(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、アルミニウム粒子と亜鉛粒子とを備え、前記アルミニウム粒子の表面に前記亜鉛粒子を備える第1の複合粒子と、錫粒子と亜鉛粒子とを備え、前記錫粒子の表面に前記亜鉛粒子を備える複合粒子を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の複合材料。
前記亜鉛系粉末は、蒸発法によって得られる粉末であり、前記アルミニウム系粉末又は前記錫粉末は、蒸発法又はアトマイズ法によって得られる粉末である、請求項8に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書の開示は、特定の複合形態を有する亜鉛系複合材料及びその利用に関する。本明細書に開示される複合材料は、アルミニウム粒子及び/又は錫粒子と亜鉛粒子とを複合化させたものであって、これらの複合粒子において、表面側に亜鉛粒子を優勢に備えることができる。
【0013】
本明細書に開示される複合材料は、アルミニウム粒子と亜鉛粒子とを備える複合粒子を含むアルミニウム/亜鉛複合材料の形態、錫粒子と亜鉛粒子とを備える複合粒子を含む錫/亜鉛複合材料の形態、及びアルミニウム粒子と亜鉛粒子とを備える複合粒子と錫粒子と亜鉛粒子とを備える複合粒子とを含む、アルミニウム/錫/亜鉛複合材料の形態を、少なくとも含んでいる。
【0014】
(アルミニウム/亜鉛複合材料)
アルミニウム/亜鉛複合材料において表面側に亜鉛粒子を優勢に備えるとは、亜鉛がアルミニウムの反応性を抑制できる程度に亜鉛粒子がアルミニウム粒子の表面側に優勢に存在していることを意味している。例えば、
図1に示すように、コアとなるアルミニウム粒子に対してシェル状にアルミニウム粒子よりも小さい亜鉛粒子が保持されて形態あるいはこうした複合粒子が複数凝集している形態が挙げられる。なお、複合粒子内部にさらに亜鉛粒子が存在していてもよい。アルミニウム/亜鉛複合材料によれば、亜鉛粒子が優勢に複合粒子の表面側に複合化されていることで、アルミニウムの酸素や湿気に対する不安定性を抑制している。このため、複合材料は、アルミニウム系材料として固形であっても、自然発火、湿気や水等に対して安全に保存及び取り扱い可能となっている。
【0015】
アルミニウム/亜鉛複合材料は、亜鉛に基づく防錆防食機能を維持しつつ、アルミニウムペーストと同等の高い輝度を有するなど、優れた外観特性を有することができる。また、本複合材料は、アルミニウム系材料の含有量やその大きさの調節により外観の自由度を確保できる。したがって、顔料としてアルミニウム/亜鉛複合材料自体のみでも良好なアルミニウムに基づく銀白色を呈する被膜を形成できる。
【0016】
さらに、本複合材料において、アルミニウム粒子がフレーク状であるときには、複合粒子自体が扁平なフレーク形状を呈することができる。このため、塗膜などの被膜を形成したとき、膜の表面から徐々に剥離される傾向がある。こうした剥離形態によれば、膜内部にあるアルミニウム/亜鉛複合材料が次々に露出されるために逐次その被膜特性を発揮できる。
【0017】
(錫/亜鉛複合材料)
錫/亜鉛複合材料において、表面側に亜鉛粒子を優勢に備えるとは、亜鉛が錫の反応性を抑制できる程度に亜鉛粒子が錫粒子の表面側に優勢に存在していることを意味している。
図1に示すように、例えば、コアとなる錫粒子に対してシェル状に錫粒子よりも小さい亜鉛粒子が保持されて形態あるいはこうした複合粒子が複数凝集している形態が挙げられる。なお、複合粒子内部にさらに亜鉛粒子が存在していてもよい。例えば、錫粒子が酸化や水酸化されないで維持されるため、錫はその本来の溶融温度付近で溶解して、周囲の材料を接着して強力なバインダ機能を発揮することができる。また、錫が溶融すると、錫と接触している亜鉛も溶融する。このため、錫/亜鉛複合材料においては、亜鉛もバインダとして機能できる。したがって、錫/亜鉛複合材料は、亜鉛に基づく防錆防食機能を有するとともに錫粒子に起因する優れたバインダ能及び被膜形成能を有している。このため、防錆防食材料に用いることができるほか、同時にバインダとして用いることができる。特に、錫/亜鉛複合材料は、低温でも密着性の良好な被膜を形成することができるとともに、塑性加工等を容易に行うことができる。
【0018】
本明細書における開示を拘束するものではないが、本明細書に開示される複合材料は、アルミニウム粒子又は錫粒子の表面に亜鉛を保持(アルミニウム粒子等より小さな亜鉛粒子を保持)しているため、アルミニウム粒子又は錫粒子の特性も亜鉛の特性も双方が発揮されやすくなっている。特に、アルミニウム/亜鉛複合材料では、その外観特性が優れかつ調節が容易であると考えられる。また、錫/亜鉛複合材料では、錫材料としての特性が発揮されやすくなっており、塑性加工や低温軟化が容易になっている。
【0019】
(アルミニウム/錫/亜鉛複合材料)
アルミニウム/錫/亜鉛複合材料は、既に説明したアルミニウム/亜鉛複合材料の複合粒子と、錫/亜鉛複合材料の複合粒子との双方を含んでおり、これらの複合材料を適宜混合することで取得できる。
【0020】
以下、複合材料及びその利用について、種々の実施態様を挙げて詳細に説明する。なお、本明細書において、数字に対して「約」を付して表示するときには、測定値の、明細書中に表示される当該測定値に対応する数値の有効数字(本明細書において有効数字とは、小数点以下の桁数nを意味する。)よりも一つ小さい桁(n+1)の数字を四捨五入して得られた数値とする。
【0021】
(複合材料及びその製造方法)
(アルミニウム/亜鉛複合材料)
アルミニウム/亜鉛複合材料10は、アルミニウム粒子4の表面に亜鉛6を保持する複合粒子2を含んでいる。好ましくはこうした複合粒子を主体としている。例えば、
図1に示すように、複合粒子2は、アルミニウム粒子4の表面に亜鉛粒子6が保持されて、アルミニウム粒子4の表面全体又はその一部が亜鉛粒子6により被覆される構造、あるいはこうした構造が連なったあるいは凝集した構造から構成されることができる。
【0022】
(アルミニウム粒子)
複合粒子2におけるアルミニウム粒子4の粒子形態は特に限定しない。例えば、球状、涙様(あるいは滴様)形状、不定形状、針状、薄片(フレーク)状等とすることができ、これらの2種以上の混合物であってもよい。球状、涙様形状、不定形状あるいはこれらの混合粉末にあっては、アトマイズ法で製造されることが多い。従来用いられているアルミニウムフレークを代替する観点からは、フレーク状を用いることができる。なお、本明細書においてフレーク状というとき、各種平面形態の薄片状であることを意味している。フレーク状のアルミニウム粒子は、アトマイズ法等で製造された粒子をフレーク化することなどにより取得できる。
【0023】
アルミニウム粒子4は、アルミニウムを主体とし、好ましくはアルミニウムが98%以上である。また、不純物は銅が0.015%以下であることが好ましく、鉄が0.2%以下であることが好ましく、ケイ素が0.2%以下であることが好ましく、水分が0.1%以上であることが好ましい。
【0024】
(亜鉛粒子)
複合粒子2における亜鉛粒子6は、亜鉛を主体とし、好ましくは、亜鉛含有量が97%以上であることが好ましい。また、不純物としては、鉛が0.1%以下であることが好ましく、ガドミウムが0.05%以下であることが好ましく、鉄が0.02%以下であることが好ましい。
【0025】
複合粒子2における亜鉛粒子6は、その粒子形態が確認できる場合、粒子形態は球状、針状、不定系状、フレーク状等とすることができる。亜鉛粒子6は、アルミニウム粒子4の表面やアルミニウム粒子4間に介在されるが、複数個が連なって少なくとも部分的に複合粒子2の表面側において被膜状になっていてもよい。亜鉛粒子6が被膜状に連続してアルミニウム粒子4の表面を覆ったりアルミニウム粒子4間に介在されるか否かは、アルミニウムと亜鉛との配合比等にもよる。配合比によっては、亜鉛粒子6は、もはや粒子形態を維持せず、アルミニウム粒子4の表面の多くの部分を覆う被膜形態となっていることもありうる。ここで説明したいずれの形態も、本明細書に開示されるアルミニウム/亜鉛複合材料の亜鉛粒子6に含まれる。
【0026】
複合粒子2における亜鉛粒子6の個別の形態を確認できる場合、亜鉛粒子形態は、好ましくはフレーク状である。フレーク状であると、アルミニウム粒子4の表面に被膜状に保持されやすいからである。また、亜鉛粒子6の形態を確認できる場合には、複合粒子2の全体がフレーク状となりやすく、後述する本複合材料10を含む被膜において、複合材料10自体が薄片として剥がれやすい傾向が発揮される。また、外観特性の調節が容易であるとともに、高い輝度を発揮できる。さらに、取り扱いの安全性も確保しやすくなっている。
【0027】
複合材料10におけるアルミニウム粒子4と亜鉛粒子6との配合は、特に限定されないが、アルミニウム粒子4と亜鉛粒子6との総質量に対して、アルミニウム粒子4が約1質量%以上約40質量%以下であることが好ましい。1質量%未満であると、アルミニウム粒子4が少なすぎてアルミニウムペーストの代替機能を発揮できない。また、40質量%を超えると、亜鉛比率が少なくなりすぎて、亜鉛によるアルミニウムの反応性緩和作用が小さくなりすぎる。好ましくは、アルミニウム粒子4が約5質量%以上約30質量%以下であり、さらに好ましくは約10質量%以上約30質量%以下である。亜鉛粒子6に対するアルミニウム粒子4の割合が多くなるにつれ、アルミニウム色(銀白色)が強く現れてくる。
