【文献】
林 真輔、外2名,「NiとCを緻密化助剤に用いた常圧焼結TiB2-B4C複合体」,Journal of the Ceramic Society of Japan,1993年,vol.101,p.154-158
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本発明に従って炭化ホウ素体を製造する方法における工程を示す図である。
【
図1B】本発明に従って顆粒化粉末組成物を調製する工程を示す図である。
【
図1C】
図1Bで示す方法に従って調製する、チタン含有化合物で被覆される多数の炭化ホウ素粒子を説明する図である。
【
図1D】
図1Bで示す方法に従って調製する、チタン含有化合物と炭素含有化合物で被覆される多数の炭化ホウ素粒子を説明する図である。
【
図2】理論的密度のための基準としてバッチのままの組成物の混合物のルールを用いてアルキメデス法によって測定した焼結浸漬温度の関数としての、0.081、0.163、0.488、0.814重量%のチタンと0重量%の炭素(
図2A)、1.2重量%の炭素(
図2B)及び3.7重量%の炭素(
図2C)を含有する粉末組成物から調製された常圧焼結試料の相対密度を示すグラフである。種々のトレースにつけた数字はチタンの重量比率(バッチのままを基準に)を示す。
【
図3】焼結浸漬温度の関数としての(HIPの計画は全データで同一)それぞれ、
図2A、2B及び2Cの常圧焼結し、HIP後の試料の相対密度を示すグラフである。種々のトレースにつけた数字はチタンの重量比率(バッチのままを基準に)を示す。
【
図4】常圧焼結熱処理の間、2つの最低常圧焼結浸漬温度(2240℃:
図4A、2260℃:
図4B)に暴露したHIPした試料の硬度値を示すグラフである。
【
図5】理論的密度のための基準としてのバッチのままの組成物の混合物のルールを用いてアルキメデス法によって測定した焼結浸漬温度の関数としての、0.0、1.33、2.40重量%のチタン及び0重量%の炭素(
図5A)、1.2重量%の炭素(
図5B)及び3.7重量%の炭素(
図5C)を含有する粉末組成物から調製された常圧焼結試料の相対密度を示すグラフである。種々のトレースにつけた数字はチタンの重量比率(バッチのままを基準に)を示す。
【
図6】焼結浸漬温度の関数としてのHIP後のそれぞれ、
図5A、5B及び5Cの試料の相対密度を示すグラフである。種々のトレースにつけた数字はチタンの重量比率(バッチのままを基準に)を示す。
【
図7】常圧焼結浸漬温度の関数としてのそれぞれ
図6A、6B及び6Cの試料のビッカーズ硬度値を示すグラフである。比較のために、試料の硬度を測定するのに使用したのと同じパラメータ及び方法を用いて測定した破線としてPAD−B4C(加熱プレス成形、BAEシステム、2632.4、111.7)のビッカーズ硬度を示す。
【
図8】1.33重量%のTiと3.7重量%のCを含有する粉末組成物から調製したHIPを行った試料を2200℃の常圧焼結浸漬温度に暴露したものの光学顕微鏡写真を示す。
【
図9】1.33重量%のTiと3.7重量%のCを含有する粉末組成物から調製した試料の艶出し断面の光学顕微鏡写真の線切片法解析に基づいた累積パーセント数の細かなプロットを示すグラフである。破線によって粒度中央値(d
50)を示す。
【
図10】10A〜10Cは本発明に従って調製した選択された試料の光学顕微鏡写真の画像解析(線切片法)から生成した累積パーセントの細かなプロット(d
50)から決定した粒度中央値を示すグラフである。
【
図11】11A及び11Bは、
図3A〜3C及び
図6A〜6Cの試料についてのHIPした相対密度及び硬度値を示すグラフである。
【
図12】2200℃(
図12A)、2220℃(
図12B)、2240℃(
図12C)及び2260℃(
図12D)で常圧焼結する間に浸漬した1.33重量%のTiと3.7重量%のCを含有する粉末組成物から調製した焼結し、HIPした後の試料の光学顕微鏡写真を示す。
【
図13】2220℃の常圧焼結浸漬温度で焼結し、その後HIPを行った2.40重量%のTiと1.2重量%のCを含有する粉末組成物から調製した艶出し検体断面のSEM顕微鏡写真を示す。
【
図14】2240℃で常圧焼結した0.018(
図14A)、0.163(
図14B),0.488(
図14C)及び0.814(
図14D)重量%のチタンと3.7重量%の炭素を含有する粉末組成物から調製した焼結し、HIPした後の艶出しし、エッチングした断面の光学顕微鏡写真を示す。
【
図15】2200℃で常圧焼結した0(
図15A)、1.33(
図15B)及び2.4(
図15C)重量%のチタンと3.7重量%の炭素を含有する粉末組成物から調製した焼結し、HIPした後の艶出しし、エッチングした断面の光学顕微鏡写真を示す。
【
図16】
図14A〜14C及び
図15A〜15C(3.7重量%のC)における顕微鏡写真のデジタル解析に基づく黒鉛の領域分画(パーセント)を示すグラフである。横破線は4.29体積%に換算される3.7重量%を示す。
【
図17】2220℃で常圧焼結した2.4重量%のTiと1.2重量%のCを有する粉末組成物と2200℃で常圧焼結した1.3重量%のTiと3.7重量%のCを有する別の粉末組成物から調製した焼結し、HIPした2つの試料の研磨し、艶出しした面と同様に受け取ったままの炭化ホウ素粉末のX線回析パターンを示す図である。
【
図18A】15℃/分にて示した温度に加熱し、次いで炉にて冷却した3.7重量%のCと1.33重量%のTi添加で構成される粉末組成物から調製された圧粉成形体検体(他のデータとは異なるロット数のStarckHD15粉末)のXRDパターンを示す図である。B:B
4C、U:特定されない相、G:黒鉛、O:B
2O
3、T:TiB
2、nC:カーボンナノチューブ。
【
図19】焼結浸漬温度の関数として、焼結熱処理後の0.5、1.0、3.0、5.0重量%のTi及び0(
図19A)、1.2(
図19B)、及び3.7(
図19C)重量%の炭素を含有する粉末組成物から調製した試料の相対密度値を示すグラフであり、チタン源は9μmのTiO
2粒子である。
【
図20】焼結浸漬温度の関数として、HIP後のそれぞれ
図19A、19B及び19Cの試料の相対密度値を示すグラフである。
【
図21】
図20A、20B及び20Cの試料から選択された試料のビッカーズ硬度値を示すグラフである。
【
図22】2260℃の焼結浸漬温度に暴露した5重量%のTiと3.7重量%のCを得る0.9μmのTiO
2とフェノール樹脂を含有する粉末組成物から調製したHIP後の試料のXRDパターンを示す図である。B:B
4C、G:黒鉛、T:TiB
2。
【
図23】2260℃の焼結浸漬温度に暴露した5重量%のTiと3.7重量%のCを得る0.9μmのTiO
2とフェノール樹脂で調製した粉末組成物から調製した試料(23A)、及びチタン源が32nmのTiO
2粒子である23Aと同じ化学組成で調製した試料(23B)の光学顕微鏡写真を示す。
【
図24】焼結浸漬温度の関数として、焼結熱処理後の0.5、1.0、3.0、5.0重量%のTi及び0(
図24A)、1.2(
図24B)、及び3.7(
