(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981447
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】流体輸送システム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20160818BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
G01N1/00 101G
G01N1/22 X
G01N1/22 S
G01N1/00 101H
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-545351(P2013-545351)
(86)(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公表番号】特表2014-505865(P2014-505865A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】EP2011073557
(87)【国際公開番号】WO2012085061
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2013年9月6日
(31)【優先権主張番号】10196286.8
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504084373
【氏名又は名称】シンヴェント・アクシェセルスカープ
【氏名又は名称原語表記】SINVENT AS
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(72)【発明者】
【氏名】スレッタ,ハヴァード
(72)【発明者】
【氏名】エインブ,アスラック
(72)【発明者】
【氏名】ザウルセン,コルビン
(72)【発明者】
【氏名】ウィットゲンズ,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ウインベルグ,アスゲイル
(72)【発明者】
【氏名】ウィーグ,パー オスカー
【審査官】
土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−129961(JP,A)
【文献】
特開2000−206015(JP,A)
【文献】
特開昭54−145186(JP,A)
【文献】
特開2005−172829(JP,A)
【文献】
特開昭62−083660(JP,A)
【文献】
特開2005−304689(JP,A)
【文献】
特開平08−262000(JP,A)
【文献】
特開平09−304375(JP,A)
【文献】
特開2004−301701(JP,A)
【文献】
特開平11−056341(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0139399(US,A1)
【文献】
特開平11−304671(JP,A)
【文献】
特開2003−035655(JP,A)
【文献】
米国特許第04198862(US,A)
【文献】
特開平06−258204(JP,A)
【文献】
米国特許第05723093(US,A)
【文献】
米国特許第04007638(US,A)
【文献】
長谷潮 他,高親水表面を利用した改良インピンジャー捕集法とこれを用いたクリーンルーム空気中の酸性,塩基性汚染物質,エアロゾル研究,日本,日本エアロゾル学会,2002年,Vol. 17, No. 2,pp.83-88
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00〜1/44、30/00〜30/96、33/48〜33/98、35/00〜37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体源から液体サンプル分析器またはバイアルに液体サンプルを輸送するための流体輸送システムであって、
前記液体源と前記液体サンプル分析器または前記バイアルとをつなぐ毛管を備え、
前記システムは、使用の際に、前記毛管を通じて液体が前記液体源から前記液体サンプル分析器または前記バイアルに流れるように構成され、
前記毛管は、前記液体源と前記液体サンプル分析器または前記バイアルとの間にループ回路を形成し、
