(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981515
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】インバータの出力欠相検出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20160818BHJP
G01R 29/18 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
H02M7/48 M
G01R29/18 Q
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-233595(P2014-233595)
(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公開番号】特開2015-100260(P2015-100260A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2014年11月18日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0139801
(32)【優先日】2013年11月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】リ チェ ムン
(72)【発明者】
【氏名】ペ テ スク
【審査官】
仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−106424(JP,A)
【文献】
特開2009−061164(JP,A)
【文献】
特開2013−055796(JP,A)
【文献】
特開2003−164159(JP,A)
【文献】
特開2003−052191(JP,A)
【文献】
特開平05−172443(JP,A)
【文献】
特開2010−081739(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0040532(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
G01R 29/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子を含むインバータ部のレッグシャント抵抗からインバータ出力電流を受信して、出力電流の欠相を検出する方法において、
前記インバータ部の前記スイッチング素子のスイッチング動作状態に応じて、電流検出が可能なセクタであるか否か判断するステップと、
電流検出が不可能なセクタである場合、欠相変数を維持するステップと、
電流検出が可能なセクタである場合、出力電流が出力欠相バンド以内である場合に欠相変数をプラスカウントして累積するステップと、
電流検出が可能なセクタである場合、出力電流が出力欠相バンド以外である場合に欠相変数をマイナスカウントして累積するステップと、
前記欠相変数が出力欠相検出レベル以上の場合、出力欠相と決定するステップと、を含むことを特徴とする、出力欠相検出方法。
【請求項2】
前記レッグシャント抵抗から受信された2相の出力電流から3相出力電流を決定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の出力欠相検出方法。
【請求項3】
出力欠相を決定した場合、設定された保護動作を行うステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の出力欠相決定方法。
【請求項4】
複数のスイッチング素子を含むインバータ部と、
前記インバータ部のスイッチング素子のうち一部スイッチング素子に接続されるレッグシャント抵抗と、
前記レッグシャント抵抗によって決定される2相出力電流から3相出力電流を決定する第1決定部と、
前記インバータ部の前記スイッチング素子のスイッチング動作状態に応じて、電流検出が可能なセクタであるか否か判断して、電流検出が不可能なセクタである場合、欠相変数を維持し、電流検出が可能なセクタである場合であって出力電流が出力欠相バンド以内である場合に欠相変数をプラスカウントして累積し、電流検出が可能なセクタである場合であって出力電流が出力欠相バンド以外である場合に欠相変数をマイナスカウントして累積し、前記欠相変数が出力欠相検出レベル以上の場合、出力欠相と決定する第2決定部と、
を含むことを特徴とする、出力欠相検出装置。
【請求項5】
前記第2決定部は、
出力欠相を決定した場合、設定された保護動作を行うことを特徴とする、請求項4に記載の出力欠相検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータの出力欠相検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、インバータは3相の直流(DC)を交流(AC)に変換する装置である。