図24C)重量%の炭素を含有する粉末組成物から調製した試料の相対密度値を示すグラフであり、チタン源は32nmのTiO
2である。
【
図25】焼結浸漬温度の関数として、HIP後のそれぞれ
図24A、24B及び24Cにおける試料の相対密度値を示すグラフであり、図中の標識はTiの重量パーセントに相当する。
【
図26】Ti含量(32nmのTiO
2)の関数として、2240℃及び2260℃で常圧焼結した
図25A、25B及び25Cの選択したHIP後の試料のビッカーズ硬度値を示すグラフである。
【
図27】焼結浸漬温度の関数として、異なる出発炭化ホウ素粉末(H.C.StarckHS B
4C粉末)により本発明に従って調製した試料の相対密度及び硬度を示すグラフであり、試料の粉末組成は1.33重量%のTi及び3.7重量%のCであった。
【
図28】0.5μmの粒度中央値を有するU.K.Abrasivesによって製造されたB
4C粉末に基づいて調製した試料の相対密度及び硬度を示すグラフである。焼結浸漬温度は2200℃で固定し、炭素含量は3.7重量%に固定した。
【
図29】2200℃の常圧焼結浸漬温度に暴露した、U.K.Abrasives粉末(d
50=0.5μm)、1.33重量%のTi及び3.7重量%のCを含有する粉末組成物から作製されたHIP後の試料のX線回析パターンを示す図である。B:B
4C、G:黒鉛、T:TiB
2、S:SiC。
【
図30】U.K.Abrasivesによって製造されたB
4C(1.7μmの粒度中央値を有する)と5.15重量%の炭素を含有する粉末組成物から本発明に従って調製した試料の相対密度及び硬度を示すグラフである。試料は2200℃で常圧焼結した。
【
図31】測定した硬度値の標準偏差を示すグラフである。○で表したデータは表4に相当し、□で表したデータは表5に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1Aを参照して、本発明に係る方法は、少なくともチタン化合物で被覆された炭化ホウ素の粒子で構成される顆粒化粉末組成物を使用する。工程S1は、顆粒化粉末組成物を調製する工程を指す。本発明に従って
図1Bを参照して、乾燥後、炭化ホウ素粒子の外面に付着することが可能であるチタン化合物を含むチタン含有溶液と炭化ホウ素粒子を少なくとも含有するスラリーを先ず調製することによって粉末組成物を調製する。次いでスラリーをスプレー乾燥して圧力下で成形体を形成するのに好適な顆粒化粉末組成物を得る。
図1Cは本発明に係る粉末組成物を説明する。説明するように、本発明に係る粉末組成物は少なくともチタン化合物で被覆される炭化ホウ素を含む。他の実施形態では、スラリーをスプレー乾燥する前にスラリーに炭素含有化合物を加えてもよい。好ましくは、炭素含有化合物は、炭化ホウ素粒子の外面に付着することも可能である。従って、
図1Dで説明されるように、粉末組成物はチタン化合物、又はチタン含有化合物及び炭素含有化合物で被覆される炭化ホウ素粒子を含み得る。
【0019】
図1Aを参照して、好適な方法(たとえば、一軸圧縮成形、等静圧圧縮成形、押出し)に従って、顆粒化粉末組成物(S1)から成形体(素地)を形成する。次いで素地を加熱して(S3)、素地におけるチタン含有化合物及び/又は炭素含有化合物の加熱分解及び/又は熱分解を引き起こす。加熱分解/熱分解の工程(S3)の後、素地を常圧焼結して(S4)密閉気孔率を有する(通常、しかし、常ではなく、密閉気孔率の炭化ホウ素体は93〜96%の範囲での相対密度を有する)常圧焼結体を得る。次いで常圧焼結体を冷却して(S5)、さらにHIPを介して緻密化する(S6)。
【0020】
1重量%未満のチタンを有する粉末組成物による第1系列の試料
図1Aで開示され、上記で記載された方法に従って調製した第1系列の試料は、二ホウ化チタン(TiB
2)を含む炭化ホウ素系のボディであった。1重量%未満のチタンを含む試料の調製用の出発粉末組成物は、
図1Bで開示され、上記で記載された方法に従って調製した。第1系列の試料を調製するのに使用した炭化ホウ素粉末は、狭い粒度分布(d
50=0.6μmでd
10〜d
90=0.2〜1.5μm)の純度が高い炭化ホウ素粉末(HD15、ドイツ、ゴスラーのH.C.Starck社)だった。第1及び第2の系列の試料の調製に使用した炭化ホウ素の特徴を表1にて述べる。
【0022】
いずれの場合でも、粉末加工(S1、
図1A)を行い、炭化ホウ素粒子を有する顆粒化粉末を得るには、2リットルの高密度ポリエチレン(HDPE)混合ジャーにおいて脱イオン水中にて、200gの炭化ホウ素粉末、水溶性のチタン有機金属含有の溶液(チタン源)、水溶性のフェノール樹脂(炭素を含む試料における炭素源)、結合剤成分及び10滴の濃縮消泡剤(デラウェア州、ウィルミントンのHercules社)を混合することによってスラリーを調製した。各スラリーで使用したチタン有機金属含有の溶液は、50重量%のジヒドロビス(乳酸アンモニウム)チタン(IV)(C
6H
10O
8Ti・2(NH
4)(チタン化合物)、同義語;乳酸チタンキレートアンモニウム塩(マサチューセッツ州、ワードヒルのAlfa Aesar)を伴った水溶液(pH7〜8)であった。(たとえば、炭素を含む)炭素源は水溶性フェノール樹脂(SP−6877、ニューヨーク州、スケネクタディのSIグループ)であった。実験は、フェノール樹脂が、Ar気流中で1000℃での熱分解に続いて37.63重量%の炭素炭化物を生じることを示した。各スラリーでは、1重量%のポリビニルアルコール(PVA)、0.5重量%のポリエチレングリコール(PEG)可塑剤、及び1重量%のDarvan821A分散剤(コネチカット州、ノーウォークのR.T.Vanderbilt社)で構成される標準の結合剤システムを水溶性スラリー添加剤として使用した。
【0023】
スラリーにおけるチタン有機金属含有の溶液が、0.081重量%、0.163重量%、0.488重量%及び0.814重量%のチタンを含む乾燥後の粉末組成物を生じるように選択される粉末組成物に基づいて第1の系列の試料を調製した。0.5、1、3及び5重量%の有機金属Ti添加物の添加がそれぞれ0.081、0.163、0.488及び0.814重量%の元素チタンに相当する(Tiとチタン含有化合物C
6H
10O
8Ti・2(NH
4)のモル質量比に基づいて、完全な変換、すなわち、100%の収率を想定して)。0.081、0.163、0.488及び0.814のTi重量比率はそれぞれ、常圧焼結試料中の0.12、0.24、0.71及び1.18のTiB
2の重量比率に変換する。各チタン濃度について、0重量%、1.2重量%及び3.7重量%の炭素濃度を使用した。重量比率は、炭化ホウ素と添加物のみの重量分画に比べたその添加物の重量分画を基にして決定した。これは、たとえば、フェノール樹脂の所与の添加物について、高濃度の有機金属添加物が炭化ホウ素に対する炭素の濃度を変えないように行った。従って、第1の系列の試料の調製に使用した粉末組成物は、表1からの以下の量(重量で)のチタン、炭素及び炭化ホウ素を含んだ。表2は、加熱分解/熱分解後の有機金属及びフェノール樹脂からの残留物から得られると計算される重量%を示す。結合剤は比には入れなかった。形成される炭素は、それとチタニアと炭化ホウ素の間での反応で部分的に消費されるので、列記されるチタン含量は最終的な微細構造にあると仮定されるが、計算された炭素は部分的に消費され、最終的な微細構造では表されない。
