【実施例】
【0022】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0023】
図2および
図3に示す配合のウレタンフォーム原料から、実施例、参考例および比較例の車両用フロアスペーサを
製造した。それら
図2および
図3におけるウレタンフォーム原料の詳細を以下に示す。
・メインポリオール;商品名:SPECFLEX NC630、DOW社製、数平均分子量:5500、水酸基価:31.5、官能基数:3.6、EO率:15%
・ポリマーポリオール;商品名:FS7301、三洋化成社製、数平均分子量:3000、水酸基価:31、官能基数:3、固形分:40%
・サブポリオールA(ポリエーテルポリオール);商品名:EXCENOL980、旭硝子社製、水酸基価:450、官能基数:6、EO率:47%
・サブポリオールB(ポリエーテルポリオール);商品名:BM−54、ADEKA社製、水酸基価:450、官能基数:4、EO率:40%
・サブポリオールC(ポリエーテルポリオール);商品名:EDP−450、ADEKA社製、水酸基価:500、官能基数:4、1級EO率:0%
・樹脂化触媒;商品名:33LSI、エアプロ社製
・泡化触媒;商品名:BLX−11、エアプロ社製
・整泡剤;商品名:B8715LF2、EVONIC社製
・発泡剤;水
なお、図でのメインポリオール含有率は、全ポリオールの量に対するメインポリオールの量の比率であり、ポリマーポリオール含有率は、全ポリオールの量に対するポリマーポリオールの量(固形分100%換算)の比率、すなわち、全ポリオールの量に対するポリマーポリオール中のポリマー成分(固形分)の含有量の比率のことである。また、図でのサブポリオール含有率は、全ポリオールの量に対する各サブポリオールの量の比率である。
【0024】
図2,3の実施例1、2、7、参考例3〜6、8〜10および比較例1〜3の各々の配合に従って、車両用フロアスペーサを
製造した。そして、それら実施例1、2、7、参考例3〜6、8〜10および比較例1〜3の車両用フロアスペーサに対して、以下の方法によって評価を行なった。さらに、比較例4として軟質ウレタンフォームにより
製造されたフロアスペーサ,比較例5として硬質ウレタンフォームにより
製造されたフロアスペーサ,比較例6として熱可塑性樹脂の発泡ビーズにより
製造されたフロアスペーサに対して、同様の方法によって物性評価を行った。
【0025】
JIS K 7222:2005に基づく方法に準拠してフロアスペーサの密度(kg/m
3)を測定した。密度(kg/m
3)は、それの値が小さいほど、低密度化に優れたフロアスペーサであることを示しており、軽量であることを示している。この測定値を、
図4および
図5の「密度」の欄に示しておく。
【0026】
荷重測定法の1種であるILD(Indentation Load Deflection:負荷重たわみ値)を
基準として、圧縮硬さ(N)を測定した。具体的には、試料片(150mm×150mm×40mm)を、40mmの辺が高さとなるように配設し、それの上面(150mm×150mm)を加圧子(φ100mm)によって、速度50mm/minで圧縮する。そして、25%圧縮時の荷重(N)を25%圧縮硬さ、50%圧縮時の荷重(N)を50%圧縮硬さ、75%圧縮時の荷重(N)を75%圧縮硬さとして測定した。各圧縮硬さの測定値を、
図4および
図5の各「圧縮硬さ」の欄に示しておく。
【0027】
ASTM D 2856−94に基づく方法に準拠して連続気泡率(%)を測定した。連続気泡率は、それの値が大きいほど、セルが互いに連通、若しくは、外部に開放しており、吸音性に優れたフロアスペーサであることを示している。そして、吸音性が優れている場合には、「○」と、あまり良好でない場合には、「△」と、不良である場合には、「×」と評価した。それら測定値、および評価の結果を、
図4および
図5の「連続気泡率」と「吸音性」の欄に示しておく。
【0028】
また、フロアスペーサを足で踏んだ際の底つき感の有無を評価した。具体的には、評価者がフロアスペーサを足で踏んだ際に、フロアスペーサが潰れ、フロアスペーサの底を踏んだ感触がある場合には、「×」と、それ以外の場合には、「○」と評価した。この評価の結果を、
