。試薬を含有するフィルムは、透明であり、迅速に溶解し、支持でき、またシステムに必要な感度を補完するものとすべきである。フィルム上における、探索すべきゲルの特定レーンに対応する、異なる位置に、異なる試薬を設けることができる。他の実施形態において、液体試薬を使用した。各バンドにおける光学的濃度を、デンシトメトリー法で決定することができる。一実施形態において、プロセッサ、例えばコンピュータ、又は手動計算、又は従来既知の他の任意な方法を使用して光学的濃度を相関付けることができる。
【0070】
アポリポ蛋白Bに対する抗体は、Lp(a)が泳動している領域において2つのバンドを認識する。1つのバンドは、先にHDL−Pとともに泳動しており、上述したように、リポ蛋白粒子分離及び免疫学的検出を同時に行う方法を使用して検出した。より緩慢に泳動しているバンドはアテローム形成的である。したがって、そのバンドが高レベルであることは、心臓血管疾患のリスクが高いことを示す。体液、例えば血清、血漿、滑液又は腹水に存在するリポ蛋白粒子を分離し、またリポ蛋白粒子及びアポリポ蛋白を検出する試薬に曝す。ApoB−100は、Lp(a)の一部として存在し、したがって、ApoB−100抗体で探索することによりLp(a)を検出する。適当な蛋白質着色剤の例としては、アシッド・バイオレットがあり、適当な脂質着色剤としてはオイルレッドOがある、従来既知の任意な他の適当な着色剤を使用することができる。
【0071】
晩期発症型アルツハイマー病のリスクを決定する分析
ApoEは、晩期発症型アルツハイマー病のリスクに関連していた。ApoE遺伝子には3つの異なる対立遺伝子(allele)、すなわち、ApoE e2,e3,e4が存在する。対立遺伝子は、1つ又は2つの基本対(base pair)に関して互いに異なる。ApoE e4は晩期発症型アルツハイマー病のリスク増大に相関する。人はそれぞれApoE遺伝子の対を有し、この対は、e2,e3,e4の組合せである。ApoE e3/e3は、最も一般的な遺伝子型(ジェノタイプ)である。ApoE e4/e4及びe4/e3は、アテローム性動脈硬化症のリスクを示す。ApoE e4は、晩期発症型アルツハイマー病のリスク増大にも関連し、e4/e4ではリスクが最も高い。本発明によるシステム、方法、装置、及びアセンブリの利点は、どのApoEがどのリポ蛋白粒子とともに存在し、またどのくらいのレベルで存在するかを検出する能力にある。ApoE e2,e3,e4に固有の抗血清(antisera)を使用してどのタイプかを決定する。総ApoEを測定することだけでは十分ではなく、これはすなわち総ApoE測定ではどのリポ蛋白粒子にApoEが存在するかの情報が得られないからである。
【0072】
実験例
以下の実験例を挙げて本発明の好適な実施形態を示す。当業者には本明細書に記載した特定実施形態に対して多くの変更を加えることができ、これら変更でも本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、同じ又は類似の結果が得られることを理解できるであろう。以下の実験例は単なる例示であり、本発明はこれらに限定するものではない。
【0073】
実験例1. アポリポ蛋白に対する抗体の準備
アポリポ蛋白に対するポリクローナル(多クローン性)抗体を、適当なホスト動物、例えばラビットに関心のあるアポリポ蛋白及びアジュバントを注入することによって製造する。約0.02ミリリットル注入し、この注入を21日毎に行い、最終的にピークの抗体タイター(力価)が得られるまで続ける。抗体タイターは耳採血によって検査する。ApoB−100又は他のアポリポ蛋白に対する抗体は同様にして製造することができる。代案として、ApoB−100又は他のアポリポ蛋白に対する抗体は、市販のものから購入することもできる。
