(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の小型発電機における好適な実施の形態について、
図1から
図11を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
複数pの永久磁石412を備え回転体(ハブ本体31、回転軸6)に固定されるロータ41と、回転体31、6の軸心を中心として円筒状に巻回されたコイル422と、ロータ41の永久磁石412の磁極方向の両側に所定間隔を隔てて対向配置された第1磁極部431と第2磁極部434、及び、コイル422内を通り第1磁極部431と第2磁極部434とを接続する接続部とを有する磁路形成部43と、を備える。
そして、ロータ41は、複数の永久磁石412が、各々の磁極の方向が周回り方向で交互になるように配設され、コイル422は、ロータ41に対して軸方向に所定間隔をおいて固定配置されたコイルボビン421に巻回され、磁路形成部43の第1磁極部431と第2磁極部434は、ロータ41を挟んで対向配置されたp/2個の磁極歯433、436が等間隔で周回り方向に配設される。
【0013】
(2)実施形態の詳細
図1は第1実施形態における小型発電機を、自転車のハブに内装した場合の断面構成を表したものである。
図1に示すように、ハブ軸1に軸受2を介してハブ体3が回転自在に配設され、このハブ体3内に本実施形態における小型発電機4が配設されている。
ハブ軸1は、その両端にねじ11、11が形成されており、このねじ11、11にナット12、12を螺号することで、内側(ハブ軸1の軸方向の中央側)の座金13、13と、外側(端部側)の座金14、14の間に配設した本体リブ5、5が固定されるようになっている。
なお、以下では各部材の個数分の符号を記すことなく、符号を1つだけ記載することとするが、各部材の個数は図示の通りである。
【0014】
ハブ軸1の両側には、座金13の更に内側に軸受2を介してハブ体3が回動自在に配設されている。
すなわち、軸受2の外輪21がハブ体3に固定され、内輪22がハブ軸1に固定されている。ハブ体3と外輪21は、ボール23を介し、ハブ軸1及びハブ軸1に固定された本体リブ5に対して回動する。
【0015】
ハブ体3は、ハブ本体31と本体側面部32とから構成されている。
ハブ本体31は、本体側面部32と本体円筒部33と、本体円筒部33の両端に径の外側方向に張り出して形成されたハブ鍔34とを備え、これら各部は一体形成されている。
ハブ鍔34には、図示しない車輪のスポークを取り付ける複数のスポーク孔35が形成されている。
本体側面32は、円環形状をしており、本体円筒部33の一方の端部に形成されている。本体側面部32の、円環形状内側(本体円筒部33と反対側の端部)には、一方の軸受2(図面では左側の軸受2)の外輪21が固定されている。
【0016】
ハブ体3のハブキャップ36は、ハブ本体31の開放端側(本体円筒部33の本体側面部32と反対側)に固定される円環形状部を備えており、この円環形状部の内側には、軸受2の他方(図面では右側)の外輪21が固定されている。
ハブキャップ36の円環形状部の外周阿側には、ハブ本体31の内径よりも外径が小さく形成され、ハブ本体31内に収容されるロータ固定筒37が一体形成されている。
【0017】
ハブ体3の内側には、本実施形態における小型発電機4が収容されている。
以下、第1実施形態における小型発電機4の構成について、
図1の断面図に加えて、
図2の分解斜視図を参照しながら説明する。
小型発電機4は、ロータ41とコイルユニット42(
図2)、磁路形成部43(
図1)、及び点消灯切替部材45(
図2)を備えており、
図1、2に示されるように、各部材はその中心がハブ軸1の軸心15と一致するように、ハブ軸1の外周に対して固定又は回動可能に配設される。
なお、点消灯切替部材45は、後述するように、消灯時における鉄損の発生を回避することで車輪の回転付加の増加を防止するための構成であるが、当該部材の重さ分だけ重量増となるため、配設しない構成の小型発電機4とすることも可能である。
【0018】
ロータ41は、円環板状の環状部材411と永久磁石412から構成されている。
環状部材411は、SUS303又はアルミニウムで形成され、その外周面において、ロータ固定筒37の内側に固定されている。なお、ハブキャップ36にロータ固定筒37を設けず、環状部材411をハブ本体31の内周面に固定する構造とすることも可能である。
環状部材411には、軸心15を中心とする同心円上に、円形の貫通孔がp個(極数pに対応)等間隔に形成されている。
本実施形態では、極数12であり、環状部材411の軸心15と直交する一方の面における磁極が交互になるように永久磁石412が挿入されている。すなわち、一方の面側がN極で他方の面側がS極となる向きで挿入した永久磁石412の両側の永久磁石412は、一方の面側がS極で他方の面側がN極となる向きで挿入される。