【0028】
複合粒子2は、厚みが約1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以下であり、さらに約0.1μm以下であることが好ましい。また、その平均粒径が約8μm以上約40μm以下のフレーク状であることが好ましい。複合粒子2がこうした平均粒径フレーク状形態を採ることにより、上述したように、被膜形成時において、本複合材料10自体が薄片として剥がれやすい傾向が発揮される。また、外観特性の調節が容易であるとともに、高い輝度を発揮できる。さらに、取り扱いの安全性も確保しやすくなっている。より好ましくは、平均粒径が約10μm以上約30μm以下である。さらに好ましくは、約10μm以上約20μm以下である。
【0029】
なお、複合粒子2の厚みについては、適当な試験片の片面に厚みが約15μm程度の塗膜を形成し、その表面をエポキシ樹脂で固定後に切断し、その断面を、電子顕微鏡で1/100mmを10μmで表示させて、フレーク厚みを測定した。また、なお、当該方法及び条件と同等の精度及び正確性が得られる他の方法で測定することもできる。また、複合粒子2の平均粒径は、レーザ回折・光乱法を採用して測定することができる。なお、当該方法と同等の精度及び正確性が得られる他の方法で測定することもできる。レーザ回折・散乱法による粒度分布測定装置としては、例えば、島津製作所株式会社製のSALDシリーズ(例えば、SALD−2000J)を用いることができる。
【0030】
(錫/亜鉛複合材料)
錫/亜鉛複合材料20は、錫粒子14の表面に亜鉛16を保持する複合粒子12を含んでいる。好ましくはこうした複合粒子12を主体としている。例えば、
図1に示すように、複合粒子12は、錫粒子14の表面に亜鉛粒子16が保持されて、錫粒子14の表面を亜鉛粒子16により被覆される構造、あるいはこうした構造が連なったあるいは凝集した構造から構成されることができる。
【0031】
(錫粒子)
複合粒子12における錫粒子14の粒子形態は特に限定しない。例えば、球状、不定形状、針状、涙様状、薄片(フレーク)状、あるいはこれらのうち2種以上の混合物等とすることができる。
【0032】
錫粒子14は、錫を主体とし、好ましくは錫が98%以上である。より具体的には、βスズであって純度が99.0%以上、好ましくは99.5%以上であり、より好ましくは99.7%以上である。
【0033】
(亜鉛粒子)
複合粒子12における亜鉛粒子16は、アルミニウム/亜鉛複合材料10の複合粒子2における亜鉛粒子6と同様の形態などの構成を採ることができる。すなわち、複合粒子12における亜鉛粒子16は、その粒子形態が確認できる場合、粒子形態は球状、針状、不定系状、フレーク状等とすることができる。亜鉛粒子16は、錫粒子14の表面や錫粒子14間に介在されるが、複数個が連なって少なくとも部分的に複合粒子12の表面側において被膜状になっていてもよい。亜鉛粒子16が被膜状に連続して錫粒子14の表面を覆ったり錫粒子14間に介在したりするか否かは、錫と亜鉛との配合比等にもよる。配合比によっては、亜鉛粒子16は、もはや粒子形態を維持せず、錫粒子14の表面の多くの部分を覆う被膜形態となっていることもありうる。ここで説明したいずれの形態も、本明細書に開示される錫/亜鉛複合材料の亜鉛粒子16に含まれる。
【0034】
複合粒子12における亜鉛粒子16の個別の形態を確認できる場合、亜鉛粒子形態は、好ましくはフレーク状である。フレーク状であると、錫粒子14の表面に被膜状に保持されやすいからである。また、亜鉛粒子16の形態を確認できる場合には、複合粒子12の全体がフレーク状となりやすく、後述する本複合材料10を含む被膜において、複合材料20自体が薄片として剥がれやすい傾向が発揮される。また、外観特性の調節が容易であるとともに、高い輝度を発揮できる。さらに、取り扱いの安全性も確保しやすくなっている。
【0035】
複合材料20における錫粒子14と亜鉛粒子16との配合は、特に限定されないが、錫粒子14と亜鉛粒子16との総質量に対して、錫粒子14が約1質量%以上約40質量%以下であることが好ましい。1質量%未満であると、錫粒子14が少なすぎてバインダ機能が小さくなる。また、40質量%を超えると、亜鉛比率が少なくなりすぎて、亜鉛による錫の反応性緩和作用や防錆機能が小さくなりすぎる。好ましくは、錫粒子14が約5質量%以上約30質量%以下である。亜鉛粒子16に対する錫粒子14の割合が多くなるにつれ、錫の色(黄色を帯びた銀白色)が強く現れてくる。
【0036】
また、複合粒子12は、厚みが約1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以下であり、さらに約0.1μm以下であることが好ましい。また、その平均粒径が約8μm以上約40μm以下のフレーク状であることが好ましい。複合粒子2がこうした平均粒径のフレーク状形態を採ることにより、上述したように、被膜形成時において、本複合材料20自体が薄片として剥がれやすい傾向が発揮される。より好ましくは、平均粒径が約10μm以上30μm以下である。さらに好ましくは、約10μm以上約20μm以下である。また、複合粒子12の平均粒径は、複合材料10の複合粒子2と同様の方法で測定することができる。
【0037】
(製造方法)
こうした複合粒子2、12を含む複合材料10、20は、例えば、以下に示す製造方法によって得ることができる。一つの製造方法は、
図2に示すように、第1の平均粒径の亜鉛粉末と第1の平均粒径よりも大きい第2の平均粒径のアルミニウム粉末又は錫粉末とを、ミルを用いて湿式混合して亜鉛系粉末と前記アルミニウム粉末又は錫粉末とを複合化する工程を備える。この製造方法によれば、両者ともに出発材料として粉末材料を用い、これらを液性媒体下で湿式混合することで、亜鉛系粉末とアルミニウム系粉末又は錫粉末とを共にフレーク化しつつ、あるいはそのまま複合化することができる。この結果、特性の良好な複合材料10、20を得ることができる。
【0038】
また、亜鉛粉末の平均粒径(第1の平均粒径)よりもアルミニウム粉末又は錫粉末の平均粒径(第2の平均粒径)を大きくすることで、本明細書に開示される特定形態の複合粒子2、12が得られるようになる。第2の平均粒径が第1の平均粒径と同じがそれ以下であるときには、亜鉛粒子の表面により小さいアルミニウム粒子や錫粒子が小さく埋め込まれた状態の粒子(典型的には、特許文献1に記載の方法で得られる複合形態である。)が出来やすくなる。こうした形態の複合粒子では、アルミニウムや錫の特性が発揮されにくい。
【0039】
亜鉛粉末は、既に複合材料10、20の亜鉛粒子に関して説明したとおりの組成を有するほか、亜鉛粉末の平均粒径(第1の平均粒径)はアルミニウム粉末又は錫粉末の平均粒径(第2の平均粒径)よりも小さく、かつ約2μm以上約10μm以下であることが好ましい。さらに、亜鉛粉末の最大粒径は約40μm以下であることが好ましい。こうした平均粒径であると、ミルによる粉砕及び混合を効率的に実施できる。より好ましくは、第1の平均粒径が約5μm以下である。そして、亜鉛粉末の最大粒径が約15μm以下であることがより好ましい。なお、亜鉛系粉末は、アトマイズ法及び蒸発法等によって得られるものを用いることができるが、好ましくは蒸発法である。
【0040】
アルミニウム粉末又は錫粉末の平均粒径は、約8μm以上約40μm以下であることが好ましい。アルミニウム粉末又は錫粉末がこうした平均粒径であることにより、おおよそ複合粒子2、12を当該平均粒径に複合化できる。より好ましくは、平均粒径が約10μm以上約30μm以下である。アルミニウム粉末又は錫粉末の平均粒径は、好ましくは、既に説明したレーザ回折・散乱法によって測定することができる。
【0041】
なお、アルミニウム粉末及び錫粉末は、それぞれアルミニウム粒子及び錫粒子として既に説明したとおりの組成を有するほか、アルミニウムペーストの状態でなく、粉末形態で混合工程に供されることが好ましい。粉末形態でかつ、第2の平均粒径が第1の平均粒径よりも大きければ、本明細書に開示される複合材料における複合粒子2、12の形態を実現できる。
【0042】
(ミル)
ミルは、ビーズミル又はボールミルを用いることが好ましい。好ましくは、ビーズミルである。ビーズミルの種類は特に限定されない。ビーズミルは、例えば、完全密閉、水平型のマイクロビーズミルを用いることができる。水平型では、分散メディアが重力の影響をほとんど受けないため、シリンダー内で理想に近い均一な分布を得ることが可能である。また、分散メディアを80〜85%という高密度で充填することが可能である。
【0043】
ビーズミルで用いる分散メディアは、処理物の粘度、比重及び水分枠、分散の要求粒度に応じて、ガラスビーズ、ジルコンビーズ、ジルコニアビーズ、スチールボール等を使用することができる。亜鉛系粉末とアルミニウム系粉末とを混合する場合においては、ジルコンビーズ又はジルコニアビーズを使用することが好ましい。分散メディアのサイズは、希望するフレークの大きさに応じて約0.1mmφ以上約3.0mmφ以下までの球径のものが使用可能であるが、一般的には約0.1mmφ以上約1.5mmφ以下のものを使用する。特に亜鉛系粉末とアルミニウム系粉末とを混合する場合には、約0.5mmφ以上約1.0mmφ以下のものを使用する。
【0044】
ミルで亜鉛系粉末とアルミニウム系粉末とを湿式混合するとき、液性媒体及び滑剤とともに混合する。
【0045】
(液性媒体)
