(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エチレン[A]由来の構成単位と、炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]由来の構成単位と、(c−1)ポリエンおよび(c−2)環状オレフィンからなる群より選ばれる1種以上の成分[C]に由来する構成単位とを含み、以下の(1)〜(3)を満たすエチレン系共重合体(X)100質量部と、可塑剤(Y)を750〜2000質量部とを含んでなり、
前記可塑剤(Y)の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が0.2dl/g以下である塊状物;
(1)エチレン[A]に由来する構成単位が、前記共重合体(X)の成分〔A〕由来の構成単位と成分〔B〕由来の構成単位と、成分〔C〕由来の構成単位との合計100モル%中、50〜90モル%の範囲、
(2)成分[C]に由来する構成単位が、前記共重合体(X)の成分〔A〕由来の構成単位と成分〔B〕由来の構成単位と、成分〔C〕由来の構成単位との合計100モル%中、1.0〜5.0モル%の範囲、および、
(3)エチレン系共重合体(X)の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が、7.8〜13.0dl/gの範囲である。
エチレン[A]由来の構成単位と、炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]由来の構成単位と、(c−1)ポリエンおよび(c−2)環状オレフィンからなる群より選ばれる1種以上の成分[C]に由来する構成単位とを含み、以下の(1)〜(3)を満たすエチレン系共重合体(X)100質量部と、可塑剤(Y)を1001〜2000質量部とを含んでなる組成物(Z);
(1)エチレン[A]に由来する構成単位が、前記共重合体(X)の成分〔A〕由来の構成単位と成分〔B〕由来の構成単位と、成分〔C〕由来の構成単位との合計100モル%中、50〜90モル%の範囲、
(2)成分[C]に由来する構成単位が、前記共重合体(X)の成分〔A〕由来の構成単位と成分〔B〕由来の構成単位と、成分〔C〕由来の構成単位との合計100モル%中、1.0〜5.0モル%の範囲、および、
(3)エチレン系共重合体(X)の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]
が、7.8〜13.0dl/gの範囲である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明は何ら限定的に解釈されるものではない。
[塊状物]
本発明にかかる塊状物は、エチレン系共重合体(X)と、可塑剤(Y)とを含んでなる。
【0015】
塊状物とは、質量が通常100g〜1000kg、好ましくは1kg〜500kg、より好ましくは1kg〜300kg、さらに好ましくは1kg〜100kg、特には12kg〜70kg、さらには15kg〜50kg、特には18kg〜40kgである。なお、塊状物の形状は特に制限されない。
【0016】
特に50kg以下であると、人が持ち運ぶことも容易であり作業性に優れ、また多くの混練機に適合する質量である。
【0017】
また本願の塊状物は、一旦塊状物となったものを2つ以上の部分に切断などの方法で分離したものであってもよい。
【0018】
また密度は、通常0.6〜3.0kg/m
3、特に好ましくは、0.65〜2.0kg/m
3、さらには0.70〜1.0kg/m
3、より好ましくは0.75〜0.90kg/m
3、さらには0.80〜0.90kg/m
3である。
【0019】
塊状物の具体例は塊状であれば特に制限されないが、具体的には、いわゆるベールと呼ばれる形態の他に、ペレットを含む固形物も挙げられる。
【0020】
ベールや固形物は、そのまま包装袋に入れられても良いし、少なくとも一部がラッピングフィルムに覆われていても良いし、例えば少なくとも一部がラッピングフィルムに覆われた状態で更に包装袋に入れられていても良い。
エチレン系共重合体(X)
エチレン系共重合体(X)は、エチレン[A]由来の構成単位と、炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]由来の構成単位と、(c−1)ポリエンおよび(c−2)環状オレフィンからなる群より選ばれる1種以上の成分[C]由来の構成単位とを含むエチレン系共重合体(X)であって、
(1)エチレン[A]に由来する構成単位が、前記共重合体(X)の成分〔A〕由来の構成単位と成分〔B〕由来の構成単位と、成分〔C〕由来の構成単位との合計100モル%中、50〜90モル%、好ましくは55〜85モル%、より好ましくは55〜83モル%の範囲、
(2)成分[C]に由来する構成単位が、前記共重合体(X)の成分〔A〕由来の構成単位と成分〔B〕由来の構成単位と、成分〔C〕由来の構成単位との合計100モル%中、1.0〜5.0モル%、好ましくは1.0〜4.0モル%、より好ましくは1.0〜3.5モル%の範囲、および、
(3)エチレン系共重合体(X)の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が、7.8〜13.0dl/g、好ましくは8.0〜13.0dl/g、より好ましくは8.0〜12.0dl/g、更に好ましくは8.5〜12.0dl/gの範囲、
であることを特徴とするエチレン系共重合体である。
【0021】
以下、上記(1)〜(3)について、詳細に説明する。
【0022】
<(1)[A]エチレン>
本発明に用いられるエチレン系共重合体(X)は、エチレン[A](以下、単に「成分[A]」ともいう。)に由来する構成単位は、前記成分〔A〕由来の構成単位と成分〔B〕由来の構成単位と、成分〔C〕由来の構成単位との合計100モル%に対し、上記した範囲、すなわち50〜90モル%、好ましくは55〜85モル%、より好ましくは55〜83モル%の範囲、含有する。
【0023】
また、本発明の共重合体(X)の成分〔A〕由来の構成単位と成分〔B〕由来の構成単位と、成分〔C〕由来の構成単位との合計100モル%中のエチレン[A]に由来する構成単位の割合は、種々の公知の方法により測定することができ、例えば、1H−NMRスペクトルの測定により前記割合を求めることができる。
【0024】
<[B]炭素数3〜20のα―オレフィン>
本発明に用いられるエチレン系共重合体(X)は、炭素数3〜20のα−オレフィン[B](以下、単に「成分[B]」ともいう。)に由来する構成単位を含む。
【0025】
成分[B]の炭素数は、原料コスト、本発明の共重合体(X)の機械的性質および、後述する前記共重合体を含む組成物から得られる成形品のゴム弾性の観点から、好ましくは炭素数3〜20、好ましくは3〜8のα−オレフィン、より好ましくはプロピレン、1−ブテンであり、特に好ましくはプロピレンである。
【0026】
このような成分[B]の例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、これらの中でも、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが好ましく、より好ましくはプロピレン、1−ブテンであり、特に好ましくはプロピレンである。
【0027】
成分[B]は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
また、成分[B]に由来する構成単位は、本発明の共重合体(X)の柔軟性の点から、成分〔A〕由来の構成単位と成分〔B〕由来の構成単位と、成分〔C〕由来の構成単位との合計100モル%中、通常、9〜49モル%含まれ、好ましくは14〜44モル%、より好ましくは16〜44モル%含まれる。
【0029】
本発明の共重合体(X)における成分〔A〕由来の構成単位と成分〔B〕由来の構成単位と、成分〔C〕由来の構成単位との合計100モル%に対する成分[B]に由来する構成単位の割合は、種々の公知の方法により測定することができ、例えば、
1H−NMRスペクトルの測定により前記割合を求めることができる。
【0030】
<(2)(c−1)ポリエンおよび(c−2)環状オレフィンからなる群より選ばれる1種以上の成分[C]>
(c−1)ポリエンおよび(c−2)環状オレフィンからなる群より選ばれる1種以上の成分[C](以下、単に「成分[C]」ともいう。)に由来する構成単位について以下に説明する。
【0031】
本発明に係る成分[C]として用いうるポリエン[c-1](以下、単に、「成分[c-1]」ともいう。)は、二重結合を二つ以上(通常4個以下)有し、かつその二重結合同士が共役していなければ特に限定されないが、コストの観点から、炭素数5〜20の非共役ジエンが好ましく、炭素数5〜15の非共役ジエンがより好ましい。
【0032】
このような非共役ジエンの例としては、環状非共役ジエンとして5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエンおよびメチルテトラヒドロインデンが、鎖状非共役ジエンとして1,4−ヘキサジエンおよび7−メチル−1,6−オクタジエンが挙げられる。
【0033】
これらの中でも、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエンおよび5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)が好ましく用いられ、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が特に好ましく用いられる。
【0034】
本発明に係る成分[C]として用いうる環状オレフィン[c-2]は、不飽和の環式の炭化水素であって、炭素―炭素二重結合を環内に一個持つものである。環状オレフィンとしては、具体的には、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0035】
本発明に係る成分[C]は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。 本発明の共重合体における、成分[A]に由来する構成単位と成分[B]に由来する構成単位と、成分[C]に由来する構成単位との合計を100モル%とした場合における成分[C]に由来する構成単位の割合は、種々の公知の方法により測定することができ、例えば、
1H−NMRスペクトルの測定により前記割合を求めることができる。
【0036】
