【文献】
Toshifumi Miyazawa et al.,Enantiomeric Separation of Non-Protein Amino Acids by Chiral Ligand-Exchange High-Performance Liquid,Analytical Letters,1997年,Vol.30(4),p.867-882
【文献】
Toshifumi Miyazawa et al.,Enantiomeric Separation of N-Protected Non-Protein Amino Acids Esters by Chiral High-Performance Liq,Analytical Letters,1993年,Vol.26(3),p.457-473
【文献】
日本化学会,第4版 実験化学講座 22 有機合成IV ―酸・アミノ酸・ペプチド,1991年,p.208-209
【文献】
H. D. Dewitt et al.,N-Acylamino Acids, A New Class of Resolving Agent,J. Am. Chem. Soc.,1951年,Vol.73,p.5782-5783
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)の水溶液と、塩基又は酸とを混合することにより、水溶液中の酸又は塩基を中和して水に可溶な塩に変換しつつ、当該溶液から光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)を析出させる工程を更に含む請求項4に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本願の第1の発明について説明する。第1の発明は、大きく分けて以下の2工程からなる。
【0025】
で表されるチアゾリルアラニン誘導体を塩に変換し、所望の立体配置を有する下記式(2):
【0027】
で表される光学活性チアゾリルアラニン誘導体の塩を晶析する工程。
【0028】
第2工程
上記光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)との塩を解塩し、下記式(1):
【0030】
で表される光学活性チアゾリルアラニン誘導体に変換する工程。
【0032】
R
1及びR
4は、それぞれ、水酸基、置換されていても良いアルコキシ基、又は置換されていても良いアミノ基を表す。
【0033】
R
1及びR
4における置換されていても良いアルコキシ基としては、カルボニル基と結合してエステル化合物を形成するものであれば特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基。n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルキルオキシ基、ベンジルオキシ基、メチルベンジルオキシ基、フェニルエトキシ基等のアラルキルオキシ基、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、キシリルオキシ基等のアリールオキシ基、等が挙げられる。
【0034】
R
1及びR
4における置換されていても良いアミノ基としては、カルボニル基と結合してアミド化合物を形成するものであれば特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、フェニル基、トルイル基、キシリル基等のアリール基、等の有機基が窒素原子上に結合した、1級又は2級アミノ基が挙げられる。具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アニリノ基、ジメチルアミノ基、ピロリジノ基、モルホリノ基、N−ベンジル−N−エチルアミノ基、N−エチルアニリノ基、等が挙げられる。これらの有機基は、更に1または2以上の置換基で置換されていても良い。
【0035】
R
1とR
4は同一であっても良いし、異なっていても良い。R
1とR
4が異なる場合は、後で詳述するが、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と光学分割剤等とのジアステレオマー塩を分別晶析後に、光学分割剤を分離する工程において、常法に従い、R
4を除去した後にR
1を導入しても良いし、R
4を除去せずにそのままR
1へと変換しても良い。
【0036】
R
4としては、チアゾリルアラニン誘導体(3)の入手が容易なこと、置換基の除去及び置換が容易で、変換の自由度が高いこと等から、アルコキシ基が好ましく、なかでも、メトキシ基またはエトキシ基が好ましい。
【0037】
R
2、R
3、R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子もしくは置換されていても良い1価の有機基を表すか、または、R
2とR
3、R
5とR
6がそれぞれ一緒になって、置換されていても良い2価の有機基を表す。
【0038】
上記R
2、R
3、R
5、及びR
6における、置換されていても良い1価の有機基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、フェニル基、トルイル基、キシリル基等のアリール基、等を挙げることができる。これらの有機基は、更に1または2以上の置換基で置換されていても良い。
【0039】
また、置換されていても良い2価の有機基としては特に限定されず、例えば、メチリデン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、sec−ブチリデン基、ベンジリデン基、o−ヒドロキシベンジリデン基等、炭化水素の同一炭素上の水素原子2個を除いたもの(アルキリデン基)や、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等、炭化水素における異なる2個の炭素上の水素原子を1個ずつ除いたもの、等を挙げることができる。これらの有機基は、更に1または2以上の置換基で置換されていても良い。
【0040】
R
2とR
5は、同一であっても、異なっていてもよい。また、R
3とR
6も、同一であっても、異なっていてもよい。さらに、R
2とR
3、R
5とR
6が一緒になって形成された2価の有機基は、同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0041】
R
2がR
5と異なる場合、およびR
3がR
6と異なる場合は、後で詳述するが、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と光学分割剤等とのジアステレオマー塩を分別晶析後に、光学分割剤等を分離する工程において、常法に従い、R
5及び/又はR
6を除去し、その後R
2及び/又はR
3を導入しても良いし、R
5及び/又はR
6を除去せずにそのままR
2及び/又はR
3へと変換しても良い。
【0042】
R
5及びR
6としては、チアゾリルアラニン誘導体(3)の入手が容易なこと、置換基の除去及び置換が容易で、変換の自由度が高いこと等から、通常、水素原子が好ましく用いられる。有機基の場合でも、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と光学分割剤とのジアステレオマー塩の分別晶析時に、水素原子である場合とは逆の立体配置のジアステレオマー塩を優先して析出させることもできるため、好適に実施される。各種有機基のなかでも、上記アルキリデン基は、その他の有機基とは異なり、チアゾリルアラニン誘導体の異性化を促進すること、加水分解により容易に除去できること等から、好適に用いられる。なかでも、ベンジリデン基、o−ヒドロキシベンジリデン基等が、特に好適に用いられる。
【0043】
上記アルキリデン基は、通常、チアゾリルアラニン誘導体に対応するアルデヒド化合物を脱水縮合することにより導入される。この脱水縮合反応は、本工程の反応晶析系中で対応するアルデヒド化合物を反応させても良いし、別途合成しても良い。別途合成する場合は、通常は、対応するチアゾリルアラニン誘導体とアルデヒド化合物を、有機溶媒中で加熱下、副生する水を蒸発除去しながら反応させて、N−アルキリデン−チアゾリルアラニン誘導体を有機溶媒溶液として取得する。