前記システムは、更に、前記液体サンプルを前記毛管に送り込むための手段を更に備え、
前記液体サンプルは、凝縮物であり、前記液体源は、凝縮器であり、
前記液体サンプル分析器または前記バイアルの下流に設置されたタンクを備え、
前記システムは、使用の際に、前記システムのなかの余分な凝縮物が前記タンクに輸送され、それによって、前記凝縮器内における凝縮物のレベルが制御されるように構成されるシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記毛管線を通って輸送される前記液体サンプルの体積は、前記液体源内における液体の体積と比べて小さい、システム。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれか一項に記載のシステムであって、
液体は、前記液体源から前記液体サンプル分析器または前記バイアルに連続的に流れる、システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記バイアルは、自動注入用のバイアルである、システム。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記自動注入用のバイアルは、フロースルーセルである、システム。
【請求項6】
請求項1ないし5に記載のシステムであって、
前記バイアルは、前記液体サンプル分析器に前記液体サンプルを注入するためのバイアスである、システム。
【請求項7】
請求項1ないし5に記載のシステムであって、
前記バイアルは、分別コレクタにつながれる、システム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記凝縮器は、0℃未満の温度で運転される、システム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムであって、
前記液体サンプルは、前記凝縮器のなかで形成される氷を断続的に溶解させることによって得られる、システム。
【請求項10】
液体源から液体サンプル分析器またはバイアルに液体サンプルを輸送するための流体輸送システムであって、
前記液体源と前記液体サンプル分析器または前記バイアルとをつなぐ毛管を備え、
前記システムは、使用の際に、前記毛管を通じて液体が前記液体源から前記液体サンプル分析器または前記バイアルに流れるように構成され、
前記毛管は、前記液体源と前記液体サンプル分析器または前記バイアルとの間にループ回路を形成し、
前記システムは、更に、前記液体サンプルを前記毛管に送り込むための手段を更に備え、
前記液体サンプルは、分析対象のガスを吸収した吸収溶液であり、
更に、
前記システムからの廃棄吸収剤を収集するための、前記液体分析器の下流に設置されたタンクと、
新鮮な吸収剤の供給源と、
を備え、前記システムは、使用の際に、前記液体源内における前記吸収溶液の滞留時間が制御されるように、新鮮な吸収剤が前記システムに供給され、廃棄吸収剤が前記システムから除去されるように構成される、システム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、
前記新鮮な吸収剤は、不活性内部標準を含む、システム。
【請求項12】
連続オンラインサンプル監視プロセスにおける、請求項1ないし11のいずれか一項に記載のシステムの使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、流体分析に関するものであり、より具体的には、遠隔液体サンプル分析器によって液体サンプル分析を実施するための流体輸送システムに関するものである。
【0002】
ガス排出の分析は、例えば大規模なCO
2捕集設備によって大気中に放出される処理済みガスのなかの有害成分の排出可能性を監視及び制御するために、不可欠である。しかしながら、このような分析は、ややこしくなる恐れがある。例えば、ガスマトリックスは、多くはあまり知られていない成分である分析物が、低い又は非常に低い濃度で多数存在する可能性ゆえに、複雑になると考えられる。このような挑戦に加えて、排ガスクリーニングシステム(例えばアミン吸収体)から排出されるガスは、水で飽和され、着目分析物を含むエアロゾル及びドロップレットを含有しており、これは、更には、ガスの全水分含有量をいっそう高くする要因になる。
【0003】
