(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981489
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】衣料用織布から形成された靴下及び該靴下の製造方法
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
A41B11/00 J
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-118472(P2014-118472)
(22)【出願日】2014年6月9日
(65)【公開番号】特開2015-148037(P2015-148037A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2014年8月4日
(31)【優先権主張番号】14250017
(32)【優先日】2014年2月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514145327
【氏名又は名称】ジー ガオ
(74)【代理人】
【識別番号】100102886
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 光夫
(72)【発明者】
【氏名】ジー ガオ
【審査官】
藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−099707(JP,U)
【文献】
特開2003−088412(JP,A)
【文献】
特表2012−525123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣料用織布から形成された靴下であって、該衣料用織布は該靴下の形状を画成する層状の織布サポート材(11)と、該織布サポート材の踵部分と着用者の足の球状部分と平行する足裏部分の少なくともいずれかの部分の内表面に可撓性接着剤(15,16)で固定された治療用織布層(14)とを有し、該治療用織布層(14)は、赤外線反射能・抗菌性を有し、磁気粒子を含む繊維またはフィラメントからなり、かつ該治療用織布層は硫黄、酸化亜鉛、アラントイン、ラノリンのうち1つまたは複数の成分を含み、該可撓性接着剤は防風(fang fend)、荊芥(jing jie)、透骨草(tou gu cao)、当帰(dang gui)、紅花(hong hua)、丁香(ing Xiang)、川椒(chuan jiao)、ヨモギの葉(ai ye)及び降真香(iang zhen Xiang)からなる群から選ばれる1種類以上のハーブ成分を含み、該可撓性接着剤は少なくとも部分的に織布サポート材及び治療用織布層の各層に浸透状態で存在し、該可撓性接着剤と各層間には化学的接着及び機械的結合が存在することを特徴とする靴下。
【請求項2】
前記可撓性接着剤(15、16)は、中国産ハーブを含むことを特徴とする請求項1に記載の靴下。
【請求項3】
可撓性接着剤(15,16)が、天然ゴムと前記ハーブ成分の混合物からなる請求項1又は2に記載の靴下。
【請求項4】
治療用織布層(14)の厚さが1.0mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の靴下。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の靴下を製造する方法であって、該製造方法は、前記可撓性接着剤を準備し、該可撓性接着剤を前記織布サポート層(11)と前記治療用織布層(14)のうちの一方に塗布し、該可撓性接着剤により前記治療用織布層を織布サポート層の表面の少なくとも1部に固定することを特徴とする、靴下の製造方法。
【請求項6】
第一接着剤としての前記可撓性接着剤に加えて、水酸化カリウム、 アラントイン、アセチルサリチル酸の1種類以上と天然ゴムとを混合して得られる第2の可撓性接着剤を準備し、第一の該接着剤を織布サポート層(11)と治療用織布層(14)のうちの一方に塗布し、第二接着剤を治療用織布層(14)と織布サポート層(11)のうちの他方に塗布し、次いで、二つの該接着剤層を互いに接触して治療用織布層を織布サポート層の表面の少なくとも1部に固定することを特徴とする、請求項5に記載の靴下の製造方法。
【請求項7】
