特許第5981495号(P5981495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5981495磁石埋込型ロータの製造方法及び製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981495
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】磁石埋込型ロータの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   H02K15/02 K
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-153203(P2014-153203)
(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-32338(P2016-32338A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2015年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】濱中 一平
(72)【発明者】
【氏名】澤村 政敏
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−201269(JP,A)
【文献】 特開2013−090381(JP,A)
【文献】 特開平07−322538(JP,A)
【文献】 特開2011−135734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/00−15/16
H02K 1/00− 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石収容孔を有するコアと、
前記永久磁石収容孔に収容されて周方向に互いに離れて配置された2つの永久磁石と、
先太り状に形成された一対の端部を有する連結部材と、
を備え、
前記永久磁石収容孔の内壁面には、外周側に開口すると共に内周側に向かって末広がりの内周側窪みと、内周側に開口すると共に外周側に向かって末広がりの外周側窪みが形成されている、
磁石埋込型ロータの製造方法であって、
前記連結部材の一方の端部を前記内周側窪みに挿入し、他方の端部を前記外周側窪みに挿入する挿入ステップと、
前記内周側窪みの近傍において前記永久磁石収容孔の前記内壁面を内周側に向かって塑性変形させ、又は、前記外周側窪みの近傍において前記永久磁石収容孔の前記内壁面を外周側に向かって塑性変形させる塑性変形ステップと、
を含む、
磁石埋込型ロータの製造方法。
【請求項2】
永久磁石収容孔を有するコアと、
前記永久磁石収容孔に収容されて周方向に互いに離れて配置された2つの永久磁石と、
先太り状に形成された一対の端部を有する連結部材と、
を備え、
前記永久磁石収容孔の内壁面には、外周側に開口すると共に内周側に向かって末広がりの内周側窪みと、内周側に開口すると共に外周側に向かって末広がりの外周側窪みが形成されており、
前記連結部材の一方の端部が前記内周側窪みに挿入され、他方の端部が前記外周側窪みに挿入された、
磁石埋込型ロータの製造装置であって、
前記内周側窪みの近傍において前記永久磁石収容孔の前記内壁面に接触可能な内周側接触体、又は、前記外周側窪みの近傍において前記永久磁石収容孔の前記内壁面に接触可能な外周側接触体と、
前記内周側接触体又は前記外周側接触体に対してテーパー接触可能な作動接触体と、
を備え、
前記連結部材を前記コアに取り付けた後、前記作動接触体を前記内周側接触体又は前記外周側接触体に対してテーパー接触させて、前記内周側窪みの近傍において前記永久磁石収容孔の前記内壁面を内周側に向かって塑性変形させ、又は、前記外周側窪みの近傍において前記永久磁石収容孔の前記内壁面を外周側に向かって塑性変形させる、
磁石埋込型ロータの製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁石埋込型ロータの製造装置であって、
前記内周側接触体を備え、
前記内周側接触体の前記コアに対する接触面には内周側に向かって部分的に隆起する隆起部が形成されている、
磁石埋込型ロータの製造装置。
【請求項4】
請求項2に記載の磁石埋込型ロータの製造装置であって、
前記外周側接触体を備え、