排出ガス内における非常に低い濃度の成分の存在は、ガス排出の監視にとって、大きな挑戦である。各排ガス処理システムは、異なる着目成分リストを有する。例えば、各アミン溶媒システムは、幾つかの着目成分を有しており、したがって、分析物として、アミン及びアミン分解産物などの多数の可能性が考えられる。現時点では、アミンベースの捕集設備からの排出物のなかに存在する大半の着目化合物を対象とした、標準化された測定方法体系がない。
【0004】
ppm未満の濃度範囲で存在する異なる成分を大量に含有した湿ったガスは、オンラインガス監視にとって、未解決の挑戦である。総じて、今日の、ガス分析用のオンライン器具類は、代表的なサンプルの抽出に対する需要及びそのようなケースで必要とされる低い検出限界に見合っていない。微量ガスの測定を行うために使用されるオンライン分析器などの、オンラインガス分析用として最も容易に入手可能な器具類は、上手く機能するために、比較的乾いたガスを必要とする。湿ったガスによって引き起こされる問題を克服する一般的なやり方は、分析に先立って、湿ったガスを乾燥させることである。これは、水を復水させるために、ガスを冷却することによって達成することができる。しかしながら、これは、形成された凝縮物のなかに、水溶性成分を存在させる結果になり、着目分析物が、形成された凝縮物のなかに見失われるゆえに、乾いたガスの分析を不完全なものにする。
【0005】
ガスを乾燥させるやり方に代わるのは、分析器内における液体の凝縮を回避するために、ガスを露点よりも十分に高い温度に加熱することである。サンプル採取されたガスを露点よりも高い温度に加熱することは、困難だと考えられる。サンプル採取及び分析の最中におけるガスサンプルの加熱は、人工産物の形成又はこれらのサンプルの分解などの、化学的変化を誘発する可能性がある。また、オンラインのサンプル採取及び分析のための市販の溶液は、あまり知られていない微量成分の検出及び定量化に関し、かなりの限界がある。
【0006】
手動のガス排出測定の一般的法は、既知の体積を有する空気が吸収剤の溶液に又は吸着剤に送り込まれる不連続測定法によるものである。固体の吸着剤は、適切に機能するためには乾いたガスを必要とし、したがって、分析前にガスを乾燥させない分析には適さない。吸収溶液による手動のガスサンプル採取及び分析は、湿ったガス、及びドロップレット又はエアロゾルの存在を扱うことができる。手動のガスサンプル採取の一般的方法は、インピンジャトレイン内にガスを吸収させることによる。手動のガスサンプル採取及び分析では、吸収溶液は、ガスのサンプル採取後に化学分析に送られ、サンプル採取されたガス
体積に相対的な吸収溶液内における濃度をもとに、様々な成分の濃度が算出される。吸着剤を使用する場合は、ガスは、吸着剤に対するサンプル採取に先立って、冷却によって乾燥されるのが通常であり、その結果、サンプル採取されたガスのなかに、着目される水溶性成分を含有した凝縮物が形成される。
【0007】
したがって、ガスを乾燥させる際に形成される凝縮物の分析を可能にするような、液体分析システムが必要とされる。具体的には、分析物を低濃度で検出することができる、自動化されたオンラインのシステムが必要とされる。
【0008】
本発明にしたがって、液体源から遠隔液体サンプル分析器に液体サンプルを輸送するための流体輸送システムであって、液体源と液体サンプル分析器とをつなぐ毛管を含み、使用の際に、毛管を通じて液体が液体源から液体分析器に流れるように構成されたシステムが提供される。
【0009】
毛管は、液体を液体源から液体サンプル分析器に一方向のみに輸送することができる、或いは、毛管は、ループ回路を形成し、分析器に輸送される液体の一部又は全部を液体源に戻すことができる。
【0010】
本発明にしたがった液体輸送システムは、本明細書では、「高速ループ」とも呼ばれ、本明細書では、これら2つの用語が区別なく使用される。液体分析器は、1つ以上の高速ループにつなぐことができる。
【0011】
好ましくは、高速ループは、液体サンプルを毛管に送り込むためのポンプ手段を含む。ポンプ手段の使用は、液体サンプルが比較的高い流速で毛管を循環することを可能にする。毛管を流れる高い循環速度は、高速の応答時間を可能にする。これは、必要とされる応答時間に応じ、液体分析器が、液体源から10メートル未満から数百メートルまでの距離に離して設置されてよいことを意味する。
【0012】