このように、ロータ41は、軸心15と平行な方向(アキシャル方向)の磁極を有することになる。
【0019】
本実施形態で使用される永久磁石412は、各種の永久磁石を使用することができる。例えば、Nd(ネオジウム)・Fe(鉄)・B(ボロン)を主成分とするネオジム磁石、フェライト磁石(異方性、等方性)、サマリウムコバルト磁石などが使用される。
【0020】
コイルユニット42は、磁路形成部43と共に小型発電機4のステータを構成する。
コイルユニット42は、円筒部とその両端の円環板からなるコイルボビン421を備え、このコイルボビン421の円筒部にコイル422が巻回されている。
コイルユニット42は、ロータ41の内側ではなく、
図1に示されるように、軸方向(軸心15の方向)に並べて配置しているので、小型発電機4の外径を小さくし小型化すると共に、小型発電機4を収容するハブ体3の径を小さくすることができる。
コイルユニット42に巻回されたコイル422は、後述する磁路形成部43に形成された貫通孔(図示しない)及び、ハブ軸1に形成した凹部を通り、リード線423として本体リブ5に配設される自転車用ライトに接続されている。
【0021】
磁路形成部43は、第1磁極部431、第2磁極部434、第1円筒部437、第2円筒部438、連結部439により、永久磁石412の磁束がコイル422を鎖交するための磁路を形成する。
磁路形成部43は、ハブ軸1に挿通された筒状押え部材44により、一方の側の軸受2(
図1では左側)から所定間隔が保持されていることで、第1磁極部431とロータ41間のギャップが形成されるようになっている。
一方、第2磁極部434は、後述する円筒部452の所定位置に固定することで、ロータ41間のギャップが形成されるようになっている。
【0022】
磁路形成部43は、ロータ41の軸方向の両側において所定ギャップを設けて挟むように第1磁極部431と第2磁極部434が対向配置されている。
そして、第1磁極部431の外周端部と第1円筒部437の一端が接続され、第1円筒部437の他端が円環板状をした連結部439の外側周端と接続され、連結部439の軸心側周端が第2円筒部438の一端と接続され、第2円筒部438の他端が第2磁極部434と接続されている。
以上の磁路形成部43は、第2円筒部438の他端と第2磁極部434との接続を除き、他の接続箇所は互いに固定されることにより、又は一体形成されることにより接続されている。そして、後述するように非発電時において第2磁極部434が回動する構成とするために、第2円筒部438の他端面と第2磁極部434の第2円環部435とは、摺動可能に接触配置されている。第2円筒部438の他端面は第2磁極部434との接触面積を確保するために、反対側よりも外径が大きく形成されている。
なお、磁路形成部43は、コイル422の外周側に配置される第1円筒部437、内周側に配置される第2円筒部438、及び側面に配置される連結部439により、第1磁極部431と第2磁極部434とを接続する接続部を構成する。
【0023】
第2円筒部438の内側にはハブ軸1が挿通され、第2円筒部438がハブ軸1に固定される。また第2円筒部438は、コイルボビン421の円筒部内に挿通され、コイルボビン421が第2円筒部438に固定されている。
コイルユニット42の外周側には、所定間隔を隔てて第1円筒部437が配置される。 そして、第1円筒部437と第2円筒部438とが連結部439で連結されることで、コイルユニット42を収容するドーナツ型のコイル室が形成されている。
コイルボビン421は、軸方向両端に形成された円環板の一方が連結部439と接し、他方が第1磁極部431と接することで挟み込まれている。
【0024】
第1磁極部431は、
図2に示されるように、ロータ41の外径よりも僅かに小さい外径の環状部材432と、この環状部材432から径方向内側(中心方向)に向けて等間隔で突出したm個の第1磁極歯433とを備えている。mの値は極数pに対して、m=p/2である。
環状部材432の軸心方向に突出した第1磁極歯433の各先端は、軸心15を中心としロータ41の内径と略同一半径の第1仮想円まで突出している。第1磁極歯433の先端は半円形状に形成されているが、方形であっても良く、上記第1仮想円に沿った形状であってもよい。
【0025】
一方、第2磁極部434は、外径が上記第1仮想円と略同一の第2円環部435と、この第2円環部435から径方向外側に向けて等間隔で突出したm個の第2磁極歯436とを備えている。
第2磁極歯436の先端部は、軸心15を中心とし、ロータ41の外径よりも僅かに小さい半径の第2仮想円まで突出している。
第2円環部435の内径は、後述する点消灯切替部材45を設ける場合には円筒部452に固定される大きさに、設けない場合にはハブ軸1に固定する大きさに形成される。
【0026】