前記外周側接触体の前記コアに対する接触面には外周側に向かって部分的に隆起する隆起部が形成されている、
磁石埋込型ロータの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石埋込型ロータの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、特許文献1は、鋼板を積層して成る本体部に永久磁石を埋め込んだ回転子を備えた埋込磁石モータを開示している。詳しくは、本体部に永久磁石用孔を形成し、永久磁石用孔内に2つの永久磁石を配置し、永久磁石用孔の内周側及び外周側の両面を機械的に連結するブリッジを2つの永久磁石の間に配置している。この構成によれば、遠心力の作用により永久磁石用孔が変形してしまうのを回避できるとしている。
【0003】
上記の回転子では、ブリッジの両端に形成した係止部を、本体部が有する嵌合孔に夫々嵌め込むことで、永久磁石用孔の内周側及び外周側の両面を機械的に連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−201269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、嵌合孔の内面と係止部との間に若干の隙間が存在しているので、永久磁石用孔が遠心力で変形してしまう余地が残されていた。
【0006】
本発明の目的は、遠心力によってコアが変形してしまうのを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の第1の観点によれば、永久磁石収容孔を有するコアと、前記永久磁石収容孔に収容されて周方向に互いに離れて配置された2つの永久磁石と、先太り状に形成された一対の端部を有する連結部材と、を備え、前記永久磁石収容孔の内壁面には、外周側に開口すると共に内周側に向かって末広がりの内周側窪みと、内周側に開口すると共に外周側に向かって末広がりの外周側窪みが形成されている、磁石埋込型ロータの製造方法であって、前記連結部材の一方の端部を前記内周側窪みに挿入し、他方の端部を前記外周側窪みに挿入する挿入ステップと、前記内周側窪みの近傍において前記永久磁石収容孔の前記内壁面を内周側に向かって塑性変形させ、又は、前記外周側窪みの近傍において前記永久磁石収容孔の前記内壁面を外周側に向かって塑性変形させる塑性変形ステップと、を含む、磁石埋込型ロータの製造方法が提供される。以上の方法によれば、前記コアと前記連結部材の間の径方向における隙間が消失するので、前記永久磁石収容孔よりも外周側の外周側コア部分が遠心力により外周側へ変形してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0008】
本願発明の第2の観点によれば、永久磁石収容孔を有するコアと、前記永久磁石収容孔に収容されて周方向に互いに離れて配置された2つの永久磁石と、先太り状に形成された一対の端部を有する連結部材と、を備え、前記永久磁石収容孔の内壁面には、外周側に開口すると共に内周側に向かって末広がりの内周側窪みと、内周側に開口すると共に外周側に向かって末広がりの外周側窪みが形成されており、前記連結部材の一方の端部が前記内周側窪みに挿入され、他方の端部が前記外周側窪みに挿入された、磁石埋込型ロータの製造装置であって、前記内周側窪みの近傍において前記永久磁石収容孔の前記内壁面に接触可能な内周側接触体、又は、前記外周側窪みの近傍において前記永久磁石収容孔の前記内壁面に接触可能な外周側接触体と、前記内周側接触体又は前記外周側接触体に対してテーパー接触可能な作動接触体と、を備え、前記連結部材を前記コアに取り付けた後、前記作動接触体を前記内周側接触体又は前記外周側接触体に対してテーパー接触させて、前記内周側窪みの近傍において前記永久磁石収容孔の前記内壁面を内周側に向かって塑性変形させ、又は、前記外周側窪みの近傍において前記永久磁石収容孔の前記内壁面を外周側に向かって塑性変形させる、磁石埋込型ロータの製造装置が提供される。以上の構成によれば、前記コアと前記連結部材の間の径方向における隙間が消失するので、前記永久磁石収容孔よりも外周側の外周側コア部分が遠心力により外周側へ変形してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0009】
前記内周側接触体を備え、前記内周側接触体の前記コアに対する接触面には内周側に向かって部分的に隆起する隆起部が形成されている、磁石埋込型ロータの製造装置が提供される。以上の構成によれば、前記コアと前記連結部材の間の径方向における隙間が消失した後の前記コアの流動性が確保される。
