特許第5981436号(P5981436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5981436寄生的に感染している対象におけるワクチン不応答性を反転させるためのリステリアワクチンベクターの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981436
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】寄生的に感染している対象におけるワクチン不応答性を反転させるためのリステリアワクチンベクターの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20160818BHJP
   A61K 39/002 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 39/04 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 39/21 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20160818BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20160818BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20160818BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20160818BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20160818BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20160818BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20160818BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   A61K39/00 Z
   A61K39/002
   A61K39/02
   A61K39/04
   A61K39/21
   A61K35/76
   A61K37/02
   A61K48/00
   A61P31/00
   A61P31/04
   A61P31/06
   A61P31/18
   A61P33/00
   A61P33/06
【請求項の数】14
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2013-531954(P2013-531954)
(86)(22)【出願日】2011年10月3日
(65)【公表番号】特表2013-542931(P2013-542931A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】US2011054613
(87)【国際公開番号】WO2012138377
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2014年8月27日
(31)【優先権主張番号】61/388,822
(32)【優先日】2010年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/409,730
(32)【優先日】2010年11月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(73)【特許権者】
【識別番号】500182460
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・ジョージア・リサーチ・ファウンデイション・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーン、ドナルド・エイ・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】パターソン、イボンヌ
(72)【発明者】
【氏名】マキューアン、リサ
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−545330(JP,A)
【文献】 特表2009−538337(JP,A)
【文献】 特表2008−509677(JP,A)
【文献】 特表2005−519586(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0073170(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0233212(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/130551(WO,A2)
【文献】 国際公開第2009/143167(WO,A2)
【文献】 国際公開第2009/143085(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/011870(WO,A2)
【文献】 Cancer immunology, immunotherapy,2005年,Vol.54, No.6,p.577-586
【文献】 The Journal of immunology,1999年,Vol.163, No.3,p.1449-1456
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
A61K 38/00−38/58
A61K 39/00−39/44
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄生虫感染症の対象におけるTh1免疫応答を誘起するための薬剤を製造するための、リステリアワクチンベクターの使用であって、
前記リステリアワクチンベクターが、追加の免疫原性ポリペプチド又はそのシグナル配列と融合した抗原を発現及び分泌し、前記抗原が、感染症抗原であることを特徴とする使用
【請求項2】
請求項1に記載の使用であって、
前記追加のペプチドが、リステリオリシンO(LLO)ポリペプチド、ActAポリペプチド、またはPEST配列であることを特徴とする使用
【請求項3】
請求項1に記載の使用であって、
前記対象が、人間であることを特徴とする使用
【請求項4】
請求項1に記載の使用であって、
前記感染症抗原が、HIV抗原、マラリア抗原、または結核抗原であることを特徴とする使用
【請求項5】
請求項に記載の使用であって、
前記ワクチンにより、HIV−1gag細胞毒性Tリンパ球に対する、またはHIV−1gagTヘルパーエピトープに対する免疫応答を励起することを特徴とする使用
【請求項6】
請求項に記載の使用であって、
前記寄生虫が、寄生蠕虫または寄生原虫類であることを特徴とする使用
【請求項7】
請求項に記載の使用であって、
前記寄生蠕虫が、マンソン住血吸虫であることを特徴とする使用
【請求項8】
請求項に記載の使用であって、
前記寄生原虫類が、マラリア、リーシュマニア、またはトキソプラズマ寄生虫であることを特徴とする使用
【請求項9】
寄生虫感染症の対象におけるTh1免疫応答を誘起するための追加の薬剤を製造するためのブースターワクチンの使用をさらに含む請求項に記載の使用であって、
前記ブースターワクチン、前記追加の免疫原性ポリペプチド又はそのシグナル配列と融合した抗原をコードしているDNAワクチン、前記追加の免疫原性ポリペプチド又はそのシグナル配列と融合した抗原を含む組換え型ポリペプチド、前記追加の免疫原性ポリペプチド又はそのシグナル配列と融合した抗原をコードしているウイルスベクター、または生組換え型リステリアワクチンベクターを含むことを特徴とする使用
【請求項10】
請求項1に記載の使用であって、
前記免疫応答が、治療的免疫応答または予防的免疫応答であることを特徴とする使用
【請求項11】
請求項1に記載の使用であって、
前記免疫応答が、細胞毒性T細胞応答またはメモリーT細胞応答であることを特徴とする使用
【請求項12】
請求項1に記載の使用であって、
前記リステリアワクチンベクターが、組換え型栄養要求性dal/dat変異体リステリア株であることを特徴とする使用
【請求項13】
請求項1に記載の使用であって、
前記対象が、持続性Th2表現型プロファイルを有することを特徴とする使用
【請求項14】
請求項に記載の使用であって、
前記免疫応答により、寄生虫感染症治療されることを特徴とする使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年10月1日に出願された米国特許仮出願第61/388,822号及び2010年11月3日に出願された米国特許仮出願第61/409,730号に基づく優先権を主張するものである。これらの出願の開示内容全体は、参照により本明細書に援用されるものとする。
【0002】
本発明は、持続性寄生虫感染症に起因する持続性Th2免疫応答プロファイルを有する対象におけるTh1免疫応答を誘起するために、リステリアワクチンベクターを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マラリア、TB(結核)、HIV−1は、依然として恐ろしい病気であり、世界中で多くの人々が苦しんでいる。何十年もの努力にかかわらず、マラリアまたはHIV−1用のワクチンは存在しない。サハラ以南の人々は、マラリア、TB、HIV−1用のワクチンの恩恵を最も受けるであろう。アフリカの様々な地域における90%を超える有病率を有しているサハラ以南の国々の人々の大部分は、免疫応答を抑制する、人間及び動物の宿主免疫系をTヘルパー2型へスキューする(skew)、及びワクチン特異的応答を抑制する、1またはそれ以上の種類の寄生性蠕虫に感染している。そのため、寄生蠕虫に感染した人々は、Th1型及び細胞毒性T細胞応答を駆動するように作られたワクチンに対する望ましい免疫応答を生成することができない可能性がある。過去の研究は、HIV−1用の裸DNAワクチンは、ワクチン接種前に寄生蠕虫感染症を除去しない限り、抗原特異的なT細胞介在性免疫応答を生成することができないことを示している(Da'dara et al., Vaccine. 2010 Feb 3 ;28(5): 1310-7. Epub 2009 Nov 24;その開示内容全体は参照により本明細書に援用されるものとする)。
【0004】
寄生的に感染している対象におけるワクチン特異的Th1免疫応答を駆動することができるワクチンを発見するために、発展途上国のための、HIVまたは他の流行性感染症用のワクチンを開発することは明らかに重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、持続性Th2表現型プロファイルを有する対象におけるTh1免疫応答を誘起する方法であって、前記対象に対して、治療有効量のリステリアワクチンベクターを投与するステップを含む方法に関する。
【0006】
別の態様では、本発明は、持続性Th2表現型プロファイルを有する対象における感染症に対するTh1免疫応答を誘起する方法であって、前記対象に対して、治療有効量のリステリアワクチンベクターを投与するステップを含み、前記リステリアワクチンベクターが、追加の免疫原性ポリペプチドと融合した抗原を発現及び分泌し、それにより前記対象におけるTh1免疫応答を誘起する方法に関する。
【0007】
一態様では、本発明は、持続性Th2表現型プロファイルを有する対象における感染症を治療する方法であって、前記対象に対して、治療有効量のリステリアワクチンベクターを投与するステップを含み、前記リステリアワクチンベクターが、追加の免疫原性ポリペプチドと融合した抗原を発現及び分泌し、それにより前記対象における前記感染症を治療する方法に関する。
【0008】
別の態様では、本発明は、持続性Th2表現型プロファイルを有する対象における癌を治療する方法であって、前記対象に、組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、前記ワクチンにより前記Th2表現型をTh1表現型へシフトさせ、それにより細胞媒介抗癌応答を行うことを可能にした方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実験概要を示しており、ここで、6〜8週齢のメスのBalb/cマウスは、ナイーブなままであるかまたは腹腔内注射によってマンソン住血吸虫のセルカリア50匹に感染させたかのいずれかである。10週目に、住血吸虫症可溶性虫卵抗原(SEA)に対する循環抗体をELISAにより検出することによって、感染を検証した。感染の12週後、0.2(または0.1)LD50リステリアベクターHIV−1ワクチン(Lm−gag)または対照リステリアベクターHPVワクチン(Lm−E7)でマウスに腹腔内プライム(初回免疫)したか、あるいはワクチン未接種のままにしておいた。プライムの2週間後に同じ方法でマウスにブースト(追加免疫)した。図のように、最後のワクチン接種の2週間以上後(weeks after the last vaccination:wplv)に、ワクチン応答を評価した。
図2】住血吸虫症に感染しかつワクチン接種を受けたマウスにおける宿主Th2バイアスの検証を示す。寄生蠕虫に感染しかつリステリアHIV−1のワクチン接種を受けたマウスは、IFN−γ産生の減少並びにIL−4及びIL−10レベルの増加によって示されるように、Th2バイアスされかつ免疫抑制される。感染の10〜12週間後、マウスにワクチン接種を行った。2wplvに、脾細胞を摘出し、培地、SEAまたはコンカナバリンA(conA,陽性対照として)の存在下で、48ウェルプレート内で1ウェル当たり150万個の細胞を蒔いた。72時間のインキュベーション後、上清を収集し、ELISA(BD)によってIFN−γ(A)、IL−4(B)及びIL−10(C)のレベルを分析した。2つの反復実験から集積されたデータを示す。
図3】マンソン住血吸虫症に感染させたマウスにおいてIFN−γの産生が減少していることを示している。
図4】慢性住血吸虫症マウスにおいてIL−4のレベルが増加していることを示している。
図5】マンソン住血吸虫症に感染させたマウスにおいてIL−10の産生が減少していることを示している。
図6】住血吸虫感染症が免疫優勢CTLエピトープ及びヘルパーエピトープに対する抗原特異的ワクチン応答を変化させないことを示している。
図7】寄生蠕虫寄生虫マンソン住血吸虫に慢性的に感染させたマウスへのリステリアベクター−HIV−1gagワクチンの投与が、HIV−1gagCTL及びTヘルパーエピトープに対する免疫応答を駆動することを示す。以前にマンソン住血吸虫感染症に感染したかまたは感染していないマウスであってリステリアベクター−HIV−1gagワクチンの免疫を持つ該マウス由来の細胞100万個当たりのCD8+T細胞を産生するIFN−γの数を、IFN−γ ELISPOTアッセイ(平均+SEM)を用いて、ワクチン未接種の対照と比較した。最後のワクチン接種の2週間後に個々のマウス(4匹のマウス/グループ)から脾細胞を摘出し、HIV−1 IIIB gagに対してH2−dで制限された免疫優勢CTL及びヘルパーペプチドで20時間刺激した。RPMIで刺激した細胞においてスポットは検出されなかった。
図8】寄生蠕虫寄生虫マンソン住血吸虫に慢性的に感染させたマウスへのリステリアベクター−HIV−1gagワクチンの経口及び腹腔内投与が、プライムブーストプロトコルにおいてHIV−1gagCTL及びTヘルパーエピトープに対する有意な免疫応答を駆動することを示している。
図9】寄生蠕虫寄生虫マンソン住血吸虫に慢性的に感染させたマウスへのリステリアベクター−HIV−1gagワクチンの投与が、HIV−1gagCTL及びTヘルパーエピトープに対する有意かつ特異的な免疫応答を駆動するが、無関係の抗原に対するそのような応答は駆動しないことを示すデータを示している。全てのグループは、陽性対照として機能するconAに対する有意な免疫応答を示した。
図10】寄生蠕虫寄生虫マンソン住血吸虫に慢性的に感染させたマウスへのリステリアベクター−HIV−1gagワクチンの投与が、HIV−1gagCTL及びTヘルパーエピトープに対する有意かつ特異的な免疫応答を駆動するが、培地(陰性対照)及びenv−cペプチドに対するそのような応答は駆動しないことを示すデータを示している。全てのグループは、陽性対照として機能するconAに対する有意な免疫応答を示した。
図11】慢性寄生蠕虫感染症中に免疫優勢CTLエピトープ及びヘルパーエピトープに対して抗原特異的ワクチン応答を誘起するリステリアベクターHIV−1ワクチンを示している。2wplvに脾細胞を摘出し、培地、特異的CTLペプチド、無関係ペプチド、特異的ヘルパーペプチドまたはconA(陽性対照として)の存在下で、IFN−γ ELISpotプレート内で1ウェル当たり30万個及び15万個の細胞を蒔いた。20時間のインキュベーション後、ELISpot(BD)を行い、イムノスポットアナライザ(C.T.L.)を用いて数を数え、CTL(青色)またはヘルパー(赤色)免疫優勢エピトープに対する脾細胞100万個当たりのスポットの数としてグラフ化した。脾細胞は、全てのグループに関して培地及び無関係ペプチド、NPには応答しなかったが、陽性対照conAには応答した(データは図示せず)。データは、3つの独立した実験を含む。平均+SEM(A)または個々のデータ点(B)をプロットした。1グループ当たりの動物の総数をエラーバーの上に示す(左上)。t−検定分析を用いてLm−gag±住血吸虫症を各時点で比較した場合、有意差(p<0.05)は見られなかった。
図12】ワクチン用量及び投与計画を変更しても、免疫優勢エピトープに対するワクチン応答は変化しないことを示している。実験の詳細は、図1及び図3に類似しているが、本明細書に記載の相違点がある。慢性住血吸虫症に罹患している動物へのワクチン接種については、ワクチン用量を0.1LD50(0.1と表記する)まで低くするか、ブーストを除去するためにスケジュールを変更して、プライムのみのワクチンストラテジー(プライムのみはPと表記する)にした。CTLエピトープ(A)またはヘルパーエピトープ(B)に対する応答を平均+SEMとしてグラフに描いている。1グループ当たりの動物の総数をCTLグラフのエラーバーの上に示す。CTLエピトープ(A)に対する応答の中で、反応性グループ間の有意差は見られなかった。t−検定分析を用いて反応性グループ同士を比較した場合、p<0.05,**p<0.01。
図13】細胞介在性免疫応答が耐久的であり、前から存在する慢性寄生蠕虫感染症によっても変化しないことを示している。最後のワクチン接種後の様々な時間において、マウスを屠殺した。非感染(緑色)または住血吸虫症に感染させた(オレンジ色)マウスの、免疫優勢CTLエピトープ(A)及びヘルパーエピトープ(B)に対する応答を示す。免疫優勢CTLエピトープ(A)に対するエフェクター細胞応答内で、t−検定分析により±住血吸虫症を各時点で比較した場合、有意差(p<0.05)は見られなかった。このことは、グループ間で、エフェクター細胞のワクチンに対する応答が経時的に変化しないことを示す。ヘルパーエピトープ(B)に対するTh1応答については、t−検定分析を用いて±住血吸虫症を各時点で比較した場合にp<0.05,**p<0.01であった。
図14】抗原特異的CD8+T細胞が住血吸虫感染症の存在下で産生され、非感染に匹敵するレベルで数ヶ月間持続する。抗原特異的CD8+T細胞から生じるELISpot結果に見られるIFN−γ応答を検証するために、2wplv(丸)及び14wplv(四角)に、フローサイトメトリー法を用いて、脾細胞を、ワクチンエピトープに対する分子特異性について分析した。脾細胞をCD8及びgag四量体で染色し、生細胞を取得し、CD8+集団内における四量体ポジティブ染色について分析した。代表的なデータを示し(A)、個々のデータ点をプロットする(B)。所定の時点でグループ間を比較した場合は有意差(p<0.05)は見られなかったが、t−検定分析を用いてワクチン接種グループ内で比較した場合は**p<0.01及び***p<0.001であった。
図15】HIV−1ワクチンが免疫記憶を誘起することを示す。セントラルメモリーT細胞はワクチン接種の数ヶ月後に増加し、その時点で、住血吸虫症に感染させたグループに差がある。2wplv(丸)及び14wplv(四角)に、フローサイトメトリー法を用いて、脾細胞を免疫学的メモリーについて分析した。脾細胞を、CD8、CD62L及びCD197並びにgag四量体で染色した。生細胞を取得し、セントラルメモリー(CD62L+、CD197+)、エフェクターメモリー(CD62L−、CD197−)、及び分子特異性(CD8+、四量体+)について分析した。CD44を用いなかったので、エフェクターメモリー部分はエフェクター細胞も含むため、これらの結果はプロットしない。しかし、14wplvでの全ての四量体+細胞は、セントラルメモリーであった(データは図示せず)。個々のデータ点をプロットしている。t−検定分析を用いてグループ間またはグループ内で比較した場合、#p<0.0001。