各第1磁極歯433は、ロータ41を介して、各第2磁極歯436の何れか1つと対向するように、第1磁極部431と第2磁極部434の周方向の取り付け角が調整配置される。
すなわち、各第1磁極歯433の中心を通り軸心15と平行なm本の第1仮想線(図示しない)と、各第2磁極歯436の中心を通り軸心15と平行なm本の第2仮想線(図示しない)とが一致する。
なお、以上の第1磁極歯433と第2磁極歯436の周方向の位置関係は、点消灯切替部材45を取り付けない場合の位置関係、及び、点消灯切替部材45を取り付ける場合には後述するように発電する場合の位置関係である。
【0027】
図2に示すように、点消灯切替部材45は、磁極部回動手段として機能し、円盤部451、円筒部452、ハンドル部453を備えている。
円盤部451の中心には円形孔が形成され、この円形孔部分で円筒部452の一端側に固定又は一体形成されている。円盤部451と円筒部452内には、ハブ軸1が摺動自在に挿通されている。
円筒部452の他端側(円盤部451と反対側の端部)には、第2磁極部434が固定されている。
ハンドル部453は、円筒部452に固定又は一体形成されている。この453をハブ軸1を中心とした周方向に移動させることで、円盤部451と円筒部452を介して、円筒部452に固定されている第2磁極部434が周方向に回動するようになっている。
点消灯切替部材45は、発電状態と非発電状態を切り替えるための部材であり、軸心15を回転軸として、ハンドル部453の操作により、角度2π/p(pは極数)の範囲で動くようになっている。ここでπの単位はラジアンである(以下同じ)。
【0028】
図1に示すように、円筒部452と共にハブ軸1に挿通した円盤部451の両側には、円盤部451の回動を滑らかにするために、軸受2の外輪22との間に内座金454が配設され、本体リブ5を固定するための座金13との間に外座金455が配設されている。
【0029】
以上のように構成された小型発電機4を使用し、発電を行う際の磁化状態について
図3を使用して説明する。
自転車の走行により車輪が回転すると、スポーク孔35に取り付けたスポークを介してハブ本体31が回転し、ハブ本体31に取り付けたロータ41も回転する。
この際、ステータを構成するコイルユニット42と磁路形成部43は、ハブ軸1に対して直接又は間接に固定されており、ハブ軸1は自転車の本体リブ5に固定されているので、コイルユニット42と磁路形成部43はハブ軸1と共に回転しない。
【0030】
そして、
図2に示すように、第1磁極歯433と第2磁極歯436は、永久磁石412による極数pに対してm=p/2個等間隔に形成されている。
そのため、
図3(a)に示すように、或る瞬間において、全ての第1磁極歯433が永久磁石412のN極と対向し、全ての第2磁極部434がS極と対向した状態となる。すなわち、全p個の永久磁石412のうちの1つ置きの永久磁石412、すなわち、磁極方向が同じである永久磁石412p/2個が、第1磁極歯433及び第2磁極歯436と対向する。
この場合、
図3(a)に矢印で示したように、永久磁石412の磁束は、N極→第1磁極部431→第1円筒部437→連結部439→第2円筒部438→第2磁極部434→S極の方向に流れ、第2円筒部438部分でコイル422に鎖交する。
【0031】
一方、
図3(a)の状態から、ロータ41が角度2π/pだけ回転すると、
図3(b)の状態に変化し、
図3(a)の状態で各第1磁極歯433の間に存在していた、磁極が逆向きの永久磁石412のそれぞれが、第1磁極部431と第2磁極部434と対向することになる。
この状態では、
図3(b)に矢印で示したように、永久磁石412の磁束は、N極→第2磁極部434→第2円筒部438→連結部439→第1円筒部437→第1磁極部431→S極の方向に流れ、第2円筒部438部分でコイル422に鎖交する。
【0032】
以上のように、自転車の走行に伴い、車輪及びロータ41、永久磁石412が回転すると、
図3(a)の状態と
図3(b)の状態を、両者の中間状態を経ながら繰り返すことで発電が行われる。
【0033】
次に、小型発電機4による発電を行わない場合について説明する。
発電が不要である場合、点消灯切替部材45の位置を発電位置から非発電位置まで移動することで、円筒部452に固定されている第2磁極部434を回転させる。この第2磁極部434の回転角は、2π/p(=π/m)である。
このため、点消灯切替部材45が発電位置にある場合に、各第1磁極歯433の中心を通る第1仮想線と、各第2磁極歯436の中心を通る第2仮想線とが一致していたのに対し、点消灯切替部材45を非発電位置に移動させると、第2仮想線は2本の第1仮想線の中央に移動する。
すなわち、発電時において第1磁極歯433と第2磁極歯436がロータ41を介して互いに対向配置されていたのに対し、非発電時には、各第2磁極部434は、第1磁極歯433の間に位置する。