前記外周側接触体を備え、前記外周側接触体の前記コアに対する接触面には外周側に向かって部分的に隆起する隆起部が形成されている、磁石埋込型ロータの製造装置が提供される。以上の構成によれば、前記コアと前記連結部材の間の径方向における隙間が消失した後の前記コアの流動性が確保される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記コアと前記連結部材の間の径方向における隙間が消失するので、前記永久磁石収容孔よりも外周側の外周側コア部分が遠心力により外周側へ変形してしまうのを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ロータの部分平面図である。
図2図1のA部拡大図であって、ロータの回転前の状態を示す図である。
図3図1のA部拡大図であって、ロータの回転後の状態を示す図である。
図4】ロータの製造装置の平面図である。
図5図4のB部拡大図である。
図6図4のVI-VI線断面図であって、コアのカシメ前の状態を示す図である。
図7】ロータの製造フローである。
図8図4のVI-VI線断面図であって、コアのカシメ後の状態を示す図である。
図9図5のC部拡大図であって、コアのカシメ前の状態を示す図である。
図10図5のC部拡大図であって、隙間が消失した状態を示す図である。
図11図5のC部拡大図であって、コアのカシメ後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1には、ロータ1(回転子、磁石埋込型ロータ)の一部を示している。即ち、一般的にロータ1は複数の磁極部分2から構成されており、図1にはそのうちの1つの磁極部分2のみを示している。図1に示すように、磁極部分2は、電磁鋼板の積層体から成るコア3と、2つの永久磁石4と、2つのブリッジ5(連結部材)とを備える。
【0013】
コア3は、内周面3aと外周面3bと複数の永久磁石収容孔6を有する。図1に示すように、1つの磁極部分2に1つの永久磁石収容孔6が形成されている。永久磁石収容孔6は、内周側に凸となるU字状に形成されており、ブリッジ収容空間7と2つの磁石収容空間8を有する。2つの磁石収容空間8は、周方向において互いに離れた空間であって、径方向に沿って細長く形成されている。ブリッジ収容空間7は、2つの磁石収容空間8を連結する空間であって、2つの磁石収容空間8の内周端同士を連結している。
【0014】
永久磁石収容孔6の内壁面6aには、2つの内周側窪み9と2つの外周側窪み10が形成されている。詳しくは、永久磁石収容孔6の内壁面6aのうち、ブリッジ収容空間7の内周側を区画する内周側内壁面11に2つの内周側窪み9が形成されており、ブリッジ収容空間7の外周側を区画する外周側内壁面12に2つの外周側窪み10が形成されている。2つの内周側窪み9と2つの外周側窪み10は、ブリッジ収容空間7を挟んで略線対称に形成されている。
【0015】
図2には、図1のA部を拡大して示している。図2に示すように、各外周側窪み10は、内周側に開口すると共に外周側に向かって末広がりとなるように形成されている。従って、コア3は、径方向において、1つの外周側窪み10とブリッジ収容空間7によって挟まれる一対の外周側爪部分13を有する。
【0016】
図1に戻り、各内周側窪み9は、外周側に開口すると共に内周側に向かって末広がりとなるように形成されている。従って、コア3は、径方向において、1つの内周側窪み9とブリッジ収容空間7によって挟まれる一対の内周側爪部分14を有する。
【0017】
2つの永久磁石4は、永久磁石収容孔6の2つの磁石収容空間8に夫々収容されている。2つの永久磁石4は、同極同士が周方向において向かい合うように配置されている。
【0018】
2つのブリッジ5は、内周側コア部分15と外周側コア部分16を連結するものであって、例えばSUS304などの非磁性体材料によって構成されている。ここで、内周側コア部分15は、コア3のうち永久磁石収容孔6よりも内周側の部分を意味し、外周側コア部分16は、コア3のうち永久磁石収容孔6よりも外周側の部分を意味する。外周側コア部分16は、2つの肉薄部17を介して内周側コア部分15と連結している。2つの肉薄部17は、夫々、2つの磁石収容空間8と外周面3bの間の部分である。2つの肉薄部17は、平面視で極力薄くなるように形成されている。従って、ロータ1が回転して外周側コア部分16に遠心力が作用すると、2つの肉薄部17が変形して外周側コア部分16が外周側に変形してしまう。外周側コア部分16が外周側に変形すると、コア3の外周面3bが外周側に膨らみ出て、コア3が図示しないステータと接触してしまう虞がある。そこで、2つのブリッジ5は、ロータ1が回転して外周側コア部分16に遠心力が作用しても、外周側コア部分16が外周側に変形してしまうことがないように、内周側コア部分15と外周側コア部分16を連結している。
