(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芯材粒子が、前記樹脂と前記含窒素複素環化合物と前記着色剤とを含む組成物の樹脂架橋体で構成された芯材粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気泳動粒子。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
【0023】
[電気泳動粒子]
本実施形態に係る電気泳動粒子は、芯材粒子(以下、「コア粒子」と称する)と、コア粒子の表面を被覆した被覆層と、を有して構成されている。
【0024】
コア粒子は、樹脂と、分子内にイミノ基、メチロール基及びアルコキシメチル基のいずれか1種を有し、且つ窒素原子を持つ複素環を有する含窒素複素環化合物(以下、「含窒素複素環化合物」と称する)と、着色剤と、を含む組成物により形成されている。具体的には、コア粒子は、樹脂と、分子内にイミノ基、メチロール基、アルコキシメチル基のいずれか1種を有するメラミン化合物及びグアナミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の含窒素複素環化合物と、着色剤と、を含む組成物により形成されていることがよい。
【0025】
一方、被覆層は、電気泳動粒子が分散される分散媒に対して溶解する親分散媒部と電気泳動粒子が分散される分散媒に対して不溶な疎分散媒部とを有する樹脂を含む組成物により形成されている。具体的には、被覆層は、少なくとも、シリコーン鎖を持つ重合成分又はアルキル鎖を持つ重合成分と、帯電性基を持つ重合成分と、の共重合体からなる樹脂を含む組成物により形成されていることがよい。
なお、各重合成分のうち、シリコーン鎖を持つ重合成分又はアルキル鎖を持つ重合成分等の疎水性重合成分に由来する重合後の疎水性部位が親分散媒部に相当し、親水性合成分に由来する重合後の親水性部位が疎分散媒部に相当する。
【0026】
本実施形態に係る電気泳動粒子では、上記構成により、閾値電圧が高くなる。これは、理由は定かではないが、コア粒子に含窒素複素環化合物を存在させると共に、このコア粒子を被覆層で被覆することで、電気泳動粒子に高い帯電量が付与されると考えられるためである。これにより、2種以上の同極の電気泳動粒子を併用した場合において、独立して各電気泳動粒子の泳動が実現され易くなり、例えば、一画素中での多色表示が実現され易くなる。
特に、電気泳動粒子を分散させる分散媒として低誘電溶媒(例えば誘電率5.0以下)を含む存在下では、原因は明確ではないものの、電気泳動粒子の帯電性基によって、電気泳動粒子に高い帯電量が付与され難く、電気泳動粒子の閾値電圧が高くなり難いが、このような場合でも、本実施形態に係る電気泳動粒子では、上記構成により、閾値電圧が高くなるため有効である。
【0027】
そして、本実施形態に係る電気泳動粒子を採用した表示媒体及び表示装置では、電気泳動粒子の帯電量低下に起因する表示欠陥(例えば、表示濃度の低下、混色表示)が抑制された表示が実現される
【0028】
また、本実施形態に係る電気泳動粒子では、上記構成により、逆極性の粒子の比率が低減も低減され易くなる。これにより、表示欠陥(例えば、表示濃度の低下、混色表示)が抑制された表示が実現され易くなる。
【0029】
以下、本実施形態に係る電気泳動粒子の詳細を説明する。
【0030】
(コア粒子)
コア粒子は、樹脂(以下、「コア粒子の樹脂」と称する)と、窒素原子を持つ複素環を有する含窒素複素環化合物と、着色剤と、を含む組成物により形成されている。
具体的には、コア粒子は、例えば、樹脂と含窒素複素環化合物と着色剤とを含む組成物で構成(つまり、樹脂中に含窒素複素環化合物及び着色剤が分散された構成)であってもよいし、樹脂と含窒素複素環化合物と着色剤とを含む組成物の樹脂架橋体で構成(つまり、樹脂と含窒素複素環化合物との樹脂架橋体中に着色剤が分散された構成)であってもよい。
特に、コア粒子は、樹脂架橋体で構成(樹脂及び含窒素複素環化合物の樹脂架橋体と、着色剤と、を含んだ構成)の場合、電気泳動粒子に高い帯電量が付与され、電気泳動粒子の閾値電圧が高くなり易くなる。また、電気泳動粒子における逆極性の粒子の比率が低減も低減され易くなる。
【0031】
−コア粒子の樹脂−
コア粒子の樹脂としては、電気泳動粒子の製法上の観点から、水溶性樹脂又はアルコール可溶性樹脂であることがよい。なお、水溶性、アルコール可溶性とは、25℃において、対象物質が水又はアルコールに対して1質量%以上溶解することを意味する。
コア粒子の樹脂は、含窒素複素環化合物により樹脂架橋体を形成する場合、反応性官能基(例えば、ヒドロキシル基、カルボン酸基等)を有することがよい。
【0032】
コア粒子の樹脂としては、帯電性樹脂(帯電性基(例えば分極性の官能基:極性基)を有する樹脂)であっても、非帯電性樹脂(帯電性基を有していない樹脂)であってもよいが、帯電量向上の観点から、帯電性樹脂であることがよい。
帯電性樹脂としては、例えば、帯電性基を持つ重合成分の単独重合体、帯電性基を持つ重合成分と帯電性基を持たない重合成分との共重合体等が挙げられる。
一方、非帯電性樹脂としては、例えば、帯電性基を持たない重合成分の単独重合体が挙げられる。
なお、これら各重合成分は、1種単独でも、2種以上併用してもよい。
【0033】
ここで、帯電性基(例えば極性基;分極性の官能基)としては、塩基又は酸基が挙げられる。
帯電性基としての塩基(以下、カチオン性基)は、例えば、アミノ基、4級アンモニウム基が挙げられる(これら基の塩も含む)。これらカチオン性基は、例えば、粒子に正帯電極性を付与する傾向がある。
帯電性基としての酸基(以下、アニオン性基)は、例えば、フェノール基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基及びテトラフェニルボロン基が挙げられる(これら基の塩も含む)。これらアニオン性基は、例えば、粒子に負帯電極性を付与する傾向がある。
帯電性基としては、その他、フッ素基、フェニル基、ヒドロキシル基等も挙げられる。
【0034】
以下、各重合成分について説明する。
なお、以下の説明において、「(メタ)アクリレート」等の記述は、「アクリレート」及び「メタクリレート」等のいずれをも含む表現である。
【0035】
カチオン性基を持つ重合成分(以下、カチオン性重合成分)としては、例えば、以下のものが挙げられる。具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−オ クチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート等の脂肪族アミノ基を持つ(メタ)アクリレート類;、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジオクチルアミノスチレン等の含窒素基を持つ芳香族置換エチレン系単量体類;、ビニル−N−エチル −N−フェニルアミノエチルエーテル、ビニル−N−ブチル−N−フェニルアミノエチルエーテル、トリエタノールアミンジビニルエーテル、ビニルジフェニルアミノエチルエーテル、N−ビニルヒドロキシエチルベンズアミド、m−アミノフェニルビニルエーテル等の含窒素ビニルエーテル単量体類;、ビニルアミン、N−ビニルピロール等のピロール類;、N−ビニル−2−ピロリン、N−ビニル−3−ピロリン等のピロリン類;、N−ビニルピロリジン、ビニルピロリジンアミノエーテル、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリジン類;、N−ビニル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;、N−ビニルイミダゾリン等のイミダゾリン類;、N−ビニルインドール等のインドール類;、N−ビニルインドリン等のインドリン類;、N−ビニルカルバゾール、3,6−ジブロム−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール類;、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン等のピリジン類;、(メタ)アクリルピペリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン等のピペリジン類;、2−ビニルキノリン、4−ビニルキノリン等のキノリン類;、N−ビニルピラゾール、N−ビニルピラゾリン等のピラゾール類;、2−ビニルオキサゾール等のオキサゾール類;、4−ビニルオキサジン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等のオキサジン類;などが挙げられる。