このため、第1磁極歯433が永久磁石412のN極と対向している場合、第2磁極歯436は、第1磁極歯433が対向していない永久磁石4のN極と対向することになり、ロータ41の回転によっても磁路形成部43に磁束が流れず、車輪の回転負荷が増加することが回避される。
【0034】
次に小型発電機4の第2実施形態から第4実施形態について
図4から
図6を使用して説明する。
この第2〜第4実施形態では、第1実施形態で説明した1つの小型発電機4を発電機単体とし、2つの小型発電機4をハブ体3内に配置したものである。
発電機単体1(以下小型発電機4という)を複数配置し各々のコイル422を直列に接続することで高い電圧を得ることができる。
なお、以下の説明では小型発電機4を2つ配置する場合について説明するが、収容可能であれば3つ以上の小型発電機4を配置するようにしてもよい。
以下に説明する第2〜第4実施形態では、小型発電機4を配置するハブ軸1、軸受2、ハブ体3、本体リブ5等については第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0035】
図4は、第2実施形態における小型発電機4の断面構成を表したものである。
第1実施形態における小型発電機4は、ハブ体3内に1つ配置したのに対し、第2実施形態では軸方向に2つの小型発電機4aと小型発電機4bを同じ向きで配置したものである。
なお、第1実施形態の小型発電機4では、リード線423を連結部439に形成した貫通孔を通すようになっているが、この第2実施形態ではリード線423aは第2円筒部438aの貫通孔を、リード線423bは第2円筒部438bの貫通孔をそれぞれ通り、更に、ハブ軸1に設けた軸方向の凹部内を通って、本体リブ5まで導かれている。
但し、第1実施形態、第2実施形態、後述する第3、第4実施形態においても、リード線423を通す貫通孔は連結部439、第2円筒部438の何れでも良く、また、第1円筒部437に形成するようにしてもよい。
【0036】
第2実施形態(及び第3、第4実施形態も同じ)では、各永久磁石412aの中心を通り軸心15と平行な仮想線と、永久磁石412bの中心を通り軸心15と平行な仮想線とが一致するように配置されている。
そして、同一の仮想線上に並んだ永久磁石412aと永久磁石412bの磁極の向きは、第2実施形態と第3実施形態の場合同逆方向で、第4実施形態の場合同一方向となるように配置される。
また、磁極の向きが同一方向である場合には2つのコイル422の巻き方向が同一で、磁極の向きが逆方向である場合には2つのコイル422の巻き方向がそれぞれ逆方向になる。
【0037】
図5は、第3実施形態における小型発電機4の断面構成を表したものである。
第2実施形態では2つの小型発電機4a、4bを同じ向きに配置したが、この第3実施形態では、2つの小型発電機4c、4dを逆向きに配置したものである。
すなわち、コイル422cとコイル422dが内側に、ロータ41cとロータ41dが外側にくるように配置されている。
図5に示されるように、第1円筒部437cと第2円筒部438c、及び、第1円筒部437dと第2円筒部438dを、共通する連結部439cdで連結している。
なお、
図5においては、第1円筒部437c、第1円筒部437d及び連結部439が一体形成されているが、2つ又は3つの別体に形成した各々を固定するようにしてもよい。
【0038】
また、
図5に示した第3実施形態では、2つの小型発電機4c、4dを逆向きに配置する場合に、コイル422cとコイル422dが内側で、ロータ41cとロータ41dが外側となるように配置した場合について説明したが、その逆の配置とすることも可能である。
すなわち、ロータ41cとロータ41dが内側で、コイル422cとコイル422dが外側となるように配置する。
この場合、磁路形成部43cと磁路形成部43dとが互いに接触状態となるので、この両者を一体に形成するようにしてもよい。
【0039】
図6は、第4実施形態における小型発電機4の断面構成を表したものである。
この第4実施形態では、第3実施形態と同様に、コイル422cとコイル422dが内側に、ロータ41cとロータ41dが外側にくるように配置されている。
一方、第3実施形態ではロータ41cとロータ41dにおける磁極の向きが同一方向であるのに対して、第4実施形態ではロータ41cとロータ41dにおける磁極の向きが逆向きに形成されている。このため、第4実施形態では、第1円筒部437cと第2円筒部438cとを連結し、第1円筒部437dと第2円筒部438dとを連結する連結部が不要であるため存在しない。
そして磁束の流れは、永久磁石412cのN極→第2磁極部434c→第2円筒部438c→第2円筒部438d→第2磁極部434d→永久磁石412dのS極の流れと、永久磁石412dのN極→第1磁極部431d→第1円筒部437cd→第1磁極部431c→永久磁石412cのS極の流れ、及びこの逆の流れが形成される。