第一接着剤(15)が前記治療用織布層(14)に塗布され、第二接着剤が織布サポート層(11)に塗布されることを特徴とする請求項5または6のいずれか1項に記載の靴下の製造方法。
【請求項8】
二つ層の接着剤(15,16)の厚さが実質的に等しいことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の靴下の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、一つ以上の理由により損傷した皮膚部位を覆うように貼った際に有益な効果を与える衣料用織布に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚損傷は気候的要因、特に低温低湿による状況下や、石灰、セメント、塩等の物質との接触による環境要因によりしばしば生じる。その他、皮膚への損傷は遺伝的要因、細菌病、また特に高齢者の場合には生理学的要因が関連する場合もある。
【0003】
多くの女性は踵の皮膚が損傷しているが、他人のスリッパやサンダル等の夏用の履物を履いた際に患う可能性がある。また、冬には、大きなひびが生じて、出血する可能性があるという不快さがある。
【0004】
特許文献1は、例えば、100nm未満の直径を有するナノシルバー粒子を含有する繊維素材を供給することによって、抗菌性を有する繊維若しくはフィラメントからなるソックス等の衣料を形成することは既知であると記載している。これらの抗菌性は、細菌性疾患による損傷を受けた皮膚の部位に比較的健康な環境を提供し、皮膚が自然回復するのを助けるような比較的健康な環境を提供する。但し、前記抗菌性のみでは速やかな回復を確実とし、若しくは促進する効果は限定的である。
【0005】
皮膚損傷の速やかな回復は、しばしば、血液循環を良好な速度を確実にすることで改良することができる。また、損傷を受けた皮膚の回復はクリームを使用することにより促進されることが知られているが、しばしば、患者はクリームを定期的に塗布することを忘れるものである。また、酸化亜鉛、万能薬(snake oil)、ワセリン(RTM)及び硫黄膏薬等の薬を使用することも知られているが、これらの薬による治療は便宜性に劣り、また一般的に高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開公報第1490543号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
回復速度及び/又は回復の容易さが促進されれば好都合であり、本発明はこの問題を処理する衣料用織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の視点によれば、衣料用織布から形成された靴下であって、該衣料用織布は該靴下の形状を画成する層状の織布サポート材(11)と、該織布サポート材の踵部分と着用者の足の球状部分と平行する足裏部分の少なくともいずれかの部分の内表面に可撓性接着剤(15,16)で固定された治療用織布層(14)とを有し、該治療用織布層(14)は、赤外線反射能・抗菌性を有し、磁気粒子を含む繊維またはフィラメントからなり、かつ該治療用織布層は硫黄、酸化亜鉛、アラントイン、ラノリンのうち1つまたは複数の成分を含み、該可撓性接着剤は防風(fang fend)、荊芥(jing jie)、透骨草(tou gu cao)、当帰(dang gui)、紅花(hong hua)、丁香(ing Xiang)、川椒(chuan jiao)、ヨモギの葉(ai ye)及び降真香(iang zhen Xiang)からなる群から選ばれる1種類以上のハーブ成分を含み、該可撓性接着剤は少なくとも部分的に織布サポート材及び治療用織布層の各層に浸透状態で存在し、該可撓性接着剤と各々の両層間には化学的接着及び機械的結合が存在することを特徴とする靴下を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る靴下またはその他の衣料は、血液の微小循環速度および粘性を有利に高める効果を発揮すると考えられる抗菌性のため、損傷を受けた皮膚を速やかに回復する改善された能力を提供する。このため、軟膏のような比較的便宜性の低い治療方法を用いる必要がなくなるのである。 特に、足の踵または他の部分が損傷を受けた場合、本発明に係る靴下を使用することにより、軟膏等の使用より便宜性が高く、また靴下は日常生活において習慣的に用いられるものであることから、軟膏の塗り忘れのような事態が生じにくく、日常的かつ定期的な治療が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を以下に詳細に説明する。