毛管の使用は、液体源リザーバと比べて比較的小さい体積での液体のサンプル採取を可能にする。これは、重いシステムコンポーネントを全て遠くに離して設置された、比較的コンパクトなサンプル採取ユニットを可能にする。
【0013】
長い毛管線の使用は、液体源リザーバから遠くに離して設置された液体サンプル分析器に液体サンプルが輸送されることを可能にする。液体ポンプやガスポンプ、及びガス流量計を含む重いアクセサリ、並びに液体分析器自体が、ガスサンプル採取器又はガスサンプル採取場所から遠くに離して設置することができる。ガスサンプル採取ユニットは、したがって、重さ及び空間に関する要件が比較的少なくてすむ。これは、排ガスサンプル採取からの液体サンプル源の付近に分析機器を設置することが望ましくない状況において有利である。
【0014】
好ましくは、液体は、液体源から液体サンプル分析器に連続的に流れる。これは、液体の連続オンライン分析を可能にし、システムにおける断続的な流れが回避される。
【0015】
流体輸送システムは、毛管から分析器にサンプルを注入するのに適したバイアル又はサンプルバルブを含むことができる。自動サンプル採取を可能にするためには、バイアスは、好ましくは自動注入バイアルである。このようなバイアルは、任意の標準的な自動注入トレイに又は自動化された液体分析器の分別コレクタに容易に適合させることができる。好ましくは、自動注入バイアルは、液体を連続的に流れさせることができるフロースルーセルである。
【0016】
高速ループは、自動サンプル採取器などの、当該分野で知られる自動化されたサンプル採取手段が利用可能である限り、分析器自体の変更を伴うことなく液体分析用の様々なタイプの機器と併用することができる。バイアルからの液体は、その他の手段によるその後の分析に備えて、又はもし分析用の機器が存在しないならば、オフライン分析を実施するために、分別コレクタのなかで自動的にサンプル採取することもできる。
【0017】
液体サンプルは、凝縮物であってよい。凝縮物は、連続運転される凝縮器を通じて生成することができる。これは、高速ループが、湿ったガスの乾燥時に形成される任意の凝縮物の分析を実施するために使用されてよいことを意味する。この適用は、本明細書では、「コールドトラップ」と呼ばれる。高速ループは、凝縮物のオンライン監視を可能にするが、この方法は、手動のサンプル採取及び分析にも適している。コールドトラップは、ガス加熱及び熱分解を回避し、これは、水分含水量が高いエアロゾル及びドロップレットの代表的なサンプル採取及び分析を可能にする。高速ループのこの適用によれば、たとえガスの水分含有量が高くても、複雑なガスマトリックスにおいて非常に低い検出限界を実現することができる。更に、着目成分が全て水溶性成分であるときは、凝縮物のこの監視は、水の大半を除去することができる最適な凝縮器を使用したときに、十分なガス分析を提供することができるだろう。
【0018】
高速ループのこの適用における凝縮物の分析は、検出限界を非常に低くできる可能性を有する。この適用は、未知の成分を特定するために、液体/ガスクロマトグラフィ質量分析法(LC−MS/GC−MS)を使用することができ、しかしながら、この構成は、オンライン又は手動の液体分析用として考えられる広範囲の方法体系を可能にする。凝縮物サンプルは、サンプルの誘導体化、濃縮、毒性テスト、調製(コールド)、又は保存などの多くの液体分析方法を使用して分析することができる。
【0019】
システムは、更に、高速ループのなかで液体サンプル分析器の下流に設置されたタンクを含むことができ、システムは、その使用の際に、システムのなかのあらゆる余分な凝縮物が毛管を通じてタンクに輸送され、それによって、凝縮器内における凝縮物のレベルが制御されるように構成される。したがって、この適用によれば、高速ループは、凝縮器のなかに蓄積された液体を抜き出して凝縮器内における液体レベルを制御することによって凝縮物の連続分析を実施するために、使用することができる。
【0020】
凝縮器は、0℃未満の温度で運転することができる。したがって、凝縮器は、装置のなかで実際に実現可能な任意の温度で運転することができる。凝縮器のなかで氷が形成されるケースでは、液体サンプルは、例えば凝縮器に搭載された加熱コイルによって氷を断続的に溶解させることによって得ることができる。
【0021】