図16】HIV−1ワクチンがTh2環境における機能性エフェクター細胞を誘起することを示す。エフェクター細胞機能をアッセイするために、インビボCTLアッセイを行った。簡単に説明すると、ワクチン接種を受けた動物に、100万個の標的細胞(それぞれ緑色または紫色に染色した特異的または無関係ペプチドでパルスした)を静脈内注射した。一晩のインビボ屠殺後、脾細胞を収集し、フローサイトメトリー法を用いて標的細胞の回収について分析した。(A)インビボCTLアッセイのグラフ表現。(B)ワクチン接種グループによる特異的屠殺をプロットし、一元配置分散分析及びボンフェローニ法によって分析した。回復された標的が100未満の場合には、データ点を分析から除外した。p<0.05,***p<0.001。慢性住血吸虫症に罹患しているLm−gag
図17】確立されたHIV−1ワクチン応答が、後続の住血吸虫感染によって変化させられることを示す。ヘルパーペプチドに対する応答は不変であるが、免疫系がTh2バイアスにシフトするにつれて、住血吸虫感染前のワクチン接種はCTL応答を減少させる。実験手順の概要を示す(A)。簡単に説明すると、6〜8週齢のメスのBalb/cマウスに0.2LD50リステリアベクターHIV−1ワクチン(Lm−gag)で腹腔内プライム(初回免疫)したか、または該マウスをワクチン未接種のままにしておいた。プライムの2週間後に同じ方法でマウスにブースト(追加免疫)した。2wplvに、マウスを腹腔内注射によってマンソン住血吸虫のセルカリア50匹に感染させた(オレンジ色)か、または非感染のままにしておいた(緑色)。住血吸虫感染後の様々な時間においてマウスを屠殺した。免疫優勢CTLエピトープ(B)及びヘルパーエピトープ(C)に対する応答を示す。1つの非常にはっきりした外れ値をCTLグラフ(B)上の非感染マウスに対する2時点のそれぞれから除外した。t−検定分析を用いて±住血吸虫症を各時点で比較した場合にp<0.05であった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
Thl及びTh2応答の開始に関しては、サイトカインが、ナイーブTヘルパー細胞のTh2細胞への分化のための決定的なサイトカインシグナルを表すIL−4とともに、鍵になる要因と見なされている(Paul, W. E. et al., Cell 76 (1994) 241-251)。Thl応答の開始は、他方では、本質的に、樹枝状細胞及び他のアクセサリー細胞により作製されたIL−12及びIFN−ガンマにより制御される。
【0011】
IL−4またはIL−12の早期産生、ひいてはT細胞分化は、外生要素及び内生要因により制御される。外生要素の中では、病原体の性質が特に重要である。多くの病原体がThl応答を優先的に活性化し、他のものはTh2を活性化する(Scott, P. et al., Immunol. Today 12 (1991) 346-348)。当分野では、体内の寄生虫が、免疫応答を抑制すること、人間及び動物の宿主免疫系をTヘルパー2型へスキュー(skew)すること、及びワクチン特異的応答を抑制することがよく知られている。さらに、免疫系のThlアームの不全、及び過剰なTh2アームが、幅広い種類の慢性疾患に関与している。前記慢性疾患には、AIDS、CFS、カンジダ症、多重アレルギー、多種化学物質過敏症(MCS)、ウイルス性肝炎、湾岸戦争病、癌、及び他の病気が含まれる。もし、Thlを活性化させ、Th2を減少させることによって免疫系の上記の2つのアームのバランスを取ることができれば、これらの慢性疾患に関連する症状の多くを弱めるかまたは消失させることができ、免疫の回復及びバランスまたは治療と等価物についての答えを見つけることができる。そのため、本発明の目的は、抗感染症Th1型及び細胞毒性T細胞応答を可能にするために、持続性Th2プロファイルを有する対象におけるワクチン特異的免疫応答を駆動する方法を提供することにある。本発明のさらなる目的は、抗HIV、抗結核及び抗マラリア免疫応答を可能にするために、寄生的に感染している対象におけるワクチン特異的免疫応答を駆動する方法を提供することにある。
【0012】
一実施形態では、本発明の方法及び組成物によって誘起される免疫応答は、治療的免疫応答である。別の実施形態では、本発明の方法及び組成物によって誘起される免疫応答は、予防的免疫応答である。別の実施形態では、本発明の方法及び組成物によって誘起される免疫応答は、本明細書に記載の疾患を患っている対象における、当分野で利用可能な免疫応答誘起方法よりも強化された免疫応答である。別の実施形態では、前記免疫応答は、対象が患っている感染症を除去する。
【0013】
本発明の方法は、任意の感染症、一実施形態では細菌性、ウイルス性、微生物性、微小生物性、病原体性、またはそれらの任意の組み合わせの感染症の治療に使用することができることを理解されたい。別の実施形態では、本発明の方法は、対象における、細菌性、ウイルス性、微生物性、微小生物性、病原体性、またはそれらの任意の組み合わせの感染症を抑止または抑制するためのものである。別の実施形態では、本発明は、対象における、細菌性、ウイルス性、微生物性、微小生物性、病原体性、またはそれらの任意の組み合わせの感染症に対する細胞毒性T細胞応答を励起する方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、Th1不応答性対象における、細菌性、ウイルス性、微生物性、微小生物性、病原体性、またはそれらの任意の組み合わせの感染症に対するTh1免疫応答を誘起する方法を提供する。一実施形態では、前記感染症はウイルス性であり、一実施形態ではHIVである。一実施形態では、前記感染症は細菌性であり、一実施形態ではマイコバクテリアであり、一実施形態では結核である。一実施形態では、前記感染症は真核性であり、一実施形態ではプラスモディウムであり、一実施形態ではマラリアである。
【0014】
一実施形態では、本発明は、持続性Th2表現型プロファイルを有する対象におけるTh1免疫応答を誘起する方法であって、前記対象に対して、治療有効量のリステリアワクチンベクターを投与するステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、前記リステリアワクチンベクターが、追加の免疫原性ポリペプチドと融合した抗原を発現及び分泌し、それにより前記対象におけるTh1免疫応答を誘起する。一実施形態では、リステリアワクチンベクターを薬剤を製造するために使用する。
【0015】
一実施形態では、本発明は、持続性Th2表現型プロファイルを有する対象における感染症に対するTh1免疫応答を誘起する方法であって、前記対象に対して、治療有効量のリステリアワクチンベクターを投与するステップを含み、前記リステリアワクチンベクターが、追加の免疫原性ポリペプチドと融合した感染症抗原を発現及び分泌し、それにより前記対象におけるTh1免疫応答を誘起する方法を提供する。
【0016】
一実施形態では、本発明は、持続性Th2表現型プロファイルを有する対象における感染症を治療する方法であって、前記対象に対して、治療有効量のリステリアワクチンベクターを投与するステップを含み、前記リステリアワクチンベクターが、追加の免疫原性ポリペプチドと融合した感染症抗原を発現及び分泌し、それにより前記対象における前記感染症抗原を治療する方法を提供する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、持続性Th2表現型プロファイルを有する対象における癌を治療する方法であって、前記対象に、組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、前記ワクチンにより前記Th2表現型をTh1表現型へシフトさせ、それにより細胞媒介抗癌応答を行うことを可能にした方法を提供する。
【0018】
別の実施形態では、前記リステリア株が、追加の免疫原性ポリペプチドに作用可能に結合した癌に由来する抗原を含む融合タンパク質を発現及び分泌する。別の実施形態では、前記方法は、前記癌を、追加の治療方法により治療することを可能にする。別の実施形態では、前記追加の治療方法は、外科療法、化学療法、放射線療法、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0019】
一実施形態では、本発明は、対象における、少なくとも1つの腫瘍または癌を、治療、抑制または抑止する方法であって、前記対象に対して、本発明の組換え型リステリア株を投与するステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、前記腫瘍は、前立腺腫瘍、脳腫瘍、肺腫瘍、胃腸腫瘍、膵臓腫瘍、卵巣腫瘍、乳房腫瘍、またはそれらの任意の組み合わせである。別の実施形態では、前記腫瘍は癌であり、さらなる別の実施形態では、前記癌は転移性癌である。別の実施形態では、前記癌は、前立腺癌、脳癌、肺癌、胃腸癌、膵臓癌、卵巣癌、頭頸部癌、神経膠腫、結腸癌、乳癌、あるいは、それらの任意の組み合わせまたは前記対象におけるTh2偏向免疫応を引き起こすことが知られている当分野で公知の任意の癌である。
【0020】
一実施形態では、本明細書に記載の癌抗原は、これらに限定しないが、前立腺特異抗原(PSA)及び前立腺特異的膜抗原(PSMA)、一実施形態では、FOLH1、HPV−E7、HPV−E6、SCCE、NY−ESO−1、PSMA、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、WT−1、HIV−1 Gag、CEA、LMP−1、p53、プロテイナーゼ3、チロシナーゼ関連タンパク質2、Mucl EGFR−III、VEGF−R、あるいは、腫瘍免疫回避または癌耐性に関連する任意の他の癌関連抗原または任意の他の抗原から選択することができる。別の実施形態では、前記抗原は、HMW−MAAまたはその機能性断片である。別の実施形態では、前記癌抗原は、癌を有する対象におけるTh2プロファイルを誘起することが知られている癌に由来する。
【0021】
一実施形態では、Th2偏向応答の原因は、寄生蠕虫感染症、寄生虫感染症、感染症、ホルモン療法、慢性疲労症候群(CFS)、アレルギー反応、湾岸戦争関連疾患、多種化学物質過敏症(MCS)、投薬計画、自己免疫疾患、化学療法、あるいは、それらの任意の組み合わせまたは前記対象におけるTh2偏向免疫応を引き起こすことが知られている当分野で公知の疾患である。
【0022】
一実施形態では、本発明は、寄生虫感染症及び寄生蠕虫感染症を合併しているTh1不応答性対象におけるTh1免疫応答を誘起する方法であって、前記対象に対して、治療有効量のリステリアワクチンベクターを投与するステップを含む方法を提供する。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、感染症及び寄生虫感染症を合併しているTh1不応答性対象におけるTh1免疫応答を誘起する方法であって、前記対象に対して、治療有効量のリステリアワクチンベクターを投与するステップを含み、前記リステリアワクチンベクターが、前記感染症の抗原を発現及び分泌する方法を提供する。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、感染症及び寄生虫感染症を合併しているTh1不応答性対象におけるTh1免疫応答を誘起する方法であって、前記対象に対して、治療有効量のリステリアワクチンベクターを投与するステップを含み、前記リステリアワクチンベクターが、追加の免疫原性ポリペプチドと融合した前記感染症の抗原を発現及び分泌する方法を提供する。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象における感染症に対するTh1免疫応答を誘起する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、感染症抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、前記感染症は、寄生虫感染症である。
【0026】
一実施形態では、前記感染症は、これらに限定しないが、下記の病原体のうちのいずれか1つによって引き起こされる。リーシュマニア、赤痢アメーバ(アメーバ症を引き起こす)、鞭虫属、BCG/結核、マラリア、熱帯熱マラリア原虫、マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、ロタウイルス、コレラ、ジフテリア−破傷風、百日咳、インフルエンザ菌、B型肝炎、ヒト乳頭腫マウイルス、季節性インフルエンザ、汎発性インフルエンザA型(H1N1)、はしか及び風疹、おたふく風邪、髄膜炎菌A+C、経口ポリオワクチン、一価、二価または三価炎球菌、狂犬病、破傷風トキソイド、黄熱病、炭疽菌(炭疽病)、ボツリヌス菌毒素(ボツリヌス症)、ペスト菌(ペスト)、大痘瘡(天然痘)及び他の関連するポックスウイルス、野兎病菌(野兎病)、ウイルス性出血熱、アレナウイルス(LCM、フニンウイルス、マチュポウイルス、ガナリトウイルス、ラッサ熱)、ブニヤウイルス(ハンタウイルス、リフトバレー熱)、フラビウイルス(デング)、糸状ウイルス(エボラ、マールブルク)、類鼻疽菌、コクシエラ・バーネッティ(Q熱)、ブルセラ菌種(ブルセラ症)、鼻疽菌(鼻疽)、クラミジア・シッタシ(オウム病)、リシン毒素(トウゴマ由来)、ウェルシュ菌のイプシロン毒素、ブドウ球菌腸毒素B、発疹チフス(発疹チフス・リケッチア)、他のリケッチア属、食品及び水媒介性病原菌、細菌(大腸菌、病原性ビブリオ、赤痢菌種、サルモネラ菌BCG/、カンピロバクター・ジェジュニ、腸炎エルシニア)、ウイルス(カリシウイルス、A型肝炎、西ナイルウイルス、ラクロス、カリフォルニア脳炎、VEE、EEE、WEE、日本脳炎ウイルス、キャサヌール森林ウイルス、ニパウイルス、ハンタウイルス、ダニ媒介性出血熱ウイルス、チクングンヤ熱ウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV))、原虫類(クリプトス・ポリジウム、シクロスポラ・カヤタネンシス、ジアルジア・ランブリア、赤痢アメーバ、トキソプラズマ)、菌類(微胞子虫)、黄熱病、結核(薬物耐性TBを含む)、狂犬病、プリオン、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS−CoV)、コクシジオイデス・ポサダシ、コクシジオイデス・イミチス、細菌性膣炎、クラミジア・トラコマチス、サイトメガロウイルス、鼠径部肉芽腫、軟性下疳菌、淋菌、梅毒トレポネーマ、膣トリコモナス、または上記以外の当分野で公知の任意の他の感染症。
【0027】
一実施形態では、病原性原生動物症及び寄生蠕虫感染症には、アメーバ、マラリア、リーシュマニア、トリパノソーマ、トキソプラズマ、ニューモシスティス・カリニ、バベシア、ランブル鞭毛虫、旋毛虫、フィラリア、住血吸虫、線虫類、吸虫類または吸虫、及び条虫(サナダムシ)の感染症が含まれる。
【0028】
別の実施形態では、前記感染症は、家畜感染症である。別の実施形態では、家畜疾患は人間に感染することができ、「人獣共通感染症」と呼ばれる。別の実施形態では、このような疾患には、これらに限定しないが、口蹄疫、西ナイルウイルス、犬パルボウイルス、猫白血病ウイルス、馬インフルエンザウイルス、牛伝染性鼻気管炎(IBR)、仮性狂犬病、豚コレラ(CSF)、牛が牛ヘルペスウイルス1型(BHV−1)に感染することにより生じたIBR、豚における仮性狂犬病(オーエスキー病)、トキソプラズマ症、炭疽病、水疱性口内炎ウイルス、ロドコッカス・エクイ、野兎病、ペスト(ペスト菌)、トリコモナスが含まれる。
【0029】
一実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象における感染症を治療する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、感染症抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象における感染症を治療する方法を提供する。別の実施形態では、前記感染症は、寄生虫感染症である。
【0030】
一実施形態では、「Th1不応答性」または「Th2持続性」対象は、寄生虫感染症に対するTh1免疫応答が、欠如している、不足している、または抑制されている対象である。別の実施形態では、前記用語は、Th2応答だけが存在するのではなく、Th2応答がTh1応答よりも優位である対象を意味する。別の実施形態では、前記用語は、Th2応答だけが存在し、Th1応答の指標(すなわち、サイトカイン、ケモカイン、または他の公知のマーカー)が存在しない対象を意味する。
【0031】
一実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象における感染症を治療する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、HIV抗原及び/追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象における感染症を治療する方法を提供する。別の実施形態では、前記感染症は、寄生虫感染症である。
【0032】
一実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症を治療する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、HIV抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象におけるHIV感染症を治療する方法を提供する。
【0033】
一実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象における感染症を抑制する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、感染症抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象における感染症を抑制する方法を提供する。別の実施形態では、前記感染症は、寄生虫感染症である。
【0034】
別の実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有する対象におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症を抑制する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、HIV抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記対象におけるHIV感染症を抑制する方法を提供する。
【0035】
一実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象における感染症を抑止する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、感染症抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象における感染症を抑止する方法を提供する。別の実施形態では、前記感染症は、寄生虫感染症である。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有する対象におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症を抑止する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、HIV抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記対象におけるHIV感染症を抑止する方法を提供する。
【0037】
一実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象における感染症に対する細胞毒性T細胞応答を励起する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、感染症抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象における感染症を抑止する方法を提供する。別の実施形態では、前記感染症は、寄生虫感染症である。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有する対象におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症に対する細胞毒性T細胞応答を励起する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、HIV抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより、前記対象における細胞毒性T細胞応答を励起する方法を提供する。
【0039】
一実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象におけるウイルス性感染症を治療する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、ウイルス抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象におけるウイルス性感染症を治療する方法を提供する。
【0040】