図4および
図5の「底つき」の欄に示しておく。
【0029】
さらに、フロアスペーサを足で踏んだ際に、フロアスペーサの座屈の有無を評価した。具体的には、評価者がフロアスペーサを足で踏んだ際に、フロアスペーサが座屈した場合には、「×」と、少し座屈した場合には、「△」と、座屈しなかった場合には、「○」と評価した。この評価の結果を、
図4および
図5の「座屈」の欄に示しておく。
【0030】
そして、上記「吸音性」、「底つき」、「座屈」の評価に基づいて、総合的な評価を行った。具体的には、それら3つの評価が全て「○」である場合には、「○」と、3つの評価のうち「△」は有るが、「×」が無い場合(「×、△」は「×」ではないと評価する)には、「△」と、3つの評価のうち「×」が有る場合には、「×」と評価した。この評価の結果を、
図4および
図5の「総合評価」の欄に示しておく。
【0031】
また、実施例1のフロアスペーサ、および、変形例3,6のフロアスペーサに対して、JIS A 1405−2に基づく方法に準拠して、100〜5000Hzの範囲で吸音率(%)を測定した。さらに、マカロニ形状の熱可塑性樹脂の発泡ビーズにより
製造されたフロアスペーサに対しても、同様に吸音率を測定した。このフロアスペーサは、吸音性を高めるべく、マカロニ形状のような筒型の熱可塑性樹脂の発泡ビーズを融着させたものである。各フロアスペーサの吸音率と周波数との関係を、
図6に示しておく。
【0032】
上記全ての評価において、実施例1、2、7のフロアスペーサの評価は、全て「○」となっており、良好な結果が得られた。一方、比較例1〜6のフロアスペーサの評価では、「○」の評価もあるが、「△」および「×」の評価が散見される。また、フロアスペーサの物性値に関しては、実施例1、2、7のフロアスペーサでは、全体に渡って、低密度化が図られるとともに、高い圧縮硬さが実現されている。さらに、高い連続気泡率も実現されている。一方、比較例1〜6のフロアスペーサでは、全体に渡って、低密度化が図られているが、圧縮硬さに関して、軟質ウレタンフォームにより
製造された比較例4のフロアスペーサにおいて、極端に低くなっている。また、反応性の高いポリエーテルポリオールの含有率が低い比較例1のフロアスペーサも、「底つき」の評価が「×」であることから、圧縮硬さが相当低いことが推定される。連続気泡率に関しては、硬質ウレタンフォームにより
製造された比較例5のフロアスペーサ、および、熱可塑性樹脂の発泡ビーズにより
製造された比較例6のフロアスペーサにおいて、相当低くなっている。1級EO率が0%とされたポリエーテルポリオールが使用された比較例2,3のフロアスペーサにおいても、連続気泡率は、あまり高くない。
【0033】
つまり、反応性の高いポリエーテルポリオール、具体的には、官能基数4〜6,水酸基価400〜500,EO率35%以上のポリエーテルポリオールを、所定の量、具体的には、全ポリオールに対して2〜15質量%に相当する量、使用することで、高い吸音性,高い圧縮硬さ,低密度化の全てを実現するフロアスペーサを
製造することが可能となる。
【0034】
なお、
図6から解るように、実施例1のフロアスペーサでは、比較例3,6のフロアスペーサと比較して、100〜5000Hzの全ての周波数域において、吸音率が相当高くなっている。また、吸音性を高めるべく、筒型の熱可塑性樹脂の発泡ビーズにより
製造されたフロアスペーサと比較しても、一部の周波数域を除いて、実施例1のフロアスペーサの吸音率が相当高くなっている。
【0035】
以下、本発明の諸態様について列記する。
【0036】
(1)ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、整泡剤、触媒を含むウレタンフォーム原料によって金型内部で成形される車両用フロアスペーサにおいて、
連続気泡率(ASTM D 2856−94)が、75%以上であり、
密度(JIS K 7222)が、40〜95kg/m
3であり、