本明細書で用いられる用語「繊維」と「フィラメント」は、比較的短い長さのフィラメント素材、および比較的長い長さのフィラメント素材をそれぞれ指し、編み糸、紐、及び複数の繊維及び/またはフィラメントからなる集合体の他を含む。
【0011】
ハーブ成分は中国産のハーブ成分であることが好ましく、可撓性接着剤は防風(fang fend)、荊芥(jing jie)、透骨草(tou gu cao)、当帰(dang gui)、紅花(hong hua)、丁香(ding Xiang)、川椒 (chuan jiao)、 ヨモギの葉(ai ye)、降真香(jiang zhen Xiang)のうち1つまたは複数を成分とすることが望ましい。
【0012】
痛みの緩和に関しては、可撓性接着剤には丁香を成分とすることが望ましい。汗孔の開きに関しては、防風、 荊芥、透骨草の1つまたは複数の成分とすることが望ましく、またこれら3種のハーブ成分の全てが混合されたものを使うことがなおよい。血行改善効果に関しては、ヨモギの葉を成分とすることが望ましい。血液循環の促進に関しては、降真香や紅花を成分とすることが望ましい。前記の織布サポート材には抗菌効果を有するものとすることもできる。前記の治療用織布層は、更に硫黄、酸化亜鉛、アラントイン、ラノリンのうち1つまたは複数の成分を含むことができる。
【0013】
「織布」という用語は、製織、編組、フェルト製造等のプロセスにより束ね、繊維及び/またはフィラメンを凝集集合させた繊維及び/またはフィラメントより作られた素材を指す。
【0014】
接着剤は不純物を除去するために天然ラテックスの濾過をし、その後前記のハーブ成分との混合タイプや、またオプションとして水酸化カリウム(KOH)、アラントイン、促染剤(PX等)、アセチルサリチル酸のうち1つまたは複数のものとの混合して作成したタイプのものでもよい。
【0015】
可撓性接着剤の層は、2つの接着剤層から成ることが好ましい。2つの接着剤層の一方の層は前記のハーブ成分と混合した天然ゴムからなっていても良く、他方の層は水酸化カリウム、 アラントイン、アセチルサリチル酸のうち1つまたは複数のものと混合した天然ゴムとすることができる。
【0016】
治療用織布層は、前記の特許文献1に示された方法等の周知の技術により抗菌を持たせた繊維・フィラメントを成分とすることができる。また、オプションとして、織布サポート材にも抗菌加工を行うことができる。治療用織布層の厚さは好ましくは1.0mm未満で、0.5mm未満が好ましい。多くの用途では厚さが0.2mmまたはそれ以下となることが好ましい。
【0017】
治療用織布層は、酸性、中性、またはアルカリ性の無色透明のナノシルバー溶液によって繊維・フィラメントを加工することにより抗菌性を持たせることが望ましい。
ナノシルバー溶液は0.5nmまたはそれ以下の銀粒子を成分とすることが好ましい。 治療用織布層の繊維・フィラメントには、綿または羊毛等の天然の繊維・フィラメント、またはポリアミド(例えばナイロンまたは芳香族ポリアミド)等の合成の繊維・フィラメントとすることができる。
【0018】
可撓性接着剤の接着層には治療効果を増すために硫黄、酸化亜鉛、ラノリン等の他の材料を組み入れることができる。
【0019】
平均磁束が0.35mm mwb以上である治療用織布層が用いることが好ましい。治療用織布層は体熱の反射、特に8〜14μmの波長を有する赤外線の反射を行う上で効果的であることが好ましい。
治療用織布層(14)が磁性粒子を含む繊維またはフィラメントからなる。治療用織布層は靴下やその他の衣料(手袋等)の全体または一部において裏地として設けることができる。また、治療用織布層は着用者の皮膚に接する衣料の表面部分に接着させたパッド形状とすることができる。パッドの素材としては特に白綿布が適している。
【0020】
織布サポート材は木綿、ナイロン、木綿とナイロンの混合、羊毛と木綿の混合、竹繊維、リナム繊維、赤外線繊維、磁気繊維等から形成することができる。その他一般に知られる素材も織布サポート材を形成し、衣料の形付けのために用いることができる。
【0021】