なお、
図6に示した例では、小型発電機4cの第1円筒部と、小型発電機4dの第1円筒部を一体形成により共通化して第1円筒部437cdと表示しているが、それぞれ別体として形成してもよい。
【0040】
この第4実施形態によれば、連結部439が不要になるため、部材点数が減ることで小型発電機4をより軽量化することができる。
なお、説明した
図6では、コイルユニット42cとコイルユニット42dとが離れて配置されているが、両者を接触させた状態で並べて配置するようにしてもよい。
更に、コイルボビン421cとコイルボビン421dを共通化した1つのコイルボビン421を採用するようにしてもよい。この場合、共通化したコイルボビン421は、円筒部を長く(例えば2倍の長さ)することで、コイル422cとコイル422dの両者分のコイルを巻回できるようにする。これにより、1つの共通化したコイルボビン421の両側に2つのロータ41c、41dが配置される構成となる。
【0041】
次に第5実施形態について説明する。
この第5実施形態では、2つの小型発電機4が配置された第2〜第4実施形態を対象とし、コギングトルクの解消を目的にしたものである。
図7は、2つの小型発電機におけるロータ41と磁極部431、434の分解斜視図である。
図7では、ロータ41a、第1磁極部431a、第2磁極部434aを第1発電ユニット4Aとしている。また、ロータ41b、第1磁極部431b、第2磁極部434bを第2発電ユニット4Bとしている。
第5実施形態では、第1の実施形態で説明したのと同様に、小型発電機4a、bの各第1磁極歯433a、bと各第2磁極歯436a、bはロータ41a、bを介して対向するように配置されている。また、軸心15と平行な仮想線が第1磁極歯433aの中心と第2磁極歯436aの中心を通るように(第1仮想線と第2仮想線が一致するように)配置されている。また、軸心15と平行な仮想線が第1磁極歯433bの中心と第2磁極歯436bの中心を通るように(第1仮想線と第2仮想線が一致するように)配置されている。
【0042】
そして、第5実施形態では、小型発電機4aの第1磁極歯433aの中心(
図7では、黒丸を付している、以下同じ)と第2磁極歯436aの中心を通る仮想線Aと、小型発電機4bの第1磁極歯433bの中心と第2磁極歯436bの中心を通る仮想線Bとが、周方向に角度θずらして配置されている。
角度θは、1/2磁極ピッチ、すなわち、π/p(=(1/2)×(2π/p))である。
【0043】
なお、第2実施形態で説明したように、各永久磁石412aの中心を通り軸心15と平行な仮想線(永久磁石の磁極方向の仮想線)Cと、永久磁石412bの中心を通り軸心15と平行な仮想線(永久磁石の磁極方向の仮想線)Dとが一致するように配置されている。
そして、同一の仮想線C上に並んだ永久磁石412aと永久磁石412bの磁極の向きは、第5実施形態で対象とする第2〜第4実施形態、変形例の構成で採用する向きと同じ向きである。例えば、
図7では、第2実施形態の構成を採用しているので、磁極の向きは逆向きである。
【0044】
図8は、第1発電ユニット4Aと第2発電ユニット4Bにより発生するコギングトルクを表したものである。この
図8において、永久磁石412の磁極の向きについては第2実施形態を対象に表示している。
第5実施形態では、第1発電ユニット4Aの仮想線Aと、第2発電ユニット4Bの仮想線Bとが、1/2磁極ピッチの角度θずらして取り付けられているので、それぞれのコギングトルクの位相が180度ずれることで、両コギングトルクが相殺されることになる。
このように、コギングトルクの相殺により振動を解消することができ、特に、2つの小型発電機4を歯科医師用のハンドピースに配置する場合に有効である。
【0045】
次に第6実施形態について説明する。
第1〜第5実施形態では、回転体を構成するハブ体3の内周面にロータ41の外周面を固定配置する場合について説明したが、この実施形態では回転軸(回転体)の外周側にロータ41を固定配置する構成としたものである。
図9は第6実施形態における小型発電機4eの断面構成図である。
この
図9に示されるように、回転体を構成する回転軸6の両端に2つの軸受2eの内輪22eが固定され、両軸受2eの外輪21eに側壁部材62、63が固定されている。
本実施形態の小型発電機4eでは、ロータ41eが回転軸6に固定され、側壁部材62、63を含むステータ部は回転軸6に軸受2eで軸支されている。
【0046】
本実施形態における小型発電機4eも、第1〜第5実施形態と同様に、ロータ41eの一方の側面(コイルユニット42e)側に第1磁極部431eが、他方の側面側に第2磁極部434eが、それぞれ所定ギャップで対向配置されている。
一方、本実施形態のロータ41eと第1〜第5実施形態のロータ41とでは、円環形状の外周面と内周面における、固定状態と開放状態とが逆になっている。
