(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の配列ピッチで平面状に並ぶ複数の被覆電線部と、これら被覆電線部の被覆と同一の絶縁樹脂材料で形成されて隣接する前記被覆電線部間を繋ぐ略板状のブリッジ部と、を有するフラットケーブルの圧接刃に圧接接続される圧接部分を成形するためのケーブル成形治具であって、
前記フラットケーブルにおける前記圧接部分の下面にのみ当接される下部治具と、該下部治具上の前記フラットケーブルにおける前記圧接部分の上面にのみ当接される上部治具と、を備え、
前記下部治具は、前記各被覆電線部の下面が嵌合するように前記被覆電線部の配列ピッチと同一のピッチで配列された複数の電線下面支持溝と、隣接する前記電線下面支持溝間において前記電線下面支持溝と平行に延設された複数のブリッジ成形溝と、を備え、
前記上部治具は、前記各被覆電線部の上面が嵌合するように前記被覆電線部の配列ピッチと同一のピッチで配列されて前記電線下面支持溝との協働で前記各被覆電線部を挾持する複数の電線上面支持溝と、隣接する前記電線上面支持溝間において前記電線上面支持溝と平行に延設されて前記ブリッジ成形溝に前記ブリッジ部を押し当てることで前記圧接部分における前記ブリッジ部にのみ前記ブリッジ成形溝に沿う横断面形状に曲がった構造の可撓部を延伸形成する複数の成形突条と、を備えたケーブル成形治具。
所定の配列ピッチで平面状に並ぶ複数の被覆電線部と、これら被覆電線部の被覆と同一の絶縁樹脂材料で形成されて隣接する前記被覆電線部間を繋ぐ略板状のブリッジ部と、を有するフラットケーブルが、前記被覆電線部の配列ピッチと同一のピッチで配列された複数の圧接刃に押し当てられることで、前記フラットケーブルの圧接部分における前記各被覆電線部が前記各圧接刃に圧接接続された状態を得るフラットケーブルの圧接接続方法であって、
前記フラットケーブルは、前記圧接刃に押し当てられる前に、前記圧接部分における前記各ブリッジ部にのみ横断面形状が曲った可撓部が形成されるフラットケーブルの圧接接続方法。
所定の配列ピッチで平面状に並ぶ複数の被覆電線部と、これら被覆電線部の被覆と同一の絶縁樹脂材料で形成されて隣接する前記被覆電線部間を繋ぐ略板状のブリッジ部と、を有するフラットケーブルであって、
圧接刃に圧接接続される圧接部分における前記各ブリッジ部にのみ、横断面形状が曲った可撓部が形成されたフラットケーブル。
【背景技術】
【0002】
図14及び
図15は、下記特許文献1に開示された照明ユニット100を示したものである。
この照明ユニット100は、樹脂製ハウジング110における上面111の一側にランプ120が装着され、樹脂製ハウジング110における上面111の他側にランプ120の点灯を操作するスイッチユニット130が装着される。
【0003】
この照明ユニット100は、給電用のケーブルとして、フラットケーブル240が使用されている。
【0004】
フラットケーブル240は、所定の配列ピッチで平面状に並ぶ複数の被覆電線部241と、被覆電線部241間を繋ぐ略板状のブリッジ部242と、を備える。ブリッジ部242は、被覆電線部241の被覆と同一の絶縁樹脂材料で形成されている。
【0005】
フラットケーブル240の各被覆電線部241は、樹脂製ハウジング110内に装備される不図示の複数の圧接刃に押し込むことで、圧接接続される。
【0006】
樹脂製ハウジング110内に装備される複数の圧接刃は、設計上では、フラットケーブル240における被覆電線241の配列ピッチと同一のピッチで装備されている。しかし、圧接刃側及びフラットケーブル240側のそれぞれの寸法誤差や、圧接刃の樹脂製ハウジング110への組付け誤差等によって、フラットケーブル240と圧接刃との間にピッチのずれが発生する場合がある。
【0007】
そこで、ピッチのずれに起因した電線導体の傷つきや圧接刃の破損を防止するために、従来では、圧接操作前に、フラットケーブル240の圧接部分にスリット加工を施すことが知られている。
【0008】