【0044】
上記有機溶媒としては特に限定されず、例えば、トルエンや酢酸エチル等の汎用的な有機溶媒を用いることができる。
【0045】
別途合成した上記N−アルキリデン−チアゾリルアラニン誘導体は、上記有機溶媒溶液をそのまま、又は、抽出、晶析、蒸留、又は、クロマトグラフィー等の常法により単離、精製して、本工程に供する。
【0046】
続いて、第1の発明を構成する各工程について説明する。
【0047】
まず、第1工程について説明する。本工程では、晶析溶媒中で、チアゾリルアラニン誘導体(3)を塩に変換して、所望の光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)の塩を晶析する。
【0048】
具体的には、チアゾリルアラニン誘導体(3)のラセミ体を塩に変換し、そこに所望の光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)の塩を接種するなどして、所望の光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)の塩を優先的に析出させる。または、チアゾリルアラニン誘導体(3)のラセミ体と光学分割剤とを作用させることにより2種のジアステレオマー塩を形成し、これらの溶解度の差を利用することにより、所望の光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と光学分割剤とからなるジアステレオマー塩を優先的に析出させる。
【0049】
以下に、所望の立体配置を有する光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と光学分割剤との塩の場合を例に挙げて説明する。
【0050】
本工程で用いる上記光学分割剤としては、ラセミ体チアゾリルアラニン誘導体(3)との間に2種のジアステレオマー塩を形成する光学活性化合物であって、且つ、所定の晶析溶媒に対して、上記2種のジアステレオマー塩間の溶解度差が大きいものであれば、特に制限なく使用することができる。
【0051】
通常は、チアゾリルアラニン誘導体(3)と塩を形成しやすい、光学活性な酸性化合物が好適に用いられる。上記光学活性な酸性化合物としては特に限定されないが、例えば、安価で入手容易であることから、光学活性の(D体又はL体の)、酒石酸やその誘導体、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、カンファースルホン酸、N−保護−アミノ酸誘導体、等を挙げることができる。なかでも、光学活性の酒石酸及びN−保護−アミノ酸誘導体が好ましく用いられる。光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と光学分割剤の立体配置の組み合わせは特に制限されない。
【0052】
なお、光学活性のN−保護−アミノ酸誘導体は、一般的には、光学分割剤としては認識されていなかった。本発明者らは、本発明の光学分割剤としてN−保護−アミノ酸誘導体を用いたところ、形成された2種のジアステレオマー塩の溶解度差が大きく、分別晶析に適していること、および、解塩後の光学分割剤の除去性も高いことから、光学分割剤として優れた特性を有していることを見出した。
【0053】
以下に、N−保護−アミノ酸誘導体型の光学分割剤について説明する。
N−保護−アミノ酸誘導体型の光学分割剤は、下記一般式(4):
【0057】
R
7はアミノ酸側鎖を表すか、又は、R
8と一緒になって、2価の有機基を表す。
【0058】
R
7としては、例えば、入手が容易な天然又は非天然の一般的なアミノ酸の側鎖が挙げられる。なかでも、2種のジアステレオマー塩の溶解度差が大きく、所望の立体を有するジアステレオマー塩の結晶性が良い、分別晶析に適したアミノ酸側鎖として、嵩高い置換基や水素結合等により立体の制約が高いものが好ましい。具体的には、ベンジル基、フェニル基、tert−ブチル基、p−ヒドロキシベンジル基、p−ヒドロキシフェニル基、等が挙げられる。なかでも、ベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、p−ヒドロキシフェニル基が好ましく、アミノ酸が安価で入手が容易であることから、特にベンジル基、p−ヒドロキシフェニル基が好ましい。
【0059】
また、R
7がR
8と一緒になって形成される2価の有機基である場合、トリメチレン基(プロリン側鎖)、テトラメチレン基等、環状構造となることで立体の制約が高くなる2価の有機基が好ましい。
【0060】
R
8は、水素原子又は置換されていても良い1価の有機基を表すか、或いは、R
7と一緒になって、2価の有機基を表す。置換されていても良い1価の有機基としては、具体的には、R
2、R
3、R
5、及びR
6の場合と同様のものが挙げられる。
【0061】
R
9は、アミノ基の保護基を表す。R
9としては、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第2版(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 2nd Ed.)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY & SONS)出版(1991年)に記載されているアミノ基の保護基から選択することができる。
【0062】
一般に、取り扱いの容易さ、安価である点、基質化合物の合成面の便利さ等の観点から、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等のウレタン型保護基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル型保護基、N−tert−ブチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基等のカルバモイル型保護基、等が好ましく用いられる。なかでも、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、N−tert−ブチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基が好ましい。特に、光学分割剤の安定性や、解塩後の除去の容易さ等から、N−フェニルカルバモイル基が好ましい。
【0063】
光学分割剤の使用量としては、上記ジアステレオマー塩を形成して分別晶析するために充分な量であれば、特に制限されない。光学分割剤の種類により異なるため、一律に規定することはできないが、チアゾリルアラニン誘導体(3)1モルに対して、通常、0.5〜5モル、好ましくは0.8〜3モル、更に好ましくは0.9〜2モルである。
【0064】
なお、本晶析系においては、加熱条件下、溶液中に存在する所望のものとは逆の立体配置を有するチアゾリルアラニン誘導体を異性化させつつ晶析を行うことにより、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と光学分割剤とからなるジアステレオマー塩の収量を向上させることもできる。なお、異性化は、チアゾリルアラニン誘導体(3)のR
5およびR
6がアルキリデン基の場合に行うことができる。
【0065】
上記異性化は、異性化促進剤を共存させることで、より円滑に進行させることもできる。上記異性化促進剤としては、本発明の本質に悪影響を与えずにチアゾリルアラニン誘導体の異性化を促進する化合物であれば、特に制限なく使用することができる。通常、アルデヒド化合物が好適に用いられる。なかでも、アリールアルデヒドが好ましく、特に、オルト位、又は、パラ位に水酸基を有するアリールアルデヒドが好ましい。入手が容易であること等から、サリチルアルデヒドが好適に用いられる。
【0066】