すなわち、第1〜第5実施形態のロータ41は、外周面が回転体を構成するハブ本体31の内周面に固定され、内周面とハブ軸1(非回転)との間には隙間が存在(開放状態)する構成となっている。これに対し、本実施形態のロータ41eは、外周面が開放状態であり、内周面が回転体を構成する回転軸6に固定されている。
【0047】
このため、第2磁極部434eは、ロータ41eの外周側を超える長さまで延びた第1円筒部437eと、その外周側で固定され、内周側が開放状態となっている。なお、第2磁極部434eのロータ41eとの対向面と反対側の面は側壁部材63にも固定されている。
一方、第1磁極部431eは、ロータ41eの手前まで延びた第2円筒部438とその内周側で固定され、外周側が開放状態となっている。
第2円筒部438eは、その内側に回転軸6が非接触状態で挿通されている。
そして、第2磁極部434eと第1磁極部431eは、側壁部材62に固定された連結部439eに固定されることで連結されている。
以上の構成により、第1磁極部431e、第2円筒部438e、連結部439e、第1円筒部437e、第2磁極部434eの順、又はその逆順に磁路が形成される。
【0048】
次に、第6実施形態における小型発電機4eの使用例について説明する。
図10は、小型発電機4eを歯科医師用ハンドピース7に取り付けた状態を示す断面図である。
歯科医師用ハンドピース7は、エアーを駆動力として治療用工具を回転させることで、歯科治療を行う歯科医療用具である。
図10に示されるように、歯科医師用ハンドピース7は、把持部71とヘッド部72を備え、ヘッド部72には治療内容に応じた各種治療用工具73が着脱可能になっている。
把持部71内には、回転軸6を含む小型発電機4eが取り付けられている。小型発電機4eは、把持部71の内筒74の内周面に第1円筒部437eが固定されている。
回転軸6の一端側は、図示しないエアタービンに接続され、エアタービンから回転力が得られるようになっている。回転軸6の回転は、他端側に形成した斜交かさ歯車75を介して、先端軸76に伝達され、更に、ヘッド部72内のかさ歯車(図示しない)を介して治療用工具73に伝達される。
【0049】
把持部71の先端には、治療用工具73の先端周辺を照明するためのLED等の照明具77が取り付けられている。この照明具77には、小型発電機4eから引き出されたリード線423eが接続されている。
【0050】
以上のように構成された歯科医師用ハンドピース7では、医師が治療を行う際に、エアタービンからの回転力が回転軸6、先端軸76を介して治療用工具73が高速回転する。
この際、回転軸6に固定された小型発電機4eのロータ41も回転することで発電し、その電力がリード線423eから照明具77に供給されることで、治療工具73による治療箇所周辺が照明される。
【0051】
以上説明した第6実施形態では、小型発電機4eを1つ設けた場合について説明したが、第2〜第4実施形態と同様に複数設けるようにしてもよい。
この場合、各小型発電機4eの向きや、永久磁石412の磁極の向きを含め、各部材の位置関係については第2〜第4実施形態と同様に配置する。
そして、第2〜第4実施形態と同様に配置した小型発電機4e、4eを対象として、第5実施形態で説明したように、第1発電ユニット4Aと第2発電ユニット4Bにおける磁極部、又はロータ41を1/2磁石ピッチの角度θ(=π/p)だけずらして取り付けることで、コギングトルクの発生を解消するようにしてもよい。歯科医師用ハンドピース7においてコギングトルクを解消することで、治療者、被治療者に対する大きな効果を得ることができる。
【0052】
次に第7実施形態について説明する。
図11は、第1実施形態と同様に、第6実施形態の小型発電機4fを自転車のハブに内装した場合の断面構成を表したものである。
第1〜第6実施形態においては、ロータ41における永久磁石412を、その磁極の向きが回転体(ハブ体3、回転軸6)の回転軸と平行な方向となる方向に配設している。
これに対して、第7実施形態の小型発電機4fでは、ロータ41fにおける永久磁石412fを、その磁極の向きが回転体(ハブ体3、回転軸6)の回転軸と直交する方向(径方向)となる方向に配設したものである。
【0053】
第7実施形態のロータ41は、第1実施形態における環状部材411と永久磁石412に相当する環状部材411fと永久磁石412fに加え、環状部材411fと同じ内径の円環板413を備えている。
円環板413は、その外周面でロータ固定筒37に固定され、軸方向コイルユニット42側の側面に環状部材411fが固定されている。
そして、環状部材411fには、軸心と直交する平面上において、径方向の貫通孔がp個環状部材411fに等間隔に形成され、この貫通孔のそれぞれに磁極が交互になるように永久磁石412fが固定配置される。永久磁石412fの両端面は、ロータ41の外周面、内周面に合わせて曲面に加工されている。