【0025】
表2で示す各粉末組成物を調製するには、スラリーの固形物負荷は17〜22体積%で維持した。ボールミルにて炭化ホウ素媒体と共にスラリーを24時間混合した。次いでスラリーを顆粒化粉末にスプレー乾燥した。操作中、スプレー乾燥チャンバーの入口と出口の温度はそれぞれ、260〜270℃及び50〜70℃であった。いずれの場合にもスプレー乾燥は、チタン含有化合物で被覆された、炭素を含有する例では、炭素含有化合物で被覆された(乾燥した可溶性フェノール樹脂から生じる)炭化ホウ素粒子の球状顆粒を含む粉末組成物を生じた。
【0026】
各粉末組成物から素地を調製(S2、
図1A)するには、油圧系手動プレスにて150MPaの圧力のもとでツールの鋼製金型を用いて直径12.7mm及び高さ約3mmの円筒状の円板に各顆粒化粉末組成物を一軸圧縮成形した。次いで円板すべてをラテックスの袋に入れ、その後、機械的な真空ポンプでそれを脱気し、次いで袋を密封した。圧粉密度を改善し、前の一軸圧縮成形工程で生じた粒子の梱包密度勾配を緩和するために、水/油混合物にて345MPaで2分間、ラテックス袋の円板を冷却静水圧圧縮成形した(CIP、オハイオ州、コロンバスのAmerican Isostatic Presses社)。CIPの後、円板の重量及びキャリパー測定した寸法を測定した。次いで試料を階層性の黒鉛るつぼに入れ、次に水冷鋼鉄筐体(カリフォルニア州、サンタローザのBTEW、Thermal Technology社)に内包されたタングステンの加熱要素と内壁を伴った実験室の真空炉にそれを入れた。連続的な機械的真空ポンプのもとで、0.5℃/分にて室温から500℃まで成形体を加熱した。試料を500℃で数時間保持して結合剤を加熱分解した。それらを次いで3℃/分にて1350℃まで加熱し、フェノール樹脂を熱分解し、チタン化合物を分解してチタン含有残留物を残し、これらの構成物が以下に述べるように反応できるように、4時間その温度で保持した。各円板の重量を再び測定し、この熱処理で生じる重量損失を確定した。
【0027】
加熱分解/熱分解の熱処理(S3、
図1A)及びその後の冷却の後、黒鉛の加熱要素と断熱(カリフォルニア州、サンタローザのThermal Technology)及び水冷のアルミニウム筐体を伴った実験室の真空炉にて、次いで試料を常圧焼結した。圧粉試料を常圧焼結するには、以下の手順が続けられる。試料の設置に続いて、機械的真空ポンプを用いて80ミリトール未満の圧力まで炉チャンバーを脱気した。大気圧までHe気体を炉に再充填し、その後、1lpmの一定流速でこの気体を流し、出ていく気体は油を介して泡化した。この炉で使用した高温計の操作温度範囲は600〜3000℃であり、600℃に達するまで当初の加熱は直線的に増加する炉の電力に基づいたが、その時点で比例積分微分温度制御アルゴリズムが引き継いだ。この直線的な電力増加は、約63℃/分の平均加熱速度を生じた。冷却した後、圧粉試料を15℃/分で600℃から1300℃に加熱し、炭化ホウ素粒子上に残っている酸化ホウ素コーティングを揮発させるために1300℃にて2時間保持した。次いで、以下の浸漬温度:2240℃、2260℃、2280℃及び2300℃の1つに15℃/分で加熱した。選択した各浸漬温度にて各試料を30分間保持し、常圧焼結を可能にした。次いで加熱要素を止めて、炉の自然な冷却速度で試料を冷却した。2300℃から600℃に冷却する炉にかかった時間に基づいて約60℃/分の平均冷却時間が推定された(当初の冷却はさらに速いが、室温に近づくにつれて冷却は速くなくなる)。常圧焼結に続いて、試料すべてのアルキメデス密度を測定し、焼結から生じた重量損失を記録した。
【0028】
試料すべてについてHIPを行った。HIPは12kpsiに加圧する一方で、15℃/分で450℃に加熱し、次いでその圧力にて15℃/分で1700℃に加熱した。1700℃から2050℃に加熱する間に、圧力を30kpsiに高め、この圧力と温度を1時間の浸漬で維持した。次いで加熱要素を切ってHIPを室温に冷却したが、炉が約150℃に達した際、気体を冷却するチャンバーの圧力を約7.5kpsiに低下させ、次いでこの圧力を常圧に解放した。HIPの後、アルキメデス密度を再び測定した。
【0029】
バッチのままでの組成物に基づいた混合物のルールを用いて、試料の相対密度を算出するのに使用される理論的密度値を確定した。
ρ
composilc=ρ
B4CV
B4C+ρ
TiB2V
TiB2+ρ
CV
C
式中、ρ及びVはそれぞれ微細構造における各相(B
4C、TiB
2及び黒鉛)の理論的密度及び体積分画を表す。B
4C、TiB
2及び黒鉛に使用された理論的密度はそれぞれ2.52、4.50及び2.16g/cm
3であった。体積分画は、たとえば、
V
C=(m
C/ρ
C)/(m
C/ρ
C+m
B4C/ρ
B4C+m
TiB2/ρ
TiB2)
を用いて質量を変換することから確定した。
式中、mは特定成分の質量である。TiB
2の質量は添加したTiから形成するTiB
2の等モル量に基づいた。
【0030】
1重量%を超えるチタンを有する粉末組成物による第2系列の試料
1重量%を超えるチタンを含む粉末組成物を用いて第2系列の試験試料を調製した。具体的には、第1系列で調べた最大0.814重量%のTiを超える漸増増加として選択した1.33重量%及び2.40重量%のTi濃度で粉末組成物を調製した。C
6H
10O
8Ti・2(NH
4)の熱分解から提供されたチタンの完全変換を仮定して、1.33重量%及び2.40重量%のTiの重量比率はそれぞれ、1.92及び3.45のTiB
2の重量比率に書き換えられる。第2の系列の粉末組成物の調製にて、第1の系列の試料に使用したものと同じ炭化ホウ素粉末を使用した。また、他の前述の有機添加物と同様に、同じ水溶性のフェノール樹脂を用いて0、1.2及び3.7重量%のCを得た。高さ約9mm(さらに12.7mmの直径)のさらに厚い圧粉円板を調製したことを除いて、この第2の系列における試料は第1の系列と同様に調製した。表3は第2の系列の試料を調製するのに使用した粉末組成物の含量を開示している。表3は加熱分解/熱分解の後の有機金属及びフェノール樹脂からの残留物から得られるように計算した重量%を示す。結合剤は比には入れなかった。形成される炭素は、それとチタニアと炭化ホウ素の間での反応で部分的に消費されるので、列記されるチタン含量は最終的な微細構造にあると仮定されるが、計算された炭素は部分的に消費され、最終的な微細構造では表されない。
【0032】
試料の試験