別の実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象におけるウイルス性感染症を抑制する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、ウイルス抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象におけるウイルス性感染症を抑制する方法を提供する。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有する対象におけるウイルス性感染症を抑止する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、ウイルス抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記対象におけるウイルス性感染症を抑止する方法を提供する。
【0042】
別の実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象におけるウイルス性感染症に対する細胞毒性T細胞応答を励起する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、ウイルス抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象における細胞毒性T細胞応答を励起する方法を提供する。
【0043】
一実施形態では、本発明は、さらなる別の寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象におけるウイルス性感染症を治療する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、マラリア抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象におけるマラリア感染症を治療する方法を提供する。
【0044】
別の実施形態では、本発明は、さらなる別の寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象におけるマラリア感染症を抑制する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、マラリア抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象におけるマラリア感染症を抑制する方法を提供する。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、さらなる別の寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象におけるマラリア感染症を抑止する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、マラリア抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象におけるマラリア感染症を抑止する方法を提供する。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、本発明は、さらなる別の寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象におけるマラリア感染症に対する細胞毒性T細胞応答を励起する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、マラリア抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象における細胞毒性T細胞応答を励起する方法を提供する。
【0047】
一実施形態では、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象に前記組換え型リステリア株を投与することにより、メモリー免疫応答を生成することができる。別の実施形態では、前記応答は、メモリーT細胞応答である。別の実施形態では、前記応答は、メモリーB細胞応答である。
【0048】
一実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象における結核感染症を治療する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、結核抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象における結核感染症を治療する方法を提供する。
【0049】
別の実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象における結核感染症を抑制する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、結核抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象における結核感染症を抑制する方法を提供する。
【0050】
別の実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象における結核感染症を抑止する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、結核抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象における結核感染症を抑止する方法を提供する。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、寄生虫感染症を有するTh1不応答性対象における結核感染症に対する細胞毒性T細胞応答を励起する方法であって、前記寄生虫感染症を有する前記対象に対して、結核抗原及び追加の免疫原性ポリペプチドを含む融合タンパク質を発現及び分泌する組換え型リステリア株を含むワクチンを投与するステップを含み、それにより前記Th1不応答性対象における細胞毒性T細胞応答を励起する方法を提供する。
【0052】
一実施形態では、本発明のワクチンまたは免疫原性組成物は、対象に対して、単独で投与される。別の実施形態では、本発明のワクチンまたは免疫原性組成物は、別の抗寄生虫治療とともに投与される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0053】
別の実施形態では、前記ワクチンの投与方法は当分野では公知であり、該投与方法には、これらに限定しないが、経口投与、非経口投与、静脈内(IV)投与、鼻腔内投与、または、腹腔内(IP)投与が含まれる。
【0054】
別の実施形態では、前記追加の免疫原性ポリペプチドは、リステリオリシンO(LLO)ポリペプチド、ActAポリペプチド、またはPEST配列である。さらなる別の実施形態では、前記LLOポリペプチドは、野生型リステリアタンパク質由来のシグナル配列を含む。
【0055】
別の実施形態では、前記組換え型リステリア株は、リステリア・モノサイトゲネス株である。
【0056】
一実施形態では、本発明の方法は、HIVまたは他の微生物感染症の治療を目的とする。別の実施形態では、前記他の微生物感染症は、結核である。別の実施形態では、前記他の微生物感染症は、マラリアである。別の実施形態では、前記他の微生物感染症は、A型、B型、またはC型肝炎であり、別の実施形態では、前記他の微生物感染症はインフルエンザである。
【0057】
一実施形態では、「治療する」、「治療の」、「治療」という用語は、本明細書においてほとんど同じ意味で用いられ、治療上の処置を指す。一方、「抑止する」及び「抑制する」は、予防対策または予防措置を指し、その目的は、標的とされる病態または上述の障害を予防するかまたは和らげることである。それゆえ、一実施形態では、治療するは、疾患、障害または病気及び/または関連症状に直接影響を与えるかまたはそれらを治療することを含み得るが、その一方で、抑制するまたは抑止するは、疾患、障害または病気を予防すること、疾患、障害または病気の重症度を低下させること、疾患、障害または病気の発病を遅らせること、疾患、障害または病気に関連する症状を減少させること、またはそれらの組合せを含み得る。よって、一実施形態では、「治療する」は、とりわけ、進行を遅らせること、寛解を促進させること、寛解を導入すること、寛解を増進すること、回復を速めること、代替治療の有効性を上げるかまたは代替治療への抵抗を減らすこと、あるいはそれらの組合せを指す。一実施形態では、「予防」、「予防的」、「防止する」または「抑止する」は、とりわけ、症状の発病を遅らせること、疾患の再発を防止すること、再発発症の数または頻度を減少させること、症状発症の間の潜伏期を長くすること、またはそれらの組合せを指す。一実施形態では、「抑制する」は、とりわけ、症状の重症度を低下させること、急性発症の重症度を低下させること、症状の数を減少させること、疾患関連症状の発生率を低下させること、症状の潜伏期を短くすること、症状を回復させること、二次症状を減少させること、二次感染症を減少させること、患者の生存期間を延ばすこと、またはそれらの組合せを指す。
【0058】
一実施形態では症状は一次症状であるが、別の実施形態では症状は二次症状である。一実施形態では、「一次」は、対象のウイルス性感染の直接的な結果である症状を指すが、その一方で、一実施形態では、「二次」は、主因から派生するかまたは主因の結果生じる症状を指す。一実施形態では、本発明で用いる組成物及び菌株は、HIVまたは他の微生物性感染症に関連する一次または二次症状あるいは二次的合併症を治療する。
【0059】
別の実施形態では、「症状」は、炎症、腫れ、痰、発熱、痛み、出血、かゆみ、鼻水、咳、頭痛、片頭痛、呼吸困難、脱力感、疲労感、眠気、体重減少、吐き気、嘔吐、便秘、下痢、しびれ、めまい、視界不良、筋けいれん、痙攣など、またはそれらの組合せを含む疾患または病態が顕在化したものであり得る。
【0060】
別の実施形態では、前記疾患、障害または症状は発熱である。別の実施形態では、前記疾患、障害または症状は頭痛である。別の実施形態では、前記疾患、障害または症状は肩こりである。別の実施形態では、前記疾患、障害または症状は発作である。別の実施形態では、前記疾患、障害または症状は半身不随である。別の実施形態では、前記疾患、障害または症状は昏迷である。別の実施形態では、前記疾患、障害または症状は昏睡である。別の実施形態では、前記疾患、障害または症状は、当分野で既知の、病原体媒介脳炎に関連するかまたは続発する任意の他の疾患、障害または症状である。
【0061】
HIVは、持続性かつ進行性の感染症を誘起し、大多数の場合において、後天性免疫不全症候群(「AIDS」)の発生原因となる。HIVには少なくとも2つの異なる型、すなわち、HIV−1及びHIV−2がある。HIV感染症は、免疫不全、日和見感染症、神経機能障害、腫瘍の成長及び最終的には死につながる。HIV RNAゲノムは、少なくとも7つの構造的ランドマーク(LTR、TAR、RRE、PE、SLIP、CRS及びINS)と、19個のタンパク質をコードする9つの遺伝子(gag、pol及びenv、tat、rev、nef、vif、vpr、vpuと、時には10番目の遺伝子tev。tevは、tat env及びrevの融合遺伝子である)とからなる。これらの遺伝子のうちの3つ、すなわち、gag、pol及びenvは、新たなウイルス粒子に対する構造タンパク質を作るのに必要な情報を含んでいる。例えば、envは、gp160と呼ばれるタンパク質をコードし、gp160は、ウイルス酵素によって分解されてgp120及びgp41を形成する。残り6つの遺伝子、すなわち、tat、rev、nef、vif、vpr及びvpu(またはHIV−2の場合にはvpx)は、HIVの細胞感染能を制御するか、ウイルスの新たなコピーを作る(複製する)か、または疾患を引き起こすようなタンパク質の調節遺伝子である。2つのtatタンパク質(p16及びp14)は、TAR RNA要素と結合して働くLTRプロモータに対する転写トランスアーチベクタである。TARを処理してマイクロRNAにすることができ、マイクロRNAはアポトーシス遺伝子ERCC1及びIER3を調節する。revタンパク質(p19)は、RRE RNA要素と結合することによって核及び細胞質からのRNAの遮断に関与する。vifタンパク質(p23)は、APOBEC3G(DNA−RNAハイブリッドを脱アミノ化しかつ/またはPolタンパク質に干渉する細胞タンパク質)の活動を妨げる。vprタンパク質(p14)は、細胞分裂をG2/M期で阻止する。nefタンパク質(p27)は、CD4(主要なウイルス受容体)及びMHCクラスI及びクラスII分子を下方制御する。
【0062】
nefもまた、SH3ドメインと相互作用する。vpuタンパク質(p16)は、感染した細胞からの新たなウイルス粒子の放出に影響を与える。HIV RNAの各鎖の端部は、末端反復配列(long terminal repeat(LTR))と呼ばれるRNA配列を含む。LTR内の領域は、新たなウイルスを産生する制御スイッチとして働き、HIVまたは宿主細胞のいずれかに由来するタンパク質によってトリガされることができる。Psi要素は、ウイルスゲノムパッケージングに関与し、Gag及びRevタンパク質によって認識される。SLIP要素(TTTTTT)は、機能的polを作るのに必要とされるGag−Polリーディングフレームのフレームシフトに関与する。http://en.wikipedia.org/wiki/HIV - cite note-compendia-50
【0063】
HIVは、宿主細胞の感染において、受容体介在経路を用いる。HIVは、細胞内に侵入して感染を開始するために、2つの細胞表面受容体との接触を必要とする;CD4は一次受容体である。タンパク質のケモカイン受容体ファミリーのメンバーであるCXCR4(「X4」)及びCCR5(「R5」)は、歴史的にそれぞれT細胞株またはマクロファージに親和性がある(tropic)と見なされてきたHIV分離株に対する二次共受容体として働く。CXCR4またはCCR5は、CD4とともに、HIVの特定の菌株を細胞内に移入するための機能的細胞受容体を形成する。
【0064】
これらのベクター内に挿入するための、DNAをコードするHIV抗原は、レトロウイルスに対する防御に効果的な抗原であることが知られている。これらは、構造タンパク質及び非構造タンパク質の両者を含むことができる。エンベロープ、ポリメラーゼ、gag及びプロテアーゼは、好適なタンパク質またはエピトープ源であるが、他のタンパク質またはエピトープを用いることもでき、それらには、非構造性遺伝子(例えば、rev、tat、nef、vif及びvpr)によってコードされるタンパク質が含まれる。HIVに関して、ウイルスベクター内に挿入可能な核酸には、HIV1gag(+pro)(IIIB)、gpl20(MN)(+膜貫通)、nef(BRU)CTL、pol(IIIB)CTL、ELDKWAまたはLDKWエピトープ、好適には、HIV1gag(+pro)(IIIB)、gpl20(MN)(+膜貫通)、2つのnef(BRU)CTL及び3つのpol(IIIB)CTLエピトープ;あるいは、gp120 V3または別の領域内あるいはgp160内の2つのELDKWAのうちの少なくとも1つをコードすることができる核酸が含まれるが、これらに限定されるものではない。前記2つのnef(BRU)CTL及び3つのpol(IIIB)CTLエピトープは、CTL1、CTL2、poll、pol2及びpol3であることが好ましい。ここに挙げた中で、抗原の母体となるウイルス株は挿入句的に言及されている。HIV及びその抗原(HIV−gagを含む)は、当分野で公知である(例えば、米国特許第7,790,177号明細書及び米国特許第7,786,288号明細書を参照されたい。これらは、全文を引用することを以て本明細書の一部となす)。本明細書に記載の方法において用いられると考えられるHIV−gag抗原は、当分野で既知の抗原であってジェンバンク(Genbank)及び同様のデータベースで検索できるものを含み、例えば、受入番号ADG95996、CBI61237、CBI61236、CBI61235、CBI61234、CBI61233、CBI61232、CBI61231、CBI61230、CBI61229、CBI61228、CBI61227、CBI61226、CBI61225、CBI61224、CBI61223、CBI61222、CBI61221、CBI61220、CBI61219、CBI61218、CBI61217、CBI61216、CBI61215、CBI61214、CBI61213、CBI61212、CBI61211、CBI61210、CBI61209、CBI61208、CBI61207、CBI61206、CBI61205、CBI61204、CBI61203、CBI61202、CBI61201、CBI61200、CBI61199、CBI61198、CBI61197、CBI61196、CBI61195、CBI61194、CBI61193、CBI61192、CBI61191、CBI61190、CBI61189、CBI61188、CBI61187、CBI61186、CBI61185、CBI61184、CBI61183、CBI61182を含むが、これらに限定されるものではない。本明細書に記載の方法において用いられると考えられるHIV−pol抗原は、当分野で既知の抗原であってジェンバンク及び同様のデータベースで検索できるものを含み、例えば、受入番号AAF35355、BAF32553、BAF32544、BAF32535.1、BAF32526、BAF32517、BAF32508、BAF32499、BAF32490、BAF32481、BAF32472、BAF32463、BAF32454、BAF32445、BAF32436、BAF32427、BAF32418、BAF32409、BAF32400、BAF32391、BAF32382、BAF32373、BAF32364、BAF32355、BAF32346、BAF32337、BAF32328、BAF32319、BAF32310、BAF32301を含むが、これらに限定されるものではない。本明細書に記載の方法において用いられると考えられるHIV−env抗原は、当分野で既知の抗原であってジェンバンク及び同様のデータベースで検索できるものを含み、例えば、受入番号AAB09538、CAA00873、AAF35356、AAD42280、AAD42279、AAD42278、AAD42277、AAD42276、AAD42275、AAD42274、AAD42273、AAD42272、AAD42271、AAD42270、AAD42269、AAD42268、AAD42267、AAD42266、AAD42265、AAD42264、AAD42263、AAD42262、AAD42261、AAD42260、AAA53206、BAF32559、BAF32550、BAF32541、BAF32532、BAF32523を含むが、これらに限定されるものではない。
【0065】
HIV感染症の存在を判定する方法は、当分野で公知でありかつ、とりわけ、血清、唾液、尿、またはそれらの組合せにおけるHIV抗体、抗原または核酸の検出を含む。HIV感染症の重症度を判定する方法は、当分野で公知でありかつ、とりわけ、ウイルス負荷またはCD4数の減少の測定を含む。各方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0066】
一実施形態では、本発明の方法は、HIV感染症の二次合併症の治療を含む。別の実施形態では、前記方法は、日和見感染症、腫瘍、神経学的異常、または進行性の免疫低下の治療を含む。別の実施形態では、前記方法は、後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療を含む。別の実施形態では、前記方法は、CD4+Tリンパ球数の減少の治療を含む。
【0067】
別の実施形態では、本発明の方法は、同性間または異性間のいずれかの直接的な性的接触によって感染したHIV、血液または血液製剤によって感染したHIV、あるいは感染母体から乳児に、分娩時に、周産期に、または母乳を通じて感染したHIVの治療を含む。
【0068】
一実施形態では、本発明の方法は、人畜共通性感染を経て感染したHIVまたは関連感染症を治療するのに用いられる。一実施形態では、感染症を治療する方法は、クレードA、B、C、D、A/E、F、G、H、JまたはKの治療を含む。別の実施形態では、前記感染症はHIV−1によって媒介されるが、別の実施形態では、HIV−2によって媒介される。一実施形態では、前記感染症はHIV−1のグループMによって媒介され、別の実施形態では、HIV−1のグループOによって媒介されるが、別の実施形態では、HIV−1のグループNによって媒介される。一実施形態では、前記感染症はHIV−1のグループMのAクレード(またはサブタイプ)によって媒介され、別の実施形態では、HIV−1のグループMのBクレードによって媒介され、別の実施形態では、HIV−1のグループMのCクレードによって媒介され、別の実施形態では、HIV−1のグループMのDクレードによって媒介され、別の実施形態では、HIV−1のグループMのA/Eクレードによって媒介され、別の実施形態では、HIV−1のグループMのFクレードによって媒介され、別の実施形態では、HIV−1のグループMのGクレードによって媒介され、別の実施形態では、HIV−1のグループMのHクレードによって媒介され、別の実施形態では、HIV−1のグループMのJクレードによって媒介され、別の実施形態では、HIV−1のグループMのKクレードによって媒介され、別の実施形態では、HIV−1のグループMのA/G/Iクレードによって媒介されるが、別の実施形態では、前記感染症は前記クレードグループのうちの任意のクレードの組換え流行型株(circulating recombinant form(CRF))によって媒介される。HIV株をサブタイプ及びCRFに分類することは複雑な問題であり、新たな発見がなされると定義が変更されることもある。従って、本発明には、当分野で発見されているかまたは知られている任意のHIVサブタイプが含まれる。