【0019】
具体的には、各ブリッジ5は、先太り状に形成された一対の頭部20(端部)と、一対の頭部20の間の中間部21と、を有している。そして、図1及び図2に示すように、径方向で対向する内周側窪み9と外周側窪み10に、各ブリッジ5の2つの頭部20を夫々挿入する。内周側窪み9に挿入された頭部20は、ブリッジ5を外周側へ引っ張っても内周側窪み9から抜け出ることはない。同様に、外周側窪み10に挿入された頭部20は、ブリッジ5を内周側へ引っ張っても外周側窪み10から抜け出ることはない。この構成により、2つのブリッジ5は、ロータ1が回転して外周側コア部分16に遠心力が作用しても、外周側コア部分16が外周側に変形してしまうことがないように、内周側コア部分15と外周側コア部分16を連結している。
【0020】
しかしながら、製造コスト上の理由により、図2に示すように、コア3とブリッジ5の間には、径方向の隙間gが存在している。具体的には、隙間gは、コア3の各外周側爪部分13とブリッジ5の頭部20との間における径方向の隙間である。この種の隙間gは、コア3の各内周側爪部分14とブリッジ5の頭部20との間においても同様に存在している。そして、これらの隙間gの存在により、ロータ1が回転して外周側コア部分16に遠心力が作用すると、図3に示すように、外周側コア部分16は隙間gの分だけ外周側に変形してしまう。
【0021】
そこで、本願発明者は、上記の隙間gを消失させる技術を考案した。以下、図4図11を参照して、本技術を説明する。
【0022】
図4図6には、ロータ1の製造装置30を示している。図4図6に示すように、製造装置30は、カシメ治具50と、3つのカシメユニット36によって構成されている。図6に示すように、カシメ治具50は、内周側拘束ブロック31、外周側拘束ブロック32、下側拘束ブロック33、上側第1拘束ブロック34、上側第2拘束ブロック35によって構成されている。
【0023】
内周側拘束ブロック31は、コア3の内周面3aが内周側に変形しないようにコア3の内周面3aを拘束するブロックである。外周側拘束ブロック32は、コア3の外周面3bが外周側に変形しないようにコア3の外周面3bを拘束するブロックである。下側拘束ブロック33は、コア3の底面3cが下側に変形しないようにコア3の底面3cを拘束するブロックである。上側第1拘束ブロック34は、コア3の内周側コア部分15の上面3dが上側に変形しないようにコア3の内周側コア部分15の上面3dを拘束するブロックである。上側第2拘束ブロック35は、コア3の外周側コア部分16の上面3eが上側に変形しないようにコア3の外周側コア部分16の上面3eを拘束する部分である。
【0024】
図5及び図6に示すように、各カシメユニット36は、内周側押込みダイ37(内周側接触体)と、外周側押込みダイ38(外周側接触体)と、テーパーパンチ39(作動接触体)と、アクチュエータ40(駆動手段)によって構成されている。
【0025】
図5に示すように、内周側押込みダイ37は、内周側窪み9の近傍において内周側内壁面11に接触可能な内周側接触面37aと、テーパー状の内周側被駆動面37bを有する。内周側接触面37aには、内周側に向かって部分的に隆起する内周側隆起部37c(隆起部)が形成されている。
【0026】
同様に、外周側押込みダイ38は、外周側窪み10の近傍において外周側内壁面12に接触可能な外周側接触面38aと、テーパー状の外周側被駆動面38bを有する。外周側接触面38aには、外周側に向かって部分的に隆起する外周側隆起部38c(隆起部)が形成されている。
【0027】
図6に示すように、テーパーパンチ39は、内周側押込みダイ37の内周側被駆動面37bに対してテーパー接触可能な内周側駆動面39aと、外周側押込みダイ38の外周側被駆動面38bに対してテーパー接触可能な外周側駆動面39bを有する。
【0028】