異性化促進剤の使用量としては、所望のものとは逆の立体配置を有するチアゾリルアラニン誘導体を異性化して、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と光学分割剤とからなるジアステレオマー塩の収量を向上させるために充分な量であれば、特に制限されない。異性化促進剤の種類により異なるため、一律に規定することはできないが、チアゾリルアラニン誘導体(3)1モルに対して、通常0.01モル以上、好ましくは0.05モル以上である。使用量の上限としては、チアゾリルアラニン誘導体(3)1モルに対して、通常2モル以下、好ましくは1モル以下、更に好ましくは0.5モル以下である。経済性等の観点から、異性化促進剤の使用量は必要最低限の量とするのが好ましい。
【0067】
本工程で用いる晶析溶媒としては、本発明の本質に悪影響がないものであれば特に限定されない。上記晶析溶媒の例としては、有機溶媒を単独で用いても良く、2種以上を混合して使用しても良い。尚、有機溶媒は、常温、常圧下で流動性のある液体であればよく、特に限定されない。例えば、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の脂肪酸エステル類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸類等を挙げることができる。これらのなかでも、芳香族炭化水素類、脂肪酸エステル類、アルコール類、および脂肪酸類が、特に、アルコール類が好ましく用いられる。
【0068】
また、晶析溶媒は、悪影響のない範囲で水を含んでいても良いが、含水量が高まるとジアステレオマー塩の溶解度が高まる傾向にあるため、適切な量に調整する必要がある。好ましい含水量は、チアゾリルアラニン誘導体(3)、光学分割剤、および、異性化剤の組み合わせや、上記溶媒中の有機溶媒の種類と比率等により異なるため、一律に規定することはできないが、通常、晶析溶媒中の濃度として10%以下である。
【0069】
チアゾリルアラニン誘導体(3)と光学分割剤とを作用させる方法としては、一般的な反応晶析操作を特に制限されずに用いることができる。例えば、チアゾリルアラニン誘導体(3)の溶液に光学分割剤を添加しても良いし、逆に光学分割剤の溶液にチアゾリルアラニン誘導体(3)を添加しても良い。また、チアゾリルアラニン誘導体(3)及び光学分割剤のそれぞれの溶液を、一定の比率で連続的に混合しても良い。更に、上記異性化促進剤を共存させる場合には、チアゾリルアラニン誘導体(3)又は光学分割剤の溶液に異性化促進剤を添加しておいても良いし、後から異性化促進剤を晶析液に添加しても良い。
【0070】
これらの混合方法については、チアゾリルアラニン誘導体(3)及び光学分割剤と、晶析溶媒との組み合わせに応じて、上記反応晶析操作により得られる晶析スラリーの流動性、並びに、析出するジアステレオマー塩の光学純度を維持できるように、溶解度等の物性も考慮して適切に選択すれば良い。
【0071】
反応晶析の反応温度としては、反応混合物の沸点以下であれば特に制限されないが、一般に、温度が高いほど反応、特に、異性化を伴った分別晶析の場合の異性化は速やかに進行する。通常、30℃以上であり、好ましくは、40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、とりわけ、60℃以上が特に好ましい。
【0072】
反応晶析の反応時間としては、チアゾリルアラニン誘導体(3)、光学分割剤、及び、異性化剤の種類や使用量に依存するため、一律に規定することはできないが、通常、10〜100時間程度で、所望のものとは逆の立体配置を有するチアゾリルアラニン誘導体の異性化を充分進行させて、所望のジアステレオマー塩の収量を最大化することができる。
【0073】
反応晶析の反応濃度としては、反応混合物の流動性が確保できる範囲であれば特に制限されないが、一般に、濃度が高いほど晶析回収率が向上するため好ましい。特に、異性化剤を共存させて、不要なジアステレオマー塩の異性化を行う場合には、晶析母液中の不要なジアステレオマー塩を異性化(チアゾリルアラニン誘導体をラセミ化)して、所望のジアステレオマー塩の収量を向上させることができる。そのため、濃度を上げるほど、晶析母液中へのチアゾリルアラニン誘導体のロスを抑えて、晶析回収率だけでなく光学収率も向上させることができる。反応濃度は、通常、2〜50重量%であり、好ましくは、5〜40重量%であり、とりわけ、10〜30重量%が特に好ましい。
【0074】
このようにして得られた晶析スラリーは、更に、必要に応じて、一般的な晶析操作を適用することもできる。具体的には、晶析スラリーの流動性や析出したジアステレオマー塩の品質を整えるために撹拌下熟成しても良いし、冷却、濃縮、貧溶媒の添加等により溶解度を下げて、ジアステレオマーの収量を向上させることもできる。
【0075】
析出した光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と光学分割剤とからなるジアステレオマー塩は、ろ過、遠心分離等の一般的な固液分離操作を用いて分離することができる。分離した光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と光学分割剤とからなるジアステレオマー塩の湿潤固体は、更に、適当な溶媒で洗浄した後、そのまま、或いは、常圧下又は減圧下で乾燥した後に、次工程に供する。
【0077】
本工程では、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)の塩に、酸又は塩基を添加して解塩し、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)を単離する。上記塩が光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と光学分割剤とからなるジアステレオマー塩である場合には、酸又は塩基を添加して解塩し、光学活性チアゾリルアラニン誘導体と光学分割剤とを分離する。以下に、光学分割剤が酸性化合物の場合を例に挙げて説明する。
【0078】
ジアステレオマー塩の解塩のために用いる酸としては、上記光学分割剤と置き換わって光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と塩を形成(塩交換)するものであれば特に制限されない。通常、上記光学分割剤よりも酸性度の高い酸性化合物であれば、容易に塩交換が進行するため、好適に用いられる。
【0079】
また、ジアステレオマー塩の解塩のために用いる塩基としては、上記光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と置き換わって光学分割剤と塩を形成するものであれば特に制限されない。通常、上記光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)よりも塩基性度の高い塩基性化合物であれば、容易に塩交換が進行するため、好適に用いられる。
【0080】
上記解塩の反応溶媒としては、本発明の本質に悪影響がないものであれば特に限定されない。通常は、水を溶媒として実施されるが、悪影響のない範囲で有機溶媒を含んでいても良い。
【0081】
上記有機溶媒としては、解塩生成物である光学活性チアゾリルアラニン誘導体と光学分割剤とを分配するために、解塩反応溶液(水性媒体)と混和しない有機溶媒を用いるのが好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の脂肪酸エステル類等を挙げることができる。これらのなかでも、芳香族炭化水素類、エーテル類、および脂肪酸エステル類が好ましく用いられる。
【0082】
反応溶媒の量としては、反応混合物の流動性が確保できる範囲であれば特に制限されないが、水と親和性の高い光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)を単離するためには、水の量は必要最小限とするのが好ましい。水の量は、通常、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と光学分割剤とのジアステレオマー塩1重量部に対して10重量部以下であり、好ましくは5重量部以下であり、とりわけ3重量部以下が特に好ましい。