本発明のエチレン系共重合体(X)としては、成分[C]として、非共役ポリエンが好ましく、中でも、非共役ジエンが好ましく、特に5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が好ましい。
【0037】
<(3)極限粘度[η]>
本発明のエチレン系共重合体(X)は、135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が上記範囲にあることにより、多くの可塑剤を含んでも、形状保持性や耐ブリード性に優れる。またこの範囲の〔η〕を有するエチレン系共重合体(X)は、大量の可塑剤との組成物とした際に、組成物の粘度は低いが、他のゴムや配合剤との混練性に優れるという性質を有する。
【0038】
本発明のエチレン系共重合体(X)は、好ましくは、(i)
13C−NMRスペクトルおよび下記の式から求められるB値が0.9〜1.1、より好ましくは0.9から1.0である。この範囲にあると、たとえば可塑剤を配合してなる本発明の塊状物または組成物の強度が優れるため、保管や使用時の取り扱いにより適している。
【0039】
B値=[P
OE]/(2・[P
E]・[P
O])
(式中、[P
E]は、該ランダム共重合体中の(a)エチレンから導かれる単位の含有モル分率であり、[P
O]は、ランダム共重合体中の(b)α−オレフィンから導かれる単位の含有モル分率であり、[P
OE]は、ランダム共重合体における全ダイアド(dyad)連鎖数に対するα−オレフィン・エチレン連鎖数の割合である)、及び、
B値は、エチレン系共重合体(X)中におけるエチレンとα−オレフィンとの分布状態を表わす指標であり、J.C.Randall (Macromolecules, 15, 353(1982))、J.Ray(Macromolecules, 10,773 (1977))らの報告に基づいて求めることができる。
【0040】
上記(i)を満たすエチレン系共重合体は、低温領域でのゴム特性に優れる。
【0041】
[エチレン系共重合体(X)の製造方法]
エチレン系共重合体(X)は、メタロセン触媒を用いて製造し得る。具体的には、以下の方法で製造し得る。
【0042】
(触媒例1)
前記メタロセン触媒としては、下記一般式[I]または[II]で表される遷移金属化合物が挙げられる。
【0044】
【化2】
一般式[I]および[II]においてYは、ケイ素原子もしくは炭素原子である。
【0045】
また一般式[I]および[II]においてR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14は水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数が1〜20の炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R
1からR
14までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0046】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0047】
前記炭素数が1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール(aryl)基および置換アリール(aryl)基などが挙げられる。
【0048】
より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル(allyl)基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンジル基およびクミル基を挙げることができ、メトキシ基、エトキシ基およびフェノキシ基などの酸素含有基、ニトロ基、シアノ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基およびN−フェニルアミノ基などの窒素含有基、ボラントリイル基およびジボラニル基などのホウ素含有基、スルホニル基およびスルフェニル基などのイオウ含有基を含むものも前記炭化水素基の例として挙げられる。
【0049】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、そのようなハロゲン置換炭化水素基として例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基およびクロロフェニル基などを挙げることができる。
【0050】
上記ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基および炭化水素置換シロキシ基などを挙げることができる。より具体的には、例えば、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基およびジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などを挙げることができる。
【0051】
上記一般式[I]および[II]におけるR1からR4を有するシクロペンタジエニル基としては、R
1からR
4が水素原子である無置換シクロペンタジエニル基、3−t−ブチルシクロペンタジエニル基、3−メチルシクロペンタジエニル基、3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、3−フェニルシクロペンタジエニル基、3−アダマンチルシクロペンタジエニル基、3−アミルシクロペンタジエニル基および3−シクロヘキシルシクロペンタジエニル基などの3位1置換シクロペンタジエニル基、3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル基、3−t−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル基、3−フェニル−5−メチルシクロペンタジエニル基、3,5−ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル基、3,5−ジメチルシクロペンタジエニル基、3−フェニル−5−メチルシクロペンタジエニル基および3−トリメチルシリル−5−メチルシクロペンタジエニル基などの3,5位2置換シクロペンタジエニル基などを挙げることができるが、この限りではない。
【0052】
遷移金属化合物の合成のし易さ、製造コスト及び非共役ポリエン[C]の共重合能の観点から、無置換(R
1〜R
4が水素原子)であるシクロペンタジエニル基が好ましい。
【0053】
前記一般式[I]および[II]におけるR
5からR
12を有するフルオレニル基としては、R
5からR
12が水素原子である無置換フルオレニル基、2−メチルフルオレニル基、2−t−ブチルフルオレニル基および2−フェニルフルオレニル基などの2位1置換フルオレニル基、4−メチルフルオレニル基、4−t−ブチルフルオレニル基および4−フェニルフルオレニル基などの4位1置換フルオレニル基、あるいは2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル基および3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル基などの2,7位もしくは3,6位2置換フルオレニル基、2,7−ジメチル−3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル基および2,7−ジフェニル−3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル基などの2,3,6,7位4置換フルオレニル基、あるいは下記一般式[V−I]および[V−II]で表されるような、R
6とR
7とが互いに結合して環を形成し、R
10とR
11とが互いに結合して環を形成している2,3,6,7位4置換フルオレニル基などが挙げられるが、この限りではない。
【0055】
【化4】
一般式[V−I]および[V−II]中、R
5、R
8、R
9、R
12は前記一般式[I]あるいは[II]における定義と同様であり、
R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f、R
gおよびR
hは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、隣接した置換基と互いに結合して環を形成していてもよい。
【0056】
前記アルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、アミル基およびn−ペンチル基を例示できる。
【0057】
また、一般式[V−I]中、R
xおよびR
yはそれぞれ独立に炭素数1〜3の不飽和結合を有してもよい炭化水素基であり、R
xがR
aまたはR
cが結合した炭素と共同して二重結合を形成していてもよく、R
yがR
eまたはR
gが結合した炭素と共同して二重結合を形成していてもよく、R
xおよびR
yがともに炭素数1または2の飽和あるいは不飽和の炭化水素基であることが好ましい。
【0058】
上記一般式[V−I]または[V−II]で表される化合物として、具体的には、下記式[V−III]で表されるオクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基、下記式[V−IV]で表されるテトラメチルドデカヒドロジベンゾフルオレニル基、下記式[V−V]で表されるオクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基、下記式[V−VI]で表されるヘキサメチルジヒドロジシクロペンタフルオレニル基、及び下記式[V−VII]で表されるb,h−ジベンゾフルオレニル基が挙げられる。
【0063】
【化9】
これらのフルオレニル基を含む上記一般式[I]または[II]で表される遷移金属化合物はいずれも少なくとも一種のポリエンおよび/または環状オレフィン[C]の共重合能に優れるが、Yがケイ素原子である場合、2,7位2置換フルオレニル基、3,6位2置換フルオレニル基、2,3,6,7位4置換フルオレニル基、上記一般式[V−I]に表される2,3,6,7位4置換フルオレニル基を有する遷移金属化合物が特に優れる。Yが炭素原子である場合、R
5からR
12が水素原子である無置換フルオレニル基、3,6位2置換フルオレニル基、2,3,6,7位4置換フルオレニル基、上記一般式[V−I]に表される2,3,6,7位4置換フルオレニル基を有する遷移金属化合物が特に非共役ポリエン[C]の共重合能に優れる。