なお、使用する永久磁石としては、第1実施形態で説明した何れでもよい。
【0054】
このように磁極の向きが径方向となるように永久磁石412fを配設した場合においても、第1磁極部431fと第2磁極部434fは、ロータ41fを挟み且つ永久磁石412fと対向して配置される。
【0055】
すなわち、
図11に示すように、第1磁極部431fは、第1実施形態において説明した第1円環部432と第1磁極歯433に相当する第1筒状部432fと第1磁極歯433fを備えている。
第1実施形態の第1円環部432と第1磁極歯433では、
図2に示されるように、第1円環部432の内周面に径方向内側(中心方向)に向けて、m個の第1磁極歯433が等間隔に突出形成されている。
これに対して、第7実施形態の第1磁極部431fでは、第1円環部432fの軸方向の一端側が第1円環部437fに固定され、他端側から軸心と平行な方向で、第1円環部437fと反対側の方向に、m個の第1磁極歯433fが等間隔に突出形成されている。
そして、m個の第1磁極歯433fの径方向内側の面はロータ41の外周面と所定ギャップで対向配置されるように湾曲した形状に形成されている。すなわち、第1磁極歯433fのロータ41と対向する側の内周面は、ロータ41の外周の外径よりもγ1だけ大きな径の仮想円筒と一致するように形成されている。
【0056】
一方、第2磁極部434fは、第1実施形態における第2円環部435と第2磁極歯436に相当する第2円環部435fと第2磁極歯436fを備えている。
第1実施形態の第2円環部435と第2磁極歯436では、
図2に示されるように、第2円環部435の外周面に径方向外側に向けて、m個の第2磁極歯436が等間隔に突出形成されている。
これに対して、第7実施形態の第2磁極部434fでは、第2円環部435fの軸方向の一端側(第1円環部432fの一端側と同じで、コイルユニット42が配設されている側)から、軸心と平行な方向で、第2円環部435の反対側の方向(第1磁極歯433fとは反対の方向)に、m個の第2磁極歯436fが等間隔に突出形成されている。
そして、m個の第2磁極歯436fの径方向外側の面はロータ41の内周面と所定ギャップで対向配置されるように湾曲した形状に形成されている。すなわち、第2磁極歯436fのロータ41と対向する側の内周面は、ロータ41の内周の内径よりもγ2だけ小さな径の仮想円筒と一致するように形成されている。
【0057】
第1実施形態の第2円環部435と同様に、第2円環部435fは、その内周面が点消灯切替部材45の円環部452に固定される。
そして、第2磁極歯436の内周側の面と第2円筒部438の外周面とが、また、第2円環部435fの側端面と第2円筒部438の軸方向の端面とが、それぞれ摺動可能に接触している。
【0058】
以上の通り、第7実施形態では、第1磁極部431f、第1円環部437、連結部439、第2円環部438、第2磁極歯436fにより磁路形成部43が構成される。
【0059】
第1実施形態の小型発電機4では軸方向に第1磁極部431と第2磁極部434の2部材が配置されるのに対し、この第7実施形態では軸方向にロータ41の円環板413の1部材が配置されることで、軸方向の長さを短くすることができる。
すなわち、
図7におけるコイルユニット42と環状部材411との間を縮めることで、軸方向の長さを短くして小型発電機4の一層の小型化を図ることができる。
【0060】
本実施形態の小型発電機4とその変形例によれば以下の効果を得ることができる。
(1)コイルユニット42とロータ41を径方向に配置するのではなく、軸方向に配置する構成とした。
これにより、小型発電機4の外径を小さくすることができるため、小型化することができる。
また、ロータ41の外径が小さくなることから、永久磁石の使用量を少なくすることができ、その分軽量化が図られる。
(2)第1〜第6実施形態およびその変形例では、磁極の向きが軸方向となる向きに永久磁石412を配置している。すなわち、環状部材411形成した貫通孔を軸方向に形成し、当該貫通孔に永久磁石412を配設しているので、径方向の貫通孔に永久磁石412を配置する場合に比べて、遠心力に耐えられるような強力な固定や、構造を必要としなため、製造が容易になる。
(3)第1磁極部431と第2磁極部434が永久磁石412の両極面と対向配置する構成であり、クローポールによらないため、永久磁石412とのギャップを狭くすることができるので、低速の回転数であっても高電圧の発電が可能となる。
(4)コイル422は、ロータ41の回転軸心回りに巻回されているため、簡単な構造のコイルユニット42とすることができ、小型発電機4も簡単な構成となる。
(5)2つの磁極部431、434から伸延する2つの円筒部437、438が1つの連結部423で接続されることで磁路形成部43が構成されるのため、部品点数が削減できて簡易で安価に提供することができる。