【0003】
図1は、一般的なインバータの構成図であり、モータ2を駆動する。
【0004】
インバータ1は、3相AC電源を整流部10がDCに変換し、これをDCリンクキャパシタ20に保存した後、インバータ部30がACに変換してモータ2に供給し、電圧と周波数を可変してモータ2の速度を制御する。
【0005】
この時、インバータの出力(I)が1相以上オープン(open)されたのをインバータ出力欠相といい、インバータ1の出力端とモータ2が接続されなかったり、またはインバータ1の出力端とモータ2との間の開閉装置の誤動作により発生する。インバータ出力欠相時、モータ2は、定格電流以上の過電流が印加されて劣化による焼損が生じる可能性がある。
【0006】
このようなインバータの出力欠相は、インバータ出力電流を検出して判別する。
【0007】
図2A及び
図2Bは、インバータ出力電流検出部の構成図であり、
図2Aは、変流器(Current Transformer、CT)を利用する場合、
図2Bは、レッグシャント(leg shunt)抵抗を利用する場合を示す。
【0008】
図2Aに示したように、CT41は、インバータ1出力上に位置し、インバータ部30の3相出力電流を検出する。一方、
図2Bに示したように、レッグシャント抵抗は、インバータ部30の各相の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)のエミッタ端に配置され、インバータ部30のスイッチング動作状態に応じて下部IGBTに電流が流れる時にインバータ部30の出力電流を検出するものである。
【0009】
図3は、インバータ部のスイッチング動作状態に応じて出力電流検出が制限されるのを説明するための例示図である。
【0010】
図面に示したように、レッグシャント抵抗を利用したインバータ出力電流検出方式は、インバータ部30のスイッチング動作状態及び電流導通時間に応じて電流検出領域が制限されるので、電流検出領域の拡張のためにインバータ3相出力電流のうち有効な2相電流を検出して、残りの1相の電流を演算する方式を用いる。下記は、レッグシャント抵抗を利用した電流検出で電流検出を演算するのを示した表である。
【0011】
【表1】
【0012】
このようなレッグシャント抵抗を利用した電流検出は、CTを利用した方式と比べて比較的低価で実現可能なので、低価型小型インバータに主に使用される。
【0013】
しかし、このようなレッグシャント抵抗を利用した電流検出方式においては、インバータ3相出力電流のうち有効な2相電流を検出して、残りの1相電流を演算する方式を用いるため、正確な出力欠相検出をできなくなる問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする技術的課題は、レッグシャント抵抗を利用した電流検出方式でインバータ出力欠相を精度よく検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記のような技術的課題を解決するために、複数のスイッチング素子を含むインバータ部のレッグシャント抵抗からインバータ出力電流を受信して、出力電流の欠相を検出する本発明の一実施形態の方法において、前記インバータ部の前記スイッチング素子のスイッチング動作状態に応じて、電流検出が可能なセクタであるか否か判断するステップと、電流検出が不可能なセクタである場合、欠相変数を維持するステップと、電流検出が可能なセクタである場合、出力電流が出力欠相バンド以内の場合に欠相変数をプラスカウントして累積するステップと、前記欠相変数が出力欠相検出レベル以上の場合、出力欠相で決定するステップと、を含んでもよい。
【0016】
本発明の一実施形態の方法において、前記レッグシャント抵抗から受信された2相の出力電流から3相出力電流を決定するステップをさらに含んでもよい。
【0017】
本発明の一実施形態の方法において、電流検出が可能なセクタである場合、出力電流が出力欠相バンド以外の場合に欠相変数をマイナスカウントして累積するステップをさらに含んでもよい。
【0018】
本発明の一実施形態の方法において、出力欠相を決めた場合、設定された保護動作を行うステップをさらに含んでもよい。
【0019】