【0083】
一方、有機溶媒の量は、反応混合物の流動性が確保できる範囲であれば特に制限されないが、経済性の観点から必要最低限に押さえるのが好ましい。有機溶媒の量は、通常、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)と光学分割剤とのジアステレオマー塩1重量部に対して10重量部以下であり、好ましくは5重量部以下であり、とりわけ3重量部以下が特に好ましい。上記有機溶媒は、解塩反応の開始前から添加していても良いが、解塩反応、及び、後述する加水分解による光学活性チアゾリルアラニン誘導体の置換基の変換(修飾)が終了した後で、光学活性チアゾリルアラニン誘導体と光学分割剤を分別するために添加しても良い。
【0084】
上記解塩反応の温度としては、反応混合物の沸点以下とする。解塩と共に光学活性チアゾリルアラニン誘導体の置換基の変換を行う場合は、一般に、温度が高いほど反応は速やかに進行する。しかし、一方で、反応溶液をそのまま後工程に用いる等により、アルキリデン基の導入のために用いられたアルデヒドが光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)に残存している場合は、解塩時にラセミ化が伴うため、80℃以下で解塩反応を行うのが好ましい。より好ましくは、70℃以下であり、更に好ましくは60℃以下であり、50℃以下が特に好ましい。
【0085】
塩交換により形成された、光学活性チアゾリルアラニン誘導体の塩と光学分割剤、又は、光学分割剤の塩と光学活性チアゾリルアラニン誘導体は、水に対する親和性の違いを利用し、有機溶媒相と水相とに分配させる等して、両者を分別することができる。
【0086】
例えば、塩酸などのハロゲン化水素酸や硫酸等の鉱酸を用いた場合には、光学分割剤を遊離の酸として有機溶媒相に分配して、光学活性チアゾリルアラニン誘導体の鉱酸塩と分別することができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物等の強アルカリを用いた場合には、光学活性チアゾリルアラニン誘導体を遊離のアミンとして有機溶媒相に分配して、光学分割剤のアルカリ金属塩と分別することができる。
【0087】
従って、反応溶媒として水のみを用いた場合は、反応後に有機溶媒を添加するとよい。
【0088】
なお、光学活性チアゾリルアラニン誘導体が有機相に抽出された場合は、光学分割剤の塩を含む水相を分別した後、有機相に、水を加え、必要に応じてpHを酸性に調整することにより、光学活性チアゾリルアラニン誘導体の水溶液を得ることができる。
【0089】
上記解塩反応において、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)は、加水分解等により、置換基の修飾を受けることがある。例えば、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(2)がエステル化合物(即ち、前記式(2)におけるR
4が置換されていても良いアルコキシ基)である場合は、酸又は塩基の添加により加水分解されて、遊離のアミノ酸に変換される。従って、所望の光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)が遊離のアミノ酸(即ち、前記式(1)におけるR
1が水酸基)の場合には、解塩処理により、光学分割剤の分離と光学活性チアゾリルアラニン誘導体の置換基の変換(修飾)を同時に行うことができる。
【0090】
更には、解塩反応後に、得られた光学活性チアゾリルアラニンの置換基の変換(修飾)を積極的に行ってもよい。例えば、光学分割剤の種類によっては、第2工程の上記ジアステレオマー塩の解塩反応により生じた光学活性チアゾリルアラニン誘導体又はその塩との分別が困難な場合があるが、本願発明者らは、このような場合に、解塩反応により生じた光学活性チアゾリルアラニン誘導体の置換基を変換(修飾)することで、容易に光学分割剤と分離できることを見出した。例えば、解塩反応により生じた光学活性チアゾリルアラニン誘導体のアミノ基をウレタン型保護基で一旦保護して、下記式(5):
【0092】
で表される光学活性のN−保護−光学活性チアゾリルアラニン誘導体に変換することにより、光学分割剤を効率良く分離できること、並びに、光学分割剤を分離した後に脱保護することにより、容易に光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)に変換できることを見出した。以下に例を挙げて説明する。
【0094】
R
10は、水酸基、置換されていても良いアルコキシ基、又は置換されていても良いアミノ基を表す。
【0095】
R
10における置換されていても良いアルコキシ基としては、カルボニル基と結合してエステル化合物を形成するものであれば特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基。n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルキルオキシ基、ベンジルオキシ基、メチルベンジルオキシ基、フェニルエトキシ基等のアラルキルオキシ基、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、キシリルオキシ基等のアリールキルオキシ基、等が挙げられる。
【0096】
R
10における置換されていても良いアミノ基としては、カルボニル基と結合してアミド化合物を形成するものであれば特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基。n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、フェニル基、トルイル基、キシリル基等のアリール基、等の有機基が窒素原子上に結合した、1級又は2級アミノ基が挙げられる。具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アニリノ基、ジメチルアミノ基、ピロリジノ基、モルホリノ基、N−ベンジル−N−エチルアミノ基、N−エチルアニリノ基、等が挙げられる。これらの有機基は、更に1または2以上の置換基で置換されていても良い。
【0097】
R
10は、R
1およびR
4と同一であっても良いし、異なっていても良い。R
10がR
4と異なる場合は、チアゾリルアラニン誘導体のアミノ基にウレタン型保護基を導入する工程において、常法に従い、R
4を除去した後にR
10を導入しても良いし、R
4を除去せずに、そのままR
10へと変換しても良い。同様に、R
10がR
1と異なる場合は、N−保護−光学活性チアゾリルアラニン誘導体(4)のアミノ基のウレタン型保護基を脱保護する工程において、常法に従い、R
10を除去した後にR
1を導入しても良いし、R
10を直接R
1へと変換しても良い。
【0098】
R
11は、アミノ基のウレタン型保護基を表す。R
11における、アミノ基のウレタン型保護基としては、特に限定されず、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第2版(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 2nd Ed.)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY & SONS)出版(1991年)に記載されている保護基から選択することができる。一般に、取り扱いの容易さ、安価である点、基質化合物の合成面の便利さ等の観点から、例えば、炭素数1〜4の低級アルコキシカルボニル基、又は、置換されていても良い炭素数7〜10のアラルキルオキシカルボニル基が好ましく用いられるが、なかでも、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が好ましい。特に、脱保護の容易さから、t−ブトキシカルボニル基が好ましい。
【0099】