液体サンプルは、吸収溶液であってよい。これは、高速ループが、任意の吸収液のオンライン分析を実施するために使用されてよいことを意味しており、ただし、この方法は、手動のサンプル採取及び分析にも適している。この高速ループの適用には、分析前におけるガスの加熱を回避できるという利点があり、したがって、熱反応に起因するサンプル内における化学的変化の可能性が阻止される。
【0022】
システムは、更に、システムからの廃棄吸収剤を収集するための、液体分析器の下流に設置されたタンクと、新鮮な吸収剤の供給源とを含むことができる。液体源内における吸収溶液の滞留時間が制御されるように、新鮮な吸収剤は、廃棄吸収剤がシステムから除去される間に、連続的に又は回分式に高速ループに供給することができる。したがって、インピンジャの液体の体積は、余分な液体を廃棄用タンクに引き出すことによって一定の体積に維持することができる。引き出される余分な液体の体積は、プロセスのなかで監視することができる。
【0023】
新鮮な吸収剤の追加及び使用済み吸収剤の抜き出しを制御式に行うことによって、吸収溶液の滞留時間を制御することができ、このようにして、ガス分析における検出限界を制御することができる(より長い滞留時間は、より低い検出限界を可能にする)。長い滞留時間は、このようにして、サンプル採取されているガスのなかに存在する成分の検出限界を極めて低くすることができる。したがって、高速ループのこの適用によって、吸収溶液の分析は、自動化された、連続で、且つオンラインのものになるだろう。
【0024】
新鮮な吸収剤用のリザーバ及び廃棄用のタンク、並びに任意の関連のアクセサリは、インピンジャから遠くに離して分析器の近くに設置することができる。
【0025】
インピンジャ内における、サンプル採取されたガスのなかに存在する水の凝縮は、時間の経過とともに、吸収溶液の体積の増大に寄与する可能性がある。吸収媒質の希釈を完全に制御するために、吸収溶液のなかに、不活性内部標準を使用することができる。液体分析器は、監視されているガス濃度の算出における媒質の希釈を調整するために、内部標準の濃度を連続的に監視することができる。
【0026】
また、高速ループによる分析の原理は、例えばプロセスリアクタからなどの任意の液体サンプルの分析に適用することができる。
【0027】
次に、添付の図面を参照にして、本発明にしたがったシステムの例が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明にしたがった流体輸送システム又は高速ループを表した概略図である。
【
図2A】本発明にしたがったシステムで使用することができる自動注入バイアルを表した概略図である。
【
図2B-2C】自動注入バイアルの例を示した図である。
【
図3】高速ループのコールドトラップ適用を表した概略図である。
【
図4】等速ガスサンプル採取を伴っているコールドトラップを表した概略図である。
【
図5】吸収溶液によるガス分析への高速ループの適用を表した概略図である。
【
図6A-6C】オンラインガスサンプル採取ユニットのプロトタイプを示した図である。
【
図7】ガスサンプル採取ユニットのプロトタイプを使用して時間の関数として検出されたモノエタノールアミンの濃度を示した図である。
【0029】
流体輸送システムを表した概略が、
図1に示されている。分析される液体は、液体リザーバ又は液体源10のなかに含有されている。液体サンプル分析器又はサンプルコレクタ20が、液体源10から10メートル未満から数百メートルまでの距離に離して遠くに設置される。分析器20は、液体クロマトグラフィ質量分析法(LC−MS)などの、液体分析に適した任意の分析ユニットであってよい。分析器20は、液体のオンライン分析を実施するために、自動化することができる。
【0030】
液体サンプルは、液体源10と分析器20とをつないでいる長い毛管線30を通って液体源10から分析器20に流れる。液体は、重力の作用を受けて又は毛管現象によって重力に逆らって毛管30を流れることができる。システムは、液体サンプルを毛管30に送り込むためのポンプ手段(不図示)を含むことができる。
【0031】
毛管30は、液体を液体源10から分析器20に一方向のみに輸送することができる、
或いは、毛管10は、
図1に示されるようにループ回路を形成し、分析器20に輸送される液体の一部又は全部を液体源10に戻すことができる。
【0032】