また、前記のような技術的課題を解決するために、本発明の一実施形態の出力欠相検出装置は、複数のスイッチング素子を含むインバータ部と、前記インバータ部のスイッチング素子のうち一部スイッチング素子に接続されるレッグシャント抵抗と、前記レッグシャント抵抗によって決定される2相出力電流から3相出力電流を決定する第1決定部と、前記インバータ部の前記スイッチング素子のスイッチング動作状態に応じて、電流検出が可能なセクタであるか否か判断して、電流検出が不可能なセクタである場合、欠相変数を維持し、電流検出が可能なセクタである場合、出力電流が出力欠相バンド以内である場合に欠相変数をプラスカウントして累積して、前記欠相変数が出力欠相検出レベル以上の場合、出力欠相と決定する第2決定部と、を含んでもよい。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記第2決定部は、電流検出が可能なセクタである場合、出力電流が出力欠相バンド以外である場合に欠相変数をマイナスカウントして累積してもよい。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記第2決定部は、出力欠相を決めた場合、設定された保護動作を行ってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態により、レッグシャント抵抗を利用してインバータ出力電流を検出する場合、正確に出力欠相を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2A】インバータ出力電流検出部の構成図である。
【
図2B】インバータ出力電流検出部の構成図である。
【
図3】インバータ部のスイッチング動作状態に応じて出力電流検出が制限されるのを説明するための例示図である。
【
図4】本発明に係るインバータ出力欠相検出装置の一実施形態構成図である。
【
図5】従来出力欠相を検出する方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】従来CTを利用したインバータ出力電流検出方式で出力欠相を検出する場合を示した図である。
【
図7】従来レッグシャント抵抗を利用した出力電流検出方式で出力欠相を検出する場合を説明する図である。
【
図8】従来レッグシャント抵抗を利用した出力電流検出方式の試験波形図である。
【
図9】本発明に係る出力欠相検出方法を説明するための一実施形態フローチャートである。
【
図10】本発明の出力欠相検出方式を説明するための一例示図である。
【
図11】本発明の出力欠相検出方式を説明するための信号波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、多様な変更を加えることができて、多様な実施形態を有することができ、特定実施形態を図面に例示して詳細な説明で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるいずれの変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明に係る好ましい一実施形態を詳細に説明する。
【0026】
図4は、本発明に係るインバータ出力欠相検出装置の一実施形態構成図であり、
図2Bのレッグシャント抵抗からインバータ出力電流を受信して出力電流を検出して、出力欠相を決定することができる。
【0027】
図面に示したように、本発明のインバータ出力欠相検出装置は、調整部43、ADコンバータ(Analog−Digital Converter、ADC)44、出力電流決定部45及び出力欠相決定部46を含んでもよい。
【0028】
調整部43は、レッグシャント抵抗42から入力される出力電流に対しローパスフィルタリング(Low Pass Filtering、LPF)及びスケール調整を行い、ADC44がデジタルデータに変換して、出力電流決定部45は2相の電流から1相の電流を演算することができる。この時、出力電流決定部45は、表1を利用して2相の電流から1相の電流を演算することができる。
【0029】
出力欠相決定部46は、インバータ3相出力電流を受信して、各相の出力欠相の有無を判断することができる。出力欠相決定部46は、各相のインバータ出力電流が出力欠相バンド(band)内で一定時間以上維持される場合、出力欠相と決定してもよい。出力欠相時、欠相された相の電流は流れないので、設定された出力欠相バンド内で出力電流が維持されるようになる。出力欠相バンドは、出力欠相時電流が一定に維持される区間をいい、予め設定されてもよい。
【0030】
以下、従来出力欠相決定部が出力欠相を検出する方法をまず説明して、本発明に係る検出方法をこれに対備して説明する。
【0031】
図5は、従来出力欠相決定部が出力欠相を検出する方法を説明するためのフローチャートである。
【0032】
図面に示したように、従来の出力欠相決定部46は、インバータ出力電流を受信して(S51)、インバータ出力電流検出周期毎に出力電流が出力欠相バンド内で出力されるか否かを判断する(S52)。
【0033】
インバータ出力電流が出力欠相バンド内の場合、欠相変数(OPO_Cnt)を(+)カウントしてその値を累積して(S54)、これを出力電流検出周期毎に繰り返す。
【0034】
しかし、インバータ出力電流が出力欠相バンド以外の場合には、欠相変数(OPO_Cnt)を(−)カウントして正常なインバータ動作での出力欠相検出を防止することができる(S53)。
【0035】