本明細書で報告されるデータは、この区分で述べる手順に従って実施した試験に基づいた。硬度及び微細構造についてHIP後の試料を性状分析するために、試料をSpeciFix樹脂(オハイオ州、ウエストレークのStruers社)に被包し、45、15及び9μmのダイヤモンド懸濁液と組み合わせた金属を結合したダイヤモンド媒体板と同様に、220グリットのダイヤモンド被覆研磨板を用いて黒鉛に富む外面を研磨で除いた(オハイオ州、ウエストレークのStruers Piano,Struers並びにイリノイ州レイクブラフのApex Band Metadi Supreme,Buehler)。各研磨工程に続いて試料を脱イオン水で洗浄した。平坦な面に研磨した後、9、3及び1μmの多結晶ダイヤモンド懸濁液を伴った特殊な布で試料の艶出しを行った(オハイオ州、ウエストレークのStruers MD, Struers社及びイリノイ州レイクブラフのTexmet and Metadi Supreme, Buehler)。各艶出し工程の後、試料を洗浄し、超音波槽に入れて残留するダイヤモンド粒子を艶出し表面から除いた。
【0033】
1kgの負荷を15秒間適用したもとでビッカーズダイヤモンド圧子(Duramin−2、米国オハイオ州、ウエストレークのStruers)を用いて、任意の偏らない微細構造の位置にて、艶出し表面を刻印した。SRM2831炭化タングステンの標準的な参照円板(SRM−2831、メリーランド州、ゲイザースバーグのNational Institute for Standards and Technology)を用いて硬度測定を較正した。10の許容可能な刻み目の対角線の長さ(ASTM C 1327−99「進歩したセラミックスのビッカーズ圧入硬度の標準的な試験法」によって測定されたように)を測定し、平均の硬度値及び標準偏差(kg/mm
2の単位で)を算出した。
【0034】
粒子の境界の位置を示すために、硬度用に調製した円板を電解エッチングした。薄いPt薄片の陰極を介して適用した21VDCにて20mAの電流を用いて、希釈したKOH水溶液(100mLの脱イオン水に1gのKOH)中で約20〜30秒間試料をエッチングした。光学顕微鏡(オリンパスBX40、ペンシルベニア州、センターバレーのオリンパスアメリカ社)及び走査電子顕微鏡(SEMモデル1530SEM、ドイツ、オーバーコッヘンのLEO Electron Microscopy社)を用いてHIPした試料の微細構造を調べた。特定の微細構造の位置の化学組成を特定するために、SEMの間にエネルギー分散性のX線分光分析(EDS、英国、オックスフォードシャー州、Oxford Pentafet Detector,Oxford Instruments)を行った。
【0035】
線形切片定量分析法を用いて光学顕微鏡写真を解析し、合計200の測定で、4つの別々の微細構造の画像のそれぞれで50の粒子の測定に基づいて、選択した試料について微細粒度分布の累積比率及び粒度中央値(d
50)を確定した。炭素の領域分画(比率)について微細構造を解析するために、赤色、緑色及び青色の強度について顕微鏡写真の各画素を読み取るVisual Basic4.0プログラムを書いた。黒色と白色の画像については、これらの値は同等であり、ゼロの値が黒であり、255の値が白である。カットオフ値は、たとえば、30としたが、その際、画素がさらに低い値であれば、それを炭素領域に入れた。これらの領域は顕微鏡写真上で着色され、計数する領域の視覚的確認を提供した。炭素領域が計数され、粒子の境界のような他の領域が計数されないように、カットオフ値及び顕微鏡写真で示されるコントラスト(アドビフォトショップを用いた)の若干の調整が必要だった。いったん正しいとみなされると、全画素に対する炭素の画素の比を計算して黒鉛である微細構造の領域比率を決定した。
【0036】
0.084°/秒の走査速度、0.017°の段階サイズ及び10°〜85°の2シータ範囲にてX線回析(X’Pert PRO Alpha−1、オランダ、アルメドのPANalytical)によって受け取ったままの粉末試料及び艶出しし、HIPを行った円板試料の中に含有される相を特定した。回析ピークの強度に比べて最小限の背景干渉で走査を行うために、0.04ラジアンの相当するソーラスリットを入射及び回析のX線ビームの経路に設けた。さらに、10mmのマスクを入射ビーム経路に設け、5mmのマスクを回析ビームの経路に設けた。
【0037】
試験の結果
第1の系列の結果
第1の系列における試料すべてについての焼結後のアルキメデス相対密度のデータを
図2A〜2Cに示すが、それは、常圧焼結後の相対密度が炭素含量の増加と共に大きくなることを示している。最高の相対密度は2260℃の焼結浸漬温度で一般に得られた。低い焼結浸漬温度での0重量%のCを除いて、Ti含量の増加に伴う相対密度の上昇の明瞭な傾向は明らかではなかった。HIPを行った後の第1の系列の試料の相対密度は
図3A〜
図3Cに示す。1.2重量%のC添加については、焼結後の相対密度が否定的な影響を受けなかったときでさえ、2280℃以上の焼結温度は、分解したHIP後の相対密度を生じた。3.7重量%のC及び0.81重量%のTiの検体は、2260℃の浸漬温度で焼結した場合、理論的密度にHIPされた。
【0039】
第1の系列の試料についてHIPを行った後の硬度値を表4、
図4A及び4Bに示す。表4は、試料の調製に使用した粉末組成物とチタン及び炭素の計算された収率に基づいて各試料を特定することに留意すべきである。高い浸漬温度(すなわち、2280℃及び2300℃)で焼結した試料の相対密度は低いので、それらの検体の硬度は測定しなかった。2240℃の浸漬温度に暴露した3.7重量%のCを伴った検体は、2260℃の高い焼結浸漬温度に暴露したものが一般に(すなわち、0.814重量%のTiを伴った検体を除く)、高いHIP後の相対密度を持つにもかかわらず、どのTi濃度でもそれらよりも顕著に高い硬度を達成した。焼結熱処理の間、2240℃で浸漬した検体については、チタン含量の上昇が3つの炭素含量(0、1.2、3.7重量%)すべてについて硬度の上昇を生じた。2240℃では、所与のTi含量については高い炭素濃度がさらに高い硬度値を生じた。3.7重量%のC添加が1.2重量%のC添加よりも硬度が低い2260℃の浸漬温度ではそうではなかった。従って、第1の系列については、最高の炭素とチタンの含量、及び最低の焼結浸漬温度(すなわち、2240℃)と共に最高の硬度が得られた。
【0040】
第2の系列の結果
第2の系列では、前の試験で最高の硬度に向かう傾向に基づいて前の試験よりも高いTi濃度及び低い焼結浸漬温度の効果を評価した。加えて、Ti添加の個々の効果を明らかにするために、0重量%のTi添加組成系列を調製し、評価した。
図5A〜5Cは、常圧焼結後でHIPの前にこれらの組成物で相対密度が一定の基準に達したことを示している。前のように相対密度は高い炭素含量と共に上昇した。第2の系列では、常圧焼結熱処理後の相対密度はTi含量の上昇と共に一般に上昇した。HIP後のこれら検体の相対密度は
図6A〜6Cに示す。1.2重量%のCについては、2220℃を超える焼結浸漬温度は、焼結相対密度が焼結浸漬温度の上昇とともに上昇するにもかかわらず、一般に低いHIP相対密度を生じた。
【0042】
表5における試料は使用された粉末組成物(表3を参照)に基づいて特定されることに留意すべきである。HIP後の試料についてのビッカーズ硬度値は表5及び