上記アミノ基のウレタン型保護基の導入及び脱保護の方法は、特に限定されず、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第2版(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 2nd Ed.)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY & SONS)出版(1991年)に記載されている方法を用いることができる。例えば、上記アミノ基のウレタン型保護基の導入方法としては、特に限定されないが、一般的には、アミノ基保護剤として、例えば、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸ベンジル等のクロロギ酸エステル類を用いて処理することにより、それぞれ、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基を導入する方法、若しくは、アミノ基保護剤として、例えば、ジtert−ブチルジカーボネート等のジカーボネート類を用いて処理することによりtert−ブトキシカルボニル基を導入する方法等を挙げることができる。
【0100】
以上のようにしてウレタン型保護基を導入したN−保護−光学活性チアゾリルアラニン誘導体(5)は、抽出や晶析等、光学分割剤との溶解度差を利用する処理を施すことにより、容易に光学分割剤と分離することが可能である。光学分割剤と分離したN−保護−光学活性チアゾリルアラニン誘導体(5)は、更に抽出、晶析、蒸留、或いは、クロマトグラフィー等の常法により単離、精製しても良いが、工業的生産における作業上、及び/又は、経済上の観点から、上記常法による単離、精製をすることなく、そのまま次の脱保護反応に用いても良い。
【0101】
N−保護−光学活性チアゾリルアラニン誘導体(5)におけるアミノ基のウレタン型保護基の脱保護方法としては、保護基の種類により好適な方法は異なるが、例えば、酸処理、塩基処理(アルカリ処理)、接触還元等を挙げることができる。これにより、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)を得ることができる。
【0102】
尚、本発明で用いる上記チアゾリルアラニン誘導体(3)としては、従来の技術として例示したものを含めて、種々の方法により製造することができるが、本発明の目的からは、このなかでも、工業的生産に適した方法を用いることが好ましい。
【0103】
例えば、比較的安価に入手可能な下記式(6):
【0105】
で表される4−ハロゲノメチルチアゾール又はその塩を、同じく比較的安価に入手可能な下記式(7):
【0107】
で表されるN−保護−アミノマロン酸エステルと反応させることにより、下記式(8):
【0109】
で表されるN−保護−アミノ−チアゾリルメチルマロン酸エステルに変換し、次いで、加水分解により脱保護、及び、脱炭酸した後にエステル化することにより、容易にチアゾリルアラニンエステルに変換することができる。
【0110】
ここで、Xは、塩素、臭素等のハロゲン原子を表す。
【0111】
R
12は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基を表す。R
12としては、N−保護−アミノマロン酸エステルの入手容易性、除去及び置換が容易で変換の自由度が高いこと等から、アルキル基が好ましく、なかでも、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0112】
R
13は、アミノ基の保護基を表す。R
13としては、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第2版(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 2nd Ed.)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY & SONS)出版(1991年)に記載されているアミノ基の保護基から選択することができるが、N−保護−アミノマロン酸エステルの入手が容易なこと、脱保護が容易であること等から、アシル型又はウレタン型保護基が好ましく、なかでも、アセチル基等のアシル型保護基が好ましい。
【0113】
次に、本願の第2の発明について説明する。
【0114】
第2の発明では、酸または塩基を含む、前記式(1)で表される光学活性チアゾリルアラニン誘導体の水溶液と、塩基又は酸とを混合することにより、水溶液中の酸又は塩基を中和して水に可溶な塩に変換しつつ、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)を当該溶液から析出させる。この様に簡便な操作により、以前の工程で使用した試剤や副生した不純物を除去すると共に、光学活性チアゾリルアラニン(1)を結晶として取得することができる。
【0115】
第2の発明に用いる上記光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)としては、前記第1の発明の製法や、その他各種製法により調製された光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)を特に限定されることなく用いることができる。
【0116】
上記光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)の水溶液は、例えば、第1の発明の第2工程で得られた解塩反応により得られた水溶液をそのまま用いても良い。また、ウレタン保護基を導入して光学分割剤との分離処理を行った場合は、脱保護反応後の水溶液をそのまま用いてもよい。なお、上記光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)の水溶液は、悪影響のない範囲で有機溶媒を含んでいても良い。
【0117】
また、不純物の除去や脱色を目的として、必要に応じて、活性炭、活性白土、合成吸着剤等で処理することにより、着色成分や臭気成分などの不純物類を吸着除去しても良い。その他にも、不溶性の不純物を濾過により除去しても良いし、水と相溶性のない有機溶媒により当該水溶液を洗浄しても良い。これらのなかでも、着色成分の除去には、活性炭処理が特に効果的であり、好適に用いられる。
【0118】
中和に用いる酸としては、特に制限されず、例えば、塩酸等のハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸類、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、トリフルオロ酢酸、安息香酸等のカルボン酸類、等が挙げられる。なかでも、塩基との中和により生じる塩の溶解性が高いことから、塩酸等のハロゲン化水素酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸類、又は、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸類が特に好適に用いられる。
【0119】
中和に用いる塩基としては、特に制限されず、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム等の塩基性リチウム化合物、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の塩基性ナトリウム化合物、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の塩基性カリウム化合物等の塩基性アルカリ金属化合物、トリエチルアミン、アニリン、ピリジン等のアミン類、アンモニア等を挙げることができる。なかでも、酸との中和により生じる塩の溶解性が高いことから、水酸化リチウム、炭酸リチウム等の塩基性リチウム化合物、又は、トリエチルアミン等のアミン類が特に好適に用いられる。
【0120】