なお、カチオン性重合成分は、重合前又は重合後に4級アンモニウム塩化して塩構造を形成してもよい。4級アンモニウム塩化は、例えば、カチオン性基をアルキルハライド類やトシル酸エステル類と反応させることで実現される。
【0036】
アニオン性基を持つ重合成分(以下、アニオン性重合成分)としては、例えば、カルボン酸基を持つ重合成分、スルホン酸基を持つ重合成分、リン酸基を持つ重合成分等が挙げられる。
カルボン酸基を持つ重合成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、それらの無水物、そのモノアルキルエステルやカルボキシエチルビニルエーテル、カルボキシプロピルビニルエーテルの如きカルボキシル基を持つビニルエーテル類、及びその塩等が挙げられる。
スルホン酸基を持つ重合成分としては、例えば、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリックアシッドエステル、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコニックアシッドエステル等及びその塩が挙げられる。また、スルホン酸基を持つ重合成分としては、その他2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸の硫酸モノエステル及びその塩も挙げられる。
リン酸基を持つ重合成分としては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
なお、アニオン性重合成分は、重合前若しくは重合後にアンモニウム塩化して塩構造を形成させてもよい。アンモニウム塩化は、例えば、アニオン性基を3級アミン類若しくは4級アンモニウムハイドロオキサイド類と反応させることで実現される。
【0037】
フッ素基を持つ重合成分としては、例えばフッ素基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、具体的には、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチルトリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0038】
フェニル基を持つ重合成分としては、例えば、スチレン、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
ヒドロキシル基を持つ重合成分としては、例えば、ヒドリキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、アリルアルコール、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、その他、グリシジル基を持つモノマーを共重合させたのち開環させたものや、t−ブトキシキなどを持つモノマーを重合したのち加水分解させることでOH基を導入したものも挙げられる。
【0040】
帯電性基を持たない重合成分としては、非イオン性重合成分(ノニオン性重合成分)が挙げられ、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、ビニルカルバゾール、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、等が挙げられる。
【0041】
コア粒子の樹脂において、帯電性基を持つ重合成分は、例えば、全重合成分に対して占めるモル比で1モル%以上98モル%以下が望ましく、より望ましくは5モル%以上95モル%以下である。
【0042】
コア粒子の樹脂の重量平均分子量としては、1000以上100万以下が望ましく、より望ましくは1万以上20万以下である。
【0043】
−含窒素複素環化合物−
含窒素複素環化合物は、樹脂の重合成分としてではなく、単独又は架橋成分として含まれる化合物であり、コア粒子に含まれる樹脂と縮合反応し得る官能基を有する化合物である。
含窒素複素環化合物としては、例えば、分子内にイミノ基、メチロール基及びアルコキシメチル基のいずれか1種を有する、メラミン化合物、グアナミン化合物等が挙げられる。
【0044】
これら含窒素複素環化合物の含有量は、コア粒子全体に対して、0.5質量%以上50質量%以下であることがよく、望ましくは1質量%以上30質量%以下、より望ましくは2質量%以上20質量%以下である。
含窒素複素環化合物の含有量を上記範囲とすると、電気泳動粒子に高い帯電量が付与され、電気泳動粒子の閾値電圧が高くなり易くなる。また、電気泳動粒子における逆極性の粒子の比率が低減も低減され易くなる。
【0045】
含窒素複素環化合物としては、電気泳動粒子の製法上の観点から、水溶性化合物又はアルコール可溶性化合物であることがよい。
【0046】
・グアナミン化合物
グアナミン化合物は、グアナミン骨格(構造)を有する化合物であり、例えば、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ホルモグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、シクロヘキシルグアナミンなどが挙げられる。
【0047】
グアナミン化合物としては、特に下記一般式(A)で示される化合物及びその多量体の少なくとも1種であることが望ましい。ここで、多量体は、一般式(A)で示される化合物を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。なお、一般式(A)で示される化合物は、1種単独で用いもよいが、2種以上を併用してもよい。特に、一般式(A)で示される化合物は、2種以上混合して用いたり、それを構造単位とする多量体(オリゴマー)として用いたりすると、溶剤に対する溶解性が向上する。
【0049】
一般式(A)中、R
1は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基、又は炭素数4以上10以下の置換若しくは未置換の脂環式炭化水素基を示す。R
2からR
5は、それぞれ独立に水素、−CH
2−OH、又は−CH
2−O−R
6を示す。R
6は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示す。
一般式(A)において、R
1を示すアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、望ましくは炭素数が1以下8以上であり、より望ましくは炭素数が1以上5以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分枝状であってもよい。
一般式(A)中、R
1を示すフェニル基は、炭素数が6以上10以下であるが、より望ましくは6以上8以下である。当該フェニル基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
一般式(A)中、R
1を示す脂環式炭化水素基は、炭素数4以上10以下であるが、より望ましくは5以上8以下である。当該脂環式炭化水素基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
一般式(A)中、R
2からR
5を示す「−CH
2−O−R
6」において、R
6を示すアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、望ましくは炭素数が1以下8以上であり、より望ましくは炭素数が1以上6以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分枝状であってもよい。望ましくは、メチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