このスリット加工は、各ブリッジ部242にスリット244を形成することで、各被覆電線部241に、ピッチのずれを吸収する可動性を付与するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、フラットケーブル240の端末にスリット加工を行う際に、スリットを形成する位置がずれると、被覆電線部241の電線導体にダメージを与えるおそれがある。また、スリットが形成される際に、被覆かすが発生したり、切断バリが発生したりすると、それらの被覆かすや切断バリが圧接刃に噛み込まれて、圧接不良を招くおそれがあった。
【0011】
そのため、スリット加工には、加工精度の高い高価な設備が必要になり、加工費が嵩む原因となっていた。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、フラットケーブルのブリッジ部に加工費が嵩むスリット加工を施工せずとも、フラットケーブルの各被覆電線に、接続対象の圧接刃との間のピッチのずれを吸収する可動性を付与することができ、フラットケーブルの高精度な圧接接続状態を安価に実現することができるケーブル成形治具及びフラットケーブルの圧接接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1) 所定の配列ピッチで平面状に並ぶ複数の被覆電線部と、該被覆電線部の被覆と同一の絶縁樹脂材料で形成されて隣接する前記被覆電線部間を繋ぐ略板状のブリッジ部と、を有するフラットケーブル
の圧接刃に圧接接続される圧接部分を成形するためのケーブル成形治具であって、
前記フラットケーブル
における前記圧接部分の下面に
のみ当接される下部治具と、該下部治具上の前記フラットケーブル
における前記圧接部分の上面に
のみ当接される上部治具と、を備え、
前記下部治具は、前記各被覆電線部の下面が嵌合するように前記被覆電線部の配列ピッチと同一のピッチで配列された複数の電線下面支持溝と、隣接する前記電線下面支持溝間において前記電線下面支持溝と平行に延設された複数のブリッジ成形溝と、を備え、
前記上部治具は、前記各被覆電線部の上面が嵌合するように前記被覆電線部の配列ピッチと同一のピッチで配列されて前記電線下面支持溝との協働で前記各被覆電線部を挾持する複数の電線上面支持溝と、隣接する前記電線上面支持溝間において前記電線上面支持溝と平行に延設されて前記ブリッジ成形溝に前記ブリッジ部を押し当てることで
前記圧接部分における前記ブリッジ部に
のみ前記ブリッジ成形溝に沿う横断面形状に曲がった構造の可撓部を延伸形成する複数の成形突条と、を備えたケーブル成形治具。
【0014】
(2) 所定の配列ピッチで平面状に並ぶ複数の被覆電線部と、これら被覆電線部の被覆と同一の絶縁樹脂材料で形成されて隣接する前記被覆電線部間を繋ぐ略板状のブリッジ部と、を有するフラットケーブルが、前記被覆電線部の配列ピッチと同一のピッチで配列された複数の圧接刃に押し当てられることで、前記フラットケーブルの圧接部分における前記各被覆電線部が前記各圧接刃に圧接接続された状態を得るフラットケーブルの圧接接続方法であって、
前記フラットケーブルは、前記圧接刃に押し当てられる前に
、前記圧接部分における前記各ブリッジ部に
のみ横断面形状が曲った可撓部が形成されるフラットケーブルの圧接接続方法。
【0015】
(3) 所定の配列ピッチで平面状に並ぶ複数の被覆電線部と、これら被覆電線部の被覆と同一の絶縁樹脂材料で形成されて隣接する前記被覆電線部間を繋ぐ略板状のブリッジ部と、を有するフラットケーブルであって、
圧接刃に圧接接続される圧接部分における前記各ブリッジ部に
のみ、横断面形状が曲った可撓部が形成されたフラットケーブル。
【0016】
上記(1)の構成によれば、フラットケーブルの少なくとも圧接刃に圧接接続される圧接部分(即ち、圧接刃が被覆を切断する位置及びその近傍)が、下部治具と上部治具とで挟んでプレス成形されると、フラットケーブルの各ブリッジ部には、その両側の被覆電線部が下部治具の電線下面支持溝と上部治具の電線上面支持溝とで固定されている状態で、上部治具の成形突条によってブリッジ成形溝側への押圧荷重が作用する。その結果、各ブリッジ部は、延伸して、ブリッジ成形溝に沿う横断面形状に曲がった可撓部が形成される。