【0069】
一実施形態では、感染症の治療方法は、HIVのマクロファージ指向性株、HIVのT細胞指向性株、またはそれらの任意の組合せの治療を含む。一実施形態では、本発明の方法は、HIVのマクロファージ指向性株によって媒介される感染症を治療することになる。別の実施形態では、前記合成物は、HIVのT細胞指向性株によって媒介される感染症を治療することになる。別の実施形態では、前記合成物は、HIVのマクロファージ指向性株またはT細胞指向性株のいずれかまたは両方によって媒介される感染症を治療することになる。別の実施形態では、本発明の方法の作用機序は、HIVの指向性によって異なる。
【0070】
一実施形態では、本発明の方法は、HIVと診断された対象におけるHIVの治療、抑止または抑制に用いることができる。別の実施形態では、本発明の方法は、HIVと診断されなかった対象におけるHIVの治療、抑止または抑制に用いることができる。別の実施形態では、本発明の方法は、HIVにさらされた対象においてHIVを治療、抑止または抑制するために用いられる。別の実施形態では、本発明の方法は、HIVにさらされた対象を、そのウインドーピリオド(一実施形態ではHIVにさらされてから、標準的なHIV検査を用いてHIV抗体を検出するのに十分な免疫応答が生成されるまでの期間)において、治療、抑止または抑制するのに用いられる。
【0071】
一実施形態では、本発明のHIV感染症治療法は、当分野で既知の他のHIV感染症治療方法と併用することができ、他の治療方法の有効性を高めることができる。一実施形態では、HIV感染症の治療方法は、或る抗レトロウイルス薬の投与または複数の抗レトロウイルス薬の組合せの投与である。
【0072】
一実施形態では、現在のHIV治療、抑止または抑制方法は、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)であり、これは、一実施形態では、少なくとも2つの型すなわち「クラス」の抗レトロウイルス薬に属する少なくとも3つの薬からなる組合せ(または「カクテル」)である。一実施形態では、現在のHIV治療、抑止または抑制方法は、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NARTIまたはNRTI)、プロテアーゼ阻害剤または非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、あるいはそれらの組合せの投与である。別の実施形態では、現在のHIV治療、抑止または抑制方法は、侵入阻害剤の投与である。別の実施形態では、現在のHIV治療、抑止または抑制方法は、HIVワクチンの投与である。
【0073】
一実施形態では、前記感染症はリーシュマニア症であり、リーシュマニア属の寄生虫によって引き起こされ、アフリカ、アジア及び南米の多くの地域における風土病である。リーシュマニア症は、サンドフライまたはパパタシ種(Phlebotimus species)が感染を媒介する。リーシュマニア症は、3種類の疾患、すなわち、内臓リーシュマニア症(ドノバンリーシュマニア、小児リーシュマニア、シャーガスリーシュマニアによって引き起こされる)、皮膚リーシュマニア症(熱帯リーシュマニア、大形リーシュマニア、エチオピアリーシュマニア、メキシコリーシュマニアによって引き起こされる)及び粘膜皮膚リーシュマニア症(ブラジルリーシュマニア群)を引き起こす。幾つかの抗原リーシュマニア抗原は、感染症を診断するために用いられ、リーシュマニア抗原(rH2A、KMP11及び「Q」タンパク質)を含むが、これらに限定されるものではない。リーシュマニア症の診断方法には、当分野において、例えばEur J Clin Microbiol Infect Dis. 2004 Dec;23 (12):899-904及びClinical and Diagnostic Laboratory Immunology, October 2005, p. 1164-1167, Vol. 12, No. 10に記載されている方法が含まれ、前記各文献は、全文を引用することを以て本明細書の一部となす。
【0074】
一実施形態では、前記感染症はアメーバ症である。アメーバ症は、世界中で見られる原生動物である赤痢アメーバによって引き起こされる。アメーバ症の有病率が最も高いのは、ヒトの糞便と食料及び水の供給部との間のバリアが不十分であるような発展途上国である。赤痢アメーバは、原虫のシスト(嚢胞)型(感染性期)を摂取することによって感染する。前記環境で数週間ないし数ヶ月間生存可能であるので、シストは、糞便によって汚染された土壌、肥料または水の中、あるいは食料取扱者の汚染された手の上で見られる。糞便−口腔伝染はまた、肛門性行為、または結腸洗浄装置による直接直腸接種の状況でも起こり得る。その後、シストは回腸末端または結腸で脱嚢し、栄養体(侵襲型)となる。該栄養体は、結腸粘膜障壁に浸透しかつ侵入し、組織破壊、分泌性血性下痢及び、炎症性腸疾患に似た大腸炎をもたらし得る。その上、前記栄養体は、門脈循環を経て肝臓へ、またはより遠位の臓器へも、血行性に広がり得る。アメーバ症の診断方法には、顕微鏡検査、インビトロ培養及びアイソザイム分析、糞便サンプルの抗原検出、血清学的検査(血清中のGal/GalNAcレクチン抗原の検出など)、PCRを用いての分子診断が含まれ、アメーバ性肝膿瘍、さらなる結腸内視鏡検査またはS状結腸鏡検査を用いてアメーバ性大腸炎を診断することができる。
【0075】
一実施形態では、前記感染症または寄生虫感染症は鞭虫症である。鞭虫症は、鞭虫または鞭虫属トリチュリス(Trichocephalus trichiuris)によって引き起こされ、これらは、ヒトの大腸に感染したときに鞭虫症を引き起こす回虫である。鞭虫症は、糞便−口腔経路によって感染し、小腸内で幼虫が孵化し、そこで成長して脱皮し、最終的に大腸に棲み着く。前記疾患は、検便中の卵を検出することによって診断することができる。虫卵は、たる型のように見え、未孵化で、両端に卵栓を持ち、滑らかな卵殻を有する。直腸脱は、排便機構の可視化(defecating proctogram)を用いて容易に診断することができるものであり、寄生虫感染症をイメージングするための多くの方法のうちの1つである。さらに、S状結腸鏡検査では、炎症を起こした粘膜(ココナツケーキ直腸)から垂れ下がる成虫の特徴的な白い体が示される。
【0076】
一実施形態では、寄生虫感染症または感染症は、熱帯熱マラリア症、三日熱マラリア症、卵形マラリア症(Plasmodium ovale curtisi)、卵形マラリア症(Plasmodium ovale wallikeri)、四日熱マラリア症、サルマラリア症(Plasmodium knowlesi)、ブラジルマラリア症、カニクイザルマラリア症(Plasmodium cynomolgi)、マカクマラリア症(Plasmodium cynomolgi bastianellii)、ローディアニマラリア症(Plasmodium rhodiani)、シュウェッツィマラリア症(Plasmodium schwetzi)、半卵形マラリア症(Plasmodium semiovale)、ホエザルマラリア症(Plasmodium simium)である。一実施形態では、前記寄生虫感染症は、ヒトに感染することが知られている任意のプラスモディウム属(マラリア原虫)である。
【0077】
一実施形態では、本発明の方法は、マラリアと診断された対象においてマラリアを治療、抑止または抑制するために用いられる。別の実施形態では、本発明の方法は、マラリアと診断されなかった対象においてマラリアを治療、抑止または抑制するために用いられる。別の実施形態では、本発明の方法は、マラリアにさらされた対象においてマラリアを治療、抑止または抑制するために用いられる。別の実施形態では、本発明の方法は、マラリアにさらされた対象を、そのウインドーピリオド(一実施形態ではマラリアにさらされてから、標準的なマラリア検査を用いてマラリア抗体を検出するのに十分な免疫応答が生成されるまでの期間)において、治療、抑止または抑制するのに用いられる。
【0078】
一実施形態では、マラリアの症状は、発熱及び震え;全身状態不良、体調不良及び、インフルエンザ感染症に似た頭痛、下痢、吐き気、嘔吐、疲労、またはそれらの組合せである。別の実施形態では、マラリアの症状は、昏睡につながる眠気の増加及び、関連する全主要臓器系の不全、低血圧、腎不全、出血の可能性、肝臓への影響(例えば感染性黄疸)、ショック、昏睡またはそれらの組合せである。一実施形態では、マラリアは脳マラリアである。一実施形態では、マラリアは黒水熱である。
【0079】
一実施形態では、マラリアの診断は、症状の診断、血液塗抹標本の顕微鏡検査、抗原検査(一実施形態では、熱帯熱マラリア原虫グルタミン酸脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)または熱帯熱マラリア原虫乳酸脱水素酵素である)、あるいはQT−NASBAなどのPCRベースのアッセイによってなされる。一実施形態では、マラリアは、本発明の方法の前に、別の実施形態では本発明の第1のステップとして寄生虫感染症の対象において診断される。
【0080】
一実施形態では、本発明の方法で用いるためのワクチンは、既知のマラリアの治療または予防に役立つ組成物とともに用いられ、該組成物は、一実施形態では、メフロキン(一実施形態ではラリアム(Lariam))、ドキシサイクリン、アトバコンと塩酸プログアニルとの組合せ(一実施形態ではマラロン)、またはそれらの組合せの投与を含む。別の実施形態では、マラリアの治療/予防は、キニーネ、キナクリン、クロロキン、プリマキン、またはそれらの組合せの投与を含み得る。
【0081】
一実施形態では、本発明の方法に用いられる組換え型リステリア・モノサイトゲネスはマラリア抗原を含み、該マラリア抗原は、一実施形態では、当分野で公知のマラリア抗原である。一実施形態では、マラリア抗原は、熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲タンパク質(CSP)CSP及びスポロゾイト表面タンパク質2(PfSSPと呼ばれる);肝段階抗原1(LSA1)、セリン反復抗原及びAMA−1;Pfs25;シゾント排出タンパク質;スポロゾイト表面タンパクを19回繰り返したもの[NANP];抗原性ペプチド、一実施形態では精製された緑膿菌毒素、または別の抗原、一実施形態ではB型肝炎に由来する表面抗原と共有結合したCSP、あるいはそれらの任意の組み合わせである。
別の実施形態では、マラリア抗原は、以下のワクチンに由来する抗原の1つまたは複数である:SPf66;精製された緑膿菌毒素と共有結合した組換え型(Asn−Ala−Prol5Asn−Val−Asp−Pro)2−Leu−Arg(R32LR)タンパク質);NYVAC−Pf7;[NANPJ19−5.1;RTS,S,RTS,S/AS01;またはそれらの任意の組み合わせ。
【0082】
一実施形態では、前記感染症は、細菌性感染症、別の実施形態ではマイコバクテリア症、一実施形態では結核である。
【0083】
一実施形態では、本発明の方法は、結核と診断された患者の結核を治療、抑止または抑制するのに用いられる。別の実施形態では、本発明の方法は、結核と診断された患者の結核を治療、抑止または抑制するのに用いられる。別の実施形態では、本発明の方法は、結核にさらされた患者の結核を治療、抑止または抑制するのに用いられる。別の実施形態では、本発明の方法は、結核にさらされた患者の結核を、そのウインドーピリオド(一実施形態では、結核にさらされてから、標準的な結核試験を用いて結核抗体を検出するのに十分な免疫応答が生成されるまでの期間)において、治療、抑止または抑制するのに用いられる。
【0084】
一実施形態では、本発明の方法は、結核感染症を決定する方法とともに、または結核と診断された後に用いられる。一実施形態では、結核の診断は、臨床サンプル(例えば、唾液や膿汁)中の原因微生物(マイコバクテリウム結核菌)を同定することにより行われる。一実施形態では、結核の診断は、画像化(X線またはスキャン)、ツベルクリン皮膚試験(一実施形態では、マントゥー試験)、細菌性DNAを検出するためのPCR分析、インターフェロン遊離分析(IGRA)(一実施形態では、ESAT−6応答、または抗原85aまたは85b応答)、またはそれらの任意の組み合わせを用いて行われる。
【0085】
一実施形態では、弱毒化された生ウシ型結核菌が、本発明に用いられるワクチンとともに使用される。別の実施形態では、カルメット・ゲラン菌(BCG)ワクチンが、本発明に用いられるワクチンとともに使用される。
【0086】
一実施形態では、最もよく用いられる結核(TB)診断ツールは、簡単な皮膚試験である。
【0087】
別の実施形態では、別の結核診断ツールはマントゥー検査であり、マントゥー検査では、少量のPPDツベルクリンと呼ばれる物質が対象の前腕の皮膚直下に注射される。48〜72時間以内に、医療従事者が、対象の腕の注射部位において、注射された物質に対する反応を示す腫脹を調べる。一実施形態では、赤い腫れ(硬結)は、対象がTBに感染した状態になっていることを意味する。腫れの大きさは、対象のTBリスク因子に基づいて、検査結果が有意であるか否かを判定する。
【0088】
しかし、マントゥー検査では、対象が必ずしもTBに罹患していないときにTBに罹患していることを示唆する偽陽性の検査結果が出るので、マントゥー検査は完璧ではない。偽陽性は、対象が結核を引き起こす以外の異なる種類のマイコバクテリウムに感染した場合や、対象が最近カルメット・ゲラン菌(BCG)ワクチンを接種された場合に生じる可能性が最も高い。このTBワクチンは、米国では滅多に使用されないが、TB感染症の感染率が高い国々では広く使用されている。その一方で、子供、高齢者及びAIDS共生者を含むTB感染者では、マントゥー検査に対する反応が遅かったり全くなかったりすることがある。
【0089】
種々の血液検査を用いて、潜在性または活動性TBを確認または除外することができる。これらの検査は、高度な技術を用いてマイコバクテリウム結核に対する免疫系の反応を測定する。これらの検査は、従来の皮膚試験よりも迅速かつ正確である。これらの検査は、TB感染のリスクが高いがマントゥー検査に対する反応が陰性である場合や、BCGワクチン接種を受けた場合に有用であろう。
【0090】
マントゥー検査への反応がほとんどまたは全くないことは、対象がTB細菌に感染していないことを意味し得る。しかし、場合によっては、陰性試験の代わりに、TB感染症にかかっている可能性がある。一実施形態では、結果が偽陰性になる1つの理由は、最近TBに感染した場合、対象が感染した後、対象の体が皮膚試験に反応するまで8〜10週間かかるためである。従って、対象は、数ヶ月間、前記検査を繰り返し行う必要があり得る。
【0091】
別の実施形態では、結果が偽陰性になる別の理由は、AIDSなどの病気によって、あるいはコルチコステロイド薬または化学療法薬によって、対象が免疫抑制状態にある場合、前記対象は、たとえTBに感染しているとしてもマントゥー検査に応答しない。
【0092】
別の実施形態では、麻疹や天然痘ワクチンなどの生ウイルスを含むワクチンがツベルクリン反応検査に干渉し得ることを考慮すると、結果が偽陰性になる別の理由には、生ウイルスのワクチン接種が含まれる。
【0093】
さらに別の実施形態では、結果が偽陰性になる別の理由には、重症のTB病が含まれる。対象の身体がTB細菌で埋め尽くされてしまっている場合、皮膚試験に対する応答への十分な防御手段を備えることはできないであろう。
【0094】
一実施形態では、結果が偽陰性になる別の理由には、不適切な検査が含まれる。時として、PPDツベルクリンは対象の皮膚表面の下のかなり深部に注射されることがある。その場合、前記対象が示したいかなる反応も目に見えないことがある。
【0095】
一実施形態では、TB検査の結果が陽性(「有意」と呼ばれる)であれば、対象は、該対象が活動性TB病に罹患しているか否か及びそれが薬剤耐性株か否かを判定するのに役立つようにさらなる検査を受けることができる。これらの検査は、胸部X線やCTスキャンを含み得る。幾つかの症例では、胸部X線やCTスキャンは肺の白い点を示すことがあり、そこでは免疫系がTB細菌を囲んでいる。他の症例では、胸部X線やCTスキャンは、活動性TBによって生じた肺の結節または空洞を明らかにすることができる。一実施形態では、コンピューター断層撮影(CT)スキャンは、断面X線像を用い、疾患のより微妙な兆候を示すことができる。
【0096】
対象の胸部X線がTBの兆候を示した場合、臨床医は対象の胃分泌物または痰のサンプルを採取することができる。前記サンプルのTB細菌を検査し、臨床医は数時間で特有のスメアの結果を得ることができる。
【0097】
サンプルを研究所に送ることもできる。研究所では、前記サンプルは、顕微鏡下で調べられるとともに、細菌(培養物)の成長を促す特別な培地に置かれる。出現した細菌は、次に、TBを治療するのに一般的に用いられる薬物に対して応答するかどうかを確かめるために検査される。TB細菌の成長は非常に遅いので、従来の培養検査は、4〜8週間かかることがある。
【0098】
一実施形態では、TB感染症を診断するために用いられる別の検査には、核酸増幅(NAA)検査が含まれる。この検査は、マイコバクテリウム結核における薬剤耐性に関連する遺伝子を検出することができる。しかし、この検査は通常、先進国でのみ利用可能である。
【0099】
一実施形態では、主として途上国で用いられる検査は、顕微鏡観察による薬剤感受性検査(microscopic-observation drug-susceptibility (MODS) assay)と呼ばれる。該検査は、痰中のTB細菌の存在を早ければ7日間で検出することができる。さらに、前記検査は、TB細菌の薬剤耐性株を同定することができる。
【0100】
子供は、咳をして痰を吐き出すよりもむしろ痰を飲み込んでしまうことがあり、成人よりも培養物サンプルの採取が困難なので、子供のTBを診断することは成人のTBを診断するよりも困難である。そして、乳幼児及び低年齢小児は、皮膚試験に反応しないことがある。これらの理由で、前記感染症を発症した可能性が高い成人の検査結果を用いることが、子供のTB診断に役立ち得る。
【0101】
一実施形態では、マイコバクテリウム結核抗原及びそのような抗原をコードするDNA配列は、様々な手順のうちの任意のものを用いて作成することができる。例えば、可溶性抗原は、陰イオン交換クロマトグラフィー及び逆相クロマトグラフィーを含む当業者に既知の手順によって、マイコバクテリウム結核培養濾液から単離することができる。その後、精製された抗原について、マイコバクテリウム結核に感染した個人から得られた血清と反応する能力などの望ましい特性を有するかを評価することができる。そのようなスクリーニングは、本明細書に記載の代表的な方法を用いて実施することができる。その後、例えば従来のエドマン化学(Edman chemistry)を用いて、抗原の配列を部分的に決定することができる。Edman and Berg, Eur. J. Biochem . 80: 116-132, 1967を参照されたい。
【0102】
抗原は、発現ベクター内に挿入されかつ適切な宿主において発現された前記抗原をコードするDNA配列を用いて、組換えで産生することもできる。可溶性抗原をコードするDNA分子は、可溶性マイコバクテリウム結核抗原に対して特異的に産生させた抗血清(例えばウサギ)を用いて、適切なマイコバクテリウム結核発現ライブラリをスクリーニングすることによって単離することができる。抗原(可溶性であっても可溶性でなくてもよい)をコードするDNA配列は、マイコバクテリウム結核に感染した患者から得られた血清を用いて、適切なマイコバクテリウム結核ゲノムまたはcDNA発現ライブラリをスクリーニングすることによって同定することができる。そのようなスクリーニングは、通常、当分野で公知の技術、例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual , Cold Spring Harbor Laboratories, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989に記載されている技術などを用いて実施することができる。
【0103】
可溶性抗原をコードするDNA配列は、単離された可溶性抗原の部分アミノ酸配列から得られる縮重オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするDNA配列に対して適切なマイコバクテリウム結核cDNAまたはゲノムDNAライブラリをスクリーニングすることによって得ることもできる。そのようなスクリーニングに用いるための縮重オリゴヌクレオチド配列の設計及び合成、並びに前記スクリーニングは、(例えば)Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, Cold Spring Harbor, N.Y.(及び引用されている文献)に記載されているように実施することができる。cDNAまたはゲノムライブラリから核酸プローブを単離するために、当分野で公知の方法において上記のオリゴヌクレオチドを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用することもできる。このとき、前記ライブラリスクリーニングは、単離されたプローブを用いて実施することができる。
【0104】