累積した欠相変数(OPO_Cnt)が出力欠相検出レベル以上の場合(S55)、出力欠相決定部46は、インバータの出力欠相と決定して、設定された保護動作を行うようになる(S56)。
【0036】
図6は、従来CT41を利用したインバータ出力電流検出方式で出力欠相を検出する場合を説明するためのもので、U相に出力欠相が発生した場合を示した図である。
【0037】
図面に示したように、インバータ出力電流(A)が出力欠相バンド以内である場合、欠相変数(B)は(+)カウントされて、欠相変数(B)が出力欠相検出レベル以上になる場合(C)出力欠相に決定される。
【0038】
図7は、従来レッグシャント抵抗を利用した出力電流検出方式で出力欠相を検出する場合を説明するためのもので、U相に出力欠相が発生した場合を示した図である。
【0039】
レッグシャント抵抗を利用した出力電流検出方式ではスイッチング区間(セクタ)に応じてインバータ3相出力電流のうち有効な2相電流を検出して、残りの1相電流を演算するので、正確な出力欠相を検出できない。
【0040】
即ち、
図7において、U相出力電流(D)が1周期の間欠相された時、U相の自己相電流を検出するセクタ2乃至セクタ5では欠相区間の間欠相変数(E)を増加させるが、他の相電流でU相電流を演算するセクタ1とセクタ6では出力電流が演算されるので、欠相変数(E)が欠相区間内で減少して、その結果、欠相区間内で出力欠相を検出できなくなる問題が発生する。
【0041】
図8は、従来レッグシャント抵抗を利用した出力電流検出方式の試験波形図で、U相欠相によっても出力欠相を検出できないことが分かる。
【0042】
本発明は、このような問題点を解決するためのもので、レッグシャント抵抗を利用した電流検出方式でインバータ出力欠相を正確に検出する。
【0043】
図9は、本発明に係る出力欠相検出方法を説明するための一実施形態のフローチャートであり、
図4のインバータ出力欠相検出装置によって実行されうる。
【0044】
図面に示したように、本発明の出力欠相検出方法は、レッグシャント抵抗からインバータ出力電流のうち2相電流を受信して、出力電流決定部45により3相の出力電流が決定できる(S91)。
【0045】
出力欠相決定部46は、この時、スイッチング動作状態に応じたセクタを検出して(S92)、該当相の電流検出が可能なセクタでない場合(S93)、即ち、レッグシャント抵抗が検出した電流を通して出力電流決定部45が演算した相の電流である場合には、欠相変数(OPO_Cnt)を維持し(S94)、電流検出が可能なセクタである場合に限って次のステップに進む。
【0046】
即ち、電流検出が可能なセクタである場合(S93)、出力欠相決定部46は、出力電流が出力欠相バンド以内であるか否かを確認して(S95)、出力電流が出力欠相バンド以内である場合には欠相変数(OPO_Cnt)を(+)カウントしてその値を累積し(S97)、これを出力電流検出周期毎に繰り返す。
【0047】
しかし、インバータ出力電流が出力欠相バンド以外である場合には欠相変数(OPO_Cnt)を(−)カウントして正常なインバータ動作での出力欠相検出を防止することができる(S96)。
【0048】
以後、累積した欠相変数(OPO_Cnt)が出力欠相検出レベル以上の場合(S98)、出力欠相決定部46はインバータの出力欠相と決定して、設定された保護動作を行う(S99)。
【0049】
図10は、本発明の出力欠相検出方式を説明するための一例示図で、U相電流が1周期欠相された場合を示した図である。
【0050】
図面に示したように、U相の出力電流(D)が1周期の間欠相された場合、本発明の出力欠相検出方法は、U相電流が検出されるセクタ2乃至セクタ5では欠相区間の間欠相変数(F)を増加させて、他の相電流でU相電流を演算するセクタ1及びセクタ6では欠相変数を維持して、正確なインバータ出力欠相検出が可能である。即ち、従来の検出方法によると、出力欠相を検出できないが(E)、本発明によると、出力欠相を検出することができる(F)。
【0051】
図11は、本発明の出力欠相検出方式を説明するための信号波形図である。
【0052】
図面に示したように、U、V、WのうちU相が欠相された場合、正確に出力欠相を検出して、トリップ信号が発生して保護動作が実行されることが分かる。
【0053】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、これは例示的なものに過ぎなく、当分野で通常の知識を有する者であれば、これらから多様な変形及び均等な範囲の実施形態ができることを理解するであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は特許請求の範囲によって定まらなければならない。
【符号の説明】
【0054】
3 インバータ
43 調整部
44 ADコンバータ(Analog−Digital Converter、ADC)
45 出力電流決定部
46 出力欠相決定部