【0017】
そして、各ブリッジ部に可撓部が形成されたフラットケーブルは、圧接作業時に、接続対象の圧接刃との間のピッチのずれによって、被覆電線部に該被覆電線部の中心軸と直交する方向の外力が作用すると、外力を受けた被覆電線部が、可撓部の曲げ状態の伸縮によって、被覆電線部の中心軸と直交する方向に変位して、ピッチのずれを吸収する。
【0018】
即ち、上記(1)の構成によれば、フラットケーブルの圧接部分におけるブリッジ部に横断面形状が曲った可撓部を形成することができ、ブリッジ部に形成した可撓部によって、各被覆電線部に、接続対象の圧接刃との間のピッチのずれを吸収する可動性を付与することができる。
【0019】
また、上記(1)の構成によれば、可撓部を成形する上下の治具は、フラットケーブルのブリッジ部に高精度にスリットを形成する設備と比較すると、それほど高い精度が要求されず、また、構成部品も少なくて済む。そのため、フラットケーブルの各ブリッジ部にスリットを形成する場合と比較して、安価に、各被覆電線部に可動性を付与することができる。
【0020】
上記(2)の構成によれば、フラットケーブルは、圧接刃に押し当てられる前に、少なくとも圧接部分における各ブリッジ部に、横断面形状が曲った可撓部が延伸形成される。そして、各ブリッジ部に形成された可撓部が、各被覆電線部に、接続対象の圧接刃との間のピッチのずれを吸収する可動性を付与する。
【0021】
そのため、フラットケーブルのブリッジ部に加工費が嵩むスリット加工を施工せずとも、フラットケーブルの各被覆電線部に、接続対象の圧接刃との間のピッチのずれを吸収する可動性を付与することができる。従って、接続対象の圧接刃との間のピッチのずれがあっても、フラットケーブル上の各被覆電線部は、各ブリッジ部の可撓部の伸縮によって、正確に各圧接刃に割り込ませることができ、フラットケーブルの高精度な圧接接続状態を安価に実現することができる。
【0022】
上記(3)の構成によれば、圧接刃に圧接接続される圧接部分における各被覆電線部に接続対象の圧接刃との間のピッチのずれを吸収する可動性を付与したフラットケーブルを提供することができる。従って、接続対象の圧接刃との間のピッチのずれがあっても、フラットケーブル上の各被覆電線部は、各ブリッジ部の可撓部の伸縮によって、正確に各圧接刃に割り込ませることができ、フラットケーブルの高精度な圧接接続状態を安価に実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるケーブル成形治具によれば、下部治具と上部治具とによるプレス成形によってフラットケーブルのブリッジ部に横断面形状が曲った可撓部を形成し、該可撓部によって、各被覆電線部に、接続対象の圧接刃との間のピッチのずれを吸収する可動性を付与する。そのため、フラットケーブルの各ブリッジ部に高精度にスリットを形成する場合と比較すると、フラットケーブルの各被覆電線部に、安価に、可動性を付与することができる。
【0024】
また、本発明によるフラットケーブルの圧接接続方法によれば、圧接刃に押し当てる前に、フラットケーブルの各ブリッジ部に横断面形状が曲った可撓部を形成して、各被覆電線部に接続対象の圧接刃との間のピッチのずれを吸収する可動性を付与する。従って、接続対象の圧接刃との間のピッチのずれがあっても、フラットケーブル上の各被覆電線部は、各ブリッジ部の可撓部の伸縮によって、正確に各圧接刃に割り込ませることができ、フラットケーブルの高精度な圧接接続状態を安価に実現することができる。
【0025】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るケーブル成形治具及びフラットケーブルの圧接接続方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明に係るケーブル成形治具の一実施形態を示したもので、
図1の(a)はフラットケーブルをプレス成形する前の下部治具と上部治具が開いている状態の斜視図、
図1の(b)は
図1の(a)の状態の正面図((A)矢視図)、
図1の(c)は下部治具と上部治具とでフラットケーブルをプレス成形している状態の正面図、