一実施形態では、マイコバクテリウム結核抗原には、当分野で既知の任意のもの、例えば、ESAT−6、TB10.4、CFP10、RD1−ORF5、RD1−ORF2、Rvl036、MPB64、MPT64、Ag85A、Ag85B(MPT59)、Mtb39、MPB59、Ag85C、19kDaのリポタンパク質、MPT32及びアルファ−クリスタリン、EsxG、Rv2430c、Rv2041cまたは、上記の抗原
のうち任意の抗原の少なくとも1つのT細胞エピトープ(Skjot et al, 2000、デンマーク特許第PA 2000 00666号明細書、デンマーク特許出願第PA 1999 01020号明細書、米国特許出願連続番号09/0505,739号明細書、Rosenkrands et al, 1998、Nagai et al, 1991)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
遺伝的多様性に起因して、異なる個人が、同じポリペプチドに対して様々な強さの免疫応答を示し得る。従って、本発明に従うワクチンは、免疫応答を増加させるために、幾つかの異なるポリペプチドを含み得る。前記ワクチンは、2つ以上のポリペプチドまたは免疫原性部分を含むことができ、該ポリペプチドは全て上記で定義されているか、または該ポリペプチドの全てではないが一部は、毒性マイコバクテリアから得られたものであり得る。
【0106】
本発明の一実施形態では、「核酸」は、少なくとも2つの塩基−糖−リン酸の組合せの鎖を指す。前記用語は、一実施形態では、DNA及びRNAを含む。「ヌクレオチド」は、一実施形態では、核酸ポリマーのモノマー(単量体)単位を指す。RNAは、、一実施形態では、tRNA(トランスファーRNA)、snRNA(核内低分子RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、阻害的低分子RNA(small inhibitory RNA:siRNA)、マイクロRNA(miRNA)及びリボソームの形態をとり得る。siRNA及びmiRNAの使用については、既に説明されている(Caudy AA et al, Genes & Devel 16: 2491-96及び該文献に引用されている参考文献)。DNAは、プラスミドDNA、ウイルスDNA、直鎖DNAまたは染色体DNA、あるいはこれらのグループの誘導体の形態をとり得る。加えて、DNA及びRNAのこれらの形態は、一本鎖、二本鎖、三本鎖または四本鎖であってよい。「核酸」はまた、別の実施形態では、含まれる骨格は別の型であるが塩基は同じであり得るような人工核酸を含む。一実施形態では、人工核酸はPNA(ペプチド核酸)である。PNAは、ペプチド骨格及びヌクレオチド塩基を含み、一実施形態では、DNA分子及びRNA分子の両者に結合することができる。別の実施形態では、ヌクレオチドはオキセタン修飾される。別の実施形態では、ヌクレオチドは、1若しくは複数のリン酸ジエステル結合をホスホロチオエート結合に置き換えることによって修飾される。別の実施形態では、人工核酸は、当分野で既知の天然核酸のリン酸骨格の任意の他の変異型を含む。ホスホロチオエート核酸及びPNAの使用は、当業者に既知であり、例えば、Neilsen PE, Curr Opin Struct Biol 9:353-57及びRaz NK et al Biochem Biophys Res Commun. 297: 1075-84に記載されている。核酸の産出及び使用は、当業者に既知であり、例えば、Molecular Cloning, (2001), Sambrook and Russell, eds. and Methods in Enzymology: Methods for molecular cloning in eukaryotic cells (2003) Purchio and G. C. Fareedに記載されている。各核酸誘導体は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0107】
作成方法にかかわらず、本明細書に記載の抗原は「抗原性」である。より詳細には、前記抗原は、マイコバクテリウム結核に感染した個人から得られた血清と反応する能力を有する。反応性は、例えば、本明細書に記載の代表的なELISAアッセイを用いて評価することができる。ここで、感染した個人から得られた血清の吸光度の読みが、感染していない個人から得られた血清の吸光度よりも少なくとも3標準偏差上にあれば、陽性と考えられる。
【0108】
マイコバクテリウム結核抗原の抗原性タンパク質は、公知の技術、例えばPaul, Fundamental Immunology, 3d ed., Raven Press, 1993, pp. 243-247及び該文献に引用されている参考文献に要約されている技術などを用いて調製しかつ同定することができる。そのような技術には、抗原性タンパク質に対する天然抗原のポリペプチド部分のスクリーニングが含まれる。本明細書に記載の代表的なELISAは、一般的に、これらのスクリーニングに用いることができる。ポリペプチドの抗原部分は、そのような代表的なアッセイ内で、完全長抗原によって発生される信号に実質的に類似した信号をそのようなアッセイにおいて発生させる部分である。換言すれば、マイコバクテリウム結核抗原の抗原部分は、本明細書に記載のモデルELISAにおいて、完全長抗原によって誘起される信号の少なくとも約20%、好適には約100%を発生させる。
【0109】
マイコバクテリウム結核抗原の部分及び他の変異型は、合成または組換え手段によって産生することができる。約100以下のアミノ酸、通常は約50以下のアミノ酸を有する合成ポリペプチドは、当分野で公知の技術を用いて産生することができる。例えば、そのようなポリペプチドは、アミノ酸が成長アミノ酸鎖に連続的に加えられるメリフィールド固相合成法など任意の商業的に利用可能な固相法を用いて合成することができる。Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2146, 1963を参照されたい。ポリペプチドの自動合成のための装置は、米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ社(Applied BioSystems, Inc.)などの供給業者から市販されており、メーカーの使用説明書に従って操作することができる。天然抗原の変異型は通常、オリゴヌクレオチド指定部位特異的突然変異などの標準的な突然変異誘発技術を用いて作成することができる。また、標準的な技術を用いてDNA配列の部分を除去することにより、切断型ポリペプチドを調製することもできる。
【0110】
一実施形態では、本発明は、感染症の診断の前に寄生虫感染症を診断する方法を提供する。
【0111】
一実施形態では、前記寄生虫は寄生蠕虫である。別の実施形態では、前記寄生蠕虫は扁形動物であり、一実施形態では扁虫である。別の実施形態では、扁形動物は条虫綱であり、一実施形態では条虫である。別の実施形態では、扁形動物は吸虫類であり、一実施形態では吸虫である。別の実施形態では、寄生蠕虫は線形動物門であり、一実施形態では回虫である。
【0112】
一実施形態では、前記吸虫は住血吸虫であり、一実施形態ではマンソン住血吸虫/吸虫/メコン住血吸虫/ビルハルツ住血吸虫(住血吸虫症)またはトリコビルハルツ住血吸虫(Trichobilharzia regenti)(水泳性痒疹)である。別の実施形態では、前記吸虫は肝吸虫であり、一実施形態では肝吸虫(肝吸虫症)、肝蛭/巨大肝蛭(肝蛭症)またはオピストルキス属である。別の実施形態では、前記吸虫は肺吸虫であり、一実施形態ではウェステルマン肺吸虫(肺吸虫症)である。別の実施形態では、前記吸虫は腸吸虫であり、一実施形態では肥大吸虫(肥大吸虫症)である。
【0113】
一実施形態では、前記条虫綱は円葉類であり、一実施形態では単包条虫/多包条虫(条虫症)、無鉤条虫(牛肉)/アジア条虫/有鉤条虫(豚肉)(条虫症/嚢虫症)または小形条虫(Hymenolepis nana)/縮小条虫(Hymenolepis diminuta)(膜様条虫症)である。別の実施形態では、前記条虫綱は擬葉目であり、一実施形態では広節裂頭条虫(裂頭条虫症)、マンソン裂頭条虫(孤虫症)またはマンソニア亜属裂頭条虫(Diphyllobothrium mansonoides)(孤虫症)である。
【0114】
一実施形態では、前記線形動物は双腺綱であり、一実施形態では、旋尾線虫目、円虫目(鉤虫)、カイチュウ目、桿線虫、蟯虫、カマラニナ、旋尾線虫亜目、糸状虫(フィラリア症)、テラジア上科または旋尾線虫上科である。一実施形態では、前記線形動物は、ドラクンクルス属(メジナ虫)回旋糸状虫(オンコセルカ症)、ロア・ロア(ロア・ロア糸状虫症)、マンソネラ属(マンソネラ症)、ルポンジロフィラリア(ディロフィラリア症)、フィラリア種(糸状虫及び糸状虫属、例えば、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、チモール糸状虫)、有棘顎口虫/剛棘顎口虫(顎口虫症)、眼虫(テラジア症)、ゴンギロネマ属、ズビニ鉤虫/ブラジル鉤虫(鉤虫症、皮膚幼虫移行症)、アメリカ鉤虫(アメリカ鉤虫症)、広東住血線虫(住血線虫症)、コスタリカ住血線虫、メタストロンギルス属(豚肺虫症)、回虫(回虫症)、アニサキス(アニサキス症)イヌ回虫/ネコ回虫(内臓幼虫移行症/トキソカラ症)、回虫上科、糞線虫(糞線虫症)、ヒト蟯虫(蟯虫症、蟯虫)、旋毛(旋毛虫症)、鞭虫(鞭虫症、鞭虫)、ストロンギロイデス種、フィリピン毛頭虫(腸毛頭虫症)または肝毛頭虫である。
【0115】
一実施形態では、前記扁形動物は、無鉤条虫、ヌマカ属(Taenirhynchus confusus)、肥大吸虫種、棘口吸虫、縮小条虫、槍形吸虫、異形吸虫、小型条虫である。
【0116】
別の実施形態では、寄生虫感染症は、本明細書に記載されているような、対象を病気にする当分野で既知の任意のものである。
【0117】
一実施形態では、寄生虫感染症は、IL−10を産生することができかつCD40アゴニストで開始されたIL−12産生を抑止することができるようなCD4+細胞の2つの亜集団の発生をもたらす。IL−10を産生することで、CD40結合に応えてIL−12を産生するDCの能力を抑制することにより、住血吸虫症に感染したマウスにおけるTh2極性化が促進される。従って、一実施形態では、寄生虫感染症は、Th2に対する免疫応答を駆動し、場合によりHIVワクチンの有効性を阻害し、臨床試験における偽陰性結果をもたらす。別の実施形態では、寄生虫は、特異的IFN−γ産生レベルを著しく抑制する。別の実施形態では、寄生虫は、細菌性、ウイルス性、微生物性、微生物、病原体性またはそれらの組合せの感染症中に、特異的IFN−γ産生レベルを著しく抑制する。
【0118】
寄生虫感染症の診断法には、糞試料の顕微鏡検査が含まれ、これは、糞便塗抹の鏡検かまたは、密度培地中や尿中で浮選によって卵子及び寄生虫を集中させた後の鏡検かのいずれかである。例えば、住血吸虫症の最終的な診断は、大便及び尿中に排泄された特定の住血吸虫卵の検出にかかっている。これは感染後5〜13週間で発生し、感染虫体数によって判定される。糞便の厚層塗抹、ニュークリポアでの尿のろ過、及び大便または尿のホルマリンエーテル濃縮技術が推奨される。尿の採取は、通常、排卵が最大である正午と午後2時の間に行うことが推奨される。
【0119】
軽い感染症または慢性感染症において、複数の検査が必要とされ得る。感染症が活動性である場合、住血吸虫卵には、生きている成熟したミラシジウムが含まれる。研究によれば、成人のヒト免疫不全ウイルス(HIV)−1関連の免疫不全は、ビルハルツ住血吸虫症、マンソン住血吸虫症、または両者による低強度の感染において卵を排出する能力を損なわないこと、及びHIV−1感染は、住血吸虫症の診断及びサーベイランスに重大な影響を与えないであろうことが示唆されている。
【0120】
本発明において、寄生虫感染症の診断のために、限定されるものではないが、尿検査、肝機能検査、画像検査(限定されるものではないが、胸部X線撮影、腹部及び骨盤の超音波検査、静脈性腎盂造影、排尿時膀胱尿道造影、頭部、胸部、腹部及び脊髄のCTスキャン及び/またはMRIをさらに含む)、並びに寄生虫に対する抗体の血清学的検査を含む種々の検査が行われると考えられることを理解されたい。
【0121】
他の検査には、肝生検、膀胱鏡検査及び腹腔鏡検査が含まれる。
【0122】
CDCは、精製成虫抗原と種々の検査の組合せを用いる。ファルコンアッセイスクリーニング検査酵素免疫測定法(FAST−ELISA)は、全ての種に対して99%特異的であり、マンソン住血吸虫感染に対して99%、ビルハルツ住血吸虫に対して95%、日本住血吸虫に対して90%の感度を有する。FAST−ELISAによる偽陰性結果により、ビルハルツ住血吸虫及び日本住血吸虫感染症への暴露の可能性がある場合には種特異抗原を用いた免疫ブロットを行うjavascript:showcontent('active','references')。しかし、血清検査は、進行中の感染を過去の感染と区別することができない。
【0123】
幾つかの流行地域においては、日本住血吸虫症、マンソン住血吸虫症及びウイルス性肝炎は、慢性肝疾患の最多原因である。B型肝炎表面抗原保有者の状態は、住血吸虫症患者よりも4倍高いと言われているが、その有意性は確かでない。マンソン住血吸虫症とB型肝炎との関係についてはこれまでに様々な説明がなされており、(1)細胞媒介性免疫の低下(それにより宿主抵抗性が低下する)、(2)社会経済的状況及び教育水準の低さ(それにより曝露のリスクが高まる)及び(3)過去に受けた静脈内薬、非経口薬または輸血による反復治療が含まれている。
【0124】
住血吸虫病の重症度及び病期(進行度)の確認は、上記の研究の組合せによって達成される。これには、血清学的検査、腹部及び肺門周囲の超音波検査、身体CTスキャン、内視鏡検査、膀胱鏡検査、腹腔鏡検査並びに組織学的検査が含まれる。急性住血吸虫病:急性住血吸虫症(片山熱)における超音波検査研究で検出される変化には、局所性肝臓エコー輝度の低さ(hypoechogenicities)が含まれ、これは、細菌感染、胸水及び心嚢液貯留を伴う二次膿瘍形成に影響し得る。リンパ節肥大は、エコー極のかさ(echopolar halo)に取り囲まれたエコー密度が高い(echodense)中心部を示し得る。軽度の住血吸虫症:腹腔鏡検査は、肝臓表面の大部分が滑らかであることを明らかにするが、より進行した疾患では複数の白っぽいマーク及び不規則な幅広の溝が観察される。慢性住血吸虫症:超音波検査の機能は、特徴的であり、高い頻度で胆嚢及び靱帯まで延出する門脈及び門脈枝の壁のエコー源性の密集を含む。中程度の住血吸虫症:超音波検査は、高エコー源性の領域を示し、CTスキャンは、網模様及び線形の石灰化したスポットを示す。重度の住血吸虫症:腹腔鏡検査は、溝型の凹みによって離間されている様々な大きさの塊状構造を持つ歪んだ肝臓表面を示し、カメの甲羅のような外観を作り出す。超音波検査は、高エコー源性の領域を示し、CTスキャンは、網模様及び線形の石灰化したスポットを示す。
【0125】
一実施形態では、本発明は、寄生虫に感染している対象における感染症を治療する方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、寄生蠕虫に感染している対象における感染症を治療する方法を提供する。一実施形態では、本発明は、前記対象は、2種類の寄生虫に感染している。別の実施形態では、一方の種類の寄生虫は寄生蠕虫であり、他方の種類の寄生虫は寄生原虫類である。別の実施形態では、前記寄生原虫類は、マラリア、リーシュマニア、トキソプラズマ、または当分野で既知の別の寄生原虫類である。一実施形態では、前記非寄生虫感染症は、感染性疾患である。別の実施形態では、前記非寄生虫感染症は、細菌性感染症である。別の実施形態では、前記非寄生虫感染症は、結核症である。別の実施形態では、前記非寄生虫感染症は、ウイルス性感染症である。別の実施形態では、前記ウイルス性感染症は、HIVである。
【0126】
一実施形態では、前記蠕虫感染症は、寄生虫感染症である。一実施形態では、前記蠕虫感染症は、寄生原生生物感染である。別の実施形態では、前記蠕虫は、寄生蠕虫である。別の実施形態では、前記蠕虫は、マンソン住血吸虫である。
【0127】
一実施形態では、本発明の方法に用いられるワクチンは、本明細書に記載された任意の形態または実施形態の組換え型リステリア・モノサイトゲネスを含む。一実施形態では、本発明に用いられるワクチンは、本明細書に記載された任意の形態または実施形態の本発明の組換え型リステリア・モノサイトゲネスからなる。別の実施形態では、本発明の方法に用いられるワクチンは、本明細書に記載された任意の形態または実施形態の本発明の組換え型リステリア・モノサイトゲネスから本質的になる。一実施形態では、「含む」という用語は、ワクチンが、組換え型リステリア・モノサイトゲネスを含むこと、並びに、当分野で公知の他のワクチンまたは治療を含むことを意味する。別の実施形態では、「から本質的になる」という用語は、ワクチンの機能成分が組換え型リステリア・モノサイトゲネスであるが、該ワクチンの治療効果に直接的に関与しない他の成分、例えば組換え型リステリア・モノサイトゲネスの効果を促進する成分(例えば、安定化、保存など)を含むことができることを意味する。別の実施形態では、「からなる」という用語は、組換え型リステリア・モノサイトゲネスを含むワクチンに関する。
【0128】
一実施形態では、本発明のワクチンは、慢性寄生蠕虫感染症の間に、免疫優勢CTL及びヘルパーエピトープに対する抗原特異的ワクチン応答を誘起する(図11A及びB、並びに後述する実施例4を参照)。別の実施形態では、ワクチン用量及び投薬計画を変更しても、免疫優勢エピトープに対するワクチン応答は変化しない(図12、並びに後述する実施例4を参照)。別の実施形態では、最後のワクチン接種後から数ヶ月間は、エフェクターCTL細胞による免疫優勢エピトープに対する応答は、慢性寄生蠕虫感染症に対する応答間で異ならない(図13A、及び後述する実施例5を参照)。
【0129】
一実施形態では、住血吸虫感染症の存在下で抗原特異的CD8+T細胞が生成され、未感染の場合と同程度のレベルで数か月間持続する。
【0130】
一実施形態では、細胞介在性免疫応答の一部であるエフェクター細胞の応答は持続性を有し、かつ既存の慢性寄生蠕虫感染症により変化しない(後述する実施例6を参照)。
【0131】
一実施形態では、本発明のワクチンは、免疫学的メモリー(記憶)を誘起する(後述する実施例7を参照)。
【0132】
一実施形態では、本発明の、リステリア菌に基づくワクチンは、Th2環境における機能性エフェクター細胞を誘起する。
【0133】
別の実施形態では、寄生蠕虫に感染している対象によるワクチン応答が変化した場合、2回目のブースト及び/または寄生蠕虫感染症のプラジカンテル治療後にワクチン応答が回復する。
【0134】
別の実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載された任意の形態または実施形態の組換え型リステリア・モノサイトゲネスを投与するステップを含む。一実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載された任意の形態または実施形態の組換え型リステリア・モノサイトゲネスを投与するステップからなる。別の実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載された任意の形態または実施形態の組換え型リステリア・モノサイトゲネスを投与するステップから本質的になる。一実施形態では、「含む」という用語は、本発明の方法が、組換え型リステリア・モノサイトゲネスを投与するステップを含むこと、並びに、当分野で公知の他の方法または治療を含むことを意味する。一実施形態では、「から本質的になる」という用語は、本発明の方法の機能要素が組換え型リステリア・モノサイトゲネスの投与であるが、該方法の治療効果に直接的に関与しない他のステップ(例えば、組換え型リステリア・モノサイトゲネスの投与効果を促進するステップ)を含むことができることを意味する。別の実施形態では、「からなる」という用語は、組換え型リステリア・モノサイトゲネスを投与するステップを含み、他の追加的なステップを含まない方法に関する。
【0135】
一実施形態では、本発明の方法に用いられるリステリア・モノサイトゲネス融合タンパク質は、本明細書に記載された任意の形態または実施形態の、微生物性または感染性疾患(細菌性、ウイルス性、真菌性、寄生性など)抗原と、LLO、ActAまたはPEST配列とを含む。別の実施形態では、本発明の方法に用いられるリステリア・モノサイトゲネス融合タンパク質は、本明細書に記載された任意の形態または実施形態の、微生物性または感染性疾患(細菌性、ウイルス性、真菌性、寄生性など)抗原と、LLO、ActAまたはPEST配列とからなる。一実施形態では、本発明の方法に用いられるリステリア・モノサイトゲネス融合タンパク質は、本明細書に記載された任意の形態または実施形態の、微生物性または感染性疾患(細菌性、ウイルス性、真菌性、寄生性など)抗原と、LLO、ActAまたはPEST配列とから本質的になる。別の実施形態では、「含む」という用語は、リステリア・モノサイトゲネス融合タンパク質が、微生物性または感染性疾患(細菌性、ウイルス性、真菌性、寄生性など)抗原と、LLO、ActAまたはPEST配列とを含むこと、並びに、当分野で公知の他の治療用異種ペプチドを含むことを意味する。一実施形態では、「から本質的になる」という用語は、リステリア・モノサイトゲネス融合タンパク質の機能成分が、微生物性または感染性疾患(細菌性、ウイルス性、真菌性、寄生性など)抗原と、LLO、ActAまたはPEST配列であるが、該リステリア・モノサイトゲネス融合タンパク質の治療効果に直接的に関与しない他の異種配列(例えば、前記融合タンパク質の効果を促進する成分)を含むことができることを意味する。別の実施形態では、「からなる」という用語は、リステリア・モノサイトゲネス融合タンパク質が、微生物性または感染性疾患(細菌性、ウイルス性、真菌性、寄生性など)抗原と、LLO、ActAまたはPEST配列とをのみ含むことを意味する。