【0074】
実験例2. ApoB手順
ヘレナ・ラボラトリーズ社(Helena Laboratories Corporation)によるSPIFE電気泳動システムを使用して種々の患者からの血清試料を分析した。使い捨て深底カップストリップを試料カップトレイにおける列2,3,4及び5内に配置した。ブレードを塗布アセンブリにおける番号A,9,13,16が付いた垂直スロット内に配置した。50マイクロリットルの患者試料又は対照試料を適切な試料カップ内にピペット注入した。他の実施形態では、異なる量の患者試料を使用した。一実施形態において、75マイクロリットルの患者試料又は対照試料を適切な試料カップ内にピペット注入した。
【0075】
ヘレナ・ラボラトリーズ社から市販されているREPの準備液(Prep)を約2ミリリットル、電気泳動チャンバの左側に分注した。REPは、Rapid ElectroPhoresisの略語である。ゲルをREPの準備液上に配置し、くずが出ないティッシュでゲル端縁の周りを拭き取り、過剰なREPにおける準備液を除去した。電極ポストに隣接する部分の拭き取りには特別に注意を払った。ゲルから保護用のゲルオーバーレイを取り外した。ブロッタC(Blotter C)を使用して、表面全体をそっと吸い取った。この後、ブロッタを外した。
【0076】
カーボン電極を磁気ポスト外側における陰極ゲルブロック(左側)の外側棚部に配置した。ステンレス鋼電極を磁気ポスト外側における陽極ゲルブロック(右側)の外側棚部に配置した。電極ブロッタを、カーボン電極がゲルブロック端部に接触するカーボン電極端部の下側に配置した。電気泳動用の作動パラメータは以下の通りとし、すなわち、試料を30秒以内で装填し、試料を60秒以内で塗布し、また16゜C及び400ボルトで20分間電気泳動させた。
【0077】
電極は電気泳動処理後に取り外し、またゲルブロックを取り外して廃棄した。ApoB抗血清を生理食塩水で1:4に希釈した(血清を1パート、生理食塩水を3パート)。他の実施形態において、異なる濃度の抗血清を使用した。抗血清テンプレートをゲル表面上にそっと配置した。250マイクロリットルの希釈した抗血清をテンプレートにおける各抗血清チャネルの右端における楕円形のスロットにピペット注入した。抗血清は20゜Cにして10分間で吸収される。
【0078】
吸収が完了した後、1個のくし形ブロッタを抗血清チャネルの右端におけるスロットに配置し、くしの先端がゲルに触れるようにする。抗血清テンプレート及びくし形ブロッタは3分後に取り出した。ゲル表面を、ブロッタCで吸い取り、このブロッタCを取り出して廃棄した。
【0079】
2個のブロッタCは通常の生理食塩水で濡れ、またゲル表面上に配置した。4個のブロッタDを2個のブロッタCの頂面に配置した。抗血清テンプレートをその頂部に配置し、2分間吸い取った。抗血清テンプレート及びブロッタを取り出し、廃棄した。2個のブロッタCをゲル上に配置して濡らし、4個のブロッタDをブロッタC上に配置し、また血清テンプレートをその頂部に配置し、さらに2分間吸い取った。
【0080】
電極をゲルの各端部で磁気ポストに配置し、乾燥中ゲルがフロアに対して良好に接触するのを確実にする。ゲルは、50゜Cにして8分間乾燥した。
【0081】
ゲルを電気泳動チャンバから取り出し、着色ユニットのゲルホルダに取り付け、このときゲルがユニットの背面に対面するように取り付ける。ゲルホルダ及びゲルを着色ユニット内に配置する。ゲルをTBS内で10分間洗浄し、アシッド・バイオレット着色剤で4分間着色し、クエン酸脱色剤で2回脱色し、各回の脱色は1分間行い、63゜Cにして8分間乾燥した。つぎに、ゲルをクエン酸脱色剤で1分間脱色し、そして63゜Cで5分間乾燥した。