圧縮硬さが、300N(25%圧縮硬さ)以上、かつ、500N(50%圧縮硬さ)以上、かつ、800N(75%圧縮硬さ)以上である車両用フロアスペーサ。
【0037】
(2)前記ポリオールは、
官能基数3〜4、水酸基価30〜60であり、前記ポリオールの全量を100質量%とした場合の含有量が35〜90質量%であるメインポリオールと、
官能基数3〜4、水酸基価20〜60のポリマーポリオールであり、前記ポリオールの全量を100質量%とした場合の含有量(固形分100%換算)が3〜25質量%であるポリマーポリオールと、
多価アルコールにエチレンオキサイドを付加重合させることにより得られる官能基数4〜6、水酸基価400〜500のポリエーテルポリオールであり、そのポリエーテルポリオールのEO率が35%以上であり、前記ポリオールの全量を100質量%とした場合の含有量が2〜15質量%であるポリエーテルポリオールと
を含む(1)項に記載の車両用フロアスペーサ。
【0038】
(3)前記ポリイソシアネートは、ジイソシアネートであり、
イソシアネートインデックスが、85〜150である(1)項または(2)項に記載の車両用フロアスペーサ。
【0039】
(4)当該車両用フロアスペーサの厚さが、3〜50mmとされた(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用フロアスペーサ。
【0040】
(5)吸音率(JIS A 1405−2)が、400〜800Hzの範囲において15%以上である(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車両用フロアスペーサ。
【0041】
(6)吸音率(JIS A 1405−2)が、800〜5000Hzの範囲において50%以上である(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車両用フロアスペーサ。
【0042】
(7)吸音率(JIS A 1405−2)が、1000〜1600Hzの範囲において70%以上である(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両用フロアスペーサ。
【0043】
(8)ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、整泡剤、触媒を含むウレタンフォーム原料を混合する混合工程と、
その混合工程で混合された前記ウレタンフォーム原料を金型に注入する注入工程と
を含み、その金型内部で車両用フロアスペーサを成形する方法において、
前記ポリオールは、
官能基数3〜4、水酸基価30〜60であり、前記ポリオールの全量を100質量%とした場合の含有量が35〜90質量%であるメインポリオールと、
官能基数3〜4、水酸基価20〜60のポリマーポリオールであり、前記ポリオールの全量を100質量%とした場合の含有量(固形分100%換算)が3〜25質量%であるポリマーポリオールと、
多価アルコールにエチレンオキサイドを付加重合させることにより得られる官能基数4〜6、水酸基価400〜500のポリエーテルポリオールであり、そのポリエーテルポリオールのEO率が35%以上であり、前記ポリオールの全量を100質量%とした場合の含有量が2〜15質量%であるポリエーテルポリオールと
を含む車両用フロアスペーサ成形方法。
【0044】
(9)当該車両用フロアスペーサ成形方法は、さらに、
前記注入工程において前記ウレタンフォーム原料が前記金型に注入される前、若しくは、注入された後に、前記ウレタンフォーム原料からなるウレタンフォームに一体化させるための部材を前記金型の内部に設置する設置工程を含む(8)項に記載の車両用フロアスペ
ーサ成形方法。
【0045】
(10)前記設置工程において前記金型の内部に設置される部材は、
当該車両用フロアスペーサの少なくとも一部を覆うシート状の部材である(9)項に記載
の車両用フロアスペーサ成形方法。
【0046】
(11)前記ポリイソシアネートは、ジイソシアネートであり、
イソシアネートインデックスが、85〜150である(8)項ないし(10)項のいずれか1
つに記載の車両用フロアスペーサ成形方法。