図1の(d)は一実施形態のケーブル成形治具で成形されたフラットケーブルの正面図である。
【0029】
この一実施形態のケーブル成形治具10は、例えば押出し成形により形成されたフラットケーブル140Aを下部治具20と上部治具30とで挟んでプレス成形することによって、フラットケーブル140Aの少なくとも圧接刃54に圧接接続される圧接部分(即ち、圧接刃54が絶縁被覆(被覆)141aを切断する位置及びその近傍であり、本実施形態においては、フラットケーブル140Aの一端部)におけるブリッジ部142を所定の形状に成形する。なお、ケーブル成形治具10は、フラットケーブル140Aの中間部分における圧接部分のブリッジ部142を所定の形状に成形することもできる。
【0030】
フラットケーブル140Aは、
図1の(a)及び
図1の(b)に示すように、所定の配列ピッチで平面状に並ぶ複数の被覆電線部141と、被覆電線部141間を繋ぐ略板状のブリッジ部142と、を備える。ブリッジ部142は、被覆電線部141の絶縁被覆141aと同一の絶縁樹脂材料で形成されている。
【0031】
ケーブル成形治具10の下部治具20は、
図1の(b)に矢印(X1)で示すように、その上面20aが、フラットケーブル140Aの下面に当接される。この下部治具20は、その上面20aに、複数の電線下面支持溝21と、複数のブリッジ成形溝22と、を備えている。
【0032】
電線下面支持溝21は、フラットケーブル140Aの各被覆電線部141の下面が嵌合する溝である。この電線下面支持溝21は、横断面形状が、被覆電線部141の外径に略等しい径の半円形に設定されている。複数の電線下面支持溝21は、フラットケーブル140Aにおける被覆電線部141の配列ピッチと同一のピッチで配列されている。
【0033】
ブリッジ成形溝22は、隣接する電線下面支持溝21間において電線下面支持溝21と平行に延設された溝である。本実施形態の場合、ブリッジ成形溝22の横断面形状は、略V字形に設定されている。
【0034】
ケーブル成形治具10の上部治具30は、
図1の(b)に矢印(X2)で示すように、その下面30aが、フラットケーブル140Aの上面に当接される。この上部治具30は、その下面30aに、複数の電線上面支持溝31と、複数の成形突条32と、を備えている。
【0035】
電線上面支持溝31は、フラットケーブル140Aの各被覆電線部141の上面が嵌合する溝である。この電線上面支持溝31は、横断面形状が、被覆電線部141の外径に略等しい径の半円形に設定されている。複数の電線上面支持溝31は、フラットケーブル140Aにおける被覆電線部141の配列ピッチと同一のピッチで配列されている。各電線上面支持溝31は、
図1の(c)に示すように当該上部治具30がフラットケーブル140Aの上面に当接された際に、下部治具20の電線下面支持溝21との協働で、各被覆電線部141を挾持する。
【0036】
成形突条32は、隣接する電線上面支持溝31間において、電線上面支持溝31と平行に延設された突条である。本実施形態の場合、成形突条32の横断面形状は、ブリッジ成形溝22にフラットケーブル140Aのブリッジ部142を押し当てる略V字形に設定されている。
【0037】
成形突条32は、
図1の(c)示すようにブリッジ成形溝22にブリッジ部142を押し当てることで、
図1の(d)に示すように、ブリッジ部142にブリッジ成形溝22に沿う横断面形状(即ち、略V字形)に曲がった構造の可撓部143を延伸形成する。その結果、ブリッジ部142に可撓部143が形成されたフラットケーブル140が得られる。
【0038】
図2〜
図8は、本発明のフラットケーブルの圧接接続方法でフラットケーブル140が圧接接続されるコネクタを示している。
【0039】
このコネクタ50は、
図2〜
図4に示すように、フラットケーブル140を載置するケーブル載置面51を有した樹脂製のハウジング本体52と、ケーブル載置面51にフラットケーブル140を押し当てた状態に保持する樹脂製のケーブルホルダー53と、を備えている。ハウジング本体52の前面には、複数の端子収容孔52aが、上下2段に配列されている。