【0082】
実験例3. ApoB及びLDLのレベルを使用した心臓血管疾患発症リスク決定
心臓血管疾患リスクに関して検査すべき被検者から血清を採取する。リポ蛋白粒子は、サイズ/荷電に基づいて泳動する。ゲルの一部はファット・レッド7Bで現像し、脂質を検出する。コレステロールは、従来既知の任意なコレステロール試薬で検出する。一実施形態において、コレステロール試薬はフォルマザンとする。ゲルの他の部分は、免疫固定法を使用して、ApoB−100に対するポリクローナル抗体で現像する。抗体が、抗原であるApoB−100に結合するとき、沈殿を生ずる。一実施形態において、抗体と抗原の結合は、ラベル付けした抗体を使用して、またラベル付けした二次抗体を使用して検出することができる。
【0083】
デンシトメトリー法(濃度測定)を、種々の特定リポ蛋白粒子に関するバンドに対して行う。さらに、ApoB−100に対する抗体で認識されるバンドにもデンシトメトリー法を行う。マトリクス又は媒体をアシッド・バイオレットで着色し、これに続いて抗体による検出を行う。ApoB−100及びLDLが高レベルであることは、心臓血管疾患のリスク増大に相関する。本発明方法によれば、リポ蛋白粒子コレステロールのレベル及びリポ蛋白トリグリセリドのレベルを決定する方法に加えて、特定リポ蛋白粒子を決定する方法も提供する。
【0084】
実験例4. LP(a)−Pレベルを使用した心臓血管疾患発症リスク決定
ゲルの一部を蛋白質検出のためのアシッド・バイオレットで現像する、又は脂質を検出するためのファット・レッド7Bで現像する。ゲルは、ApoB−100に対するポリクローナル抗体で現像する。一実施形態において、抗体と抗原との結合は、ラベル付けした抗体を使用して、又はラベル付けした二次抗体を使用して検出することができる。アポリポ蛋白Bに対する抗体は、Lp(a)が泳動している領域における2つのバンドを認識する。この抗体は、Lp(a)の「対」だけでなく、アポリポ蛋白Bを含むすべてのリポ蛋白粒子におけるApoBを認識する。1つのバンドは、予めHDLとともに泳動しており、このバンドは、上述したように、リポ蛋白粒子分離及び免疫学的検出を同時に行う方法を使用して検出する。所要に応じ、コレステロールを従来既知の任意なコレステロール試薬で検出する。一実施形態において、コレステロール試薬は、検出用のフォルマザン染料を製造する。
【0085】
デンシトメトリー法を、ファット・レッド7B、アシッド・バイオレット、コレステロール試薬及びApoB−100抗体を使用して検出した、種々のリポ蛋白粒子に関するバンドに対して行い(デンシトメトリー法は、適当な可視化手順なしにはApoB抗体に対して使用できず、この場合、適切な検出可能リガンド又は共役体のない抗体−抗原結合に固有の視認可能であり光学的な活性色は存在しない)、リポ蛋白粒子レベルを決定する。Lp(a)を含むリポ蛋白粒子のレベル上昇は、心臓血管疾患のリスク増大を示す。
【0086】
実験例5. ApoEレベルを使用した晩期発症型アルツハイマー病リスク決定
晩期発症型アルツハイマー病リスクに関して検査すべき被検者から血清を採取する。ゲル電気泳動法を血清に対して行う。リポ蛋白粒子は、そのサイズ/荷電に基づいて泳動する。ゲルをアシッド・バイオレット又はファット・レッド7Bで現像し、リポ蛋白粒子を検出する。コレステロールは従来既知の任意なコレステロール試薬で検出することができる。一実施形態において、コレステロール試薬は、検出用のフォルマザン染料を製造する。ゲルの他の部分は、対立遺伝子e2,e3,及びe4に対するポリクローナル抗体で現像する。一実施形態において、抗体と抗原の結合は、ラベル付けした抗体を使用して、またラベル付けした二次抗体を使用して検出することができる。
【0087】