【0136】
一実施形態では、本発明の方法に用いられるリステリア・モノサイトゲネスは、本明細書に記載された任意の形態または実施形態の、微生物性または感染性疾患(細菌性、ウイルス性、真菌性、寄生性など)抗原、及びそれに加えて他の異種の治療用ペプチドを発現及び分泌する。一実施形態では、本発明の方法に用いられるリステリア・モノサイトゲネスは本明細書に記載された任意の形態または実施形態の、本発明の微生物性または感染性疾患(細菌性、ウイルス性、真菌性、寄生性など)抗原、及びそれに加えて他の異種の非治療用ペプチドを発現及び分泌する。一実施形態では、本発明の方法に用いられるリステリア・モノサイトゲネスは、本明細書に記載された任意の形態または実施形態の、本発明の微生物性または感染性疾患(細菌性、ウイルス性、真菌性、寄生性など)抗原を発現及び分泌するが、他の異種ペプチドは発現及び分泌しない。
【0137】
一実施形態では、本発明の方法に用いられる前記組換え型リステリア・モノサイトゲネスは、異種ペプチドを分泌する。別の実施形態では、本発明の方法に用いられる前記組換え型リステリア・モノサイトゲネスは、異種ペプチドを発現する。別の実施形態では、本発明の方法に用いられる前記組換え型リステリア・モノサイトゲネスは、本明細書に記載された、異種ペプチドを発現及び分泌する。別の実施形態では、前記異種ペプチドは、細菌性、ウイルス性、微生物性、微小生物性、病原体性、またはそれらの任意の組み合わせの感染症に由来する。
【0138】
一実施形態では、弱毒化されたリステリア株、例えば、LMデルタ−actA変異体(Brundage et al, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 90: 11890-11894)、L.モノサイトゲネスデルタ−plcA(Camilli et al, 1991, J. Exp. Med., 173:751-754)、またはデルタ−ActA、デルタINL−b(Brockstedt et 5 al, 2004, PNAS, 101: 13832-13837)が本発明に用いられる。別の実施形態では、本明細書中の開示に基づいて当業者が理解することができるように、弱毒化されたリステリア株は、1またはそれ以上の弱毒化変異体を導入することにより構築される。そのような株の例には、これらに限定しないが、芳香族アミノ酸に対する栄養要求性を有するリステリア株(Alexander et al, 1993, Infection and Immunity 10 61 :2245-2248)、リポタイコ酸の作製のための変異体(Abachin et al, 2002, Mol. Microbiol. 43: 1-14)、及び毒性遺伝子の欠失により弱毒化されたものが含まれる。
【0139】
一実施形態では、本発明の組換え型リステリア・モノサイトゲネスは、寄生蠕虫によるTh1介在性応答抑制を克服し、感染症特異的な細胞介在性免疫応答を誘起する。別の実施形態では、本発明の組換え型リステリア・モノサイトゲネスは、寄生蠕虫に感染している対象における免疫応答を、Th2からTh1へスキュー(skew)する。別の実施形態では、寄生蠕虫症、寄生虫症、マンソン住血吸虫症に慢性的に感染している対象のために開発されたリステリアベクター−HIV−1gagワクチンを投与することにより、HIV−1gagCTL及びTヘルパーエピトープに対する著しい免疫応答を駆動することができる。別の実施形態では、リステリアベクターワクチンにより、寄生蠕虫に感染している対象におけるワクチン特異的免疫応答を駆動することができる。
【0140】
別の実施形態では、本発明の方法で用いられるワクチンとともに駆虫薬及び/または抗生物質が用いられる。一実施形態では、前記駆虫薬は、アルベンダゾール、ベンゾイミダゾール、イミダチアゾール/モンテラル、大環状ラクトン、イベルメクチン、ラフォキサニドである。一実施形態では、前記抗生物質は、リファンピシン、イソニアジド、またはそれらの組合せである。
【0141】
本発明のワクチンの組合せは、通常、ワクチンの1つとして核酸ワクチン、好適にはDNAを含む。本明細書で定義されている核酸ワクチンは、通常、プラスミド発現ベクターであるが、ウイルス粒子においてキャプシドで包まれていない。核酸ワクチンは、ワクチン投与計画を受ける個人の細胞内に直接導入される。この手法については、例えば、Wolff et. al., Science 247: 1465 (1990)及び米国特許第5,580,859号明細書、米国特許第5,589,466号明細書、米国特許第5,804,566号明細書、米国特許第5,739,118号明細書、米国特許第5,736,524号明細書、米国特許第5,679,647号明細書及びWO 98/04720に記載されている。DNAベースの送達技術の例には、「ネイキッドDNA」、促進性(ブピバカイン、ポリマー、ペプチド媒介)の送達及び、陽イオン性脂質複合体またはリポソームが含まれる。前記核酸は、例えば米国特許第5,204,253号明細書に記載されているような弾道的な送達または圧力(例えば、米国特許第5,922,687号明細書を参照)を用いて投与することができる。この技術を用いて、DNAのみからなる粒子が投与されるか、あるいは、別の実施形態では、投与のためにDNAを金粒子などの粒子に付着させることができる。
【0142】
当分野で公知であるように、抗原遺伝子の発現の効率及び/またはDNAワクチンの免疫原性に影響を与えることができる因子は多数ある。そのような因子の例には、接種の再現性、プラスミドベクターの構成、抗原遺伝子発現を駆動するために用いられるプロモータの選択及びプラスミドにおける挿入遺伝子の安定性が含まれる。
【0143】
真核細胞における発現に用いられる従来のベクターのうち任意のものを、組織内にDNAを直接導入するために用いることができる。真核生物ウイルス由来の調節要素を含む発現ベクターは通常、真核細胞発現ベクター、例えばSV40 CMBベクターにおいて用いられる。他の例示的な真核細胞ベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo−5及び、任意の他のベクターであって、SV40初期プロモータ、SV40後期プロモータ、メタロチオネインプロモータ、ヒトサイトメガロウイルスプロモータ、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモータ、ラウス肉腫ウイルスプロモータ、ポリヘドリンプロモータまたは、真核細胞における発現に効果があることが分かっている他のプロモータなどのプロモータの指図を受けてタンパク質を発現させるものが含まれる。
【0144】
例えば大腸菌発酵及びそれに続く精製によって、治療的有効量のプラスミドDNAを作成することができる。ワーキングセルバンクから取った一定分量(アリコート)を成長培地への接種に用い、公知の技術に従って振とうフラスコまたはバイオリアクタ内で飽和まで成長させる。プラスミドDNAは、固相陰イオン交換樹脂などの標準的なバイオセパレーション技術を用いて精製することができる。必要な場合には、ゲル電気泳動または他の方法を用いて開環状及び線形形態から超らせんDNAを単離することができる。
【0145】
天然抗原の部分及び/または変異型を含む組換え型ポリペプチドは、当業者に公知の様々な技術を用いて、ポリペプチドをコードするDNA配列から容易に作成することができる。例えば、組換えタンパク質を培地中に分泌する適切な宿主/ベクター系から得た上清を、市販のフィルタを用いて濃縮することができる。濃縮に続いて、適切な精製マトリクス、例えばアフィニティマトリクスまたはイオン交換樹脂に濃縮物を適用することができる。最後に、1若しくは複数の逆相HPLCステップを用いて、組換えタンパク質をさらに精製することができる。
【0146】
本明細書中で挙げた任意のアミノ酸配列に対するタンパク質及び/またはペプチド相同性は、一実施形態では、イムノブロット解析を含む当分野で公知の方法、またはアミノ酸配列のコンピュータアルゴリズム分析、多数の利用可能なソフトウェアパッケージのうちの任意のものの利用、確立された方法によって、判定される。これらのパッケージのうちのいくつかは、FASTA、BLAST、MPsrchまたはScanpsパッケージを含むことができ、例えば、解析のためにスミス−ウォーターマンアルゴリズム及び/または網羅的/局所的またはBLOCKSアルゴリズムを用いることができる。各相同性判定方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0147】
本明細書に記載の組換え型ポリペプチドを発現するために、当業者に知られている様々な発現ベクターのうちのいずれかを用いることができる。発現は、組換え型ポリペプチドをコードするDNA分子を含む発現ベクターで形質移入されたかまたは形質転換された任意の適切な宿主細胞において達成することができる。適切な宿主細胞には、原核生物、酵母及び高次真核細胞が含まれる。用いられる宿主細胞は、大腸菌、酵母または哺乳類の細胞株、例えば、COSやCHOであることが好ましい。このようにして発現されるDNA配列は、自然発生の抗原、自然発生の抗原の部分、または自然発生の抗原の他の変異型をコードし得る。
【0148】
概して、作成方法にかかわらず、本明細書に開示されているポリペプチドは、実質的に純粋な形態で作成される。ポリペプチドの純度は、少なくとも約80%であるのが好ましく、少なくとも約90%であるのがより好ましく、少なくとも約99%であるのが最も好ましい。しかし、本明細書に記載の方法で用いるために、そのような実質的に純粋なポリペプチドを組み合わせてもよい。
【0149】
一実施形態では、本発明のワクチンはアジュバントを含む。しかし、別の実施形態では、本発明のワクチンは、アジュバントを含まない。「アジュバント」なる用語は、別の実施形態では、人間に投与した場合またはインビトロで試験した場合に、前記抗原が投与された前記人間または試験システムにおける抗原に対する免疫応答を増加させる化合物を意味する。別の実施形態では、免疫アジュバントは、単独で投与した場合に、弱免疫原性の抗原に対する免疫応答を強化する(すなわち、無い若しくは弱い抗体力価、または細胞介在性免疫応答を誘起する)。別の実施形態では、前記アジュバントは、抗原に対する抗体力価を高める。別の実施形態では、前記アジュバントは、人間における免疫応答を達成するのに有効な、抗原の用量を少なくする。
【0150】
本発明の方法及び組成物において用いられる前記アジュバントは、別の実施形態では、CpG含有ヌクレオチド配列である。別の実施形態では、前記アジュバントは、CpG含有オリゴヌクレオチドである。別の実施形態では、前記アジュバントは、CpG含有オリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)である。別の実施形態では、前記アジュバントは、ODN 1826である。別の実施形態では、前記アジュバントは、アルミニウム塩アジュバントである。別の実施形態では、前記アルミニウム塩アジュバントは、ミョウバン沈殿ワクチンである。別の実施形態では、前記アルミニウム塩アジュバントは、ミョウバン吸着ワクチンである。アルミニウム塩アジュバントは、当分野で公知であり、例えば、Harlow, E. and D. Lane(1988; Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory)及びNicklas, W.(1992; Aluminum salts. Research in Immunology 143:489-493)において説明されている。
【0151】
別の実施形態では、前記アジュバントは、Montanide ISAアジュバントである。別の実施形態では、前記アジュバントは、補体成分C3dの三量体である。別の実施形態では、前記三量体は、タンパク質免疫源に共有結合している。別の実施形態では、前記アジュバントは、MF59である。別の実施形態では、前記アジュバントは、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)タンパク質である。別の実施形態では、前記アジュバントは、GM−CSFタンパク質を含む混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、GM−CSFをコードしているヌクレオチド分子である。別の実施形態では、前記アジュバントは、GM−CSFをコードしているヌクレオチド分子を含む混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、サポニンQS21である。別の実施形態では、前記アジュバントは、サポニンQS21を含む混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、モノホスホリル脂質A(MPL)である。別の実施形態では、前記アジュバントは、MPLを含む混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、SBAS2である。別の実施形態では、前記アジュバントは、SBAS2を含む混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドである。別の実施形態では、前記アジュバントは、非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドを含む混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、免疫刺激サイトカインである。別の実施形態では、前記アジュバントは、免疫刺激サイトカインを含む混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、免疫刺激サイトカインをコードしているヌクレオチド分子である。別の実施形態では、前記アジュバントは、免疫刺激サイトカインをコードしているヌクレオチド分子を含む混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、クイルグリコシドを含む混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、細菌マイトジェンを含む混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、細菌毒素を含む混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、当分野で公知の他のアジュバントを含む混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、上記のアジュバントのうちの2つのアジュバントの混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、上記のアジュバントのうちの3つのアジュバントの混合物である。別の実施形態では、前記アジュバントは、上記のアジュバントのうちの3つよりも多いアジュバントの混合物である。
【0152】
別の実施形態では、本発明の方法は、前記対象に、ブースターワクチン接種を投与するステップをさらに含む。一実施形態では、前記ブースターワクチン接種は、1回のプライミングワクチン接種の後に行われる。別の実施形態では、前記プライミングワクチン接種の後に、1回のブースターワクチン接種が投与される。別の実施形態では、前記プライミングワクチン接種の後に、2回のブースターワクチン接種が投与される。別の実施形態では、前記プライミングワクチン接種の後に、3回のブースターワクチン接種が投与される。一実施形態では、プライムワクチンとブーストワクチンとの間の期間は、当業者により実験的に求められる。別の実施形態では、プライムワクチンとブーストワクチンとの間の前記期間は、1週間であり、別の実施形態では2週間であり、別の実施形態では3週間であり、別の実施形態では4週間であり、別の実施形態では5週間であり、別の実施形態では6〜8週間であり、さらなる別の実施形態では、ブーストワクチンは、プライムワクチンの8〜10週間後に投与される。
【0153】
別の実施形態では、前記ブースターワクチン接種は、プライムワクチンの形態とは異なる、ワクチンの変更形態の使用を含む。別の実施形態では、前記ワクチンの前記変更形態は、前記融合タンパク質をコードしているDNAワクチン、前記融合タンパク質を含む組換え型ポリペプチド、前記融合タンパク質をコードしているウイルスベクター、または生組換え型リステリアワクチンベクターである。別の実施形態では、前記ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである。
【0154】
異種「プライムブースト」ストラテジーは、免疫応答の強化及び無数の病原体に対する防御に効果的である(Schneider et al., Immunol. Rev. 170:29-38 (1999);Robinson, H. L., Nat. Rev. Immunol. 2:239-50 (2002);Gonzalo, R. M. et al., Vaccine 20:1226-31 (2002); Tanghe, A., Infect. Immun. 69:3041-7 (2001))。プライム及びブースト注射において異なる形で抗原を与えると、抗原に対する免疫応答が最大になるようである。DNAワクチンでのプライミング及びそれに続くアジュバント中のタンパク質でのブースティングまたは抗原をコードするDNAのウイルスベクター送達は、抗原特異的抗原及びCD4+T細胞応答またはCD8+T細胞応答をそれぞれ向上させる最も効果的な方法であるように思われる(Shiver J. W. et al., Nature 415: 331-5 (2002);Gilbert, S. C. et al., Vaccine 20:1039-45 (2002);Billaut-Mulot, O. et al., Vaccine 19:95-102 (2000);Sin, J. I. et al., DNA Cell Biol. 18:771-9 (1999))。サルのワクチン接種研究から得られた最近のデータは、HIVgag抗原をコードするDNAにCRL1005ポロキサマ(12kDa,5%POE)を加えると、サルにHIVgagDNAのプライムをワクチン接種してそれに続いてHIVgag(Ad5−gag)を発現するアデノウイルスベクターでブーストしたときに、T細胞応答を強めることを示唆している。DNA/ポロキサマのプライム及びそれに続くAd5−gagのブーストに対する細胞性免疫応答は、DNA(ポロキサマなし)のプライム及びそれに続くAd5−gagのブースト、またはAd5−gagのみで誘起された応答よりも大きかった(Shiver, J. W. et al. Nature 415:331-5 (2002))。米国特許出願公開第US 2002/0165172 A1号明細書には、免疫応答が生成されるように、抗原の免疫原性部分をコードするベクターコンストラクトと、抗原の免疫原性部分を含むタンパク質とを同時投与することが記載されている。該文献は、B型肝炎抗原及びHIV抗原に限定されている。さらに、米国特許第6,500,432号明細書には、着目されているポリヌクレオチド及びポリペプチドの同時投与によって核酸ワクチン接種の免疫応答を増強する方法が記載されている。前記特許によれば、同時投与は、同一免疫応答中のポリヌクレオチド及びポリペプチドの投与を意味し、互いの投与が0〜10日または3〜7日以内であることが好ましい。本発明で考えられる抗原は、とりわけ、肝炎(全ての型)の抗原、HSV、HIV、CMV、EBV、RSV、VZV、HPV、ポリオ、インフルエンザ、寄生虫(例えば、プラスモディウム科の標準属由来)、及び病原性細菌(マイコバクテリウム結核菌、らい菌、クラミジア、赤痢菌、ライム病ボレリア、毒素原性大腸菌、チフス菌、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)、コレラ菌、百日咳菌などを含むが、これらに限定されるものではない)を含む。上記文献は全て、全文を引用することを以て本明細書の一部となす。
【0155】
別の実施形態では、本発明の方法及び組成物の核酸分子がプロモータ/制御配列に作動可能に連結されている。別の実施形態では、本発明の方法及び組成物の第1のオープンリーディングフレームがプロモータ/制御配列に作動可能に連結されている。別の実施形態では、本発明の方法及び組成物の第2のオープンリーディングフレームがプロモータ/制御配列に作動可能に連結されている。別の実施形態では、各オープンリーディングフレームがプロモータ/制御配列に作動可能に連結されている。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0156】