【0040】
ケーブル載置面51には、
図6及び
図7に示すように、フラットケーブル140の一端部における被覆電線部141を圧接接続する複数の圧接刃54が、フラットケーブル140における被覆電線部141の配列ピッチと同一の配列ピッチで装備されている。
【0041】
圧接刃54は、
図9に示すように、一対の切断刃54a,54b間に、被覆電線部141を割り込ませるスリット54cを形成したものである。圧接刃54は、スリット54cに被覆電線部141を割り込ませることで、被覆電線部141の両側の絶縁被覆141aが切断刃54a,54bにより切断されて、切断刃54a,54bが被覆電線部141の電線導体141bに接触した状態となり、電線導体141bが切断刃54a,54bに導通接続された状態になる。
【0042】
図示はしていないが、各圧接刃54は、端子収容孔52aに収容される圧接端子金具の一部である。従って、当該コネクタ50を相手コネクタに接続して、相手コネクタの端子金具の先端部が端子収容孔52a内の圧接端子金具の嵌合接続部に嵌合すると、圧接刃54に圧接接続されている被覆電線部141が、相手コネクタの端子金具に電気的に接続された状態になる。
【0043】
ケーブルホルダー53は、フラットケーブル140の片面側に装着されて、フラットケーブル140を支持する。ケーブルホルダー53は、ハウジング本体52のケーブル載置面51に着脱可能である。このケーブルホルダー53は、ケーブル載置面51に装着した際に、保持しているフラットケーブル140の各被覆電線部141を、対応する各圧接刃54のスリット54cに押し込む電線押さえ(不図示)を備えている。
【0044】
本発明の一実施形態であるフラットケーブルの圧接接続方法は、前述のフラットケーブル140の複数の被覆電線部141が、コネクタ50のケーブル載置面51に配置されている複数の圧接刃54に圧接接続される方法である。
【0045】
本実施形態のフラットケーブルの圧接接続方法では、フラットケーブル140の一端部には、コネクタ50上の前記圧接刃54に押し当てる前に、
図1に示したケーブル成形治具10を使って、各ブリッジ部142に可撓部143を形成しておく。
【0046】
そして、可撓部143を形成済みのフラットケーブル140の一端部が、ケーブルホルダー53を使ってケーブル載置面51に装着されることで、フラットケーブル140がコネクタ50上の圧接刃54に圧接接続される。
【0047】
本実施形態のフラットケーブルの圧接接続方法では、
図9及び
図11に示すように、圧接刃54に押し込まれる被覆電線部141間のブリッジ部142には、横断面形状が曲った可撓部143が形成されている。そのため、接続対象の圧接刃54との間にピッチのずれがあって、被覆電線部141に該被覆電線部141の中心軸と直交する方向の外力が作用すると、外力受けた被覆電線部141が、可撓部143の曲げ状態の伸縮によって、被覆電線部141の中心軸と直交する方向に変位して、ピッチのずれを吸収する。
【0048】
即ち、各ブリッジ部142に形成された可撓部143が、各被覆電線部141に、接続対象の圧接刃54との間のピッチのずれを吸収する可動性を付与する。
【0049】
従って、接続対象の圧接刃54との間のピッチのずれがあっても、圧接刃54が被覆電線部141の電線導体141bを傷付けるおそれがなく、確実に各被覆電線部141を各圧接刃54に圧接接続することができる。
【0050】
なお、比較例として、フラットケーブル140Aに可撓部143を形成せず、また、スリット加工もしていないフラットケーブル140Aが、複数の圧接刃54に圧接接続された状態を
図12及び
図13に示した。この場合は、接続対象の圧接刃54との間のピッチのずれがあって、被覆電線部141に該被覆電線部141の中心軸と直交する方向の外力が作用した際に、被覆電線部141間はブリッジ部142が緊張した状態にあって、被覆電線部141の中心軸と直交する方向への変位が規制されてしまう。そのため、圧接刃54が、被覆電線部141の中心を外して被覆電線部141に食い込み、電線導体141bを傷付けたり、圧接刃54への負荷が大きくなって圧接刃54が変形するという問題が生じる。