【0064】
重合活性については、Yがケイ素原子および炭素原子いずれの場合も、2,7位2置換フルオレニル基、3,6位2置換フルオレニル基、2,3,6,7位4置換フルオレニル基、上記一般式[V−I]に表される2,3,6,7位4置換フルオレニル基を有する上記一般式[I]および[II]で表される遷移金属化合物が特に優れる。
【0065】
上記一般式[I]においてR
13、R
14は相互に同一でも異なってもよい。前述の通りR
13、R
14は炭化水素基になり得るが、その炭化水素基の中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、フェニル基、m−トリル基、p−トリル基、4−t−ブチルフェニル基、p−クロロフェニル基、4−ビフェニル基、2−ナフチル基、キシリル基、ベンジル基およびm−トリフルオロメチルフェニル基が好ましい。
【0066】
上記一般式[II]で表される遷移金属化合物において、Aは芳香環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の二価の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、YはこのAと結合し、例えば、下記式[VI-I]に表されるシクロヘキシリデン基などのシクロアルキリデン基、下記式[VI-II]に表されるシクロテトラメチレンシリレン基(1−シラシクロペンチリデン基)などのシクロメチレンシリレン基などを構成する。
【0067】
【化10】
(式[VI−I]及び[VI−II]において、●は、上記一般式[II]における(置換)シクロペンタジエニル基および(置換)フルオレニル基との結合点を表す。)
また、一般式[II]においてAはYとともに形成する環を含めて二つ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0068】
YがAと結合して形成する環構造としては、上記式[VI−I]に表されるシクロヘキシリデン基以外に具体的には、シクロプロピリデン基、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロオクチリデン基、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン基、ノルボルニリデン基、アダマンチリデン基、テトラヒドロナフチリデン基およびジヒドロインダニリデン基などを挙げることができる。
【0069】
同様に、YがAと結合して形成する環構造としては、上記式[VI−II]に表されるシクロテトラメチレンシリレン基(1−シラシクロペンチリデン基)以外に具体的には、シクロジメチレンシリレン基、シクロトリメチレンシリレン基、シクロペンタメチレンシリレン基、シクロヘキサメチレンシリレン基およびシクロヘプタメチレンシリレン基などを挙げることができる。
【0070】
上記一般式[I]および[II]においてMは、チタニウム原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはチタニウム原子またはハフニウム原子である。
【0071】
一般式[I]および[II]においてQは、ハロゲン原子、炭素数が1〜10の炭化水素基、炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエン、アニオン配位子、および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれる。
【0072】
前記ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
【0073】
前記炭素数1〜10の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1、1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基およびベンジル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基およびベンジル基である。
【0074】
前記炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエンの具体例としては、s−シス−またはs−トランス−η
4−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η
4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η
4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η
4−2,4−ヘキサジエン、s−シス−またはs−トランス−η
4−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η
4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、およびs−シス−またはs−トランス−η
4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0075】
前記アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、t−ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテートおよびベンゾエート等のカルボキシレート基、ならびにメシレートおよびトシレート等のスルホネート基等が挙げられる。
【0076】
前記孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンおよびジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、ならびにテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンおよび1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。
【0077】
最後に、上記一般式[I]および[II]においてjは1〜4の整数であり、jが2以上の場合は、Qは互いに同一でも異なってもよい。
【0078】
以上説明した遷移金属化合物の例は、特開2011−1497号公報に挙げられている。
【0079】
前記遷移金属化合物は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。製造方法として例えば、J.Organomet.Chem.,63,509(1996)、本出願人による出願に係る公報であるWO2006−123759号公報、WO01/27124号公報、特開2004−168744号公報、特開2004−175759号公報および特開2000−212194号公報等記載の方法が挙げられる。
【0080】
(触媒例2)
また、本発明のエチレン系共重合体(X)の製造に使用可能なメタロセン触媒として、下記一般式(X)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0081】
【化11】
式(X)中、R'およびR''はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、Mはチタンであり、Yは−NR
*−であり、Z
*は−SiR
*2−であり、前記二つのR
*はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、pおよびqのうち一方は0であり、他方は1であり、
pが0かつqが1である場合には、Mは+2の酸化状態であり、X'は1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンまたは、1,3−ペンタジエンであり、
pが1かつqが0である場合には、Mは+3の酸化状態であり、Xは2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジルである。
【0082】
前記一般式(X)で表わされる構造を有する化合物としては、得られるエチレン系共重合体の超低分子量成分によるフォギングおよびベタが抑制されるといった観点から、(t−ブチルアミド)ジメチル(η
5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)1,3−ペンタジエン(下記式(XI)で表される構造を有する化合物)が特に好ましい。なお、下記式(XI)で表わされる構造を有する化合物は、例えば特表2001−522398号公報に記載された方法で得ることができる。
【0083】
【化12】
前記一般式(X)で表わされる構造を有する化合物は、少なくとも一種のポリエンおよび/または環状オレフィン[C]の重合性に優れている。また、このようなメタロセン触媒を用いて合成される本発明のエチレン系共重合体(X)は、分子量分布および組成分布が狭く、均一な分子構造を有する共重合体である。このため、本発明の共重合体(X)を含む共重合体組成物、該組成物から得られる成形品は、表面外観に優れる傾向がある。
【0084】
(共触媒) 本発明のエチレン系共重合体(X)は、例えば以上挙げたメタロセン触媒を主触媒とし、ホウ素系化合物および/またはトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を共触媒として用いて合成することができる。
【0085】
前記ホウ素系化合物としては、例えば、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(s−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムn−ブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムベンジルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(t−ブチルジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(トリイソプロピルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムペンタフルオロフェノキシトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレートおよびN,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート;