本発明における第二の視点として、少なくともその一部に治療用層が接合されるサポート層からなる衣料用織布の製造方法が挙げられる。この製造方法はハーブ成分を成分とする第一接着剤を準備し、サポート層や治療用織布層の一部に対する前記第一接着剤を塗布し、水酸化カリウム・ アラントイン・アセチルサリチル酸のうちの1つまたは複数のものと混合した天然ゴムを成分とする第二接着剤を使用し、前記の治療用織布層やサポート材の他の部分に対して第二接着剤を塗布し、2つの接着層を互いに接触させサポート層の表面の少なくとも一部に治療用織布層を固定することからなる。
【0022】
第一接着剤は、防風、荊芥、透骨草、当帰、紅花、丁香、川椒、ヨモギの葉、降真香といった中国産ハーブのうち1つまたは複数のものからなるハーブ成分と天然ゴムの混合物とすることが望ましい。ハーブ成分は150℃以上の温度において天然ゴムとゆっくり混合することにより混入する。第一接着剤は治療用織布層に対して塗布することが望ましいが、サポート層に塗布することもできる。また、第一接着剤の塗布層の厚さは0.01mmであることが望ましい。
【0023】
第二の接着剤層は織布サポート材に適応することが望ましいが、治療用織布層に塗布することもできる。第二接着剤の塗布層の厚さは0.01mmであることが好ましい。なお、その他の厚さも可能であり、可撓性接着剤の2つの接着剤の各層の厚さは実質的に等しいことが好ましい。
【0024】
2つの層は200℃以上の温度の下で初期には相互に接触保持することが好ましい。また、各層に接着剤を塗布する時点とそれらを接触させる時点間においては少なくとも2分、好ましくは少なくとも5分遅延させることが好ましい。
【0025】
前記の靴下は踵部分12と足裏部分13(着用者の足の球状部分と並行している)よりなる。12と13の各部には、本発明による可撓性の治療用織布パッド14が設けられる。
本発明の一実施態様を、例としてのみであるが、本発明に基づく靴下の断面図である添付する概略図(第1図)と接着層を示すために靴下の一部の断面図(
図2)を参照して説明をする。
靴下10(
図1)は、可撓性の抗菌素材であり靴下を形成する伸縮可能な外部織布層11を有する。靴下は踵部分12と足裏部分13(使用時に、着用者の足の球状部分と並行)よりなる。12と13の各部には、本発明による可撓性の治療用織布パッド14が設けられる。
【0026】
本発明の実施態様において、各部におけるパッドの厚さは0.2mmであり、ナイロン製のフィラメントからなる。ナイロン製フィラメントは銀分子を担持するnm単位以下の大きさである燐酸ジルコニウムを用いている。また、フィラメントは遠赤外線および抗菌効果を示すタイプのものとなっている。パッドは天然ラテックスからなる可撓性接着剤層によって所定の位置に保持され、可撓性接着剤層は層11とパッド14の織布材料に部分的に浸透する。化学的接着に加えて、間に入り込んだ天然ラテックスは、層11とパッド14のフィラメントとの間に機械的結合を行う。
【0027】
本発明の実施態様において、可撓性接着剤の接着層は 天然ラテックスと防風、 荊芥、 透骨草、 当帰、 紅花、 丁香、 川椒、ヨモギの葉、降真香等の中国産ハーブのうち1つまたは複数の成分の混合物である第一接着剤 15を有す。また、第一接着層は、150℃以上の温度で天然ラテックスとハーブの原料をゆっくり混合することにより形成される。第二接着剤16は水酸化カリウム、 アラントイン、アセチルサリチル酸と天然ラテックスを混合することにより形成される。
【0028】
第一接着剤15はパッド14に対する層として塗布され、第二接着剤16はパッド14を受け入れる織布層11の部分に層として塗布される。2つの接着剤は適用され厚さ0.01mmの層を形成する。2つの接着剤層は2分間別々に保持され、200℃以上の温度において結合される。
【0029】
本発明に基づく靴下またはその他の衣料は、血液の微小循環速度および粘性を高める上で効果を優位に発揮するとして発見された抗菌性に鑑みて、損傷を受けた皮膚の回復を速やかする能力を改良すると思われる。このため、軟膏のような比較的非便宜性の治療方法を用いる必要がなくなるのである。 特に、踵またはその他の足の部分が損傷を受けた場合、本発明に基づく靴下の使用は、軟膏等の使用より便宜性が高く、また靴下は日常生活において習慣的に用いられるものであることから軟膏の塗り忘れのような事態が生じにくく、日常的かつ定期的な治療が可能となる。
【符号の説明】
【0031】
10・・・靴下、11・・・織布サポート材、12・・・踵部分、13・・・足裏部分、14・・・治療用織布層、15、16・・・接着剤