【0050】
一般式(A)で示される化合物としては、特に望ましくは、R
1が炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示し、R
2からR
5がそれぞれ独立に−CH
2−O−R
6を示す化合物である。また、R
6は、メチル基又はn−ブチル基から選ばれることが望ましい。
一般式(A)で示される化合物は、例えば、グアナミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法(例えば、日本化学会編、実験化学講座第4版、28巻、430ページ)で合成される。
以下、一般式(A)で示される化合物の具体例として例示化合物:(A)−1から例示化合物:(A)−42を示すが、本実施形態はこれらに限られるわけではない。また、以下の具体例は単量体であるが、これら単量体を構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。尚、以下の例示化合物において、「Me」はメチル基を、「Bu」はブチル基を、「Ph」はフェニル基をそれぞれ示す。
【0055】
また、一般式(A)で示される化合物の市販品としては、例えば、スーパーベッカミン(R)L−148−55、スーパーベッカミン(R)13−535、スーパーベッカミン(R)L−145−60、スーパーベッカミン(R)TD−126(以上DIC社製)、ニカラックBL−60、ニカラックBX−4000(以上日本カーバイド社製)、などが挙げられる。
また、一般式(A)で示される化合物(多量体を含む)は、合成後又は市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
【0056】
・メラミン化合物
メラミン化合物としては、メラミン骨格(構造)であり、特に下記一般式(B)で示される化合物及びその多量体の少なくとも1種であることが望ましい。ここで、多量体は、一般式(A)と同様に、一般式(B)で示される化合物を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。なお、一般式(B)で示される化合物又はその多量体は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、前記一般式(A)で示される化合物又はその多量体と併用してもよい。特に、一般式(B)で示される化合物は、2種以上混合して用いたり、それを構造単位とする多量体(オリゴマー)として用いたりすると、溶剤に対する溶解性が向上する。
【0058】
一般式(B)中、R
6からR
11はそれぞれ独立に、水素原子、−CH
2−OH、−CH
2−O−R
12、−O−R
12を示し、R
12は炭素数1以上5以下の分岐してもよいアルキル基を示す。当該アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
一般式(B)で示される化合物は、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法で合成される(例えば、実験化学講座第4版、28巻、430ページのメラミン樹脂と同様に合成される)。
以下、一般式(B)で示される化合物の具体例として例示化合物:(B)−1から例示化合物:(B)−8を示すが、本実施形態はこれらに限られるわけではない。また、以下の具体例は、単量体のものを示すが、これらを構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。
【0060】
一般式(B)で示される化合物の市販品としては、例えば、スーパーメラミNo.90(日油社製)、スーパーベッカミン(R)TD−139−60(DIC社製)、ユーバン2020(三井化学社製)、スミテックスレジンM−3(住友化学工業社製)、ニカラックMW−30(日本カーバイド社製)、などが挙げられる。
【0061】
また、一般式(B)で示される化合物(多量体を含む)は、合成後又は市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
【0062】
・その他含窒素複素環化合物
その他の含窒素複素環化合物としては、前記メラミン化合物及び前記グアナミン化合物のトリアジン環を別の含窒素複素環に置換したものが挙げられる。別の含窒素複素環としては、例えばピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール間、フラザン環、ピペリジン環、ピリジン環、ピラジン環、ピペラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、モルホリン環、ピロリジン環、ピリンジン環、インドリジン環、インドール環、インダゾール環、プリン環、キノリジン環、キノリン環、ジアザナフタレン環、ナフチリジン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ペリミジン環、フェナントロリン環、アンチリジン環などが挙げられる。
【0063】
前記メラミン化合物、前記グアナミン化合物及び前記その他の含窒素複素環化合物は、分子内にイミノ基、メチロール基、アルコキシメチル基のいずれか1種を有するため、コア粒子に含まれる樹脂と縮合反応し得る。
具体的には、例えば、下記反応式で示される縮合反応を生じ得る。
1) >NH + >NCH
2OH → >NCH
2N< + H
2O
2)2>NCH
2OH(酸性下) → >NCH
2N< + HCHO + H
2O
3) >NCH
2OH + NH → >NCH
2N< + + H
2O
4)2>NCH
2OH(塩基性下) → >CH
2OCH
2N< + H
2O
5) >NCH
2OH + −OH(弱酸性下) → >NCH
2O− + H
2O
6) >NCH
2OH + −COOH(弱酸性下) → >NCH
2OCO− + H
2O
7) >NCH
2OH + −CONH
2(弱酸性下) → >NCH
2NHCO− + H
2O
8) >NCH
2OR + −OH(酸性下) → >NCH
2O− + ROH
9) >NCH
2OR + −COOH(酸性下) → >NCH
2OCO− + ROH
10) >NCH
2OR + −CONH
2(酸性下) → >NCH
2NHCO− + ROH
【0064】
このような縮合反応を生じ得る含窒素複素環化合物は、例えば、コア粒子の造粒後に加熱などの簡便な操作で、自己縮合反応により樹脂化、又はコア粒子の樹脂との縮合反応により3次元架橋化が実現するので製造の自由度が大きくなるという利点がある。また、ラジカル反応を生じ得る化合物に比べ、コア粒子を造粒する際、高粘度になったり溶解性低下が起こり難いため、溶媒の制約が少ないといった利点がある。さらに、ラジカル反応を生じ得る化合物に比べ、未反応物の増大や反応の不均一性などのなどが起こり難いといった利点もある。
特に、前記メラミン化合物、前記グアナミン化合物及び前記その他の含窒素複素環化合物は、多官能基化が容易でコア粒子の樹脂架橋構造が強固なものとなり易いという利点もある。なお、例えば、ビニル基を多官能化することは、合成条件が複雑・厳密になり高コスト化する場合が多い。
【0065】
−着色剤−
着色剤としては、有機若しくは無機の顔料や、油溶性染料等が挙げられ、例えば、マグネタイト、フェライト等の磁性紛、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フタロシアニン銅系シアン色材、アゾ系イエロー色材、アゾ系マゼンタ色材、キナクリドン系マゼンタ色材、レッド色材、グリーン色材、ブルー色材等の公知の着色剤が挙げられる。具体的には、着色剤としては、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3、等が代表的なものとして例示される。
【0066】
着色剤の配合量としては、コア粒子の樹脂に対して10質量%以上99質量%以下が望ましく、望ましくは30質量%以上99質量%以下である。
【0067】
−その他の配合材料−
コア粒子には、その他の配合材料を含んでいてもよい。
その他配合材料としては、例えば帯電制御材料、磁性材料が挙げられる。