当業者は、本開示及び本明細書に記載の方法が与えられたとき、本発明の方法及び組成物において種々の転写プロモータ、ターミネータ、担体ベクターまたは特異的遺伝子配列(例えば、市販のクローニングベクター中のもの)をうまく用いることができることがよく分かるであろう。本発明において考えられているように、これらの機能は、例えば、pUCシリーズとして知られている市販のベクターにおいて与えられている。別の実施形態では、非必須DNA配列(例えば抗生物質耐性遺伝子)は除去される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。別の実施形態では、本発明において、当分野で公知の方法を用いて構築することができる市販のプラスミドが用いられる。
【0157】
別の実施形態は、pCR2.1(カリフォルニア州ラホヤのインビトロジェン社(Invitrogen))などのプラスミドである。これは、原核生物の複製起源と、原核生物における発現を促進するためのプロモータ/調節要素とを持つ原核生物発現ベクターである。別の実施形態では、プラスミドの大きさを減少させ、その内部に配置可能なカセットの大きさを増大させるために、無関係なヌクレオチド配列が除去される。
【0158】
そのような方法は、当分野で公知であり、例えば、「Sambrook et al.(1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)及びAusubei et al.(1997, Current Protocols in Molecular Biology, Green & Wiley, New York)」に記載されている。
【0159】
一実施形態では、分子生物学及びワクチン調製において一般的に使用される従来の選択及びクローニング過程において、抗生物質耐性遺伝子が用いられる。本発明で考えられる抗生物質耐性遺伝子は、アンピシリン、ペニシリン、メチシリン、ストレプトマイシン、エリスロマイシン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール(CAT)、ネオマイシン、ハイグロマイシン、ゲンタマイシン及び当分野で公知の他の抗生物質への耐性を与える遺伝子産物を含むが、これらに限定されるものではない。各遺伝子は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0160】
細菌を形質転換する方法は、当分野で公知であり、塩化カルシウムコンピテントセルベースの方法、電気穿孔法、バクテリオファージ媒介形質導入、化学的及び物理的形質転換技術(de Boer et al, 1989, Cell 56:641-649;Miller et al, 1995, FASEB J., 9:190-199;Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York;Ausubel et al., 1997, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York;Gerhardt et al., eds., 1994, Methods for General and Molecular Bacteriology, American Society for Microbiology, Washington, DC;Miller, 1992, A Short Course in Bacterial Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)を含む。別の実施形態では、本発明のリステリアワクチン株は、電気穿孔法によって形質転換される。各方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0161】
別の実施形態では、遺伝物質及び/またはプラスミドを細菌に導入するために、接合が用いられる。接合方法は当分野で公知であり、例えば、Nikodinovic J et al.(A second generation snp-derived Escherichia coli-Streptomyces shuttle expression vector that is generally transferable by conjugation. Plasmid. 2006 Nov;56(3):223-7)及びAuchtung JM et al(Regulation of a Bacillus subtilis mobile genetic element by intercellular signaling and the global DNA damage response. Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Aug 30;102 (35):12554-9)に記載されている。各方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0162】
一実施形態では、「形質転換する」は、「形質移入する」という用語と同様に用いられ、プラスミドまたは他の異種DNA分子を受け入れるように細菌細胞を操作することを指す。別の実施形態では、「形質転換する」は、プラスミドまたは他の異種DNA分子の遺伝子を発現させるように細菌細胞を操作することを指す。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0163】
本発明において有用であるプラスミド及び他の発現ベクターは、本明細書の他の部分で説明されており、プロモータ/制御配列、グラム陰性及びグラム陽性細菌のための複製起点、融合タンパク質をコードする単離核酸及びアミノ酸代謝遺伝子をコードする単離核酸などの特徴を含むことができる。さらに、融合タンパク質及びアミノ酸代謝遺伝子をコードする単離核酸は、そのような単離核酸の発現を駆動するのに適したプロモータを有することになる。細菌系における発現を駆動するのに有用なプロモータは、当分野で公知であり、バクテリオファージλ、pBR322のβラクタマーゼ遺伝子のblaプロモータ及びpBR325のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子のCATプロモータを含む。原核生物プロモータのさらなる例には、5バクテリオファージλの主要な右及び左のプロモータ(PL及びPR)、大腸菌のtip、recA、lacZ、lad及びgalプロモータ、α−アミラーゼ(Ulmanen et al, 1985. J. Bacterid. 162:176-182)及び枯草菌のS28特異プロモータ(Oilman et al, 1984 Gene 32: 11- 20)、バチルスのバクテリオファージのプロモータ(Gryczan, 1982, In: The Molecular Biology of the Bacilli, Academic Press, Inc., New York)並びにストレプトマイセスプロモータ(Ward et al, 1986, Mol. Gen. Genet. 203:468-478)が含まれる。本発明で考えられるAdditional原核生物プロモータについては、例えば、Glick(1987, J. Ind. Microbiol. 1 :277-282)、Cenatiempo(1986, Biochimie, 68:505-516)及びGottesman(1984, Ann. Rev. Genet. 18:415-442)に記載されている。本発明で考えられるプロモータ/調節要素のさらなる例としては、リステリアのprfAプロモータ、リステリアのhlyプロモータ、リステリアのp60プロモータ及びリステリアのActAプロモータ(ジェンバンク受入番号NC_003210)またはそれらの断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0164】
別の実施形態では、本発明の方法及び組成物のプラスミドは、融合タンパク質をコードする遺伝子を含む。別の実施形態では、部分配列がクローニングされ、適切な部分配列が適切な制限酵素を用いて開裂される。次に、これらの断片は、別の実施形態では、所望のDNA配列を作り出すように連結される。別の実施形態では、抗原をコードするDNAは、DNA増幅法、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて産生される。第一に、新しい末端の両側の天然DNAのセグメントが別々に増幅される。一方の増幅配列の5’末端がペプチドリンカーをコードする一方で、他方の増幅配列の3’末端もペプチドリンカーをコードする。第1断片の5’末端は第2断片の3’末端に相補的であるので、これら2つの断片(部分精製後、例えば、LMPアガロース上)を、第3のPCR反応において重複鋳型として用いることができる。増幅配列は、コドン、開放部位のカルボキシ側のセグメント(今度はアミノ配列を形成する)、リンカー、開放部位のアミノ側の配列(今度はカルボキシル配列を形成する)を含むことになる。前記抗原は、プラスミドの中に連結される。各方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0165】
別の実施形態では、本発明は、臨床応用のためのファージベースの染色体統合システムをさらに含む。別の実施形態では、「ファージ治療ステップ」を回避するために、PSAに基づくファージ統合システムが用いられる(Lauer, et al., 2002 J Bacterid, 184:4177-4186)。これは、別の実施形態では、統合遺伝子を維持するために複数の抗生物質による連続選択を必要とする。それゆえ、別の実施形態では、本発明は、抗生物質を用いての選択を必要としないファージベースの染色体統合システムの確立を可能にする。代わりに、栄養要求性宿主株が補完される。
【0166】
本発明の組換えタンパク質は、別の実施形態では、組換えDNA技法を用いて合成される。組換えDNA技法には、一実施形態では、融合タンパク質をコードするDNA配列を作成すること、特定のプロモータ/調節要素の制御下で本発明のプラスミドなどの発現カセットにDNAを配置すること及び、前記タンパク質を発現することが含まれる。本発明の融合タンパク質をコードするDNA(例えば非溶血性LLO/抗原)は、別の実施形態では、例えば、適切な配列のクローニング及び制限を含む任意の適切な方法によって作成されるか、または、Narang et al.(1979, Meth. Enzymol. 68: 90-99)のりん酸トリエステル法、Brown et al.(1979, Meth. Enzymol 68: 109-151)のりん酸ジエステル法、Beaucage et al.(1981, Tetra. Lett, 22: 15 1859-1862)のジエチルホスホラミダート法及び、米国特許第4,458,066号明細書の固体担体法など種々の方法による直接化学合成によって作成される。
【0167】
別の実施形態では、化学合成を用いて一本鎖オリゴヌクレオチドを産出する。この一本鎖オリゴヌクレオチドは、種々の実施形態において、相補配列によるハイブリダイゼーションによって、または一本鎖を鋳型として用いるDNAポリメラーゼによる重合によって、二本鎖DNAに転換される。DNAの化学合成は約100塩基の配列に制限されるが、短配列を結合することによって、より長い配列を得ることができることは、当業者には理解されよう。別の実施形態では、部分配列がクローニングされ、適切な部分配列が適切な制限酵素を用いて開裂される。これらの断片は、次に、所望のDNA配列を作り出すように連結される。
【0168】
別の実施形態では、本発明の融合タンパク質または組換えタンパク質をコードするDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などのDNA増幅法を用いてクローニングされる。それゆえ、適切な制限酵素認識部位を含むセンスプライマーと、別の制限酵素認識部位、例えばクローニングを促進するための異なる制限酵素認識部位を含むアンチセンスプライマーとを用いて、非溶血性LLOのための遺伝子がPCR増幅される。抗原をコードする単離核酸に対して、同じことが繰り返される。非溶血性LLO及び抗原配列の連結並びにプラスミドまたはベクター内への挿入は、抗原の末端に結合された非溶血性LLOをコードするベクターを産出する。これらの2つの分子は、直接的に、または制限酵素認識部位により導入された短いスペーサによって結合される。
【0169】
別の実施形態では、前記分子は、1若しくは複数のアミノ酸からなるペプチドスペーサによって分離され、通常、前記スペーサは、タンパク質同士を結合するかまたはそれらの間の最小距離または他の空間関係を保つ以外に特異的生物活性を持たない。別の実施形態では、スペーサの構成アミノ酸は、折りたたみ(フォールディング)、正味の電荷や疎水性などの分子の特性に影響を与えるように選択される。別の実施形態では、融合または組換えタンパク質をコードする核酸配列は、大腸菌を含む様々な宿主細胞、他の細菌宿主、例えば、リステリア、酵母、並びに様々な高次真核細胞、例えば、COS、CHO、HeLa細胞株及び骨髄腫細胞株などに形質転換される。融合タンパク質遺伝子は、各宿主に対して適切な発現制御配列に作動可能に連結されることになる。プロモータ/制御配列については、本明細書の他の部分で説明されている。別の実施形態では、プラスミドは、追加的なプロモータ調節要素と、リボソーム結合部位及び転写終結シグナルとをさらに含む。真核細胞に関しては、制御配列は、例えば、免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロウイルスなどに由来するプロモータ及びエンハンサ、並びにポリアデニル化配列を含むことになる。別の実施形態では、前記配列には、スプライス供与配列及びスプライス受容配列が含まれる。
【0170】
一実施形態では、「機能的に関連付けられた」という用語は、そのように説明された構成要素同士が意図されたように機能することを可能にする関係にあるような並置を指す。コード配列に「機能的に関連付けられた」制御配列は、該制御配列と両立的な条件下で前記コード配列の発現が達成されるように連結される。
【0171】
別の実施形態では、プラスミドを含む栄養要求性細菌を選択するために、形質転換された栄養要求性細菌は、アミノ酸代謝遺伝子の発現を選択することになる培地上で成長する。別の実施形態では、D−グルタミン酸合成を要求する栄養要求性細菌は、D−グルタミン酸合成のための遺伝子を含むプラスミドを用いて形質転換され、前記栄養要求性細菌は、D−グルタミン酸の非存在下で成長する。それに対して、プラスミドを用いて形質転換されていないかまたはD−グルタミン酸合成のためのタンパク質をコードするプラスミドを発現していない栄養要求性細菌は、成長しない。別の実施形態では、D−アラニン合成を要求する栄養要求性細菌は、形質転換されたときにD−アラニンの非存在下で成長することになり、本発明のプラスミドがD−アラニン合成のためのアミノ酸代謝酵素をコードする単離核酸を含む場合には前記プラスミドを発現する。必要な成長因子、サプリメント、アミノ酸、ビタミン、抗生物質などを含むかまたは欠いている適切な培地を作る方法は、当分野で公知でありかつ市販されている(ニュージャージー州フランクリン・レイクスのベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson:BD)製)。各方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0172】
別の実施形態では、適切な培地上で本発明のプラスミドを含む栄養要求性細菌が選択されると、該細菌は、選択圧の存在下で増殖される。そのような増殖には、栄養要求性因子なしで培地中で細菌を成長させることが含まれる。栄養要求性細菌においてアミノ酸代謝酵素を発現するプラスミドの存在は、該プラスミドが細菌とともに増幅し、それゆえ、前記プラスミドを内部に持つ細菌を絶えず選択することを確実にする。当業者は、本開示及び本明細書に記載の方法が与えられたとき、プラスミドを含む栄養要求性細菌を成長させる培地の量を調整することによって、リステリアワクチンベクターの産生を拡大することが簡単にできるであろう。
【0173】
別の実施形態では、本発明とともに使用するために他の栄養要求性株及び相補系が採用されることは、当業者に理解されるであろう。
【0174】
一実施形態では、本発明のリステリアワクチンベクターは、組換え型リステリア株であり、別の実施形態では、組換え型リステリア・モノサイトゲネス株である。別の実施形態では、本発明の組換え型リステリア株は、栄養要求性リステリア株である。別の実施形態では、本発明の組換え型リステリア株は、dal/dat変異体である。別の実施形態では、本発明の組換え型リステリア株は、前記栄養要求性リステリア株の栄養要求性を補完する代謝酵素を有するエピソーム発現ベクターを含む。別の実施形態では、前記組換え型リステリア株は、アミノ酸代謝酵素を含む。別の実施形態では、前記代謝酵素は、前記組換え型リステリア株の細胞壁合成に使用されるアミノ酸の生成を触媒する。別の実施形態では、前記代謝酵素は、アラニン・ラセマーゼ酵素である。別の実施形態では、前記代謝酵素は、D−アミノ酸トランスフェラーゼ酵素である。
【0175】
一実施形態では、本発明の組換え型リステリア株は、動物ホストを用いて継代される。
【0176】
別の実施形態では、上述の方法のいずれかに用いられるワクチン及び免疫原性組成物は、本発明のワクチン及び免疫原性組成物の特徴のいずれかを有する。各特徴は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0177】
本発明では、様々な用量範囲の実施形態が考えられる。一実施形態では、ワクチンベクターの場合、前記用量は、0.4LD50/用量の範囲である。別の実施形態では、前記用量は、0.4〜0.49LD50/用量である。別の実施形態では、前記用量は、0.5〜0.59LD50/用量である。別の実施形態では、前記用量は、0.6〜0.69LD50/用量である。別の実施形態では、前記用量は、0.7〜0.79LD50/用量である。別の実施形態では、前記用量は、0.8LD50/用量である。別の実施形態では、前記用量は、0.4〜0.8LD50/用量である。
【0178】
別の実施形態では、前記用量は、10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、1.5×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、2×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、3×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、4×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、6×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、8×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、1×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、1.5×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、2×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、3×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、4×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、6×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、8×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、1×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、1.5×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、2×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、3×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、4×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、6×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、8×10細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、1×1010細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、1.5×1010細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、2×1010細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、3×1010細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、5×1010細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、6×1010細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、8×1010細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、1×1011細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、1.5×1011細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、2×1011細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、3×1011細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、5×1011細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、6×1011細菌/用量である。別の実施形態では、前記用量は、8×1011細菌/用量である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0179】