図7A〜7Cに示す。HIP密度が低い検体は硬度について評価しなかった。炭素を添加しなかった検体については2240℃の焼結浸漬温度はその硬度が予想どおり、相対密度(Ti含量の上昇)と共に上昇する試料を生じた。2260℃で浸漬したそれら組成物については、種々のTi含量の検体の硬度及びHIP相対密度が融合した。硬度は炭素を添加しなかった検体に比べて一般に1.2及び3.7重量%のCの検体で高かった。これらの炭素含有検体については、低い焼結浸漬温度は高い硬度を生じ、それは高いHIP相対密度に相当する。所与の焼結浸漬温度で2220〜2240℃の範囲については、相対密度は上昇するにもかかわらず、炭素含量が1.2から3.7重量%に増えると硬度は低下した。2200℃の焼結浸漬温度に暴露した3.7重量%のC、1.33重量%のTiの検体と2200℃の焼結浸漬温度による1.2重量%のC、2.40重量%のTiの検体は、最高の達成硬度に達し、実際、加圧補助緻密化(PAD)炭化ホウ素よりも高い値を達成し、それは、炭化ホウ素品の硬度を評価するのに一般に使用される基準値である。
図7A〜7Cは、通常2600ビッカーズ前後であるPAD炭化ホウ素の硬度値を示すのを意図する破線を含む。
【0043】
微細構造
艶出しし、電解エッチングした(粒子の境界を露出した)検体の断面の例である光学顕微鏡写真を
図8で示す。暗い領域は黒鉛、黒鉛が豊富である、又は艶出し工程で黒鉛が除かれた孔であると推測される。明るい陰影の領域は二ホウ化チタンである。第1及び第2の系列から選択された試料についてのそのような顕微鏡写真(たとえば、
図9)の定量的な解析から累積パーセント数微細(CPNF)プロットを生成した。3.7重量%のCを含有する粉末組成物で作製した試料についての粒度中央値(d
50、すなわち、CPNFプロットにおける50%の点)を
図10A〜10Cに示す。
図10Aでは、2260℃の焼結浸漬温度でのチタン含量の増加と共に粒度が上昇した。2240℃の焼結浸漬温度については、粒度はさらに細かく、チタン含量にはさらに非感受性だった。相当して、低い焼結浸漬温度に暴露したさらに細かい粒度の検体については、硬度はさらに高かった(
図4A)。2220℃の焼結浸漬温度が、第1の系列で使用した2240℃の焼結浸漬温度(
図10A)よりも大きな粒子を生じたという点で明らかな矛盾が
図10Bで示される第2の系列の結果において見られる。しかしながら一般に、3.7重量%の炭素を含有する粉末組成物で作製した試料の粒度は小さいままであり、焼結浸漬温度の低下と共に高い硬度値を生じる。
【0044】
第1の系列で3.7重量%のCを含有する粉末組成物で作製した試料(
図2A〜2C及び3A〜3C及び
図4A〜4B)の密度及び硬度のデータを
図11Aにて異なる方法で再プロットした。2260℃の高い焼結浸漬温度は一般に2240℃の低い浸漬温度の暴露したものより高いHIP相対密度を生じる一方で、あまり密ではない検体の硬度が実際に高いことは明らかである。これら2つの焼結浸漬温度に暴露した検体についての相対密度を超える差別化の特徴は
図10Aに示す粒度中央値であり;粒度は低い焼結浸漬温度(さらに硬い)の検体について有意に小さかった。
【0045】
3.7重量%のC及び1.33重量%のTiを含み、2200℃の焼結浸漬温度に暴露した粉末組成物で作製した試料は、0.84μmの顕著に小さいd
50粒度を有し(
図10B)、それは粉末組成物を調製するのに使用した炭化ホウ素粉末の0.6μmのd
50粒度よりも約40%大きいに過ぎない。通常、炭化ホウ素粉末で作製された焼結炭化ホウ素物品の粒度中央値は、焼結の最終段階で生じる粒子成長のために、物品を調製するのに使用される炭化ホウ素粉末の粒度中央値よりも数倍大きい。しかしながら、本発明に従って調製した試料は、その調製で使用した炭化ホウ素粉末の粒度中央値よりも100%未満で大きく、それは、本明細書で記録される高い硬度値を有利に導いた。種々の焼結浸漬温度に暴露した本組成物(
図10D)については、常圧焼結浸漬温度を2200℃から2240℃に上昇させた際、一桁分の粒度中央値の増加が認められる。この焼結浸漬温度範囲にわたって
図12A〜12Dで示すように、(暗い)黒鉛領域の実質的な粗大化が生じた。Ti含有(明るい陰影の、TiB
2)の粒子の粗大化の視覚的指摘はない。
図13におけるSEM顕微鏡写真は、B
4Cマトリクス中のTiB
2の明瞭な明るい陰影の鋭い小平面の粒子を示す。B
4C粒子間の粒子の境界は目に見えるほどに明確な第2の相を示さない。
図14A〜14D及び15A〜15Dは、それぞれ2240℃及び2200℃の焼結浸漬温度で3.7重量%のCを含む粉末組成物で作製された試料についてTi含量の増加に伴う微細構造の変化を示す。双方の焼結浸漬温度について、Tiの当初の増加は黒鉛粒子のサイズの実質的な低下を生じた。
図16は、炭素含有の相、すなわち、黒鉛で占有された領域の比率を決定するための定量的解析の結果をグラフで説明する。0.163重量%以上のTiの添加は、フェノール樹脂を介して添加したものを下回る値に黒鉛の体積パーセントを減らした(体積比率の低下は炭素含有の相(黒鉛)で占有された領域の低下に基づくと仮定される)。2.4重量%のTiを含み、2200℃の焼結浸漬温度に暴露された粉末組成物から調製された試料を除いて、Ti添加物の上昇に伴って微細構造における黒鉛濃度が低下するこの傾向は硬度の上昇に相当する。
【0046】
存在する相を確定するために、(1.33重量%のTi、3.7重量%のCを含有し、2200℃で常圧焼結した粉末組成物から調製された、及び2.4重量%のTi、1.2重量%のCを含有し、2200℃で常圧焼結した粉末組成物から調製された)最高の硬度を生じる2つの組成物についてXRDパターンを得た(
図17)。最も強いTiB
2の回析ピーク(44.93°、2θ)の積分強度は予想どおり添加したTiの含量と共に上昇した。26.426°2θでの黒鉛についての最も強い回析ピークの積分強度は添加した炭素の量と共に増加する傾向に続いた。際立ったことに、受け取ったままのB
4C粉末における黒鉛−3Rについての積分強度は、炭素を加えた(チタンと共に)粉末組成物から調製された2つの焼結試料よりも大きかった。
【0047】
異なる炭化ホウ素粉末で調製された第3の系列の試料
異なる炭化ホウ素粉末源に対する水溶性C
6H
10O
8Ti・2(NH
4)添加物及びフェノール樹脂の使用の効果を評価するために、粒度中央値が0.5μm及び1.7μmのUK Abarasives(イリノイ州、ノースブルーク)からの2種の粉末と共に、H.C.Starckからの等級の異なる粉末、StarckHS粉末を評価した。この比較試験用の試料の調製方法は、炭化ホウ素粉末源が異なることを除いて、第1の系列の試料について上述された方法と同じだった。
【0048】
H.C.StarckHS B
4C粉末を伴ったC
6H
10O
8Ti・2(NH
4)及びフェノール樹脂の使用
異なる粉末源による本発明に係る方法の有効性を評価するために、異なる粉末、すなわち、H.C.StarckHS B
4C粉末(粉末の性状分析については表5を参照)と共に1.33重量%のTi(C
6H
10O
8Ti・2(NH
4))、3.7重量%のC(フェノール樹脂を介して)を使用した。この粉末はやや大きな粒度中央値を有し、前に記載した(表1を参照)H.C.StarckHD B
4C粉末よりも広い粒度分布を有した。HS B
4Cはまた有意に高価な粉末でもある。
【0050】
図27はHS粉末から試料を調製することによって得られた結果を開示する。