帯電制御材料としては、電子写真用トナー材料に使用される公知のものが使用でき、例えば、セチルピリジルクロライド、BONTRON P−51、BONTRON P−53、BONTRON E−84、BONTRON E−81(以上、オリエント化学工業社製)等の第4級アンモニウム塩、サリチル酸系金属錯体、フェノール系縮合物、テトラフェニル系化合物、酸化金属粒子、各種カップリング剤により表面処理された酸化金属粒子を挙げられる。
【0068】
磁性材料としては、必要に応じてカラーコートした無機磁性材料や有機磁性材料を使用する。また、透明な磁性材料、特に、透明有機磁性材料は着色顔料の発色を阻害し難く、比重も無機磁性材料に比べて小さく、より望ましい。
着色した磁性材料(カラーコートした材料)として、例えば、特開2003−131420公報記載の小径着色磁性粉が挙げられる。核となる磁性粒子と該磁性粒子表面上に積層された着色層とを備えたものが用いられる。そして、着色層としては、顔料等により磁性粉を不透過に着色する等選定して差し支えないが、例えば光干渉薄膜を用いるのが好ましい。この光干渉薄膜とは、SiO
2やTiO
2等の無彩色材料を光の波長と同等な厚みを有する薄膜にしたものであり、薄膜内の光干渉により光の波長を選択的に反射するものである。
【0069】
−コア粒子の好適な構成−
以上説明したコア粒子は、コア粒子の樹脂として、1)スチレン−アクリル樹脂、
2)ヒドロキシアルキル‐アンモニウム樹脂、3)アクリル樹脂、を含む構成が特に好適である。
【0070】
また、以上説明したコア粒子は、含窒素複素環化合物として、一般式(B)で示されるメラミン化合物、を含む構成が特に好適である。
【0071】
そして、以上説明したコア粒子は、これらコア粒子の樹脂と含窒素複素環化合物との架橋体を含む構成も特に好適である。
【0072】
(被覆層)
被覆層は、電気泳動粒子が分散される分散媒に対して溶解する親分散媒部と、電気泳動粒子が分散される分散媒に対して不溶な疎分散媒部と、を有する樹脂(以下、「被覆層の樹脂」と称する)を含む組成物により形成されている。
ここで、被覆層の樹脂の親分散媒部とは、当該親分散媒部を構成する重合成分が分散媒に可溶であることを意味する。そして、分散媒に可溶あるとは、25℃において、対象物質が分散媒に対して1質量%以上溶解することを意味する。
一方、被覆層の樹脂の疎分散媒部とは、当該疎分散媒部を構成する重合成分が分散媒に不溶であることを意味する。そして、分散媒に不溶であるとは、25℃において、対象物質が分散媒に対して0.01質量%以上溶解することを意味する。
【0073】
なお、被覆層の樹脂は、電気泳動粒子の製法上の観点から、樹脂単独では(つまりコア粒子に被覆する前は)、分散媒に可溶であり、コア粒子に被覆した後において、分散媒に不溶となるように被覆層を構成することがよい。
これを実現する方法としては、例えば、被覆層の樹脂を架橋させる方法、樹脂をコア粒子の表面の結合させる方法、樹脂をコア粒子の表面に多点吸着させる方法が挙げられる。
【0074】
−被覆層の樹脂−
被覆層の樹脂として具体的には、例えば。シリコーン鎖を持つ重合成分又はアルキル鎖を持つ重合成分と、帯電性基を持つ重合成分と、必要に応じて、他の重合成分と、の共重合体からなる樹脂が挙げられる。
【0075】
ここで、被覆層は、非架橋の樹脂を含んで構成されていてもよいし、樹脂の架橋体を含んで構成されていてもよい。
つまり、被覆層は、例えば、樹脂を含む組成物で構成されていてもよいし、樹脂を含む組成物の樹脂架橋体で構成されていてもよい。
特に、被覆層は、樹脂架橋体で構成される場合、電気泳動粒子に高い帯電量が付与され、電気泳動粒子の閾値電圧が高くなり易くなる。また、電気泳動粒子における逆極性の粒子の比率が低減も低減され易くなる。
被覆層の樹脂の架橋させる方法としては、樹脂の重合成分として反応性基(架橋性基)を持つ重合成分を重合させ、樹脂を架橋させる方法、樹脂とは別途、架橋剤を添加して、樹脂を架橋させる方法が挙げられる。
【0076】
・シリコーン鎖を持つ重合成分
シリコーン鎖を持つ重合成分(シリコーン鎖を持つ単量体)としては、例えば、シリコーン鎖を持つマクロモノマーであり、具体的には、例えば、片末端に(メタ)アクリレート基を持ったジメチルシリコーンモノマー(下記構造式1で示されるシリコーン化合物:例えば、チッソ社製:サイラプレーン:FM−0711,FM−0721,FM−0725等、信越化学工業社製:X−22−174DX,X−22−2426,X−22−2475等)等が挙げられる。
【0078】
構造式1中、R
1は、水素原子、又はメチル基を示す。R
1’は、水素原子、又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。nは自然数(例えば1以上1000以下、望ましくは3以上100以下)、を示す。xは1以上3以下の整数を示す。
【0079】
・アルキル鎖を持つ重合成分
アルキル鎖を持つ重合成分としては、例えば、長鎖アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、炭素数4以上のアルキル鎖を持ったものがよく、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、長鎖アルキルとは、例えば、炭素数4以上30以下程度のアルキル鎖を意味する。
【0080】
・帯電性基を持つ重合成分
帯電性基を持つ重合成分としては、コア粒子の樹脂の重合成分として説明した帯電性基を持つ重合成分と同様である。
【0081】
・その他重合成分
その他重合成分としては、帯電性基を持たない重合成分、反応性基を持つ重合成分挙げられる。
帯電性基を持たない重合成分としては、コア粒子の樹脂の重合成分として説明した帯電性基を持たない重合成分と同様である。
【0082】
反応性基を持つ重合成分としては、例えば、エポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレート、イソシアネート基を有するイソシアネート系モノマー(例えば、昭和電工:カレンズAOI(2−イソシアナトエチルアクリラート)、カレンズMOI(2−イソシアナトエチルメタクリレート))、ブロックされたイソシアネート基を有するイソシアネート系モノマー(例えば、昭和電工:カレンズMOI−BM(メタクリル酸2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル)、カレンズMOI−BP(2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート))等が挙げられる。
なお、ブロックされたイソシアネート基とは、例えば、イソシアネート基が置換基と反応した状態となっており、イソシアネート基が加熱によって脱離する置換基と反応し状態となっているものである。これにより、イソシアネート基の反応性が抑制され、加熱により置換基が離脱すると反応する状態となる。
このような被覆層の樹脂の重合成分として反応性基を持つ重合成分を用いると、被覆層の樹脂自体が架橋し、被覆層が樹脂架橋体で構成されることとなる。また、被覆層の樹脂の反応性基がコア粒子の表面の官能基と結合した状態で、被覆層がコア粒子に被覆されることなる。
【0083】
ここで、反応性基を持つ重合成分は、被覆層の樹脂の重合成分として用いる以外に、被覆層の樹脂とは別途、架橋剤として系中に添加して、被覆層の樹脂を架橋させるようにしてもよい。
【0084】
被覆層の樹脂において、シリコーン鎖を持つ重合成分は、全重合成分(全重合成分)に対して占めるモル比で1モル%以上90モル%以下が望ましく、より望ましくは5モル%以上50モル%以下である。
被覆層の樹脂は、帯電性基を持つ重合成分は、全重合成分(全重合成分)に対して占めるモル比で10モル%以上99モル%以下が望ましく、より望ましくは50モル%以上95モル%以下である。
被覆層の樹脂において、反応性基を持つ重合成分は、全重合成分(全重合成分)に対して占めるモル比で0.1モル%以上50モル%以下が望ましく、より望ましくは0.5モル%以上30モル%以下である。
なお、樹脂架橋体を得るための架橋剤の使用量は、例えば、被覆層の樹脂に対して、0.1質量%以上70質量%以下が望ましく、より望ましくは1質量%以上50質量%以下である。