ジ(イソプロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(t−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、およびジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのジアルキルアンモニウム塩;
トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(o−トリル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたホスホニウム塩;
ジフェニルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(o−トリル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびジ(2,6−ジメチルフェニル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの二置換されたオキソニウム塩;
ジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(o−トリル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびビス(2,6−ジメチルフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの二置換されたスルホニウム塩が挙げられる。
【0086】
前記有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムおよびトリn−オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウム、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、LiAl(C
2H
5)
4、LiAl(C
7H
15)
4、さらに有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることができる。
【0087】
前記有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0088】
<重合条件>
本発明のエチレン系共重合体(X)を合成する際の反応温度は、通常−20〜200℃であり、好ましくは0〜150℃である。重合圧力は通常0MPaを超えて8MPa(ゲージ圧)以下、好ましくは0MPaを超えて5MPa(ゲージ圧)以下の範囲である。
【0089】
反応時間(共重合が連続法で実施される場合は平均滞留時間)は、触媒濃度および重合温度などの条件によって異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは10分間〜3時間である。さらに、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0090】
上記のようなメタロセン触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、上記一般式[I]、[II]および[X]で示した遷移金属化合物は、反応容積1リットル当り、通常10
-12〜10
-2モル、好ましくは10
-10〜10
-8モルになるような量で用いられる。
【0091】
前記遷移金属化合物と共に用いられる上記共触媒は、共触媒と、遷移金属化合物中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔共触媒/M〕が、通常0.1/1〜1000/1、好ましくは1/1〜500/1となるような量で用いられる。
【0092】
本発明において、エチレン系共重合体の製造は、溶液(溶解)重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施可能であり、特に限定されないが、下記重合反応液を得る工程を有することが好ましい。
【0093】
重合反応液を得る工程とは、脂肪族炭化水素を重合溶媒として用いて、上述のメタロセン触媒および共触媒の存在下に、エチレン[A]、上記成分[B]、上記少なくとも一種のポリエンおよび/または環状オレフィン[C]および任意にその他のモノマーを共重合し、エチレン[A]・成分[B]・少なくとも一種のポリエンおよび/または環状オレフィン[C](・その他のモノマー)共重合体の重合反応液を得る工程である。
【0094】
前記重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素、ならびにエチレンクロリド、クロルベンゼンおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0095】
これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、重合に供するα−オレフィン自身を重合溶媒として用いることもできる。
【0096】
以上説明した重合溶媒のうち、得られるエチレン系共重合体との分離、精製の観点から、ヘキサンが好ましい。
【0097】
重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0098】
例えば以上説明したようにして重合反応を実施し、反応系内にメタノールなどの酸性アルコールを添加することによって、重合反応を終了させることができる。
【0099】
重合反応により得られるエチレン系重合体の分子量は、重合系内に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。具体的には、重合系内に水素を少なくすることにより、得られるエチレン系共重合体の分子量を大きくすることができ、その結果、本発明における極限粘度の範囲のエチレン系共重合体を得ることができる。さらに、重合温度をあまり高くせず、触媒活性を高く維持することによって、得られるエチレン系共重合体の分子量を著しく伸ばすことが可能であり、結果、前記極限粘度の範囲を達成することができる。
【0100】
さらに、使用する共触媒の量により前記エチレン系共重合体の分子量を調節することもできる。
【0101】
可塑剤(Y)
本発明で用いる可塑剤(Y)としては、プロセスオイル(例えば、ダイアナプロセスオイル PW−380、ダイアナプロセスオイル PW−100(商品名;出光興産(株)製)、ダイアナプロセスオイル PS−430(商品名;出光興産(株)製))、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルトおよびワセリンなどの石油系可塑剤;コールタールおよびコールタールピッチなどのコールタール系可塑剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油およびヤシ油などの脂肪油系可塑剤;蜜ロウ、カルナウバロウおよびラノリンなどのロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウムおよびラウリン酸亜鉛などの脂肪酸またはその塩;ナフテン酸、パイン油およびロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、エチレン・炭素数3−20のα−オレフィンの共重合体(例えばエチレン・プロピレン共重合体が挙げられるがこれに限定されるものでは無い)およびクマロンインデン樹脂などの合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートおよびジオクチルセバケートなどのエステル系可塑剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油、トール油およびサブ(ファクチス)などが挙げられる。
【0102】
これらのなかでも、石油系可塑剤が特に好ましい。本発明に係る可塑剤(Y)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0103】
上記可塑剤の中でも、特に石油系可塑剤または合成高分子物質が好ましい。
【0104】
また可塑剤の、デカリン中135度で測定した極限粘度[η]は0.2dl/g以下であることが好ましい。
【0105】
さらに可塑剤の40℃で測定した動粘度が10〜40000mm
2/sであるものが好ましい。このような性質を有するものを本明細書では、液状である、と表現することがある。
【0106】
またこれらの可塑剤は、通常、共重合体(X)に添加したとき粘度及び硬度が低下するようなものであることが好ましい。
塊状物の構成
共重合体(X)を100質量部とした場合に、可塑剤(Y)の添加量は通常750〜2000質量部、850〜2000質量部、1000質量部〜1800質量部、1001質量部〜1800質量部、1050質量部〜1800質量部、1100質量部〜1700質量部である。この範囲であれば、塊状物をゴムや配合剤と配合して混練りした際に、迅速に均一な混練物が得られる。一方、塊状物を配合して架橋して得られるゴム製品の物性の点からは、上限は、1600質量部以下、好ましくは1500質量部以下が特に良い。
【0107】
本発明の塊状物は、共重合体(X)を100質量部とした場合に、750質量部以上と多量の可塑剤を含んでいる。それにもかかわらず、自重による変形や、滲み出しに伴うべたつきの少ない塊状物が得られ、かかる塊状物は配合剤として有用である。
【0108】
本発明の塊状物の、ムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いてJIS K 6300に準拠して125℃において測定したムーニー粘度〔ML(1+4)125℃〕は、通常10以下である。また粘度が低すぎて前記ムーニー粘度が測定できないものも好ましい。
【0109】
また、本発明の塊状物の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]は、0.01〜1.2dl/gの範囲であり、好ましくは0.01〜1.1dl/gである。 なお、当該塊状物には前記共重合体(X)と、可塑剤(Y)と以外に、他の成分が含まれていても良く、その量にも特に制限はないが、ゴム製品の製造における粘度や柔軟性の調整剤として用いる観点からは、調整のためには他の成分は少量であることが好ましく、例えば(X)と(Y)との合計を100質量部とした場合に10質量部以下、好ましくは1質量部以下であることが好ましい。
塊状物の製法
塊状物は、製造する方法に特に制限はないが、たとえば予め、前記共重合体(X)と有機溶媒とからなる混合物に前記可塑剤(Y)を添加し、混練、脱溶媒することにより、可塑剤(X)を前記共重合体(X)中に均一に分散させた混練物を調製できる。この方法では、ベント付押出機が通常使用される。
【0110】
前記有機溶媒としては、エチレン系共重合体(X)を溶液重合法において調製する際に用いられる従来公知の炭化水素溶媒が挙げられる。このような炭化水素溶媒としては、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素及びそのハロゲン誘導体、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素及びそのハロゲン誘導体、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、及びクロロベンゼン等のハロゲン誘導体などが用いられる。これらの溶媒は、単独で、あるいは組み合わせて用いてもよい。押出機の先端にベール成形機を取り付ければ、ベールが得られる。
【0111】
[組成物(Z)]
本発明において組成物(Z)は、前記エチレン系共重合体(X)100質量部に対し可塑剤(Y)を1001〜2000質量部含むものを指す。本発明の組成物(Z)は成形加工性と柔軟性の点で優れている。本発明の組成物(Z)は、前記エチレン系共重合体(X)100質量部に対し可塑剤(Y)を、好ましくは1050質量部以上、さらには1100質量部以上、を含む。
【0112】
一方、可塑剤(Y)の含有量の上限は、好ましくは1800質量部以下、より好ましくは1700質量部以下、であり、この範囲であれば、組成物(Z)をゴムや配合剤と配合して混練りした場合に、迅速に均一な混練り物が得られる。一方、組成物(Z)を配合して得られるゴム製品の物性の点からは、上限が1600質量部以下、好ましくは1500質量部以下が特に良い。
【0113】
本発明の組成物(Z)は、従来のエチレン系共重合体組成物に比べ、可塑剤(Y)を1001質量部以上と非常に多量に含んでいる。しかしながら、組成物から可塑剤(Y)が滲みだす虞が少なく、また形状保持性にも優れている。
【0114】
エチレン系共重合体組成物(Z)のムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いてJIS K 6300に準拠して125℃において測定したムーニー粘度〔ML(1+4)125℃〕は、通常10以下である。または粘度が低すぎて前記ムーニー粘度が測定できないものも好ましい。
【0115】
また、組成物の135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]は、0.01〜1.2dl/gの範囲であり、好ましくは0.01〜1.1dl/gである。
【0116】
前記組成物(Z)は、重合体(X)溶液に前記可塑剤(Y)を添加し、混練、脱溶媒することにより、調製できる。有機溶媒や混練方法は前記したとおりである。
【0117】
組成物には、(X)と(Y)と以外に、他の成分が含まれていても良く、その量にも特に制限はないが、ゴム製品の製造における粘度や柔軟性の調整剤として用いる観点からは、調整のためには他の成分は少量であることが好ましく、例えば(X)と(Y)との合計を100質量部とした場合に10質量部以下、好ましくは1質量部以下であることが好ましい。
【0118】
また、以下の本発明の塊状物または組成物(Z)の形状保持性の試験である、コールドフローテストについて記載する。当該テストの試験片の作製方法には、組成物または塊状物を溶融成形して所定の試験片を行ってもよく(以下のコールドフローテストA,B)、組成物または塊状物から所定の大きさの試験片を切り出して行ってもよく(以下のコールドフローテストA1,B1)、またコールドフローテストAとコールドフローテストA1との間,コールドフローテストBとコールドフローテストB1との間には、測定値の差は通常ほとんどないためいずれか一方の試験片作成法で、コールドフロー試験を行えばよい。
〔本発明の塊状物または組成物(Z)のコールドフローテストA,B〕
(コールドフローテストA)
本発明の塊状物または組成物(Z)は、当該組成物または塊状物を加熱成型して、縦10cm×横10cm×高さ3cmの形状としたものを10cm×10cmの形状の面を下にして23℃で1週間置いた後、縦方向の寸法変化の割合が15%以下であることが好ましく、より好ましくは13%以下、さらにより好ましくは10%以下の範囲にある。また横方向の寸法変化の割合が15%以下であることが好ましく、より好ましくは13%以下、さらにより好ましくは10%以下の範囲にある。なお本明細書でのコールドフローテストによる寸法変化の割合は、100×[(コールドフローテスト後の寸法)−(コールドフローテスト前の寸法)]/(コールドフローテスト前の寸法)であらわされる値の絶対値として表される。
【0119】
(コールドフローテストB)
また本発明の塊状物または組成物(Z)は、当該組成物または塊状物を加熱成型して長さ10cm×幅1cm×高さ0.2cmの形状としたものを長さ方向が鉛直方向となるように吊るして23℃で1週間経過した後の長さ方向の寸法変化の割合が好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下の範囲にある。
【0120】
本発明の塊状物または組成物(Z)は、上記コールドフローテスト(A1)の好ましい範囲およびコールドフローテスト(B1)の好ましい範囲の少なくともいずれか一方を満たすことが好ましく、両方を満たすことがより好ましい。
〔本発明の塊状物のコールドフローテスト(A1)、(B1)〕
(コールドフローテスト(A1))
また本発明の塊状物または組成物は、当該塊状物または組成物から縦10cm×横10cm×高さ3cmの形状の試験片を切り出して、10cm×10cmの形状の面を下にして23℃で1週間置いた後、縦方向の寸法変化の割合が好ましくは15%以下であり、より好ましくは13%以下、さらにより好ましくは10%以下の範囲にある。また横方向の寸法変化の割合は好ましくは15%以下であり、より好ましくは13%以下、さらにより好ましくは10%以下の範囲にある。
(コールドフローテスト(B1))
本発明の塊状物または組成物は、当該塊状物または組成物から長さ10cm×幅1cm×高さ0.2cmの形状の試験片を切り出して、長さ方向が鉛直方向となるように吊るして23℃で1週間経過した後の長さ方向の寸法変化の割合が好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下の範囲にある。
【0121】
本発明の塊状物または組成物(Z)は、上記テスト(A1)の好ましい範囲およびテスト(B1)の好ましい範囲のいずれか一方を満たすことが好ましく、両方を満たすことがより好ましい。
【0122】
本発明の塊状物または組成物(Z)は、これらに架橋剤や配合剤を配合して成形し、架橋することによりこれらをゴム製品として使用することもできるが、後述するように、他のゴムやゴム用の配合剤と混合してゴム組成物とし、必要に応じて架橋処理することにより、所望のゴム製品を得ることができる。
[ゴム組成物の製造方法]
本発明に係るゴム組成物の製造方法は、前記塊状物または組成物(Z)と、ゴムと必要に応じて用いられる配合剤とを、溶融混練する。
【0123】
使用されるゴム(ゴム(P)ということがある)としては、特に限定されず、たとえば、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレン・イソブチレン共重合体ゴム(IIR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム(EPM)、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(EPDM)、アクリルゴム、ポリウレタンゴム(PU)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、およびこれらの変性ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ハロゲン化ポリエチレンが挙げられる。なお、共重合体ゴムは、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体であってもよい。
【0124】
これらのゴムの中でも、耐候性が要求されるゴム成形体の用途には、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム及びエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムが好ましく、加硫性に優れることから、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムが特に好ましい。
〔エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム及びエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム〕
本発明に係るゴム(P)として好ましく使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムは、エチレンから導かれる単位と、炭素数3以上、好ましくは3〜20のα−オレフィンから導かれる単位とを含む共重合体ゴムである。また、本発明に係るゴム(P)として使用されるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、エチレンから導かれる単位、炭素数3以上、好ましくは3〜20のα−オレフィンから導かれる単位および非共役ポリエンから導かれる単位を含む共重合体ゴムである。
【0125】
α−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチルデセン-1、11-メチルドデセン-1および12-エチルテトラデセン-1などが挙げられる。なかでも、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセンおよび1-オクテンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