アクチュエータ40は、テーパーパンチ39を軸方向に駆動させるためのものである。アクチュエータ40は、複数のカシメユニット36のテーパーパンチ39を複数同時に駆動させるものであってもよいし、複数のカシメユニット36のテーパーパンチ39を別個独立して駆動させるものであってもよい。
【0029】
次に、図7図11を参照して、製造装置30の制御フローを説明する。
【0030】
先ず、コア3の各永久磁石収容孔6の2つの磁石収容空間8に2つの永久磁石4を夫々挿入して取り付ける(S100)。次に、各永久磁石収容孔6のブリッジ収容空間7に2つのブリッジ5を挿入して取り付ける(S110)。図4に示すように、2つのブリッジ5は、周方向において、2つの永久磁石4の間に配置される。次に、複数の永久磁石4及び複数のブリッジ5が取り付けられたコア3をカシメ治具50にセットする(S120)。次に、図4図6に示すように、3つのカシメユニット36を各永久磁石収容孔6にセットする(S130)。そして、アクチュエータ40を駆動する(S140)。アクチュエータ40を駆動すると、図8に示すように、テーパーパンチ39が内周側押込みダイ37及び外周側押込みダイ38の間に押し込まれ、内周側押込みダイ37は内周側に移動し、外周側押込みダイ38は外周側に移動する。外周側押込みダイ38が外周側に移動すると、図9及び図10に示すように、外周側窪み10の近傍において外周側内壁面12が外周側に塑性変形し、即ち、外周側爪部分13が外周側へ塑性変形して、外周側爪部分13と頭部20との間の隙間gが消失する。内周側押込みダイ37が内周側に移動すると、同様に、内周側窪み9の近傍において内周側内壁面11が内周側に塑性変形し、即ち、内周側爪部分14が内周側へ塑性変形して、内周側爪部分14と頭部20との間の隙間gが消失する。このように隙間gが消失することで、ロータ1が回転して外周側コア部分16に遠心力が作用したときに、外周側コア部分16が外周側に変形してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0031】
テーパーパンチ39が内周側押込みダイ37及び外周側押込みダイ38の間に更に押し込まれると、図11に示すように、外周側爪部分13は、外周側隆起部38cに沿って中間部21側に流動することとなる。同様に、内周側爪部分14は、内周側隆起部37cに沿って中間部21側に流動する。従って、磁極部分2において複数の隙間g間にバラツキがあっても、そのバラツキは、外周側隆起部38cを避けるような外周側爪部分13の流動、及び、内周側隆起部37cを避けるような内周側爪部分14の流動によって実質的に吸収されることになる。更に言えば、複数の電磁鋼板間で、隙間gが異なるようなバラツキも上記の流動により実質的に吸収されることになる。従って、すべての隙間gを消失させるのに要するアクチュエータ40の最大駆動力を低く抑えることが可能となる。
【0032】
また、テーパーパンチ39は、内周側押込みダイ37及び外周側押込みダイ38に対してテーパー接触するので、カシメ完了後、テーパーパンチ39を内周側押込みダイ37及び外周側押込みダイ38の間から容易に引き抜くことができる。
【0033】
以上に、本願発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、以下の特長を有する。
【0034】
(1)ロータ1(磁石埋込型ロータ)は、永久磁石収容孔6を有するコア3と、永久磁石収容孔6に収容されて周方向に互いに離れて配置された2つの永久磁石4と、先太り状に形成された一対の頭部20(端部)を有するブリッジ5(連結部材)と、を備える。永久磁石収容孔6の内壁面6aには、外周側に開口すると共に内周側に向かって末広がりの内周側窪み9と、内周側に開口すると共に外周側に向かって末広がりの外周側窪み10が形成されている。このロータ1の製造方法は、ブリッジ5の一方の頭部20を内周側窪み9に挿入し、他方の頭部20を外周側窪み10に挿入する挿入ステップ(S110)と、内周側窪み9の近傍において永久磁石収容孔6の内壁面6aの内周側内壁面11を内周側に向かって塑性変形させると共に、外周側窪み10の近傍において永久磁石収容孔6の内壁面6aの外周側内壁面12を外周側に向かって塑性変形させる塑性変形ステップ(S140)と、を含む。以上の方法によれば、コア3とブリッジ5の間の径方向における隙間gが消失するので、永久磁石収容孔6よりも外周側の外周側コア部分16が遠心力により外周側へ変形してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、内周側窪み9の近傍において永久磁石収容孔6の内壁面6aの内周側内壁面11を内周側に向かって塑性変形させると共に、外周側窪み10の近傍において永久磁石収容孔6の内壁面6aの外周側内壁面12を外周側に向かって塑性変形させることとしたが、これに代えて、何れか一方の塑性変形のみとしてもよい。この場合でも、外周側コア部分16が遠心力により外周側へ変形してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0036】