別の実施形態では、本発明は、本発明の方法を実行する際に利用される試薬を含むキットを提供する。別の実施形態では、本発明は、本発明の組成物、ツールまたは器具を含むキットを提供する。
【0180】
本発明のワクチン及び組成物を含む医薬組成物は、別の実施形態では、当業者に知られている任意の方法によって、例えば、非経口投与、中心傍投与、経粘膜的投与、経皮的投与、筋肉内投与、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、脳室内投与、頭蓋内投与、膣内投与または腫瘍内投与によって、対象に投与される。
【0181】
本明細書に記載の方法及び組成物の別の実施形態では、前記ワクチンまたは組成物は経口投与されるので、経口投与に適した形態に、すなわち、固体または液体製剤として製剤化される。適切な固体経口製剤には、錠剤、カプセル、丸剤、顆粒剤、ペレットなどが含まれる。適切な液体経口製剤には、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、油などが含まれる。本発明の別の実施形態では、有効成分はカプセルに製剤化される。本実施形態に従って、本発明の組成物は、活性化合物及び不活性担体または希釈液に加えて、硬ゼラチンカプセルを含む。
【0182】
別の実施形態では、前記ワクチンまたは組成物は、液体製剤の静脈内注射、動脈内注射または筋肉内注射によって投与される。適切な液体製剤には、溶液、懸濁液、分散液、エマルション、油などが含まれる。一実施形態では、前記医薬組成物は、静脈内投与されるので、静脈内投与に適した形態に製剤化される。別の実施形態では、前記医薬組成物は、動脈内投与されるので、動脈内投与に適した形態に製剤化される。別の実施形態では、前記医薬組成物は、筋肉内投与されるので、筋肉内投与に適した形態に製剤化される。
【0183】
「治療有効量」または「治療的有効量」という用語は、投与されたときに望ましい効果を上げる用量を意味する。正確な用量は、当業者によって既知の技術を用いて確認することができるであろう。
【0184】
「対象」または「患者」という用語は、本明細書において、HIV、結核、マラリアまたは任意の他の感染症に罹患するリスクがあるかまたは罹患しているヒトを指す。前記用語はまた、寄生虫感染症に罹患しているかまたは罹患するリスクがあるヒトを指す。「対象」という用語は、あらゆる点で正常である個人を除外するものではない。さらに、「対象」、「宿主」、「患者」及び「個人」という用語は、本明細書においてほとんど同じ意味で用いられ、診断または治療が望まれる任意の哺乳類対象、特にヒトを指す。他の対象は、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマなどを含み得る。
【0185】
「約」という用語は、本明細書において、数量的に±5%、または別の実施形態では±10%、または別の実施形態では±15%、または別の実施形態では±20%を意味する。
【0186】
本発明の好適実施形態についてさらに十分に説明するために、以下の実施例を示す。しかし、これらは決して本発明の広い範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0187】
実施例:材料及び方法
【0188】
寄生虫及びマウス
【0189】
メスのBalb/cマウス(ハーラン社(Harlan))を腹腔内注射(i.p.)によってマンソン住血吸虫の感染性セルカリア35〜50匹に感染させた。住血吸虫症に感染したマウスについて、抗虫卵及び/または抗虫抗体の存在によって、感染の10週間後に収集した血清でのELISAによって、寄生蠕虫感染症を検証した。
【0190】
細菌株
【0191】
Lm−GagはL.モノサイトゲネスの組換え株を指し、これは、リステリア染色体に安定に取り込まれたHIV−1株HXB gag遺伝子のコピーを持ち、ウェスタンブロッティングによって判定されるgag遺伝子産物を分泌する。ブレインハートインフュージョン(BHI)培地(ミシガン州デトロイトのディフコ社(Difco))中で前記株を成長させた。
【0192】
マウスのワクチン接種
【0193】
メスのBalb/cマウスに、0.2(または0.1,前述の通り)LD50リステリアベクターHIV−1ワクチン(ペンシルバニア大学のY.パターソン(Y. Paterson)から入手したLm−gag)、対照リステリアベクターHPVワクチン(ペンシルバニア大学のY.パターソンから入手したLm−E7)で腹腔内プライム(初回免疫)したか、または該マウスをワクチン未接種のままにしておいた。プライムの2週間後に同じ方法でマウスにブースト(追加免疫)した。
【0194】
T細胞応答の分析
【0195】
最後の免疫付与の2週間後、マウスを屠殺し、個々のマウスから脾臓を採取し、標準的な技法を用いて脾細胞を準備した。簡単に説明すると、24ウェルプレートで、10%FBS、100U/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシン、2mMのL−グルタミン及び50mMの2−MEが補充された1mlのRPMI 1640培地中で、37℃でAgとともに脾細胞を培養した。3日後、2つ組の培養物の上清を収集し、ELISAによってサンプルのサイトカインを検査するまで22℃で貯蔵した。
【0196】
ELISAによるサイトカイン分析では、脾細胞を摘出し、培地、SEAまたはconA(陽性対照として)の存在下で、48ウェルプレート内で1ウェル当たり150万個の細胞を蒔いた。72時間のインキュベーション後、上清を収集し、ELISA(BD)によってサイトカインレベルを分析した。抗原特異的IFN−γ ELISpotでは、脾細胞を摘出し、培地、特異的CTLペプチド、無関係ペプチド、特異的ヘルパーペプチドまたはconA(陽性対照として)の存在下で、IFN−γ ELISpotプレートに1ウェル当たり30万個及び15万個の脾細胞を蒔いた。20時間のインキュベーション後、ELISpot(BD)を行い、イムノスポットアナライザ(C.T.L.)によってスポットの数を数えた。脾細胞100万個当たりのスポットの数をグラフに描いた。
【0197】
コールターカウンタZ1(米国カリフォルニア州フラートンのベックマン・コールター社(Beckman Coulter)製)を用いて脾細胞の数を数えた。標準的なIFN−γベースのELISPOTアッセイを用いて、gagCTL、gagヘルパー、培地、無関係の抗原及びconA(陽性対照)による再刺激後のCD8+T細胞を産出するIFN−γの出現頻度を判定した。
【0198】
簡単に説明すると、5mg/mlのmAb R46−A2及び最適希釈度で用いられるポリクローナルウサギ抗IFN−γ(親切にもペンシルバニア州フィラデルフィアのペンシルバニア大学のフィリップ・スコット博士から提供を受けた)を用いて、IFN−γを検出した。マウスrIFN−γを用いて、標準曲線との比較により、IFN−γのレベルを計算した。ペルオキシダーゼ共役ヤギ抗ウサギIgG Ab(IFN−γ)を用いてプレートを展開した。その後、プレートを405nmで読み取った。前記アッセイに対する検出下限は30pg/mlであった。
【0199】
ELISA
【0200】
2wplvに脾細胞を摘出し、培地、25μg/mlの住血吸虫の可溶性虫卵抗原(SEA)または1μg/mlのコンカナバリンA(conA,陽性対照として)の存在下で、48ウェルプレートに1ウェル当たり150万個の脾細胞を蒔いた。72時間のインキュベーション後、上清を収集し、ELISA(ベクトン・ディッキンソン)によってメーカーのプロトコルに従ってIFN−γ、IL−4及びIL−10のレベルを分析した。
【0201】
ELISpot
【0202】
2wplvに脾細胞を摘出し、IFN−γ ELISpotプレート(ベクトン・ディッキンソン)に1ウェル当たり30万個及び15万個の脾細胞を蒔いた。該脾細胞を、培地、20μMの特異的CTLペプチド(HIV−1 IIIB gag タンパク質由来の、H2−Kdで制限されたAMQMLKETI)、20μMの無関係ペプチド(インフルエンザ核タンパク質由来の、H2−Kdで制限されたTYQRTRALV)、20μMの特異的ヘルパーペプチド(HIV−1 IIIB gagタンパク質由来の、H2−dで制限されたNPPIPVGEIYKRWULGLNK)または1μg/mlのconA(陽性対照として)の存在下で再刺激した。ペプチドは、バイオシンセシス社(Biosynthesis, Inc)によって純度95%以上で合成された。20時間のインキュベーション後、メーカーの使用説明書に従ってELISpotを行い、イムノスポットアナライザ(C.T.L.)を用いて数を数え、CTL及びヘルパー免疫優勢エピトープに関して脾細胞100万個当たりのスポットの数をグラフに描いた。
【0203】
フローサイトメトリー
【0204】
脾細胞をgag四量体(H2−Kd+AMQMLKETI,ベックマン・コールター)並びに抗CD8、抗CD62L及び抗CD197抗体(ベクトン・ディッキンソン)で染色した。生細胞(インビトロジェン社のLIVE/DEAD(登録商標)固定可能色素を用いることによって示されるような)が得られ、それをLSRIIフローサイトメータで実行するFACSDiva(登録商標)ソフトウェア(ベクトン・ディッキンソン)を用いて解析した。
【0205】
インビボ細胞傷害性Tリンパ球(CTL)アッセイ
【0206】
メーカーの使用説明書に従って、標的細胞(ナイーブ,同種マウス由来の脾細胞)を緑色(インビトロジェン社製Vybrant CFDA SE Cell Tracer Kit)または紫色(インビトロジェン社製CellTrace Violet Cell Proliferation Kit)に蛍光標識した。細胞を洗浄し、その後、それぞれ20μMの特異的CTLまたは無関係ペプチドで2時間パルスした。標的細胞を混合し、ワクチン接種された動物1匹当たり100万個の細胞を注射した。一晩(20時間)のインビボ屠殺後、脾細胞を収集し、フローサイトメトリー法を用いて目標回復について分析した。回収された標的細胞が100未満であるサンプルをプロットする。
【0207】
統計分析
【0208】
集積されたデータに対して、t−検定(両側、対応のない、分散の異なる2標本)を用いて、元のワクチン(健康なマウスにおける0.2Lm−gag P+B)が、住血吸虫症に感染したマウスにおける前記ワクチン接種ストラテジーのいずれかと異なるかどうかを判定した。CTLエピトープ及びヘルパーエピトープの値を比較した。p値を表1に示す。
【0209】
実施例1:慢性寄生蠕虫感染症のモデルにおけるワクチンの有効性
【0210】
リステリアベクターワクチンをワクチン接種する前に、慢性寄生蠕虫感染症のモデルとしてのマウスに慢性マンソン住血吸虫感染症を感染させた(図1)。慢性寄生蠕虫感染症の顕著な兆候は、この実験を通じて使用される慢性住血吸虫症モデルにおいて観察される、免疫系のTh2バイアスである(図2)。リステリアHIV−1をワクチン接種された寄生蠕虫感染マウスは、寄生蠕虫感染症を有するまたは有さないグループと比較した場合、IFN−γ産生の減少、並びにIL−4及びIL−10レベルの増加によって示されるように、Th2バイアスされ、免疫抑制される。
【0211】
実施例2:Th1T細胞免疫応答の寄生蠕虫感染介在性抑制にも関わらず、リステリアベクターはTh1T細胞免疫応答を駆動することができる
【0212】
Th2に対する全身性バイアスにも関わらず、IFN−γ応答の減少(図3)、並びにL−4及びIL−10産生の増加(図4及び5)から明らかなように、IFN−γの抗原特異的産生は変化しない(図6)、このことは、このワクチンが、Th2環境下で機能的な細胞介在性免疫応答を生成することができることを示す。この観察結果は、リステリアベクターワクチンが、寄生蠕虫に感染した対象におけるワクチン特異的免疫応答を駆動することができることを示唆する。さらに、寄生蠕虫感染症が高度に蔓延しているサハラ以南のアフリカの人々に対して投与するための新世代のHIV−1、マラリアまたはTBワクチンの開発にリステリアベクターを用いることを検討するべきである。
【0213】
実施例3:マンソン住血吸虫症感染マウスへのリステリアベクターHIV−1gagワクチンの投与により、HIV−1gagCTL及びTヘルパーエピトープに対する著しい免疫応答を駆動する
【0214】
0.2LD50のLmgagの単回腹腔内ワクチン接種、または0.1LD50のLmgagのプライムブーストワクチン接種の両方により、HIV−1gagCTL及びTヘルパーエピトープに対する著しい免疫応答が誘起される。この免疫応答は、プライムブーストワクチン接種プロトコルを用いて、マンソン住血吸虫症に感染していないマウスに0.1LD50のLmgagをワクチン接種した場合の免疫応答と同様な免疫応答である(図7)。
【0215】
加えて、プライムブーストプロトコルによる100LD50(10LD50ではない)のLmgagの経口投与により、gagヘルパー(gagCTLではない)に対する免疫応答が誘起される。この免疫応答は、プライムブーストワクチン接種プロトコルを用いて、マンソン住血吸虫症に感染していないマウスにLmgagを腹腔内ワクチン接種または経口ワクチン接種した場合に誘起される免疫応答と同様な免疫応答である(図8)。
【0216】
全てのグループは対照A(陽性対照)に対する強力な免疫応答を示し、媒体または無関係な抗原に対する免疫応答を示すグループはなかった(図8)。加えて、プライムブーストプロトコルを用いてLm−E7(HIVgagの代わりにヒト・パピローマウイルスE7抗原を含んでいる)をワクチン接種されたマウスは、予想通り、gagCTLまたはgagヘルパーで再刺激したときに免疫応答を示さなかった(図9)。
【0217】
そのため、寄生蠕虫、寄生虫、マンソン住血吸虫症に慢性感染しているマウスへのリステリアベクター・HIV−1gagワクチンの投与により、以下にさらに示すように、HIV−1gagCTL及びTヘルパーエピトープに対する著しい免疫応答が駆動される。この観察結果は、リステリアベクターワクチンが、寄生蠕虫に感染している対象におけるワクチン特異的免疫応答を駆動することができることを示唆する。このことは、寄生蠕虫感染症が高度に蔓延しているサハラ以南のアフリカの対象に対して投与するための新生代のHIV−1、マラリア、TBワクチンの開発にリステリアベクターを用いることの可能性を広げる。
【0218】
表1。統計的分析。住血吸虫症感染マウスにおけるワクチンストラテジーのP値。
【0219】
【表1】
【0220】
例4:寄生蠕虫感染症におけるリステリアベクターHIVワクチンの有効性
【0221】
図11に示すように、リステリアベクターHIVワクチンは、慢性寄生蠕虫感染症の罹患中に、免疫優勢CTL(図11A)及びヘルパー(図11B)エピトープに対する抗原特異的ワクチン応答を誘起する。全てのグループについて、脾細胞は媒体及び無関係ペプチド(NP)に対して無反応であったが、全てのマウスは、陽性対照(対照A)に対して反応した。データは、3つの独立した実験を含んでおり、グループ(5〜19)毎の動物の総数が示されている(図11、左上)。2つの反応性グループ(Lmgag、±住血吸虫症)を互いに比較した場合、有意差は見られなかった。
【0222】
ワクチン用量及び投与計画を変更しても、免疫優勢エピトープに対するワクチン応答は変化しなかった(図12)。慢性住血吸虫症に罹患している動物へのワクチン接種については、ワクチン用量を0.1LD50(0.1と表記する)まで低くするか、またはブーストを除去するためにスケジュールを変更してプライムのみのワクチンストラテジー(プライムのみはPと表記する)にした。反応性(非対照)グループ間のCTLエピトープに対する応答を比較した場合、有意差は見られなかった。
【0223】
例5:細胞介在性免疫応答の一部であるエフェクター細胞の応答は持続性を有し、かつ既存の慢性寄生蠕虫感染症により変化しない
【0224】
最後のワクチン接種の数か月後、エフェクターCTL細胞(図13A)による免疫優勢エピトープに対する応答は、慢性寄生蠕虫感染症に対する応答間で異ならない。最後のワクチン接種後の様々な時点でマウスを屠殺し、住血吸虫症に感染しているマウス及び感染していないマウスの免疫優勢CTL(図13A)及びヘルパー(図13B)エピトープに対する応答を分析した。免疫優勢CTLエピトープに対するエフェクター細胞の応答については(図13A)、±住血吸虫症を各時点で比較した場合、有意差は見られなかった。このことは、グループ間で、エフェクター細胞のワクチンに対する応答が経時的に変化しないことを示す。ヘルパーエピトープに対するTh1応答については(図13B)、±住血吸虫症を各時点で比較した場合に差異が見られたが、これらの差異は機能性ワクチンメモリ応答に無関係である。
【0225】
実施例6:住血吸虫感染症の存在下で抗原特異的CD8+T細胞が生成され、未感染の場合と同程度のレベルで数か月間存続する。
【0226】
抗原特異的CD8+T細胞から生じたELISpotの結果において見られるIFN−γ応答を確認するために、フローサイトメトリー法を用いて、脾細胞を、MHC分子によって提示されたワクチンエピトープに対するTCRの分子特異性について分析した。簡単に説明すると、脾細胞を抗CD8抗体で染色し、gag四量体及び生細胞を取得し、そして、CD8+対象における四量体ポジティブ染色について分析した(図14)。所定の時点でグループ間を比較した場合は有意差が見られなかったが、同一のグループを2つの互いに異なる時点で比較した場合は差異が見られた。
【0227】
実施例7:リステリアHIV−1ワクチンによる免疫学的メモリーの誘起
【0228】
フローサイトメトリー法を用いて、脾細胞を免疫学的メモリーについて分析した(図15)。簡単に説明すると、脾細胞を、gag四量体及び抗CD8、抗CD62L及び抗CD197抗体で染色した。生細胞を取得し、セントラルメモリー(CD62L+、CD197+)、エフェクターメモリー(CD62L−、CD197−)、及び分子特異性(CD8+、四量体+)について分析した。CD44はマーカーとして使用しないので、エフェクターメモリー部分はエフェクター細胞も含むため、これらの結果はプロットしない。しかし、14wplvでの全ての四量体+細胞は、セントラルメモリーであった。セントラルメモリーT細胞は、ワクチン接種後数か月間で増加し、その期間では、住血吸虫症に感染しているグループにおいて差異が存在した。
【0229】
実施例8:Th2環境におけるリステリアHIV−1ワクチンによる機能性エフェクター細胞の誘起
【0230】
エフェクター細胞の機能を分析するために、インビトロCTL分析を実施した。簡単に説明すると、ワクチン接種した動物に、100万個の標的細胞(特異的または無関係ペプチドでパルスした、それぞれ緑色または紫色に染色した)を静脈内注射した(図16A)。インビボ屠殺の一晩後、脾細胞を収集し、フローサイトメトリー法を用いて目標回復について分析し、そして、gag特異的屠殺を計算した(図16B)。Lmgagをワクチン接種された慢性住血吸虫症を有するグループと有さないグループとの間に有意差は見られなかった。このことは、ワクチン応答は、寄生蠕虫感染マウスにおいて、未感染マウスの場合と同程度の効果があることを示す。
【0231】
実施例9:誘起されたリステリアHIV−1ワクチン応答は、その後の住血吸虫感染によって変化する。
【0232】
免疫応答は、既存の寄生蠕虫感染症によって変化しないことを示したが、ワクチン接種後に寄生蠕虫感染症が発生した場合にワクチン応答が変化するか否かを調べることは重要である。このことに対処するため、実験の時系列を変更し、慢性寄生蠕虫感染症に罹患する前にワクチン接種した(図17A)。住血吸虫感染症後の様々な時点でマウスを屠殺し、免疫優勢CTL(図17B)及びヘルパー(図17C)エピトープに対する応答を分析した。ヘルパーペプチドに対する応答は変化しないが、住血吸虫感染症に罹患する前にワクチン接種すると、免疫系がTH2バイアスにシフトするにつれてCTL応答が低下する。しかし、住血吸虫症感染マウスによるワクチン応答は、寄生蠕虫感染症の2回目のブースト及び/またはプラジカンテル治療後に回復する。さらに、リステリアベクターワクチンは、メモリー応答を生成する。
【0233】
以上、本発明のいくつかの特徴を説明したが、様々な改変、置換、変形及び均等物が当業者により実施可能である。したがって、添付した特許請求の範囲は、本発明の要旨に含まれる限り、そのような改変及び変形の全て包含することを意図していると理解するべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17