【0085】
被覆層の樹脂の重量平均分子量としては、500以上100万以下が望ましく、より望ましくは1000以上100万以下である。
【0086】
−その他配合材料−
被覆層には、その他配合材料を含んでもよい。
その他配合材料としては、例えば、側鎖、主鎖、末端、あるいはそれぞれの組み合わせの部位に官能基を有する変性シリコーンが挙げられる。官能基の種類として、アクリル基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アルキル基、フェニル基、エステル基、アミド基、エーテル構造基などが挙げられる。
【0087】
−被覆層の特性−
被覆層は、コア粒子の表面に対する被覆量が、例えば、コア粒子に対して、0.00001質量%以上50質量%以下、望ましくは0.0001質量%以上10質量%以下である。
【0088】
−被覆層の好適な構成−
以上説明した被覆層は、被覆層の樹脂として、1)シリコーンマクロマー・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル・ブロックイソシアネート樹脂、2)シリコーンマクロマー・(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル・ブロックイソシアネート樹脂、3)シリコーンマクロマー・(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル・(メタ)アクリル酸フェノキシアルキレングリコール・ブロックイソシアネート樹脂、4)シリコーンマクロマー・(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル・アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル・ブロックイソシアネート樹脂、を含む構成が特に好適である。
【0089】
(電気泳動粒子の特性)
本実施形態に係る電気泳動粒子の平均粒径(体積平均粒径)は、例えば、0.1μm以上10μm以下であるが、用途に応じて選択され、これに限定されない。
平均粒径は、大塚電子株式会社製Photal FPAR−1000(動的光散乱式粒径分布測定装置)を用いて測定され、MARQUARDT法により解析が行われる。
【0090】
(電気泳動粒子の製造方法)
本実施形態に係る電気泳動粒子の製造方法の一例としては、例えば、次の製法が挙げられるが、これに限られるわけではない。
まず、コア粒子の樹脂、含窒素複素環化合物、着色剤、及びその他配合材料を、第1溶媒に混合し、コア粒子の樹脂及び含窒素複素環化合物が溶解した混合液を調製する。
ここで、第1溶媒は、後述する第2溶媒(連続相を形成し得る貧溶媒)中で分散相を形成し得る良溶媒であり、第2溶媒よりも沸点が低く且つ、コア粒子の樹脂及び含窒素複素環化合物を溶解する溶媒から選択する。
第1溶媒としては、例えば、水、イソプロピルアルコール(IPA)、メタノール、エタノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
【0091】
次に、得られた混合液を、第2溶媒と混合し、攪拌して、第2溶媒を連続相として混合液を乳化させ、乳化液を調製する。
そして、加熱等により、乳化液中の第1溶媒を除去(乾燥)して、コア粒子の樹脂、含窒素複素環化合物を析出させ、これらと共に着色剤及びその他配合材料を含む粒状物として、コア粒子(第2溶媒に分散されたコア粒子)を得る。
ここで、第2溶媒は、分散相となる第1溶媒に対して連続相を形成し得る貧溶媒であり、第1溶媒よりも沸点が高く且つ、コア粒子の樹脂及び含窒素複素環化合物が不溶な溶媒から選択する。
第2溶媒としては、例えば、得られる電気泳動粒子を分散させるための分散媒が挙げられる。
【0092】
次に、被覆層の樹脂とその他配合材料を、第3溶媒に混合し、被覆層の樹脂が溶解した混合液を調整する。
ここで、第3溶媒も、第2溶媒(連続相を形成し得る貧溶媒)中で分散相を形成し得る良溶媒であり、第2溶媒よりも沸点が低く且つ、被覆層の樹脂を溶解する溶媒から選択する。また、第3溶媒は、コア粒子の樹脂及び含窒素複素環化合物が不溶な溶媒から選択することがよい。
第3溶媒としても、例えば、水、イソプロピルアルコール(IPA)、メタノール、エタノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
【0093】
次に、得られた混合液を、コア粒子が分散した第2溶媒と混合し、攪拌して、第2溶媒を連続相として混合液を乳化させ、乳化液を調製する。
そして、加熱等により、乳化液中の第3溶媒を除去(乾燥)して、コア粒子の表面に被覆層の樹脂を析出させ、これと共にその他配合材料を含む被覆層をコア粒子の表面に形成する。
その後、コア粒子及び被覆層を樹脂架橋体でする場合、樹脂を架橋化させるための加熱処理を行う。
【0094】
このようにして、コア粒子の表面に被覆層が形成された電気泳動粒子を得ると共に、これを含む電気泳動粒子分散液が得られる。
ここで、得られた電気泳動粒子分散液に対し、必要に応じて、例えば、分散媒(溶媒)で希釈してもよい。なお、2種以上の電気泳動粒子を含む電気泳動粒子分散液を得るためには、それぞれの分散液を作製した後、これらを混合すればよい。
【0095】
[電気泳動粒子分散液]
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液は、分散媒と、分散媒に分散された電気泳動粒子であって、本実施形態に係る電気泳動粒子と、を備える。
【0096】
分散媒としては、特に制限はないが、低誘電溶媒(例えば誘電率5.0以下、望ましくは3.0以下)が選択されることがよい。分散媒は、低誘電溶媒以外の溶媒を併用してもよいが、50体積%以上の低誘電溶媒を含むことがよい。なお、低誘電率の誘電率は、誘電率計(日本ルフト製)により求められる。
低誘電溶媒としては、例えば、パラフィン系炭化水素溶媒、シリコーンオイル、フッ素系液体など石油由来高沸点溶媒が挙げられる。
低誘電溶媒としては、例えば、電気泳動粒子の被覆層の樹脂の重合成分の種類に応じて選択されることがよい。具体的には、例えば、被覆層の樹脂の重合成分としてシリコーン鎖を持つ成分を適用する場合、分散媒としてはシリコーンオイルを選択することがよい。また、被覆層の樹脂の重合成分としてアルキル鎖を持つ成分を適用する場合、分散媒としてはパラフィン系炭化水素溶媒を選択することがよい。
但し、これに限られるわけではなく、例えば、被覆層の樹脂の重合成分としてシリコーン鎖を持つ成分を適用する場合でも、分散媒としてはパラフィン系炭化水素溶媒を選択してもよい。
【0097】
シリコーンオイルとして具体的には、シロキサン結合に炭化水素基が結合したシリコーンオイル(例えば、ジメチルシリコーンオイル、ジエチルシリコーンオイル、メチルエチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル等)が挙げられる。これらの中も、ジメチルシリコーンが特に望ましい。
【0098】
パラフィン系炭化水素溶媒としては、炭素数20以上(沸点80℃以上)のノルマルパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素が挙げられるが、安全性、揮発性等の理由から、イソパラフィンを用いることが望ましい。具体的には、シェルゾル71(シェル石油製)、アイソパーO、アイソパーH、アイソパーK、アイソパーL、アイソパーG、アイソパーM(アイソパーはエクソン社の商品名)やアイピーソルベント(出光石油化学製)等が挙げられる。
【0099】
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液には、必要に応じて、酸、アルカリ、塩、分散剤、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加してもよい。また、本実施形態に係る電気泳動粒子分散液には、帯電制御剤を添加してもよい。
【0100】