次に、酸または塩基を含む光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)の水溶液と、塩基又は酸とを混合することにより、水溶液中の酸又は塩基を、上記水に可溶な塩に変換しつつ、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)を当該溶液から析出させる方法について述べる。
【0121】
塩基又は酸による中和処理を行う際に、例えば、水量が少なく水溶液の流動性が悪い場合には、上記中和処理を行う前に、上記溶液を流動化するのに必要な水量となるまで水を添加する。
【0122】
上記中和処理は、水性溶液を弱酸性〜中性の範囲、具体的には、上記光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)の等電点付近に調整するのが好ましい。光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)の種類により一律に規定することは出来ないが、通常、pH4〜7付近に調整するのが好ましい。
【0123】
上記中和処理において、酸又は塩基の添加は、一般に、時間をかけた方が、晶析スラリーの流動性や分離性、並びに、精製効果が向上する傾向にあるので、生産性の観点から支障のない範囲で、出来るだけ長時間かけて添加するのが好ましい。
【0124】
なお、上記光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)は、塩基性水溶液ではチアゾール環の分解やα−アミノ基の酸化が起こりやすく不安定である。このため、酸性水溶液で取り扱うのがより好ましい。従って、上記光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)を中和晶析する場合には、酸性水溶液を塩基で中和するのが好適である。
【0125】
しかし、本発明者らの検討により、水溶液の液性が強酸性の場合は比較的安定であるのに対して、酸性〜弱酸性の場合は着色が見られる等、比較的不安定であることが分かった。このことは、上記光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)の強酸性水溶液を塩基で中和して晶析する際、特に操作時間が長くなる実機生産においては問題になる可能性がある。
【0126】
本発明者らがこの点について検討した結果、酸性〜弱酸性領域での安定性が温度に依存することを見出した。従って、上記光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)の水溶液が不安定な酸性〜弱酸性領域で操作することとなる場合、上記光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)の強酸性水溶液を塩基で中和する操作を、低温に維持するのが好ましい。
【0127】
上記塩基での中和の際の温度は、特に結晶が析出する前は、通常25℃以下、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下に維持する。なかでもpH1〜4、特に結晶が析出する前のpH1〜2の領域を10℃以下の低温に維持するのが好ましい。
【0128】
また、光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)の溶解性が低い水溶性の有機溶媒、なかでも、水と相溶性の高い有機溶媒を共存させることにより、水との親和性が高い光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)の溶解量を低下させ、析出量を増大させることが可能である。
【0129】
上記有機溶媒の好適な例としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール等のアルコール類等を挙げることができる。なかでも、水と相溶性の高い有機溶媒が特に好ましい。具体的には、エーテル類としてはテトラヒドロフラン、又は、1,4−ジオキサンが特に好ましく、ケトン類としてはアセトンが特に好ましく、アルコール類としてはメタノール、又は、エタノール、又は、イソプロパノールが特に好ましい。特に、アルコール類が好ましい。
【0130】
これらの溶媒は、単一で使用しても、2種以上を混合して使用しても良い。上記有機溶媒の使用量としては、一律に規定することはできないが、通常、水1重量部に対して0〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.2〜5重量部である。
【0131】
有機溶媒の添加順序は得に制限されず、pHを調製した後、有機溶媒を添加しても良いし、予め添加した後、pHを調整しても良い。言うまでもなく、これらの有機溶媒は、前工程で使用した有機溶媒をそのまま溶媒置換することなく使用する場合を含む。
【0132】
このようにして得られた晶析スラリーは、更に、必要に応じて、冷却等通常の晶析操作において用いられる析出量を増大させるための操作を制限されずに用いることができる。
【0133】
析出した光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)の分離においては、濾過、遠心分離等の一般的な固液分離操作を用いて分離することが出来る。分離した光学活性チアゾリルアラニン誘導体(1)の湿潤固体は、更に、上記水と相溶性のある有機溶媒、又は、上記水と相溶性のある有機溶媒と水との混合溶媒等を用いて洗浄した後、常圧下、又は、減圧下で水等の溶媒を除去することができる。
【0134】
以上のように、第2の本発明によれば、簡便な操作により、以前の工程で使用した試剤や副生した不純物を除去することができる。特に、活性炭等の吸着剤処理により着色成分を除去すると共に、中和晶析中の分解による着色を中和時の温度管理により抑制して、着色のない高純度の光学活性チアゾリルアラニン(1)を結晶として取得することができる。
【実施例】
【0135】
以下に例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0136】
尚、3−(4−チアゾリル)アラニンおよびその誘導体の光学純度は、HPLC[カラム:CROWNPAK CR(+) 4mmI.D.×150mm 粒径5μm(ダイセル社製)、移動相:過塩素酸水溶液(pH1.5)、流速:0.5ml/min、検出波長:254nm、カラム温度:20℃]にて測定した。
【0137】
(実施例1) 3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・L−酒石酸塩の合成
3−(4−チアゾリル)−D,L−アラニンエチルエステル2.00gを含有する酢酸エチル溶液20.0gに光学分割剤としてL−酒石酸1.57gを加え、サリチルアルデヒド0.12gを添加して、窒素雰囲気下、60℃で12時間撹拌した。この溶液を0℃まで冷却し、ヘキサン20mlを1時間かけて滴下した後に同温度で1時間熟成し、結晶をろ過した。ヘキサン10mlで洗浄し、減圧乾燥して、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・L−酒石酸塩の結晶2.98gを得た。光学純度は83%eeであった。
【0138】
(実施例2) 3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−アセチル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の合成
3−(4−チアゾリル)−D,L−アラニンエチルエステル2.00gを含有する酢酸エチル溶液20.0gに光学分割剤としてN−アセチル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン2.20gを加え、サリチルアルデヒド0.12gを添加して、窒素雰囲気下、60℃で12時間撹拌した。この溶液を0℃まで冷却し、同温度で1時間熟成した後に、結晶をろ過した。0℃に冷却した酢酸エチル10mlで洗浄し、減圧乾燥して、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−アセチル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の結晶3.48gを得た。光学純度は98%eeであった。