混合工程に用いる液性媒体は、有機溶剤を主体とすることが好ましい。より好ましくは、有機溶剤からなる。有機溶剤としては、好ましくは、沸点が約100℃以上、より好ましくは約150℃以上であって約250℃以下であることが好ましい。水と同じかそれ以上の沸点で259℃以下の沸点の有機溶剤を用いることで、引火を防止でき減圧下で蒸留が可能であり回収及び再生利用が可能であるからである。こうした有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、石油ベンジン、灯油、軽油、ケロシン、ミネラルスピリット、ミネラルターペント等が挙げられる。有機溶剤の量は、用いるミルの形態にもよるが、使用する亜鉛系粉末及びアルミニウム系粉末の総質量に対して1.2倍以上5倍以下であることが好ましい。より好ましくは、2倍以上5倍以下であり、さらに好ましくは3倍以上5倍以下である。
【0046】
(滑剤)
混合工程には、得られる複合材料10の使用目的に応じて異なる滑剤(「潤滑剤」)が用いられる。滑剤は、原料粉末をフレーク化するとともに、複合化を阻害することなく複合化を促進又は維持し、複合粒子2を保持分散できるものが好ましい。滑剤としては、潤滑性、耐水性を備えている。さらにまた、滑剤は、酸化等を防止するべく粉末粒子表面及びフレーク表面を覆う被覆性と、所定の温度以上になれば、原料粒子表面や複合粒子表面から飛散する飛散性と、を有することが好ましい。
【0047】
例えば、滑剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、高級脂肪族アルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。滑剤の使用量は、特に限定されないが、処理する原料粉末の総質量に対し、好ましくは約0.1質量%以上約30質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは約0.5質量%以上約10質量%以下である。
【0048】
そのほか、混合工程には、適宜、抗酸化剤なども添加することもできる。
【0049】
混合工程は、原料粉末、液性媒体及び滑剤を含む原料をミルで混合する。混合工程における緒条件、例えば、液の流量やシリンダー内の羽根の周速、混合温度、混合時間等は、得られてくる複合粒子2の形態や平均粒径を考慮して適宜設定される。典型的には、1kgの原料粉末の複合化に際し、液流量は、数L〜20L程度/分であり、羽根の周速は、数十〜200m/分程度であり、液温は10℃以上20°以下程度であり、混合時間は、4時間以上10時間以下程度である。なお、上述のとおり、最終的に得られる複合粒子2の大きさを、厚みが約0.1μm以下であって平均粒径が約8μm以上約40μm以下のフレーク状となるようにすることが好ましい。
【0050】
以上の製造工程により、混合液中に複合粒子2、12を得ることができる。その後、この混合液中の有機溶媒や滑剤等を蒸発あるいはろ過、さらには必要に応じて洗浄等により除去し、複合粒子2を含む複合材料10、20を得ることができる。複合材料10、20は、さらに、粉末の状態あるいは有機溶媒の存在下において、所望の平均粒径となるように各種の方法で篩化してもよい。なお、アルミニウム/錫/亜鉛複合材料は、こうして得られたアルミニウム/亜鉛複合材料と錫/亜鉛複合材料とを混合することで得ることができる。
【0051】
また、使用目的に応じて、複合粒子2、12の表面を樹脂コートしてもよいし、カップリング剤等で特殊加工してもよい。こうすることで、特定意図に応じた複合材料10、20が得られる。この場合、得られた複合材料10、20から滑剤等をこれらと相溶性のある有機溶剤やミネラルスピリット等で洗浄除去した後、追加の処理を行う。
【0052】
樹脂コート処理の場合、洗浄後の複合材料10をさらに適当な有機溶剤中に分散させ、重合性モノマー又はオリゴマーと重合開始剤とを少量ずつ添加し、攪拌しながらモノマー等を重合し、複合粒子2、12をコートする。重合性モノマー等の使用量は、複合材料10、20に対して好ましくは約0.5〜約20質量%であり、より好ましくは約1〜約5重量%である。そして、有機溶剤を除去し、乾燥することによって樹脂コートされた複合材料10が得られる。用いる重合性モノマー等及び結果的に得られる樹脂は特に限定されないが、後段で説明する表面処理剤や防錆防食剤としての機能に適合した樹脂は、当業者において周知であり、当業者であれば、樹脂コート用の重合性モノマー等及び樹脂並びに重合条件を適宜選択し適用することができる。
【0053】
カップリング剤による処理の場合には、例えばプロピルアルコール、ブチルアルコール、ブチルセロソルブ等のアルコール系有機溶剤で滑剤を洗浄除去し、該アルコール系有機溶剤中に複合材料10を分散させる。その後、カップリング剤のアルコキシ基をヒドロキシ基としたうえで該アルコールに溶解させ、攪拌下、60〜80℃でカップリング剤を添加し、1〜2時間攪拌をして複合材料10、20表面にカップリング剤を反応させ、該アルコールを除去し、乾燥してフレーク状粉末を得る。カップリング剤の使用量は、複合材料10、20に対して、好ましくは約0.5〜約10重量%であり、より好ましくは約1〜約5重量%である。
【0054】
こうして得られる複合材料10、20は、それ自体、高い輝度を有する顔料又は充填剤として用いられるほか、後述するように表面処理剤や防錆防食剤などの被膜の原料及び被膜形成剤として用いることができる。特に、印刷インク、塗料の分野に有用である。また、適用先としては、船舶、車両、航空機などの各種移動体やその部品のほか、工具、化学装置、プラスチック製品、電化製品、木工製品、繊維製品等が好ましく挙げられる。
【0055】
(表面処理剤及び表面処理方法)
(表面処理剤)
表面処理剤は、複合材料10及び/又は複合材料20を含んでいる。表面処理剤は、複合材料10及び/又は複合材料20を含み、他は金属系の表面処理剤として公知の材料を含むことができる。表面処理剤は、好ましくは、複合材料10及び複合材料20を含んでいる。
【0056】
例えば、表面処理剤は、その目的にもよるが、典型的には、耐腐食性、耐熱性及び耐薬品性等のいずれかあるいは2種類以上を意図している。こうした表面処理剤は、ケイ素含有樹脂及びフッ素含有樹脂のいずれかあるいは双方を含むことができる。ケイ素含有樹脂及びフッ素含有樹脂は、表面処理剤においてバインダとして機能することができる。表面処理剤は、こうした材料を公知の方法で混合して調製することができる。
【0057】
表面処理剤は、接着剤を含むことができる。接着剤は、例えば、各種形態の錫含有金属粉末を含むことができる。錫含有金属粉末としては、アトマイズ法あるいは蒸発法で製造された各種形態の粉末を用いることができる。一例として、フレーク状等の錫粉末を用いることができる。なお、複合材料20は、後述するように接着剤として機能させることもできる。接着剤として錫含有金属粉末又は複合材料20を用いるとき、表面処理剤中1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、2質量%以上45質量%以下である。
【0058】
(ケイ素含有樹脂)
ケイ素含有樹脂としては、特に限定されないが、例えば、シリコンオイル、シリコングリース、シリコンワニスを含む公知のシリコン樹脂、及び公知のシリコン樹脂にアルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の公知の合成樹脂とのブレンドが挙げられる。また、ケイ素含有樹脂としては、こうした公知樹脂との各種形態の共重合体(変性シリコン樹脂);
水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアナート基、メチロール基等の官能基を有する合成樹脂とγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等の官能基を有するシランカップリング剤との反応物;
γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメトキシシラン塩酸塩、ビニルトリアセトキシシラン等の重合可能なビニル基を有するシランカップリング剤の単独重合体;
該シランカップリング剤とアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等の共重合可能なビニル単量体との一種又は2種以上との共重合体;
等が挙げられる。
【0059】
(フッ素含有樹脂)
フッ素含有樹脂としては、公知のフッ素含有樹脂を用いることができる。特に限定されないが、例えば、四フッ化エチレン、四フッ化ビニリデン、四フッ素含有アクリルエステル、フッ素含有メタクリルエステル等のフッ素含有ビニル単量体の単独重合体;これらの単量体の共重合体、;これらのフッ素含有ビニル単量体の1種又は2種以上とアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等の他の共重合可能なビニル単量体の1種又は2種以上の共重合体;等が挙げられる。
【0060】
表面処理剤は、溶媒を含むことができる。ここで溶媒としては、トルオール、キシロール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、セロソルブアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、n−ヘキサン、n−オクタン、ミネラルスピリット等が挙げられる。好ましくは、ジアセトンアルコール、キシロールが挙げられる。
【0061】
表面処理剤は、溶媒約20質量部以上約40質量部に対し、ケイ素含有樹脂及び/又はフッ素含有樹脂を約10質量部以上約60質量部以下、複合材料10を約5質量部以上約35質量部以下含有される。さらに、必要に応じて、ケイ素含有樹脂やフッ素含有樹脂の硬化剤、充填剤、潤滑剤及び界面活性剤等の公知の材料が添加される。
【0062】
硬化剤としては、ケイ素含有樹脂やフッ素含有樹脂に含まれる官能基によって選択される。たとえば、官能基がカルボキシル基、水酸基、アミノ基等の活性水素を有するものである場合には、パラフェニレンジイソシアナート、2,6−トルエンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタジイソシアナート、m−フェニレンジイソシアナート等のジシアナート;ジイソシアナートの多価アルコールのアダクト;等が挙げられる。
【0063】
官能基がエポキシ基であれば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、メタフェニレンジアミンジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン酸、ジシアンジアミド、ホウフッ化モノエチルアミン、ポリアミド樹脂、複素環式ジアミン等のアミノ基含有化合物、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸等の酸性物質、クロム酸鉛、クロム酸亜鉛等の酸性物質が挙げられる。
【0064】
硬化剤は、表面処理剤中に、ケイ素含有樹脂及びフッ素含有樹脂の総量に対して約10質量%以下、好ましくは約5質量%以下含まれる。
【0065】
充填剤としては、特に限定しないで、公知の金属表面処理剤に用いられる充填剤が挙げられる。例えば、酸化チタン、酸化コバルト、酸化鉄、酸化マンガン、酸化銅、酸化ニッケル、酸化錫、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化亜鉛等の金属酸化物、硫化鉛、硫酸ニッケル、硫酸モリブデン、硫化鉄、硫化銅等の金属硫化物、カーボンブラック、炭酸カルシウム等の顔料等が挙げられる。表面処理剤は、複合材料10が充填剤として機能している。なお、充填剤としても機能する無機願料を含んで混合することで、アルミニウム色のほかに別の色で複合材料を着色することができる。無機顔料としては、金属、金属酸化物、金属硫化物等の単体あるいは混合物が挙げられる。硬化剤は、表面処理剤中に、約0.1質量%以上約10質量%以下、好ましくは約0.1質量%以上約8質量%以下含まれる。
【0066】
潤滑剤としては、特に限定しないで、公知の金属表面処理剤に用いられる潤滑剤が挙げられる。例えば、グラファイト、二硫化モリブデン等の粉末状潤滑剤が挙げられる。表面処理剤が粉末状のフッ素含有樹脂を含む場合には、当該フッ素含有樹脂自体が潤滑剤としても機能できる。潤滑剤は、表面処理剤中に、約5質量%以上約40質量%以下、好ましくは約10質量%以上約25質量%以下含まれる。
【0067】
界面活性剤としては、特に限定しないで、公知の金属表面処理剤に用いられる界面活性剤が挙げられる。例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、リグニンスルホン酸カルシウム、リグニンスルホン酸アルミニウム等のリグニンスルホン酸金属塩、水素化ヒマシ油等が挙げられる。界面活性剤は、表面処理剤中に、約0.1質量%以上約10質量%以下、好ましくは約0.1質量%以上約8質量%以下含まれる。
【0068】
表面処理剤は、溶媒を必ずしも含んでいなくてもよい。粉体塗装の手法で被表面処理体に供給される場合には、必ずしも溶媒は必要としないからである。
【0069】
(表面処理方法)
表面処理方法は、被表面処理体の表面に表面処理剤を供給して被膜を形成する工程を含んでいる。表面処理方法は、表面処理膜を有する表面処理体の製造方法でもある。被表面処理体の被表面処理面は、特に限定されないが、例えば、金属、プラスチック、木質材料、紙などのセルロース系材料、各種繊維材料が挙げられる。こうした被表面処理体の被表面処理面に対して表面処理剤が供給される。被表面処理面については、必要に応じて前処理が施される。前処理は、主として被表面処理面の不純物を除去する意図で行われることが多い。典型的には、ナトリウムメタシリケート、ナトリウムオルソシリケート、NaOH、四塩化炭素、トリクロロエチレン、界面活性剤等の公知の脱脂剤を用いて脱脂し、さらに、ピロリン酸ナトリウム等の洗浄剤にて洗浄し、あるいはフッ酸、塩酸、有機酸、ショットブラスト等でエッチングして被表面処理面の不純物を除去する。こうした前処理は、鉄鋼、鋳鉄、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム製品等の金属系の被表面処理体に好ましく適用される。
【0070】
表面処理剤は、浸漬、スプレー、ロールコーティング、カーテンフローコーティング、回転ブラシコーティング、粉体塗装、静電塗装によって被表面処理面に供給し、付着させる。この後、表面処理剤を乾燥させて硬化させ被膜(表面処理膜)を形成する。必要に応じて、乾燥と同時にあるいは乾燥後に、加熱処理、例えば、200℃で熱処理して被膜を硬化してもよい。耐熱性の低い被表面処理体、例えば、プラスチック、木質材料、紙などのセルロース系材料、繊維材料の場合には、表面処理剤を室温(15℃〜40℃程度)で数時間から数日程度乾燥して硬化させることで被膜を形成することができる。
【0071】
こうした表面処理膜を備える被表面処理体は、表面処理剤中の複合材料10及び/又は複合材料20に起因する良好な外観特性と耐食性を兼ね備えるとともに、ケイ素含有樹脂及び/又はフッ素含有樹脂に起因する耐腐食性、耐熱性及び耐薬品性を備えることができる。得られた表面処理膜にはさらに塗料等による他の被膜が形成されていてもよい。
【0072】
なお、表面処理剤によって形成された表面処理膜の厚さは特に限定しないが、30μm以上500μm以下とすることがいる。好ましくは、50μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
【0073】
(防錆防食剤及び防錆防食方法)
(防錆防食剤)
防錆防食剤は、複合材料10及び/又は複合材料20を含んでいる。防錆防食剤は、複合材料10及び/又は複合材料20を含むほか、防錆防食剤としての公知の材料を含むことができる。防錆防食剤は、複合材料10及び/又は複合材料20中の亜鉛に基づく自己犠牲型の防錆防食機能を発揮することができる。防錆防食剤は、好ましくは、複合材料10及び複合材料20を含んでいる。
【0074】
また、防錆防食剤は、水性媒体に分散可能であるために水性防錆防食剤として用いることができる。例えば、水性の防錆防食剤は、典型的には、水などの水性媒体のほか、接着剤(バインダー)、界面活性剤、水性溶剤及び増粘剤等を含むことができる。なお、水性媒体としては、特に限定されないが、例えば、蒸留水や脱イオン交換水のほか、煮沸処理した水道水が挙げられる。防錆防食剤は、こうした材料を公知の方法で混合して調製することができる。なお、防錆防食剤の製造時、粘度は、岩田式フォードカップ(NK-2)で35秒以上45秒以下の間で調整することが好ましい。
【0075】
防錆防食剤としては、複合材料10又は複合材料20を含んでいてもよいが、これらの双方を含んでいることが好ましい。複合材料10の外観や防錆防食性とともに複合材料20のバインダ機能や防錆防食性により、優れた塗膜が形成できるからである。
【0076】
(接着剤)
防錆防食剤に用いる接着剤は、特に限定しないが、例えば、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)シラン、エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。処理液の安定性、接着力から見ると、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが最も好ましい。接着剤は、1種又は2種以上を用いることができる。その添加量は、防錆防食剤中、好ましくは約2〜25質量%であり、より好ましくは約3〜16質量%である。また、接着剤としては、既に説明したように錫粉末又は複合材料20を用いることもできる。錫粉末又は複合材料20を含むとき、表面処理剤中1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、2質量%以上45質量%以下である。
【0077】
また、接着剤は、クロム酸(CrO
3)を還元して生成される暗褐色を帯びた緑色の粘着性の酸化クロムIII(Cr
2O
3)である。酸化クロムIIIは、加熱すると粘着性を発揮するため、この工程を利用してクロム酸(CrO
3)を防錆防食剤の接着剤として利用できる。添加料は、クロム酸(CrO
3)として、防錆防食剤中、好ましくは約1〜約8質量%であり、より好ましくは約2〜約6質量%である。なお、クロム酸を接着剤として用いることで防錆防食剤のコストを効果的に低減することができる。
【0078】
防錆防食剤が複合材料20を含むとき、複合材料20は、それ自体顔料あるいは自己犠牲型防錆防食剤として機能するほか、接着剤(バインダ)としても機能する。すなわち、防錆防食剤は、他に接着剤を含有しなくても被膜形成能及び密着能を有している。例えば、防錆防食剤が複合材料10を含むとき、防錆防食剤中、複合材料20を0.5%質量以上含有することで、複合材料10を含む表面処理剤において複合材料20が有効にバインダとして機能することができる。好ましくは、表面処理剤中、1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上である。また、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは6質量%以下である。
【0079】
(界面活性剤)
防錆防食剤に用いる界面活性剤は、媒体に複合材料10を分散させるための分散剤として用いられる。水性媒体に複合材料10を分散させる界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のアルキルエーテル型非イオン活性剤;ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のアルキルエステル型非イオン活性剤;ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールエーテルのようなエチレンオキシサイド・プロピレンオキシサイド・ブロック共重合型非イオン活性剤;等が挙げられる。界面活性剤としては、分子中に環境ホルモン汚染のおそれのある芳香族を含まないものが望ましく、またH.L.B.(Hydophile−Lipophile Balance)が7以上で18以下の非イオン活性剤は、本発明の界面活性剤として好ましい。更に好ましい界面活性剤のH.L.B.は約11〜約14の範囲である。界面活性剤は、1種又は2種以上を用いることができる。界面活性剤の添加量は、防錆防食剤中、好ましくは約0.05〜8質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0080】
(水性溶剤)
防錆防食剤は、水性媒体中に、界面活性剤と相乗して複合材料10の分散を良好ならしめるため、更に水性溶剤が添加されていることが好ましい。水性溶剤としては、水と相溶性のある有機溶剤であれば特に限定されないが、例えば、1−プロパノール、2−プロパノール、一級ブタノール、二級ブタノール、三級ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジアセトンアルコール、1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。更に好ましい水溶性有機溶剤としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられる。水性溶剤は、1種又は2種以上を用いることができる。水性溶剤の添加量は、好ましくは約3〜約50質量%、より好ましくは約10〜約45質量%である。
【0081】
(増粘剤)
防錆防食剤は、被表面処理面における防錆防食剤の供給層の厚みを確保するために、増粘剤が添加されていることが好ましい。増粘剤としては、公知の防錆防食剤に用いられる公知の増粘剤を特に限定しないで用いることができるが、例えば、メチルセルローズ、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、澱粉、カラギーナン、ペクチン等の水溶性増粘剤が挙げられる。更に好ましい増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。増粘剤は、1種又は2種以上を用いることができる。増粘剤の添加量は、好ましくは約0.05〜約5質量%、より好ましくは約0.1〜約2質量%である。
【0082】
また、増粘剤としては、高級脂肪族カルボン酸を用いることもできる。高級脂肪族カルボン酸を用いる場合には、防錆防食剤に対する添加量は0.5質量%以上5質量%以下、好ましくは1質量%以上3質量%以下とする。また、例えば、処理温度を200℃以上250℃以下で加熱処理することで、被膜を形成することができる。好ましくは210℃以上である。処理時間を5分以上10分以下として被膜を硬化させることができる。
【0083】
なお、防錆防食剤は、溶媒を必ずしも含んでいなくてもよい。粉体塗装の手法で被表面処理体に供給される場合には、必ずしも溶媒は必要としないからである。
【0084】
(防錆防食方法)
防錆防食方法は、被防錆防食体の表面に防錆防食剤を供給して被膜を形成する工程を含んでいる。防錆防食方法は、防錆防食被膜を有する防錆防食体の製造方法でもある。被防錆防食体の被防錆防食面は、特に限定されないが、例えば、典型的には金属である。こうした被防錆防食体の被防錆防食面に対して防錆防食剤が供給される。被防錆防食面については、必要に応じて前処理が施される。前処理は、主として被防錆防食面の不純物を除去する意図で行われることが多い。典型的には、防錆防食剤を用いて、被防錆防食面をショットブラスト、サンドブラスト等によって研磨する。さらに、n−ヘキサン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン等の有機溶剤で洗浄乾燥する。こうした前処理は、鉄鋼、鋳鉄、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム製品等の金属系の被防錆防食体に好ましく適用される。
【0085】
その後、防錆防食剤を、浸漬、スプレー、カーテンフローコーター、回転ブラシコーター、粉体塗装、静電塗装等によって被防錆防食面に供給する。供給後は、防錆防食剤層を適宜乾燥する。乾燥は、特に限定されないが、例えば、室温に放置し、必要あれば空気を送って乾燥し、そして150〜160℃で少なくとも10分間予備加熱乾燥などの条件が採用される。その後、例えば、好ましくは300℃以上400℃以下、より好ましくは320℃以上370℃以下の温度で加熱処理する。この加熱処理によって、被防錆防食面に、防錆防食剤による自己犠牲型金属防錆防食被膜が形成される。この金属防錆防食被膜上には所望なれば、更にオーバーコート剤による被覆が施されてもよい。
【0086】
なお、接着剤としてクロム酸を用いる場合には、例えば、上記した予備乾燥や加熱処理の間にクロム酸が酸化クロムIIIに変化して無害化し同時に粘着性を発揮し接着剤として機能する。
【0087】
また、防錆防食剤が、バインダとして、錫金属粉末及び/又は複合材料20を含むときには、処理温度を200℃以上250℃以下で加熱処理することで、被膜を形成することができる。好ましくは210℃以上である。複合材料20は、錫を含んでおり、低温で溶融されるからである。なお、処理時間を1分以上10分以下とすることができる。
【0088】
なお、防錆防食被膜の厚さは特に限定しないが、5μm以上30μm以下とすることがいる。好ましくは、10μm以上であり、好ましくは20μm以下である。
【0089】
以上説明したように、本明細書に開示される複合材料10は、今までに存在しなかった高輝度の美しい銀白色を呈することができる。すなわち、アルミニウムペーストの別途の添加を要せずとも、高輝度な発色を呈することができる。しかも、複合材料10は、亜鉛との複合化により安全に貯蔵及び取り扱いが可能となっている。さらに、複合材料10は、亜鉛に由来する酸化亜鉛に基づく紫外線吸収作用や自己犠牲型防錆防食作用も奏する。
【0090】
また、以上説明したように、本明細書に開示される複合材料20は、今までに存在しなかった高輝度の美しい黄色を帯びた銀白色を呈することができる。しかも、複合材料20は、錫の特性に基づくバインダ機能を備えている。さらに、複合材料20は、亜鉛に由来する酸化亜鉛に基づく紫外線吸収作用や自己犠牲型防錆防食作用も奏する。
【0091】
したがって、本明細書に開示される複合材料10、20は、表面処理剤、防錆防食剤の構成成分となるほか、それ自体顔料としても用いることができる。複合材料10、20は、このため、塗料、印刷インクなど装飾用、絵画用、あるいは自動車塗料用など、その利用用途は多岐にわたる。
【0092】
本明細書に開示される複合材料10、20を顔料として製造する場合には、顔料として公知の成分を複合材料10、20の製造時に、複合材料10、20の原料と同時に混合して製造してもよいし、複合材料10、20の製造後に、顔料を添加し混合してもよい。これにより、赤、青等、多様な色調の防錆防食性を有する顔料(同時に接着剤を兼用することも可能)を得ることができる。また、本明細書に開示される複合材料10及び/又は複合材料20を含む表面処理剤及び防錆防食剤は、それ自体、水系塗料としても用いることができる。
【0093】
本明細書に開示される複合材料10、20によれば、被膜中に有害な物質は一切含まれず、さらに廃棄処理後にも有害成分あるいは有害成分を生成するような成分は含まれていない、地球環境に優しい省資源、省エネルギーである表面処理剤及び防錆防食剤を提供することができる。しかも、防錆防食剤としては、電気亜鉛メッキ、溶融亜鉛メッキ、衝撃亜鉛メッキ等の公知の技術に比しても優れた自己犠牲型防錆防食剤である。また、防錆防食剤は、顔料を使用せずとも、着色された自己犠牲型防錆防食剤を製造することができる。すなわち、本明細書に開示される複合材料10、20は、防錆防食作用を有する顔料でもある。
【0094】