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液中の電気泳動粒子の濃度は、表示特性や応答特性あるいはその用途によって種々選択されるが0.1質量%以上30質量%以下の範囲で選択されることが望ましい。色の異なった粒子を混合する場合にはその粒子総量がこの範囲であると望ましい。
【0101】
本実施形態に係る電気泳動粒子分散液は、電気泳動方式の表示媒体、電気泳動方式の調光媒体(調光素子)、液体現像方式電子写真システムの液体トナーなどに利用される。なお、電気泳動方式の表示媒体、電気泳動方式の調光媒体(調光素子)としては、公知である電極(基板)面の対向方向に粒子群を移動させる方式、それとは異なり電極(基板)面に沿った方向に移動させる方式(いわゆるインプレーン型素子)、又はこれらを組み合わせたハイブリッド素子がある。
なお、本実施形態に係る電気泳動粒子分散液において、電気泳動粒子として色や帯電極性の異なる複数種の粒子を混合して使用すれば、カラー表示が実現される。
【0102】
[表示媒体、表示装置]
以下、実施形態に係る表示媒体、及び表示装置の一例について説明する。
【0103】
図1は、本実施形態に係る表示装置の概略構成図である。
図2は、本実施形態に係る表示装置の表示媒体の基板間に電圧を印加したときの粒子群の移動態様を模式的に示す説明図である。
【0104】
本実施形態に係る表示装置10は、その表示媒体12の分散媒50と粒子群34とを含む粒子分散液として、上記本実施形態に係る電気泳動粒子分散液を適用する形態である。つまり、分散媒50に、粒子群34として本実施形態に係る電気泳動粒子を分散させた形態である。
【0105】
本実施形態に係る表示装置10は、
図1に示すように、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18と、を含んで構成されている。
【0106】
表示媒体12は、画像表示面とされる表示基板20、表示基板20に間隙をもって対向する背面基板22、これらの基板間を特定間隔に保持すると共に、表示基板20と背面基板22との基板間を複数のセルに区画する間隙部材24、各セル内に封入された粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する反射粒子群36を含んで構成されている。
【0107】
上記セルとは、表示基板20と、背面基板22と、間隙部材24と、によって囲まれた領域を示している。このセル中には、分散媒50が封入されている。粒子群34は、複数の粒子から構成されており、この分散媒50中に分散され、セル内に形成された電界強度に応じて表示基板20と背面基板22との基板間を反射粒子群36の間隙を通じて移動する。
【0108】
なお、この表示媒体12に画像を表示したときの各画素に対応するように間隙部材24を設け、各画素に対応するようにセルを形成することで、表示媒体12を、画素毎の表示を行うように構成してもよい。
【0109】
また、本実施形態では、説明を簡易化するために、1つのセルに注目した図を用いて本実施形態を説明する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0110】
まず、一対の基板について説明する。
表示基板20は、支持基板38上に、表面電極40及び表面層42を順に積層した構成となっている。背面基板22は、支持基板44上に、背面電極46及び表面層48を積層した構成となっている。
【0111】
表示基板20、又は表示基板20と背面基板22との双方は、透光性を有している。ここで、本実施形態における透光性とは、可視光の透過率が60%以上であることを示している。
【0112】
支持基板38及び支持基板44の材料としては、ガラスや、プラスチック、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等が挙げられる。
【0113】
表面電極40及び背面電極46の材料としては、インジウム、スズ、カドミウム、アンチモン等の酸化物、ITO等の複合酸化物、金、銀、銅、ニッケル等の金属、ポリピロールやポリチオフェン等の有機材料等が挙げられる。表面電極40及び背面電極46は、これらの単層膜、混合膜又は複合膜のいずれであってもよい。表面電極40及び背面電極46の厚さは、例えば、100Å以上2000Å以下であることがよい。背面電極46及び表面電極40は、例えば、マトリックス状、又はストライプ状に形成されていてもよい。
【0114】
また、表面電極40を支持基板38に埋め込んでもよい。また、背面電極46を支持基板44に埋め込んでもよい。この場合、支持基板38及び支持基板44の材料を粒子群34の各粒子の組成等に応じて選択する。
【0115】
なお、背面電極46及び表面電極40各々を表示基板20及び背面基板22と分離させ、表示媒体12の外部に配置してもよい。
【0116】
なお、上記では、表示基板20と背面基板22の双方に電極(表面電極40及び背面電極46)を備える場合を説明したが、何れか一方にだけ設けるようにして、アクティブマトリクス駆動させるようにしてもよい。
【0117】
また、アクティブマトリックス駆動を実施するために、支持基板38及び支持基板44は、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)を備えていてもよい。TFTは表示基板ではなく背面基板22に備えることがよい。
【0118】
次に、表面層について説明する。
表面層42及び表面層48は、表面電極40及び背面電極46各々上に形成されている。表面層42及び表面層48を構成する材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、エポキシ、ポリイソシアネート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、共重合ナイロン、紫外線硬化アクリル樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0119】
表面層42及び表面層48は、上記樹脂と電荷輸送物質を含んで構成されていてもよく、電荷輸送性を有する自己支持性の樹脂を含んで構成されてもよい。
【0120】
次に、間隙部材について説明する。
表示基板20と背面基板22との基板間の隙を保持するための間隙部材24は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、光硬化樹脂、ゴム、金属等で構成される。
【0121】
間隙部材24は表示基板20及び背面基板22の何れか一方と一体化されてもよい。この場合には、支持基板38又は支持基板44をエッチングするエッチング処理、レーザー加工処理、予め作製した型を使用してプレス加工処理又は印刷処理等を行うことによって作製する。
この場合、間隙部材24は、表示基板20側、背面基板22側のいずれか、又は双方に作製する。
【0122】
間隙部材24は有色でも無色でもよいが、無色透明であることがよく、その場合には、例えば、ポリスチレンやポリエステルやアクリルなどの透明樹脂等で構成される。
【0123】
また、粒子状の間隙部材24もまた透明であることが望ましく、ポリスチレン、ポリエステル又はアクリル等の透明樹脂粒子の他、ガラス粒子も使用される。
なお、「透明」とは、可視光に対して、透過率60%以上有することを示している。
【0124】
次に、反射粒子群について説明する。
反射粒子群36は、粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する反射粒子から構成され、粒子群34とは異なる色を表示する反射部材として機能するものである。そして、表示基板20と背面基板22との基板間の移動を阻害することなく、移動させる空隙部材としての機能も有している。すなわち、反射粒子群36の間隙を通って、背面基板22側から表示基板20側、又は表示基板20側から背面基板22側へ粒子群34の各粒子は移動される。この反射粒子群36の色としては、例えば、背景色となるように白色又は黒色を選択することがよいが、その他の色であってもよい。また、反射粒子群36は、帯電されていない粒子群(つまり電界に応じて移動しない粒子群)であってもよいし、帯電されている粒子群(電界に応じて移動する粒子群)であってもよい。なお、本実施形態では、反射粒子群36は、帯電されていない粒子群で、白色である場合を説明するが、これに限定されることはない。