図1に、本実施例で得られた化合物の
1H−NMR[400MHz、CDCl
3/DMSO−d
6=2/1]のスペクトルを示す。
【0139】
(実施例3) 3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−アセチル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の合成
3−(4−チアゾリル)−D,L−アラニンエチルエステル2.00gを含有するエタノール溶液10.0gに光学分割剤としてN−アセチル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン2.20gを加え、サリチルアルデヒド0.12gを添加して、窒素雰囲気下、40℃で13時間撹拌した。この溶液を0℃まで冷却し、同温度で1時間熟成した後に、結晶をろ過した。0℃に冷却したエタノール10mlで洗浄し、減圧乾燥して、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−アセチル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の結晶2.78gを得た。光学純度は98%eeであった。
【0140】
(実施例4) 3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の合成
N−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン3.01gを光学分割剤として使用する以外は、実施例3と同様に実施したところ、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の結晶3.46gを得た。光学純度は96%eeであった。
【0141】
(実施例5) 3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の合成
3−(4−チアゾリル)−D,L−アラニンエチルエステル2.00gを含有するアセトニトリル溶液20.0gに光学分割剤としてN−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン3.01gを加え、サリチルアルデヒド0.12gを添加して、窒素雰囲気下、40℃で40時間撹拌した。この溶液を0℃まで冷却し、同温度で1時間熟成した後に、結晶をろ過した。0℃に冷却したアセトニトリル10mlで洗浄し、減圧乾燥して、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の結晶4.14gを得た。光学純度は97%eeであった。
【0142】
(実施例6) 3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の合成
3−(4−チアゾリル)−D,L−アラニンエチルエステル2.00gを含有する酢酸エチル溶液20.0gに光学分割剤としてN−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン3.01gを加え、サリチルアルデヒド0.12gを添加して、窒素雰囲気下、60℃で80時間撹拌した。この溶液を0℃まで冷却し、同温度で1時間熟成した後に、結晶をろ過した。0℃に冷却した酢酸エチル10mlで洗浄し、減圧乾燥して、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の結晶4.33gを得た。光学純度は97%eeであった。サリチルアルデヒドは検出されなかった。
図2に、本実施例で得られた化合物の
1H−NMR[400MHz、CDCl
3/DMSO−d
6=2/1]のスペクトルを示す。
【0143】
(実施例7) N−o−ヒドロキシベンジリデン−3−(4−チアゾリル)−D−アラニンエチルエステル・N−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の合成
実施例3で得られた、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−アセチル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の結晶1.03g(98%ee)に、酢酸エチル20ml、水5mlおよび濃塩酸0.50gを加えて混合し、分液して水層を得た。更に、酢酸エチル30mlおよびトリエチルアミン0.50gを加えて混合し、分液して有機層を得た。減圧濃縮後、サリチルアルデヒド0.30g、酢酸エチル50mlを添加して、減圧下に濃縮乾固した。これを酢酸エチルに再溶解して10.0gに調整し、光学分割剤としてN−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン0.75gを加え、更にトルエン10mlを加えて結晶化させた。この溶液を、25℃で1時間撹拌、熟成後に結晶をろ過したところ、N−o−ヒドロキシベンジリデン−3−(4−チアゾリル)−D−アラニンエチルエステル・N−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の結晶0.62gを黄色固体として得た。光学純度は86%eeであった。
【0144】
また、上記晶析母液を50℃で14時間撹拌したところ、更に結晶が析出したため、これもろ過したところ、N−o−ヒドロキシベンジリデン−3−(4−チアゾリル)−D−アラニンエチルエステル・N−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の結晶0.33gを黄色固体として得た。光学純度は98%eeであった。
図3に、本実施例で得られた化合物の
1H−NMR[400MHz、CDCl
3/DMSO−d
6=2/1]のスペクトルを示す。
【0145】
(実施例8) 3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−tert−ブチルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の合成
3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル2.00gを含有するアセトニトリル溶液20.0gに光学分割剤としてN−tert−ブチルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン2.80gを加え、サリチルアルデヒド0.12gを添加して、窒素雰囲気下、60℃で12時間撹拌した。この溶液を0℃まで冷却し、同温度で1時間熟成した後に、結晶をろ過した。0℃に冷却したアセトニトリル10mlで洗浄し、減圧乾燥して、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−tert−ブチルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の結晶3.87gを得た。光学純度は98%eeであった。
【0146】
(実施例9) 3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の合成
3−(4−チアゾリル)−D,L−アラニンエチルエステル2.00gを含有する酢酸エチル溶液20.0gに光学分割剤としてN−ベンジルオキシカルボニル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン3.16gを加え、サリチルアルデヒド0.12gを添加して、窒素雰囲気下、60℃で12時間撹拌した。この溶液を0℃まで冷却し、同温度で1時間熟成した後に、結晶をろ過した。0℃に冷却した酢酸エチル10mlで洗浄し、減圧乾燥して、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−ベンジルオキシカルボニル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の結晶2.91gを得た。光学純度は95%eeであった。