【0051】
以上に説明した本実施形態のケーブル成形治具10では、フラットケーブル140Aが、下部治具20と上部治具30とで挟んでプレス成形されると、フラットケーブル140Aの各ブリッジ部142には、その両側の被覆電線部141が下部治具20の電線下面支持溝21と上部治具30の電線上面支持溝31とで固定されている状態で、上部治具30の成形突条32によってブリッジ成形溝22側への押圧荷重が作用する。その結果、各ブリッジ部142は、延伸して、ブリッジ成形溝22に沿う横断面形状に曲がった可撓部143が形成される。
【0052】
そして、各ブリッジ部142に可撓部143が形成されたフラットケーブル140は、圧接作業時に、接続対象の圧接刃54との間のピッチのずれによって、被覆電線部141に該被覆電線部141の中心軸と直交する方向の外力が作用すると、外力を受けた被覆電線部141が、可撓部143の曲げ状態の伸縮によって、被覆電線部141の中心軸と直交する方向に変位して、ピッチのずれを吸収する。
【0053】
即ち、本実施形態のケーブル成形治具10によれば、フラットケーブル140Aのブリッジ部142に横断面形状が曲った可撓部143を形成することができ、ブリッジ部142に形成した可撓部143によって、各被覆電線部141に、接続対象の圧接刃との間のピッチのずれを吸収する可動性を付与することができる。また、本実施形態のケーブル成形治具10によれば、可撓部143を成形する下部治具20及び上部治具30は、フラットケーブル140Aのブリッジ部142に高精度にスリットを形成する設備と比較すると、それほど高い精度が要求されず、また、構成部品も少なくて済む。そのため、本実施形態のケーブル成形治具10は、フラットケーブル140Aの各ブリッジ部142にスリットを形成する場合と比較して、安価に、フラットケーブル140Aの各ブリッジ部142に可撓部143を形成して各被覆電線部141に可動性を付与することができる。
また、例えばフラットケーブル140Aを押出し成形する際に、押出し型によって各ブリッジ部142に可撓部143を一体形成することも可能ではあるが、ケーブルの全長に亘って可撓部143が形成されることで、フラットケーブル自体の可撓性が損なわれるおそれがある。更に、被覆電線部141の配列ピッチが異なる複数種のフラットケーブル140Aの各ブリッジ部142に可撓部143を形成する際には、押出し型を複数台用意する必要があり、設備コストが上昇する。これに対し、本実施形態のケーブル成形治具10の場合は、配列ピッチが異なる複数種の下部治具20及び上部治具30を用意するだけでよく、設備も安価で済み、配列ピッチが異なるフラットケーブル140Aに対する対応も容易である。
【0054】
また、本実施形態のフラットケーブルの圧接接続方法によれば、フラットケーブル140は、圧接刃54に押し当てられる前に、各ブリッジ部142には、例えばケーブル成形治具10によって、横断面形状が曲った可撓部143が延伸形成される。そして、各ブリッジ部142に形成された可撓部143が、各被覆電線部141に、接続対象の圧接刃54との間のピッチのずれを吸収する可動性を付与する。
【0055】
そのため、フラットケーブル140のブリッジ部142に加工費が嵩むスリット加工を施工せずとも、フラットケーブル140の各被覆電線部141に、接続対象の圧接刃54との間のピッチのずれを吸収する可動性を付与することができる。従って、接続対象の圧接刃54との間のピッチのずれがあっても、フラットケーブル140上の各被覆電線部141は、各ブリッジ部142の可撓部143の伸縮によって、正確に各圧接刃に割り込ませることができ、フラットケーブル140の高精度な圧接接続状態を安価に実現することができる。
【0056】
また、本実施形態のフラットケーブル140によれば、圧接刃54に圧接接続される圧接部分における各被覆電線部141に接続対象の圧接刃54との間のピッチのずれを吸収する可動性を付与したフラットケーブル140を提供することができる。従って、接続対象の圧接刃54との間のピッチのずれがあっても、フラットケーブル140上の各被覆電線部141は、各ブリッジ部142の可撓部143の伸縮によって、正確に各圧接刃54に割り込ませることができ、フラットケーブル140の高精度な圧接接続状態を安価に実現することができる。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0058】