【0126】
これらα-オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0127】
また、非共役ポリエンとしては、具体的には、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエンおよび4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-イソブテニル-2-ノルボルネン、シクロペンタジエンおよびノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等のトリエンなどが挙げられる。なかでも、5-エチリデン-2-ノルボルネンおよび5-ビニル-2-ノルボルネンが好ましい。
【0128】
これらの非共役ポリエンは、単独で、または2種類以上組み合わせて用いられる。
【0129】
本発明に係るゴム(P)として好ましく使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム及びエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、エチレン(A)に由来する構成単位と、α−オレフィン(B)に由来する構成単位とのモル比[(A)/(B)]が、50/50〜90/10、好ましくは50/50〜85/15であり、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量%が、(A)由来の構成単位と(B)由来の構成単位と(C)由来の構成単位の合計100質量%に対して、1.0質量%〜20.0質量%、好ましくは3.0質量%〜15質量%、より好ましくは4.0質量%〜14質量%の量で含まれる。
【0130】
本発明に係るゴム(P)として好ましく使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム及びエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、通常、135℃、デカリン中で測定される極限粘度〔η〕が通常、1.0〜5.0dl/g、好ましくは1.0〜4.0dl/gである。
【0131】
本発明に係るゴム(P)として好ましく使用されるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムの具体例としては、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネンランダム共重合体、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネンランダム共重合体などを例示することができる。
【0132】
このようなゴム(P)と前記塊状物または組成物とを混合するが、その混合比は特に制限されない。特にゴム(P)と前記エチレン系共重合体(X)とは、(P)と(X)との合計を100質量部とした場合に、
ゴム(P)は50質量%〜99質量%存在することが好ましく、60〜99質量%存在することがより好ましく、70〜99質量%存在することがさらにより好ましく、80〜99質量%存在することがさらに好ましい。
【0133】
ゴム組成物には配合剤が含まれていてもよい。以下配合剤の説明をする場合に、便宜上、ゴム(P)と、前記塊状物または組成物由来のエチレン共重合体(X)との合計(以下「全ゴム成分」ということがある)を100質量部として、配合剤の配合量を記載することがある。
【0134】
補強材
たとえば補強材は、通常、合成ゴムの補強材として使用されている補強材である限り、特に限定はされない。かかる補強材としては、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラック、シリカ、活性化炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸、タルク、クレーなどや、これらの無機物の表面をシランカップリング剤等で処理したものを用いることができる。市販されているカーボンブラックとしては、「旭#55G」、「旭#50HG」、「旭#60G」(商品名;旭カーボン株式会社製)、「シーストV 」、「シーストSO 」(商品名;東海カーボン株式会社製)などを挙げることができる。このような補強材の比表面積は、5〜120m
2/gであることが好ましい。本発明においては、剛性向上の効果から、カーボンブラックまたはシリカを好ましく用いることができる。
【0135】
前記全ゴム成分100質量部に対して、補強材を5〜200質量部、好ましくは10〜190質量部、さらに好ましくは20〜190質量部の範囲で含んでなる。
【0136】
補強剤の配合量がこの範囲にあると、加硫して得られる成形体の剛性、機械的強度が高く、また混練加工性も良い。
【0137】
架橋剤
ゴム組成物には、架橋剤が配合されていてもよい。架橋の際に使用される架橋剤としては、イオウ、イオウ化合物などの加硫剤や、有機過酸化物が挙げられる。
【0138】
上記架橋剤の例としては、加硫剤、加硫促進剤および加硫助剤が挙げられる。
【0139】
前記加硫剤としては、例えば、硫黄系化合物、有機過酸化物、フェノール樹脂およびオキシム化合物などが挙げられる。
【0140】
硫黄系化合物
前記硫黄系化合物としては、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドおよびジチオカルバミン酸セレンなどが好ましく、硫黄およびテトラメチルチウラムジスルフィドなどがより好ましい。
【0141】
硫黄系化合物の配合量は、前記全ゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部である。配合量が上記範囲内であると、得られる架橋体の機械物性が優れるため好適である。
【0142】
有機過酸化物
前記有機過酸化物としては、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびジ−t−ブチルヒドロペルオキシドなどが好ましく、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシドおよびジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどがより好ましい。
【0143】
有機過酸化物の配合量は、前記全ゴム成分100gに対して、に対して、通常0.001〜0.05モルである。有機過酸化物の配合量が上記範囲内であると、得られる架橋体の機械物性が優れるため好適である。
【0144】
以上説明した加硫剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0145】
次に、上記加硫剤として硫黄系化合物を用いる場合には、加硫促進剤を併用することが好ましい。
【0146】
加硫促進剤
前記加硫促進剤としては、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(例:「サンセラーCM」(商品名;三新化学工業(株)製))、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール(例:「サンセラーM」(商品名;三新化学工業(株)製))、2−(4−モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例:「ノクセラーMDB−P」(商品名;三新化学工業(株)製))、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルフォリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩(例:「サンセラーHM」(商品名;三新化学工業(株)製))等のチアゾール系;
ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン等のグアニジン系;アセトアルデヒド−アニリン縮合物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物等のアルデヒドアミン系;2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系;ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア等のチオウレア系;
テトラメチルチウラムモノスルフィド(例:「ノクセラーTS」(商品名;大内新興化学工業(株)製))、テトラメチルチウラムジスルフィド(例:「サンセラーTT」(商品名;三新化学工業(株)製))、テトラエチルチウラムジスルフィド(例:「サンセラーTET」(商品名;三新化学工業(株)製))、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(例:「サンセラーTRA」(商品名;三新化学工業(株)製))、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(例:「ノクセラーTOT」(商品名;大内新興化学工業(株)製))等のチウラム系;
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(例:「サンセラーPZ」(商品名;三新化学工業(株)製))、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(例:「サンセラーBZ」(商品名;三新化学工業(株)製))、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(例:「サンセラーTE」(商品名;三新化学工業(株)製))、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(例:「ノクセラーZTC」(商品名;大内新興化学工業(株)製))等のジチオ酸塩系;
エチレンチオ尿素(例:「サンセラー22−C」(商品名;三新化学工業(株)製))、N,N'−ジエチルチオ尿素(例:「サンセラーBUR」(商品名;三新化学工業(株)製))等のチオウレア系;ジブチルキサトゲン酸亜鉛等のザンテート系;
その他、亜鉛華(例えば、META−Z102(商品名;井上石灰工業社製、酸化亜鉛))などが挙げられる。