デンシトメトリー法を、アシッド・バイオレットを使用して検出した、種々のリポ蛋白粒子に関するバンドに対して行う。さらに、対立遺伝子e2,e3,及びe4に対する抗体で認識されるバンドにもデンシトメトリー法を行う。抗血清で探索した複合体を現像することは、適切な蛋白質/脂質用の着色剤及び/又は視認可能な活性共役体/リガンドを必要とする。対立遺伝子e4の存在は心臓血管疾患のリスク増大に相関し、とくに2種類の対立遺伝子e4を有している被験者の場合リスクが高い。
【0088】
実験例6. 複数血清試料の検査
ゲル電気泳動法を、血清試料における大きい番号のレーン(例えば、80番)を使用して行う(
図3参照)。血清試料はApoBに関して探索した。各レーンは、患者試料を表す。患者1,2,3及び9に関するレーンにおけるバンドのデンシトメトリー法の出力トレーシングはそれぞれ
図4〜7に示す。
【0089】
実験例7. 診断的分析
体液、例えば血清における特定リポ蛋白粒子の存在及び/又はレベルを検出して特定疾患のリスクを同定することを目的とする診断的分析を、一般的用語としては電気泳動支持体又はプラットホーム、「薄膜」又は試薬含有フィルム、及び濃度計、又はこれらのうちの一つ又は複数のものの等価物に対して利用する。薄膜は、電気泳動処理中の支持体として2重の機能し、また試薬を含有する。「薄膜」又は「試薬含有フィルム」は、抗体を含むことができる。アポリポ蛋白A、アポリポ蛋白B、アポリポ蛋白C、アポリポ蛋白D、アポリポ蛋白E又はアポリポ蛋白Hに対する抗体は、薄膜における1つのレーンにおけるスボットとして存在する。高比重リポ蛋白粒子、中間比重リポ蛋白粒子、低比重リポ蛋白粒子、超低比重リポ蛋白粒子、又はリポ蛋白(a)粒子に対する抗体は、薄膜における他のレーンにおけるスポットとして存在する。薄膜は遮断して、薄膜に対する抗原の非特異的結合を防止する。所定疾患、例えば心臓血管疾患に関して検査すべき血清試料で薄膜を培養した後、分析を利用者に対して行う。血清における抗原は薄膜に存在する抗体に結合する。つぎに、抗原に固有の染料又は抗体で培養し、また検出可能ラベルを含ませる。バンドは、薄膜上で抗体が抗原に結合する箇所において視認可能となる。濃度計を使用して血清内に存在する抗原量を決定する。
【0090】
本明細書中に記載した好適な実施形態に対して改変及び変更できることは当業者には明らかであろう。このような改変及び変更は発明の範囲から逸脱することなく、また得られる利点を減ずることなく行うことができる。用語「デンシトメトリー法」は、通常視覚的に検出可能/測定可能な色変化に関連する。しかし、関心のある検体に関連した任意な電磁的スペクトル放射を、補完的検出器とともに使用して、リポ蛋白粒子を「濃度測定化」可能にすることができる。
【0091】
本明細書及び特許請求の範囲に記載した構成及び方法のすべては、本発明の下に過度の実験を行うことなく実施及び実行することができる。本明細書に記載した構成及び方法は、好適な実施形態として記載したが、当業者には、これら構成及び方法、並びに本明細書に記載した方法におけるステップ又はステップシーケンスに対して、発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく改変を加えることができること、明らかであろう。とくに、化学的及び生理学的の双方で関連する幾つかの作用因子を本明細書に記載した作用因子に置換することができ、しかも同一の又は類似の結果が得られる。このような類似する置換及び変更のすべては、当業者にとって、特許請求の範囲に記載した本発明の概念、精神及び範囲内にあると見なせること、明らかである。さらに、本明細書に述べた刊行文献、特許及び出願のすべては、参照により本明細書にその全体が組み込まれるものとする。