例えば、本発明のケーブル成形治具によってブリッジ部142に形成する可撓部143の具体的な曲り構造は、上記実施形態に示した略V字形の横断面形状に限らない。例えば、略U字形や略W字形などの曲り構造としても良い。
また、本発明に係るフラットケーブルは、押出し成形により形成されたものに限らず、複数の電線導体を2枚の被覆でラミネートして形成されたものなど、本発明の趣旨に基づく種々のフラットケーブルを用いることができる。
【0059】
ここで、上述した本発明に係るケーブル成形治具及びフラットケーブルの圧接接続方法の実施形態の1特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0060】
[1] 所定の配列ピッチで平面状に並ぶ複数の被覆電線部(141)と、該被覆電線部(141)の被覆と同一の絶縁樹脂材料で形成されて隣接する前記被覆電線部(141)間を繋ぐ略板状のブリッジ部(142)と、を有するフラットケーブル(140A)の少なくとも圧接刃に圧接接続される圧接部分を成形するためのケーブル成形治具(10)であって、
前記フラットケーブル(140A)の下面に当接される下部治具(20)と、該下部治具(20)上の前記フラットケーブル(140A)の上面に当接される上部治具(30)と、を備え、
前記下部治具(20)は、前記各被覆電線部(141)の下面が嵌合するように前記被覆電線部(141)の配列ピッチと同一のピッチで配列された複数の電線下面支持溝(21)と、隣接する前記電線下面支持溝(21)間において前記電線下面支持溝(21)と平行に延設された複数のブリッジ成形溝(22)と、を備え、
前記上部治具(30)は、前記各被覆電線部(141)の上面が嵌合するように前記被覆電線部(141)の配列ピッチと同一のピッチで配列されて前記電線下面支持溝(21)との協働で前記各被覆電線部(141)を挾持する複数の電線上面支持溝(31)と、隣接する前記電線上面支持溝(31)間において前記電線上面支持溝(31)と平行に延設されて前記ブリッジ成形溝(22)に前記ブリッジ部(142)を押し当てることで前記ブリッジ部(142)に前記ブリッジ成形溝(22)に沿う横断面形状に曲がった構造の可撓部(143)を延伸形成する複数の成形突条(32)と、を備えたケーブル成形治具(10)。
【0061】
[2] 所定の配列ピッチで平面状に並ぶ複数の被覆電線部(141)と、これら被覆電線部(141)の被覆と同一の絶縁樹脂材料で形成されて隣接する前記被覆電線部(141)間を繋ぐ略板状のブリッジ部(142)と、を有するフラットケーブル(140)が、前記被覆電線部(141)の配列ピッチと同一のピッチで配列された複数の圧接刃に押し当てられることで、前記フラットケーブル(140)の圧接部分における前記各被覆電線部(141)が前記各圧接刃に圧接接続された状態を得るフラットケーブルの圧接接続方法であって、
前記フラットケーブル(140)は、前記圧接刃に押し当てられる前に、少なくとも前記圧接部分における前記各ブリッジ部(142)に横断面形状が曲った可撓部(143)が形成されるフラットケーブルの圧接接続方法。
【0062】
[3] 所定の配列ピッチで平面状に並ぶ複数の被覆電線部(141)と、これら被覆電線部(141)の被覆と同一の絶縁樹脂材料で形成されて隣接する前記被覆電線部(141)間を繋ぐ略板状のブリッジ部(142)と、を有するフラットケーブル(140A)であって、
圧接刃に圧接接続される圧接部分における前記各ブリッジ部(142)には、横断面形状が曲った可撓部(143)が形成されたフラットケーブル(140)。
【0063】
また、本出願は、2013年5月20日出願の日本特許出願(特願2013−106146)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。