図27で示す傾向は、HD粉末で見られたものと類似しており;2160℃以上での焼結浸漬温度は、HIPが理論的密度に近い成形体をもたらす密閉気孔率状態に達した。最高の硬度は2160℃の浸漬温度で得られ(3004.8kg/mm
2)、焼結浸漬温度の上昇と共に硬度は低下した。この粉末のさらに広い粒度分布は、HDで見られたもの(62〜72%)よりもさらに高い圧粉密度を促進し(1300℃での加熱分解熱処理後の幾何相対密度は78〜79%);同様に、密閉気孔率状態に達するのにさらに低い焼結浸漬温度を可能にする。しかしながら、この粉末で測定された最高の硬度(行った実験の限界までの)は、B
4CHD粉末で得られた最高よりは低かった。にもかかわらず、実験は、本明細書で開示された方法は、異なる炭化ホウ素粉末が出発物質として使用される場合、高い硬度値の達成を生じ得ることを示している。
【0051】
不純な又は相対的に粗いB
4C粉末を伴ったC
6H
10O
8Ti・2(NH
4)及びフェノール樹脂の使用
UK Abarasives(イリノイ州、ノースブルーク)からB
4C粉末を入手したが、それは0.5μmの製造元が特定した粒度中央値を有した。2200℃の固定した焼結浸漬温度を用い、3.7重量%のC及び種々の濃度のTiとそれを混合した。
図28は、この炭化ホウ素粉末を出発物質として用いて調製した試料の相対密度を示す。
図28に示すように、相対密度はかなり高かった。2.4重量%前後のTi含量で相対的に高い硬度に達したことに留意すべきである。4重量%のTi含量で2957kg/mm
2の最大硬度値に達した。焼結し、HIPを行った後の双方の検体についての100%を超える相対密度は、相対密度の計算における理論的密度のための基準としての純粋な炭化ホウ素の使用に由来し;
図29におけるXRDパターンで示すように、これらの粉末は実質的な量のSiCを含有した。それにもかかわらず、SiCの存在下でさえ、得られた結果は、出発物質としての異なる炭化ホウ素粉末(すなわち、ミクロン以下の炭化ホウ素の不純源を伴って)によって高い硬度を達成することにおいて本発明に係る方法は有効であり得るという結論を支持している。
【0052】
別のセットの試料を調製するために、同じ供給元(UK Abarasives)から得た1.7μmの粒度中央値を持つ炭化ホウ素粉末を、本発明に従って、5.51重量%のC、種々の濃度のTiを含有する粉末組成物と共に調製し、2200℃の焼結浸漬温度に暴露した。結果を
図30に開示する。
図30で示すように、相対的に低い焼結相対密度(たとえば、93.8%)と共に高いHIP相対密度を得ることができた。
図30におけるデータは硬度値がTi含量の上昇に伴って低下することを示している。1.33重量%のTiを含有する粉末組成物で作製した試料についての2560.2kg/mm
2の硬度は、B
4C HD15粉末への有機金属添加物による最良の場合で得られるものよりも実質的に低かった。しかしながら、この硬度は、PAD−B
4Cのものと一致しており、その硬度は基準値(
図7A〜7Cの破線を参照)である。この1.7μm(d
50)粉末のような粗い粉末はミクロン以下の粉末よりも実質的に安価なので、得られた結果は、本発明に係る方法が、高い硬度を要する多数の適用に使用する物品にそのようなコスト競争力のある粉末を緻密化するのを可能にすることを示している。
【0053】
より粗く、高価ではない炭化ホウ素粉末による試験の結果は、素地に形成され、常圧焼結し、HIPを行って高い硬度値を得ることができる粉末組成物を調製するのに本発明に係る方法が使用され得ることを示している。
【0054】
コーティングの効果を解明する実験
チタン含有コーティングによって炭化ホウ素粒子を被覆する効果を判定するために、熱処理の間での相の発生を調べた。相の発生を調べるために、1.33重量%のTi及び3.7重量%のCを含有する添加物と共に炭化ホウ素のペレットを181MPaにて直径12.7mmの円筒に一軸圧縮成形し、次いで345MPaにて冷却静水圧圧縮成形した。この特定の試験に使用したHD15(H.C.Starck社)のロット番号が本開示でHD15を使用した他の試験すべてのロット番号と異なることに留意することは重要である。実験室の黒鉛炉における黒鉛るつぼの内部に圧粉部分を入れた。機械的な真空ポンプを用いて80ミリトール未満に炉を脱気し、次いで純粋なHe気体を大気圧まで充填し戻した。2つのフラスコの気泡管を介して気体の圧力を大気圧で維持した。15℃/分で一部を所与の温度に加熱し、次いで100℃/分の定値冷却速度で冷却したが、それは、2、3分後炉の加熱要素を効果的に遮断し、一部を炉の自然な冷却速度で冷却した。選択した急冷温度は600、800、1300、1600、1900及び2200℃だった。ペレットを15℃/分で2200℃に加熱し、30分間保持して典型的な焼結条件を模倣する最終的な急冷実験を行った。上述のようなX線回析によって相の特定を行った。
【0055】
図18Aは、種々の温度に加熱し、そこから急冷した検体についてのXRDの結果を示す。2つのロット番号の圧粉状態のXRDパターンの比較に基づいて、
図18AにおけるB
4CHD粉末ロットは、
図17で示すB
4CHD粉末ロットよりも有意に少ない炭素を示す。
図18Bは黒鉛とTiB
2のピークを見やすくするさらに限定した2θ範囲にわたる拡大図である。データは炭素がフェノール樹脂の熱分解から遊離するにつれて黒鉛のピークが成長したことを示す。Uと標識された相は、水溶性のC
6H
10O
8Ti・2(NH
4)添加物から沈殿した結晶性の前駆体相に相当する。U’ピークの出現は部分的な分解の後、C
6H
10O
8Ti・2(NH
4)の中間体固形残留物であると解釈される。1000℃にて他の特定可能なチタン含有の相はないが、その相の消失は、粒子表面に存在する酸化ホウ素の液相へのチタン含有種の溶解性を示し、それは、他の研究では、一定の加熱速度下では1600〜1800℃まで炭化ホウ素粒子上のコーティングとして存続することが示されている。チタン含有の相は、この形態ではボリア液(共晶温度:400〜450℃)に最も溶解しやすいのでチタニアであると推測される。このホウ酸液の一部は、冷却の際、ガラスになるのとは対照的に結晶化し、1000℃及び1300℃でのXRDパターンにて酸化ホウ素として特定された。1300℃まで加熱した後、TiB
2を先ず検出するが、その濃度は、2200℃までの急冷温度を高めることに伴って上昇した。酸化ホウ素が揮発してしまうにつれて、ますますチタニアが豊富になった液相は黒鉛及び炭化ホウ素と反応してTiB
2を形成したと解釈される。温度範囲1300〜2200℃にわたって、TiB
2相の進展はナノスケールの炭素に相当する相(1600℃及び1900℃の急冷から特定された)の形成に一致したが、1900℃での急冷の跡についての黒鉛ピークの相対強度の低下は明らかである。本発明者らは本明細書で提案されるどの理論にも束縛されることを望まないが、相の発生の試験から得られたデータは、本発明に従って調製した粉末組成物における炭化ホウ素粒子上のコーティングが、粒子状(たとえば、TiO
2、TiC、TiB
2)の添加を用いて得られ得るものよりも反応物(C、TiO