(6)複数の発電機単体を軸方向に配置する実施形態とその変形例によれば、複数のコイルを直列接続することで高い電圧を得ることができる。
(7)複数の発電機単体を軸方向に配置する実施形態とその変形例によれば、一方の発電機単体により発生するコギングトルクと、他方の発電機単体により発生するコギングトルクとが180度位相がずれるように、各部材を配置したので、コギングトルクが相殺されるため、スムーズな回転を得ることができる。
(8)点消灯切替部材45を軸心回りに移動させることで、発電時において永久磁石412を介して対向配置されていた第1磁極部431の第1磁極歯433と、第2磁極部434の第2磁極歯436とが、対向配置しない状態となる。すなわち、第1磁極歯433と第2磁極歯436は、永久磁石412の同局同士と対向する位置関係となるため、永久磁石412の磁束がコイル422を鎖交して磁路形成部43を流れることがなくなる。その結果ため、鉄損を大きく低減することができて、発電不要時の負荷トルクを小さくすることができる。
【0061】
以上、本発明の小型発電機4における1実施形態について説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。
例えば、
図1、2で説明したロータ41は、環状部材411に棒状の永久磁石412を軸方向に挿入することで構成する場合について説明したが、ロータ41全体を永久磁石で構成するようにしてもよい。
すなわち、円環板状の磁性材を、軸心15に対して垂直方向の面の一方が、周方向に極数pに分割して、異なる極に交互に平面着磁した永久磁石をロータ41として、ロータ固定筒37又は本体円筒部33の内周面に固定するようにしてもよい。
【0062】
また、説明した実施形態では、磁路形成部43による磁路は、第1磁極部431と第1円筒部437が固定され、第1円筒部437と連結部439が一体形成され、連結部439と第2円筒部438が固定され、第2円筒部438と第2磁極部434とが摺動可能な状態で接触(磁気回路として接続されてた状態、以下同じ。)しているが、他の構成でも可能である。
例えば、互いに固定されている部材については一体形成としても良く、また一体形成されている部材を別体で形成し互いに固定するようにしてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、第1磁極部431をハブ軸1に対して固定状態とし、第2磁極部434を点消灯切替部材45により回動可能な構成としているが、第2磁極部434側をハブ軸1に対して固定状態とし、第1磁極部431側を回動可能な構成としてもよい。
この場合、点消灯切替部材45の円筒部452は、連結部439又は第2円筒部438に固定される。
そして、円筒部452が連結部439に固定される場合、点消灯切替部材45の動きに応じて、連結部439、第1円筒部437を介して第1磁極部431が動くことになり、連結部439と第2円筒部438とが摺動可能な状態で接触し、第2円筒部438と第2磁極部434が固定される。連結部439と第1円筒部437は一体形成又は固定され、第1円筒部437と第1磁極部431は固定される。
一方、円筒部452が第2円筒部438に固定される場合、第2円筒部438と第2磁極部434は摺動可能な状態で接触し、可動部である第2円筒部438に対して第2磁極部434はハブ軸1に固定される。第2円筒部438に対して、連結部439、第1円筒部437は固定又は一体形成される。
【0064】
また、
図4〜
図6で説明した第2実施形態から第4実施形態及びこれらの変形例では、点消灯切替部材45が配設されていない場合について説明したが、第1実施形態や上記変形で説明したように、2つの第1磁極部431、又は2つの第2磁極部434の一方をハブ軸1に対して固定状態とし、他方を点消灯切替部材45により回動可能な構成としてもよい。
【0065】
また、第6実施形態では、コギングトルクを解消するために、仮想線Cと仮想線Dが一致し、仮想線Aと仮想線Bとを角度θだけ周回り方向にずらす場合について説明した(
図7参照)。
これに対して仮想線Aと仮想線Bとが一致するように第1磁極部431a、第2磁極部434a、第1磁極部431b、第2磁極部434bを配置し、仮想線Cと仮想線Dとが周回り方向に角度θだけずれるように配置してもよい。
また、仮想線Aと仮想線Bとを任意の角度αだけずらし、仮想線Cと仮想線Dを角度(α+θ)だけずらしても良い。
更に、仮想線Cと仮想線Dとを任意の角度βだけずらし、仮想線Aと仮想線Bを角度(β+θ)だけずらしても良い。
【0066】
また説明した第7実施形態では、第1磁極部431と第2磁極部434は、第1磁極歯433fと第2磁極歯436の突出方向が逆向きとなるように構成したが、第2磁極部434の向きを第1磁極部431と同じ向きに配置するようにしてもよい。