また、内周側窪み9の近傍において永久磁石収容孔6の内壁面6aの内周側内壁面11を内周側に向かって塑性変形させるに際し、ブリッジ5を挟む2箇所で内周側内壁面11を塑性変形させてもよいし、ブリッジ5を挟む2箇所のうち何れか1箇所のみで内周側内壁面11を塑性変形させてもよい。同様に、外周側窪み10の近傍において永久磁石収容孔6の内壁面6aの外周側内壁面12を外周側に向かって塑性変形させるに際し、ブリッジ5を挟む2箇所で外周側内壁面12を塑性変形させてもよいし、ブリッジ5を挟む2箇所のうち何れか1箇所のみで外周側内壁面12を塑性変形させてもよい。何れの場合でも、外周側コア部分16が遠心力により外周側へ変形してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0037】
(2)ロータ1の製造装置30は、内周側窪み9の近傍において永久磁石収容孔6の内壁面6aの内周側内壁面11に接触可能な内周側押込みダイ37(内周側接触体)、及び、外周側窪み10の近傍において永久磁石収容孔6の内壁面6aに接触可能な外周側押込みダイ38(外周側接触体)と、内周側押込みダイ37及び外周側押込みダイ38に対してテーパー接触可能なテーパーパンチ39(作動接触体)とを備える。製造装置30は、ブリッジ5をコア3に取り付けた後、テーパーパンチ39を内周側押込みダイ37及び外周側押込みダイ38に対してテーパー接触させて、内周側窪み9の近傍において永久磁石収容孔6の内壁面6aの内周側内壁面11を内周側に向かって塑性変形させると共に、外周側窪み10の近傍において永久磁石収容孔6の内壁面6aの外周側内壁面12を外周側に向かって塑性変形させる。以上の構成によれば、コア3とブリッジ5の間の径方向における隙間gが消失するので、永久磁石収容孔6よりも外周側の外周側コア部分16が遠心力により外周側へ変形してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0038】
なお、上記実施形態では、内周側押込みダイ37及び外周側押込みダイ38の両方を備えることとしたが、これに代えて、何れか片方だけを備えていてもよい。この場合でも、コア3とブリッジ5の間の径方向における隙間gが消失するので、永久磁石収容孔6よりも外周側の外周側コア部分16が遠心力により外周側へ変形してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0039】
(3)製造装置30は、内周側押込みダイ37を備える。内周側押込みダイ37のコア3に対する内周側接触面37a(接触面)には内周側に向かって部分的に隆起する内周側隆起部37c(隆起部)が形成されている。以上の構成によれば、コア3とブリッジ5の間の径方向における隙間gが消失した後のコア3の流動性が確保される。
【0040】
(4)製造装置30は、外周側押込みダイ38を備える。外周側押込みダイ38のコア3に対する外周側接触面38a(接触面)には外周側に向かって部分的に隆起する外周側隆起部38c(隆起部)が形成されている。以上の構成によれば、コア3とブリッジ5の間の径方向における隙間gが消失した後のコア3の流動性が確保される。
【0041】
以上に、本願発明の好適な実施形態を説明したが、上記実施形態は以下のように変更できる。
【0042】
上記実施形態において磁極部分2は、2つのブリッジ5を備えることとしたが、これに代えて、ブリッジ5を1つのみ備えていてもよいし、3つ以上のブリッジ5を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 ロータ
2 磁極部分
3 コア
4 永久磁石
5 ブリッジ
6 永久磁石収容孔
6a 内壁面
9 内周側窪み
10 外周側窪み
15 内周側コア部分
16 外周側コア部分
20 頭部
21 中間部
g 隙間
30 製造装置
図1
図2
図3
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図11