2及びB
4C)のはるかに密な接触を促進し、微細な、よく分散するTiB
2と黒鉛の第2の相を伴った微粒子微細構造を生じることを示唆することは明らかである(結果の区分の分析を参照)。
【0056】
結果の分析
黒鉛の形態での炭素は、炭化ホウ素を常圧焼結するための周知の焼結助剤である。炭素が炭化ホウ素粒子上の酸化ホウ素コーティングと反応し、焼結の開始が実質的に低くなるようにそれらを排除することは周知である。炭素は「活性化された焼結」を促進し得るので、焼結の間、粒子境界の近傍で欠損の形成を誘導し、質量拡散のためのルートを提供する。粒子境界に沿った炭素の存在は、さもなければ粒子の中に多孔性を閉じ込め得る大げさな粒子の成長を抑制するように機能することができる(さらなる熱処理によるその後のその排除は実現可能ではない)。相対密度を高めることに対する炭素の効果は
図2A〜2C及び5A〜5Cで開示されたデータから明らかであり、それは、さらに高い焼結相対密度が高い炭素含量とともに認められ、また、焼結相対密度は、高い炭素含量を伴った焼結浸漬温度の選択にはさほど敏感ではなかった(すなわち、
図5の曲線の傾きは炭素含量の増加に伴って低下することを示す)が;これは、さらに高い焼結浸漬温度での異常な粒子の成長のさらに良好な管理を暗示する。
【0057】
焼結した及びHIP後の相対密度は双方とも高い炭素添加物含量に伴って高かったが、硬度は必ずしも追随しなかった。0重量%のTi添加物について
図7B及び
図7Cから理解できるように、3.7重量%のCを有する粉末組成物で調製した試料の硬度は、所与の焼結浸漬温度について1.2重量%のチタン添加物によるものよりも低い。黒鉛は1つの結晶学的方向でファンデルワールス結合が弱く;黒鉛が濃縮した微細構造領域は非常に低い硬度を有する。従って、微細構造における高い濃度の黒鉛は測定される硬度を低下させる。3.7重量%のCを有する粉末組成物から調製した試料におけるさらに高い黒鉛は、実際、1.2重量%のCの検体におけるさらに高い多孔性(
図6B及び6C)よりも硬度には有害である(
図7B及び7C)。このことは常に、炭化ホウ素の焼結助剤として炭素を使用することと二律背反してきた。すなわち、炭素は緻密化を促進するが、微細構造におけるその存在は低い硬度を背負うことになる。
【0058】
水溶性種の形態で炭素とチタンを同時に導入することは、顆粒化粉末における炭化ホウ素粒子すべての表面をフェノール樹脂とチタン含有の前駆体相で密にコーティングする明白な利点を有する。800℃〜1000℃の間で熱処理した後、チタンを運ぶ前駆体相はXRDパターンから顕著に消失し、検出されたTi含有の結晶相はその場にはなくなる(
図18A及び18B)。前駆体相は、ホウ酸液相に可溶性であるチタニアに分解すると解釈される(室温に冷却した後、ガラスを形成し、それはXRDでは検出できない)。1000〜1300℃の範囲では、黒鉛はボリア液と反応してなくなり(検知可能な蒸気圧を有する液中でのボリア成分と共に);液相で濃縮されたチタニアは以下の反応に従って黒鉛及びB
4Cと反応すると解釈される。
3C
(s)+2TiO
2(s)+B
4C
(s)=2TiB
2(s)+4CO
(g)
【0059】
次いで微細構造における黒鉛は、炭化ホウ素に匹敵する硬度(ヌープ硬度、100g負荷:B
4Cについては2800kg/mm
2、TiB
2については2850kg/mm
2[8])を有するTiB
2の粒子によって置き換えられる。XRD(
図17)及び微細構造の解析(
図16)はチタン添加物の存在のために黒鉛抽出の説得力のある証拠を提供する。3.7重量%のCを含有する粉末組成物に基づいて調製した第1及び第2の実験系列については、硬度は一般に、チタン含量の上昇に伴って上昇する。さらに高いチタン含量が焼結熱処理の間、さらに多くの黒鉛を消費し、微細構造における軟らかいスポット(黒鉛)の濃度を薄め、硬いTiB
2領域でそれを置き換える。
【0060】
所与の組成物については、焼結浸漬温度の上昇に伴って、黒鉛粒子が粗くなり、体積パーセントが増した(
図12)。さらに高い焼結温度は炭化ホウ素からのホウ素の優先的な蒸発を促進した。焼結浸漬温度の上昇に伴う硬度の低下に対する、焼結浸漬温度の上昇に伴う黒鉛の粗大化と大げさな粒子の成長の相対的な寄与は差別化されていない。
【0061】
HIP後の最大相対密度(
図3A〜3C及び6A〜6C)は、焼結後(HIP後ではない)の最高相対密度を得たものより低い焼結浸漬温度の使用から生じた。その最大まで焼結相対密度を上げるのに必要とされた高い浸漬温度は、さらに大きな粒子の成長、粒子内へのさらに多くの孔の閉じ込めを助長したが、その後のHIP後処理はそれらを排除できなかった。
【0062】
低いHIP後の相対密度を持つ検体が実際、高い硬度を有することを示す場合があった(
図11A)。これはさらに、粒子成長を最小化することにおける低い焼結浸漬温度の利点を示し;元々の粒度に近い粒度を持つ微細構造は最高の硬度を示した。このことは、硬度は粒度(の平方根)の低下に伴って上昇するセラミックスにおける典型的なホール・ペッチの挙動と一致する。
【0063】
これらの結果は、密閉気孔率状態(効果的であるHIPに必要とされる)に達するのに必要とされるものより高くない相対密度を達成する最低に焼結温度が最終的にHIP後の試料にて最高硬度の微細構造を生み出すという以前の明白ではない結論を明瞭に発展させている。
【0064】
さらに低い硬度を生じる熱処理も測定された硬度でさらに大きな偏差を生じた(
図31)。硬度が高い検体は、低い気孔率、微細で均質に分布する第2の相(黒鉛とTiB
2)及び微細な粒度を有する傾向がある。これが当てはまらない場合、圧子が、各刻み目を持つ種々の微細構造特性と相互作用し、測定された硬度にて標準偏差を大きくする。従って、以前報告されたものより高い平均硬度を生じる本明細書で記載される開発はまた、物品のあらゆる方向で硬度に高い一貫性を生じ、それは、本発明に従って製造される物品が、たとえば、弾道発射体を迎撃するための人員用装甲のような高リスク環境に使用される場合、大きく有利である。
【0065】
2200℃の焼結浸漬温度に暴露した1.33重量%のTi、3.7重量%のCの検体の硬度は、2200℃の焼結浸漬温度に暴露した2.40重量%のTi、1.2重量%のCの検体のそれと共に、炭化ホウ素の利用可能な報告されている硬度と比べて顕著に高かった。これらの検体は出発粒度に非常に近い粒度を有した。HIP後の粒子で出発粒度を保持することは達成することができる硬度の限界を表す。使用した特定の粉末は、それが比較的狭い粒度分布を有するように(ジェットミルで)調製したが;この粉末のd
90〜d
10の範囲は1.5〜0.2μmだった。比較的乏しい圧粉密度を背負う一方で、そのような分布は粒度成長の駆動力を減衰させた。さらに小さなd
50を持つ狭い粒度分布の粉末を使用するのであれば、さらに高い硬度が得られることが期待される。
【0066】
本明細書で記載される方法を用いた炭素及びチタンの最適な添加は、粉末供給源によって変化し;焼結を促進するのに必要な炭素の量は炭化ホウ素の粒度の増大に伴って増えることが必要であると思われ、その結果、添加されるチタンの量は増え、この炭素の多くを消費し、硬く、微細な、よく分散したTiB