図4に、本実施例で得られた化合物の
1H−NMR[400MHz、CDCl
3/DMSO−d
6=2/1]のスペクトルを示す。
【0147】
(実施例10) 3−(4−チアゾリル)−L−アラニンの合成
実施例6で得られた、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・N−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン塩の結晶3.89gに、水3.89gおよび濃塩酸2.1gを加え、これに酢酸エチル17mlを添加した。有機層を分液して、得られた水層に、水酸化リチウム・一水和物1.34gを加えて中和し、50℃で12時間撹拌した。得られた水溶液を25〜30℃に維持して、濃塩酸を添加してpHを6に調整した後、40℃以下で7.95gまで減圧濃縮したところ、結晶が析出した。同温度で1時間かけてエタノール16mlを滴下した後0℃まで冷却し、同温度で1時間熟成した。析出した結晶をろ過し、0℃に冷却したエタノール5mlで洗浄し、減圧乾燥して、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンの結晶1.07gを白色の固体として得た。N−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシン、並びに、3−(4−チアゾリル)−D−アラニンは検出されなかった(光学純度100%ee)。
【0148】
(実施例11) 3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・L−酒石酸塩の合成
L−酒石酸15.7g、サリチルアルデヒド1.2g、イソプロパノール80.0gからなる溶液に、窒素雰囲気下、60℃で撹拌しながら、3−(4−チアゾリル)−D,L−アラニンエチルエステル20.0gを含有する酢酸エチル溶液100.0gを1時間かけて滴下したところ、結晶が析出した。続いて、得られた晶析溶液を同温度で18時間撹拌した。析出した結晶少量をサンプリングして分析した結果、光学純度が97%eeであった。この溶液を6時間かけて0℃まで冷却し、同温度で1時間熟成した後に、結晶をろ過した。0℃に冷却したイソプロパノール50mlで洗浄して、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・L−酒石酸塩の湿結晶43.7g(純分31.5g)を得た。光学純度は97%eeであった。サリチルアルデヒドは検出されなかった。3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・L−酒石酸塩の湿結晶4.01gを減圧乾燥して、乾燥晶2.89gを得た。
図5に、本実施例で得られた化合物の
1H−NMR[400MHz、CDCl
3/DMSO−d
6=2/1]のスペクトルを示す。
【0149】
(実施例12) 3−(4−チアゾリル)−Lアラニンの合成
実施例11で得られた3−(4−チアゾリル)−L−アラニンエチルエステル・L−酒石酸塩の湿結晶38.8g(純分28.0g)に、水46.2gおよび30%水酸化ナトリウム水溶液3.31gを加え、50℃で1時間撹拌した。得られた水溶液に、テトラヒドロフラン8.4gを添加し、20±5℃、pH10を維持して、ジ−tert−ブチル−ジカーボネート18.3gを1時間かけて滴下し、同条件で更に10時間撹拌した。反応の進行に伴いpHが低下するため、30%水酸化ナトリウム水溶液にてpHを調整した。反応終了後に静置したところ、2層に分液した。下層を抜き取り、これにトルエン50.4g、水28.0gを加え、10℃以下を維持しながら、濃塩酸でpH3に調整した。25℃で分液して水層を除去し、得られた有機層を更に水42gで洗浄して、N−tert−ブトキシカルボニル−3−(4−チアゾリル)−L−アラニン20.7gを含有するトルエン溶液106.1gを得た。L−酒石酸は検出されなかった。
【0150】
続いて、得られたトルエン溶液104.7g(純分20.4g)に、水15.7gを添加して55℃に温調し、撹拌下、濃塩酸15.6gを3時間かけて滴下し、次いで同温度で1時間反応を継続した。得られた反応液に水16.3gを添加し、分液して淡黄色の水溶液63.8gを得た。これに活性炭(白鷺A2)1.22gを加え、40℃で1時間撹拌した後にろ過し、水8.2gで洗浄して、12.9gの3−(4−チアゾリル)−L−アラニンを含有する、無色の水溶液71.9gを得た。
【0151】
この水溶液64.7g(純分11.6g)に、30℃以下を維持してトリエチルアミン1.36gを2時間かけて滴下してpH6.1に調整したところ、結晶が析出した。次いで、同温度でイソプロパノール140gを1時間かけて滴下し、25℃で1時間熟成した。更に、この溶液を2時間かけて0℃まで冷却し、同温度で1時間熟成した後に、析出した結晶をろ過し、イソプロパノール/水=9/1(重量比)の混合溶媒25gで洗浄し、減圧乾燥して、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンの結晶10.8gを白色の固体として得た。3−(4−チアゾリル)−D−アラニンは検出されなかった(光学純度100%ee)。
【0152】
(比較例1)
実施例10と同様の方法にて得られた、13.0gの3−(4−チアゾリル)−L−アラニンを含有する無色の水溶液73.8gに、50℃下でトリエチルアミン1.55gを2時間かけて滴下してpH6.1に調整したところ、反応液が黄褐色に着色した。次いで、25℃でイソプロパノール160gを1時間かけて滴下し、25℃で1時間熟成した。更に、この溶液を2時間かけて0℃まで冷却し、同温度で1時間熟成した後に、析出した結晶をろ過し、イソプロパノール/水=9/1(重量比)の混合溶媒25gで洗浄し、減圧乾燥して、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンの結晶11.9gを得た。3−(4−チアゾリル)−D−アラニンは検出されなかった(光学純度100%ee)が、結晶が褐色に着色していた。
【0153】
(実施例13) 3−(4−チアゾリル)−Lアラニンの再精製
比較例1で得られた3−(4−チアゾリル)−L−アラニンの結晶8.61gに、水24.0gおよび濃塩酸10.29gを加えて、淡褐色の水溶液を得た。これに活性炭(白鷺A2)0.81gを加え、40℃で1時間撹拌した後にろ過し、水5.5gで洗浄して、無色の水溶液47.9gを得た。
【0154】
この水溶液に、30℃以下を維持してトリエチルアミン0.91gを2時間かけて滴下してpH6.0に調整したところ、結晶が析出した。次いで、同温度でイソプロパノール93gを1時間かけて滴下し、25℃で1時間熟成した。更に、この溶液を2時間かけて0℃まで冷却し、同温度で1時間熟成した後に、析出した結晶をろ過し、イソプロパノール/水=9/1(重量比)の混合溶媒17gで洗浄し、減圧乾燥して、3−(4−チアゾリル)−L−アラニンの結晶7.56gを白色の固体として得た。
【0155】
(実施例14) N−フェニルカルバモイル−D−p−ヒドロキシフェニルグリシンの合成
D−p−ヒドロキシフェニルグリシン100gに、水300g、30%水酸化ナトリウム水溶液158.6gを加え、5℃で撹拌して透明な溶液を得た(pH12.1)。この溶液に、5〜10℃を維持しながら、フェニルイソシアネート71.2gを2時間かけて滴下し、同温度で2時間反応を継続した。得られた反応液に濃塩酸118.9gを加えてpH2.5に調整し、酢酸エチル500mlで抽出した。得られた有機層を、水100mlで洗浄した後に、40℃以下で273gまで減圧濃縮した後、25℃でトルエン200mlを2時間かけて滴下したところ、結晶が析出した。同温度で2時間熟成した後、析出した結晶をろ過し、トルエン150mlで2回洗浄し、減圧乾燥して、表題の化合物118.69gを褐色の固体として得た。