【0147】
加硫促進剤の配合量は、前記全ゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜20質量部である。加硫促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以上説明した加硫剤および加硫促進剤の配合量が上記範囲にあると、得られる架橋体の機械物性が優れるため好ましい。
【0148】
加硫助剤
上記架橋剤の例として挙げた加硫助剤としては、p−キノンジオキシムなどのキノンジオキシム系加硫助剤;エチレングリコールジメタクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートなどのアクリル系加硫助剤;ジアリルフタレートおよびトリアリルイソシアヌレート(例えば、M−60(商品名;日本化成社製))などのアリル系加硫助剤;その他マレイミド系加硫助剤;ジビニルベンゼン;酸化亜鉛、酸化マグネシウム/亜鉛華(例えば、META−Z102(商品名;井上石灰工業社製)など)が挙げられ、その用途に応じて適宜選択することができる。
【0149】
加硫助剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0150】
加硫助剤の配合量は、前記全ゴム成100質量部に対して、通常1〜50質量部である。
【0151】
その他の成分
本発明に係るゴム組成物には、意図する加硫物の用途、性能に応じて、さらに一般にゴム製品の製造で用いられる各種公知の配合剤、たとえば、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、アルコキシシラン化合物、活性剤、反応抑制剤、着色剤、分散剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、防カビ剤、素練促進剤、粘着付与剤、分散染料や酸性染料を代表例とする各種染料、無機・有機顔料、界面活性剤、および塗料などの配合剤、また必要に応じて、発泡剤、発泡助剤などの発泡のための化合物、脱泡剤を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選定し、適切な配合量を配合することができる。
【0152】
軟化剤
軟化剤としては、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができる。なお、軟化剤は前記したオイルなどの可塑剤と同じものも含まれる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;トール油;サブ;蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩;石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質などを挙げることができる。中でも石油系軟化剤が好ましく用いられ、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。
【0153】
これらの軟化剤の配合量は、ゴム成形体の用途により適宜選択できるが、通常、前記全ゴム成分100質量部に対して、本発明の塊状物または組成物(Z)に由来する可塑剤と当該軟化剤との合計が1000質量部以下、好ましくは900質量部以下であり、通常10質量部以上、好ましくは100質量部以上である。本発明によれば、本発明によれば、従来考えにくかったような多くの量の軟化剤を作業性良く配合することも可能であり、混練しても、混練物もまとまりがよく、柔軟な架橋ゴムを作成することができる。
【0154】
老化防止剤
老化防止剤を使用すれば、さらに材料寿命を長くすることが可能である。このことは、通常のゴムの場合と同様である。
【0155】
本発明で用いられる老化防止剤としては、具体的には、フェニルナフチルアミン、4,4'- (α,α- ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'- ジ-2- ナフチル-p-フェニレンジアミン等の芳香族第二アミン系安定剤;2,6-ジ-t- ブチル-4- メチルフェノール、テトラキス- [メチレン-3-(3',5'- ジ-t- ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のフェノール系安定剤;ビス[2-メチル-4- (3-n- アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t- ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系安定剤;2-メルカプトベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系安定剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系安定剤;2,2,4-トリメチル-1,2- ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系安定剤などが挙げられる。これらの老化防止剤は、単独あるいは2種以上が併用して用いられる。
【0156】
このような老化防止剤は、前記全ゴム成分100質量部に対して、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0157】
加工助剤
加工助剤としては、通常のゴムの加工に使用される化合物を使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸塩、リシノール酸エステル、ステアリン酸エステル、パルチミン酸エステル、ラウリン酸エステル等の高級脂肪酸エステル類などが挙げられる。
【0158】
このような加工助剤は、前記全ゴム成分100質量部に対して、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0159】
発泡剤および発泡助剤
後述する本発明に係るゴム成形体は、必要に応じて、通常ゴムに使用される発泡剤および発泡助剤を本発明に係るゴム組成物に配合し、成形、発泡、加硫を行うことで得ることもできる。
【0160】
発泡剤としては、具体的には、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N'- ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'- ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'- オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。
【0161】
これらの発泡剤は、前記全ゴム成分100質量部に対して、0.5〜30質量部、好ましくは1〜20質量部の割合で用いられる。必要に応じて、発泡剤と併用される発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの作用をする。このような発泡助剤としては、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、しゅう酸などの有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。
【0162】
これらの発泡助剤は、前記全ゴム成分100質量部に対して、0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0163】
脱泡剤
配合ゴムを加硫する場合、内包する水分により気泡ができたり、発泡度が異なったりすることがある。これらを防止するために、脱泡剤として酸化カルシウムを添加してもよい。
【0164】
脱泡剤は、前記全ゴム成分合計成分100質量部に対して、通常20質量部以下、好ましくは10質量部以下の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0165】
ゴム組成物は、前記塊状物ないし組成物(Z)と、ゴムを、たとえばバンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類により、必要に応じて、軟化剤(油展用)、加工助剤、加硫促進剤などを加えて、80〜170℃の温度で2〜20分間混練する。次いで、得られたブレンド物に、軟化剤、加硫剤(たとえば、イオウ)、加硫促進剤、必要に応じて、発泡剤、架橋剤等の添加剤をオープンロールのようなロール類、あるいはニーダーを使用して、必要に応じて加硫促進剤、架橋助剤、発泡助剤、脱泡剤を追加混合し、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。
【0166】
ゴム成形体の製造方法
ゴム成形体は、本発明のゴム組成物を架橋してなり、発泡成形体であってもよい。本発明に係るゴム組成物からゴム成形体を製造するには、通常一般のゴムを架橋するときと同様に、未架橋の配合ゴムを上述したような方法で一度調製し、次に、この配合ゴムを意図する形状に成形した後に架橋を行えばよい。上記のようにして調製された未架橋のゴム組成物は、種々の成形法により、成形、架橋することができるが、圧縮成形、射出成形、注入成形などの型成形により、成形、架橋する場合に最もその特性を発揮することができる。
【0167】
すなわち、圧縮成形の場合、予め秤量した未架橋の配合ゴムを型に入れ、型を閉じた後120〜270℃の温度で、30秒〜120分加熱することにより、目的とする架橋ゴム成形体が得られる。射出成形の場合、リボン状あるいはペレット状の配合ゴムをスクリューにより予め設定した量だけポットに供給する。引き続き予備加熱された配合ゴムをプランジャーにより金型内に1〜20秒で送り込む。配合ゴムを射出した後120〜270℃の温度で、30秒〜120分加熱することにより、目的とするゴム成形体が得られる。
【0168】
注入成形の場合、予め秤量した配合ゴムをポットに入れピストンにより金型内に1〜20秒で注入する。配合ゴムを注入した後120〜270℃の温度で、30秒〜120分加熱することにより、目的とする架橋ゴム成形体が得られる。
【0169】
本発明の塊状物または組成物(Z)は特定のエチレン系共重合体(X)を可塑剤(Y)
と組み合わせているので、他のゴムや配合剤などとともに混練りする際に、均一な混練り物を迅速に得ることができる。
【0170】