高速ループには、サンプル採取バイアル40を提供することができる。毛管30から分析器20にサンプルを注入するのに適した任意のバイアル40が使用されてよく、ただし、自動サンプル採取を可能にするためには、自動注入バイアルが好ましいとされる。好ましくは、自動注入バイアルは、液体を連続的に流れさせることができるフロースルーセルである。
【0033】
図2Aは、本発明にしたがった高速ループの一部を形成することができる自動注入バイアル40を表した概略図である。バイアルは、標準的な自動注入バイアルのサイズを有することができる。液体は、標準的な自動注入バイアルにおいて実施されるように、針で上蓋を刺すことによって、バイアルによってサンプル採取することができる。もしバイアルが、フロースルーセルであるならば、高速ループを流れる全ての液体が、バイアルを通る。バイアルは、
図2Cに示されるように、任意の標準的な自動注入トレイに又は自動化された液体分析器の分別コレクタに適合させることができる。
【0034】
高速ループは、自動サンプル採取器などの、当該分野で知られる自動化されたサンプル採取手段が利用可能である限り、分析器20自体の変更を伴うことなく液体分析用の様々なタイプの機器と併用することができる。バイアル40からの液体は、その他の手段によるその後の分析に備えて、又はもし分析用の機器が存在しないならば、オフライン分析を実施するために、分別コレクタのなかで自動的にサンプル採取することもできる。
【0035】
高速ループ分析は、例えばプロセスリアクタからなどの、任意の液体サンプルの分析に適用されてよいことがわかるだろう。高速ループによる液体分析の、特に有用な適用は、湿ったガスが乾燥される際に形成される凝縮物の、好ましくはオンラインでの分析である。
【0036】
図3は、ここではコールドトラップとも呼ばれる高速ループを使用したガス分析適用を表した概略図を示している。この適用では、液体源10は、凝縮器である。湿ったガスが、凝縮器10に流れ込み、そこで、冷却され凝縮される。乾いたガスが、凝縮器から流れ出て、乾燥ガス分析器(不図示)に入る一方で、形成された凝縮物は、凝縮器の底部で収集される。
【0037】
図1で説明されたような高速ループを使用して、凝縮物からの液体サンプルが分析される。好ましくは、コールドトラップは、分析がオンラインで実施されるように、自動化されている。
【0038】
凝縮器は、0℃未満の温度を含む、装置のなかで実際に実現可能な任意の温度で運転することができる。凝縮器のなかで氷が形成されるケースにおける液体サンプル採取は、氷を溶解させることによって実施することができる。好ましくは、氷の溶解は、例えば凝縮器に搭載された加熱コイルなどの任意の適切な手段によって、断続的に行うことができる。
【0039】
コールドトラップは、液体サンプル分析器20の下流に設置されたタンク50を更に含むことができる。システムが使用されるときは、システムのなかのあらゆる余分な凝縮物が毛管30を通じてタンク50に輸送され、それによって、凝縮器10内における凝縮物のレベルが制御される。したがって、この適用によれば、高速ループは、凝縮器10のなかに蓄積された液体を抜き出して凝縮器内における液体レベルを制御することによって凝縮物の連続分析を実施するために、使用することができる。
【0040】
タンク50及び任意の関連のアクセサリは、凝縮器10から遠くに離して分析器20の近くに設置することができる。
図3に示された実施形態では、毛管30は、ループ回路を形成し、液体は、凝縮器10に戻される。或いは、高速ループは、一方向の液体を連続的に抜き出して分析器に送ることができるように構成することができる(図示されていない実施形態)。
【0041】
湿ったガスのなかに存在する水溶性成分を、吸収媒質の存在を伴うことなく分析することは、サンプルの誘導体化、濃縮、毒性テスト、又は(コールド)調製などの、更なる化学分析技術を可能にする。着目成分が全て水溶性成分であるときは、凝縮物のこのような監視は、水の大半を除去することができる最適な凝縮器を使用したときに、十分なガス分析を提供する。
【0042】
高速ループのこの適用における凝縮物の分析は、検出限界を非常に低くできる可能性を有する。この適用は、未知の成分を特定するために、液体/ガスクロマトグラフィ質量分析法(LC−MS/GC−MS)を使用することができ、しかしながら、この構成は、オンライン又は手動の液体分析用として考えられる広範囲の方法体系を可能にする。
【0043】