本明細書に開示される表処理方法、防錆防食法、表面処理剤及び防錆防食剤は、特に、被処理鋼板上に塗布して成る事を特徴とする亜鉛鋼板、カラー鋼板および鉄系締結部品の防錆防食剤として好ましく用いることができる。より具体的には、(1)カラー鋼板などのプレハブ用資材の防錆防食用、(2)ガードレール、照明用、看板用ポール等屋外で使用される鉄系構造物の防錆防食用、(3)自動車を初めとする輸送機材の亜鉛鋼板の代替鋼板の防錆防食用、(4)ボルト、ナット、タッピング等の締結部品の防錆防食用として用いることができる。
【0095】
本明細書に開示される複合材料20は、また、電池材料としても有用である。
【0096】
以上によれば、本明細書に開示される複合材料を含む被膜を備える各種形態の被膜保持体も提供される。
【実施例】
【0097】
以下、本明細書に開示される複合材料、表面処理剤及び防錆防食剤を具体例を挙げて説明する。なお、以下の実施例において部は質量部を意味し、%は質量%を意味するものとする。
【実施例1】
【0098】
(複合材料の製造)
以下に示す操作を行って、アルミニウム/亜鉛フレーク(複合材料)1〜4を製造した。
【0099】
(複合材料1)
蒸発法で得られた亜鉛粒子(平均粒径4μm)800gと、アトマイズ法により得られたアルミニウム粒子(平均粒径:7μm)200gと、ミネラルスピリット4L、滑剤35gとを、シリンダー容積1.4Lのビーズミル(前段に容量10Lのホーデングタンクを備えている。)を使用して、液の流量10L/分、スリット幅0.2mm、シリンダー内の羽根の周速110m/分、液温14〜16℃、ジルコニア製ボール(直径0.8mm)を使用して粉砕、混合及びフレーク化を6時間行い、島津製作所製の粒度分布測定器による粒度測定の結果平均粒径が10.7μmとなったのでミルを止め、混合液をろ過した。その結果、高輝度の白銀色のアルミニウム/亜鉛複合粒子を含む複合材料(アルミニウム含量20%)を得た。
【0100】
(複合材料2)
蒸発法で得られた亜鉛粒子(平均粒径4μm)870gと、アトマイズ法により得られたアルミニウム粒子(平均粒径:7μm)130gと、ミネラルスピリット4L、滑剤35gとを、シリンダー容積1.4Lのビーズミル(前段に容量10Lのホーデングタンクを備えている。)を使用して、液の流量10L/分、スリット幅0.2mm、シリンダー内の羽根の周速110m/分、液温14〜16℃、ジルコニア製ボール(直径0.5mm)を使用して粉砕、混合及びフレーク化を6時間行い、島津製作所製の粒度分布測定器による粒度測定の結果平均粒径が10.3μmとなったのでミルを止め、混合液をろ過した。その結果、高輝度の白銀色のアルミニウム/亜鉛複合粒子を含む複合材料(アルミニウム含量13%)を得た。
【0101】
(複合材料3)
蒸発法で得られた亜鉛粒子(平均粒径4μm)870gと、アトマイズ法により得られたアルミニウム粒子(平均粒径:7μm)130gと、ミネラルスピリット4L、滑剤35gとを、シリンダー容積1.4Lのビーズミル(前段に容量10Lのホーデングタンクを備えている。)を使用して、液の流量10L/分、スリット幅0.2mm、シリンダー内の羽根の周速110m/分、液温14〜16℃、ジルコニア製ボール(直径0.5mm)を使用して粉砕、混合及びフレーク化を6時間行い、島津製作所製の粒度分布測定器による粒度測定の結果平均粒径が22.4μmとなったのでミルを止め、混合液をろ過した。その結果、高輝度の白銀色のアルミニウム/亜鉛複合粒子を含む複合材料(アルミニウム含量13%)を得た。
【0102】
(複合材料4)
蒸発法で得られた亜鉛粒子(平均粒径4μm)800gと、アトマイズ法により得られたアルミニウム粒子(平均粒径:7μm)200gと、ミネラルスピリット4L、滑剤40gとを、シリンダー容積1.4Lのビーズミル(前段に容量10Lのホーデングタンクを備えている。)を使用して、液の流量10L/分、スリット幅0.2mm、シリンダー内の羽根の周速110m/分、液温14〜16℃、ジルコニア製ボール(直径0.8mm)を使用して粉砕、混合及びフレーク化を6時間行い、島津製作所製の粒度分布測定器(レーザ回折・光散乱法)による粒度測定の結果平均粒径が10.5μmとなったのでミルを止め、混合液を蒸留装置に移してミネラルスピリット等を回収した。その結果、高輝度の白銀色のアルミニウム/亜鉛フレークを複合粒子とする、複合材料(アルミニウム含量20%)を得た。
【実施例2】
【0103】
(表面処理剤の製造例)
実施例1で製造した複合材料1、2を用いて以下に示す表面処理剤の原料を混合して、表面処理剤A、Bを調製した。なお、エポキシ変性シリコン樹脂は、以下の方法で調製した。すなわち、エピクロルヒドリンとビスフェノールAとの縮合物であるエポキシ樹脂30部と70%ポリシロキサンキシロール溶液(粘度0.2〜0.5ポイズ/25℃)25部とを混合し、パラトルエンスルホン酸0.5部及びジアセトンアルコール75部とを添加して、攪拌機、コンデンサー、温度計を付した反応器に投入し、還流温度で加熱撹拌して3時間反応させた。その後、反応により生成した水とともにキシロールを除去してエポキシ変性樹脂を得た。
【0104】
また、ポリ四フッ化エチレン樹脂(200メッシュ以下)は、ダイキン工業製のレブロンL−5を用い、たれ止め剤は、楠本化成製のデシスパロン6900−20Xを用いた。
【0105】
(表面処理剤A)
複合材料1 18.0部
エポキシ変性シリコン樹脂 45.0部
ポリ四フッ化エチレン樹脂 3.9部
たれ止め剤 1.0部
ジアセトンアルコール 32.1部
(表面処理剤の粘度は岩田式フォードカップNK−2で40秒であった。)
【0106】
(表面処理剤B)
複合材料2 16.5部
エポキシ変性シリコン樹脂 41.5部
ポリ四フッ化エチレン樹脂 3.5部
たれ止め剤 1.0部
ジアセトンアルコール 37.5部
(表面処理剤の粘度は岩田式フォードカップNK−2で40秒であった。)
【実施例3】
【0107】
本実施例では、実施例2で調製した表面処理剤A,Bを用いて鋼板及びネジを表面処理して、外観、密着性及び耐食性(塩水)について評価した。
【0108】
1.試料
(1)鋼板:SPCC−SB(JIS G 3141,150mm×70mm×0.8mm)を使用した。これをn−ヘキサンで洗浄し、乾燥後ショットブラストによって表面を研磨し、次いでn−ヘキサン、その後エーテルで洗浄し、乾燥した。
(2)ねじ:長さ75mm、径2mm、頭部8mm、ねじ部50mmのプラスねじを使用した。これをn−ヘキサンで洗浄し、乾燥後ショットブラストによって表面を研磨し、次いでn−ヘキサンで洗浄し、乾燥した。
【0109】
2.塗布および熱処理
(1)鋼板:上記鋼板に表面処理剤A,Bを加熱処理後に膜厚が25〜30μmとなるように塗布し、1〜2分間風乾後200℃の乾燥機に入れ10分間加熱乾燥し、冷却後、さらに、同じ表面処理剤の塗布乾燥を行い、膜厚を50μm前後とした。表面処理剤Aによる膜厚は48μmであり、表面処理剤Bによる膜厚は50μmであった。
(2)ねじ:上記ねじを上記処理液A,Bの各々に浸漬し、引上げた後、脱水機(カゴの径200mm、深さ200mm、回転速度330回/分)にて、正回転3秒、逆回転3秒で脱水処理を行ない、1〜2分間風乾後200℃で10分間加熱乾燥した。なお、表面処理剤A、Bによる膜厚はいずれも7μmであった。
【0110】
3.評価方法及び結果
(1)鋼板の塗膜の外観
塗膜の外観を目視観察した。結果は以下の通りであった。
表面処理剤A:光沢のある美しい銀白色であった。
表面処理剤B:ややネズミ色を帯びた光沢のある美しい銀白色であった。
【0111】
(2)塗膜の密着性
鋼板上に碁盤目状に切り込みを100個のマス目を形成し、そのマス目内にテープを付着させ、そのテープを引きはがすことで密着性を調べた。結果は以下の通りであった。
表面処理剤A:100個のマス目中100個のマス目においてテープ剥離によって被膜は剥がれることはなかった。
表面処理剤B:100個のマス目中100個のマス目においてテープ剥離によって被膜は剥がれることはなかった。
【0112】
以上の結果から、表面処理剤A、Bによる被膜の密着性は優れたものであることがわかった。
【0113】
(3)耐食性(塩水噴霧試験)
鋼板及びネジについて、JIS−Z−23717に準じて塩水噴霧試験を行なった。鋼板の結果を表1に、ネジの結果を表2に示す。なお、鋼板はクロスに切れ目を入れた。また「ねじ」は5本1組とした。なお、鋼板については、通常の電気亜鉛めっきした実施例と同一の鋼板製の板状体とし、16μmのクロメート処理品を比較例とし、ネジについては、実施例と同一のネジの頭部を通常の電気亜鉛めっきされたものであって、13μmのクロメート処理品を、比較例とした。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
表1及び表2に示したように、表面処理剤A、Bによって表面処理された試料は、高い耐食性(防錆防食性)を有していることが明らかであった。
【実施例4】
【0117】
本実施例では、実施例1で製造した複合材料3(アルミニウム含量13%、平均粒径22.4μmのアルミニウムフレーク付着亜鉛フレーク)を用いて以下に示す防錆防食剤の原料を混合して、防錆防食剤を調製した。なお、全混合液を100メッシュの篩で篩過して防錆防食剤とした。なお、ポリオキシエチレンオクチルアルコールは、HLB12.7のものを用い、シランカップリング剤は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた。
【0118】
(防錆防食剤)
複合材料3 25.0部
ポリオキシエチレンオクチルアルコールエーテル 0.3部