また、ゴム組成物に配合する場合、他の成分と混練時にさらに可塑剤を添加することも可能であり、従来のゴム状成型体では考えにくいような多くの量の可塑剤(オイル)を添加しても生産性良く混練りすることも可能となり、柔らかい架橋ゴムを作製することが可能である。
【0171】
また得られた架橋ゴムは柔軟性や伸び特性に優れたものとすることができる。
【0172】
(加硫ゴムの用途)
本発明の製造方法を経て得られた架橋ゴムは、低硬度が要求される分野から低硬度が要求される分野まで、様々な分野で用いることが可能である。具体的には、自動車用部品、船舶用部品、土木建築用部品、医療用部品、電気・電子機器用部品、輸送機およびレジャー用部品、ホース(ラジエータホース、ヒーターホース等)、防振ゴム、シート、各種ベルト、各種パッキン、シーリング材、ポッティング材およびコーティング材等に好適に使用できる。
【実施例】
【0173】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0174】
実施例および比較例で得られたエチレン系共重合体の各物性は、以下に示す方法に従い、測定した。
【0175】
〔エチレン[A]に由来する構成単位のモル量(C2")〕
1H−NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。
【0176】
〔非共役ポリエン[C]に由来する構成単位のモル量〕
1H−NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。
【0177】
〔組成物のムーニー粘度〕
ムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いてJIS K 6300に準拠して125℃において測定した。
【0178】
〔極限粘度〕
135℃のデカリン溶液中で測定した。
【0179】
〔コールドフローテストA〕
10cm×10cm×3cmの金型を用い、塊状物からプレス成形するに適切な量を採取して、小さく切ったものを、プレス成形機にて190℃で6分余熱後、190℃で4分加圧(50kg/cm
2)し、ついで20℃で5分加圧(50kg/cm
2)することで試験片を作製した。
【0180】
縦10cm×横10cm×高さ3cm当該試験片の10cm×10cmの形状の面を下にして常温で1週間の放置したのち、縦および横の寸法変化の割合を評価した。
【0181】
[コールドフローテストB]
10cm×10cm×0.2cmの金型を用い、塊状物からプレス成形するに適切な量を採取して小さく切ったものを、プレス成形機にて190℃で6分余熱後、190℃で4分加圧(50kg/cm
2)し、ついで20℃で5分加圧(50kg/cm
2)することで得られたシートから、10cm×1cmの打ち抜き刃で打ち抜き 長さ10cm×幅1cm×高さ0.2cmの短冊状の試験片を得た。当該試験片の一端をバインダークリップ(豆)(つかみ部 幅13mm)、品番CS-P31(ライオン事務器製)でつかんで、当該クリップのつまみ部分を突起に引っ掛けることで、長さ方向が鉛直方向となるように吊るし、23℃で1週間放置した後の長さ方向の寸法変化の割合を評価した。寸法測定は、コールドフローテスト前、後いずれも、つるした状態で行った。
【0182】
〔表面状態〕
目視および触った感触で表面状態を観察した。
【0183】
〔実施例2〕
ヘキサン溶媒中、成分(X)としてエチレン系共重合体([η]=9.5dl/g、C2"=73mol%、ENB-IV(ヨウ素価)=10g/100g、ENB含量1.3mol%、B値=1.0)を100質量部と、成分(Y)として「ダイアナプロセスオイル PW−100」を900質量部とを80℃、1.6MPaGで攪拌し、成分(X)および成分(Y)を含む溶液(ヘキサン分:60wt%、エチレン系共重合体+PW−100分:40wt%)を得た。得られた成分(X)および成分(Y)を含む溶液をフラッシュ乾燥した後、押出機にかけてアンダーウォーターカッターでペレットとし、当該ペレットを押し固めてベールを製造することで、塊状物(オイルMB−1)を得た。
【0184】
〔実施例1、3、4〕
(Y)成分の質量部数を変える以外は実施例2と同じ方法により塊状物を得た。このようにして得られた塊状固形物の各物性値、コールドフロー試験、表面状態観察の結果を表1に示す。
【0185】
〔比較例1、2〕
三井EPT X−4010([η]=1.0dl/g、C2"=72mol%、ENB-IV=22g/100g、ENB含量3.0mol%)とルーカント HC−2000(商品名;三井化学株式会社製)([η]=0.19dl/g、C2"=53mol%)の各物性値、コールドフロー試験、表面状態観察の結果を表1に示す。
【0186】
〔比較例3〕
ヘキサン溶媒中、成分(X)として三井EPT 3092M([η]=2.4dl/g、C2"=77mol%、ENB-IV=10g/100g、ENB含量1.3mol%)を100質量部と、成分(Y)として「ダイアナプロセスオイル PW−100」を100質量部とを80℃、1.6MPaGで攪拌し、成分(X)および成分(Y)を含む溶液(ヘキサン分:60wt%、エチレン系共重合体+PW−100分:40wt%)を得た。得られた成分(X)および成分(Y)を含む溶液をフラッシュ乾燥した後、押出機にかけてアンダーウォーターカッターでペレットとし、当該ペレットを押し固めてベールを製造することで、塊状物(オイルMB−2)を得た。このオイルMB−2の各物性値、コールドフロー試験、表面状態観察の結果を表1に示す。
【0187】
【表1】
実施例1と比較例とを対比すると、〔η〕を同じようにあわせたものであるが、実施例1の塊状物は、形状保持性が高く、表面状態にも優れている。また比較例3のように共重合体の極限粘度が低いものでは、可塑剤を多量に配合することができず、しかも形状保持性も表面状態も不十分となる。
【0188】
実施例2〜4は、可塑剤量を増やしたものであるが、本発明では、1500質量部という多量に含むものであっても、形状保持性が高く、しかも表面状態も良好である。
【0189】
〔実施例5〕
三井EPT 3092M([η]=2.4dl/g、C2"=77mol%、ENB-IV=10g/100g、ENB含量1.3mol%)95質量部、オイルMB−1を50質量部、活性剤として酸化亜鉛5質量部、加工助剤としてステアリン酸を2質量部、PEG#4000(商品名;ライオン株式会社製)を1質量部、軟化剤として「ダイアナプロセスオイル PW−100」(商品名;出光興産株式会社製)を135質量部、補強剤として「旭50G」(商品名;旭カーボン株式会社製)を110質量部、充填材としてホワイトンSB赤(商品名;備北粉化工業株式会社製)40質量部、白艶華CC(商品名;白石工業株式会社製)30質量部を配合し、1.7L容量のバンバリーミキサーにより、混練トルクがピークに達するまで混練し、更にトルクピークから2分間混練した後にミキサーからゴム組成物を排出し、状態を観察した。トルクがピーク値を記録するには16分間を要した。得られたゴム組成物のことを「A練りゴム組成物」と呼ぶことがある。
【0190】
次いでA練りゴム組成物に加硫剤としてイオウ0.75質量部、加硫促進剤として4,4−ジチオジモルフォリン0.75質量部、ジエチル・ジチオカルバミン酸テルル0.2質量部、エチレン・チオ尿素1.0質量部、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド1.0質量部、ジ−n−ブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛2.0質量部を配合し、6インチロール(ロール表面温度50℃)で混練し、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物のことを、「配合ゴム」または「B練りゴム組成物」と呼ぶことがある。
【0191】
配合ゴムを、プレス成形機により、厚さ2mmのシート形状に成形し、成形と同時に170℃で15分間加熱することによって架橋物を得た。このようにして得られた架橋物の各物性値を表2に示す。
【0192】
混練状態
なお、混練状態を示す混練時間は、トルクが最高になった後下がりだすまでの時間である。混練時間は混練機備え付けのトルク検出装置を用いて、混練時間の経過に伴うトルク変化をチャートに記録して、当該チャートから読み取った。本実験ではトルクのピークを迎えてからさらに2分間経過するまでの時間を、混練り時間とした。混練時間が短いほど混練しやすいことを示す。また排出まとまり性は、混練後、取り出す際の状況を目視で観察したものである。
【0193】
常体特性は、以下のようにして評価した。
【0194】
硬さ試験
ゴム成形品硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmのシート状ゴム成形品(架橋体)6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0195】
引張り試験
ゴム成形品(架橋体)について、JIS K6251に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、破断強度(TB)および破断伸び(EB)を測定した。
【0196】
〔実施例6〜8〕
三井EPT 3092MとオイルMB−1と軟化剤「ダイアナプロセスオイル PW−100」を表2に示すとおりの配合量とした以外は実施例5と同様に混練し、混練排出状態を観察した。また、B練りゴム組成物についても実施例5と同様にして架橋物を調製した。架橋物の各物性値を表2に示した。
【0197】
〔比較例4、5〕
三井EPT 3092MとオイルMB−2と軟化剤「ダイアナプロセスオイル PW−100」を表に示すとおりの配合量とした以外は実施例5と同様に混練し、混練排出状態を観察した。また、B練りゴム組成物についても実施例5と同様にして架橋物を調製した。架橋物の各物性値を表2に示した。
【0198】
【表2】
比較例4および5ともに、混練しにくく、排出まとまり性も悪い。また「納豆状」とは、たとえばオイルの中に、EPTの塊が浮いたかのような状態のことを指している。すなわち、共重合体の極限粘度が低いものでは、マスターバッチの可塑剤量を増やしただけでは、均一な混練物は得られない。一方実施例5、6は、トータルのオイル量(可塑剤)は比較例4および5と合わせたものであるが、混練時間が短く、排出まとまり性も良好である。さらに実施例7、8によれば、オイル量を増加させることも可能であり、低硬度の架橋ゴムが得られる。