2粒子を形成することが必要であろう。逆に、高い濃度の遊離の炭素(一般的な不純物)を伴った炭化ホウ素供給源は少ない炭素添加しか必要としないであろう。本明細書で与えられた例は、炭化ホウ素の異なる供給源についての硬度、又は炭化ホウ素の同一等級及び製造元のロット番号を最適化するのに必要とされる添加物含量及び焼結浸漬温度を確立する方法を明らかにしている。
【0067】
硬度を改善することを目的とする有機金属Ti添加に対する実践的な上限は他の検討によって限定される。加熱分解/熱分解の熱処理は通常、成形体内部からの気体の発生の間、一部を損傷しないようにゆっくりと行われる。この感受性は一般に、物品の厚さの増大に伴って上昇する。上述の加熱分解/熱分解のスケジュールを用いて、有機金属添加物を介した、たとえば、約4重量%のTiの添加は、約0.366”の厚さで4”×4”タイルの亀裂を生じることが分っている。さらに遅いスケジュールがこれを克服し得ることが可能であるが、そのようなスケジュールに要する時間は非実践的になり得る。さらに、有機金属添加物の連続的な添加は、B
4C(2.52g/cm
3)に対してさらに多いTiB
2(4.52g/cm
3)を生じるであろう。人員用装甲のような適用については、この添加した重量は歓迎されない。これもまた、望ましいチタン添加に対する上限を主張する。
【0068】
技能者によって容易に理解されるように、炭素含量の適切な選択によって常圧焼結は低い温度で行われる。炭素が粒子の成長を妨害する一方で、チタン含量の適切な選択が次いで最終焼結生成物における炭素の濃度を薄めることができる。従って、炭素とチタンの適切な選択の組み合わせが、密閉気孔率の閾値(すなわち、効果的であるHIPに必要な最低相対密度)にて低い浸漬温度での焼結を可能にし、その際、粒度は小さく維持され、炭素はチタンとの反応を介して消費され、それは物質の硬度をさらに高める。すなわち、炭素は焼結を促進し、その濃度は次いで、非常に硬く、微細に分散したTiB
2の相を形成する工程で薄められる。また、狭い粒度分布のB
4C粉末(炭化ホウ素の出発供給源として)を使用すること及び密閉気孔率の閾値での焼結浸漬温度の使用によって、出発時点の炭化ホウ素粉末の元々の粒度中央値に近い平均粒度を持つ微細構造を達成することができる。相互依存の因子の組み合わせは、以前報告されたものより高い硬度のB
4Cに基づいた物品をもたらしてきた。
【0069】
要するに、本明細書で報告したデータは、炭化ホウ素粒子をチタン化合物で被覆することによって、本明細書で述べたように常圧焼結すると高い硬度値を有する物品を生じることができる粉末組成物が達成され得ることを示している。チタン化合物及び炭素含有化合物で粒子を被覆すること及び本発明に係る方法に基づいて物品を調製することは、B
4C及びTiB
2の微粒子(物品を調製するのに使用した炭化ホウ素粉末の粒度中央値よりも100%未満大きい粒度中央値を持つ)並びに低濃度の黒鉛を伴った微細構造を有する物品を生じることができ、それは結果的に装甲の構築に使用するのに好適な硬い物品となる。
【0070】
比較試験
粒子状のTiO
2添加の形態でチタンを提供することに対する水溶性C
6H
10O
8Ti・2(NH
4)(チタン化合物)コーティングの効果を比較するために、別の系列の実験を本明細書で記載し、指名された本発明者の一人が着手し、背景の項で参照されている2011年12月に公表されたC.S.Wileyによるジョージア工科大学の学位論文「高い強度で低コストの炭化ホウ素を製造するための相乗的な方法」に記載されている。これらの実験では、HD15炭化ホウ素粉末(特徴については上記表1を参照)とTiO
2粉末(0.9μmのルチルTiO
2又は32nmのアナターゼTiO
2)と有機結合剤を脱イオン水に加え、均質化し、均一なスラリーを形成した。こうして、これらの試験では、スラリーは水溶性のチタン含有有機金属化合物では調製しなかった。むしろ、酸化チタン粒子を用いて炭化ホウ素粒子とのスラリーを調製した。
【0071】
そのように調製したスラリーを次いで、超音波スプレー乾燥器ノズル及び試験的生産規模のスプレー乾燥器を用いてスプレー乾燥し、チタン源を含有する粉末組成物を得た。次いで、
図1A及び関連した記載と同様に粉末組成物から試料を得た。スラリー試料の調製に使用したチタンの量は0.5、1、3.0及び5.0重量%だった。種々のチタン含有スラリー試料への炭素の添加は0、1.2及び3.7重量%だった。
【0072】
図19A〜19Cは、スラリーにおいてチタニア粉末(0.9μm、d
50)を使用する効果を、常圧焼結の浸漬温度の関数としてグラフで開示する。
図20A〜20Cは、常圧焼結後の同一試料でのHIPの結果をグラフで開示する。
【0073】
図21を参照して、HIP後の最高の相対密度は、1重量%のチタンと3.7重量%の炭素を含有する粉末組成物と共に、2240℃及び2260℃の常圧焼結の浸漬温度(液状Ti添加物を含有する高硬度の試料よりも約60℃高い)を用いて達成された。
図21に示すように、硬度はこの常圧焼結の浸漬温度及び炭素含量で一般に最高だった。2260℃の浸漬温度のみを別にすれば、硬度はTi含量の増加に伴ってやや上昇した。5重量%のTi添加での測定された最高硬度は2884.5kg/mm
2だった。このHIP後の検体における相は、本明細書で開示された高い硬度のB
4CHD検体:B
4C、黒鉛及びTiB
2(
図22)で観察されたものと同じだった。この試料の微細構造を
図23Aに示す。有機金属添加物を用いた最高硬度の検体の微細構造(
図15B)と比べると、この微細構造はB
4C、C及びTiB
2のより大きな粒子と共にさらに不均質な分布の第2相(C及びTiB
2)を示す。粒度は10μmの桁であり、それは本発明に従って調製した試料の一部の粒度よりもはるかに大きいことに留意すべきである。
【0074】
図24A〜24C及び
図25A〜25Cは、32nmのTiO
2をスラリーに加えたことを除いてこの比較試験と同様に調製した試料についての焼結した及びHIP後の相対密度を示す。
図26を参照して、1重量%を超えるチタンと3.7重量%の炭素の添加を含む粉末組成物から調製した試料についての2260℃の焼結浸漬温度はHIP後の最高相対密度を促進した。5重量%のTiと3.7重量%のCを含有する粉末から調製し、2260℃の浸漬温度で常圧焼結した試料でHIPを行った後に達成された硬度は2846.0kg/mm
2(
図26)だった。TiO
2のナノスケール粒子の添加による最高の達成可能な硬度における改善の欠如は、そのような微粒子の高い凝集傾向によるものと思われる。
図23Bに示すように、微細構造におけるTiB
2粒子は0.9μmのd
50粒子としてTiO
2を添加した場合と比べて実際粗大化していた。2種のTiO
2粒度を含有する粉末組成物に基づいて調製した試料の最良の硬度値は、上記で開示された例で使用したC
6H
10O
8Ti・2(NH
4)添加物で達成した硬度(3137.6kg/mm
2)をはるかに下回った。従って、比較例は、さらに高い硬度値は、チタン有機金属がスラリーでチタン源として素地に使用される粉末組成物の調製に使用される場合、達成され得ることを示している。