図4は、上述のコールドトラップの別の適用を示している。分析されるガスは、冷却吸引管6を通じてパイプから抽出することができる。ノズル5は、吸引管6にガスが入る際の、そのガスの流量を制御するために使用することができる。ドロップレットと、エアロゾルと、形成された凝縮物とを含有した湿ったガスは、凝縮器10に流れ込む。凝縮器10は、ガスを、同じ温度に又はサンプル採取温度に冷却する又は維持する。凝縮器10からの乾いたガス流は、次いで、等速測定を実施するために異なる流量要件を伴っている異なる分析器8、9に到達するために、凝縮器10の下流で分けられる。
【0044】
高温で且つ湿ったガスをサンプル採取するときは、吸引管6から開始する二段階の冷却が、凝縮器10から逃げる恐れがある霧の形成を防ぐことができる。また、凝縮器の下流のデミスタが、逃げるドロップレットを除去することができる。この目的にとって現実的な選択肢の凝縮器としては、自動化された凝縮物収集を伴っている標準的なペルチェ冷却ドライヤが挙げられるだろう。
【0045】
本発明にしたがった流体輸送システムのなかの液体は、吸収溶液であってよい。
図5は、吸収溶液によるガス分析への高速ループの適用を示している。この適用では、液体源10は、吸収溶液を含むガスサンプル採取器又はインピンジャである。吸収溶液の液体サンプルは、
図1で説明されたような高速ループを使用して分析される。新鮮な吸収剤は、新鮮な吸収剤用のリザーバ70から高速ループに連続的に又は回分式に供給され、使用済みの廃棄吸収剤は、廃棄用のタンク80への抜き出すことによってシステムから除去される。したがって、インピンジャ10の液体体積は、余分な液体を廃棄用タンク80に引き出すことによって一定の体積に維持される。引き出される余分な液体の体積は、プロセスのなかで監視することができる。
【0046】
新鮮な吸収剤用のリザーバ及び廃棄用のタンク80、並びに任意の関連のアクセサリは、インピンジャ10から遠くに離して分析器20の近くに設置することができる。液体ポンプやガスポンプ、及びガス流量計を含む重いアクセサリ(不図示)、並びに液体分析器20自体が、ガスサンプル採取器10又はガスサンプル採取場所から遠くに離して設置することができる。ガスサンプル採取ユニットは、したがって、重さ及び空間に関する要件が比較的少なくてすむ。
【0047】
インピンジャ10内における、サンプル採取されたガスのなかに存在する水の凝縮は、
時間の経過とともに、吸収溶液の体積の増大に寄与する可能性がある。吸収媒質の希釈を完全に制御するために、吸収溶液のなかに、内部標準を使用することができる。液体分析器20は、監視されているガス濃度の算出における媒質の希釈を調整するために、内部標準の濃度を連続的に監視することができる。
【0048】
新鮮な吸収剤の投入率及び廃棄液の抜き出し率を制御することによって、ガスサンプル採取器内における液体の滞留時間を制御することができる。長い滞留時間は、このようにして、サンプル採取されているガスのなかに存在する成分の検出限界を極めて低くすることができる。したがって、高速ループのこの適用によって、吸収溶液の分析は、自動化された、連続で、且つオンラインのものになるだろう。
【0049】
サンプル採取されたガス流のなかに存在するドロップレット及びエアロゾルの代表的なサンプル採取を、ドロップレットの粒子サイズに関係なく得るために、ガスは、等速に、すなわち本流と同じ速度でサンプル採取することができる。これは、サンプル採取温度におけるガス速度の自動測定結果をもとに、サンプル採取されるガス体積流を調整することによって得ることができる。
【0050】
図6A〜6Cは、本発明にしたがった高速ループを使用したLC−MSによるオンラインガス分析用に開発された、プロトタイプを示している。このプロトライプを使用して、実験が行われた。これらの実験は、遠くに離して設置されたLC−MS分析器が、吸収剤コラムから出てきたガスのなかに存在する低濃度のモノエタノールアミン(MEA)を数分の応答時間で検出可能であったことを示した。
図7は、検出されたMEAの濃度を時間の関数で示している。
【0051】
高速ループの流量を増大させること又はガスサンプル採取ユニットの構成を調節することによって応答時間を最適化させる試みが実験中になされなかったことが、留意されるべきである。インピンジャ内における連続吸収溶液の滞留時間を長くすることによって、たとえ水分含有量が高く尚且つエアロゾル及びドロップレットを伴っているガスにおいても極めて低い検出限界が実現可能であることがわかる。