【0125】
反射粒子群36の粒子は、例えば、白色顔料(例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛など)を、樹脂(例えばポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド縮合物等)に分散した粒子、又は、樹脂粒子(例えば、ポリスチレン粒子、ポリビニルナフタレン粒子、ビスメラミン粒子等)が挙げられる。また、反射粒子群36の粒子として、白色以外の粒子を適用する場合、例えば、所望の色の顔料、あるいは染料を内包した前記した樹脂粒子を使用してもよい。顔料や染料は、例えばRGBやYMC色であれば、印刷インキやカラートナーに使用されている一般的な顔料又は染料が挙げられる。
【0126】
反射粒子群36を基板間へ封入するには、例えば、インクジェット法などにより行う。また、反射粒子群36を固定化する場合、例えば、反射粒子群36を封入した後、加熱(及び必要があれば加圧)して、反射粒子群36の粒子群表層を溶かすことで、粒子間隙を維持させつつ行われる。
【0127】
次に、表示媒体のその他構成について説明する。
表示媒体12におけるセルの大きさとしては、表示媒体12の解像度と密接な関係にあり、セルが小さいほど高解像度な画像を表示する表示媒体12を作製することができ、通常、表示媒体12の表示基板20の板面方向の長さが10μm以上1mm以下程度である。
【0128】
なお、セル中の全質量に対する粒子群34の含有量(質量%)としては、所望の色相が得られる濃度であれば特に限定されるものではなく、セルの厚さ(すなわち、表示基板20と背面基板との基板間の距離)により含有量を調整することが、表示媒体12としては有効である。即ち、所望の色相を得るために、セルが厚くなるほど含有量は少なくなり、セルが薄くなるほど含有量を多くでき得る。一般的には、0.01質量%以上50質量%以下である。
【0129】
表示基板20及び背面基板22を、間隙部材24を介して互いに固定するには、ボルトとナットの組み合わせ、クランプ、クリップ、基板固定用の枠等の固定手段を使用する。また、接着剤、熱溶融、超音波接合等の固定手段も使用してもよい。
【0130】
このように構成される表示媒体12は、例えば、画像の保存及び書換えがなされる掲示板、回覧版、電子黒板、広告、看板、点滅標識、電子ペーパー、電子新聞、電子書籍、及び複写機・プリンタと共用するドキュメントシート等に使用する。
【0131】
上記に示したように、本実施形態に係る表示装置10は、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18とを含んで構成されている(
図1参照)。
【0132】
電圧印加部16は、表面電極40及び背面電極46に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、表面電極40及び背面電極46の双方が、電圧印加部16に電気的に接続されている場合を説明するが、表面電極40及び背面電極46の一方が、接地されており、他方が電圧印加部16に接続された構成であってもよい。
【0133】
電圧印加部16は、制御部18に信号授受されるように接続されている。
【0134】
制御部18は、装置全体の動作を司るCPU(中央処理装置)と、各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、装置全体を制御する制御プログラム等の各種プログラムが予め記憶されたROM(Read Only Memory)と、を含むマイクロコンピュータとして構成されていてもよい。
【0135】
電圧印加部16は、表面電極40及び背面電極46に電圧を印加するための電圧印加装置であり、制御部18の制御に応じた電圧を表面電極40及び背面電極46間に印加する。
【0136】
次に、表示装置10の作用を説明する。この作用は制御部18の動作に従って説明する。
【0137】
ここで、表示媒体12に封入されている粒子群34が正極性に帯電されている場合を説明する。また、分散媒50は透明であり、反射粒子群36が白色であるものとして説明する。すなわち、本実施形態では、表示媒体12は、粒子群34の移動によって、その呈する色を表示し、その背景色として反射粒子群36による白色を表示する場合を説明する。
なお、下記動作は、説明上、粒子群34が背面基板22側へ付着した状態からの動作について説明する。
【0138】
まず、電圧を、特定時間、表面電極40が負極となり背面電極46が正極となるように印加することを示す動作信号を、電圧印加部16へ出力する。
図2(A)に示す状態から、電極間に印加する電圧を上昇させ、表面電極40が負極で且つ濃度変動が終了する閾値電圧以上の電圧が印加されると、粒子群34の凝集力が低減された状態で、正極に帯電している粒子群34を構成する粒子が表示基板20側へと移動して、表示基板20に至る(
図2(B)参照)。
【0139】
そして、電極間への印加を終了すると、粒子群34が表面基板20側で拘束され、粒子群34の呈する色が、反射粒子群36の色としての白色を背景色とし表示基板20側から視認される表示媒体12の色として視認される。
【0140】
次に、表面電極40と背面電極46との電極間に、電圧を、特定時間、表面電極40が正極となり背面電極46が負極となるように印加することを示す動作信号を、電圧印加部16へ出力する。電極間に印加する電圧を上昇させ、表面電極40が正極で且つ濃度変動が終了する閾値電圧以上の電圧が印加されると、粒子群34の凝集力が低減された状態で、正極に帯電している粒子群34を構成する粒子が背面基板22側へと移動して、背面基板22に至る(
図2(A)参照)。
【0141】
そして、電極間への印加を終了すると、粒子群34が背面基板22側で拘束される一方で、反射粒子群36の色としての白色が、表示基板20側から視認される表示媒体12の色として視認される。なお、粒子群34は、反射粒子群36に隠蔽され、視認され難くなる。
【0142】
ここで、電極間への電圧印加時間は、動作中の電圧印加における電圧印加時間を示す情報として、予め制御部18内の図示を省略するROM等のメモリ等に記憶しておけばよい。そして、処理実行のときに、この電圧印加時間を示す情報を読み取るようにすればよい。
【0143】
このように、本実施形態に係る表示装置10では、粒子群34が表示基板20又は背面基板22に到達して、付着・凝集することで表示が行われる。
【0144】
なお、上記本実施形態に係る表示媒体12及び表示装置10では、表示基板20に表面電極40、背面基板22に背面電極46を設けて当該電極間(即ち基板間)に電圧を印加して、当該基板間を粒子群34を移動させて表示させる形態を説明したがこれに限られず、例えば、表示基板20に表面電極40を設ける一方で、間隙部材に電極を設けて、当該電極間に電圧を印加して、表示基板20と間隙部材との間を粒子群34を移動させて表示させる形態であってもよい。
【0145】
また、上記本実施形態に係る表示媒体12及び表示装置10では、粒子群34として1種類(1色)の粒子群を適用した形態を説明したが、これに限られず、帯電極性が異なる又は閾値電圧の異なる組み合わせで、2種類(2色)以上の粒子群を適用した形態であってもよい。
具体的には、例えば、粒子群34として、正帯電性の第1粒子群、負帯電性の第2粒子群、正帯電性で、第1粒子群の粒子とは閾値電圧が異なり、且つ粒径が大きい第3粒子群を適用した形態が挙げられる。
【実施例】
【0146】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、文中、特に断りがない限り、「部」「%」は、「質量部」「質量%」を意味する。
【0147】
[実施例1]
コア粒子の樹脂としてスチレン/アクリル系樹脂(「X−1202L」星光PMC社製)45質量部、含窒素複素環化合物として(B)−2で示されるメラミン化合物(「ニカラックMW−390(三和ケミカル社製)」」5質量部、着色剤としてシアン顔料(「H525F(山陽色素社製)」)50質量部に、これら全体が15質量%となるように水に添加して水分散液を調製した。