ジプロピレングリコール 11.7部
シランカップリング剤 13.0部
蒸留水 47.0部
ホウ酸 3.0部
ヒドロキシエチルセルロース 0.2部
(ろ過後の防錆防食剤の粘度は岩田式フォードカップNK−2で35秒であった。)
【実施例5】
【0119】
本実施例では、実施例4で調製した防錆防食剤を用いて鋼板及びネジを表面処理して、外観、密着性及び耐食性(塩水)について評価した。
【0120】
1.試料
(1)鋼板:SS−41鋼板(150mm×70mm×2.3mm)を使用した。これをn−ヘキサンで洗浄し、乾燥後ショットブラストによって表面を研磨し、次いでn−ヘキサン、その後エーテルで洗浄し、乾燥した。
(2)ねじ:長さ75mm、径2mm、頭部8mm、ねじ部50mmのプラスねじを使用した。これをn−ヘキサンで洗浄し、乾燥後ショットブラストによって表面を研磨し、次いでn−ヘキサンで洗浄し、乾燥した。
【0121】
2.塗布および熱処理
(1)鋼板:上記鋼板に防錆防食剤を加熱処理後に膜厚が6〜8μmとなるように塗布し、1分間風乾後150℃の乾燥機に入れ10分間予備加熱乾燥し、その後、340℃〜350℃で15分間加熱処理を行った(これを1コート、1ベークとする。)さらに、同じ工程を行い、2コート、2ベークとし、全塗膜の厚みを16μmとした。
(2)ねじ:上記ねじを防錆防食剤に浸漬し、引上げた後、脱水機(カゴの径200mm、深さ200mm、回転速度330回/分)にて、正回転3秒、逆回転3秒で脱水処理を行ない、1分間風乾後150℃で10分間予備加熱乾燥し、その後、340℃〜350℃で15分間加熱処理を行った(これを1コート、1ベークとする。)さらに、同じ工程を行い、2コート、2ベークとし、全塗膜の厚みを15μmとした。
【0122】
3.評価方法及び結果
(1)鋼板の塗膜の外観
塗膜の外観を目視観察した。結果は以下の通りであった。
鋼板:ややネズミ色を帯びた光沢のある美しい銀白色をした滑らかな塗膜であった。
【0123】
(2)塗膜の密着性
鋼板:鋼板上に碁盤目状に切り込みを100個のマス目を形成し、そのマス目内にテープを付着させ、そのテープを引きはがすことで密着性を調べた。
ネジ:ネジの頭部を指先で強く3回摩擦し、付着物があるかどうかを調べた。
結果は以下の通りであった。
鋼板:100個のマス目中100個のマス目においてテープ剥離によって被膜は剥がれることはなかった。
ねじ:指先に付着物はなかった。
【0124】
以上の結果から、防錆防食剤による鋼板及びネジにおける被膜の密着性は優れたものであることがわかった。
【0125】
(3)耐食性(塩水噴霧試験)
鋼板及びネジについて、JIS−Z−23717に準じて塩水噴霧試験を行なった。鋼板の結果を表3に、ネジの結果を表4に示す。なお、鋼板はクロスに切れ目を入れた。また「ねじ」は5本1組とした。なお、鋼板については、通常の電気亜鉛めっきした実施例と同一の鋼板製の板状体とし、13μmのクロメート処理品を比較例とし、ネジについては、実施例と同一のネジの頭部を通常の電気亜鉛めっきされたものであって、12μmのクロメート処理品を、比較例とした。結果を表3及び表4に示す。
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
表3及び表4に示したように、防錆防食剤によって処理された鋼板及びネジは、高い耐食性(防錆防食性)を有していることが明らかであった。
【実施例6】
【0129】
本実施例では、実施例1で製造した複合材料4(アルミニウム含量20%、平均粒径10.5μmのアルミニウムフレーク付着亜鉛フレーク)を用いて以下に示す防錆防食剤の原料を混合して、防錆防食剤を調製した。なお、全混合液を100メッシュの篩で篩過して防錆防食剤とした。なお、ポリオキシエチレンオクチルアルコールは、HLB12.7のものを用いた。
【0130】
(防錆防食剤)
複合材料4 13.0部
ポリオキシエチレンオクチルアルコールエーテル 1.0部
グリセリン 2.0部
ジエチレングリコール 25.0部
クロム酸 4.8部
蒸留水 54.2部
ヒドロキシエチルセルロース 0.38部
(ろ過後の防錆防食剤の粘度は岩田式フォードカップNK−2で40秒であった。)
【実施例7】
【0131】
本実施例では、実施例6で調製した防錆防食剤を用いて鋼板を表面処理して、外観、密着性及び耐食性(塩水)について評価した。
【0132】
1.試料
鋼板:SPCC−SB鋼板(JIS G 3141,150mm×70mm×0.8mm)を使用した。これをn−ヘキサンで洗浄し、乾燥後ショットブラストによって表面を研磨し、次いでn−ヘキサン、その後エーテルで洗浄し、乾燥した。
【0133】
2.塗布および熱処理
上記鋼板に防錆防食剤を加熱処理後に膜厚が6〜8μmとなるように塗布し、1〜2分間風乾後150℃〜160℃の0乾燥機に入れ10分間予備加熱乾燥し、その後、340℃〜350℃で15分間加熱処理を行った(これを1コート、1ベークとする。)さらに、同じ工程を行い、2コート、2ベークとし、全塗膜の厚みを15μmとした。
【0134】
3.評価方法及び結果
(1)鋼板の塗膜の外観
塗膜の外観を目視観察した。結果は以下の通りであった。
鋼板:ややネズミ色を帯びた光沢のある美しい銀白色をした滑らかな塗膜であった。
【0135】
(2)塗膜の密着性
鋼板:鋼板上に碁盤目状に切り込みを100個のマス目を形成し、そのマス目内にテープを付着させ、そのテープを引きはがすことで密着性を調べた。
ネジ:ネジの頭部を指先で強く3回摩擦し、付着物があるかどうかを調べた。
結果は以下の通りであった。
鋼板:100個のマス目中100個のマス目においてテープ剥離によって被膜は剥がれることはなかった。
ネジ:指先に付着物はなかった。
【0136】
以上の結果から、防錆防食剤による鋼板における被膜の密着性は優れたものであることがわかった。
【0137】
(3)耐食性(塩水噴霧試験)
鋼板について、JIS 2 23717に準じて塩水噴霧試験を行なった。鋼板の結果を表5に示す。なお、鋼板はクロスに切れ目を入れた。なお、鋼板については、通常の電気亜鉛めっきした実施例と同一の鋼板製の板状体とし、12μmのクロメート処理品を比較例とした。結果を表5に示す。
【0138】
【表5】
【0139】
表5に示したように、防錆防食剤によって処理された鋼板は、高い耐食性(防錆防食性)を有していることが明らかであった。
【実施例8】
【0140】
蒸発法で得られた亜鉛粒子(平均粒子径約3.7±0.3μm)850gにアトマイズ法で得られたアルミ粒子(平均粒子径約7μm)の150g、ミネラルスピリット2L及び滑剤30gを、シリンダ容積1.4Lのビーズミルを使用して、液の流量10L/分、スリット幅0.2mm、シリンダー内の羽根の周速110m/分、液温14〜16℃、ジルコニア製ボール(直径0.8mm)を使用して粉砕、混合及びフレーク化を6時間行い、島津製作所製の粒度分布測定器による粒度測定の結果平均粒径が10.3μmとなったところでビーズミルを止めた。混合液を全量蒸発乾燥機に移し、蒸発乾燥し、銀白色の美しい光を呈する金属(アルミニウム/亜鉛)フレークを得た(金属フレークAとする。)。
【0141】
蒸発法で得られた亜鉛粒子(平均粒子径:3.7±0.3μm)の700gにアトマイズ法で得られた錫粒子(平均粒子径約35μm)の300gとミネラルスピリット2L、滑剤50gを、シリンダ容積1.4Lのビーズミルを使用して、を使用して、液の流量10L/分、スリット幅0.2mm、シリンダー内の羽根の周速110m/分、液温14〜15℃、ジルコニア製ボール(直径0.8mm)を使用して粉砕、混合及びフレーク化を7時間行い、島津製作所製の粒度分布測定器による粒度測定の結果平均粒径が8.3μmとなったのでビーズミルを止め、混合液を全量蒸発乾燥機に移し、蒸発乾燥し、黄色を帯びた銀白色を呈する金属(錫/亜鉛)フレークを得た。この金属(錫/亜鉛)フレークの融点は199℃であった(金属フレークBとする。)。
【0142】
本実施例で得た金属フレークA及び金属フレークBをそれぞれ以下の通り配合するほか、界面活性剤、水溶性有機溶剤、を配合し、混合しスラリー状とした。
【0143】
金属フレークA 34.0重量部
金属フレークB 26.0重量部
ステアリン酸 0.6重量部
分散剤 0.85重量部
ジプロピレングリコール 28.55重量部
蒸留水 10.0重量部
(分散剤はポリオキシエチレンオクチルアルコールエーテルでそのH.L.B.は12.7であった。)
【0144】
次に、このスラリーを用いて鋼板を表面処理して、外観、密着性及び耐食性(塩水)について評価した。
【0145】
1.試料
鋼板:SPCC−SB鋼板(JIS G 3141,150mm×70mm×0.8mm)を使用した。これをn−ヘキサンで洗浄し、乾燥後ショットブラストによって表面を研磨し、次いでn−ヘキサン、その後エーテルで洗浄し、乾燥した。
【0146】
2.塗布および熱処理
上記鋼板にスラリーを膜厚が約30μmとなるように塗布し、1〜2分間室温で風乾後250℃で10分間加熱処理行った。塗膜厚みは28μmであった。これを試料イ(1コート1ベーク)とした。また、上記スラリーを加熱処理後に膜厚が約30μmとなるようにさらに塗布して、室温で放置後、250℃で10分間加熱処理した。塗膜の厚みは、合計約55μmとなった。これを試料ロ(2コート2ベーク)とした。
【0147】
3.評価方法及び結果
(1)鋼板の塗膜の外観
塗膜の外観を目視観察した。試料イ及びロは、いずれも、美しい銀白色の輝きを有する滑らかな塗膜であった。
【0148】
(2)塗膜の密着性
鋼板上に碁盤目状に切り込みを100個のマス目を形成し、そのマス目内にテープを付着させ、そのテープを引きはがすことで密着性を調べた。その結果、試料イ及びロについて、100個のマス目中100個のマス目においてテープ剥離によって被膜は剥がれることはなかった。
【0149】
以上の結果から、スラリーによる鋼板における被膜の密着性は優れたものであることがわかった。すなわち、特にバインダ材料を含まなくても、スラリー中の錫/亜鉛フレークがバインダとして機能し、しかも、250℃以下の低温で優れたバインダとして機能することがわかった。
【0150】
(3)耐食性(塩水噴霧試験)
鋼板について、JIS 2 23717に準じて塩水噴霧試験を行なった。鋼板の結果を表6に示す。なお、試料イ及びロにはクロスに切れ目を入れた。なお、比較例として、厚み2mm、幅10cm、長さ30cmの鋼板をアルミニウム含有量15%の溶融亜鉛めっきそうでメッキ(厚み560μm)としたものを用いた。
結果を表6に示す。
【0151】
【表6】
【0152】
表6に示したように、スラリーによって処理された鋼板(試料イ及びロ)は、いずれも実用性のある防錆防食性能を示した。また、溶融亜鉛めっきよりも薄膜でも十分に優れた防錆防食能を呈することがわかった。
【実施例9】
【0153】
(複合材料(1)の製造)
蒸発法で得られた亜鉛粒子(平均粒径:3.7±0.3μm)の800gと、アトマイズ法で得られたスズ粉末(純度:99.7%以上のβスズで平均粒径:35μm)の150gおよび80gのアルミニュウムペースト(65%のアルミニュウムペーストであるのでここに含まれるアルミニュウムフレークは52gである)とミネラルスピリット3L、滑剤20gとを、シリンダー容積1.4Lのビーズミルを使用して、液の流量10L/分、スリット幅0.2mm、シリンダー内の羽根の収周速110m/分、液温14〜16℃、ジルコニア製ボール(直径:0.8mm)を使用して、粉砕、混合、フレーク化を10時間行い、島津製作所製の粒度分布測定器による粒度測定の結果、平均粒径が8.3μとなったので、全量乾燥機(エバポレーターか処理液を攪拌しながら溶剤を蒸発回収する乾燥機、但し、処理液の液温は150℃以下で減圧下溶剤を回収し、複合材料を粉末状で得る)に移し、処理液の液温を150℃以下で減圧下溶剤を回収し、複合材料を粉末状で得られた。黄味を帯びた銀白色の粉末で、融点は199℃であった。
【0154】
(複合材料(2)の製造)
蒸発法で得られた亜鉛粒子(平均粒径:3.7±0.3μm)の850gとアトマイズ法で得られたアルミニュウム粒子(平均粒径:7μm)の150gとミネラルスピリット3L、滑剤20gとを、シリンダー容積1.4Lのビーズミルを使用して、液の流量10L/分、スリット幅0.2mm、シリンダー内の羽根の周速110m/分、液温14〜16℃、ジルコニア製ボール(直径:0.8mm)を使用して、粉砕、混合、フレーク化を5時間行い、島津製作所製の粒度分布測定器による測定結果が19.0μとなったので、処理液の全量を乾燥機に移し、減圧下、アルミニュウムフレーク付着亜鉛フレークの光輝のある銀白色の亜鉛系着色複合材料(2)を得た。
【0155】
(複合材料(3)の製造)
蒸発法で得られた亜鉛粒子(平均粒径:3.7±0.3μ)の800gとアトマイズ法で得られたアルミニュウム粒子(平均粒径:7μ)の60gとウルトラマリン青(平均粒径:0.3μ)の140gとミネラルスピリット4L、滑剤20gとを、シリンダー容積1.4Lのビーズミルを使用して、液の流量10L/分、スリット幅:0.2mm、シリンダー内の羽根の周速110m/分、液温15〜17℃、ジルコニア製ボール(直径:0.8mm)を使用して、粉砕、混合、フレーク化を5時間行い、島津製作所製の粒度分布測定器による測定結果が17.6μとなったので、処理液の全量を乾燥機に移し、減圧下で溶剤を回収し、青色に着色した亜鉛系複合着色材料を粉末状で得た。
【0156】
(複合材料(4)の製造)
蒸発法で得られた亜鉛粒子(平均粒径:3.7±0.3μ)の800gとアトマイズ法で得られたアルミニュウム粒子(平均粒径:7μ)の60gとベンガラ(平均粒径:0.2μ)の140gとミネラルスピリット4L、滑剤20gとを、シリンダー容積1.4Lのビーズミルを使用して、液の流量10L/分、スリット幅:0.2mm、シリンダー内の羽根の周速110m/分、液温16〜17℃、ジルコニア製ボール(直径:0.8mm)を使用して、粉砕、混合フレーク化を5時間行い、島津製作所製の粒度分布測定器による測定結果が18.3μとなったので、処理液の全量を乾燥機に移し、減圧下で溶剤を回収し、赤色に着色した亜鉛系複合材料を粉末状で得た。
【0157】
以下、複合材料(1)〜(4)を用いた表面処理剤の製造について記載する。
【0158】
(銀白色をした処理剤)
複合材料(1) 15.0部
複合材料(2) 30.0部
プロピレングリコール 34.2部
ポリオキシエチレンオクチルアルコールエーテル 0.4部
蒸留水 19.6部
ステアリン酸 0.8部
【0159】
上記の材料を充分に混合攪拌した。24時間以上混合攪拌した後、100メッシュの篩で濾過をし、更に混合攪拌した後使用する。複合材料が沈殿しないように常にゆっくり攪拌する。この処理剤の粘度は、岩田式フォードカップ(NK−2)で33秒であった。(処理剤Aとする)
【0160】
(青色をした処理剤)
複合材料(1) 13.5部
複合材料(3) 30.0部
プロピレングリコール 37.3部
ポリオキシエチレンオクチルアルコールエーテル 0.4部
蒸留水 18.0部
ステアリン酸 0.8部
上記の材料を充分に攪拌混合した。24時間以上混合攪拌した後、100メッシュの篩で濾過をし、更に混合攪拌した後使用する。複合材料が沈殿しないように常に攪拌をする。実施例2の処理液の粘度は岩田式フォードカップ(NK−2)で31秒であった。
(処理剤Bとする)
【0161】
(赤色をした処理剤)
複合材料(1) 13.0部
複合材料(4) 30.0部
プロピレングリコール 40.8部
ポリオキシエチレンオクチルアルコールエーテル 0.4部
蒸留水 15.0部
ステアリン酸 0.8部
上記の材料を充分に攪拌混合した。24時間以上混合攪拌した後、100メッシュの篩で濾過をし、更に混合攪拌した後使用する。複合材料が沈殿しないように常に攪拌する。実施例3の処理液の粘度は岩田式フォードカップ(NK−2)で32秒であった。(処理剤Cとする)
【0162】
(銀白色をしたペースト状型(ゲル状型)処理剤)
複合材料(1) 15.0部
複合材料(2) 30.0部
プロピレングリコール 48.8部
ポリオキシオクチルアルコールエーテル 0.4部
蒸留水 5.0部
ステアリン酸 0.8部
上記材料を充分に攪拌混合した。5時間以上混合し、ペースト状(ゲル状)に気泡が無く、ペースト状になっている事を確認し、処理剤Dとした(処理液がペースト状である為金属フレークの沈降は起きにくい。)
【0163】
本実施例では、調製した表面処理剤の処理剤A〜Dを用いて鋼板を表面処理して、外観、密着性、耐食性(塩水噴霧試験)について評価した。
【0164】
(試料)
鋼鈑:SPCC−SB(JIS G3141,150mm×70mm×0.8mm)を使用した。これをn−へキサンで洗浄し、乾燥後ショットブラストによって表面を研磨し、ついでn−へキサン、その後エーテルで洗浄し乾燥した。
【0165】
(塗布および熱処理)
上記鋼鈑の表面に処理液、A,B,C、Dを加熱処理後、膜厚が6〜8ミクロンになるように塗布し、予備乾燥として、140〜150℃で10分乾燥し、続いて250℃で5分本乾燥した。冷却後さらに、処理液A、B、C、Dで加熱乾燥後、トータルで膜厚が13〜15μになるように塗布し加熱乾燥した。
【0166】
(評価方法および結果)
(1)鋼鈑の塗膜の外観
塗膜の外観を目視観察した。結果は以下の通りであった。
処理剤A:光沢のある美しい銀白色であった。
処理剤B:青色をした塗膜であった。
処理剤C:赤色をした美しい塗膜であった。
処理剤D:美しい銀白色であった。
【0167】
(2)塗膜の密着性
鋼鈑上に碁盤目状に切り込みをして100個のマス目を形成し、そのマス目内にテープを付着させ、そのテープを引き剥がすことで密着性を調べた。結果は以下の通りであった。
処理剤A:100個のマス目中100個のマス目においてテープ剥離によって被膜は剥がれなかった。
処理剤B:100個のマス目中100個のマス目においてテープ剥離によって被膜は剥がれなかった。
処理剤C:100個のマス目中100個のマス目においてテープ剥離によって被膜は剥がれなかった。
処理剤D:100個のマス目中100個のマス目においてテープ剥離によって被膜は剥がれなかった。
【0168】
(3)耐食性(塩水噴霧試験)
JIS−Z−23717に準じて、処理液A〜Cで処理された試験片について、塩水噴霧試験を行った。比較対照として膜厚:16μのクロメート処理品(電気亜鉛めっき)を同時に試験した。
試験結果は電気亜鉛めっきされたクロメート処理品より、処理液A、B、Cで処理された処理被膜は良い結果を示していた。
試料(鋼鈑) 塩水噴霧試験 (時間)
120 240 970 1050
処理剤A(膜厚;14μm) a a a a
処理剤B(膜厚:12μm) a a a a
処理剤C(膜厚:14μm) a a a a
処理剤D(膜厚:15μm) a a a a
クロメート処理品(比較) b − − −
(a:変化なし、b:全面に赤錆が発生)