次に、得られた水分散液を分散相とし、シリコーンオイル溶液(界面活性剤「KF−6028(信越化学工業社製)」1質量%添加したシリコーンオイル「KF−96−2CS(信越化学工業社製)」)を連続相として、これらを質量比(連続相:分散相)10:1で混合し、ホモジナイザーで乳化を行って、乳化液を調製した。
次に、得られた乳化液に対して、エバポレーターにより60℃で6時間乾燥し、乳化液中の水を除去して、コア粒子の分散液を得た。得られたコア粒子は、平均粒径0.6μmで、C.V.値(単分散性を示す指標:Coefficient of Variation:CV[%]=(σ/D)×100(σ:標準偏差、D:平均粒径))25%であった。
次に、液中で分散されたコア粒子を、遠心分離機を用いてシリコーンオイルで洗浄し、1質量%のコア粒子分散液を調製した。
【0148】
次に、シリコーン鎖を持つ重合成分として「サイラプレーンFM−0721(チッソ社製)」と、帯電性基を持つ重合成分として2-(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(AOETMA)及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と、反応性基(架橋性基)を持つ重合成分としてイソシアネート系モノマー(ブロック化されたイソシアネート基を有するイソシアネート系モノマー「カレンズMOI−BP(昭和電工社製)」と、他の重合成分としてMMA(メタクリル酸メチル)と、の共重合体(モル比は表2に記載)を準備した。これを被覆層の樹脂とした。
次に、この被覆層の樹脂2gをIPA(イソプロピルアルコール)に添加し、IPA10質量%溶液を調整した。
【0149】
次に、コア粒子分散液20gに、IPA10質量%溶液20gを添加して、攪拌した後、エバポレーターにより60℃で1時間乾燥し、コア粒子分散液中のIPAを除去して、被覆層の樹脂をコア粒子の析出させ、コア粒子の表面に被覆層を形成した粒状物を得た。
次に、この粒子分散液を130℃で1時間加熱して、コア粒子及び被覆層を構成する樹脂を架橋させた。
【0150】
以上の工程を経て、コア粒子の表面に被覆層を形成した電気泳動粒子の分散液を得た。
なお、液中に分散された電気泳動粒子は、遠心分離機を用いてシリコーンオイルで洗浄した。
【0151】
[実施例2〜9]
表1及び表2に従って、コア粒子及び被覆層の組成を変更した以外は、実施例1と同様にして電気泳動粒子と共に、その分散液を得た。
但し、実施例5、6では、コア粒子及び被覆層を構成する樹脂を架橋させるための加熱処理を行わなかった。
また、実施例7、8、9では、被覆層の樹脂の重合成分として、シリコーン鎖を持つ成分に代えて、アルキル鎖を持つ成分としてメタクリル酸ステアリル(SMA)を使用した。
【0152】
[比較例1]
コア粒子の作製において、含窒素含有複素環化合物を配合しない以外は、実施例1と同様にして電気泳動粒子と共に、その分散液を得た。
【0153】
[比較例2]
実施例1と同様にしてコア粒子を作製した後、この粒子分散液を130℃で1時間加熱して、コア粒子を構成する樹脂を架橋させた。得られた粒子を電気泳動粒子とすると共に、その分散液を得た。
【0154】
[比較例3]
コア粒子の作製において、含窒素含有複素環化合物を配合しない以外は、実施例1と同様にして電気泳動粒子と共に、その分散液を得た。
但し、被覆層の樹脂の重合成分として、シリコーン鎖を持つ成分に代えて、アルキル鎖を持つ成分としてメタクリル酸ステアリル(SMA)を使用した。また、コア粒子を構成する樹脂の部数を50質量部とした。
【0155】
[評価]
まず、連続相のKF−96−2CS中に白粒子が20質量%、電気泳動粒子(シアン粒子)が1質量%となるように分散液を調製し、これを電気泳動粒子分散液とした。
但し、白粒子は、以下のように作製したものを使用した。
【0156】
−白粒子の作製−
サイラプレーンFM−0721 45質量部、2−ビニルナフタレン45質量部、シリコーンオイル「KF−96−1CS(信越化学工業社製)」)240質量部、過酸化ラウロイル2質量部をフラスコに入れ、撹拌しながら窒素を毎分0.2Lの流量でバブリングし脱酸素を行ったあと、70℃のオイルバスで10時間加熱し、白色の微粒子の分散液を得た。得られた分散液を遠心沈降させ、上澄み液を捨てKF−96−2CSを400ml加え、超音波照射によって分散状態に戻した。これを3回繰り返し、洗浄およびKF−96−2CSへの置換を行い、白粒子分散液を得た。
得られた白粒子は平均粒径0.5μmでC.V.値は10%であった。
また、この白粒子は±20Vの電界印加で泳動することはなかった。
【0157】
次に、得られた電気泳動粒子分散液を、インジウムスズ酸化物(ITO)電極が形成された一対のガラス基板間(一対のガラス基板間に50μmのスペーサ(間隙部材)を介在させたセル内)に封入した素子サンプルを作製した。なお、スペーサ(間隙部材)は、サイトップ(旭硝子社製、CTL809M)で一方のガラス基板の電極形成面にスピンコートにて塗布した後、200℃で4時間加熱を行うことにより形成した。
そして、得られた素子サンプルを用いて、ファンクションジェネレータ(NF社製電源をNATIONAL INSTRUMENTS社製LabVIEWで駆動)により±15Vの電圧を素子サンプルの電極間に印加し、電流計(KEITHLEY社製)および光学測定装置(Ocean Optics社製USB2000)により電気泳動粒子の帯電量、閾値電圧、逆極性の粒子の存在比率を調べた。具体的には、以下の通りである。
【0158】
−帯電量−
電気泳動粒子の帯電量(初期の帯電量)は、0V−15Vの矩形波を印加し、電流値が一定になった時間までの電荷量を積算して得た。
そして、電気泳動分散液をスクリューバイアルに入れ、60℃で1週間保管した後、再度、同様にして、電気泳動粒子の帯電量(経時の帯電量)を測定した。
【0159】
−閾値電圧−
電気泳動粒子の閾値電圧(初期の閾値電圧)は、0V−15Vの三角波を0.05Hzで印加し、光学測定装置による反射率の最大値の90%のときの電圧を求め、これの電圧を閾値電圧として得た。
そして、電気泳動分散液をスクリューバイアルに入れ、60℃で1週間保管した後、再度、同様にして、電気泳動粒子の閾値電圧(経時の閾値電圧)を測定した。
【0160】
−逆極性粒子存在比率−
電気泳動粒子における逆極性の粒子の存在比率(初期の存在比率)は、光学測定装置で標準試料で白、および暗状態で黒のキャリブレーションを行い測定した。
そして、電気泳動分散液をスクリューバイアルに入れ、60℃で1週間保管した後、再度、同様にして、電気泳動粒子の逆極性粒子存在比率(経時の逆極性粒子存在比率)を測定した。
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
【表3】
【0164】
上記結果から、実施例では、比較例に比べ、帯電量、閾値電圧が高くなることがわかる。
実施例では、比較例に比べ、逆極性粒子存在比率が低減されることもわかる。
【0165】
なお、表1〜表2中の略称等の詳細は、以下の通りである。
−コア粒子の樹脂−
・X−1202L:「X−1202L(星光PMC社製)」重量平均分子量20,000)
【0166】
−含窒素複素環化合物−
・MW−390:(B)−2で示されるメラミン化合物「ニカラックMW−390(三和ケミカル社製)」
【0167】
−着色剤−
・H525F:シアン顔料(「H525F(山陽色素社製)」)
【0168】
−被覆層の樹脂−
・FM−0721:「サイラプレーンFM−0721(チッソ社製)」、重量平均分子量Mw=5000、構造式1[R
1=メチル基、R
1’=ブチル基、n=68、x=3]
・SMA:メタクリル酸ステアリル
・MAA:メタクリル酸
・HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
・MOI−BP:ブロック化されたイソシアネート基を有するイソシアネート系モノマー:2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート「カレンズMOI−BP(昭和電工社製)」
・MMA:メタクリル酸メチル
・AOETMA:2-(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド